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2024年9月

2024年9月

石井製麺所通信

2024年9月22日 【Vol.44】麺究者への道/漬物について研究してみる

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.44

麺究者への道/漬物について研究してみる

 

 

 

 

今回のブログは、「漬物」をテーマにしてみました。

「漬物」?

素麺には全然関係ないよね?薬味として使うの?というお声が聞こえてきそうですが、そうです、全く関係がありません(笑)。

ですが、現在勉強中の発酵食品の代表格ですので、しっかりと調べてみたいと思います。

ただ調べてみると、漬物は全てが発酵食品ではないそうです。

当たり前のような気がしますが、目からウロコの事実でした。

 

皆さんは普段、漬物を召し上がられますか?

私は普段食べることは少ないのですが、カレーの時に福神漬けや焼肉の時にキムチなどを一緒に食べるくらいでしょうか?

あとは、おにぎりの具材の梅干しや、お土産物などでお漬物をいただいた際には夕食時に並ぶことはあるなという程度の記憶です。

ですが、飲食店や旅先で美味しいぬか漬けを食べたときにはどことなく「懐かしいな」と感じるのは、日本人のDNAなのでしょうか。

 

漬物とはそもそもが、長期保存が可能な食品としての加工品ですよね。

長期の保存のためにさまざまな工夫が施されて、乳酸発酵させる手法や酢や塩に漬けることで雑菌の繁殖を抑えるなど、自然の恵みを活用した人の叡智の結集だと言えるのではないでしょうか。

それくらいよくできていますし、これは日本だけに限ったことでなく、世界中でも見られるものです。

その進化の形としては、国や食文化、気候などによりさまざまなものがあるようですが、調べてみるとそれもまた大変興味深いものです。

 

近年は漬物の塩分が敬遠され、お米の食習慣も減ってきたことから、漬物の需要も減っているそうです。

昔は、各家庭でも漬物がつくられていましたが、石井家でもそうですが、今はなかなか見られないようになったのではないでしょうか。

また、農家さんが自家製の野菜などを使って漬物を製造販売されていましたが、現在は製造に関する決まりが厳しくなり、手づくりの味が減ってきてもいるそうです。

時代の流れかも知れませんが、寂しく感じてしまいます。

これからは漬物もしっかりと味わって食べていきたいと思わせる、きっかけとなりました。

 

「発酵とは、なに?」という原点に立ち返るテーマにもなったと思いますので、漬物好きな方もそうでなかった方にも、ぜひご覧いただければ幸いです。

お気づきの点などあれば、お話をお聞かせいただけると嬉しいです。

 

 

【目次】

① 発酵⾷品と⾔えば漬物!?漬物とは

② 保存食から茶の湯、そして健康食へ!漬物の歴史

③ 日本に600種類以上もある漬物、その分類について

④ 個性豊かな日本の漬物をご紹介

⑤ 世界中に広がっている!漬物文化

⑥ 家庭でチャレンジ!漬物をつくってみませんか?

⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》10月10日解禁!!新漬けオリーブ 編

 

 


 

① 発酵⾷品と⾔えば漬物!?漬物とは

 

漬物とは、野菜などの食材を、塩や醤油、味噌、酢、麹、米ぬか、酒粕などに漬け込むことで、風味と保存性を高めた食品です。

水分が抜けるため、旨みや栄養分が凝縮されています。

肉や魚を漬けたものも広義では漬物に入りますが、一般的には野菜を漬けたものと認知されています。

漬物と言えば発酵食品、というイメージがありますが、実はつくる過程で発酵させる「発酵漬物」と、発酵させない「無発酵漬物」の2つに大きく分けられます

 

ぬか漬けやたくあん、しば漬けなどの発酵漬物は、野菜にもともと付着している乳酸菌が、野菜の糖類などを分解して乳酸を生成することにより野菜のpHが低下することで酸性になります。

そのため酸味が出るとともに、酸に弱い腐敗菌の働きが抑えられ、保存性が高まります。

また空気中などから付着した酵母も増殖することにより香気成分がつくられ、漬物特有の風味が生まれます。

塩分を含む漬け床に野菜を漬け込むことにより、野菜から出た水の中で乳酸菌が育成し、その働きにより完成するそうです。

漬物に関与する乳酸菌は高い塩分濃度でも生育することができ、また酸素がない環境を好む(嫌気性)ため、食材を塩で漬けて重石をして空気を遮断すると、他の雑菌は死滅し、乳酸菌だけが増殖するのだそうです。

 

 

浅漬けや甘酢漬け、梅干し、福神漬けなどは無発酵漬物です。

数時間だけ塩に漬ける浅漬けは、つくる過程で微生物が関与していません。

甘酢漬けは、酢に含まれる酸により、微生物が生育できません。

梅干しは一般的には梅と塩だけでつくられる無発酵漬物ですが、塩分濃度が高く、またクエン酸などの成分が強い殺菌作用を持っており微生物が生育できないため、長期間保存することができるとのことです。

 

ちなみに、麹漬けや酒粕漬け、味噌漬けといった、漬け床自体に発酵食品を使った漬物は、食材を直接的に発酵させるわけではないため、一般的に無発酵漬物に分類されるそうです。

ですが発酵由来の風味が食材に移ることで、味わい深い漬物になります。

 

 

<参考サイト>

・漬物のきほん

https://www.hakko-blend.com/study/hakkofood/04.html

・発酵漬物と無発酵漬物について。

https://tomarino.jp/tags/27/311

・【やさしい発酵図鑑vol.13】漬物の種類と違いを解説! 自宅でできる「三五八漬け」レシピも

https://www.amanofoods.jp/regular/mano/22724/

 

 

 


 

② 保存食から茶の湯、そして健康食へ!漬物の歴史

 

日本では古くから塩水を使って食品を塩漬けにして保存する工夫がされてきました。

縄文時代には野菜の皮を塩漬けにしていたと考えられています。

 

世界最古の漬物の製造方法に関する文献とされるのが、6世紀中頃の中国最古の農業書「斉民要術(せいみんようじゅつ)」で、野菜の塩漬け方法などが見られるそうです。

 

