石井製麺所通信
2024年9月22日 【Vol.44】麺究者への道/漬物について研究してみる
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.44
麺究者への道/漬物について研究してみる
今回のブログは、「漬物」をテーマにしてみました。
「漬物」?
素麺には全然関係ないよね?薬味として使うの?というお声が聞こえてきそうですが、そうです、全く関係がありません(笑)。
ですが、現在勉強中の発酵食品の代表格ですので、しっかりと調べてみたいと思います。
ただ調べてみると、漬物は全てが発酵食品ではないそうです。
当たり前のような気がしますが、目からウロコの事実でした。
皆さんは普段、漬物を召し上がられますか?
私は普段食べることは少ないのですが、カレーの時に福神漬けや焼肉の時にキムチなどを一緒に食べるくらいでしょうか?
あとは、おにぎりの具材の梅干しや、お土産物などでお漬物をいただいた際には夕食時に並ぶことはあるなという程度の記憶です。
ですが、飲食店や旅先で美味しいぬか漬けを食べたときにはどことなく「懐かしいな」と感じるのは、日本人のDNAなのでしょうか。
漬物とはそもそもが、長期保存が可能な食品としての加工品ですよね。
長期の保存のためにさまざまな工夫が施されて、乳酸発酵させる手法や酢や塩に漬けることで雑菌の繁殖を抑えるなど、自然の恵みを活用した人の叡智の結集だと言えるのではないでしょうか。
それくらいよくできていますし、これは日本だけに限ったことでなく、世界中でも見られるものです。
その進化の形としては、国や食文化、気候などによりさまざまなものがあるようですが、調べてみるとそれもまた大変興味深いものです。
近年は漬物の塩分が敬遠され、お米の食習慣も減ってきたことから、漬物の需要も減っているそうです。
昔は、各家庭でも漬物がつくられていましたが、石井家でもそうですが、今はなかなか見られないようになったのではないでしょうか。
また、農家さんが自家製の野菜などを使って漬物を製造販売されていましたが、現在は製造に関する決まりが厳しくなり、手づくりの味が減ってきてもいるそうです。
時代の流れかも知れませんが、寂しく感じてしまいます。
これからは漬物もしっかりと味わって食べていきたいと思わせる、きっかけとなりました。
「発酵とは、なに?」という原点に立ち返るテーマにもなったと思いますので、漬物好きな方もそうでなかった方にも、ぜひご覧いただければ幸いです。
お気づきの点などあれば、お話をお聞かせいただけると嬉しいです。
【目次】
① 発酵⾷品と⾔えば漬物!?漬物とは
② 保存食から茶の湯、そして健康食へ!漬物の歴史
③ 日本に600種類以上もある漬物、その分類について
④ 個性豊かな日本の漬物をご紹介
⑤ 世界中に広がっている!漬物文化
⑥ 家庭でチャレンジ!漬物をつくってみませんか?
