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2024年8月

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石井製麺所通信

2024年8月26日 【Vol.42】麺究者への道/ビールについて研究してみる

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.42

麺究者への道/ビールについて研究してみる

 

 

 

 

夏の終わりが近づくにつれ、台風の接近や不安定な天候に悩まされます。

そして、この夏一番の悩みと言えば…

 

今年は、本当にたくさんのご注文を頂戴しました。

暑さが厳しかったことや、暑い日が続いたせいか、今年は8月中旬頃までご注文を多くいただき、製造と発送を交互におこなう日々でした。

その出荷のピークも過ぎた8月中旬頃、なんとか今年も乗り切れたと安堵し、今後の製造に向けて設備の見直しや製造環境の改善など、検討し始めた矢先、なんと、肝心要の乾燥用のボイラーが故障…

 

製造のピークを見計らったように、まったく言うことを聞いてくれなくなったボイラー。

手延べ麺を乾燥させるのになくてはならない存在です。

年々暑さが厳しくなり、また不安定な天候が続くことから、製造環境の改善に経費がどれくらい掛かるかと考え、「ボイラーはもう少し頑張ってくれるかな?」と思ったのが悪かったのかどうか、一番はじめに根を上げてしまいました。

 

さあ、困りました。

 

知り合いの方にお聴きしたり、さらにそのお知り合いの方に修理ができる方をご紹介いただいたり…

色々なツテを頼って、見ていただいたところ、どうやら故障ということでなく、ボイラーの煙を排出する煙突(正確には煙道(えんどう))が詰まってしまっていて、そのせいでボイラーが不完全燃焼していたようです。

原因が分かれば、まずは煙突掃除です。

なんといっても、少なくとも30年選手のボイラーですので、型が古く、メンテナンス用の開口部は設けられていません。ボイラーと煙突の接続部のボルトを一本一本外し、煙突を取り外すところから…

硫黄と煤の塊をなんとか除去。

何とか作動するところまでは回復していただきました!

業者さんと一緒に、みんな煤で真っ黒になりながら頑張ったのは、ある意味いい経験となりました(笑)。

一安心ではありますが、内部の部品には劣化も見られるようで、新しいボイラーへの入替は避けられないようです。設備の見直しを図らなければいけない、今日この頃です。

これが目下、一番の悩みの種です。。。

 

さて、先日のブログでご紹介したマンガ「もやしもん」でも、ビールについてのお話があります。

とっても良いお話で、思わずビールを飲みたくなりました(笑)。

小豆島にもクラフトビールの醸造所があり、こちらはとても近くなのですが、車社会の小豆島。

車で行ったら飲めなくなってしまいますので、見学に伺い、お土産を買って今回のブログで調べたうんちくを読み返しながら自宅で味わってみたいと思います。

 

言われてみればビールも発酵食品のひとつなんですね。

(大)麦を発酵熟成させてつくるのですから素麺づくりに活かせる部分は無いかと色々と調べてみました。

今回も楽しい内容になったと思いますので、最後までご覧いただけると幸いです。

 

 

【目次】

① ピラミッド建設の報酬だった!ビールの歴史

② 鎖国中にもたらされ、冷蔵庫の普及により消費が増えた日本のビール

③ ビールの味わいや香りを決める、原料について

④ つくり方により個性を生み出す!ビールの製法

⑤ ビールの種類は世界に100以上!日本のビールの定義とは?

⑥ 《美味しい手延べ素麵》ビールのおつまみにふし麺のおやつ 編

 

 


 

① ピラミッド建設の報酬だった!ビールの歴史

 

ビールは麦芽・ホップ・水を主原料とした醸造酒で、アルコール度数が低く、炭酸ガスを含み、ホップ独特の香りや苦味を持つのが特徴です。

ビールの誕生は紀元前8000~4000年までさかのぼるとも言われています。

人類最初の文明とされるメソポタミアで、放置してあった麦の粥に酵母が入り込んで自然発酵したのが起源と考えられています。

 

紀元前3000年頃のシュメール人が、ビールづくりの模様をくさび形文字で粘土板に残しています。

当時は、まず麦を乾燥させて粉にしたものを焼いてパンをつくり、それを砕いて水を加え自然発酵させていたようです。

 

同じ頃エジプトでも、肥沃なナイル河畔で収穫される大麦を原料にビールがつくられ、広く飲用されていたとのことです。

ピラミッドを建造する労働者にビールが配られていたとも言われています。

当時のビールはホップは使用されず、薬草やはちみつなど様々な原料が使われていました。

栄養食品としてや、神様へのお供え物としても用いられていたそうです。

 

 

紀元前1700年代に制定された初めての成文法「ハムラビ法典」にも、ビールに関する法律が制定されているそうです。

この頃には各所に醸造所がつくられ、ビアホールのような店もあったようで、その取り締まり規則や罰則などが公布されました。

 

ギリシャやローマでは、麦類が生育しにくい気候風土のためか、ワインが主流となっていました。

 

北ヨーロッパでは、古代ゲルマン人が定住生活に入った紀元前1800年頃すでにビールがつくられていた記録が残っているそうです。

ゲルマン人やケルト人は、麦類を麦芽に加工する、現代にも通じる製法でビールをつくっていたようです。

 

ビールづくりにホップが使われるようになった時期については諸説ありますが、紀元前1000年頃、コーカサスに住んでいた民族から始まったという説が有力とのことです。

 

中世に入ると、ゲルマン民族の大移動によりヨーロッパ各地にビールが広がりました。

「ビールは液体のパン」「パンはキリストの肉」と考えられ、教会や修道院でビールづくりがさかんになりました。

当時のビールは、栄養補給や医療にも利用されていたようです。

 

11世紀後半になると、ビールづくりにホップを使用すると品質が飛躍的に向上すると分かってきて、ホップのビールが次第に広まりました。

技術の進歩もあり、一般庶民にも飲まれるようになって、15世紀以降には民間でもつくられるようになりました。

 

中世まではビールが腐敗しないように、9月~3月ごろの涼しい時期にビールづくりがおこなわれていました。

しかし気温が低すぎると発酵がうまく進まないなどのトラブルもあったそうです。

15世紀にドイツのミュンヘンで、下面発酵のビールが誕生します。

当時のビールは、高温で短時間、貯蔵と発酵を行う上面発酵のビールが主流でした。

低温で長時間、貯蔵と発酵を行う下面発酵ビールはその後のビールづくりを大きく変え、現在も世界の主流となっています。

 