日本では、奈良時代の天平年間の木簡に、ウリや青菜の塩漬けについて記されていました。

この頃大陸から文化が伝わり、酒や味噌、醤油などの調味料がつくられるようになったことから、塩の他、酒粕やもろみなどに野菜を付けて保存する方法が登場します。

奈良時代には主に貴族や寺院の僧侶の食用として、野菜の他にモモなどの果物も塩漬けされていたそうです。

漬物は庶民にはあまり食べられない高級品だったようです。

 

平安時代には庶民にも広まっていきます。

「延喜式」には、酢漬け、醤(ひしお)漬け、粕漬け、また現代のたくあんの原形ともみられる「須々保利(すずぼり)」などの記録が残っています。

春にはワラビ、フキ、ウリなど14種類、秋にはナス、ショウガ、カキ、ナシなど35種類とバリエーション豊富な漬物が記されているとのことです。

 

鎌倉~室町時代頃には、茶の湯や香道文化が発展し、お香の香りを楽しむ「聞香(もんこう)」の際に、香りの強い漬物を口にして嗅覚をリセットするため、漬物が「香の物」として盛んに食されるようになったとされています。

 

江戸時代には、料亭や飯屋の増加に伴い、江戸や京都、大阪に漬物専門店「香の物屋」が生まれ、大繁盛しました。

貯蔵目的だけでなく、短期間漬けて食べる当座漬けや一夜漬けなどが研究されたそうです。

ぬか漬けもこの頃出現し、漬け床が繰り返し使えることから一般家庭での漬物づくりが広まるのに一役買いました。

江戸時代には漬物のつくり方が載った書物も発行されています。

1836年に江戸の漬物問屋が著した「四季漬物塩嘉言」には、たくあん漬や京糸菜漬、タケノコ塩漬など64種類のつくり方が解説されており、その漬け方は現在とほとんど同じだそうです。

 

明治時代初期には、東京など都市部近郊の農家で、たくあん漬けや奈良漬けが副業としてつくられるようになりました。

 

大正~昭和時代には漬物製造業が発展しました。

戦後はライフスタイルの変化により、家庭で漬物をつくることが少なくなり、気軽に買える市販品が流通していきます。

1960年頃からは健康志向の高まりにより、減塩漬物なども見られるようになりました。

 

平成時代になると食生活の多様化が進み、お米の消費量の低下とともに、漬物の需要は縮小しているとされています。

しかし2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて日本の食文化が世界から注目され、また発酵漬物に含まれる植物性乳酸菌の健康効果が再認識されていることなどもあり、漬物の評価が見直されています。

 

 

<参考サイト>

にっぽん伝統食図鑑 漬物

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/bunrui/tsukemono.html

・日本独自のつけものの歴史をひもとく

https://tomarino.jp/categories/11/332

・漬物とは?日本の漬物の歴史 

https://tsukemonojiten.com/history/

 

 

 


 

③ 日本に600種類以上もある漬物、その分類について

 

日本には全国各地に多種多様な漬物があり、その種類は600以上とも言われています。

漬物の分類の仕方には、前述した発酵の有無の他にも、漬け床の種類や、漬け込む期間などいろいろあります。

期間による分類は、数時間~数日漬ける「浅漬け」と、最低でも1カ月以上漬ける「古漬け」に大別されます。

漬け床による分類について、代表的なものを調べてみました。

 

【塩漬け】

浸透圧により食材の水分が引き出され、微生物が利用できる水分が少なくなり、繁殖を抑えて保存性が高まる。

元々は野菜の保存を目的として塩漬けし、野菜に付着していた乳酸菌が働いて自然発酵したのが始まりと考えられる。

京都の上賀茂地区でつくられるカブの一種のすぐき菜を漬けたすぐき漬けや、ナスを赤シソと塩で漬けたしば漬けなど。

 

※写真はPhoto ACより「すぐき」

 

【ぬか漬け】

日本ならではの漬物で、米ぬかに塩や水を加えて発酵させたぬか床に漬けてつくる。

米ぬかは、米を精米する際に出る副産物で、豊富な栄養を含んでいる。

ぬか床は、表面に産膜酵母菌、真ん中に乳酸菌、底に酪酸菌が存在しており、バランスが崩れていずれかの菌が増えすぎると、味が落ちたり、いやな臭いが発生したりする。

定期的にかき混ぜ、酸素を好む産膜酵母菌を空気にふれる表面から底へ、酸素を嫌う酪酸菌を底から表面に動かすことで、繰り返し使うことができる。

たくあんもぬか漬けの一種。

 

※写真はPhoto ACより「ぬか漬け」

 

【麹漬け】

米麹に塩や砂糖を加えた漬け床でつくる。

塩で下漬けした大根を漬けた東京のべったら漬けや、塩・米麹・お米の割合がそのまま名前になった福島の三五八(さごはち)漬けなど。

 

※写真はPhoto ACより「べったら漬け」

 

【粕漬け】

日本酒をつくる際に出る酒粕やみりん粕を漬け床にしてつくる。

シロウリなどを塩漬けにして酒粕を繰り返し替えながら漬け込んだ奈良漬け、ワサビの葉や茎を漬け込んだワサビ漬けなど。

 

※写真はPhoto ACより「奈良漬け うりの粕漬け」

 

【醤油漬け】

塩蔵した野菜を脱塩・圧搾して、醤油系の調味液に漬けたもの。

福神漬け、松前漬けなど。

 

※写真はPhoto ACより「郷土料理 松前漬」

 

【味噌漬け】

塩蔵した野菜を脱塩・圧搾して、味噌に漬けたもの。

肉や魚の味噌漬けも多くつくられる。

 

※写真はPhoto ACより「信州みそ漬 漬物」

 

【酢漬け】

酢に漬け込んだもので、微生物は繁殖できないため、発酵は起こらないのが特徴。

ラッキョウ漬け、千枚漬けなど。

 

※写真はPhoto ACより「らっきょう」

 

【もろみ漬け】

醤油のもととなるもろみに漬け込んだもの。

 

【カラシ漬け】

カラシ、酒、麹などを混ぜ合わせたものに、塩漬けした野菜を漬け込んだもの。

 

※写真はPhoto ACより「小茄子のからし漬け」

 