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》10月10日解禁!!新漬けオリーブ 編
① 発酵⾷品と⾔えば漬物!?漬物とは
漬物とは、野菜などの食材を、塩や醤油、味噌、酢、麹、米ぬか、酒粕などに漬け込むことで、風味と保存性を高めた食品です。
水分が抜けるため、旨みや栄養分が凝縮されています。
肉や魚を漬けたものも広義では漬物に入りますが、一般的には野菜を漬けたものと認知されています。
漬物と言えば発酵食品、というイメージがありますが、実はつくる過程で発酵させる「発酵漬物」と、発酵させない「無発酵漬物」の2つに大きく分けられます。
ぬか漬けやたくあん、しば漬けなどの発酵漬物は、野菜にもともと付着している乳酸菌が、野菜の糖類などを分解して乳酸を生成することにより野菜のpHが低下することで酸性になります。
そのため酸味が出るとともに、酸に弱い腐敗菌の働きが抑えられ、保存性が高まります。
また空気中などから付着した酵母も増殖することにより香気成分がつくられ、漬物特有の風味が生まれます。
塩分を含む漬け床に野菜を漬け込むことにより、野菜から出た水の中で乳酸菌が育成し、その働きにより完成するそうです。
漬物に関与する乳酸菌は高い塩分濃度でも生育することができ、また酸素がない環境を好む(嫌気性)ため、食材を塩で漬けて重石をして空気を遮断すると、他の雑菌は死滅し、乳酸菌だけが増殖するのだそうです。
浅漬けや甘酢漬け、梅干し、福神漬けなどは無発酵漬物です。
数時間だけ塩に漬ける浅漬けは、つくる過程で微生物が関与していません。
甘酢漬けは、酢に含まれる酸により、微生物が生育できません。
梅干しは一般的には梅と塩だけでつくられる無発酵漬物ですが、塩分濃度が高く、またクエン酸などの成分が強い殺菌作用を持っており微生物が生育できないため、長期間保存することができるとのことです。
ちなみに、麹漬けや酒粕漬け、味噌漬けといった、漬け床自体に発酵食品を使った漬物は、食材を直接的に発酵させるわけではないため、一般的に無発酵漬物に分類されるそうです。
ですが発酵由来の風味が食材に移ることで、味わい深い漬物になります。
<参考サイト>
・漬物のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/hakkofood/04.html
・発酵漬物と無発酵漬物について。
https://tomarino.jp/tags/27/311
・【やさしい発酵図鑑vol.13】漬物の種類と違いを解説! 自宅でできる「三五八漬け」レシピも
https://www.amanofoods.jp/regular/mano/22724/
② 保存食から茶の湯、そして健康食へ!漬物の歴史
日本では古くから塩水を使って食品を塩漬けにして保存する工夫がされてきました。
縄文時代には野菜の皮を塩漬けにしていたと考えられています。
世界最古の漬物の製造方法に関する文献とされるのが、6世紀中頃の中国最古の農業書「斉民要術(せいみんようじゅつ)」で、野菜の塩漬け方法などが見られるそうです。
日本では、奈良時代の天平年間の木簡に、ウリや青菜の塩漬けについて記されていました。
この頃大陸から文化が伝わり、酒や味噌、醤油などの調味料がつくられるようになったことから、塩の他、酒粕やもろみなどに野菜を付けて保存する方法が登場します。
奈良時代には主に貴族や寺院の僧侶の食用として、野菜の他にモモなどの果物も塩漬けされていたそうです。
漬物は庶民にはあまり食べられない高級品だったようです。
平安時代には庶民にも広まっていきます。
「延喜式」には、酢漬け、醤(ひしお)漬け、粕漬け、また現代のたくあんの原形ともみられる「須々保利(すずぼり)」などの記録が残っています。
春にはワラビ、フキ、ウリなど14種類、秋にはナス、ショウガ、カキ、ナシなど35種類とバリエーション豊富な漬物が記されているとのことです。
