天日干しにこだわり、手延べにこだわり、健康食を目指した新しい素麺へ

電話:0879-82-2740

FAX:0879-82-6014

Twitter
Facebook

2024年11月

2024年11月

石井製麺所通信

2024年11月22日 【Vol.48】麺究者への道/⿂介を使った発酵⾷品について研究してみる

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.48

麺究者への道/⿂介を使った発酵⾷品について研究してみる

 

 

 

 

今回のブログは、これまでの単一テーマから外れて「魚介系の発酵食品」がテーマです。

発酵熟成にこだわって、いろいろとブログを書いてきましたが、ちょっと視点の違ったお話です。

 

魚介系の発酵食品と言えば、香川県では「いかなご醤油」が有名なんだそうですね。

恥ずかしながら、知りませんでした。

同じように魚醤と呼ばれるものは世界にもあり、多種多様な魚介系の発酵食品があることを知りました。

というか、気付きました。

 

身近なカツオ節や塩辛なども発酵食品だということを知って、今更ながらですが合点のいくところがあります。

素麺との関連性で言うと、間接的ではありますが出汁を取るカツオ節でしょうか。

においの強いものは得意ではありませんので敬遠しがちですし、これまでも接点は少なかったように思います。

 

小豆島は海に囲まれているので、海産物の加工品を目にすることがあります。

先日は、鰯の削り節「いりこぶし」というものに出会いました。

冬のギフト商品用として魚介系の商品を探していたときに「これはおいしくてクセになるよ!」とおすすめいただいたのが、「いりこぶし」でした。

ブログの後半でも詳しくご紹介いたしますが、結構、三代目好みの味で、試食用にいただいた物は、気がつけば一人でおやつ代わりに食べてしまっていました。

それぐらい(?)旨みがあって、鰯の風味が生きた加工食品でした。

 

ブログを書くために色々と調べているのですが、こういった新しいものに出会ったとき、前向きに抵抗感無く捉えられるのは、ブログを書いて少なからず予備知識があるおかげかも知れません。

大事な出会いを上手く活かすためにも、やはり知識というのは大切ですね。

 

今回のブログでは、世界の魚介系発酵食品から、日本の魚介系発酵食品の種類や歴史なども調べています。

なぜ、昔の人はこれを食べようと思ったんだろう?思いついたんだろう?というものあったりして、疑問がいろいろと出てくるのですが、人類が魚介系の発酵食品を口にするようになったそのターニングポイントを想像しながら色々と調べてみました。

ぜひ最後までお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

 

製麺工場から徒歩30秒ほどからの風景です。

ダイナミックな景色が広がっています。

秋を感じますね。

 

【目次】

① 塩辛、魚醤、なれずしのルーツとは?

② 水産発酵食品の種類と特徴とは?

③ 水産発酵食品の製造方法について

④ 日本各地でつくられている水産発酵食品とは?

⑤ 世界で食されている水産発酵食品

⑥ 《美味しい小豆島の食財紹介》いりこぶし 編

 

 


 

① 塩辛、魚醤、なれずしのルーツとは?

 

水産発酵食品は考古学的遺物として残らないため、その起源を明らかにするのは難しいそうです。

一説には、東南アジアのメコン川流域や、それに接する中国の西南部で水田の稲作が始まったことから、水産物を塩漬けにした「塩辛」や、塩辛を液体状にした調味料である「魚醤」ができたと考えられています。

川や湖から水田に小魚が大量に入ってきて繁殖し、米の収穫時に水が抜かれると大量に漁獲されます。

それを保存するために塩漬けして発酵させたのが始まりで、さらに米を加えて乳酸発酵させたものが「なれずし」のルーツということだそうです。

腐敗を防ぐために食材を塩漬けにしていたところ、元の味とは異なった風味を持つことがあると分かり発酵の技術が発展したと考えられます。

 

古代中国では、魚に塩だけでなく麹も加えて発酵を促し魚醤をつくっており、肉を使った肉醤もつくられていましたが、漢の時代頃から大豆や穀物を原料とするようになり、これが味噌や醤油のルーツとされています。

現代でも東南アジアは魚醤の食文化、中国や朝鮮半島、日本の東アジアは大豆や穀物を原料とした穀醤の食文化が主流となっています。

 

日本へは弥生時代、水田稲作とともに、塩辛や魚醤、なれずしの原型が伝わったと考えられています。

694~710年の藤原京跡から「フナのししお」(フナを原料とした塩辛)と読める木簡が出土しているのが最初の文字記録だそうです。

平安時代にはシカやウサギを原料とする塩辛の記録も残されています。

かつて塩辛はおかずとして食べられたり、野菜と一緒に煮たり、汁を味付けに使ったりしており、魚醤は日本各地でつくられていたそうです。

 

なれずしは酸っぱい味がするので「酢し」と言われたのが「すし」の語源という説があります。

特定の漁期に集中して漁獲される魚を保存するため、かつては日本各地でつくられていました。

8世紀前半の「養老記」に「鮓」の文字が現れるのが最初の記録とのこと。

「すし」といえばなれずしのことだったそうです。

海産魚介類のほか、アユ、フナ、アメノウオ(サケ目サケ科に属する淡水魚。別名「ビワマス(琵琶鱒)」といい、琵琶湖にのみ生息する固有種)という淡水魚のなれずしが平安時代の記録に残っています。

 

室町時代には、ご飯も食べられる「生なれ」ずしが出現しました。

それまでなれずしは、酸っぱくてベトベトするご飯を取り去って食べていましたが、漬け込んで3~4日、遅くとも1~2カ月で消費するようになり、魚とご飯を一緒に食べるようになりました。

 

江戸時代中頃には、魚やご飯に酢を加える、発酵を経ないすしがつくられるようになり、握りずしや海苔巻きが登場しました。

これに伴い、伝統的なすしが「馴れずし」「熟れずし」と呼ばれるようになったそうです。

 

 

<参考サイト>

・農林水産省 水産発酵食品

https://traditional-foods.maff.go.jp/bunrui/suisanhakkoushokuhin

・石毛直道の発酵コラム 第3回「水産発酵食品」

https://wb.kirinholdings.com/about/activity/ferment/fishery/column_03.html

・魚醤とナレズシ

https://www.syokubunka.or.jp/publication/gallery/ishige/archives/fishsauce/chapter10.html

・アジアの発酵、日本の発酵#1

https://cuisine-kingdom.com/takashi-morieda/

 

 

 


 

② 水産発酵食品の種類と特徴とは?