1516年ドイツで「ビール純粋令」が交付されました。

「大麦・ホップ・水の3つの原料以外は使用してはならない」と定めることにより、その後ドイツビールの品質維持向上に貢献しました。

現在でもドイツでは下面発酵ビールの製造においてこの法律が守られています。
19世紀後半、ドイツのリンデが冷却機を発明し、下面発酵ビールが四季を通してつくれるようになりました。

またフランスの細菌学者パスツールが発明した低温加熱殺菌法により、ビールの長期保存が可能になって市場が拡大しました。

一方、デンマークのハンゼンが発見した酵母の純粋培養法により、ビールづくりに適した酵母だけを分離できるようになり、近代的な大量生産への道が開かれたとされています。

 

 

<参考サイト>

・ビールの豆知識|ビールの歴史

https://www.brewers.or.jp/tips/histry.html

・ビールの歴史をわかりやすく解説|ビールの発祥から現在までを説明

https://www.sakesen.com/blog/history-of-beer/

・ビールの歴史を教えてください。

https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001716.html

 

 

 


 

② 鎖国中にもたらされ、冷蔵庫の普及により消費が増えた日本のビール

 

日本にビールが入ってきたのは江戸時代です。

鎖国政策のもと、唯一開港していた長崎県の出島でオランダからビールがもたらされ、蘭学者たちが試飲や試作をしたと言われています。

日本で初めてビールを醸造したのは幕末の蘭学者・川本幸民で、物理・化学分野の翻訳もしていた中で、ビールの醸造実験にも取り組んだとされています。

日本にビール醸造所が初めて設立されたのは1869年、横浜の外国人居留地で開設された「ジャパン・ヨコハマ・ブルワリー」です。

1870年にはアメリカ人の醸造師ウィリアム・コープランドが、現在のキリンビールの前身となる「スプリング・バレー・ブルワリー」を創設しました。

1872年、大阪で渋谷庄三郎が日本人では初めてビールの醸造・販売を本格的に開始したのを皮切りに、各地にビール会社が誕生します。

北海道に設置された開拓使により1876年「開拓使麦酒醸造所」が開業され、開拓使の廃止後に設立された「札幌麦酒会社」が、現在のサッポロビールです。

1889年に設立された「大阪麦酒会社」は、後にアサヒビールとなっています。

明治20年代に入ると近代化が進み、日本のビール総生産量が輸入量を超え、ビール産業は著しく成長していきました。

1899年、ビアホールが銀座にオープンしました。

当時ビールを提供するレストランは高級店であったため、ビールだけを気軽に飲める業態として発案されたビアホールは庶民に大人気となり、一時期の東京には約2,000軒のビアホールがあったそうです。

1950年代後半~1970年代にかけての高度経済成長期には、ビールの消費量が爆発的に増えました。

ビールはお店で飲むのが主流でしたが、家庭用冷蔵庫の普及により自宅での消費が急増したためです。

昭和40年代には全国で10のビール工場が新設され、製造量は10年間で2倍に増えました。

しかし1994年に過去最高の製造量を記録したのをピークに、飲酒人口の減少や消費者の嗜好の多様化・個性化により、ビールの製造量は減少傾向が続いています。

一方、1994年にビール製造免許に係る最低製造数量基準が年間2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことにより、各地に小規模なビール醸造所が登場し、独自のビールをつくり始めました。

1990年代後半には「地ビール」ブームが巻き起こりましたが、価格が高いこともあり、ブームは数年で衰退してしまいます。

そんな中、2000年代にアメリカで「クラフトビール」が人気を集めるようになるのに伴い、日本の小さな醸造所でつくられた地ビールも「クラフトビール」と呼ばれ、注目されるようになりました。

大手メーカーのビールとは異なる個性的で多様な味わいが好まれ、さらなる広がりを見せています。

 

 

<参考サイト>

・つい話したくなるビールの歴史と豆知識。ビールは常にイノベーションとともにあった

https://nf-startup.jp/report/details/3067/

・日本のビールの歴史と国内の大手ビールメーカーを知ろう!

https://tanoshiiosake.jp/9219

・クラフトビールと地ビールの違いとは?歴史や人気の理由も解説!

https://yonasato.com/column/guide/detail/craft_beer/jibeer/

・意外と知らなかった!「地ビール」と「クラフトビール」の違いとは

https://www.fujizakura-beer.jp/craft-beer-difference/

 

 

 


 

③ ビールの味わいや香りを決める、原料について

 

ビールの主な原料は、麦芽・ホップ・水、そして酵母です。

その組み合わせや量、使うタイミングや温度などにより、味わいや香りが変わります。

ビールの原料について、詳しく調べてみました。

 

【麦芽】

発芽した大麦の芽と根を取り乾燥させ、さらに熱風に当てながら焙燥(ばいそう)したもので、「モルト」とも呼ばれます。

大麦には、穀粒の実り方が二列の「二条大麦」と、六列の「六条大麦」があります。

ビールづくりに使われるのは、粒が大きく均一で、アルコールの原料となるデンプンの含有量が多い二条大麦で、別名ビール大麦とも呼ばれます。

小麦やライ麦、オーツ麦が使われるビールもあるそうです。

麦を発芽させることで、種子中の糖化酵素(アミラーゼ)が活性化し、麦芽に含まれるデンプンを糖に変えます。

その糖分を酵母が食べる、つまり発酵することにより、アルコールと炭酸ガスができるのです。

 

 

【ホップ】

多年生のつる性の植物で、松ぼっくりに似た花のような形をしためしべの「毬花(まりはな)」という部分が使われます。

ビールに苦味と香りを付けたり、泡のもちを良くしたり、腐敗を防いだりする役割を果たします。

北半球の涼しい地域で多く栽培され、8~9月頃に収穫されます。

香りの良い「アロマホップ」と、苦み成分の多い「ビターホップ」の2種類があります。

 

 

【水】

ビールの約90%を占める原料である水は、地域ごとに成分が異なり、その地でのビールの味わいに大きな影響を与えます。

日本で多く飲まれている淡色のビールには、カルシウムやマグネシウムなどの含有量が比較的少ない軟水が適しています。

硬水は、発酵も旺盛になりやすいことや、麦芽から多くの成分を溶け出させることなどから、濃色のビールづくりに向いているそうです。

 

【酵母】

ビールのもとである麦汁を発酵させてビールにする微生物

麦汁に含まれる糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する役割を持ち、発酵の副産物としてエステルという香り成分を生み出します。

