【お!いしい けんぶんろく】 Vol.53
麺究者への道/豆類を使った発酵⾷品について研究してみる
さて、今回のブログのテーマは「豆類」の発酵食品についてです。
その「豆」に関連して、小豆島で3月15日(土)、16日(日)に開催される「豆まめ市場」をご紹介させていただきます。
今回は豆繋がりということで(笑)。
食品関連のイベントではありませんが、小豆島内外からクラフト作家さんにお声がけして展示販売を行っているイベントだそうです。
飲食の出店や佃煮会社さんの出し物(この時は佃煮すくい)もあってけっこう楽しげなイベントです。
主催されるのは、「豆まめ市場実行委員」の皆さんで、島の若者(だけじゃありませんが)が中心となって、島に新しいイベントを開催しようと毎年3月に実施されているものです。
昨年の開催日に伺いましたが、あいにくの雨(大雨!)でしたが出店者の皆さんは慣れたもの(?)で接客をしておられました。
島内では春めいてくると毎週のように島中のあちこちでイベントが開催されていて、島の方はもちろん観光で来られた方にも楽しいひとときを提供くださっています。
私は製造もあってなかなかお手伝いできませんが、主催されている皆さんを応援させていただければと思います。
島でのイベントは、島外の方との交流の機会でもありますし、日常では味わえない楽しい時間や珍しいもの、美味しいものもたくさんあって、これからも増えていくと嬉しいなと思います。
いつか、石井製麺所も何かの出店ができればと思います。
(商工会、自治会でのイベントではお手伝いなどしていますが)
寒さが厳しい日が続きますが、素麺づくりにはちょうど良いお天気と乾燥具合です。
人間にとってはとても厳しいですが、これも美味しい素麺ができると思えば、ありがたい寒さなのかも知れません。
最近は雪が降る日も多く寒さ厳しいですが、そのぶん春の訪れが待ち遠しいですね。
今回のブログは冒頭でも触れましたが「豆類」の発酵食品に関する内容です。
以前に、「納豆」「味噌」「醤油」とブログのテーマにしたことがありますが、今回は「豆類(に似たもの含めて)」です。
豆と思って調べていたら、豆でなく「種」だったりする内容もありますが、今回も最後までお付き合いください。
「小豆島で一番のクラフト市場 豆まめ市場」
日時 3月15日(土)10:00〜16:00、16日(日)9:00〜15:30
場所 安田の馬場
ホームページ mame2ichiba.jimdofree.com
写真は、「豆まめ市場実行委員会」様からご提供いただいたものです。
【目次】
① 言わずと知れた納豆・味噌・醤油
② 身近で意外な豆類(に似た)発酵食品とは?
③ 他にもある、日本の豆類発酵食品
④ 世界の豆類発酵食品
⑤ 《美味しい手延べ麺の紹介》京都・北尾商事様「黒豆そうめん」 編
① 言わずと知れた納豆・味噌・醤油
古くから現代に至るまで、日本の食生活には大豆の発酵食品が欠かせないものとなっています。
代表的なのが「納豆」「味噌」「醤油」。
それぞれ、以前このブログでも取り上げたことがある食材です。
その中から発酵に関する内容を抜粋・要約してお届けします。
詳しくは「【Vol.32】麺究者への道/納豆について研究してみる」
「【Vol.30】麺究者への道/醤油について研究してみる」もご参照いただければと思います。
納豆は、発酵により風味も栄養価もアップ!
