【お!いしい けんぶんろく】 Vol.71
メンコレ⑪/ひじきを練り込んだ麺の“滋味”
いよいよ今年も終わりですね。
石井製麺所では年末ギリギリまで製麺する予定(なはず)ですが、思い起こせば今年は年始から本当に色々なことがありました。
皆さんはどんなことが思い出に残っていますか?
今年の振り返りについては次号のブログで書きたいと思っていますが、今年の日本の話題(?)はなんといっても大阪・関西万博ではないでしょうか?
皆さんは行かれましたか?
私は…行くことはできませんでした。
開催が製麺シーズンと被っていて、まさに製麺のハイシーズンでしたから、それどころではなかったのですが・・・。
実はその大阪・関西万博では、小豆島の食材も大活躍していたんです。
いつもお世話になっている池田漁協さんのキッチンカーも出店されていたのですが、そこで一緒に、小豆島産ひじきを使った「小豆島手延べひじき麺」が販売されていました!
お聞きした話によると「冷やしひじき麺」として、大変人気があったとか。
多くの方に「ひじき麺」を召し上がっていただけて、人ごとながらにとっても嬉しく感じます。
石井製麺所では、三代目が厳選した小豆島のおいしい特産品も販売中です。
小豆島の美味しいもので、皆さんの心も体も穏やかで健やかな毎日に繋がればと考えております。
来年もまた大阪・関西万博のように大きくて派手なことはできませんが、地道にコツコツと取り組んで行きたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
今回のブログでは、大阪・関西万博で大活躍の「ひじき麺」の「ひじき」について調べてみました。
ぜひご一読ください。
石井製麺所でも「小豆島手延べひじき麺」を販売しておりますので、ご興味いただけましたらぜひ。

【目次】
① 昔も今も神へのお供え物に!日本人に欠かせない食材・ひじき
② ひじきはミネラルや食物繊維が豊富な健康食材!
③ 工業、医療、農業にも!ひじきの活用法いろいろ
④ 和洋問わず、家庭料理に大活躍!日本のひじき料理
⑤ 世界のひじき事情と、韓国のひじき料理
⑥ ひじきを練り込んだ麺あれこれ
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編
① 昔も今も神へのお供え物に!日本人に欠かせない食材・ひじき
日本近海には1,500種以上の海藻が自生しており、そのうち約50種類が食用とされているそうです。
海藻は、「緑藻類」「褐藻類」「紅藻類」の3種類に大きく分類され、ひじきは「褐藻類」です。
赤系と青系の光を吸収して光合成するクロロフィルaという色素や、青緑色を吸収するフコキサンチンという色素を持っており、緑色・橙色・黄色・赤色の光を吸収しないため、それらの色素が混ざり合って褐色に見えるそうです。
ひじきはホンダワラ科ヒジキ属の海藻で、北海道南部から九州南端まで、日本海側の一部を除く広い範囲の岩場に生息しています。
旬は3~5月で、1メートルほどに伸びた株を再び生えてくるよう根を残して刈り取るそうです。
多くは乾物として一年中出回ります。
ひじきは日本人にとって非常に歴史の古い食材であることが、縄文時代や弥生時代の発掘物から分かっています。
貝塚からは腐りやすいためか海藻は出土していませんが、貝類のエサとなる海藻も食用されてきたと考えられます。
高知県の竜河洞遺跡では、多数の貝殻に混じり、ひじきとみられる海藻が付着した土器片が見つかっています。
奈良時代には、神への供えもの「神饌」として使用され、支配階級の人々が食していました。
平城京から発掘された木簡に、当時の調(税金の一種)として海藻が時の朝廷に献上されていたことが記されています。
伊勢神宮では現在でも2日に1度の割合でひじきをお供えしているそうです。
平安時代中期の法聖書「延喜式」に朝廷への貢納品として選ばれたことが記されており、これが最古の記録とされています。
江戸時代には、寛永20年(1643年)に書かれた料理書「寛永料理物語」に、ひじきの調理法が「にもの、あへもの」と記され、当時すでに現代と同じような料理法で食べられていたことが分かります。