 

水産発酵食品は、発酵に関わる微生物の種類や製造法などから、「塩蔵型発酵食品」「漬物型発酵食品」の2つに大きく分けることができます。

 

【塩蔵型発酵食品】

塩辛、魚醤、くさやが代表的。

「塩辛」は、食塩で魚介類の身や内臓の腐敗を防ぎながら、素材そのものが持つ消化酵素の作用により生臭さが消えて特有の風味が醸成される。

イカやウニの塩辛の他にも、カツオの内臓を使った「酒盗」、ナマコの内臓を使った「このわた」、アユの内臓を使った「うるか」、サケ・マス類の内臓を使った「めふん」などが各地で食されています。

 

「魚醤」は、魚介類を高濃度の食塩とともに1年~数年熟成させてつくる液体調味料。

かつて日本の広い地域でつくられていましたが、大豆醤油の広がりとともに減少しました。

現在では、秋田県の「しょっつる」、石川県の「いしる」、香川県の「いかなご醤油」が日本三大魚醤とされています。

 

伊豆七島の新島や大島などに伝わる干物「くさや」は、発酵した魚汁にムロアジやトビウオなどの魚を一晩漬け、乾燥させます。

汁の中の細菌により抗菌作用が付与され、また強烈なにおいが発生します。

 

※写真はPhoto ACより「イカの塩辛」

 

【漬物型発酵食品】

なれずし、ぬか漬けが代表的。

「なれずし」の中でも最も古い形をとどめているとされるのが、滋賀県の「ふなずし」。

強烈なにおいが特徴で、乳酸菌が多く含まれ、味はチーズに似たところがあります。

フナの他にウグイやハス、モロコ、アユなども使われます。

 

なれずしの材料としては、サバ、ブリ、サケ、ニシン、ハタハタなども使われます。

「ぬか漬け」は、塩蔵したイワシやサバ、ニシン、フグなどを、麹とともにぬかに漬け込み熟成させてつくります。

猛毒を持つフグの卵巣を微生物の発酵により数年かけて無害化した、石川県の「フグの子ぬか漬け」が有名です。

塩漬けした魚介類を発酵調味料に漬け込む「酢漬け」や「醤油漬け」があります。

酢漬けは、塩漬けした魚介類を食酢に漬け込むことにより、抗菌作用と香味を有します。

福井県の「こだいの笹漬け」、富山県の「ますずし」、岡山県の「ままかりの酢漬け」など。

 

※写真はPhoto ACより「鮒寿司」

 

醤油を使った魚介類の漬物としては、北海道と東北地方の「松前漬け」が代表的です。

 

カツオ節も発酵食品です。

カツオ節には「荒節」「枯節」「本枯節」という種類がありますが、そのうちカビ付けの工程がある「枯節」「本枯節」は、微生物の力を借りてつくられる食品であることから発酵食品の定義に該当します。

脂肪の分解力を持ち良い香りを引き出すカビを付けることにより、特有の美味しさを引き出し、より高品質なカツオ節をつくることができるそうです。

脂肪は品質低下の原因となるため、カビ付けをして分解することで、焙乾香や酸味がやわらぎ上品な風味とうま味が際立つとのこと。

カビを付けていない「荒節」と比べ、まろやかな出汁が取れます。

 

 

<参考サイト>

・かつお節は発酵食品!?魅力や活用術をご紹介!

https://www.yamaki.co.jp/katsuobushi-plus/news/202310_hakkou/

 

 

 

 


 

③ 水産発酵食品の製造方法について

 

いくつかの代表的な水産発酵食品について、製造方法を調べてみました。

 

【しょっつる】

原料としてはハタハタだけでなく、イワシなど様々な魚種でつくられます。

高塩分濃度で腐敗を抑えながら、魚介の持つ自己消化酵素により、タンパク質を徐々に分解してペプチドが生成され、さらにアミノ酸まで分解されます。

魚介のタンパク質の構成アミノ酸としては、うま味系のアスパラギン酸やグルタミン酸が多いため、うま味の強い液体ができます。

 

つくり方は、原料に対して約20~40%の食塩をまぶし、汁が浸出したら、脱水した魚を他の桶に移し、さらに塩をかけます。

浸出液を煮沸ろ過して魚を入れ重しをして、1年~数年漬け込むと魚は液化します。

これを煮沸後、数回ろ過して瓶詰めします。

 

※写真はAdobe Stockより「発泡スチロールに入ったハタハタ」

 

【ふなずし】

フナを丸ごと漬け込み、発酵中に産生する乳酸により骨がやわらかくなり、骨まで食べることができます。

増えた乳酸菌による整腸作用もあり、栄養価も高いそうです。

フナのうろこやえら、浮き袋、内臓を除去し、えら部と内臓部に塩を詰めて桶に詰め、重しをして2カ月以上漬けます。

フナを取り出して洗い、半日ほど日干ししたら、桶に冷ました白米とフナを交互に漬け込んで重しをします。

桶の水が下から上がってきたら、空気と遮断するため上に水を張り、時々水を交換しながら半年~2年ほど漬けます。

 

【カツオ節(枯節、本枯節)】

3枚におろしたカツオの身を煮て薪でいぶし、数日かけてじっくり乾燥させます。

こうしてできたものが「荒節」で、さらに天日で数日乾かし、カビ付け室に入れると、約2週間でカビが表面を覆います(1番カビ)。

表面の胞子を払い、再度天日干しをしてカビ付け室に戻し、4~6カ月ほどかけて2番カビ、3番カビ、4番カビと付けていき、最後に充分乾燥させます。

カビ付けを2回以上繰り返したものが「枯節」です。

さらに、厳密な定義はありませんがカビ付けを枯節よりも多く行ってつくられるものは「本枯節」と呼ばれ、カツオの風味がより豊かになります。

カビ付け=発酵により、酸味や渋味、雑味が削ぎ落とされてうま味が前に出てきます。

さらに水分が飛んでうま味が凝縮されるそうです。

付着した麹カビが水分を吸い取るため、他の微生物が繁殖できなくなるほど乾燥することで保存性が高まり、世界一硬い食品とも言われるほどの硬さになります。

 

※写真はPhoto ACより「たくさん陳列された鰹節」

 

<参考サイト>

・しょっつる

https://nrifs.fra.affrc.go.jp/kakou/souran/syottsuru/index.html

・ふなずし 滋賀県

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/funa_zushi_shiga.html

・鰹節(かつおぶし)|世界でもっとも硬い発酵食品?

https://www.hakko-biyori.com/dictionary-43

・世界一固い発酵食品「かつお節」の種類や作り方、栄養成分や美容・健康効果、使い方・食べ方、保存法をチェック

https://haccola.jp/2021_10_22_12088/

・「本枯鰹節」は手間暇かけた最上級のかつおぶし!おすすめの理由とは!

https://shop.ninben.co.jp/blog/katsuobushi/282/

 

 

 


 

④ 日本各地でつくられている水産発酵食品とは?