独特のにおいや粘りが苦手という方も多いかも知れませんが、健康に良いことづくめの食品です。
日本人が納豆を食べるようになった時期ははっきりとは分かりませんが、米や大豆の栽培が普及し、野菜の煮炊きが行われるようになった弥生時代と推測されています。
当時の竪穴式住居の床には、納豆菌の格好の住みかとなる稲わらが敷かれていたそうです。
煮た大豆が稲わらの上に落ちたのか、稲わらでくるんで保存したのかで、納豆菌が大豆に偶然付着したのがきっかけという説をはじめ、時期や地域もさまざまな説があるようです。
室町時代には糸引き納豆が広く知られるようになり、日常的に食されるようになりました。
戦国時代においては、栄養価が高く保存性が良い納豆は、重要な兵糧のひとつとして武士のタンパク源やスタミナ源となりました。
江戸時代には一般庶民にも広く食べられるようになり、京都や江戸では「納豆売り」が毎朝納豆を売り歩きました。
ざるにわらを敷いて納豆を盛り、天秤棒にぶら下げて、量り売りしていたとのこと。
またこれとは別に、漬物店などの店頭でわらに包んだ納豆も売られていたそうです。
その後、包装形態が進化し、また納豆の製造方法などの研究が進み、1960年代以降の冷蔵輸送技術の発展と普及によって全国的に広く流通するようになり、その健康機能性の高さが注目され、人気の食材となっています。
納豆の基本的な材料は、大豆と納豆菌のみです。
納豆の発酵はおよそ20~24時間程度と、味噌や醤油と比べて短時間です。
伝統的な製法は、まず大豆を蒸して冷まします。
煮沸消毒した稲わらでつくった「わらづと」に入れ、40℃前後の環境で発酵させると、わらにすみついた天然の納豆菌が繁殖して、20〜24時間ほどで納豆が出来上がります。
納豆菌は、「枯草菌(こそうきん)」という細菌の一種で、田んぼや畑、枯れ草など身近なところに存在し、特に稲わらに多く生息しています。
煮大豆に納豆菌を加えると、発酵する過程で大豆のタンパク質を分解して吸収しやすくなり、納豆特有の香りや味、ネバネバが生まれます。
この粘性物質は、旨み成分の一種であるグルタミン酸が結合した「ポリグルタミン酸」というもので、昆布の旨み成分と同じものです。
糸を引けば引くほど、旨み成分が増します。
納豆菌は非常に高い繁殖力を持ち、乾燥や熱にとても強いため、取り扱いに注意が必要な場合があります。
酒蔵や味噌・醬油蔵、パン工房などに納豆菌が入り込むと、それぞれの食品の発酵に必要な麹菌や酵母などに良くない影響を与えてしまいます。
また熱湯消毒したり石鹸で洗ったりしても完全に殺菌できないため、納豆菌を持ち込んではいけないとされています。
納豆菌は胃酸にも強いため、生きたまま腸内にたどり着いてもともといる善玉菌を活性化させたり、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善したりする働きがあります。
納豆菌は食物繊維があると腸内での働きが盛んになるため、食物繊維も豊富な納豆を食べることで整腸を促進します。
また大豆に納豆菌を加えて発酵させる過程で、タンパク質分解酵素である「ナットウキナーゼ」を生成します。
ナットウキナーゼは、血栓を溶かし、血液をサラサラにする働きが知られています。
納豆を食べるときに25回以上混ぜてより粘りを出すことで、ナットウキナーゼが胃酸で溶けるのを防ぎ、腸で効率良く吸収されやすいという説もあるそうです。
さらに納豆菌は、骨の形成促進に深く関わる「ビタミンK2」を多く生み出します。
納豆菌の発酵により、増加する成分もあります。
原料の大豆が持つ「大豆イソフラボン」は、増加して腸から吸収しやすい「アグリコン型イソフラボン」の形に変化します。
女性ホルモンと似た働きを持つことから、ホルモンバランスを整え、更年期症を改善することが期待できます。
また、アンチエイジング作用が注目される「ポリアミン」は、私たちの体内でもつくられている、細胞の新陳代謝を正常に行うために必要不可欠な成分です。
大豆発酵食品にはポリアミンが多く含まれ、特に納豆は納豆菌による発酵によりとりわけ多く含まれているそうです。
味噌は、発酵・熟成により調和した豊かな味わいに。
日本の古来からの発酵調味料である「味噌」。
そのルーツについては、中国もしくは朝鮮半島経由で伝わったという説と、弥生時代から日本独自の塩蔵を経て発展したという説があるそうです。
中でも有力なのが、中国で生まれた、肉や魚を塩で漬けて発酵させた「醤(ひしお)」や、大豆や雑穀と塩を合わせて発酵させた「豉(くき)」が、日本に伝わり独自の発展を遂げたという説です。
奈良時代、701年に完成した「大宝律令」に「未醤」という文字が書かれており、「みしょう」 から 「みしょ」 、「みそ」へと変化していったと考えられています。
平安時代に初めて「味噌」という文字が文献に現れ、「延喜式(えんぎしき)」という法典では貴族の給与や贈答品として使われていたという記述があります。