<参考サイト>

・全国に600種類以上あると言われるつけものの種類

https://tomarino.jp/categories/11/344

・漬物にはどんな種類があるの?代表的な漬物や野菜別・地域別の漬物の種類を紹介

https://prezo.jp/column/6316

・漬物とは?歴史や特徴、種類について解説!アレンジレシピもご紹介

https://www.kurashiru.com/articles/8ba8f566-78a4-450d-b1c3-b80e5fbef9eb

・漬物の種類一覧!代表的なものからご当地漬物まで一挙紹介

https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/sweets/detail/001772.html

・ぬか床を育てよう

https://shop.kagome.co.jp/lp2/vegecomi/hitotema/2017/0113/index.html#:~:text=%E3%81%AC%E3%81%8B%E5%BA%8A%E3%81%AB%E3%81%AF%E4%B8%BB,%E3%81%AA%E7%B9%81%E6%AE%96%E3%82%92%E9%98%B2%E3%81%92%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

 

 


 

④ 個性豊かな日本の漬物をご紹介

 

数ある日本の漬物の中から、代表的なものや地域性のある特徴的なものをいくつか調べてみました。

 

【松前漬け】(北海道)

北海道の郷土料理。

乾燥させたスルメイカ、昆布、ニンジンなどを細切りにして、醤油、酒、砂糖などに漬け込んでつくる。

松前町は全国有数のスルメイカの生産地。

 

【ニンニク漬け】(青森県)

ニンニク生産量日本一の青森県では、ニンニクを丸ごと酢に漬け、さらに醤油に漬け込んだ「ニンニク漬け」が食べられている。

 

【いぶりがっこ】(秋田県)

東北など寒い地方では、冬期に貴重な食材を保存するため、昔から漬物づくりがさかんだった。

「いぶりがっこ」は、冬の間晴天が続かず屋外で大根を干すのが難しいため、室内のいろりに吊り下げて乾燥させていた。

薫煙の香りとぬか漬けの風味が合わさり独特の風味を持つ。

 

【金婚漬け】(岩手県)

青ウリの種の部分を取り除き、昆布で巻いたニンジンやゴボウなどを詰めて漬ける。

時間が経てば経つほど美味しくなることからその名が付いたと言われる。

 

【三五八漬け】(福島県)

塩、米麹、蒸したお米を混ぜた漬け床で漬けてつくる。

割合がそのまま名前になっている。

 

【野沢菜漬け・すんき漬け】(長野県)

「野沢菜漬け」は日本三大漬け菜の1つ。

「すんき漬け」は、海抜800メートルの高冷地にある木曽地域で、貴重品であった塩を使わず、赤カブの茎と根の付け根に含まれる乳酸菌を発酵させてつくられる。

 

【べったら漬け・福神漬け】(東京都)

「べったら漬け」は、ダイコンを塩漬けし、甘酒ベースのぬか床で漬け込んでつくる。

「福神漬け」は、ダイコン、ナス、カブ、ウリ、シソ、レンコン、なた豆など7種類の野菜を醤油などに漬け込んでつくる。

その名は七福神に由来する。

 

【てっぽう漬け】(千葉県)

ウリの中にシソで巻いた唐辛子を詰め込んで漬ける。

鉄砲に弾丸を詰める様子に似ていたことからその名が付いた。

 

【ひょうたん漬け】(神奈川県)
小型のヒョウタンをしば漬けにしたもの。

お祝いの席などに出される縁起物。

独特の食感がクセになる味わい。

 

【ワサビ漬け】(静岡県)

静岡県の特産であるワサビの茎や葉、根を刻んで、酒粕に漬けてつくる。

 

【守口漬け】(愛知県)

180センチメートルにもなるという細長い守口大根を、酒粕やみりん粕などでじっくり漬け込んでつくる。

 

【たくあん漬け】(三重県)

ダイコンを寒風の中に干し、米ぬかと塩、柿の皮、唐辛子などで約2年かけ乳酸発酵させてつくる。

たくあんの発祥については諸説あるが、三重県漬物協同組合では、2007年に「伊勢たくあん」を特許庁の地域団体商標として登録し、生産と消費拡大に努めている。

 

【しば漬け・すぐき漬け・千枚漬け】(京都府)

京都では、禅宗や茶の湯文化と共に漬物文化も発展してきた。

京都三大漬物と言われる「しば漬け」「すぐき漬け」「千枚漬け」は、すべて発酵漬物。

「しば漬け」は、ナスやミョウガ、キュウリを赤シソと塩で漬けてつくる。

「すぐき漬け」は、上賀茂地区の伝統野菜・すぐき菜を塩で漬け込み、暖かい室(むろ)で発酵させる。

「千枚漬け」は、聖護院かぶと昆布、塩を原料に乳酸発酵させた漬物だったが、現在は甘酢漬けが一般的。

 

【泉州水ナス漬け】(大阪府)

皮が薄く果肉に少し甘みがある泉州地域の伝統野菜・水ナスを、浅漬けやぬか漬けにしたもの。

 

【奈良漬け】(奈良県)

平城京の時代から伝わる伝統食。

白ウリ、キュウリ、ダイコン、セロリ、小型メロンなどを塩漬けして酒粕に何度も漬け替える。

 

【砂丘ラッキョウ漬け】(鳥取県)

色が白く、繊維が細かく、歯切れがよい鳥取砂丘のラッキョウを、塩で下漬けし甘酢に漬け込んでつくる。

 

【津田かぶ漬け】(島根県)

勾玉(まがたま)のような独特の形の津田かぶを、1週間寒風にさらし、天日干ししてぬか漬けにする。

 

【広島菜漬け】(広島県)

日本三大漬け菜の1つ。天日干ししてから水洗いして荒漬けし、大樽で本漬けにしてつくる。

 

【緋のかぶら漬け】(愛媛県)
カブに含まれるアントシアニンが、酢漬けにすることで、きれいな赤い色に染まる。

「緋」は、濃く鮮やかな赤の意味。

 

【からし菜漬け】(福岡県)

弥生時代に伝来したからし菜を使った漬物。

葉や茎の浅漬けはピリッとした辛みがある。

 