ビールづくりに用いられるビール酵母は、上面発酵酵母と下面発酵酵母の2系統に分けられます。

上面発酵酵母は20℃前後で発酵し、発酵終期には酵母が液体の表面に浮いてきます。

味も香りも個性的なものが多く、多様性があります。

ヨーロッパなどでは上面発酵ビールが根強く飲まれています。

下面発酵酵母は10℃前後でゆっくりと発酵し、発酵終期には酵母が底に沈みます。

さっぱりした味わいですっきりしたのど越しが特長です。

15世紀に南ドイツで登場し、低温で発酵するため寒い時期にもビールづくりが可能なことや微生物の汚染リスクが低いことなどから19世紀にはビールづくりの主流となり、今や世界のビールの生産量の約9割を占めています。

 

主原料以外の副原料には様々なものがあり、アルコールのもとになるものと、香味付けに使われるものの2つに分けられます。

【アルコールのもとになる副原料】

米やトウモロコシからとったデンプン(スターチ)や、糖類があります。

これらの使用比率が高いと、酒税法では「発泡酒」とされます。

 

【香味付けに使われる副原料】

ラズベリーやチェリー、イチゴやリンゴなどの果物や、シソやハーブなどがあります。

これらの原料を使用すると、酒税法では「発泡酒」となります。

 

 

<参考サイト>

・ビールの原料って??

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/seminar/r5/2305/material.htm#:~:text=%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%80%81%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E9%BA%A6%E8%8A%BD,%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%82%E3%

・ビールの豆知識|ビールの造り方

https://www.brewers.or.jp/tips/production.html

・ビールの原料|4つの原材料の組み合わせで味わいが変わる!クラフトビールメーカーが解説

https://yonasato.com/column/guide/detail/craft_beer/material/

・これからビール通になりたい方へ

http://www.ji-beer.co.jp/app/Blogarticleview/index/ArticleId/43

 

 

 


 

④ つくり方により個性を生み出す!ビールの製法

 

ビールはどのようにつくられているか、調べてみました。

 

【製麦(せいばく)】

まずは麦を発芽させて麦芽をつくります。

デンプンやタンパク質を分解する酵素が生成されたり、大麦の成分を分解しやすい状態にしたりする工程で、ビールの色や香りはこの過程で特徴づけられます。

製麦は大きく3つの工程に分けられます。

<浸麦(しんばく)>

大麦を約15℃の水に2日間ほど浸すことで、発芽を促し、生育に必要な水分を吸わせます。

この間に水を入れ替えることで、大麦に含まれる雑味が溶け出し、また粒についているほこりも洗い流されます。

<発芽>

発芽室で15℃前後に保たれるよう冷風を送り、定期的に大麦を混ぜて発芽を促します

硬い大麦の粒が発芽によりやわらかくなります。

<焙燥>

発芽した大麦を熱風で乾燥させて発芽を止めます。

約50℃から約80℃まで徐々に温度を上げます。

大麦は香ばしく仕上がり、雑菌が繁殖できないほど乾くため長期保存が可能になります。

またビールの色や香りの成分もつくり出されます。

焙燥の温度や時間を調整することで、多様な味わいが生まれます。

焙燥が終わったら、大麦から渋味や雑味のもとである伸びた根っこを取り除きます。

 

【仕込み】

麦芽やホップ、またビールの味を変化させるオレンジピールや果実などの副原料を使用して、糖やアミノ酸を含んだ麦汁をつくります。

仕込みは大きく5つの工程に分けられます。

<粉砕>

麦芽を細かくすることで、デンプンを糖化させやすくします。

ただし細かくしすぎるとろ過しにくくなり、また、穀皮と呼ばれる大麦の表面にある苦み成分が麦汁に溶けだしてしまうため、細かくなりすぎないように粉砕します。

<もろみづくり>

粉砕された麦芽をお湯と一緒に仕込み樽に投入し、これを撹拌しながら適度な温度に保ちおかゆのような状態にします。

<糖化>

麦芽に含まれるデンプンを酵素によって糖に分解します。

この工程を「糖化」と言います。

同時にタンパク質はうま味成分のアミノ酸に分解されます。

糖化が最も進む約65℃を維持することで、おかゆ状から透き通った色のサラサラな状態へと変化します。

<濾過>

穀や麦芽の粒などの固形物を、大きなざるのようなろ過装置で取り除き、透き通った状態にしていきます。

この時、一番最初に搾り出された麦汁は「一番麦汁」と呼ばれ、すっきりとして渋みのない飲みやすい味わいになります。

さらにこの後、残った固形分にお湯をかけてエキス分を抽出したものが「二番麦汁」で、多くのビールはこれも使用しています。

<煮沸>

ろ過された麦汁を煮沸釜に移し、ビールの苦味や香りを付けるホップを添加して煮沸します。

加熱によりタンパク質が凝集して、徐々に透き通った麦汁に変化します。

煮沸する時間によって、苦みや香りの付き方が変わります。

また煮沸は、好ましくない香りを飛ばしたり麦汁を殺菌したりする効果も期待できます。

ホップは煮沸の序盤に入れると苦味が出ますが香りが付きにくく、終盤に入れると苦味はあまり出ず、香りが残ります。

ホップを投入するタイミングや量により、ビールの風味に個性が生まれます。

 

【発酵】

仕込み段階で糖化してつくられた糖を酵母により分解し、アルコールと炭酸ガスをつくります。

まず麦汁を冷却機で発酵に適した温度まで冷やします。

発酵方法は主に、約10℃前後で6~10日間ほどの「下面発酵」と約20℃前後で3~6日間ほどの「上面発酵」の2つに分けられます。

適温になった麦汁に酵母を加え、同時に酸素を供給することで、酵母が増殖して発酵が進みます(主発酵)。

約1週間程度で「若ビール」と呼ばれる状態になりますが、これはまだ味にコクや深みのないものです。

 

【熟成】

若ビールを貯酒タンクへ移し、数日間熟成します。

熟成することで、好ましくないにおいの成分が別の物質に変換されます。

また熟成中も発酵が進み(後発酵)、炭酸ガスが発生します。

 