当時は貴重な高級食材で、おかずとしての「なめ物」だったようです。
鎌倉時代には、中国からの僧の影響ですり鉢が広まり、粒味噌をすりつぶしたものを使った味噌汁が誕生したとされています。
室町時代には大豆の生産量が増え、農民が自家製の味噌をつくるようになり、保存食として庶民にも浸透しました。味噌汁以外の料理も、室町時代に生み出されたそうです。
戦国時代には武将たちが戦陣食として味噌を用いました。
貴重なタンパク源として、干したり焼いたりして携帯しやすくしていたそうです。
江戸時代には味噌汁が庶民の味となり、味噌が生活に根付いていきました。
そして現在に至るまで、容器の変化やだし入り味噌の登場など、社会変化に合わせて進化を続けています。
味噌は、大豆や麹、塩などを発酵・熟成させてつくられます。
まずは乾燥大豆を水で戻し、蒸したり煮たりして冷ました後、細かくつぶし、米麹と塩、水を加えて混ぜます。
これを容器に仕込んで発酵させることで、麴菌が持つアミラーゼが米のデンプンを分解してぶどう糖(グルコース)に、プロテアーゼは大豆のタンパク質を分解してペプチドやアミノ酸にします。
また、発酵過程でできたブドウ糖から、酵母によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵により酸味や香り成分がつくられます。
こうしてできた味噌の旨味は、大豆タンパクが分解されてできるアミノ酸(主にグルタミン酸)に影響され、熟成の進んだものほど旨味が強くなります。
さらに塩味や酸味、甘味が調和し、良い香りと適度な粘度が加わって形成されるそうです。
また熟成が進むと舌に感じる刺激が和らいで伸びとコクのある味わいになるとのことです。
味噌は仕込み初期には塩辛く感じられ、熟成するにつれて、塩分濃度は同じですが塩辛味が減少します。
この現象を「塩なれ」といい、乳酸やペプチド、アミノ酸など、酸味や旨味成分の影響を受けた結果起こるものだそうです。
味噌の甘味は、麹が多いほど強くなります。
これは、米や麦のデンプンが麹のアミラーゼにより糖に分解されるからとのことです。
熟成期間が長くなると、糖分は酵母や乳酸菌により消費されるため減少するそうです。
醤油の色や味わいは発酵・熟成により生まれる。
「醬油」は、大豆と小麦、塩を発酵熟成させたものです。
醤油のルーツは、紀元前700年頃の中国の古文書「周礼(しゅうらい)」に記述のある「醤(ひしお)」と言われています。
「醤」とは当時の塩蔵品の総称だったようです。
原料別に「草醤(くさびしお)」「肉醤(ししびしお)」「穀醤(こくびしお)」の3種類に分けられ、「草醤」は漬物、「肉醤」は塩辛類で、「穀醤」が現在の醤油や味噌の原型と考えられています。
日本では飛鳥時代のものと思われる木簡に、「醤」の文字が見られます。
大宝律令によると、宮廷の料理を司る「大膳職(だいぜんしき)」に属する「醤院(ひしおつかさ)」で、大豆を原料とする醤がつくられていたとされます。
奈良時代から平安時代頃、醤の形状が固形から液状へと変化したと考えられます。
大豆が日本で広く生産されるようになってきた鎌倉時代には、醤の一つである味噌の製造過程において、味噌桶の底に溜まった液体を「溜(たまり)」として利用しており、これが醤油の原型とされています。
室町時代の中頃には、現在の醬油に近いものがつくられるようになり、末頃から、関西を中心に醤油の醸造が盛んになりました。
江戸時代の中期には、大阪・堺、和歌山・湯浅、兵庫・龍野などの産地で醬油の量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上したと言われ、醬油が庶民にも広く普及した時期であったようです。関東でも、今の千葉県の銚子や野田が醤油の一大産地となり、江戸の人々の嗜好に合わせた「濃口醬油」が普及したようです。
江戸時代後期になると、寿司・天ぷら・蕎麦などの日本的な食文化が形成され、醤油は庶民の調味料として定着しました。
明治時代中期から大正時代にかけて、醤油製造の機械化や企業設立など近代化が進み、大量生産体制に移行していきました。
現在、多くの醤油が自動化された工場でつくられています。
その一方で、消費者の本物志向や自然志向の高まりにより、伝統製法でつくられる「天然醸造(本醸造)醤油」の価値が見直されています。
醤油づくりには微生物の働きが不可欠です。
その代表格が「麹菌」「乳酸菌」「酵母菌」で、この順番で活躍します。
それぞれがどのような働きをするか、整理してみます。
<麹菌>
蒸した大豆と炒った小麦に種麹を付け、3日ほどかけて繁殖させます。
これにより生み出された酵素が、大豆のタンパク質をアミノ酸に、小麦のでんぷんをブドウ糖に、それぞれ分解します。
麹は米や麦などの穀物にコウジカビを繁殖させたもので、麹菌を培養するもととなる種菌が、種麹です。
醤油の出来を左右するこの種麹を専門に生産し、醤油の製造業者に卸す「種麹屋」というものがあり、別名「もやし屋」とも呼ばれています。