 

日本各地の水産発酵食品にはどのようなものがあるか、調べてみました。

 

<塩辛>

【切り込み】(北海道ほか)

北海道や東北地方でつくられる魚の塩辛。

ニシンやサケ、ヒラメ、エビなど様々な魚を材料につくられている。

昔は常温で保存できるよう、塩分高めでつくられていたとのこと。

 

【めふん】(北海道)

サケの腎臓を使った塩辛。

その名は、せわたを指す「メフヌ」「メフン」という北方アイヌ語からきているとのこと。

新巻鮭をつくるときに取り除く腎臓(せわた)の部分を塩漬けにし熟成させてつくる。

1年以上置くとトロトロになり原型をとどめなくなる。

 

※写真はPhoto ACより「アイヌ料理 めふん 北海道」

 

【このわた】(石川県ほか)

塩辛の一種で、カラスミ、ウニとならぶ三大珍味の1つとされる。

干しナマコをつくる過程で不要となる腸を海水で良く洗い、水を切って約2~3割の塩を合わせてよく混ぜる。

水分を取り一昼夜置き、密封して熟成させる。

 

※写真はPhoto ACより「このわた ナマコ 塩辛 石川県」

 

【黒づくり】(富山県)

イカの塩漬けに肝臓と墨袋をすり混ぜて発酵・熟成させ、独特の香味を加えた塩辛。

江戸時代、加賀藩主の参勤交代の際に献上品として納められたとも言われる。

 

【うるか】(岐阜県ほか)

アユの塩辛で、アユの獲れる各地でつくられている。

様々な種類があり、内臓に細切りにした身をまぜた「切り込みうるか」、内臓だけを使った「苦うるか(渋うるか、土うるかとも)」、内臓と身の全体がペースト状になった「身うるか」などがある。

 

【カツオの酒盗】(高知県ほか)

高知県や静岡県、鹿児島県などカツオ節の産地でつくられている。

カツオ節をつくる過程で不要となる内臓を水でよく洗って水気を切り、3割程度の塩に漬け込んで熟成させる。

土佐藩主の山内豊資がその美味しさに“酒を盗んででも飲みたくなる”という意味で名づけたと言われる。

 

※写真はPhoto ACより「かつおの酒盗とクリームチーズ」

 

【がん漬け】(佐賀県)

有明海の干潟にすむシオマネキという小さなカニの塩辛。

シオマネキを丸ごと臼やすり鉢でつき砕き、2割ほどの塩と唐辛子を入れ、かめや瓶に詰めて1カ月ほど発酵させる。

 

※写真はPhoto ACより「郷土料理 がんづけ」

 

【すくがらす】(沖縄県)

アイゴという魚の稚魚(沖縄方言で「スク」または「シュク」)を使った塩辛(沖縄方言で「カラス」)。

スクに3割ほどの塩を混ぜて重しを乗せ数日置いて、上がってきた水分にさらに塩を加えて沸騰させ、元のスクと一緒にかめや瓶に入れ、3カ月~1年かけて熟成させてつくる。

 

※写真はPhoto ACより「スクガラス」

 

<日本三大魚醤>

【しょっつる】(秋田県)
ハタハタやイワシを生のままかめなどに入れて塩漬けし、1~3年ほど発酵させ、自然にしみだしてきた水分を濾して使う。

その名は「塩汁」がなまったものと言われており、「塩魚汁」とも表記する。

秋田の代表的な郷土料理「しょっつる鍋」や「きりたんぽ鍋」の味付けに使われる。

 

【いしる】(石川県)
イワシやイカの内臓を塩漬けし、1年ほど熟成させてから煮沸し、上澄みを濾して使う。

能登の代表的な調味料で、地元ではイカの内臓を原料とする「いしる」、イワシを原料とする「よしる」と使い分けているとのこと。

「いしり」「よしり」とも呼ぶ。

塩分は強く個性的な香りながら、慣れると普通の醤油代わりに使えるほど地元では定着している。

 

【いかなご醤油】(香川県)
イカナゴ(スズキ科の小魚)を塩漬けし、表面を松葉で覆って3~4カ月発酵・熟成させ、汁を布で濾して使う。

醤油が多く出回るようになると衰退してほとんどつくられなくなったが、近年、讃岐の味わいとして復活を遂げた。

 

<調味料>

【ととのみそ】(大分県)

魚などの水産物と米麹でつくられる発酵調味料。

別府大学と津久見市観光協会などでつくるプロジェクトチームにより、新しく開発された。

 

<なれずし>

【ハタハタずし】(秋田県)

新鮮なハタハタを水にさらしてよく血抜きをし、1日酢漬けにして、刻んだニンジン、カブ、ユズなど彩り豊かな野菜と一緒に、重石をかけてご飯と麹で2~3週間ほど漬け込んでつくる。

お正月料理として昔から食されてきたとのこと。

 

【くさりずし】(千葉県)

九十九里浜に伝わる伝統的な保存食。

イワシやサバ、サンマなどでつくるなれずし。

風味付けにショウガと赤唐辛子を漬け込んでいるのが特徴。

 

【かぶらずし】(石川県)

野菜のカブにブリを挟み、麹で漬けこむすし。

江戸時代、豊漁祈願の儀式の際に出された料理とされ、現在でもお正月などに食される。

塩漬けしスライスしたカブに、塩漬けしたブリを挟み、1週間~1カ月ほど麹で漬け込む。

富山県では、ブリではなくサバやサケでかぶらずしがつくられる。

 

※写真はPhoto ACより「かぶら寿司 アップ」

 

※写真はPhoto ACより「北陸名産「サバの大根ずし」」

 

【ニシンずし】(福井県ほか)

福井県や、北海道、東北地方でつくられ、「ニシン漬け」「大根のニシン漬け」とも呼ばれる。

下処理したニシンを、薄切りのダイコン、ニンジン、ショウガなどの野菜と一緒にご飯で漬け込んでつくる。

焼いて食べてもおいしいとのこと。

 

【サバのなれずし】(福井県など)