【熱処理・濾過】

不純物や固形物を除去するために熱処理やろ過をして、ビールの風味を保つため酵母を死滅させ、濁りの原因となる物質を取り除きます。

熱処理には、ビールを容器に詰める前に殺菌する方法と、詰めてから容器ごと殺菌する方法があります。

熱処理していないビールは「生ビール」と呼ばれます。

熱処理はかつてはビールづくりに不可欠な工程でしたが、醸造技術が発達し、現在日本で流通しているビールの多くが生ビールです。

また最近では、あえてろ過をせず酵母が生きたままの「無ろ過ビール」もあり、濃厚なコクとフルーティな香りの独特な味わいが楽しめます。

 

【充填】

完成したビールを缶や瓶、樽などの容器に詰めてしっかりと密封し、出荷します。

 

 

<参考サイト>

・ビールの作り方をわかりやすく解説|製造工程を詳しく説明

https://www.sakesen.com/blog/how-to-make-beer/

・ビールのつくり方を分かりやすく解説!工程から発酵や熟成の方法、豆知識まで

https://yonasato.com/column/guide/detail/craft_beer/process/

・ビールの製造方法とは? 工程ごとに詳しく解説

https://tanoshiiosake.jp/9571

・ビールの豆知識あれこれ! 雑学でビールをもっとたのしく

https://tanoshiiosake.jp/7026

 

 

 


 

⑤ ビールの種類は世界に100以上!日本のビールの定義とは?

 

ビールの種類のことを「ビアスタイル」と呼び、その数は100種類とも150種類とも言われています。

製法の紹介でも触れたように、発酵方法による分類では大きく2つに分けられます。

「上面発酵ビール」は「エール」とも呼ばれ、豊かな香りと豊潤な味わいの傾向があります。

「下面発酵ビール」は「ラガー」とも呼ばれ、すっきりとした味わいの傾向があります。

この他、自然界に存在する野生酵母を使って自然発酵させる、ベルギーの「ランビック」などのビールもあり、「ワイルドエール」として上面発酵に分類されることもあります。

「エール」と「ラガー」それぞれの、代表的なビールについて調べてみました。

 

【エール】

<ペールエール>

「ペール」とは「淡い」を意味し、イギリスで誕生した当時に飲まれていた他のビールより淡い色合いだったことが名前の由来と言われる。

モルトのコクを感じられる「イングリッシュ・ペールエール」と、ホップの香りがふんだんに感じられる「アメリカン・ペールエール」の大きく2つに分けられる。

<IPA(アイピーエー/インディア・ペールエール)>

イギリス発祥で、多彩な派生スタイルを持つ、アルコール度数高めのビール。

ホップを大量に使用してつくるため、ホップ由来の香りと苦味が際立つ印象的な味わい。

<ポーター>

18世紀初頭のロンドンで、「古くなった酸味のあるブラウンエール」と「つくりたての若いブラウンエール」、「ペールエール」の3種類を混ぜたものが始まりとされる。

茶系の色味とコクが特徴の「ブラウンポーター」と、より濃色でコーヒーやチョコレートを思わせる香ばしい風味を持つ「ロブストポーター」がある。

<スタウト>

アイルランド発祥で、「ポーター」から派生した、コーヒーのようなロースト香が特徴のビール。

「ドライスタウト」や「スイートスタウト」「フォーリンスタイルスタウト」「オイスタースタウト」など、様々な種類がある。

<ヴァイツェン>

小麦麦芽を使ったドイツ伝統の白ビールで、「ヴァイス」とも呼ばれる。

酵母をろ過した透明で澄んだ「クリスタルヴァイツェン」、無ろ過で白く濁った「ヘーフェヴァイツェン」などがある。

ホップ由来の苦味が少なめで、バナナやクローブのような香りが感じられる。

<アルト>

デュッセルドルフで18世紀頃に発展した、下面発酵なみの低温で熟成される銅褐色のビール。

「アルト」はドイツ語で「古い」の意味。麦芽由来の焙煎香と、まろやかなコクが感じられる味わい。

<ケルシュ>

ドイツのケルン地方の限られた醸造所で厳格なルールのもとにつくられたビールだけが名乗れる、ビールとしては珍しく原産地統制呼称が認められた、伝統的なビアスタイル。

淡い色と酵母由来のフルーティーな味わいが特徴で、なめらかな口当たり。

<ベルジャンホワイト(ベルギーホワイトビール)>

ベルギー発祥で、中世から親しまれている、麦芽にしない小麦と大麦麦芽でつくられる白ビール。

煮沸時にコリアンダーシードとオレンジピールを加えるため、柑橘系の甘くさわやかな香りとスパイシーな風味が楽しめる。

苦味が少なく、フルーティーで飲みやすい。

<アンバーエール>

アメリカ西海岸発祥の、琥珀色のエールビール。

「アメリカンアンバーエール」「アメリカンスタイルアンバーエール」とも呼ばれる。

焙煎モルトによるカラメルのような香りと濃厚なコク、ホップ由来の苦味が特徴で、肉料理とよく合う。

 

【ラガー】

<ピルスナー>

19世紀、チェコのピルゼン発祥。

現在、世界のビールの主流となっており、日本の大手メーカーがつくるビールの大半はこの「ピルスナー」と言われる。

アルコール度数は低めで、透き通るような黄金色とキレのあるさわやかなのどごし、ホップの苦味が特徴。

<シュヴァルツ(シュバルツ)>

ドイツ発祥の黒ビール。

ロースト麦芽の、ビターチョコを思わせる香ばしさや甘み、ほろ苦さが特徴。

シャープでスッキリとした味わい。

<ボック>

ドイツのアインベック発祥。

アルコール度数の高さが特徴で、14%を超えるものも。

苦味は少なめで、香りや味わいはモルトの個性により異なる。銅色から黒色と比較的濃い色合い。

<アメリカンラガー>

爽快なのどごしと軽い飲み口で、苦味やクセの少ないスッキリとした味わいが特徴。

淡い黄金色。

 

 

ビールの定義は国によって異なるそうです。

日本では酒税法により、麦芽・ホップ・水と、その他政令で定める物品(麦・米・トウモロコシ・デンプン・糖類など)を用いて発酵させた、アルコール分20度未満のお酒で、麦芽の比率が50%以上のものと定義されており、この定義から外れたものは「発泡酒」とされます。

外国から輸入されたビールに「発泡酒」と表示されている場合がありますが、原料に小麦麦芽や果実などを使っており「ビール」の定義に当てはまらない、といった理由からとのことです。

 

また「第3のビール」や「新ジャンル」と呼ばれるビールテイスト酒類もあります。ビールは税率が高いことから、1990年代初頭に低税率の発泡酒が生まれましたが、何回かの税率改定やビールの麦芽比率の定義の改定などもあり、発泡酒よりも税率の低い第3のビールが開発されました。

