【お!いしい けんぶんろく】 Vol.43
栄養成分の機能性について/タンパク質
9月に入ってもまだまだ暑い日が続いていますね。
石井製麺所では、11月からが新年度になるのですが、9月、10月は端境期ということもあって、発送作業よりも製造に注力する時期です。
ただ、暑さが厳しく、まだまだスムーズな製麺作業ができる気候ではありませんね。
先日、製麺をお手伝いいただく方や石井家のメンバーで、11月以降の製麺のスケジュールなどについて打ち合わせをおこないました。
製麺をお手伝いいただく方は、超がつくほどのベテランで父と同じ歳の方です。
色々な製麺所で勤められた経験もある方で、素麺のお話をするととても楽しそうにお話しくださいます。
素麺がお好きなんだな〜と感じます。
そのお話しの中で、「製麺所で働く若い人がほとんどいない」という話になりました。
確かに、私三代目が石井製麺所の代表になってからは、「廃業した」というお話は毎年のように複数件、耳にしますが、若い方が製麺所を継いだ(働き始めた)というお話はほとんど聞きません。
夜中から働き始め、その日の夕方…遅い場合は夜まで掛かってしまう製麺作業。
今で言う「ブラック」な環境なのかもしれませんし、なかなかそんな大変な仕事を選ぶ方も少ないのではないでしょうか。
なんといっても素麺づくりは新規参入がしにくい事業だと感じます。
私もそうですが、家業が素麺をやっていてその跡取りとなるというのが今では主流ですが、昔は製麺所に修業に行ってその後、独立する流れだったそうです。
産地としての製麺所を増やすのであれば、生産者をまずは増やさなければいけないと考えますが、その増やす方法がほとんどないのが現状です。
この際、手延べ素麺の産地を横断して、「手延べ素麺の学校」をつくって新しい生産者を育てる仕組みをつくってはどうかなと考える今日この頃です。
幸い?私の同級生に家業の製麺所を引き継いだ方が2名いらっしゃったことが、とても心強く感じています。
ライバルが増えるのでなく、産地を支える仲閒がもっともっと増えると嬉しいなと思っています。
若い世代のアイデアや着眼点で、小豆島らしい手延べ素麺をご提供できるような、そんな時を楽しみにこれからも頑張っていきます。
さて、今回のブログでは、これまた知っていそうでよくわからない「タンパク質」について調べてみました。
タンパク質はアミノ酸の基でもありますし、栄養としては欠かせないものです。
ですが、アレルギーを起こす物質もまたタンパク質であったりします。
タンパク質って良い者?悪者?なのか、整理してみたいと思います。
手延べ素麺の美味しさの根幹である「グルテン」もまたタンパク質です。
そのタンパク質の性質を生かし切ってこそ美味しい手延べ素麺になると思います。
ですので、今回はちょっと幅広く「タンパク質」について調べてみましたので、今回も最後までお楽しみいただければと思います。
写真は、まだ家業を継ぎ、製麺所で父母の手伝いを始めたばかりの頃のものです。
なんとなく手つきがまだまだな感じがします(笑)。
【目次】
① タンパク質はアミノ酸でできている
② 良質なタンパク質の指標は「アミノ酸スコア」
③ 動物性タンパク質と植物性タンパク質とは?
④ タンパク質不⾜は体の機能低下につながる
⑤ ⼿延べ素麵の美味しさはタンパク質のグルテンにある
⑥ ⾷物アレルギーとタンパク質の関係
⑦ 《美味しい手延べ素麺》小豆島手延べ素麺 編
① タンパク質はアミノ酸でできている
タンパク質は、炭水化物・脂質と並んで三大栄養素の1つとされ、私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。
「タンパク質」は英語で「protein(プロテイン)」と言い、その語源は古代ギリシア語で「第一なるもの、主要なもの」を意味する「Proteios(プロティオス)」だそうです。
古代より私たちにとって重要な栄養素であると認識されていたことが分かります。
「タンパク質」の表記について、栄養成分表示では「たんぱく質」「蛋白質」「たん白質」「タンパク」の表示も可能とされています。
文部科学省の学術用語では「タンパク質」と書き、厚生労働省では第六次改定日本人の栄養所要量などで「たんぱく質」としており、新聞用語などでは「たんぱく質」が多く使われているようです。
タンパク質は人体の重要な構成成分の1つで、体をつくる材料として必要な栄養素です。
人体は、水分を除くとその主成分がいずれもタンパク質で、男性の体の16〜18%、女性の体の14〜16%を占めているそうです。
人間の体内のタンパク質の種類は10万以上あり、それぞれが決まった固有の機能を持っているとのことです。
タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子化合物で、食事から摂取したタンパク質はそのままでは体に吸収できないため、消化酵素により分解されてアミノ酸やアミノ酸が数個つながったペプチドになります。
そして体に吸収され、筋肉や臓器、肌、髪、爪などの材料として使われます。
また、ホルモンや代謝酵素、免疫物質などになってさまざまな働きをしたり、エネルギー源として使われたりします。
人体のタンパク質は20種類のアミノ酸によって構成されます。
そのうち11種類は体内でつくり出すことができますが、9種類のアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれ、体内でつくることができません。
また体のタンパク質は合成と分解が繰り返されており、その釣り合いを取るためにも、食事からタンパク質を補うことが必要です。
<参考サイト>
・「たんぱく質」って、何だろう?
