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2023年1月26日 【Vol.6】冬が手延べ素麺づくりに最適な理由

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.6

冬が手延べ素麺づくりに最適な理由

 

 

 

 

夏の食べ物というイメージを持つ方も多い素麺ですが、実は手延べ素麺作りは冬が本番です。

手延べ製法では生地を細く引きのばして作るため、気温が低く空気が乾燥した気候が適しているとされます。

冬に手延べ素麺作りが盛んに行われる理由について、調べてみました。

 

三代目:小豆島は温暖で穏やかなイメージがありますが、冬はそれなりに寒くなり(雪が降ることもあります)、季節によって風がとても強い日が続いたりします。

ただ、比較的雨は少なく(それも年によって異なりますが)、海辺に近いながら空気は乾燥しがちです。

神奈川からUターンで戻ってきて、久しぶりに感じた冬の小豆島のイメージは、思ったより温かくないな…でした。

 

 

 

【目次】

① 寒い季節に作られる“寒製素麺”

② 冬の農閑期の副業として発展

③ 早朝3時から始まる手延べ製麺(※石井製麺所の場合)

④ 《産地紹介》愛媛県・五色(ごしき)素麺

⑤ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編

 


 

① 寒い季節に作られる“寒製素麺”

 

明け方の冷え込みが厳しく、空気の乾燥している12~2月頃の厳寒期、全国の手延べ素麺の産地で素麺作りが最盛期を迎えます。

寒い季節に作られる素麺は、春先や秋口に比べて塩の量が3割ほど少なくても細く長く伸ばせるので、麺の風味を損ねないそうです。

また、乾燥した冷たい空気が程良い時間で水分を飛ばしてくれることから、コシが強くて甘みがあり、小麦粉本来の味わいを楽しめる良質な麺に仕上がると言われます。

空気中の水分を吸収しにくいため、長期の保存にも良いそうです。

逆に夏は湿気が多く、生地が湿気を吸い込んでしまうので、素麺作りにあまり適していないとされています。

寒風にさらすことで麺がしまって旨みが増し、色もより白く美しく仕上がります。

 

香川県小豆島では、自然環境の良さを活かし天日干しでの素麺作りが行われます。

昔から続く冬の風物詩ともなっており、1月にはテレビのニュースでも取りあげられています。

 

 

<参考サイト>

・冬の風物詩 寒造り「そうめん」最盛期迎える

http://www.soba-udongyoukai.com/info/2013/2013_0109_kandukuri.html

・冬風そうめん色白に 小豆島「極寒づくり」最盛期

https://www.sankei.com/article/20180115-YFMJH3VPVNOBVJJ6VZENS5KWPU/

・瀬戸内の冬空に “天日干し” 小豆島の「寒そうめん」

https://www.youtube.com/watch?v=0EhJEo70Cw8

・そうめん作りは寒い季節が最適な時期

https://www.miwa-soumen.com/blog/203080.html

・手延べそうめんづくりはなぜ冬にする?

https://miwaokina.com/knowledge/knowledge/soumen/winter.html

 

 


 

② 冬の農閑期の副業として発展

 

素麺作りは、日本の素麺発祥の地とされる奈良県三輪から、揖保乃糸で知られる兵庫県の播州や、香川県小豆島など全国各地に伝わったと考えられています(「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.1 素麺1200年の歴史と、その三大産地について」をご参照ください)。

素麺作りに適した気候風土に恵まれ、かつ、良質な原料の調達が容易であった地域で、冬の農閑期を支える副業として発展したようです。

 

小豆島では、温暖で雨が少なく日照時間が長い気候のもと、瀬戸内海で採れる天然塩や、讃岐平野で作られる小麦粉、良質な清水、島で作られるごま油などを使っての素麺作りが行われ、主要産業へと成長していきました。

「池田町史」によれば、製法の伝来当初は盛んではなかったようですが、18世紀の初め(江戸後期)に大変盛んになったと当時の販売記録や輸送船の記録に残っているそうです。

また水源豊かな中山地区では、製造効率を上げるため、牛ではなく水車を使い製粉をされていたそうです。その当時から、今で言う組合のようなやり方で、製粉した小麦粉を共有し、製造担当者が素麺を作り、それをまとめて販売するようになったそうです。切磋琢磨しながら協力して製造効率を上げ、品質を安定させた素麺が評判となり、広まっていったようです。