【高菜漬け】(熊本県)

温暖な気候の九州地方では、暑さによる腐敗を防ぐため古漬けにしたり、醤油や味噌、酒粕などに漬け込むものが多くみられる。

日本三大漬け菜の1つ「高菜漬け」は、高菜を塩にしっかりと漬け込んだ古漬け。

とんこつラーメンのトッピングとしても知られる。

 

【つぼ漬け・山川漬け・桜島漬け】(鹿児島県)

「つぼ漬け」は、干したダイコンをつぼに入れて塩漬けにし、それを刻んでさらに三杯酢に漬けてつくる。

「山川漬け」は、干したダイコンを杵でつき、つぼの中で塩漬けにし4カ月ほど発酵熟成させてつくる。

「桜島漬け」は、世界最大級と言われる桜島ダイコンを、長期間にわたり酒粕に漬け込む。

 

【島ラッキョウ漬け・パパイヤ漬け】(沖縄県)

「島ラッキョウ漬け」は、辛みと香りに特徴がある島ラッキョウを塩漬けにする。

「パパイヤ漬け」は、青パパイヤを塩漬けし、味噌や醬油などで漬け込んでつくる。

 

 

<参考サイト>

・[野菜の漬け物の種類]いくつ知ってた?全国のご当地漬け物

https://www.kagome.co.jp/vegeday/store/202007/10728.html

・北海道 松前漬(まつまえづけ)

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/matsumaezuke_hokkaido.html

・伊勢たくあん(いせたくあん)

https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/isetakuan

 

 

 


 

⑤ 世界中に広がっている!漬物文化

 

漬物を日常的に食べているのは日本だけではありません。

世界の国のいくつかについて、漬物事情を調べてみました。

 

【韓国】

日本でもおなじみの「キムチ」は、韓国の食卓に欠かせない漬物。

その種類は200以上とも言われる。

白菜などの野菜を、唐辛子やニンニク、果物、アミ(甲殻類の節足動物)、イカ、小魚などに漬け込んで乳酸発酵させてつくる。

そのまま食べたり、炒め物やチゲに入たりする。

キムチの他、味噌を使った「チャガチ」、塩漬けした「チャンヂ」、浅漬けの「コッチョリ」などもある。

 

 

【中国】

漬物をそのまま食べるだけでなく、蒸しものや炒め物、スープに入れたり、薬味にしたりする。

日本でもよく知られる「搾菜(ザーサイ)」は、カラシ菜の茎の部分を塩漬けにして香辛料に漬け込んだ四川省の漬物。

他にも、根菜類をショウガ、唐辛子、花椒などと塩漬けにした「泡菜(パオツァイ)」や、白菜を乳酸発酵させた「酸菜(サンツァイ)」、野菜、豆腐、卵黄、肉や魚などを味噌漬けした「醤菜(ジャンツァイ)」、野菜などを甘酢で漬けた「糖醋漬菜(タンツゥージーサァイ)」などがある。

 

※写真はPhoto ACより「ザーサイ」

 

【インド】

タマネギやニンジン、キュウリ、キャベツなどの野菜を、唐辛子や香辛料、酢、マスタードオイルで漬けた「アチャール」は、カレーに添えられることも多い。

マンゴー、レモン、ライム、グーズベリーなどの果物や、鶏肉や羊肉、魚のアチャールもある。

 

※写真はPhoto ACより「スパイスカレーとアチャールのプレート」

 

【ネパール】

塩を使わない漬物「グンドルック」は、からし菜や大根菜などの菜っ葉を軽く干してしんなりさせて刻み、つぼや瓶に詰めてお湯をひたひたになるまで入れ、日当たりのよい土中に埋め、酸味が出るまで1週間ほど発酵させ、天日干しで乾燥させてつくる。

水で戻して炒めたり、スープ、カレーに入れたりして食べる。

 

※写真はPhoto ACより「グンドゥルックアチャール」

 

【タイ】

代表的なものは、高菜の仲間の菜っ葉を塩漬けしてつくられる「パッカードーン」。

野沢菜の古漬けのような酸味があり、そのまま食べるより、卵と炒めたり、スープに混ぜたりなど調味料のように使われている。

 

【ミャンマー】

発酵させた茶葉を、豆類やトマト、キャベツ、唐辛子、ニンニクと合わせ、2週間~1年くらい漬け込む「ラペソー」。

ピーナッツや揚げニンニク、豆、干エビ、ゴマなどと混ぜてお茶受けとして食べたり、ごはんのおかずにしたり、他の野菜と混ぜてサラダとして食べたりする。

他にも、青マンゴーを米のとぎ汁と薄塩で乳酸発酵させた「レイエチェ」、タケノコを塩漬けにした「ミエチェ」、モヤシを塩漬けにした「ペーピンパウチェ」などがある。

 

【ベトナム】

小ナスの塩漬け「カーファオムオイ」がよく食べられている。

小ナスのヘタを取り塩水に漬けた後、ニンニク、ショウガ、唐辛子などの香辛料と一緒に、水、塩、砂糖少々を混ぜて沸騰させ冷ました漬け液に、2~3日漬け込む。

漬け液に、魚でできた調味料・ヌクマムを入れることもある。

 

【フィリピン】

パパイヤを細切りにし、塩水に一度漬けて搾り、ニンジンやタマネギなどを細切りにしたものやショウガ、ニンニクと一緒に甘酢に漬け込む「アチャラ」。

チャーハンや肉料理に添えて食べる。

 

【欧米全域】

「ピクルス」は、英語で漬物の意味。

そのつくり方には酢漬けと自然発酵の2種類がある。

肉やチーズ、油っこい料理などの口直し的な意味合いが求められたからか、酸味がかなり強いのが特徴。

 

 

【ドイツ】

キャベツを塩漬けや酢漬けにした「ザワークラウト」は、ソーセージなどの付け合わせに食べられることが多い。

ゆでてから冷やしてサラダにしたり、バターや油で炒めて肉料理の添え物にしたり、シチューや煮込み料理の材料にしたりもする。

 

※写真はPhoto ACより「ソーセージとザワークラウト」

 

