【お!いしい けんぶんろく】 Vol.33
栄養成分の機能性について/ビタミンC・クエン酸
早いもので、5月1日より「手延べレモン素麺」を販売再開いたします。
この時期だけの味覚としていつもご好評をいただき、これまでにたくさんの方にお召し上がりいただいております。
下の写真は、そのレモン素麺を乾燥しているところです。
レモン素麺が始まると製麺所は、とてもフルーティな香りでいっぱいになります。
普段は小麦粉とごま油の芳ばしい香りでいっぱいですが、この日はレモンの香りが一際心地よい時間です。
ただレモン素麺は、ノバシから乾燥にかけて非常に気をつかう、なかなか製麺の難しい素麺のひとつなんです。
レモンに含まれる成分のせいだと考えられますが、とてものばしにくく、通常の素麺に比べて長い熟成時間が必要です。無理にのばしてしまうと、干している(乾燥させている)ときにも「プチプチ」と切れてしまうことがあります。
そうなってしまうと手の施しようがありません。。。
そうならないためにも、湿度や温度、水や塩加減に細心の注意を払いながらいつも製造をしています。
素麺づくり…特にレモン素麺は、干すまでに品質が決まるといっても過言ではありません。
(もちろん干してから、裁断、包装して出荷するまでにも大切な工程はありますが…)
そのため、従来の白い素麺のように、“いつもの”つくり方では上手く行きません。
小麦粉のブレンド割合を調整したり、のばす工程で特注の道具を使用するなど、さまざまに工夫を凝らして独自の製法を用いています。
もし機会がございましたら、「そんな手間暇の掛かる素麺なんだな〜」と思い出していただきながら、召し上がってみてください。
今回は、そんなレモンに多く含まれているという「ビタミンC」や「クエン酸」について調べてみました。
パッと思い浮かぶのは、酸っぱい食べ物で、なんとなく「ビタミンC」も「クエン酸」も同じように思っていましたが、実は全然別の物でした。
私三代目も大学生の時にアーチェリー部で副主将を務めた経験がありますが、暑い時期に集中力を高めたり健康に気を使う時にはいつも、「ビタミンC」や「クエン酸」を意識して活用していた記憶が蘇ります。
夏に失われがちな成分と聞きますから、やはり暑い時期には意識して摂取したいものですね。
ちょっとした気遣いで暑い夏も健やかに過ごせるヒントもあると思いますので、今回も最後までお付き合いただけましたら幸いです。
【目次】
① ご存じですか?!ビタミンCとクエン酸の違いとは?
② オレンジ果汁から発見されたビタミンC
③ 体内でつくれないビタミンC、摂取のコツは?
④ グルテン形成を助けるビタミンC
⑤ 紀元前から健康効果が注目されてきたクエン酸
⑥ クエン酸の効率的な摂り方や食べ方の工夫
⑦ 素麵の茹で水に梅干しを入れるとクエン酸の力で歯応えUP!
⑧ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺編
① ご存じですか?!ビタミンCとクエン酸の違いとは?