鎌倉~室町時代頃には、茶の湯や香道文化が発展し、お香の香りを楽しむ「聞香(もんこう)」の際に、香りの強い漬物を口にして嗅覚をリセットするため、漬物が「香の物」として盛んに食されるようになったとされています。
江戸時代には、料亭や飯屋の増加に伴い、江戸や京都、大阪に漬物専門店「香の物屋」が生まれ、大繁盛しました。
貯蔵目的だけでなく、短期間漬けて食べる当座漬けや一夜漬けなどが研究されたそうです。
ぬか漬けもこの頃出現し、漬け床が繰り返し使えることから一般家庭での漬物づくりが広まるのに一役買いました。
江戸時代には漬物のつくり方が載った書物も発行されています。
1836年に江戸の漬物問屋が著した「四季漬物塩嘉言」には、たくあん漬や京糸菜漬、タケノコ塩漬など64種類のつくり方が解説されており、その漬け方は現在とほとんど同じだそうです。
明治時代初期には、東京など都市部近郊の農家で、たくあん漬けや奈良漬けが副業としてつくられるようになりました。
大正~昭和時代には漬物製造業が発展しました。
戦後はライフスタイルの変化により、家庭で漬物をつくることが少なくなり、気軽に買える市販品が流通していきます。
1960年頃からは健康志向の高まりにより、減塩漬物なども見られるようになりました。
平成時代になると食生活の多様化が進み、お米の消費量の低下とともに、漬物の需要は縮小しているとされています。
しかし2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて日本の食文化が世界から注目され、また発酵漬物に含まれる植物性乳酸菌の健康効果が再認識されていることなどもあり、漬物の評価が見直されています。
<参考サイト>
・にっぽん伝統食図鑑 漬物
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/bunrui/tsukemono.html
・日本独自のつけものの歴史をひもとく
https://tomarino.jp/categories/11/332
・漬物とは?日本の漬物の歴史
https://tsukemonojiten.com/history/
③ 日本に600種類以上もある漬物、その分類について
日本には全国各地に多種多様な漬物があり、その種類は600以上とも言われています。
漬物の分類の仕方には、前述した発酵の有無の他にも、漬け床の種類や、漬け込む期間などいろいろあります。
期間による分類は、数時間~数日漬ける「浅漬け」と、最低でも1カ月以上漬ける「古漬け」に大別されます。
漬け床による分類について、代表的なものを調べてみました。
【塩漬け】
浸透圧により食材の水分が引き出され、微生物が利用できる水分が少なくなり、繁殖を抑えて保存性が高まる。
元々は野菜の保存を目的として塩漬けし、野菜に付着していた乳酸菌が働いて自然発酵したのが始まりと考えられる。
京都の上賀茂地区でつくられるカブの一種のすぐき菜を漬けたすぐき漬けや、ナスを赤シソと塩で漬けたしば漬けなど。
※写真はPhoto ACより「すぐき」
【ぬか漬け】
日本ならではの漬物で、米ぬかに塩や水を加えて発酵させたぬか床に漬けてつくる。
米ぬかは、米を精米する際に出る副産物で、豊富な栄養を含んでいる。
ぬか床は、表面に産膜酵母菌、真ん中に乳酸菌、底に酪酸菌が存在しており、バランスが崩れていずれかの菌が増えすぎると、味が落ちたり、いやな臭いが発生したりする。
定期的にかき混ぜ、酸素を好む産膜酵母菌を空気にふれる表面から底へ、酸素を嫌う酪酸菌を底から表面に動かすことで、繰り返し使うことができる。
たくあんもぬか漬けの一種。
※写真はPhoto ACより「ぬか漬け」
【麹漬け】
米麹に塩や砂糖を加えた漬け床でつくる。
塩で下漬けした大根を漬けた東京のべったら漬けや、塩・米麹・お米の割合がそのまま名前になった福島の三五八(さごはち)漬けなど。
※写真はPhoto ACより「べったら漬け」
【粕漬け】
日本酒をつくる際に出る酒粕やみりん粕を漬け床にしてつくる。