第3のビールは法律上、麦以外の原材料を用いて発酵させたものは「その他の醸造酒」、発泡酒に大麦由来のスピリッツ(純度の高いアルコール)を加えたものは「リキュール」に、それぞれ分類されます。

2023年の酒税法改正により、現在は発泡酒と第3のビールは同額の酒税になっています。

また2026年10月にはビールと発泡酒の税率が一本化されるとのことです。

 

最近よく耳にする「ノンアルコールビール」は、ビールとどのような関係なのでしょうか。

ノンアルコールビールとはアルコール分1%未満の「ビールテイスト飲料」のことです。

日本の大手メーカーがつくる多くのものはアルコール度数0.00%ですが、酒税法ではアルコール分が1%未満であれば酒類にはならないため、アルコールが含まれているノンアルコールビールもあるのだそうです。

製造方法はいくつかあり、日本の大手メーカーで多く採用されているのは、抽出した麦芽エキスに糖類や香気成分などを加えて調合する、アルコール発酵をさせない方法とのことです。

他には、ビールの発酵工程においてアルコール度数が1%を超えないように、アルコールを生成しにくい専用酵母を使ったり、途中で酵母を取り除いたり、低温下においてアルコール発酵を止めたりする方法や、通常のビールからアルコール分を除去する方法などがあります。

 

<参考サイト>

・ビールのスタイルは世界に100種類以上! 人気のビアスタイルをかんたんな解説とともに紹介

https://tanoshiiosake.jp/12575

・初心者でもわかる!ビールの種類(ビアスタイル)をビールメーカーが徹底解説

https://yonasato.com/column/guide/detail/beer_style_290319/

・ビールの豆知識|ビールの種類

https://www.brewers.or.jp/tips/type.html

・ビールの基本 ビールの種類

https://www.kirin.co.jp/alcohol/beer/daigaku/genre/bas/bas01.html

・ビールとは、どのようなお酒ですか?

https://www.suntory.co.jp/customer/faq/005769.html

・ビール・発泡酒に関するもの

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/abc/abc-beer.htm

・なぜビールなのに「発泡酒」って書いてあるの?【ビールの定義の話】

https://www.nipponbeer.jp/column/definition/

・ビールの「定義」とは?「発泡酒」や「第三のビール」との違いって?

https://tanoshiiosake.jp/3394

・「第三のビール」の魅力を知ろう! 「ビール」や「発泡酒」との違いとは?

https://tanoshiiosake.jp/7970

・ビールと発泡酒の違いは?第3のビール、クラフトビールについても解説

https://www.shufoo.net/plus/shopping_tips/591

・ビアスタイルを知ろう!<8>【ノンアルコールビール】

https://www.nipponbeer.jp/column_tag/%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%AB/

・アルコール分0%でも本格的!「ノンアルコールビール」の味わい秘訣とおすすめ銘柄

https://tanoshiiosake.jp/7830

・ノンアルコール飲料って本当にアルコール0%?定義・醸造法や味わいについて解説

https://www.nihon-trim.co.jp/media/30417/

 

 

 


 

⑥ 《美味しい手延べ素麵》ビールのおつまみにふし麺のおやつ 編

 

手延べ素麵をつくるとき、素麵と一緒に生まれる「ふし麺」。

和風のクルトンのように、汁物にして食べる方が多いふし麺ですが、今回は小豆島の子どもたちには馴染み深い(?)食べ方をご紹介します。

「素麵の島」のおやつ『ふし揚げ』。

ふし麺をごま油やオリーブオイルで素揚げして、砂糖やきなこをまぶすだけで立派なおやつのできあがりです。

ポリッとした食感と、ふし麺の塩味と砂糖の甘みがほどよい、お手軽お菓子です。

揚げたてより、冷ましてから食べるのがおすすめです。

他にも醤油味やトウガラシを少し絡めたりして、お好みの味にすれば、立派な?ビールのアテにもピッタリなおつまみになりますよ。

 

数量限定で、あるときのみの販売となりますがご容赦ください。

 

 

《石井製麺所公式ホームページ》 https://141seimen.com/business/

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。

 

石井製麺所通信

2024年8月5日 【Vol.41】栄養成分の機能性について/アミノ酸②

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.41

栄養成分の機能性について/アミノ酸②

 

 

 

 

いや〜熱い!

暑さが厳しい折、皆さまお元気でお過ごしでしょうか。

石井製麺所では7月の発送シーズンのピークを過ぎましたが、まだまだ暑い日が続きそうとのことで、8月5日現在もたくさんのご注文を頂戴しております。

まだまだ、石井製麺所の素麵で少しでも涼しく美味しく元気よくお過ごしいただければと思います。

 

さて、今回のブログのお話は、4つ前のブログのテーマ「アミノ酸①」の続きになります。

アミノ酸が人の体に必要不可欠で、食べ物から積極的に摂らなければいけないということを学びました。

そのアミノ酸の働きで、食品に「うま味」を加えると聞かれたことがあるのではないでしょうか。

しかもそれを発見したのは日本人だとか。

グルタミン酸をはじめ、イノシン酸やグアニル酸というのは聞いたことがありますが、実はその他にもあるそうです。

このお話を調べたくてアミノ酸について調べていると、長くなりそうでしたので2回に分け、今回がその第二弾というわけです。

 

ところで、皆さんは、「もやしもん」というマンガをご存じでしょうか?