同じものと勘違いされることがある「ビタミンC」と「クエン酸」は、まったく別の物質です。
どちらもレモンなどの果物に多く含まれる水溶性の有機酸であり、酸っぱいイメージがあることから混同されてしまうようです。
ビタミンCは体内でつくれず、食品からの摂取が必須の栄養素です。
酸味はありますがクエン酸ほどではありません。
レモン果汁にはビタミンCの100倍以上のクエン酸が含まれるとのことで、レモンの酸味の主成分はクエン酸だそうです。
クエン酸は体内で合成でき、食品からの摂取が必須ではありませんが、炭水化物のひとつとしてエネルギー源になります。
ビタミンC とクエン酸それぞれについて詳しく調べてみましたので、次の段落からご紹介します。
<参考サイト>
・クエン酸とビタミンCの違いは?【全く違う別の物質です】
https://kagakucook.com/citric-acid-is-not-vitamin-c/
・クエン酸とビタミンCは違うもの?相乗効果で疲労回復!それぞれの効果と豊富に含む食べ物
https://kosodate-yakuzaishi.com/citric-acid-vitamin-c/
② オレンジ果汁から発見されたビタミンC
ビタミンとは、体の機能を正常に保つために必要な有機化合物です。
人間の体内では合成することができないので、食物から摂取する必要があります。
その性質から水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分けられ、ビタミンCは水溶性ビタミンのひとつです。
16世紀から18世紀にかけての大航海時代に、新鮮な野菜や果物の摂取量が極端に少なかった船員たちの間で「壊血病」と呼ばれる病気が流行しました。
血管がもろくなり、口や鼻から多く出血する症状が、血液が壊れていくようであったことからその名がついたそうです。
壊血病の症状は他にも、貧血・筋力量の低下・呼吸困難・いらつきなどがあるとのことです。
18世紀中頃、イギリス海軍のジェイムズ・リンドが、壊血病の治療に柑橘系の果物が有効であると示しました。
1919年、生化学者のジャック・ドラモンドが、オレンジ果汁の中に壊血病を防ぐ物質を発見し、1920年に初めて「ビタミンC」と命名されたそうです。
ビタミンCはアスコルビン酸とも言われ、コラーゲンの生成に欠かせない化合物です。
コラーゲンは皮膚・血管・軟骨などに存在し、細胞と細胞をつなぐ繊維状のタンパク質です。
ビタミンCが不足するとコラーゲンが合成されないため、血管がもろくなり出血を起こす壊血病の原因になります。
ビタミンCには他にも、鉄の吸収を促進する働きや、毛細血管・歯・軟骨などを正常に保つ働き、皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用、ストレスや風邪などの病気に対する抵抗力を強める働きがあります。
また、抗酸化作用が注目されており、がんや動脈硬化の予防、老化防止に役立つことが期待されています。
<参考サイト>
・厚生労働省e-ヘルスネット ビタミン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
・ビタミンCの働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-c.html
・ビタミンCの必要性~歴史から見るビタミンC~
https://www.mpc-lab.com/blog/20200604
・ビタミンCの働きと1日に摂取する目安量は?ビタミンCを多く含む食品も紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=180&category=health
・ビタミンCを多く含む食品
https://www.otsuka.co.jp/college/nutrients/vitamin-c.html
③ 体内でつくれないビタミンC、摂取のコツは?
ビタミンCは体内で、活性酸素を消去したり、コラーゲンなどをつくるのに必要な酵素の働きを助けたりすることで多く消費されます。
また、ストレスや喫煙などによっても消費量が多くなることが分かっています。
ビタミンCの推奨摂取量は、成人で1日100mgとされています。
余剰分は体外に排出されますが、過剰摂取による不調が現れたという報告もあります。
1度にまとめて摂取するよりも、1日3回の食事の栄養バランスを整えてこまめに摂取することが理想だそうです。
ビタミンCは、柑橘系の果物や野菜など、身近にある様々な食材に含まれています。
【1回の食事量に含まれているビタミンCの含有量】
・パプリカ(赤)生:1/2個(65g)あたり111mg
・キャベツ生:50gあたり21mg
・ブロッコリーゆで:1/2株(80g)あたり44mg
・キウイフルーツ(黄)生:1個(80g)あたり112mg
・イチゴ生:5個(75g)あたり47mg
・ミカン生:1個(100g)あたり35mg
ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、加熱調理で何割かは損失してしまうといわれているそうです。
調理時に水や熱に接する時間を短くすることや、煮出した汁ごと食べる、電子レンジを活用する、など工夫したいものです。
なおジャガイモやサツマイモはビタミンCがデンプンにより保護されているので、調理後もほとんど分解されず残っているそうです。
④ グルテン形成を助けるビタミンC
私たちの素麺づくりにおいて、その出来を左右する小麦粉の「グルテン」がビタミンCの影響を受けるらしいということで、調べてみました。
グルテンは小麦粉独自のタンパク質で、こねたり練ったりすることでできる繊維状の組織です。
グルテンにはグルテニンとグリアジンという2種類のタンパク質があり、この2つが絡み合って形成されます。