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/know_milk/02/
・タンパク質について
https://humans-in-space.jaxa.jp/protein/public/about/what.html
・表示に関する疑問に回答食品表示Q&A
https://hyouji.maru-sin.net/qa/2021/01/30/1452/
・レファレンス事例詳細
・タンパク質とは【タンパク質の種類、機能、働きなどを解説】
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=113&category=health
・タンパク質とは?専門的な内容をできるかぎりわかりやすく解説
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=252&category=child
② 良質なタンパク質の指標は「アミノ酸スコア」
「良質のタンパク質」という言葉を聞いたことがあると思いますが、具体的にはどのようなタンパク質が良質と言えるのでしょうか。
体の中で必要なタンパク質を合成するためには、体内でつくれない必須アミノ酸を食品から充分に摂取しなければなりません。
そのため、必須アミノ酸をバランスよく含む食品が、良質なタンパク質を含む食品ということになります。
その指標になるのが、食品に含まれる9種類の必須アミノ酸の量をそれぞれ0~100で数値化し、そのバランスで評価する「アミノ酸スコア」です。
その食品の中で最も低いアミノ酸の値がアミノ酸スコアとなり、例えば9種類すべてが100に達している食品は「アミノ酸スコア100」、1種類だけ80なら残りの8種類がすべて100でも「アミノ酸スコア80」となります。
アミノ酸スコアの高い主な食品には、肉や魚介類、卵、豆類、大豆製品、牛乳・乳製品などがあります。
<参考サイト>
・アミノ酸スコアとは?
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=6&category=muscle
・たんぱく質はなぜ必要?効果やメリット、 摂取量の目安を紹介
https://www.kikkoman.co.jp/homecook/tsushin/tips0031/
③ 動物性タンパク質と植物性タンパク質とは?
タンパク質は、動物性タンパク質と植物性タンパク質に分けられます。
肉や魚、卵、牛乳・乳製品などに含まれるのは動物性タンパク質で、豆類、大豆製品、穀物類、野菜などに含まれるのが植物性タンパク質です。
動物性タンパク質は必須アミノ酸を豊富に含みます。
特に牛乳・乳製品に含まれるカゼインやホエイプロテインは、必須アミノ酸のすべてを豊富に含む良質のタンパク質です。
またカゼインは柔軟な分子構造となっているため、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による消化吸収性が極めて高いのが特徴とのことです。
動物性タンパク質は植物性タンパク質と比べて100gあたりの含有量が多く摂取しやすい一方で、脂質を含むものも多く、特に肉類は飽和脂肪酸が多いため、摂りすぎるとコレステロール値の上昇や腸内環境悪化につながるリスクもあるそうです。
植物性タンパク質は、食材中のタンパク質含有量がそれほど高くなく、消化吸収率が動物性タンパク質に比べて低いものが多いそうです。
また、豆類に含まれるタンパク質には必須アミノ酸は豊富に含まれていますが、小麦や米、野菜類に含まれるタンパク質では、いくつかの必須アミノ酸の含有量は低いため、アミノ酸バランスには優れません。
一方で、脂質の少ないものが多くカロリーを抑えやすい、体調を整えるための食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれるものが多い、などのメリットがあります。
様々な食材をバランスよく食べることが健康づくりに役立つと言えます。
④ タンパク質不⾜は体の機能低下につながる
「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、タンパク質推奨量は、18~64歳の男性で1日65g、女性で50gとされています。
平成29年度の「国民健康・栄養調査」によると、タンパク質の摂取目標量はほぼ達成できているそうです。
健康な状態では、体のタンパク質の合成と分解の量が釣り合っています。
しかし、過度なダイエットや不摂生、加齢などにより食事量が少なかったり栄養バランスが偏ったりするとタンパク質が不足し、合成と分解のバランスが崩れてしまいます。
これにより免疫機能が低下して抵抗力が弱くなり、さまざまな病気にかかりやすくなります。
また体重の約4割の重さを占める筋肉は、水分を除くと約8割がタンパク質でできているため、タンパク質が不足すると筋力の低下にもつながります。
タンパク質不足を防ぐには、まず自分の体格や活動量に応じた必要量を把握しておくことが大切です。
またタンパク質を一度にたくさん摂取しても、体内で使い切れなかった分は脂肪となってしまうため、3食に分けてこまめに摂取する必要があります。
目安として、「1回の食事で手のひらサイズのタンパク質のおかず」を食べることが推奨されているとのことです。
間食に乳製品などでタンパク質を補うのも方法の1つだそうです。
<参考サイト>
・三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html
・あなたは大丈夫?今すぐ気を付けたい「タンパク質不足」
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=100&category=health