米に麹菌を生やして熟成させた状態を「よねのもやし」と言う、京都の酒づくりで使われていた言葉が由来だそうです。
メーカーの要望に応じて、数多くある麹菌を単独または何種類か培養し、保存できるように乾燥させて種麹をつくります。
現在、種麹屋は日本に数件しかないとのことです。
小豆島にも「もやし屋」さんがあったそうです。
今は「森製菊所(せいぎくしょ)」さんですが、以前は小豆島の醤油蔵に卸す種麹を製造されていたそうです。
<乳酸菌>
有機酸をつくりだす微生物で、醤油にさわやかな酸味や味の伸び、深みを与えます。
乳酸発酵が進むほど、諸味が酸性になり、酵母菌が活躍しやすい環境になります。
<酵母菌>
アルコール発酵をする微生物。
醤油にはアルコールが数%含まれていて、皿に注いだ時にアルコールが揮発することで香りが立つのだそうです。
醤油づくりでは主に2種類の酵母が働いています。
まず「主発酵酵母」が、ブドウ糖をもとにアルコールを生み出し、乳酸菌がつくった有機酸と化学反応して、複雑な香りを生み出します。
次に「後熟酵母」がゆっくり活動し、味に深みを与えます。
このことから、熟成期間が長いと深い味わいになるのだそうです。
※写真はPhotoAC「小豆島 醤の郷」より
<参考サイト>
・納豆のまめ知識
https://www.mizkan.co.jp/natto-information/
・納豆の話
https://hakkousyoku.com/natto/
・納豆の豆知識
https://www.takanofoods.co.jp/fun/nattomame/
・Wikipedia 納豆
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%8D%E8%B1%86
・名物・浜納豆
https://ymy.co.jp/hamanatto.php
・納豆菌とは
https://www.hakko-blend.com/study/b_05.html
・「納豆の発酵による機能性」納豆菌
https://natto.or.jp/kenkou/nattokin/nat09.html
・納豆の健康効果 納豆の発酵と健康成分
http://www.natto-science.jp/effect02.html
・ 女性にうれしい成分 女性にうれしい納豆の健康成分と発酵効果
http://www.natto-science.jp/woman03.html
・【医師監修】納豆菌とは?特徴・効果・効能を説明。腸内環境にいい理由や「強い」といわれる理由を解説
・みそ・醤油・酒など食品工場で納豆を食べてはいけないのはなぜ?|食品工場で気を付けるべき細菌
https://www.exseal.co.jp/blog/taxonomy-07/8944/
・味噌のきほん
・マルコメ 味噌のこと
https://www.marukome.co.jp/miso/
・味噌 特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター
https://www.umamiinfo.jp/richfood/foodstuff/miso.html
・みそ(味噌)を知る イチビキ
https://www.ichibiki.co.jp/enjoy/knowledge_miso/
・みその豆知識 かねこみそ
https://kanekomiso.co.jp/knowledge/knowledge-of-miso/#section1
・味噌 ひかり味噌
https://www.hikarimiso.co.jp/enjoy-miso/encyclopedia/type.html
・しょうゆの歴史を紐解く
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html
・しょうゆを知る 歴史
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/history
・日本食文化の醬油を知る
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/mame01-a.html
・醤油づくりの微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌)
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0707
・日本酒や醤油、味噌に欠かせない「種麹」を育てる『もやし屋』をご存じですか?
https://cuisine-kingdom.com/hishiroku/
・酵母菌
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0711
② 身近で意外な豆類(に似た)発酵食品とは?
チョコレートやコーヒー、バニラも発酵食品なのをご存じですか?