寛政年間(1789年〜1800年)には「伊勢ひじき」が名産として江戸で販売されるようになり、一般庶民も食するようになりました。
古くから食べられてきたひじきですが、生育環境の変化や漁獲者の減少により国内生産量が減少しており、現在国内で流通しているひじきの約9割が韓国・中国産の輸入品で、約1割が国内産とのことです。
国産ひじきは100%天然もので、国内の産地として有名なのは三重県・愛媛県・長崎県・大分県です。
海域によって目の長さや食感、色合いが異なるそうです。
ひじきは陸上の植物でいうと、茎(幹)の部分から芽(枝葉)が出ているような状態で生息しています。
加工の工程で茎からとれてしまう芽の部分が「芽ひじき」で、茎の部分が「長ひじき」となります。
芽ひじきは細く小さいため短時間で戻せて手軽に調理できます。
長ひじきは太く長く、もちもちした食感で食べ応えがあります。
1本のひじきの原藻から採れる割合は、芽ひじきが約8割、長ひじきが約2割だそうです。
※写真はPhotoACより
<参考サイト>
・ひじき: 国産は貴重品!家庭料理に出番が多数 黒さ際立つ素朴な海藻
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c15307/
・日本ひじき協議会 – ひじきの歴史
https://www.hijiki.org/trivia-history/
・伊勢ひじき本舗 ひじきについて
・ひじきの主な産地
https://www.kurakon.jp/ency_hijiki/01.html
② ひじきはミネラルや食物繊維が豊富な健康食材!
ひじきは栄養価の高い食材です。
日本の国土はカルシウム質が少なく、水や農作物だけでは充分なカルシウムを補給することができなかったため、先人たちは海からの収穫物でカルシウム不足を補ってきました。
内陸部では新鮮な魚貝類の入手が難しく、保存に適した海藻が食べられるようになったと言われています。
ひじきには、カルシウムや食物繊維、マグネシウムなどが豊富に含まれています。
カルシウムは骨の成長や骨粗しょう症予防に重要な栄養素です。
ひじきは海藻類の中でもトップクラスのカルシウム含有量で、乾燥ひじき100gあたり1000mgと、牛乳の約9倍含んでいます。
食物繊維は、腸の活動を活発にし、体内の脂質や糖、ナトリウムなどを吸着して排出する働きを持ち、便秘予防、血糖値の上昇抑制、血中コレステロール値の低下に役立ちます。
食物繊維は、ひじきには100g中51.8g含まれ、ゴボウの約10倍に相当します。
マグネシウムは、酵素の働きをサポートし、循環器系の健康を維持する必須ミネラルです。
そのほか、貧血予防に役立つ鉄分や、むくみ解消や高血圧予防が期待されるカリウム、新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの合成に欠かせないヨウ素なども豊富に含まれています。
ただしヨウ素の過剰摂取は健康に影響を及ぼす場合があるため、食べすぎないようにしましょう。
また、比較的高い濃度で無機ヒ素を含むことからひじきを食用としないよう制限する国もありますが、農林水産省によると、乾燥ひじきを水で戻し水洗いすることで5割程度減らせるそうです。
ゆでこぼしすれば9割減に。
食品を通じたヒ素摂取が健康に影響を及ぼした例もこれまでになく、毎日大量にひじきを食べない限り問題はないとのことです。
中国の伝統的な医学「中医学」によると、ひじきには余分な水分を排泄し、熱をとり、血を補う作用があり、貧血や脱毛、肌の乾燥を予防すると考えられています。
体を冷やす性質を持ち、しこりや痛み、しびれなどにも利用されますが、冷え性や下痢など身体が冷えている人は控えめにするのが良いそうです。
※写真はPhotoACより
<参考サイト>
・Weathernews – カルシウムが牛乳の9倍?旬を迎えているひじきの栄養効果