へしこ(魚のぬか漬け)を使ったなれずしで、正月などハレの日の料理。

ぬか漬けの香ばしさと、なれずしの酸味とうま味が合わさった風味で“海のチーズ”とも呼ばれる。

 

※写真はPhoto ACより「なれずし 早なれずし サバ 和歌山県」

 

【アユのなれずし】(岐阜県ほか)

岐阜県、滋賀県、福井県、和歌山県、栃木県など、アユの獲れる日本各地で保存食としてつくられてきた。

地域によっては「アユのくされずし」とも呼ばれている。

地域によっては大根を一緒に漬けることも。

 

※写真はPhoto ACより「鮎のなれずし 岐阜県」

 

 

【ふなずし】(滋賀県)

昔ながらの製法でつくる、日本のなれずしの代表格。

琵琶湖周辺でとれたフナを数カ月塩漬けにしてから、1~3年ご飯で漬け込む。

お正月やおもてなしの料理として食されたり、神社で神餞として供えられたりしている。

 

【サンマのなれずし】(和歌山県)

新鮮なサンマを開いて、数カ月~1年塩漬けにし、塩抜きをしてご飯と合わせ重石をかけて桶に漬け込み、1カ月ほど熟成させてつくる。

30年以上熟成させた「本なれずし」もあるとのこと。

最近では、酢を使い数日間でつくるものもある。

 

※写真はPhoto ACより「和歌山のなれずし」

 

<その他>

【山漬け】(北海道)

鮭のえらと内臓を取り除いて塩をもみ込み、箱に仕込んで何段も重ねて重石を乗せ、数日~10日ほど熟成させ、塩を洗い乾燥させる。

アイヌの人々がつくっていた鮭の干物と、江戸時代に和人が持ち込んだ塩の文化が合体してできたとされている。

 

【あざら】(宮城県)

気仙沼市周辺の漁師の料理。

メヌケという深海魚のアラと、長期間漬け込んで発酵が進み酸味が増した白菜の古漬けを、酒粕で煮込む。

 

【くさや】(東京都)

400年ほど前、伊豆七島の新島で生まれたとされ、「くさいや」が語源と言われている。

マアジやムロアジなどの腹を裂いて内臓を取り水洗いしてから、長年受け継がれているつけ汁に2時間ほど漬けてから天日干し、を繰り返してつくる。

 

※写真はPhoto ACより「くさや」

 

【潮かつお】(静岡県)

西伊豆町の田子地区に伝わり、カツオ節の原型とも言われる。

カツオの内臓を取ってよく洗い3週間ほど塩漬けにして、塩を洗い、3週間~1カ月ほど屋内で陰干ししてつくる。

新年を祝う縁起物として、正月に神棚に供えられる。

 

【フグの卵巣ぬか漬け】(石川県)

白山市美川地区周辺に伝わる珍味。

猛毒をもつフグの卵巣を1年ほど塩漬けにして、さらに1年以上ぬか漬けにする。

江戸時代にはすでにつくられていたと伝わるが、無毒化のメカニズムは解明されていないとのこと。

 

【へしこ】(福井県ほか)

福井県、石川県、富山県などでつくられてきた、魚のぬか漬け。

サバやイワシ、ニシン、フグなどの魚をよく洗って水気を切り塩をまぶし、下漬けしたものを塩と米のとぎ汁で練ってつくったぬか床に漬け込んでつくる。

 

※写真はPhoto ACより「発酵食品 魚 鯖のへしこ」

 

【ままかりの酢漬け】(岡山県)

ママカリという小さな青魚の頭と内臓を取って塩でしめ、塩を洗って数日間酢漬けにしてつくる。

そのままで食したり、酢飯と握って寿司として食したりする。

 

※写真はPhoto ACより「ままかり寿司 ~岡山の郷土料理~」

 

【いずみや】(愛媛県)

おからを酢飯に見立て、酢でしめた青魚を乗せた握り寿司。

コノシロやサヨリなどが用いられる。

 

【辛子明太子】(福岡県)

スケトウダラの卵巣(卵を含む)を塩漬けにして、醤油や酒、唐辛子を使った調味液に漬け込んでつくる。

 

※写真はPhoto ACより「博多名産 辛子明太子」

 

【松浦漬け】(佐賀県)

クジラの脂を搾った後の上あごの軟骨(かぶら骨)の使い道として、江戸時代から昭和30年代まで捕鯨地として栄えた呼子町で考案されたもの。

かぶら骨を酒粕に漬け込んでつくる。

 

<参考サイト>

・発酵食品名鑑

https://wb.kirinholdings.com/about/activity/ferment/fishery/

・生で食べきれない魚介類を有効活用した”海の発酵”【前編】《ニッポン全国発酵食品名鑑》

https://discoverjapan-web.com/article/66048

・生で食べきれない魚介類を有効活用した”海の発酵”【後編】《ニッポン全国発酵食品名鑑》

https://discoverjapan-web.com/article/66566

・大豆ではなく「魚で作った」味噌とは? 実は各地に存在する発酵魚介食材

https://tsurinews.jp/185909/

 

 

 


 

⑤ 世界で食されている水産発酵食品

 

東南アジアを中心に広く使われている魚醤は、古代ローマ時代のヨーロッパでも日常的に使われていたそうです。

魚醤のような調味料の他にも、世界各地で多様な水産発酵食品が食されています。

主なものを調べてみました。

 

<調味料>

【ガルム】(古代ヨーロッパ)

古代ローマ時代、ヨーロッパではアンチョビの内臓を原料とする魚醤「ガルム」が日常的に使われたと伝えられる。

ウスターソースも、もとは小魚を発酵させた魚醤が起源。

最近は現代人の味覚に合わせ、小魚や小エビを塩漬けにした新しいガルムがつくられ、イタリアの味として人気を集めているとのこと。

 

【コラトゥーラ・ディ・アリーチ】(イタリア)

南イタリアのアマルフィ海岸で手づくりされるアンチョビの魚醤。

塩漬けにしたカタクチイワシを4~5カ月間熟成させ、壺の底にたまった液体と熟成したイワシを漉してつくられる。

 

【ナンプラー(ナムプラー)】(タイ)

タイ料理に欠かせない魚醤。

塩漬けしたカタクチイワシを発酵させて生じる液体で、発酵にかかる期間は1年ほど。

つくり手によって味わいに違いがあるのも特徴。

 

【カピ】(タイ)

小エビを塩漬けにして発酵させペースト状にした調味料。

グルタミン酸含有量が多く、加熱すると香りが広がり、凝縮したエビのうま味を料理に加える。

カレーペーストの原料としても使われる。

 