シロウリなどを塩漬けにして酒粕を繰り返し替えながら漬け込んだ奈良漬け、ワサビの葉や茎を漬け込んだワサビ漬けなど。
※写真はPhoto ACより「奈良漬け うりの粕漬け」
【醤油漬け】
塩蔵した野菜を脱塩・圧搾して、醤油系の調味液に漬けたもの。
福神漬け、松前漬けなど。
※写真はPhoto ACより「郷土料理 松前漬」
【味噌漬け】
塩蔵した野菜を脱塩・圧搾して、味噌に漬けたもの。
肉や魚の味噌漬けも多くつくられる。
※写真はPhoto ACより「信州みそ漬 漬物」
【酢漬け】
酢に漬け込んだもので、微生物は繁殖できないため、発酵は起こらないのが特徴。
ラッキョウ漬け、千枚漬けなど。
※写真はPhoto ACより「らっきょう」
【もろみ漬け】
醤油のもととなるもろみに漬け込んだもの。
【カラシ漬け】
カラシ、酒、麹などを混ぜ合わせたものに、塩漬けした野菜を漬け込んだもの。
※写真はPhoto ACより「小茄子のからし漬け」
<参考サイト>
・全国に600種類以上あると言われるつけものの種類
https://tomarino.jp/categories/11/344
・漬物にはどんな種類があるの?代表的な漬物や野菜別・地域別の漬物の種類を紹介
・漬物とは?歴史や特徴、種類について解説!アレンジレシピもご紹介
https://www.kurashiru.com/articles/8ba8f566-78a4-450d-b1c3-b80e5fbef9eb
・漬物の種類一覧!代表的なものからご当地漬物まで一挙紹介
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/sweets/detail/001772.html
・ぬか床を育てよう
④ 個性豊かな日本の漬物をご紹介
数ある日本の漬物の中から、代表的なものや地域性のある特徴的なものをいくつか調べてみました。
【松前漬け】(北海道)
北海道の郷土料理。
乾燥させたスルメイカ、昆布、ニンジンなどを細切りにして、醤油、酒、砂糖などに漬け込んでつくる。
松前町は全国有数のスルメイカの生産地。
【ニンニク漬け】(青森県)
ニンニク生産量日本一の青森県では、ニンニクを丸ごと酢に漬け、さらに醤油に漬け込んだ「ニンニク漬け」が食べられている。
【いぶりがっこ】(秋田県)
東北など寒い地方では、冬期に貴重な食材を保存するため、昔から漬物づくりがさかんだった。
「いぶりがっこ」は、冬の間晴天が続かず屋外で大根を干すのが難しいため、室内のいろりに吊り下げて乾燥させていた。
薫煙の香りとぬか漬けの風味が合わさり独特の風味を持つ。
【金婚漬け】(岩手県)
青ウリの種の部分を取り除き、昆布で巻いたニンジンやゴボウなどを詰めて漬ける。
時間が経てば経つほど美味しくなることからその名が付いたと言われる。
【三五八漬け】(福島県)
塩、米麹、蒸したお米を混ぜた漬け床で漬けてつくる。
割合がそのまま名前になっている。
【野沢菜漬け・すんき漬け】(長野県)
「野沢菜漬け」は日本三大漬け菜の1つ。
「すんき漬け」は、海抜800メートルの高冷地にある木曽地域で、貴重品であった塩を使わず、赤カブの茎と根の付け根に含まれる乳酸菌を発酵させてつくられる。
【べったら漬け・福神漬け】(東京都)
「べったら漬け」は、ダイコンを塩漬けし、甘酒ベースのぬか床で漬け込んでつくる。
「福神漬け」は、ダイコン、ナス、カブ、ウリ、シソ、レンコン、なた豆など7種類の野菜を醤油などに漬け込んでつくる。
その名は七福神に由来する。
【てっぽう漬け】(千葉県)
ウリの中にシソで巻いた唐辛子を詰め込んで漬ける。
鉄砲に弾丸を詰める様子に似ていたことからその名が付いた。
【ひょうたん漬け】(神奈川県)
小型のヒョウタンをしば漬けにしたもの。
お祝いの席などに出される縁起物。
独特の食感がクセになる味わい。
【ワサビ漬け】(静岡県)
静岡県の特産であるワサビの茎や葉、根を刻んで、酒粕に漬けてつくる。
【守口漬け】(愛知県)