⑤ ⼿延べ素麵の美味しさはタンパク質のグルテンにある
素麺は主成分が小麦粉で、タンパク質は100gあたり約8.0gとあまり多くはありません。
ですが、美味しい手延べ素麺づくりにはタンパク質が重要な役割を果たしています。
小麦粉独自のタンパク質であるグルテンは、こねたり練ったりすることでできる繊維状の組織。
小麦粉を練ってつくった生地を、のばして重ねて、のばして重ねて…を繰り返すことで、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、まるで何層にも重なった地層のように組織されます。
これを“より”をかけながら細くのばすことで断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが特徴の手延べ素麺になります。
グルテンは日数の経過とともに劣化し、もろくかたくなって弾力が失われます。
また、ゆでる時の水分吸収率が低くなり、食感がかたくなります。
素麺では、この変化は「厄(やく)」または「厄現象」と呼ばれ、食感の変化がシャキシャキとした歯切れの良さとして好まれました。
梅雨期の高温多湿期を一回迎え越したものを「新物」、二年目以降のものを「古物(ひねもの)」と呼び、古いものほど貴重品とされている産地もあります。
しかしやはり本来の風味や旨みは失われ、グルテン独自の本来のコシは失われるという側面もあります。
長期間の保存は酸化のリスクがあるため、ご家庭では早めにお召し上がりいただくことをおすすめします。
<参考サイト>
・手延べ乾めんの疑問?について
https://www.shimabara-soumen.com/article/14646279.html
・手延べそうめんの「厄(やく)」とは
https://www.shimabara-soumen.com/14662419348225
⑥ ⾷物アレルギーとタンパク質の関係
子どもから大人まで幅広い世代でみられる食物アレルギーは、特定の食べ物を摂取したり触れたりすることにより、免疫システムが過敏に働いて、体に不利益な症状が現れる疾患です。
乳幼児の5~10%、学童期以降の1~3%が食物アレルギーを持っていると考えられています。
子どもの頃の食物アレルギーは、成長に伴い徐々に原因食物が食べられるようになる(耐性獲得)ことが多いそうです。
一方、大人の食物アレルギーは、耐性獲得しにくく、原因食品を継続的に除去する必要がある場合が多いと考えられています。
アレルギーを引き起こす物質であるアレルゲンは、主に食物に含まれるタンパク質です。
血液中には、体内に侵入したアレルゲンに対して働きかけ、身体を守る機能を持つ「IgE抗体(免疫グロブリンE)」と呼ばれるタンパク質があります。
アレルギー体質の人は、血液中に大量のIgE抗体が存在しており、食物を摂取して腸管から成分が吸収される際に、体が特定のタンパク質を異物と認識すると、血中のIgE抗体が反応してアレルギー症状が出るそうです。
例えば卵アレルギーの人は卵のタンパク質に反応するIgE抗体を、牛乳アレルギーの人は牛乳のタンパク質に反応するIgE抗体を持っており、卵アレルギーの人が牛乳で発症しないのは、その人のIgE抗体が卵だけに反応するからだそうです。
タンパク質は、アミノ酸が鎖状につながり、らせん状やシート状に折り畳まれた構造をしており、特定のアレルゲンに結合する「特異的IgE抗体」は、この構造の決まった場所に結合するそうです。
加熱や酸、酵素によってタンパク質の形が変化(変性)したり、消化酵素の働きでアミノ酸のつながりが切断(消化)されたりして、特異的IgE抗体が結合する場所の形が変化すると、IgE抗体が結合しにくくなり、アレルギー症状が出にくくなります。
これを「低アレルゲン化」と言うそうです。
<参考サイト>
・食物アレルギー
https://allergyportal.jp/knowledge/food/
・食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする?
https://www.ajinomoto.co.jp/products/anzen/know/f_allergy_01.html
・食物アレルギーとは
https://www.foodallergy.jp/tebiki/about/
⑦ 《美味しい手延べ素麺》小豆島手延べ素麺 編
石井製麺所を代表する「小豆島手延べ素麺」のご紹介です。
いわゆる普通の「白い素麺」です。
太さが3種類あり、「手延べ素麺」として販売しているものは「細麺(石井製麺所ではスタンダードと呼んでいます)」になります。
またそれよりも太い麺「太麺」、手延べ素麺ならではと言える「極細麺」をご用意しています。
秋を経て寒さが厳しくなるシーズンには「太麺」が人気となります。
「太麺」は、冷やし素麺としてももちろんですが、やはり温かいお出汁と一緒に召しがっていただくとその美味しさがさらに際立つと思います。
手延べ素麺ならではのコシとツルンとしたのど越しに加え、「太麺」ならではのモチモチ感が大変人気です。
カツオと昆布をベースに醤油で味付けたお出汁でも美味しいですし、味噌汁のように味噌の風味香る汁と一緒に召し上がっていただくのもおすすめです。
太麺ですので、じっくりと長い時間をかけて乾燥しています。賞味期限は1年と長いので、備蓄食にもいかがでしょうか。
「困ったときの“素麺”頼み」と言われるように皆さまの秋冬の食卓で活躍できると幸いです。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in
《手延べ素麺》 https://141seimen.thebase.in/categories/2325435
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。