【ニョクマム(ヌクマム)】(ベトナム)

ベトナム南部のフーコック島などでつくられる魚醤。

木樽にカタクチイワシなどの小魚と塩を漬け込み、4カ月~1年ほど発酵・熟成させてつくる。

アミノ酸含有量が豊富で、うま味がたっぷり感じられる。

ナンプラーに似ているが、ナンプラーより魚に対する塩の割合が少なく発酵期間が短い。

 

【ユイルウ(魚露)】(中国)

カタクチイワシやムロアジを塩漬けし、熟成・発酵させてつくる魚醤。

 

【サーチャージャン】(台湾)

干しエビやカレイ、ニンニク、トウガラシが原料の、魚介のうま味が凝縮した台湾版バーベキューソース。

台湾では牛肉の炒め物や火鍋、水餃子のつけだれ、魚介料理のコク出しなどに使われる。

 

【エクジョ】(韓国)

イワシを塩漬けし熟成・発酵させてつくる魚醤。

生臭さや独特な風味は抑えらえており食べやすい。

キムチの隠し味としても使われる。

 

 

<魚の加工食品>

【シュールストレミング】(スウェーデン)

その強烈な匂いから「世界一臭い食べ物」と呼ばれる。

ニシンの塩漬けを缶に入れて発酵させた保存食で、缶の中でずっと発酵を続けるため、常温保存できない。

パンや茹でジャガイモと一緒に食べるのが一般的。

 

※写真はPhoto ACより「シュールストレミング」

 

【アンチョビ】(イタリア)

イタリア料理でおなじみ。

内臓を取り除いたカタクチイワシを塩漬けにして発酵させ、オリーブオイルを加える。

 

【スモークアンチョビ】(スペイン)

スペイン・バレンシア地方でつくられる。

新鮮なヒシコイワシの腹ワタを取り除き2日間塩漬けにした後、ブナの木で軽くスモークしてオイル漬けにする。

塩分控えめで、燻製の香りが料理を引き立てる。

 

【ハカール】(アイスランド)

サメを発酵させてから水分を飛ばし、干物のようにした食品。

サメの身にはアンモニアが多く含まれており、口に含むと強烈な刺激臭が鼻に抜けていくと言われる。

味としてはチーズのような風味。

伝統的に製造されており、スーパーなどでも普通に売られているとのこと。

 

【ピクルド・グラミーフィッシュ】(タイ)

「プラー・ラー」と言われる、タイ版の「へしこ」。

グラミーフィッシュという魚を塩や米ぬかに漬けて発酵させたもの。

独特の香りが特徴で、青パパイヤのサラダなどに使う。

 

【ホンオフェ】(韓国)

切り身にしたエイを壺の中で数日間発酵させたもので、シュールストレミングに次ぎ、世界で2番目に臭い食べ物と言われる。

エイの身にはアンモニアが多く含まれており、食べると強烈な刺激臭が喉から鼻に抜ける。

またアンモニアはアルカリ性のため、はやく飲み込まないと口の中がただれてしまうという危険性もある。

韓国の一部地域では冠婚葬祭に欠かせない高級料理として親しまれている。

 

【ジョッカル】(韓国)

オキアミの塩辛で、韓国料理に欠かせないもの。キムチを漬ける時に使用し、乳酸発酵を促し、うま味を増進させる。その他、チゲ鍋や炒め物の隠し味にも使われる。

 

<参考サイト>

・日本が誇る伝統の発酵食品「魚醤」の豆知識

https://www.maruichi.com/delicious/file/post-24.php

・日本で買って使える発酵食品図鑑

https://cuisine-kingdom.com/fermentedseasoning/

・【発酵文化から学ぶvol.2】こんなにあった!知られざる世界の発酵食

https://www.has710.com/blog/2023/03/24/column_hakko-vol2-world/#co-index-1

・世界の料理は微生物であふれている!|世界の発酵食品10選

https://micsmagazine.com/basic/2438/post

・ベトナム料理に欠かせない調味料「ヌクマム」とは?

https://tripping.jp/asean/vietnam/33959

 

 

 


 

⑥ 《美味しい小豆島の食財紹介》いりこぶし 編

 

おやつに、おかずに、トッピングに鰯のうま味が詰まった削り節はいかがでしょうか?

 

導入部分でも触れましたが、冬のギフト品、小豆島のおいしい逸品として「池田漁業協同組合」様へお邪魔して、小豆島の海産物についていろいろとお話を伺ってきました。

「池田漁業協同組合」様には、常日頃からお世話になっていて、催事やイベントなどでも一緒に参加させていただいたりしています。

今回も「ぜひ小豆島のおいしいものを、石井製麺所からご紹介させていただきたい」とお願いしたときにご紹介いただいたのが「いりこぶし」でした。

 

いりこってご存じですか?

煮干しと言った方がご理解いただけるでしょうか。

瀬戸内海、特に香川県では初夏の風物詩として“いりこ漁”がおこなわれています。

「いりこ」=「イワシ(カタクチイワシ)」を茹でて干したものです。

小豆島から少し離れた香川県の「伊吹島(いぶきじま)」というところでは、いりこがつくりやすいように島を囲むように加工場があります。

当然、島の特産品がいりこです。

 

※写真はイメージ

 

今回ご紹介する「いりこぶし」は、瀬戸内から九州五島列島にかけて水揚げされた鰯を、大正時代から受け継がれた技法で一尾一尾手間暇かけて骨ごと削り濃厚な味を凝縮した削り節です。

脂分の少ない良質の鰯煮干しを使用し昔ながらの手法で丁寧に削られ、とても贅沢な削り節に仕上げています。

旨さたっぷり、栄養もたっぷりで、お料理のバリエーションも広がる逸品です。

おひたしや豆腐をはじめ、お好み焼きなどに、そのままふりかけるのも良し、簡単に上品で香り高い「だし」もとれるのでおすすめです。

もちろん、素麺や釜玉うどんなどのトッピングにもぴったりです。

 

試食用に初めていただいたとき、「濃い!」が第一印象でした。

私が知る一般的なかつお節と比較して、そのままつまんで、おやつ代わりになる削り節で、試食用の一袋は、ほとんど私がおやつとしてつまんでしまいました。

かつお節より厚めに削られた印象で、鰯の味(魚の旨み)が濃く感じられました。

卵かけご飯にかける(混ぜる)と、醤油との相性がよく、おかわりしてしまうくらいおいしかったです。

 