180センチメートルにもなるという細長い守口大根を、酒粕やみりん粕などでじっくり漬け込んでつくる。
【たくあん漬け】(三重県)
ダイコンを寒風の中に干し、米ぬかと塩、柿の皮、唐辛子などで約2年かけ乳酸発酵させてつくる。
たくあんの発祥については諸説あるが、三重県漬物協同組合では、2007年に「伊勢たくあん」を特許庁の地域団体商標として登録し、生産と消費拡大に努めている。
【しば漬け・すぐき漬け・千枚漬け】(京都府)
京都では、禅宗や茶の湯文化と共に漬物文化も発展してきた。
京都三大漬物と言われる「しば漬け」「すぐき漬け」「千枚漬け」は、すべて発酵漬物。
「しば漬け」は、ナスやミョウガ、キュウリを赤シソと塩で漬けてつくる。
「すぐき漬け」は、上賀茂地区の伝統野菜・すぐき菜を塩で漬け込み、暖かい室(むろ)で発酵させる。
「千枚漬け」は、聖護院かぶと昆布、塩を原料に乳酸発酵させた漬物だったが、現在は甘酢漬けが一般的。
【泉州水ナス漬け】(大阪府)
皮が薄く果肉に少し甘みがある泉州地域の伝統野菜・水ナスを、浅漬けやぬか漬けにしたもの。
【奈良漬け】(奈良県)
平城京の時代から伝わる伝統食。
白ウリ、キュウリ、ダイコン、セロリ、小型メロンなどを塩漬けして酒粕に何度も漬け替える。
【砂丘ラッキョウ漬け】(鳥取県)
色が白く、繊維が細かく、歯切れがよい鳥取砂丘のラッキョウを、塩で下漬けし甘酢に漬け込んでつくる。
【津田かぶ漬け】(島根県)
勾玉(まがたま)のような独特の形の津田かぶを、1週間寒風にさらし、天日干ししてぬか漬けにする。
【広島菜漬け】(広島県)
日本三大漬け菜の1つ。天日干ししてから水洗いして荒漬けし、大樽で本漬けにしてつくる。
【緋のかぶら漬け】(愛媛県)
カブに含まれるアントシアニンが、酢漬けにすることで、きれいな赤い色に染まる。
「緋」は、濃く鮮やかな赤の意味。
【からし菜漬け】(福岡県)
弥生時代に伝来したからし菜を使った漬物。
葉や茎の浅漬けはピリッとした辛みがある。
【高菜漬け】(熊本県)
温暖な気候の九州地方では、暑さによる腐敗を防ぐため古漬けにしたり、醤油や味噌、酒粕などに漬け込むものが多くみられる。
日本三大漬け菜の1つ「高菜漬け」は、高菜を塩にしっかりと漬け込んだ古漬け。
とんこつラーメンのトッピングとしても知られる。
【つぼ漬け・山川漬け・桜島漬け】(鹿児島県)
「つぼ漬け」は、干したダイコンをつぼに入れて塩漬けにし、それを刻んでさらに三杯酢に漬けてつくる。
「山川漬け」は、干したダイコンを杵でつき、つぼの中で塩漬けにし4カ月ほど発酵熟成させてつくる。
「桜島漬け」は、世界最大級と言われる桜島ダイコンを、長期間にわたり酒粕に漬け込む。
【島ラッキョウ漬け・パパイヤ漬け】(沖縄県)
「島ラッキョウ漬け」は、辛みと香りに特徴がある島ラッキョウを塩漬けにする。
「パパイヤ漬け」は、青パパイヤを塩漬けし、味噌や醬油などで漬け込んでつくる。
<参考サイト>
・[野菜の漬け物の種類]いくつ知ってた?全国のご当地漬け物
https://www.kagome.co.jp/vegeday/store/202007/10728.html
・北海道 松前漬(まつまえづけ)
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/matsumaezuke_hokkaido.html
・伊勢たくあん(いせたくあん)
https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/isetakuan
⑤ 世界中に広がっている!漬物文化
漬物を日常的に食べているのは日本だけではありません。
世界の国のいくつかについて、漬物事情を調べてみました。
【韓国】
日本でもおなじみの「キムチ」は、韓国の食卓に欠かせない漬物。
その種類は200以上とも言われる。
白菜などの野菜を、唐辛子やニンニク、果物、アミ(甲殻類の節足動物)、イカ、小魚などに漬け込んで乳酸発酵させてつくる。