2004年に始まったそうですから今から20年前のマンガと言うことになりますが、発酵・熟成の勉強をするなら「読んだ方が良いよ」とお聞きしました。

そこには発酵熟成の理論や日本酒、ワインなどの詳しいお話をはじめ、日本の食糧事情や農業、酵母や菌のお話に加えてアミノ酸のお話もあるそうです。

ただ実は、昔、(原作の一部が)アニメ化されたときに見ていたことがあって、当時は面白いな〜と思っていただけでしたが、今になってその世界に踏み入れるとは思いもしませんでした。

最近はマンガをあまり読むことはありませんが、とても勉強になるとのことですので、一度、時間を作って読んでみたいと思います。

(追記)そして…思わずAmazonで全巻セットをポチってしまいました。便利な世の中ですね。

 

さてさて、お話を元に戻して。

小豆島の手延べ素麵は小麦粉とごま油の香りが特徴で、そこに「うま味」たっぷりのお出汁を利かせためんつゆが、素麵の美味しさをより一層引き立ててくれると思います。

新麺の開発に向けての勉強ではありますが、今回の「うま味」成分について学んでみると、自分好みの美味しいめんつゆができるのではないかと思っています。

「うま味」成分をいくつも掛け合わせると「うま味」の相乗効果といって、「うま味」の組合せは「1+1=2」ではなく、その何倍にも美味しさが膨らむそうですよ。

ぜひ今回のブログをお読みいただき、美味しいめんつゆやお出汁を利かせたお料理のお役に立てていただければと思います。

 

私も早速、「うま味」成分のひとつを多く含む干し椎茸と小豆島の醤油をベースに、オリジナルの美味しいめんつゆを作ってみたいと思います。

今回も最後までお楽しみいただければと思います。

 

 

【目次】

① 食べ物の味をつくり出すアミノ酸

② アミノ酸を増やし、より美味しくする発酵と熟成

③ 代表的なうま味成分と、うま味の相乗効果とは

④ うま味を発見したのは日本人

⑤ うま味を多く含む食品とは

⑥ 日本人と外国人の味覚の違いとは

⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》小豆島の美味しい出汁セット 編

 

 


 

① 食べ物の味をつくり出すアミノ酸

 

食べ物の味は、「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」の5つの基本味に分類されます。

人間にとって味を感じることは、生命維持のための欠かせない感覚です。

人体に有害なものの酸味や苦味などを感知することで危険な食物を避け、糖分の甘味やミネラルの塩味などを感じて栄養素を積極的に摂取するために必要なことだそうです。

うま味は、タンパク質を摂取したことを体に知らせるシグナルの役割を果たしており、うま味を感じることによって唾液や消化液が分泌され、タンパク質の消化をスムーズに進めることができるとのことです。

 

タンパク質には「味」がありませんが、細かく分解されてペプチドやアミノ酸になると味を持つようになります。

タンパク質を構成するアミノ酸は一般的には無味ですが、タンパク質が分解されて生じる遊離アミノ酸は味を持つそうです。

アミノ酸の中でうま味成分となるものは、グルタミン酸とアスパラギン酸です。

 

【グルタミン酸】

体内で合成できない必須アミノ酸。

体内で抗酸化作用を発揮するグルタチオンの材料のひとつ。

多くのアミノ酸がグルタミン酸をもとに合成されます。

世界で最初に見つけられたうま味成分で、昆布出汁から発見されました。

昆布の他にも、トマトやブロッコリーなどの野菜類、チーズなどの発酵食品に多く、他にもゼラチン、大豆製品、アーモンド、豚肉などに多く含まれています。

 

 

【アスパラギン酸】

体内でアミノフェラーゼという酵素によって生成される非必須アミノ酸。

エネルギー生産の場である「TCA回路」の最も近くに位置するアミノ酸のひとつで、エネルギー源として利用されます。

アスパラガスから発見されたのが名前の由来です。

醤油や味噌など発酵食品のうま味はアスパラギン酸によるものです。

肉類や、桜エビ、ゼラチン、大豆製品、タラ、落花生などに多く含まれています。

 

 

その他、甘味や苦味などを持つアミノ酸もあります。

 

【その他の味】

<甘味>グリシン・アラニン・トレオニン・プロリン・セリン

<苦味>フェニルアラニン・チロシン・アルギニン・イソロイシン・ロイシン・バリン・メチオニン・リシン

 

<参考サイト>

・うま味の基本情報

https://www.umamiinfo.jp/what/whatisumami/

・旨味とアミノ酸の関係とは?旨味を構成する2つのアミノ酸を徹底解説

https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/umami-amino-acid#:~:text=%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E9%85%B8%20%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%EF%BC%92%E3%80%81%E6%97%A8%E5%91%B3%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%82%8B2%E3

 

 

 

 


 

② アミノ酸を増やし、より美味しくする発酵と熟成

 

食べ物の味は、アミノ酸の種類や組み合わせにより決まります。

アスパラギン酸はうま味と酸味を持っており、グルタミン酸と組み合わせることでさらに美味しくなることが知られています。

たとえば完熟トマトは、グルタミン酸とアスパラギン酸が4:1の割合で含まれていると最も美味しいそうです。

また同じ食材でも、加工方法によってアミノ酸の量が変わるので、味も変わります。

食べ物の中のアミノ酸の数と種類が多いほど美味しくなります。

 

食べ物の中のアミノ酸を増やすには、タンパク質を分解する必要があります。

その方法には「発酵」と「熟成」の2つがあります。

 

【発酵】

食材に付着した菌やカビなどの微生物がタンパク質や糖質を分解して、うま味のもととなるアミノ酸やアルコールなどをつくり出すことにより、うま味や風味、栄養価が増したり、保存性が高まったりします。

麹菌や乳酸菌、酵母菌といった微生物によって、味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、ワインなどの発酵食品がつくり出されます。

 

【熟成】

 食品がもともと持っている酵素の力で、タンパク質の構造を壊してアミノ酸へ変換します。

肉や魚を適切な環境下に置くと、タンパク質が分解されてアミノ酸などのうま味成分が増えて、より美味しくなります。

ただし温度や雑菌の管理は難しいため、家庭で熟成肉や熟成魚をつくることは避けたほうが良いようです。

 

 

 

 


 

③ 代表的なうま味成分と、うま味の相乗効果とは

 

うま味物質は、アミノ酸系と核酸系に大きく分けられます。

核酸は、ヌクレオチドとも呼ばれるリン酸を含んだ物質で、生物の代謝や運動エネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)が有名です。

三大うま味成分とされるグルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸のうち、イノシン酸、グアニル酸は核酸系に分類されます。

この3つにアスパラギン酸とコハク酸を加えて五大うま味成分とすることもあり、コハク酸は有機酸系に分類されます。

有機酸とは、窒素を含まない炭素化合物で、エネルギー代謝サイクルに重要な物質です。

 

【イノシン酸】

カツオ節のうま味成分として発見され、カツオ節に多く含まれることで知られています。

体内のATPが酵素により分解された後の生成物で、肉や魚など動物性の食材に多く含まれます。

筋肉中にもともと含まれるアデニル酸が、動物の死後、酵素の働きによりイノシン酸に変化して増えます。

 

 