そのおかげもあり今もなお、伝統的な手延べの製法が受け継がれ、日本全国に出荷されています。

 

三代目:その昔、小豆島に手延べ素麺の製法が伝わったのは、当時、お伊勢参りなどで三輪(奈良県)に立ち寄った際、耕牛を使い小麦を製粉して素麺を作る様子を見て、その地で製法を学び持ち帰ったとされているそうです。

これは、小豆島の中で民俗学を研究されている方からお聞きしたことなのですが、当時のお伊勢参りには誰でもいけるわけでなく、大変お金がかかったそうです。

その地域でお伊勢参りに行く代表者を決め、みんなでお金を出し合って行かせていたそうです。

当然、長期の旅となるため農閑期におこなっていたでしょうから、三輪を訪れた際に素麺を製造していて「農閑期の副業はこれだ!」と目を付けることが出来たのでしょう。

また、同じ境遇の者同士だからこそ、その製法を教えてくださったのではないでしょうか。

兎にも角にも、お伊勢参りに行って持ち帰った方の先見の明から、現代にも続く地場産業となったのでしょうね。

 

※写真は、殿川ダム上流に今も残る「殿川水天宮」。ブログ「小豆島そうめんの歴史をたどる」もご覧ください。

 

<参考サイト>

・小豆島の風土と素麺づくり

https://shimazen.co.jp/soumen/history

・手間ひまを惜しまない職人の技 小豆島の「手延べそうめん」

https://www.inoueseikoen.co.jp/products/detail.php?product_id=430

 


 

③ 早朝3時から始まる手延べ製麺

 

冬の気候を活かした素麺作りは、丸一日かかります。

小豆島の石井製麺所の例で言えば、材料を配合してこねる作業を、早朝3時ごろには始めます(「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.2 手間を惜しまない伝統の製法・手延べ素麺)をご参照ください)。

配合量は毎日同じというわけにはいきません。

その日の天候に合わせて、塩の量や練り具合、天日干しと室内干しの時間配分を調整するなど臨機応変に対応します。

こねてのばして、帯状になった生地を半分に折るようにして丸め、麺生地同士がくっつかないように、ごま油を塗りながら巻いていきます(油がえし)。

油がえし後は、しばらく寝かせて生地を熟成させます。この時間の長さも、気候や温湿度によって変えていきます。

生地をさらにのばして重ねて、のばして重ねて…を繰り返すことで、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、まるで何層にも重なった地層のように組織されます。

これを、よりをかけながら細くのばすことで断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれます。

多くの工程を経て細くのばした麺を、“はた”と呼ばれる干し台につけていきます。

その日の湿度に合わせて、手作業で箸を入れ、のばし上げた麺線のひっつきを一本一本丁寧に箸で分けていきます(はし分け)。

これを天日干しするのですが、完全に乾くまで屋外に干すのではなく、表面の水分がほどよく乾燥したのを見計らって、室内乾燥に切り替えます。

天日干しで表面をさっと乾かし余分な水分を取り、室内乾燥でじっくり時間をかけて乾かすことで、麺の一本一本がよく締まり、舌触りがつるっとした、見た目もなめらかで美しい素麺になるのです。

天日干しが上手くいかないと、乾きすぎによって締まりのない、ザラつきの気になる麺になってしまいます。

 

常に同じ味・同じ品質を保てるよう、ただひたすら一本一本丁寧に、素麺を作り続けています。

 

三代目:石井製麺所だけではないと思いますが、厳寒期の素麺作りは大変です。

太陽が昇るずっと前、深夜の空気はキンと張りつめています。仕込みの際は当然、水も使うので朝の作業は特に寒さが厳しく感じる時間かもしれません。

それなら暖房をつければいいかと言えば、そう簡単な話ではありません。

麺生地は、特に温度の変化に敏感なため、急な温度変化は熟成のコントロールを難しくしてしまいます。

そして何より、冬の麺のよさが失われてはいけません。

石井製麺所ではあまりに寒くて熟成が進まないときを除き、ストーブの使用は最低限にしています。

伸ばしから乾燥にかけては、半屋外とも言える環境での作業になります。作業が始まるとじっとしている時間は少ないので、だんだんと体が温まってくるのですが、作業を始める前は気合いが必要になりますね。

 

 

 


 