そのまま食べたり、炒め物やチゲに入たりする。
キムチの他、味噌を使った「チャガチ」、塩漬けした「チャンヂ」、浅漬けの「コッチョリ」などもある。
【中国】
漬物をそのまま食べるだけでなく、蒸しものや炒め物、スープに入れたり、薬味にしたりする。
日本でもよく知られる「搾菜(ザーサイ)」は、カラシ菜の茎の部分を塩漬けにして香辛料に漬け込んだ四川省の漬物。
他にも、根菜類をショウガ、唐辛子、花椒などと塩漬けにした「泡菜(パオツァイ)」や、白菜を乳酸発酵させた「酸菜(サンツァイ)」、野菜、豆腐、卵黄、肉や魚などを味噌漬けした「醤菜(ジャンツァイ)」、野菜などを甘酢で漬けた「糖醋漬菜(タンツゥージーサァイ)」などがある。
※写真はPhoto ACより「ザーサイ」
【インド】
タマネギやニンジン、キュウリ、キャベツなどの野菜を、唐辛子や香辛料、酢、マスタードオイルで漬けた「アチャール」は、カレーに添えられることも多い。
マンゴー、レモン、ライム、グーズベリーなどの果物や、鶏肉や羊肉、魚のアチャールもある。
※写真はPhoto ACより「スパイスカレーとアチャールのプレート」
【ネパール】
塩を使わない漬物「グンドルック」は、からし菜や大根菜などの菜っ葉を軽く干してしんなりさせて刻み、つぼや瓶に詰めてお湯をひたひたになるまで入れ、日当たりのよい土中に埋め、酸味が出るまで1週間ほど発酵させ、天日干しで乾燥させてつくる。
水で戻して炒めたり、スープ、カレーに入れたりして食べる。
※写真はPhoto ACより「グンドゥルックアチャール」
【タイ】
代表的なものは、高菜の仲間の菜っ葉を塩漬けしてつくられる「パッカードーン」。
野沢菜の古漬けのような酸味があり、そのまま食べるより、卵と炒めたり、スープに混ぜたりなど調味料のように使われている。
【ミャンマー】
発酵させた茶葉を、豆類やトマト、キャベツ、唐辛子、ニンニクと合わせ、2週間~1年くらい漬け込む「ラペソー」。
ピーナッツや揚げニンニク、豆、干エビ、ゴマなどと混ぜてお茶受けとして食べたり、ごはんのおかずにしたり、他の野菜と混ぜてサラダとして食べたりする。
他にも、青マンゴーを米のとぎ汁と薄塩で乳酸発酵させた「レイエチェ」、タケノコを塩漬けにした「ミエチェ」、モヤシを塩漬けにした「ペーピンパウチェ」などがある。
【ベトナム】
小ナスの塩漬け「カーファオムオイ」がよく食べられている。
小ナスのヘタを取り塩水に漬けた後、ニンニク、ショウガ、唐辛子などの香辛料と一緒に、水、塩、砂糖少々を混ぜて沸騰させ冷ました漬け液に、2~3日漬け込む。
漬け液に、魚でできた調味料・ヌクマムを入れることもある。
【フィリピン】
パパイヤを細切りにし、塩水に一度漬けて搾り、ニンジンやタマネギなどを細切りにしたものやショウガ、ニンニクと一緒に甘酢に漬け込む「アチャラ」。
チャーハンや肉料理に添えて食べる。
【欧米全域】
「ピクルス」は、英語で漬物の意味。
そのつくり方には酢漬けと自然発酵の2種類がある。
肉やチーズ、油っこい料理などの口直し的な意味合いが求められたからか、酸味がかなり強いのが特徴。
【ドイツ】
キャベツを塩漬けや酢漬けにした「ザワークラウト」は、ソーセージなどの付け合わせに食べられることが多い。
ゆでてから冷やしてサラダにしたり、バターや油で炒めて肉料理の添え物にしたり、シチューや煮込み料理の材料にしたりもする。
※写真はPhoto ACより「ソーセージとザワークラウト」
【イタリア】
花のつぼみであるケッパーを3カ月ほど塩漬けして苦味を抜き、塩抜きして酢に漬け込み乳酸発酵させてつくる「ケッパーの塩漬け」は、薬味や調味料として使われる。
【スペイン】
スペイン北部で栽培される青唐辛子を酢漬けにした「ギンディージャ」は、辛さは控えめで、シシトウに似たマイルドな辛味と酸味が特徴。
スペインの代表的な漬物で、バルのつまみの定番。
【イギリス】