製造の過程で発酵が欠かせないこれらの食品は、それぞれカカオ豆やコーヒー豆、バニラビーンズが原料だから、豆類の発酵食品と言えると思い、調べてみると、なんと!どれも「豆」ではなく「種子」なんですね(@@;)……。
でも発酵食品には違いなく、せっかく調べたので、よろしければお読みください。
【チョコレート、ココア】
原料のカカオ豆は収穫された後、カカオの果実であるカカオパルプとともに、バナナの葉で覆った木箱に入れられます。
木箱やバナナの葉に生息している酵母や乳酸菌、酢酸菌などによりカカオ豆の発酵が進みます。
酵母がカカオ豆に付着した果肉を消化してアルコールをつくる過程で、豊潤な風味を持つカカオ豆となるそうです。
乳酸菌は果肉に含まれる糖質から乳酸などをつくり出し、カカオ豆の酸度を変化させ、その後の化学反応や微生物の働きに影響をもたらします。
酢酸菌は、渋味の強いポリフェノールをマイルドな味わいの茶色い化学物質に分解するよう促すことで、コクと風味が生まれ、チョコレート色に変化するとのことです。
こうして発酵させたカカオ豆を、焙煎(ロースト)してつぶし、油脂を抽出します。
抽出された油脂はカカオバター、搾りかすはカカオマスと呼ばれ、これらに砂糖や粉乳を加えて練り固めるとチョコレートになります。
ココアは、カカオマスをさらに粉砕し砂糖や粉乳を加えたものです。
※写真はPhotoAC「カカオ」より
【コーヒー】
コーヒー豆は、コーヒーノキという植物の果実から種を取り出し、焙煎したもの。
熟した果実から種子を取り除き乾燥させるまでの過程を、コーヒーの製法において「精製」と言います。
精製はコーヒーの風味を決める大切な工程で、発酵の力が大きく関わっています。
精製の種類は主に3つに分けられるそうです。
「ウォッシュド(水洗処理方式)」
生産国の約7割が採用しており、品質が安定しやすい手法。
機械で外皮と果肉を取り除き、種の周りの粘着質の部分「ミューシレージ」を除去する際に発酵の力が使われます。
発酵槽という大きな水槽に半日漬けることで、果実についていた微生物が発酵してミューシレージが分解されます。
この過程で、豆ごとに個性ある風味が生まれるとも言われます。
発酵が終わると水で十分に洗い、乾燥させます。
「ナチュラル(非水洗処理方法)」
ウォッシュドに次いで広く使われている「ナチュラル(非水洗処理方法)」。
果実を天日干しして乾燥させてから脱穀して、果肉とミューシレージを取り除きます。
独特の発酵が起こり、ベリーのようなフルーティな風味が生まれるそうです。
水をあまり必要としないため、ブラジルやエチオピアなどの水源の豊かではない地域でよく使われる手法とのことです。
「ハニープロセス」(別名「パルプドナチュラルプロセス」)
皮をむき、ミューシレージはついたまま乾燥させます。
乾燥台の上で糖分の発酵が進み、徐々に黒っぽい色へと変化します。
ウォッシュドよりも甘みが強く、ナチュラルほどではないが果実の香りが感じられるコーヒーとなるそうです。
こちらも水を大量に使用しないため、環境の観点などからも近年注目を集めている手法とのことです。
【バニラビーンズ】
ラン科バニラ属のつる性植物である「バニラ」の種子鞘を、発酵・乾燥を繰り返すキュアリングという方法でゆっくり発酵・熟成させると、強い甘い香りを放つようになります。
熟成前のバニラに含まれる「グルコバニリン」という成分が酵素の働きにより「バニリン」となり、甘い香りが出現します。
鞘から取り出した種はバニラビーンズシードと呼ばれ、バニラ香料の原料となります。
鞘ごと粉砕しペースト状に加工したものもあります。
※写真はPhotoAC「バニラビーンズ」より
<参考サイト>
・チョコレートは発酵食品?その理由を管理栄養士が解説します
https://media.andew.co.jp/2022/03/chocolate_fermentation/
・チョコレートは発酵食品
・チョコレートは発酵食品だった!?
https://weathernews.jp/s/topics/202202/070135/
・コーヒーって発酵食品?手元に届くまでの物語を知って、コーヒーをもっと楽しもう!
https://haccomachi.jp/column/2530/
・コーヒーの知識 Vol.4 – 精製方法によるコーヒーの味の違い
・コーヒーにも発酵があるの知ってた?コーヒーの精製とは
・【発酵文化から学ぶvol.2】こんなにあった!知られざる世界の発酵食
https://www.has710.com/blog/2023/03/24/column_hakko-vol2-world/#co-index-1
・甘い香りを生み出す「バニラ」って、いったいなに?