【イタリア】

花のつぼみであるケッパーを3カ月ほど塩漬けして苦味を抜き、塩抜きして酢に漬け込み乳酸発酵させてつくる「ケッパーの塩漬け」は、薬味や調味料として使われる。

 

【スペイン】

スペイン北部で栽培される青唐辛子を酢漬けにした「ギンディージャ」は、辛さは控えめで、シシトウに似たマイルドな辛味と酸味が特徴。

スペインの代表的な漬物で、バルのつまみの定番。

 

【イギリス】

カリフラワーやインゲン豆、タマネギ、キュウリなどの野菜を一口大に切って塩水に漬け、酢、砂糖、小麦粉、マスタード、ターメリックなどの香辛料を混ぜて、とろみがつくまで煮たてた漬け液に1カ月以上漬け込む、伝統的なピクルス「ピカリリ」。

ソーセージ、ハム、ベーコン、卵、チーズやサンドイッチなどの付け合わせとして食べられる。

 

【トルコ】

酸味のある漬物「トゥルシュ」。塩漬けを乳酸発酵させてつくるタイプや、酢やレモン汁を使ってつくる酢漬けタイプなどつくり方は様々で、食材もキャベツ、キュウリ、プチトマトなどの野菜や、メロン、アンズなどの果物、唐辛子、卵、チーズなど幅広い。

肉料理に合わせたり、インゲン豆のトゥルシュをタマネギと一緒に炒めて食べたりする。

 

【モロッコ】

モロッコ料理のタジンやクスクス、焼き物料理にも使われる、レモンを塩漬けにした「プリザーブドレモン」は、家庭で頻繁に手づくりされている。

そのまま食べる漬物ではなく、調味料として使われる。

 

【メキシコ】

メキシコを代表する青唐辛子「ハラペーニョ」のピクルスは、ハラペーニョをそのまま、または薄くスライスして、酢、砂糖、香辛料を混ぜて煮たてた液に漬けこんでつくる。

そのまま食べたり、サンドイッチ、タコス、ホットドッグなどのトッピングにしたりする。

 

※写真はPhoto ACより「韓国の市場(キムチ売り場)」

 

<参考サイト>

・漬物の種類一覧│定番から世界各地のローカル漬物まで紹介

https://www.shufoo.net/plus/food_recipes/462

・発酵食.com 漬物の話

https://hakkousyoku.com/tsukemono/

・世界の漬物の種類を紹介

https://tsukemonojiten.com/worldpickles/

・愉快な世界の漬物たち

https://www.kyuchan.co.jp/syokuiku/world/index.html

 

 

 


 

⑥ 家庭でチャレンジ!漬物をつくってみませんか?

 

現代の日本では様々な漬物を手軽に買うことができますが、ぬか漬けなど手づくりの良さも見直されています。

好みの食材で世界に1つしかない我が家の味をつくれる、漬物のつくり方をいくつか調べてみました。

 

【ぬか漬け】

①材料を、味噌ぐらいのかたさになるように混ぜる。

ぬか床の基本材料は、ぬか・塩・水。

さらにうま味を増すには、昆布やカツオ節、干しシイタケなどを加える。

また、唐辛子や山椒の実などを加えると香りづけや腐敗防止になる。

②発酵を促すために、捨て漬け野菜として水分の多いダイコンやキャベツなどを入れる。

③空気を抜くように表面を押さえてふたをする。

④最初の10日間は1日2回、次の10〜20日間は1日1回混ぜる。

混ぜることで菌のバランスを整え、いやな臭いを防ぐ。

⑤4〜5日に1度、捨て漬け野菜を替える。

⑥20日ほど経ち、発酵の匂いが漂いはじめたら、ぬか床のできあがり。

⑦野菜の下準備をする。

定番は、ニンジン、ダイコン、キュウリ、カブ、ナス、白菜、キャベツなど。

ニンジンやダイコンは皮をむく。

早く仕上げたい場合は、カットする。

軽く塩もみしておくと色合いが良くなり、味も入りやすくなる。水気を拭き取る。

⑧野菜をぬか床に漬ける。

野菜が空気に触れないように埋め込むのがコツ。

常温で半日~1日、冷蔵保存で2~3日が食べごろの目安。

⑨表面のぬかを軽く洗い流して、できあがり。

 

【キムチ】

①白菜は根元の軸を切り離さず、ビニル袋に入れ、たっぷりの塩でもんで水分を抜く。

②唐辛子、甘みを加えるすりおろしリンゴ、旨みを加える昆布や塩麴など、ショウガ、ニンニクを混ぜてキムチペーストをつくる。

③白菜を軽く水洗いして、水気をしっかり絞る。

④ビニル手袋をして、葉の一枚一枚にキムチペーストをまんべんなく塗る。

⑤ビニル袋に戻し入れ、しっかりもんでから口をしっかり縛り、冷蔵庫で2時間ほど置いて、できあがり。

 

【ピクルス】

①ニンジン、セロリ、キュウリを保存容器の高さに合わせて切る。タマネギはくし切りにし、ミニトマトは爪楊枝で数カ所穴をあける。

②保存容器に、酢、砂糖、塩、赤唐辛子、ローリエと、①を入れて、冷蔵庫で半日ほどおいて、できあがり。

 

 

ところで、大量生産にはない味わいのある手づくり漬物を旅先などで買う楽しみが、今や消滅の危機に瀕しているのをご存じでしょうか。

これまでは都道府県へ条例に基づく届け出をすれば漬物製造が認められたため、個人農家さんが地元の野菜を使って手づくりした漬物を、道の駅や農産物直売所などで販売することができました。

2024年6月から、食品衛生法の改正により、漬物製造が保健所による許可制になりました。

2012年に発生した白菜の浅漬けによる集団食中毒を背景に、国際的な食品衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」の考え方を取り入れたものとなっています。

漬物製造の営業許可を得るためには、HACCPに沿った衛生管理に適合する設備が必要となるため、自宅で漬物をつくる農家など小規模な業者は資金面で困難を抱え、また高齢化もあり廃業を選ぶケースが多く見られるそうです。

漬物メーカーでつくる業界団体の全日本漬物協同組合連合会によると、かつて1000程度あった加盟社が、現状約700まで減っているとのことです。

 