カリフラワーやインゲン豆、タマネギ、キュウリなどの野菜を一口大に切って塩水に漬け、酢、砂糖、小麦粉、マスタード、ターメリックなどの香辛料を混ぜて、とろみがつくまで煮たてた漬け液に1カ月以上漬け込む、伝統的なピクルス「ピカリリ」。
ソーセージ、ハム、ベーコン、卵、チーズやサンドイッチなどの付け合わせとして食べられる。
【トルコ】
酸味のある漬物「トゥルシュ」。塩漬けを乳酸発酵させてつくるタイプや、酢やレモン汁を使ってつくる酢漬けタイプなどつくり方は様々で、食材もキャベツ、キュウリ、プチトマトなどの野菜や、メロン、アンズなどの果物、唐辛子、卵、チーズなど幅広い。
肉料理に合わせたり、インゲン豆のトゥルシュをタマネギと一緒に炒めて食べたりする。
【モロッコ】
モロッコ料理のタジンやクスクス、焼き物料理にも使われる、レモンを塩漬けにした「プリザーブドレモン」は、家庭で頻繁に手づくりされている。
そのまま食べる漬物ではなく、調味料として使われる。
【メキシコ】
メキシコを代表する青唐辛子「ハラペーニョ」のピクルスは、ハラペーニョをそのまま、または薄くスライスして、酢、砂糖、香辛料を混ぜて煮たてた液に漬けこんでつくる。
そのまま食べたり、サンドイッチ、タコス、ホットドッグなどのトッピングにしたりする。
※写真はPhoto ACより「韓国の市場(キムチ売り場)」
<参考サイト>
・漬物の種類一覧│定番から世界各地のローカル漬物まで紹介
https://www.shufoo.net/plus/food_recipes/462
・発酵食.com 漬物の話
https://hakkousyoku.com/tsukemono/
・世界の漬物の種類を紹介
https://tsukemonojiten.com/worldpickles/
・愉快な世界の漬物たち
https://www.kyuchan.co.jp/syokuiku/world/index.html
⑥ 家庭でチャレンジ!漬物をつくってみませんか?
現代の日本では様々な漬物を手軽に買うことができますが、ぬか漬けなど手づくりの良さも見直されています。
好みの食材で世界に1つしかない我が家の味をつくれる、漬物のつくり方をいくつか調べてみました。
【ぬか漬け】
①材料を、味噌ぐらいのかたさになるように混ぜる。
ぬか床の基本材料は、ぬか・塩・水。
さらにうま味を増すには、昆布やカツオ節、干しシイタケなどを加える。
また、唐辛子や山椒の実などを加えると香りづけや腐敗防止になる。
②発酵を促すために、捨て漬け野菜として水分の多いダイコンやキャベツなどを入れる。
③空気を抜くように表面を押さえてふたをする。
④最初の10日間は1日2回、次の10〜20日間は1日1回混ぜる。
混ぜることで菌のバランスを整え、いやな臭いを防ぐ。
⑤4〜5日に1度、捨て漬け野菜を替える。
⑥20日ほど経ち、発酵の匂いが漂いはじめたら、ぬか床のできあがり。
⑦野菜の下準備をする。
定番は、ニンジン、ダイコン、キュウリ、カブ、ナス、白菜、キャベツなど。
ニンジンやダイコンは皮をむく。
早く仕上げたい場合は、カットする。
軽く塩もみしておくと色合いが良くなり、味も入りやすくなる。水気を拭き取る。
⑧野菜をぬか床に漬ける。
野菜が空気に触れないように埋め込むのがコツ。
常温で半日~1日、冷蔵保存で2~3日が食べごろの目安。
⑨表面のぬかを軽く洗い流して、できあがり。
【キムチ】
①白菜は根元の軸を切り離さず、ビニル袋に入れ、たっぷりの塩でもんで水分を抜く。
②唐辛子、甘みを加えるすりおろしリンゴ、旨みを加える昆布や塩麴など、ショウガ、ニンニクを混ぜてキムチペーストをつくる。
③白菜を軽く水洗いして、水気をしっかり絞る。
④ビニル手袋をして、葉の一枚一枚にキムチペーストをまんべんなく塗る。
⑤ビニル袋に戻し入れ、しっかりもんでから口をしっかり縛り、冷蔵庫で2時間ほど置いて、できあがり。
【ピクルス】
①ニンジン、セロリ、キュウリを保存容器の高さに合わせて切る。タマネギはくし切りにし、ミニトマトは爪楊枝で数カ所穴をあける。