https://www.glico.com/jp/health/contents/vanilla02/
・#バニラ
https://orderie.jp/component/e/e-vanilla/
③ 他にもある、日本の豆類発酵食品
発酵文化が根付く日本では、各地で独自の豆類発酵食品が発展してきました。いくつか調べてみました。
【豆漬け】(北海道、青森県)
北海道の函館や江差、青森県津軽地方の郷土料理で、たくさん穫れた枝豆を美味しく保存するための漬物。
茹でた枝豆に水と塩、鷹の爪を加え、2~3日漬ければ浅漬けに。
2週間ほど漬け込むと、乳酸発酵して味わい深くなる。
【ごど】(青森県)
十和田地方に伝わる、納豆に麹を混ぜてさらに乳酸発酵させた郷土料理。
納豆と塩麹を足したようなドロッとした見た目で、発酵が浅いうちはご飯にかけたりおかずとして食べたりし、発酵が進んでドロドロに溶けたものは、調味料として使うとのこと。
稲作が難しく豆を主食とし、各家庭で納豆を手作りしていたこの地域で、うまく納豆にならなかったものがルーツと考えられている。
※写真はPhotoAC「ごど」より
【豆造(とうぞ)】(千葉県)
市原や長生地方特有の保存食で、年末から2月頃の寒い時期につくられる。
味噌をつくる際、大豆を煮た時に出る煮汁に、麹、干しダイコン、煮大豆または納豆などを入れ、1週間ほど置き発酵させる。
味がなじんだら、あたたかいご飯の上にかけて食べる。
【塩辛納豆(寺納豆、浜納豆)】(静岡県、京都府)
塩辛納豆は奈良時代に中国から伝わったもので、お寺でつくられることが多く「寺納豆」とも呼ばれる。
精進料理を食する禅寺で、不足しがちなタンパク質を補える食べ物として広まったと考えられる。
京都の大徳寺で保存食として今もつくり続けられている「大徳寺納豆」が有名。
「浜納豆」も同じ種類。
京都のお寺でつくられていた「塩辛納豆」が浜名湖畔などに伝わって名産品になり、足利義勝や今川義元、豊臣秀吉などの武将などにも好まれたとのこと。
特に徳川家康は「浜納豆」がお気に入りで、江戸幕府の歴代将軍に献上されていたとも言われている。
大豆と小麦と麹菌を塩水に漬け込んで熟成させるため、つくるのに数カ月~1年かかる。
出来上がると黒褐色の半分乾燥したものになり、糸引き納豆のようなネバネバはなく、塩辛く、たまり醤油や八丁味噌のような独特の風味がある。
お茶請けなどで少しずつ食べたり、調味料として使ったりする。
※写真はPhotoAC「大徳寺納豆 京都府」より
【おなめ】(埼玉県)
秩父地域を中心に食される、麦麹と大豆を使用した発酵食品。
水に浸しておいた大麦と炒った大豆を蒸し上げ、麹菌を混ぜ合わせてつくる「おなめこうじ」が材料。
塩と砂糖、水を煮立てて人肌の温度に冷まし、おなめこうじを加え、毎日かき混ぜれば1~2週間で出来上がる。
春先はフキノトウ、夏はミョウガを刻んで入れることも。
【しょうゆ豆】(長野県)
「しょうゆの実」とも呼ばれる、北信・中信地域に伝わる郷土料理。
蒸した大豆や黒豆を種麹で1ヵ月以上発酵させてつくる発酵食品で、醤油の旨味がつまった「食べる醤油」のようなもの。
温かいご飯の上にのせて食べたり、豆腐や野菜に付けたり、おひたしや納豆の醤油代わりに使ったりする。
※写真はPhotoAC「しょうゆ豆」より
【しょうゆの実】(山梨県)
芦安地域に古くから伝わる郷土料理で、大豆と麹を発酵させてつくる保存食。
稲作や野菜栽培に向かず、大豆が多く栽培されてきたこの地では、各家庭で醤油をつくり残った豆が「しょうゆの実」として食されてきた。
※写真はPhotoAC「しょうゆの実」より
【こる豆】(熊本県)
古くから伝わる、納豆を天日干しで乾燥させてつくる保存食。
納豆に塩を振り、小麦粉(または片栗粉、米粉)をかけて混ぜ、広げて2~5日間ほど天日干しする。
そのまま食べたりお茶漬けにしたりする。
【豆腐の味噌漬け】(熊本県)
約800年前、平家の落ち武者がつくり伝えたとされる郷土料理。
八代市でつくられる「かずら豆腐」や五木村の「樫の木豆腐」など硬い食感の豆腐が向いている。
豆腐の水気を切り、味噌に半年ほど漬け込むと、チーズのような風味になり、長期保存が可能になる。
※写真はPhotoAC「豆腐の味噌漬け」より
【豆腐よう】(沖縄県)
沖縄の島豆腐を、泡盛や麹、紅麹などに6カ月ほど漬け込んだ発酵食品。
見た目は鮮やかな赤色をしているものが多い。
琉球王朝時代、貿易相手だった明朝(今の中国)で「腐乳(ふにゅう)」と呼ばれていたものがルーツとされる。
独特の香りがあり、ねっとりとしたチーズに近い食感で、濃厚で繊細な味わいが特徴。
酒のつまみや炒め物のアクセントなどに用いられる。
※写真はPhotoAC「豆腐よう 沖縄料理」より
<参考サイト>
・知る人ぞ知る漬物!「枝豆の豆漬け」
https://koizumipress.com/archives/19441
・【青森県】十和田のハードコア納豆、ごど-日本各地の手前みそvol.06
・ちばのふるさと料理-とうぞ
https://www.pref.chiba.lg.jp/ninaite/recipe/furusato/ryouri16.html
・名物・浜納豆
https://ymy.co.jp/hamanatto.php
・大徳寺納豆とは
https://www.honke-isoda.com/contents/category/about/
・おなめ 埼玉県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/33_25_saitama.html
・しょうゆ豆/しょうゆの実 長野県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/shouyu_mame_nagano.html
・しょうゆの実 山梨県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/shouyu_nomi_yama_nashi.html
・こる豆(こるまめ)
https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/korumame
・豆腐の味噌漬け 熊本県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/toufuno_misozuke_kumamoto.html
・まるでチーズ!沖縄珍味の代表格「豆腐よう」って!?