<参考サイト>

・初めての「ぬか床」作り。基本の作り方とお役立ち情報

https://kinarino.jp/cat4/1454

・漬け込み2時間!「自家製キムチ」の作り方。 意外なうまみ食材とは?【プロのレシピ】

https://mi-journey.jp/foodie/31981/

・ピクルスのレシピ・作り方

https://www.mizkan.co.jp/ouchirecipe/recipe/?menu_id=1071

・名物お漬物が消える日 改正食品衛生法の経過措置が5月末で終了

https://agrijournal.jp/6industry/77281/

・道の駅から漬物が消える?食品衛生法改正、猶予期間が5月末終了へ 食文化継承に危機感

https://www.sankei.com/article/20240424-25FHSGNWFBFUTOPP3GOCTYJRSQ/

・漬物製造許可制に 経過措置が終了 廃業選ぶ農家も

https://www.agrinews.co.jp/news/index/236220

 

 

 


 

⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》10月10日解禁!!新漬けオリーブ 編

 

小豆島のお漬物と言えば…もちろんいろいろありますが、今はやはり「新漬けオリーブ」!

小豆島ではまもなく、新漬けオリーブの解禁日を迎えます。

解禁日に向けて、オリーブ農家さんやオリーブ会社さんが一粒一粒手摘みして、病気や傷などで傷んだ実を取り除き、丁寧にアク抜きをして塩漬けにされます。

オリーブ独特のオイリーな味わいに、絶妙な塩梅の塩加減がクセになる、今だけの味覚です。

ヨーロッパで見られるピクルスとは違い、クセが全く無く、「海外のものは苦手だな」という方にも美味しく召し上がっていただけると思います。

 

新漬けオリーブの開発は、大変苦労されたとお聞きします。

その苦労話や秘話については「道の駅小豆島オリーブ公園」にある「オリーブ記念館」で紹介されているので、小豆島にお越しの際はぜひご覧ください。

また、10/20(日)〜11/30(土)の期間中、「道の駅小豆島オリーブ公園」で『オリーブ収穫祭』が開催されますよ。

10/20(日)の『大収穫祭』では、新漬けオリーブの食べ比べや他にもいろいろとイベントがあるそうですので、ぜひお楽しみいただければ。

 

石井製麺所では、この貴重な季節の味わい「新漬けオリーブ」を年末にかけてギフト品として、素麺や他の小豆島特産品と一緒にご購入いただけるよう準備をしています。

こちらもぜひお楽しみにお待ちください。

 

 

 

 

《石井製麺所公式ホームページ》 https://141seimen.com/business/

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。

 

石井製麺所通信

2024年9月13日 【Vol.43】栄養成分の機能性について/タンパク質

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.43

栄養成分の機能性について/タンパク質

 

 

 

 

9月に入ってもまだまだ暑い日が続いていますね。

石井製麺所では、11月からが新年度になるのですが、9月、10月は端境期ということもあって、発送作業よりも製造に注力する時期です。

ただ、暑さが厳しく、まだまだスムーズな製麺作業ができる気候ではありませんね。

 

先日、製麺をお手伝いいただく方や石井家のメンバーで、11月以降の製麺のスケジュールなどについて打ち合わせをおこないました。

製麺をお手伝いいただく方は、超がつくほどのベテランで父と同じ歳の方です。

色々な製麺所で勤められた経験もある方で、素麺のお話をするととても楽しそうにお話しくださいます。

素麺がお好きなんだな〜と感じます。

 

そのお話しの中で、「製麺所で働く若い人がほとんどいない」という話になりました。

確かに、私三代目が石井製麺所の代表になってからは、「廃業した」というお話は毎年のように複数件、耳にしますが、若い方が製麺所を継いだ(働き始めた)というお話はほとんど聞きません。

夜中から働き始め、その日の夕方…遅い場合は夜まで掛かってしまう製麺作業。

今で言う「ブラック」な環境なのかもしれませんし、なかなかそんな大変な仕事を選ぶ方も少ないのではないでしょうか。

なんといっても素麺づくりは新規参入がしにくい事業だと感じます。

私もそうですが、家業が素麺をやっていてその跡取りとなるというのが今では主流ですが、昔は製麺所に修業に行ってその後、独立する流れだったそうです。

産地としての製麺所を増やすのであれば、生産者をまずは増やさなければいけないと考えますが、その増やす方法がほとんどないのが現状です。

この際、手延べ素麺の産地を横断して、「手延べ素麺の学校」をつくって新しい生産者を育てる仕組みをつくってはどうかなと考える今日この頃です。

 

幸い?私の同級生に家業の製麺所を引き継いだ方が2名いらっしゃったことが、とても心強く感じています。

ライバルが増えるのでなく、産地を支える仲閒がもっともっと増えると嬉しいなと思っています。

若い世代のアイデアや着眼点で、小豆島らしい手延べ素麺をご提供できるような、そんな時を楽しみにこれからも頑張っていきます。

 

さて、今回のブログでは、これまた知っていそうでよくわからない「タンパク質」について調べてみました。

タンパク質はアミノ酸の基でもありますし、栄養としては欠かせないものです。

ですが、アレルギーを起こす物質もまたタンパク質であったりします。

タンパク質って良い者?悪者?なのか、整理してみたいと思います。

 

手延べ素麺の美味しさの根幹である「グルテン」もまたタンパク質です。

そのタンパク質の性質を生かし切ってこそ美味しい手延べ素麺になると思います。

ですので、今回はちょっと幅広く「タンパク質」について調べてみましたので、今回も最後までお楽しみいただければと思います。

 

写真は、まだ家業を継ぎ、製麺所で父母の手伝いを始めたばかりの頃のものです。

なんとなく手つきがまだまだな感じがします(笑)。

 

【目次】

① タンパク質はアミノ酸でできている

② 良質なタンパク質の指標は「アミノ酸スコア」

③ 動物性タンパク質と植物性タンパク質とは?