この機会にぜひお召し上がりください。

 

  

 

 

《石井製麺所公式ホームページ》 https://141seimen.com/business/

 

《いりこぶし<池田漁業協同組合>》 https://141seimen.thebase.in/items/94882496

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。

 

石井製麺所通信

2024年11月11日 【Vol.47】栄養成分の機能性について/糖

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.47

栄養成分の機能性について/糖

 

 

 

冬にお届けするDMがようやっと完成し、順次発送させていただいています。

今回も、「小豆島のお“いしい”逸品」と題し内容を充実させて、ギフト品などのご案内をお届けさせていただいています。

まもなくネットショップでも公開していきたいと考えていますので、今しばらくお待ちいただけましたら幸いです。

 

今回は、例年になく遅い発送となってしまいました。

毎年楽しみにしてくださるお客様もいらっしゃるので、申し訳なく思っております。

 

その原因のひとつが(言い訳ですが)、10月はまだしも、11月に入っても暑い日が続き、どうにも冬のイメージが湧かず、悪戦苦闘しておりました。

楽しみにお待ちいただく方もいらっしゃるので、そんなことも言っておられず、いろいろとご用意させていただきました。

「小豆島のお“いしい”逸品」の商品については、12月のブログでもご紹介させていただきたいと思いますので、詳しいご紹介はまた後日。

 

11月に入り、石井製麺所も新しい年を迎えることができました!

石井製麺所も会社法人ですので決算月というものがあり、それが10月ですので11月は新年度になります。

ここからが2025年のスタートです。

 

小豆島での手延べ素麺づくりは、ほとんどがそうだと思うのですが、「秋始まりの夏終わり」な感じです。

ようは、涼しくなる秋頃から手延べ素麺の製造が始まり翌年の春過ぎまで製造し、夏前から販売が始まり7月上旬に販売のピークを迎えます。

これがいわゆる手延べ素麺の製麺所の「ビジネスモデル」というものです(当社だけかも知れませんが)。

 

とはいえ、製麺所も継続できるように稼いでいかなければならず、石井製麺所の冬のメイン商品は「手延べ半生うどん」になります。

この他にも温かいお出汁などにピッタリな太麺は冬場に人気が高く、手延べ素麺(太麺)をはじめ、《楽々膳・黒》シリーズや山芋素麺(太麺)などが人気です。

また、石井製麺所では様々なOEM手延べ素麺・手延べ麺の製造から、自社独自の手延べ麺なども製麺性(つくりやすさ)の観点から涼しい時期に集中して製造しています。

素麺のシーズンが終わった製麺所ですが、実は今からが製麺で忙しい時期になっていくんですよ。

家族全員で健康には充分に留意して、新年度の製麺をおこなっていきたいと考えております。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、今回のブログは「糖」についてです。

「糖」と聞くと甘いような気がしますが「糖」の中にも「糖質」や「糖類」と呼ばれるものがあり、それぞれに働きが違います。

「糖質」=「糖類」ではないいんですね。

何となく同じようなイメージでしたが、中身は全く異なるようです。

 

今回も健康に役立つ内容でお届けできていると思いますので、最後までぜひお付き合いください。

 

写真は先日の製麺風景。

一日の気温の上昇度などを予想しながら塩加減を考えるのですが、この日は予想より暖かい一日で、塩が少し足りなかったかも知れません。

天気予報だけではなかなかわからないところもあり、まだまだ経験値を上げていかねばいけません。

 

 

【目次】

① ⽢いだけじゃない!?糖とは?

② 糖の種類と性質について

③ 糖は発酵に⽋かせない成分

④ ⼈類に⽋かせない成分・糖の働き

⑤ 糖を多く含む食品とは?

⑥ 《美味しい小豆島の食財紹介》しょうどしま長命粒塩 編

 

 


 

① ⽢いだけじゃない!?糖とは?

 

糖は、タンパク質・脂質と並ぶ、食品の三大栄養素のひとつである炭水化物に分類されます。

炭素と水素の化合物で、消化されてエネルギー源となります。

炭水化物は、消化吸収されやすい「糖質」と消化吸収されにくい「食物繊維」で構成されています。

「糖質」と「糖類」は混同されがちですが、「糖質」とは「炭水化物から食物繊維を除いたもの」の総称で、デンプンやオリゴ糖などがこれに含まれます。

「糖類」とは「糖質から多糖類・糖アルコールを除いたもの」のことです。

ブドウ糖や果糖、砂糖など甘いものは「糖類」です。

糖は自然界に多く存在しており、サトウキビには砂糖、牛乳には乳糖、シイタケにはトレハロース、りんごの蜜部分にはソルビトール、焼き芋にはマルトース(麦芽糖)が含まれています。

最近では、コーンシロップや高フルクトースコーンシロップ(異性化糖)といった工業的に作られた糖類が、炭酸飲料、果実缶詰、アイスクリームなどに多く用いられています。

 

糖は、甘みをつけるだけでなく、食品の様々な物性をコントロールし、質感や日持ちに影響します。

・風味や色をつける

・水分を保持しツヤを出す

・脂質の酸化を抑える

・デンプンの老化を抑えやわらかさやしっとり感を保つ

・タンパク質を熱から守り変性を抑える

・腐りにくくする

など様々な役割を果たしています。

 

<参考サイト>

・e-ヘルスネット 炭水化物/糖質

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html

・糖の基礎知識

https://www.nagase-foods.com/jp/library/knowledge/sugar/

・炭水化物と糖類について

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/download_files/other/topics_02.pdf

・知って得する糖尿病講座「糖質」と「糖類」について」

https://www.hoyukai.or.jp/class/files/142.pdf

 

 

 

 


 

② 糖の種類と性質について

 

糖の性質や物性を予測するのに最も役立つのが、大きさ(分子量)による分類です。

糖には、単糖類から少糖類、多糖類まで様々な大きさのものが存在します。

素麺の主成分である小麦粉に含まれる糖質の大部分は、多糖類の1つであるデンプンです。

 

【単糖類】

それ以上分解されない、一番小さな糖の単位。

ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースがあります。

 

【少糖類】

単糖が2個以上10個未満程度結合した糖。

オリゴ糖とも呼ばれますが、定義はややあいまいだそうです。

砂糖の主成分であるショ糖(ブドウ糖+果糖)や、麦芽糖(マルトース=ブドウ糖+ブドウ糖)、乳糖(ブドウ糖+ガラクトース)などは、二糖類です。

 