【グアニル酸】

干しシイタケなどの乾燥キノコやドライトマト、ズワイガニ、ウニなどに多く含まれます。

乾燥キノコの戻し汁にはグアニル酸の元となるリボ核酸が抽出され、それを一定の温度帯で加熱するとグアニル酸に変わるそうです。

生のキノコ類は細胞壁が壊れていないので、リボ核酸が抽出されにくく、グアニル酸の生成量が低いとのことです。

 

 

【コハク酸】

コハク酸脱水素酵素という形で体内に存在しています。

貝類や清酒のうま味成分で、酸味や苦味と混ざったようなうま味となります。

コハク酸をメインとした調味料は一般的ではありませんが、美容や健康への働きもあるため化粧品や入浴剤にも使われているそうです。

 

 

うま味物質は単独で使うよりも、アミノ酸であるグルタミン酸と、核酸系のイノシン酸やグアニル酸を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強くなることが知られており、それを「うま味の相乗効果」と呼びます。

グルタミン酸とイノシン酸の比率が1:1の時にもっともうま味が強くなるそうで、単独で味わうときに比べて約7〜8倍とされています。

 

世界各地で古くから、うま味を組み合わせて出汁をとることが経験的に行われてきました。

例えば、和食では昆布(グルタミン酸)とカツオ節(イノシン酸)、洋食ではトマト(グルタミン酸)と海老(イノシン酸)とムール貝(コハク酸)、セロリ・タマネギ・ニンジン(グルタミン酸)と牛肉(イノシン酸)、中華料理では白菜・ネギ(グルタミン酸)と鶏肉(イノシン酸)、など。

 

<参考サイト>

・うま味の成分

https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/ingredient.html

・旨味とは?主要な5つの旨味成分と多く含まれている代表的な食材

https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/umami-component

・イノシン酸とは?鰹節に多く含まれているイノシン酸の生成メカニズム

https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/inosinic-acid

 

 

 

 


 

④ うま味を発見したのは日本人

 

うま味は基本味の一種で、甘味・酸味・塩味・苦味の4つの基本味を混ぜ合わせてもつくることができない、独立した味です。

基本味は長年、甘味・酸味・塩味・苦味の4つであると考えられてきました。

1908年、池田菊苗博士が昆布出汁の主要な味の成分であるグルタミン酸の抽出に成功し、その味を「うま味」と命名しました。

 

これに続いて、カツオ節に含まれるイノシン酸、干しシイタケに含まれるグアニル酸も、うま味を持つことが解明されました。

池田菊苗博士は、グルタミン酸を主成分とした調味料(グルタミン酸ナトリウム)の製造法特許を取得しました。

この功績により特許庁の「日本の十大発明家」の一人に選ばれています。

1909年には最初のうま味調味料が市販され、1940年代までには世界各地でも販売されるようになり、現在では世界100カ国以上で広く使われているそうです。

1985年に開催された「第一回うま味国際シンポジウム」を機に、「うま味(UMAMI)」という用語が国際的に使用されることになったそうです。

 

うま味は、欧米では長らく味覚として捉えられていませんでした。

ようやく味覚として認められたのは2002年以降、うま味の受容体が発見されてからだそうです。

人間は舌にある味蕾により味を感じます。

味蕾とは、味を感じる味細胞が数十個集まっている器官です。

味細胞にあるタンパク質分子である味覚受容体の中で、グルタミン酸により強く活性化されるものがあることが分かったのが2002年とのことです。

ちなみにうま味の相乗効果の分子メカニズムが解明されたのは、2008年。

イノシン酸などの核酸系のうま味成分が、うま味受容体においてアミノ酸とは異なる部位に結合し、受容体の活性を増強することで、受容体がグルタミン酸のうま味をより強く受け取るようになることが分かりました。

 

 

<参考サイト>

・食とアミノ酸

https://www.ajinomoto.co.jp/amino/life/shoku.html

・うま味の知識

https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/discovery.html

・世界で認められてこなかった「旨味」が味覚研究の鍵になっている

https://www.meiji.net/it_science/vol377_yasuka-toda

 

 

 

 


 

⑤ うま味を多く含む食品とは

 

うま味は、私たちが普段から口にする様々な食品に含まれています。

その中でもうま味を多く含むいくつかの食品について、調べてみました。

 

【昆布】

褐藻類に属し、北海道を中心に広く東北の一部にかけて収穫されます。

グルタミン酸を豊富に含み、アスパラギン酸も含みます。

主に出汁用として使われるのは、真昆布、羅臼昆布、利尻昆布です。

2 年成長したものを7月から9月にかけて収穫し、その日のうちに乾燥します。

 

昆布出汁の取り方には、「水出し」と「煮出し」があります。

「水出し」は、昆布を水に入れてラップや蓋をして冷蔵庫で一晩寝かせます。

「煮出し」は、鍋に水と昆布を入れて30分ほど置いてから火にかけ、沸騰直前で昆布が浮いてきたら取り出します。

昆布のうま味は60℃で最も抽出され、80℃を超えると抽出されにくくなるそうです。

昆布を取り出した後の出汁は、臭みをなくすため沸騰させたら完成です。

 

 

【カツオ節】

タンパク質が豊富なカツオを乾燥させて、発酵を誘発する有益なカビを含浸させることにより、深く豊かな風味を生み出しています。

数カ月かけて完成したカツオ節は、削り機で削られ和食の出汁に使用されます。

生のカツオよりもイノシン酸が豊富に含まれ、昆布出汁のグルタミン酸と合わせるとうま味が相乗的に増します。

薄く削ることで、水に溶けやすい性質を持つイノシン酸の抽出を短時間で行うことができ、水に溶けにくい他のアミノ酸の雑味や濁りを防ぐそうです。

 

カツオ節の出汁の取り方は、鍋に水を入れて火にかけ、気泡がポコポコ湧いてくる程度に沸騰したら火を止め、すぐにカツオ節を入れ、蓋をせず10分置きます。

厚削りの場合は、火を止めずに弱火で10分~20分煮出します。

ザルにキッチンペーパーを敷いてゆっくり出汁を濾したら完成です。

カツオ節を混ぜたり搾ったりすると苦味や生臭さが出てしまうそうです。

 

 

【干しシイタケ】

生のシイタケにはグルタミン酸やイノシン酸が豊富に含まれています。

乾燥させることでグアニル酸が生成し、また水分が減ることでうま味成分が凝縮されます。

干しシイタケは風味豊かで独特の香りがあり、その戻し汁は出汁として利用されます。

 