④ タンパク質不⾜は体の機能低下につながる

⑤ ⼿延べ素麵の美味しさはタンパク質のグルテンにある

⑥ ⾷物アレルギーとタンパク質の関係

⑦ 《美味しい手延べ素麺》小豆島手延べ素麺 編

 

 


 

① タンパク質はアミノ酸でできている

 

タンパク質は、炭水化物・脂質と並んで三大栄養素の1つとされ、私たちが生きていく上で必要不可欠なものです。

「タンパク質」は英語で「protein(プロテイン)」と言い、その語源は古代ギリシア語で「第一なるもの、主要なもの」を意味する「Proteios(プロティオス)」だそうです。

古代より私たちにとって重要な栄養素であると認識されていたことが分かります。

 

「タンパク質」の表記について、栄養成分表示では「たんぱく質」「蛋白質」「たん白質」「タンパク」の表示も可能とされています。

文部科学省の学術用語では「タンパク質」と書き、厚生労働省では第六次改定日本人の栄養所要量などで「たんぱく質」としており、新聞用語などでは「たんぱく質」が多く使われているようです。

 

タンパク質は人体の重要な構成成分の1つで、体をつくる材料として必要な栄養素です。

人体は、水分を除くとその主成分がいずれもタンパク質で、男性の体の16〜18%、女性の体の14〜16%を占めているそうです。

人間の体内のタンパク質の種類は10万以上あり、それぞれが決まった固有の機能を持っているとのことです。

 

タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子化合物で、食事から摂取したタンパク質はそのままでは体に吸収できないため、消化酵素により分解されてアミノ酸やアミノ酸が数個つながったペプチドになります。

そして体に吸収され、筋肉や臓器、肌、髪、爪などの材料として使われます。

また、ホルモンや代謝酵素、免疫物質などになってさまざまな働きをしたり、エネルギー源として使われたりします。

 

人体のタンパク質は20種類のアミノ酸によって構成されます。

そのうち11種類は体内でつくり出すことができますが、9種類のアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれ、体内でつくることができません。

また体のタンパク質は合成と分解が繰り返されており、その釣り合いを取るためにも、食事からタンパク質を補うことが必要です。

 

 

<参考サイト>

・「たんぱく質」って、何だろう?

https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/know_milk/02/

・タンパク質について

https://humans-in-space.jaxa.jp/protein/public/about/what.html

・表示に関する疑問に回答食品表示Q&A

https://hyouji.maru-sin.net/qa/2021/01/30/1452/

・レファレンス事例詳細

https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000030260&page=ref_view#:~:text=%E3%80%8C%E6%96%87%E9%83%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9C%81%E3%81%AE%E5%AD%A6%E8%A1%93,%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%89%E3%81%A8%E8%A1%A8%E8%A8%98%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

・タンパク質とは【タンパク質の種類、機能、働きなどを解説】

https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=113&category=health

・タンパク質とは?専門的な内容をできるかぎりわかりやすく解説

https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=252&category=child

 

 

 


 

② 良質なタンパク質の指標は「アミノ酸スコア」

 

「良質のタンパク質」という言葉を聞いたことがあると思いますが、具体的にはどのようなタンパク質が良質と言えるのでしょうか。

体の中で必要なタンパク質を合成するためには、体内でつくれない必須アミノ酸を食品から充分に摂取しなければなりません。

そのため、必須アミノ酸をバランスよく含む食品が、良質なタンパク質を含む食品ということになります。

その指標になるのが、食品に含まれる9種類の必須アミノ酸の量をそれぞれ0~100で数値化し、そのバランスで評価する「アミノ酸スコア」です。

その食品の中で最も低いアミノ酸の値がアミノ酸スコアとなり、例えば9種類すべてが100に達している食品は「アミノ酸スコア100」、1種類だけ80なら残りの8種類がすべて100でも「アミノ酸スコア80」となります。

アミノ酸スコアの高い主な食品には、肉や魚介類、卵、豆類、大豆製品、牛乳・乳製品などがあります。

<参考サイト>

・アミノ酸スコアとは?

https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=6&category=muscle

・たんぱく質はなぜ必要?効果やメリット、 摂取量の目安を紹介

https://www.kikkoman.co.jp/homecook/tsushin/tips0031/

 

 

 


 

③ 動物性タンパク質と植物性タンパク質とは?

 

タンパク質は、動物性タンパク質と植物性タンパク質に分けられます。

肉や魚、卵、牛乳・乳製品などに含まれるのは動物性タンパク質で、豆類、大豆製品、穀物類、野菜などに含まれるのが植物性タンパク質です。

 

動物性タンパク質は必須アミノ酸を豊富に含みます。

特に牛乳・乳製品に含まれるカゼインやホエイプロテインは、必須アミノ酸のすべてを豊富に含む良質のタンパク質です。

またカゼインは柔軟な分子構造となっているため、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による消化吸収性が極めて高いのが特徴とのことです。

動物性タンパク質は植物性タンパク質と比べて100gあたりの含有量が多く摂取しやすい一方で、脂質を含むものも多く、特に肉類は飽和脂肪酸が多いため、摂りすぎるとコレステロール値の上昇や腸内環境悪化につながるリスクもあるそうです。

 

植物性タンパク質は、食材中のタンパク質含有量がそれほど高くなく、消化吸収率が動物性タンパク質に比べて低いものが多いそうです。

また、豆類に含まれるタンパク質には必須アミノ酸は豊富に含まれていますが、小麦や米、野菜類に含まれるタンパク質では、いくつかの必須アミノ酸の含有量は低いため、アミノ酸バランスには優れません。

一方で、脂質の少ないものが多くカロリーを抑えやすい、体調を整えるための食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれるものが多い、などのメリットがあります。

 

様々な食材をバランスよく食べることが健康づくりに役立つと言えます。

 

 

 

 


 

④ タンパク質不⾜は体の機能低下につながる

 

「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、タンパク質推奨量は、18~64歳の男性で1日65g、女性で50gとされています。