生地を引き伸ばす工程を繰り返す手延べ製法では、グルテンの向きが揃うことにより、ツルツルしたなめらかな食感が生まれて美味しくなります。
ビタミンCには、グルテンの中のゴムのような役割を担うグルテニン同士の結合を助ける働きがあるため、結果として生地の弾力性が高まりコシが強くなるとのことです。
昔から、パン生地に柑橘系の果汁を加えると品質の良いパンができることが知られていたそうです。
1938年にはビタミンCが製パン性の向上に寄与していることが証明され、その反応機構はある程度解明されています。
ビタミンCが空気中の酸素との接触などにより酸化され、酸化型ビタミンCとなります。
これが間接的に反応してグルテンの結合を進めるなどの働きにより、生地の弾性が高まるということです。
<参考サイト>
・パン作りを科学的に解説!絶対に失敗しないパン作りの基礎~グルテンに影響する食材~
・グルテンに影響を与える材料
https://note.com/otsukayosuke/n/n4c3a27ea2ee8
・グルテン
https://www.patissient.com/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%B3/
・製パンにおけるビタミンCの働きとは
https://www.panpedia.jp/lesson/pdf/2013.10_4-7.pdf
⑤ 紀元前から健康効果が注目されてきたクエン酸
クエン酸は、酢や柑橘類に含まれる酸味成分のひとつ。
人間が生きていく上で重要なエネルギーをつくり出すために必要不可欠な成分です。
また乳酸の生成を抑制し、疲労回復にも役立つとして、クエン酸を多く含む食品が古くから親しまれています。
クエン酸は1784年にスウェーデンの科学者シェーレがレモン果汁より発見しましたが、それよりはるか以前からその健康効果が人々に注目されていたと言われています。
紀元前460~377年の古代ギリシャでは、医者のヒポクラテスがお酢の力に注目して様々な病気の治療に利用したとの記録が残っています。
日本でも、4世紀前半頃から初めて食用の酢がつくられるようになったとされており、7世紀初めには酢をつくる官職が置かれていたほど貴重なものとして扱われていたそうです。
1953年、イギリスの生化学者H.A.クレブスにより「クエン酸回路」が発見されました。
クエン酸回路とは、細胞内のミトコンドリアで行われる、体を動かすのに不可欠なエネルギーをつくり出すシステムです。
摂取した食べ物の栄養素が体内に吸収され、酵素やビタミンによって分解される過程でエネルギーがつくられる仕組みのことで、クエン酸はクエン酸回路での化学反応において中心的な役割を担っています。
人間の体は約60兆個の細胞からできていて、ひとつひとつの細胞でクエン酸回路を正常に行うために、クエン酸は非常に重要な役割を持つ成分とのことです。
クエン酸の摂取によりクエン酸回路を活性化すると代謝アップにつながり、ダイエットにも役立つそうです。
他にもクエン酸には、疲労物質である乳酸を分解することにより、疲労回復や筋肉痛を軽減する働きがあるとされています。
また、その酸味により唾液や胃液の分泌を促して、食欲増進や夏バテ防止などにも役立ちます。
マグネシウムやカルシウムなどのミネラルの吸収促進、美肌、肝臓の機能改善などにも良いとされています。
<参考サイト>
・わかさの秘密 クエン酸
https://himitsu.wakasa.jp/contents/citric-acid/
・クエン酸の効果とは?お菓子・お料理・お掃除活用法
https://www.kyoritsu-foods.co.jp/feature/kuensan/
・疲労をためない手軽な工夫?疲労回復に役立つクエン酸を上手に取りましょう
https://brand.taisho.co.jp/contents/sports/529/
・クエン酸の効果・効能とは?健康効果が期待できる食品を紹介
https://www.suntory-kenko.com/column2/article/3388/
⑥ クエン酸の効率的な摂り方や食べ方の工夫
クエン酸は体内で合成されますが、体内には大量にためておくことができず、余った分は体外に排出されてしまうので、分散してこまめに摂取するのが良いそうです。
運動した後に摂るよりも運動前に摂ることで、エネルギーの生成がスムーズに行われ、運動中に疲労物質が分解が促進されて疲れが残りにくくなるとのことです。
クエン酸は、レモン、みかん、グレープフルーツなどの柑橘類や梅干し、酢など、酸味のある食べ物に多く含まれます。
大きめのレモン1個に約4g、梅干し1個に1gのクエン酸が含まれているそうです。
クエン酸を多く含む食材と相性の良い組み合わせについて、いくつか調べてみました。
【レモンとはちみつ】
はちみつの主成分であるブドウ糖と多糖は消化吸収が早く、体内ですぐエネルギーに変わるため、クエン酸を豊富に含むレモンと組み合わせることでさらにエネルギー代謝が促進します。
また、レモンのクエン酸がはちみつのビタミンB群の吸収を良くする、酸味が緩和され抗酸化に役立つ皮の部分も食べやすくなる、などの相乗効果が期待できます。
夏にはよくお世話になりました。
【梅干しと鶏むね肉】
鶏むね肉に含まれるイミダペプチドという抗酸化成分が、活性酸素による酸化ストレスから細胞がダメージを受けるのを防ぐとされます。
クエン酸が豊富な梅干しと一緒に摂ることで、エネルギー代謝の促進が期待できます。
クエン酸の働きで鶏むね肉がやわらかくなる効果もあります。
【梅干しと鶏レバー】
梅干しに含まれるクエン酸が、鶏レバーに含まれる鉄分の吸収を高めてくれます。
【グレープフルーツとホウレンソウ】
クエン酸の働きで、ホウレンソウに豊富に含まれるマグネシウムがより効率よく吸収できます。
<参考サイト>
・クエン酸が多く含まれる食べ物は?食べ合わせについても調査!