干しシイタケのうま味は10℃を超えると破壊され始めるそうなので、水に干しシイタケを入れてラップや蓋をして冷蔵庫で一晩寝かせて出汁を取るのが良いそうです。

 

 

【醤油】

大豆・小麦・塩を主原料とし、微生物による発酵によってつくられる液体発酵調味料。

醤油のうま味は、大豆と小麦に含まれるタンパク質が麹菌の酵素で分解され、グルタミン酸を始めとする約20種類のアミノ酸に変化することで生まれます。

基本味の5味をすべて兼ね備え、300種類以上の香り成分を持ち、料理に深い味わいを与えます。

 

 

【味噌】

原料である大豆にはタンパク質が豊富に含まれており、麹菌の働きにより、味噌ができるまでの発酵過程で、その約30%がさまざまな種類のアミノ酸に分解されていきます。

グルタミン酸が最も多く含まれ、次いでアスパラギン酸が多く含まれます。

発酵期間が短い白味噌はアミノ酸の量は少なく、発酵期間が長くなるほどアミノ酸が増えていきます。

 

 

【トマト】

グルタミン酸を多く含み、熟すにつれてさらに増えます。

ドライトマトは、うま味が凝縮されています。

世界中でトマトを用いた調味料が使われています。

トマトソースは一般的に肉や魚と一緒に食されるため、肉や魚に含まれるイノシン酸との相乗効果でうま味が一層強く感じられます。

 

【チーズ】

チーズは熟成期間が長くなればなるほど、タンパク質がアミノ酸に分解され、うま味成分が増加します。

通常2年間、最高級品では4年間も熟成させる「パルミジャーノレッジャーノ」というチーズには、昆布に含まれるのと匹敵する量のグルタミン酸が含まれています。

他にも「エメンタール」や「チェダー」「カマンベール」などにも豊富だそうです。

熟成させていないフレッシュチーズには特有の味を持つ遊離アミノ酸がほとんど含まれていないため、あっさりとした味わいです。

 

【生ハム】

加熱工程のないハムで、イタリアのパルマハム、スペインのハモン・セラーノ、中国の金華ハムなどが有名です。

原料となる生の豚肉にはイノシン酸が豊富に含まれていますが、豚肉を塩漬けした後長期間熟成させることによりイノシン酸は減少し、グルタミン酸が増加します。

さらに水分が減少するのでうま味が凝縮されます。

 

 

 

<参考サイト>

・うま味を多く含む食品

https://www.umamiinfo.jp/richfood/

・うま味成分とは?種類の違いや含有量の多い食品も紹介

https://www.furutaya.com/blog/umami-ingredients/

・今日からできる!5つの素材別だしの取り方とだしがら有効活用方法

https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/stock-cooking

 

 

 

 


 

⑥ 日本人と外国人の味覚の違いとは

 

うま味が欧米で味覚として長年認められていなかったと前述しましたが、実際、日本人と外国人とで味の感じ方は違うものなのでしょうか?

日本人100名と外国人100名を対象に行われた「味覚力調査」(AISSY株式会社・2015年)によると、「うま味」についての日本人の正答率は71%で、外国人の正答率の34%の2倍以上だったそうです。

さらに「味覚力調査」の全体の傾向を見ても、外国人に比べて日本人の方が「味覚を感じる力が強い」ということが分かったとのことです。

 

また、世界各国の代表的な料理を比較したところ、日本の料理はうま味が強いという結果が出たそうです。

緑茶と紅茶、コーヒーの比較でも、緑茶は旨味の強さが特徴と言えるようです。

 

 

<参考サイト>

・日本人100名vs.外国人100名「味覚力調査」を実施/日本人の「旨味」正答率71%、外国人の正答率34%の2倍以上

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000012897.html

・日本人の味覚力は外国人の倍以上だった!

https://dime.jp/genre/416112/#google_vignette

 

 

 

 


 

⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》小豆島の美味しい出汁セット 編

 

小豆島の原風景とも言える、山あいの、川沿いに田畑が広がる中山(なかやま)に、 知る人ぞ知る美味しいシイタケを育てる「箭木(やぎ)椎茸園」があります。

その原木シイタケを使った干しシイタケを、美味しいめんつゆやスープに使えるようにとご相談させていただき、現在は干しシイタケを仕入れ、石井製麺所の手延べ麺とセットにしています。

 

ご相談に伺った際にはシイタケの栽培現場も見学させていただきました。

ほだ場(収穫場)一面にずらっと並べられたクヌギの原木は、 柔らかい日の光を浴びて、次に育つシイタケのために静かに力を蓄えているのでしょうか。

案内をしていただいたのは、五代目の箭木槙也さん。

代々ご家族でシイタケ農家を営まれており、現在は四代目であるお父様(箭木宏中さん)と、 親子二人で力を合わせて、原木の切り出しから乾燥(干しシイタケ)まで手掛けていらっしゃいます。

 

石井製麺所は海近くにある製麺所ですが、小豆島は車で少し走ると山の景色に出会います。

その山間の奥深いところに「箭木椎茸園」さんがあり、ここまで奥深く来たのは初めてでした。

 

シイタケ栽培に対するお考えをお聴きすると、「いかに雑菌に負けないように、シイタケ菌を原木内に行き渡らせるか」が勝負…とのこと。

原木の伐採と植菌の時期、木の種類や太さに応じたシイタケ菌の品種の選び方など、 目には見えない小さな菌のために心を配る、その仕事の一端を教えていただきました。

そんな箭木さんの育てる干しシイタケは、小豆島の産直でも人気で、島民にとって特別な一品です。

肉厚でうま味が詰まったシイタケは、いつもの食卓をちょっと贅沢なものにしてくれます。

「傘の裏側に黄色は、美味しい干しシイタケ茸の目印」 小豆島の“とっておき”の干しシイタケです。

 

 

【干しシイタケのうま味成分は、そうめん・うどんと相性バッチリ!】

 

箭木さん直伝の出汁の取り方は、 「干しシイタケを冷水で“5時間”かけてゆっくり戻す」こと。

干しシイタケのうま味成分グアニル酸の性質を踏まえた、これがベストな方法なのだそうです。

その干しシイタケのうま味を活かしためんつゆやお出汁で美味しい手延べ麺を召し上がってみてはいかがでしょうか。

いつもより時間をかけて、ちょっと贅沢な味をお楽しみください。

 
 
 

 

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in

 

《美味しい出汁で味わう<夏>セット》 https://141seimen.thebase.in/items/86095113

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。