④ 世界の豆類発酵食品
世界に目を向けてみると、さらに多様な豆類発酵食品があるようで、食文化の奥深さを改めて感じさせられます。
いくつか調べてみました。
【豆板醬(トウバンジャン)】(中国)
そら豆に、塩、赤唐辛子、麹などを加えて発酵させた、中国・四川地方の調味料。
麻婆豆腐やえびチリなどの中華料理に用いられ、辛さや旨み、鮮やかな赤い色合いが特徴。
※写真はPhotoAC「豆板醤」より
【豆豉(トウチ)】(中国)
黒豆に塩や麹、酵母などを加え発酵させてつくる、日本の塩辛納豆に近いもので、色が黒く塩気の効いた食べ物。
「豉」(シ)は納豆のこと。
料理に深みのあるコクを加える調味料として使われる。
※写真はPhotoAC「豆豉」より
【豆豉醬(トウチジャン)】(中国)
豆豉をペーストにしたものに、唐辛子やニンニクなどを加えた中華調味料。
味噌のようにそのまま料理に加えて使う。
【毛豆腐(マオドーフー)】(中国)
安徽省を中心に広く親しまれている伝統的な珍味。
豆腐を小さく切り、竹の桟の上にすき間を開けて並べ、冷暗所で3~5日間置いてつくる。
発酵の過程でふわふわとした毛のような白カビが生えて表面を覆う。
クリーミーな味わいで、そのまま、または揚げたり炒めたりして食べる。
【腐乳】(中国)
干し豆腐に麹を付けて塩水の中で発酵させた伝統的な食べ物で、「中国のチーズ」とも呼ばれる。
おつまみとしてそのまま食べたり、ご飯に乗せたり、炒めものの調味料として使われたりする。
主に「白腐乳」「赤腐乳」「青腐乳」の3種類がある。
「白腐乳」は塩製腐乳で、表面は黄色がかっており中身は白。舌触りが滑らかで、豆でできたチーズのようなコクのある味わい。
「赤腐乳」は、赤麹を用いて発酵させた麹菌型腐乳。表面は真っ赤で中身は白。白酒に長く浸かるのでアルコールの匂いがする。
「青腐乳」は、ケカビを用いて発酵させた細菌型腐乳。上記2つに比べて腐敗臭が強い。
「臭豆腐」とも呼ばれるが、台湾などで食べられている臭豆腐とは別の食品とのこと。
【臭豆腐】(台湾)
豆腐を乳酸菌や酵母で発酵させた食品。
発酵過程で、独特の強烈な匂いが生まれる。
味わいは濃厚でコクがありクリーミー。
揚げたり焼いたり、スープに入れて煮込んだりして食べる。
中国南部発祥とされ、台湾に渡ってからさらに発展を遂げ、現在は台湾を代表するグルメとなっている。
※写真はPhotoAC「台湾名物 臭豆腐」より
【チョングッチャン】(韓国)
茹でた大豆を、納豆菌に似た枯草菌で発酵させ、発酵後に塩と唐辛子粉などを加えて貯蔵性を高めたもの。
日本の納豆のような糸を引く粘り気と独特の香りがあり、チゲをつくるのによく使われるとのこと。
※写真はPhotoAC「チョングッチャン」より
【テンペ】(インドネシア)
茹でた大豆をバナナの葉で包み、テンペ菌というクモノスカビの一種で発酵させた、ブロック状のもの。
白いカビで覆われており、日本の納豆のような粘り気やにおいはない。
揚げ物や炒め物などに使われることが多く、ヴィーガン食材として世界的にも注目されているとのこと。
※写真はPhotoAC「テンペ」より
【キネマ】(ネパール)
粘りがあり、糸を引くもので、製法も日本の納豆と似ている。
日本でいう味噌のような調味料として使われるとのこと。
【リビイッパ】(ブータン)
「リビ」=大豆、「イッパ」=発酵の意味。茹でた大豆をビニル袋に入れ自然発酵させたり、バナナの葉で包んで発酵させたりする。
丸く平たく成形し、焼いて食べられているとのこと。
【バーリュ】(インド)
においも味も日本の糸引き納豆にそっくりとのこと。
【ドーサ】(インド)
南インドで食べられている、レンズ豆と米を発酵させてクレープのように薄く焼いた食べ物。
軽い酸味とパリパリ感が特徴の、おやつ感覚の主食。
※写真はPhotoAC「ドーサ」より
【トゥアナオ】(タイ、ラオス)
「トゥア」=豆、「ナオ」=腐った、の意味。茹でた大豆を枯草菌で発酵させたもの。