②保存容器に、酢、砂糖、塩、赤唐辛子、ローリエと、①を入れて、冷蔵庫で半日ほどおいて、できあがり。
ところで、大量生産にはない味わいのある手づくり漬物を旅先などで買う楽しみが、今や消滅の危機に瀕しているのをご存じでしょうか。
これまでは都道府県へ条例に基づく届け出をすれば漬物製造が認められたため、個人農家さんが地元の野菜を使って手づくりした漬物を、道の駅や農産物直売所などで販売することができました。
2024年6月から、食品衛生法の改正により、漬物製造が保健所による許可制になりました。
2012年に発生した白菜の浅漬けによる集団食中毒を背景に、国際的な食品衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」の考え方を取り入れたものとなっています。
漬物製造の営業許可を得るためには、HACCPに沿った衛生管理に適合する設備が必要となるため、自宅で漬物をつくる農家など小規模な業者は資金面で困難を抱え、また高齢化もあり廃業を選ぶケースが多く見られるそうです。
漬物メーカーでつくる業界団体の全日本漬物協同組合連合会によると、かつて1000程度あった加盟社が、現状約700まで減っているとのことです。
<参考サイト>
・初めての「ぬか床」作り。基本の作り方とお役立ち情報
・漬け込み2時間!「自家製キムチ」の作り方。 意外なうまみ食材とは?【プロのレシピ】
https://mi-journey.jp/foodie/31981/
・ピクルスのレシピ・作り方
https://www.mizkan.co.jp/ouchirecipe/recipe/?menu_id=1071
・名物お漬物が消える日 改正食品衛生法の経過措置が5月末で終了
https://agrijournal.jp/6industry/77281/
・道の駅から漬物が消える?食品衛生法改正、猶予期間が5月末終了へ 食文化継承に危機感
https://www.sankei.com/article/20240424-25FHSGNWFBFUTOPP3GOCTYJRSQ/
・漬物製造許可制に 経過措置が終了 廃業選ぶ農家も
https://www.agrinews.co.jp/news/index/236220
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》10月10日解禁!!新漬けオリーブ 編
小豆島のお漬物と言えば…もちろんいろいろありますが、今はやはり「新漬けオリーブ」!
小豆島ではまもなく、新漬けオリーブの解禁日を迎えます。
解禁日に向けて、オリーブ農家さんやオリーブ会社さんが一粒一粒手摘みして、病気や傷などで傷んだ実を取り除き、丁寧にアク抜きをして塩漬けにされます。
オリーブ独特のオイリーな味わいに、絶妙な塩梅の塩加減がクセになる、今だけの味覚です。
ヨーロッパで見られるピクルスとは違い、クセが全く無く、「海外のものは苦手だな」という方にも美味しく召し上がっていただけると思います。
新漬けオリーブの開発は、大変苦労されたとお聞きします。
その苦労話や秘話については「道の駅小豆島オリーブ公園」にある「オリーブ記念館」で紹介されているので、小豆島にお越しの際はぜひご覧ください。
また、10/20(日)〜11/30(土)の期間中、「道の駅小豆島オリーブ公園」で『オリーブ収穫祭』が開催されますよ。
10/20(日)の『大収穫祭』では、新漬けオリーブの食べ比べや他にもいろいろとイベントがあるそうですので、ぜひお楽しみいただければ。
石井製麺所では、この貴重な季節の味わい「新漬けオリーブ」を年末にかけてギフト品として、素麺や他の小豆島特産品と一緒にご購入いただけるよう準備をしています。
こちらもぜひお楽しみにお待ちください。
《石井製麺所公式ホームページ》 https://141seimen.com/business/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。