④ 《産地紹介》愛媛県・五色(ごしき)素麺

 

五色素麺は、愛媛県松山市の郷土料理として知られる5色の素麺。

人工着色料は使わず、もち麦・蜜柑・梅・抹茶など自然のもので着色されているそうです。

その由来は江戸時代にさかのぼるといわれます。

享保7年(1722年)、寛永から続く製麺会社の八代目・長門屋市左衛門の娘が椿神社に参拝したとき、美しい五色の糸が下駄に絡みついたのを見て、父親に「そうめんに五色の色をつけてみては?」とすすめたそうです。

これを機に色麺の技術が編み出されたと伝えられています。

5色の彩りのそうめんは評判となり、参勤交代の折に献上した八代将軍徳川吉宗から「格別上品至極」と賞賛されたとのこと。

また、朝廷からも「美麗五色は唐糸の如く美し」との綸旨を賜り、「五色そうめん」の名が全国に知られるようになったと言われています。

五色素麺を愛した著名人も数多く、近松門左衛門は「味はいうまでもなく、その美しい姿はまるで冬の日に輝きながら、舞い踊っている陽炎のよう」と賞しています。

正岡子規は「文月のものよ五色の糸そうめん」という句を残しています。

また、愛媛を代表するお座敷唄である「伊予節」にも、松山の名物名所のひとつとして「おとに名高き五色そうめん」と唄われています。

 

 

<参考サイト>

・カラフルそうめんの元祖!? 松山の「五色そうめん」を地元民オススメの贅沢な食べ方で!

https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_2662/

・五色そうめんの歴史

https://goshiki-soumen.co.jp/history/

・色麺300年! 愛媛の夏の味・五色そうめんの覚悟

https://www.ehime-np.co.jp/article/news202206030011

 

 


 

⑤ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編

 

石井製麺所のオリジナル手延べ麺に「手延べ麺 蕎麦風味」があります。

これは、小麦粉8に対して、蕎麦粉2を混ぜ、手延べ製法で作った麺です。

蕎麦の風味を感じながら、手延べ麺独特のツルッとした食感が楽しめるととてもご好評を得ています。

さて、なぜこの時期に蕎麦を紹介?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

「年越し蕎麦」はあまりにも有名ですが、「節分蕎麦」ってご存じでしょうか?

 

一般的に「年越し蕎麦」といえば、12月31日にコタツに入りながら、除夜の鐘の中継を見つつ召し上がったりされていますよね。

でも、蕎麦文化を研究されている方によると、年末に食べる風習は意外と新しくて、本来の「年越し蕎麦」とは違っていたそうです。

 

では、“本来”の「年越し蕎麦」はというと、節分に食べる「節分蕎麦」が「年越し蕎麦」だったそうです。

節分とは、季節の変わり目のことで、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれ前日でしたが、今では特に立春の前日を指して節分と呼ばれるようになっています。

立春の前日の節分は“大寒”の最終日で、冬から春への節目の日です。そのため江戸時代には、大晦日ではなく節分を本当の年越しと言う考え方があったそうです。

ですので、研究家の方によれば“本来”の「年越し蕎麦」は、「節分蕎麦」と言うことになるそうですよ。

なるほど。。。

 

節分には、柊にイワシの頭を指して戸口に立て、炒り豆をまいて悪疫退散、招福を願ったりされる風習がありますよね(地域によって違いはあるかもしれませんが)。

この風習は中国から伝わった宮中の年末の行事だったそうで、江戸時代頃には一般に広まり、立春の前日に行う清めごとになったそうです。

「節分蕎麦」とは、節分の日に食べる豆や恵方巻きのように縁起がよいメニューと言われていますが、江戸時代の頃には節分料理の元祖として全国に広まっていたそうです。
 
「節分蕎麦」をあまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の節分には「節分蕎麦」を石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」で召し上がってみるのはいかがでしょうか。
 
 
 

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/

 

《手延べ麺 蕎麦風味》 https://141seimen.thebase.in/categories/4801499

 

<参考サイト>

・そばの散歩道

https://www.nichimen.or.jp/know/zatsugaku/34/

・子育て情報メディア「KIDSNA STYLE」 2月3日は節分そばを食べよう。由来や意味、節分そばのレシピ
 

 

三代目:次回のブログは2/10ごろ、アップしたいと思います。

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。