【多糖類】

10個以上の単糖が結合した糖で、単糖の結合数は数千個におよぶことも。

消化性多糖類と難消化性多糖類に分かれ、消化性多糖類にはデンプン、グリコーゲンなどがあります。

難消化性糖類は食物繊維の仲間とされます。

 

糖の性質は、小さいほど浸透性に優れ着色性が高くて甘く、大きくなるにつれて浸透性や着色性が低くなり、粘度が上昇し、ツヤを出す機能が高くなります。

 

糖に関する指標について、調べてみました。

「甘味度」は、人が食べたときに感じる甘さを数値化した指標で、砂糖の甘味を基準に調べたい糖と比較することにより算出します。

甘味度と似た言葉に「糖度」がありますが、これは糖を水に溶かした時の濃度を表す、全く別の意味の言葉です。

一般に糖度が高いと食品が安定であり、低ければ水分が多く不安定になります。

糖度とほぼ同じように使われる数値に「Brix値」があります。

水溶液の溶質濃度が上昇すると屈折率も上昇するという原理を用い、屈折計を利用して測定します。

油脂を多く含む食品は屈折率に影響が出るため、測定には注意が必要とのことです。

 

 

糖が関わる、香ばしい香りや色が付く反応は、大きく分けて2つあります。

 

「カラメル化反応」

糖を高温で加熱した際に、複雑な反応を経て褐色物質ができる反応。

プリンのカラメルやべっ甲あめなど。

 

「メイラード反応」

糖とタンパク質を合わせて加熱した際に、糖の還元基とタンパク質のアミノ基が反応して褐色物質などができる反応。

パン、ステーキなど。

 

糖は浸透圧を上げ、微生物が食品中で利用できる水(自由水)を少なくし、腐敗しにくくします。

同じ濃度でも分子量が小さいほど防腐効果は高くなるそうです。

 

 

<参考サイト>

・食物繊維とは

https://www.nisshin-seifun.com/wheat-power/dietary-fiber.html

 

 

 


 

③ 糖は発酵に⽋かせない成分

 

発酵とは、食物に含まれる糖質やタンパク質を、微生物が分解してアミノ酸やアルコールなどをつくり出すことにより、うま味や風味、栄養価が増したり、保存性が高まったりと、人間にとって有益な状態に変化させることです。

 

アルコール発酵は、微生物の中でも主に酵母による発酵で、ブドウ糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。

酵母は単糖や二糖のような小さい糖しか吸収することができません。

そこで、お酒づくりの場では「糖化」と呼ばれる、多糖を小さな単糖や二糖に分解する工程を必要とします。

 

 

主なアルコール飲料製法における、発酵や糖化について調べてみました。

 

<ワイン、ブランデー>

ブドウに含まれる糖の発酵によりつくられる。

スパークリングワインは、瓶に詰めて二次発酵させる際に酵母と砂糖を加えることで、酵母が砂糖を分解しアルコールと炭酸ガスを発生させる。

 

※ワインの詳しい説明については「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.46 麺究者への道/ワインについて研究してみる」もご覧ください。

 

 

<ビール、ウイスキー、日本酒>

デンプンの糖化によりつくられる。

ビールは、麦芽に含まれる酵素(アミラーゼ)により糖化。

日本酒は、麹カビにより糖化した後、酵母によりアルコール発酵。

ウイスキーは、麦芽の中のデンプンを麦芽糖と呼ばれる二糖まで分解する。

 

※ビールの詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.42 麺究者への道/ビールについて研究してみる」もご覧ください。

※日本酒の詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.38 麺究者への道/日本酒について研究してみる」もご覧ください。

 

パンも、アルコール発酵を利用してつくられています。

パン専用の酵母であるイーストは、糖を栄養にして発酵し、ガスを発生させることにより生地をふくらませます。

パンの材料として加える砂糖が、酵素の働きでブドウ糖と果糖に分解され、イーストの栄養となって発酵を促進させています。

フランスパンなどのように砂糖を加えない場合は、小麦粉に含まれるデンプンが分解されて麦芽糖になり、さらにブドウ糖に分解されてからイーストの栄養になるため、発酵管理が非常に難しいそうです。

砂糖は発酵を促進する以外にも、パンづくりに様々な役目を果たしています。

吸水性や保水性のある砂糖を加えることで、やわらかい状態が長く続き、日持ちが良くなります。

焼きあがった時の焼き色や香ばしい香りも、砂糖のカラメル化やメイラード反応によるものです。

 

※パンの詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.36 麺究者への道/パンについて研究してみる」もご覧ください。

 

 

 

乳酸菌は、糖類を分解して乳酸に変える働きがあります。

乳酸発酵食品にはヨーグルトやチーズ、発酵漬物(ぬか漬け、キムチなど)などがあります。

 

<ヨーグルト、チーズ>

乳酸菌が牛乳の中の乳糖を分解して取り込む過程で乳酸をつくり出し、それにより牛乳のタンパク質が固まってできる。

 

※チーズの詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.40 麺究者への道/チーズについて研究してみる」もご覧ください。

※乳酸菌の詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.31 栄養成分の機能性について/乳酸菌」もご覧ください。

 

 

<発酵漬物>

野菜にもともと付着している乳酸菌が、野菜の糖類などを分解して乳酸を生成。

酸味が出ると同時に、保存性が高まり独特の風味が生まれる。

 

代表的な発酵食品のひとつである味噌は、酵母によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵によりつくられます。

麹菌が大豆のデンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に、脂質を脂肪酸とグリセリンにそれぞれ分解して、それらと酵母や乳酸菌が作用して味噌になります。

 

※漬物の詳しいお話は「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.44 麺究者への道/漬物について研究してみる」もご覧ください。

 

 

<参考サイト>

・Wikipedia アルコール発酵

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%99%BA%E9%85%B5

・【発酵の基礎】糖からエタノールへ、偉大な酵母のちから

https://whiskylabo.com/alcoholic-fermentation/

・甘くするだけじゃない?パンを作るときの「砂糖」の役割

https://seika.oda.ac.jp/column/1474/

・発酵を促進する砂糖

https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-82.html

・発酵ってどういうこと?

https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-147.html

・漬物のきほん

https://www.hakko-blend.com/study/hakkofood/04.html

 

 

 


 

④ ⼈類に⽋かせない成分・糖の働き

 

糖質がエネルギーとして使われる仕組みはどのようなものか、調べてみました。

食事から糖を摂取すると、口から胃、十二指腸を通過しながら、様々な消化酵素の働きによりブドウ糖同士の結合が切られていきます。

そしてようやく小腸で、最小単位であるブドウ糖にまで分解、吸収されて、血液中に取り込まれ、全身に運ばれます。

「血糖値」とは、このようにして血液中に取り込まれたブドウ糖の濃度を表すものです。

 