https://www.marine-bio.co.jp/citric-acid/article13/
⑦ 素麵の茹で水に梅干しを入れるとクエン酸の力で歯応えUP!
クエン酸は果物や野菜などに含まれる成分ですが、さらさらした白色の結晶性の粉末状で市販されているものもあります。
クエン酸の働きを調理などに活かすコツについて、いくつか調べてみました。
【根菜類の下ごしらえに】
ゴボウ、レンコンなどの根菜類は、水1リットルにクエン酸小さじ1(3g)を溶かした水につけておくと、黒ずみを防いできれいに仕上がるそうです。
【キャベツの下茹でに】
キャベツを茹でる時にクエン酸を少量お湯に加えておくと、独特の臭みが気にならなくなるそうです。
【大根おろしに】
大根おろしが辛い時に、クエン酸を少量加えると辛みが抑えられて食べやすくなります。
【焼酎やウイスキーに】
焼酎やウイスキーにごく少量のクエン酸を加えると、酸味がさらに美味しくなるそうです。
【素麺を茹でる時に】
鍋にたっぷりのお湯と梅干を2~3個入れ、沸騰した後2~3分煮ます。
そのお湯で素麺を茹でると、歯応えがぐんとアップします。
梅干しを入れることで茹で水が弱酸性に傾くと、麺のグルテンがしなやかになり、結果としてデンプンが溶けにくくなり、歯応えを保ちながらのどごし良く茹で上がるとのことです。
小豆島の製麺所の方に聞くと、このへん、色々な各ご家庭での食べ方や説があるようです。
茹でている時に梅干しを入れる方がいたり、お酢を入れたりする方もいらっしゃいます。
あと、ちなみにですが、茹でている時に「びっくり水」を入れる方がいらっしゃいますが、石井製麺所ではおすすめしません。
お湯の温度が下がってしまい、茹で時間がかかることでシャキッと茹で上がらなくなってしまいます。
しっかりとぐらぐらと沸騰したお湯に入れて茹でることをおすすめします。
<参考サイト>
・そうめんの科学
https://ntv.co.jp/megaten/oa/20180624.html
・コシのある素麺は梅干しでつくる!
https://note.com/travelingfoodlab/n/n0b2920e0f7e3
⑧ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
5月1日から販売を再開する「手延べレモン素麺」。
袋を開けて麺を茹でると、レモンの爽やかな香りが広がります。
酸っぱい素麺ではないのですが、レモンらしいほのかな香りと、すっきりとした味わいが特徴で、
コシの強い麺が夏の暑い日に気持ちよくのどを通る素麺に仕上がっております。
レモン(に含まれる成分)と素麺(特に小麦粉)は上述のように、実は、とても良好な関係のものなんです。
ですから、レモン素麺はちょっと“ミーハー”なイメージがあるかも知れませんが、製法、食べ方、食べる方の健康を考えた“良い出来”の素麺だと自負しています。
多少手間は掛かるのですが、毎年楽しみにしてくださるお客様もいらっしゃっいますので、私たちも精一杯製麺に取り組んでいます。
このブログを書いている時点で、販売はまだ解禁になっていませんが、販売再開の際には一度お召し上がりいただけましたら幸いです。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。