粒状やペースト状のもの、さらにそれを薄くせんべい状に広げて乾燥させたもの、があるとのこと。
もち米と一緒に食べたり、炒め物などに使われたりする。
【ペーポー】(ミャンマー)
直訳すると臭い豆という意味。
糸を引かない納豆をつぶしたものを薄いせんべい状にしたり、調味料として使ったりする。
【ダワダワ】(ナイジェリア)
大豆ではなく「パルキア」という豆が原料で、炒ってから煮てひきわりにし、ヒョウタンに入れて発酵させる。
スープの調味料として使われるとのこと。
【ネテトウ】(セネガル)
こちらも「パルキア」からつくられる。
豆の形を残した塩からい半生のものや、乾燥させたもの、スモークしたもの、粉末にしたもの、がある。
スープなとの調味料に使われる。
【スンバラ】(ブルキナファソ)
「ネレ」などのマメ科の植物を原料としてつくられる。
豆の形を残して球状にして保存され、調味料として使われるとのこと。
【アカラジェ】(ブラジル)
大航海時代にアフリカから伝わった、北東部のバイーアの食べ物。
小豆に似た風味を持つ黒目豆と、刻んだタマネギを混ぜた生地を発酵させて揚げる。
屋台のB級グルメとしても人気。
<参考サイト>
・豆板醤ってどんな調味料?
https://www.orangepage.net/ymsr/kihon/hatena/posts/2751
・腐乳(発酵豆腐)
・中国・台湾の珍味「臭豆腐」とは?匂いや味についても解説します!
https://delishkitchen.tv/articles/2503
・納豆まめ知識
https://www.mizkan.co.jp/natto-information/mame/
・海外にも納豆はありますか?
https://www.natto.or.jp/hyakka/ped_natto02.html
・納豆の健康秘密と世界の発酵大豆食品をご紹介:知っておきたい6つの効能!
https://kikuya0029.com/blog/2394/
・ミャンマーの発酵食品
・中国の珍味「毛豆腐」とは?特徴や味わいを詳しく解説します!
https://delishkitchen.tv/articles/2622
・第9回 ドーサ(dosa)
https://mmp-lab.blogspot.com/2021/04/blog-post_8.html
・第10回 アカラジェ(acarajé、アカラ、acara)
https://mmp-lab.blogspot.com/2021/04/blog-post_12.html
・ブラジルのストリートフード、アカラジェ
https://koizumipress.com/archives/14795
⑦ 《美味しい手延べ麺の紹介》京都・北尾商事様「黒豆そうめん」 編
今回は、豆繋がりということで、黒豆を使った京都のお会社様が販売する素麺をご紹介させていただきます。
皆さんは、黒豆を素麺に練り込んだ「黒豆そうめん」をご存じですか?
京都の北尾商事様が販売されているのが「黒豆そうめん」です。
北尾商事さんは、文久2年から京都丹波産の黒豆や小豆を取り扱ってこられたとのことで、京都でも老舗のお会社様です。
昔から京料理や京菓子など京都の食文化を支えておられ、現在では、黒豆や小豆商品を多数販売されています。
「黒豆そうめん」には、京都丹波産の黒豆「新丹波黒」を使用しているとのことで、芳醇な黒豆きな粉の風味が素晴らしいお素麺です。
ぜひ一度お試しください。
※写真はPhotoAC「黒豆 イメージ」より
《石井製麺所公式ホームページ》 https://141seimen.com/business/
《京都・北尾商事様公式ネットショップ》 http://www.kitaoshoji.co.jp/
《京都・北尾商事様「黒豆そうめん」》 https://141seimen.thebase.in/items/81778481
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。