平成29年度の「国民健康・栄養調査」によると、タンパク質の摂取目標量はほぼ達成できているそうです。

健康な状態では、体のタンパク質の合成と分解の量が釣り合っています。

しかし、過度なダイエットや不摂生、加齢などにより食事量が少なかったり栄養バランスが偏ったりするとタンパク質が不足し、合成と分解のバランスが崩れてしまいます。

これにより免疫機能が低下して抵抗力が弱くなり、さまざまな病気にかかりやすくなります。

また体重の約4割の重さを占める筋肉は、水分を除くと約8割がタンパク質でできているため、タンパク質が不足すると筋力の低下にもつながります。

タンパク質不足を防ぐには、まず自分の体格や活動量に応じた必要量を把握しておくことが大切です。

またタンパク質を一度にたくさん摂取しても、体内で使い切れなかった分は脂肪となってしまうため、3食に分けてこまめに摂取する必要があります。

目安として、「1回の食事で手のひらサイズのタンパク質のおかず」を食べることが推奨されているとのことです。

間食に乳製品などでタンパク質を補うのも方法の1つだそうです。

 

 

<参考サイト>

・三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html

・あなたは大丈夫?今すぐ気を付けたい「タンパク質不足」

https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=100&category=health

 

 

 


 

⑤ ⼿延べ素麵の美味しさはタンパク質のグルテンにある

 

素麺は主成分が小麦粉で、タンパク質は100gあたり約8.0gとあまり多くはありません。

ですが、美味しい手延べ素麺づくりにはタンパク質が重要な役割を果たしています。

 

小麦粉独自のタンパク質であるグルテンは、こねたり練ったりすることでできる繊維状の組織。

小麦粉を練ってつくった生地を、のばして重ねて、のばして重ねて…を繰り返すことで、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、まるで何層にも重なった地層のように組織されます。

これを“より”をかけながら細くのばすことで断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが特徴の手延べ素麺になります。

グルテンは日数の経過とともに劣化し、もろくかたくなって弾力が失われます。

また、ゆでる時の水分吸収率が低くなり、食感がかたくなります。

素麺では、この変化は「厄(やく)」または「厄現象」と呼ばれ、食感の変化がシャキシャキとした歯切れの良さとして好まれました。

梅雨期の高温多湿期を一回迎え越したものを「新物」、二年目以降のものを「古物(ひねもの)」と呼び、古いものほど貴重品とされている産地もあります。

しかしやはり本来の風味や旨みは失われ、グルテン独自の本来のコシは失われるという側面もあります。

長期間の保存は酸化のリスクがあるため、ご家庭では早めにお召し上がりいただくことをおすすめします。

 

 

<参考サイト>

・手延べ乾めんの疑問?について

https://www.shimabara-soumen.com/article/14646279.html

・手延べそうめんの「厄(やく)」とは

https://www.shimabara-soumen.com/14662419348225

 

 

 


 

⑥ ⾷物アレルギーとタンパク質の関係

 

子どもから大人まで幅広い世代でみられる食物アレルギーは、特定の食べ物を摂取したり触れたりすることにより、免疫システムが過敏に働いて、体に不利益な症状が現れる疾患です。

乳幼児の5~10%、学童期以降の1~3%が食物アレルギーを持っていると考えられています。

子どもの頃の食物アレルギーは、成長に伴い徐々に原因食物が食べられるようになる(耐性獲得)ことが多いそうです。

一方、大人の食物アレルギーは、耐性獲得しにくく、原因食品を継続的に除去する必要がある場合が多いと考えられています。

 

アレルギーを引き起こす物質であるアレルゲンは、主に食物に含まれるタンパク質です。

血液中には、体内に侵入したアレルゲンに対して働きかけ、身体を守る機能を持つ「IgE抗体(免疫グロブリンE)」と呼ばれるタンパク質があります。

アレルギー体質の人は、血液中に大量のIgE抗体が存在しており、食物を摂取して腸管から成分が吸収される際に、体が特定のタンパク質を異物と認識すると、血中のIgE抗体が反応してアレルギー症状が出るそうです。

例えば卵アレルギーの人は卵のタンパク質に反応するIgE抗体を、牛乳アレルギーの人は牛乳のタンパク質に反応するIgE抗体を持っており、卵アレルギーの人が牛乳で発症しないのは、その人のIgE抗体が卵だけに反応するからだそうです。

 

タンパク質は、アミノ酸が鎖状につながり、らせん状やシート状に折り畳まれた構造をしており、特定のアレルゲンに結合する「特異的IgE抗体」は、この構造の決まった場所に結合するそうです。

加熱や酸、酵素によってタンパク質の形が変化(変性)したり、消化酵素の働きでアミノ酸のつながりが切断(消化)されたりして、特異的IgE抗体が結合する場所の形が変化すると、IgE抗体が結合しにくくなり、アレルギー症状が出にくくなります。

これを「低アレルゲン化」と言うそうです。

 

 

<参考サイト>

・食物アレルギー

https://allergyportal.jp/knowledge/food/

・食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする?

https://www.ajinomoto.co.jp/products/anzen/know/f_allergy_01.html

・食物アレルギーとは

https://www.foodallergy.jp/tebiki/about/

 

 

 


 

⑦ 《美味しい手延べ素麺》小豆島手延べ素麺 編

 

石井製麺所を代表する「小豆島手延べ素麺」のご紹介です。

いわゆる普通の「白い素麺」です。

太さが3種類あり、「手延べ素麺」として販売しているものは「細麺(石井製麺所ではスタンダードと呼んでいます)」になります。

またそれよりも太い麺「太麺」、手延べ素麺ならではと言える「極細麺」をご用意しています。

 

秋を経て寒さが厳しくなるシーズンには「太麺」が人気となります。

「太麺」は、冷やし素麺としてももちろんですが、やはり温かいお出汁と一緒に召しがっていただくとその美味しさがさらに際立つと思います。

手延べ素麺ならではのコシとツルンとしたのど越しに加え、「太麺」ならではのモチモチ感が大変人気です。

 

カツオと昆布をベースに醤油で味付けたお出汁でも美味しいですし、味噌汁のように味噌の風味香る汁と一緒に召し上がっていただくのもおすすめです。

太麺ですので、じっくりと長い時間をかけて乾燥しています。賞味期限は1年と長いので、備蓄食にもいかがでしょうか。

「困ったときの“素麺”頼み」と言われるように皆さまの秋冬の食卓で活躍できると幸いです。

 

 

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in

 

《手延べ素麺》 https://141seimen.thebase.in/categories/2325435

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。