全身に運ばれたブドウ糖は、主に体や脳を動かすエネルギー源として使われます。

脂質やタンパク質に比べて早くエネルギーに変換されるため、即効性が期待できるそうです。

人体の司令塔であり、全エネルギーの18%と非常に多くのエネルギーを消費する脳が、エネルギーとして利用できる物質はブドウ糖だけなので、しっかり補給することが大切だそうです。

余分なブドウ糖は、筋肉や肝臓でブドウ糖がたくさん結合したグリコーゲンに変換されてから一時的に貯蔵され、必要に応じて様々な活動のエネルギー源として利用されるとのことです。

 

糖の働きとしては、他にも様々なものがあります。

「特定保健用食品」としてその機能の表示が認められているものをいくつか調べてみました。

<オリゴ糖> お腹の調子を整える

<キシリトール> むし歯の原因にならない

<マルチトール> 歯の健康保持、むし歯になりにくい

<パラチノース> むし歯の原因にならない

<L-アラビノース> 砂糖の消化・吸収を穏やかにする、血糖値が気になる方の生活改善

 

糖を摂りすぎたり、不足したりすると、健康にどのような影響があるのでしょうか。

世界保健機構(WHO)の 2015年のガイドラインでは、肥満や虫歯予防を目的に、1日の遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことが強く推奨されています。

日本では、どれくらいの糖類を摂取すると健康に影響が出るのか、また、現在日本人がどのくらいの糖類を摂取しているのかについてほとんど明らかになっていないことから、目標量は設定されていないそうです。

 

糖が不足すると血液中のブドウ糖が足りなくなり、貯蔵していたグリコーゲンがブドウ糖に分解されてエネルギー源となります。

しかしグリコーゲンがない場合は、筋肉などのタンパク質を分解し、アミノ酸をブドウ糖に変換してエネルギーを補うようになるため、筋肉の減少につながる可能性もあるそうです。

また、エネルギー不足による疲労感や集中力の減少が見られます。

また脳や神経で供給不足が起こると、意識障害を起こすこともあります。

 

過剰な場合は、エネルギーとして消費されなかったブドウ糖は中性脂肪として蓄積され、肥満や生活習慣病の原因となります。

また、糖類の摂取量と虫歯との関連も、多くの研究で明らかになっているそうです。

 

 

<参考サイト>

・糖質は体と脳のエネルギー源

https://www.nisshin.com/welnavi/knowledge/detail_010.html

・一番身近な活力の素

https://www.seikagaku.co.jp/ja/glycoscience/10theme/theme03.html

・糖の種類と可能性

https://www.kanro.co.jp/RandD/basic/type/

・炭水化物と糖質の違いとは?それぞれの役割について解説

https://www.suntory-kenko.com/column2/article/6137/

・糖質とは?糖類との違いや適切な摂取量、糖質が少ない食品を紹介

https://wellness.nichirei.co.jp/contents/detail/_38

・糖分(糖質)の働きとは?不足・摂りすぎた場合の症状について解説

https://www.suntory-kenko.com/column2/article/7630/

 

 

 


 

⑤ 糖を多く含む食品とは?

 

糖質は、体内で1gあたり4kcal産生する、体のエネルギー源です。

厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、糖質としての適正摂取量は設定されていませんが、炭水化物としての基準が定められています。

また、総エネルギー摂取量のうち、タンパク質と脂質が占めるべき割合を差し引いた50~65%が、炭水化物の目標値となっています。

例えば1日に摂取するエネルギーが2000kcalの場合、1日に250~325gの炭水化物を摂取することが望ましいということになります。

 

糖質は、ご飯・パン・麺類などの穀類、イモ類などに多く含まれています。

野菜の中では西洋カボチャ、トウモロコシ、レンコンなどにも多く含まれます。

果物には、ブドウ糖、果糖、ショ糖が含まれ、中でもブドウやカキ、パイナップル、マンゴーなどに多く含まれます。

 

また、砂糖や甘味類、果物類などの甘いものにも多く含まれています。

穀物と砂糖を多く使っている和菓子やケーキ、ポテトチップスなどは糖質が多い食品です。

 

近年、ダイエット法の1つとして糖質コントロールが注目されていますが、極端に糖質の摂取を制限するのではなく、適正量を知り、他の栄養素もバランスよく摂ることが大切です。

 

<参考サイト>

・糖質(炭水化物)の多い食べ物とは?食品の種類と一日の摂取目安量を紹介

https://www.suntory-kenko.com/column2/article/6005/

・三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tansuikabutsu.html

 

 

 


 

⑥ 《美味しい小豆島の食財紹介》しょうどしま長命粒塩 編

 

 

あの「しょうどしま長命草」がお塩になった?!

11月下旬からお届けする「お“いしい”逸品」で取り扱う「しょうどしま長命粒塩」をご紹介させていただきます。

「糖」がテーマなのに、真逆(?)の塩のご案内になります。

 

「一株食べれば、一日長生きする。」

そう言い伝えられ、古くから人々の健康を支える野菜として親しまれてきた長命草(ちょうめいそう)。

その名前のとおり、食べる人の健康長寿を支える可能性を秘めた“パワーベジタブル”です。

「しょうどしま長命草」は、小豆島の特産品である醤油の絞り粕を肥料に、農薬を使わずに栽培された、小豆島育ちの健康野菜です。

その長命草を収穫してすぐに乾燥し、低温殺菌粉砕加工を施しパウダー化することで、栄養素をほとんど損なうこと無く、生葉とほぼ同様にビタミン、ミネラル、食物繊維やポリフェノールなどの有用な栄養成分が多く含まれています。

その長命草とブレンドされているのが、天然の小豆島海塩

ミネラルが豊富で結晶化するまで平釜で炊き上げられ、海塩の旨さがぎゅぎゅっと詰まった特別な塩で、てんぷらや肉料理など油との相性が良い粒塩です。

 

小豆島の長命草と天然小豆島海塩を独自製法でブレンドした、ほのかに抹茶のような香りがする、ちょっと良い料理の時に使える調味塩です。

 

健康を気づかう毎日の食事に、ぜひ長命粒塩はいかがでしょうか。

 

 

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in

 

《しょうどしま長命粒塩<LINKFAMILY>》 https://141seimen.thebase.in/items/94817820

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。