https://weathernews.jp/news/202502/250235/
・ふるなび – ひじきに含まれる栄養素は?効能や食べる際の注意点も解説
https://furunavi.jp/discovery/knowledge_food/202407-hijiki/
・クラシエ – ひじき|薬膳食材図鑑
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/yakuzen/ingredients/hijiki.html
・薬膳ごはん 横浜 胡桃の庁 – ひじきの効能 3つのポイント
https://yakuzen-school.net/archives/81947
③ 工業、医療、農業にも!ひじきの活用法いろいろ
9月15日は「ひじきの日」です。
栄養豊富な食材として親しまれるひじきを、もっと食べて健康に長生きしてほしいとの願いを込めて、三重県ひじき協同組合が昭和59年(1984年)に制定したそうです。
また翌年より「ひじき祭り」として、周辺市町村の福祉関係や敬老会等に伊勢ひじきを寄贈し、伊勢おかげ横丁で観光客に伊勢ひじきやパンフレットを無料配布しているとのことです。
※写真はPhotoACより
ひじきをはじめとした海藻は、そのまま食べる以外にも様々な用途で活用されています。
海藻から抽出された成分をアルギン酸ナトリウムなどに精製し、カルシウムと結合することでゼリー状に固まる性質を利用して、アイスクリームやチーズ、ヨーグルト、プリン、ゼリーなどの安定剤として使用しています。
また工業用として、農薬や糊、塗料などを固めるために使われます。
医療では、薬の錠剤を固めるのに使用されるほか、カプセルの材料としてや、歯型をとるためなどにも使われます。
また、高血圧症や甲状腺肥大症の予防薬や治療薬に使われています。
農業や園芸の場でも活用されています。
カリウムなどのミネラル分が豊富な海藻は、古くから海岸地域で田畑の肥料として使用されてきました。
現代でも、海藻エキスが植物成長促進剤として、花芽分化、果実肥大、老化抑制などに役立てられています。
また、ひじきを戻した水には窒素分やカルシウム分が含まれており、家庭菜園の肥料として利用することができるそうです。
※写真はPhotoACより
<参考サイト>
・カネリョウメディア – 想像もつかないところで使われている海藻
https://www.kaneryo.co.jp/media/seaweed/1943/
・海藻とはどんなもの?種類や海草との違いから多彩な利用方法まで
https://erecipe.woman.excite.co.jp/article/E1597146281394/
④ 和洋問わず、家庭料理に大活躍!日本のひじき料理
ひじきを使った料理の定番と言えば、大豆、ニンジン、油揚げなどと一緒に甘辛く煮た「ひじきの煮物」ではないでしょうか。
他にも炊き込みご飯やおから、卵焼きに入れるなど、家庭料理に活躍する食材です。
くせのない味わいと高い栄養価から、和食以外にも、サラダに入れたり、ハンバーグの具に混ぜたり、パスタに入れたり、ユニークなところでは蒸しパンやマフィン、パウンドケーキなど、幅広いメニューに使われています。
地域の特色を反映した郷土料理もあるようですので、いくつか調べてみました。
【じゃがいもとひじきの煮物】(山梨県)
ひじきを油で炒めてからジャガイモを加え、砂糖・醤油・みりんで煮る。
富士山信仰に関連し、御師(富士講の信者をもてなす人)が山開きの7月1日にふるまった料理。
「山のもの」と「海のもの」を合わせ、開山を祝う意味が込められている。
現代でも山開きの日に食べるほか、庶民の家庭料理として、特に新ジャガイモが出回る5月~10月に多くつくられる。
【ひじきごはん】(大分県)
良質なひじきの産地である津久見市で親しまれてきた郷土料理で、炊き込みご飯の一種。
ゴボウ、ニンジン、干しシイタケ、じゃこ天やさつま揚げなどを炒め煮にし、炊いたご飯に混ぜ合わせる。
※写真はPhotoACより
<参考サイト>
・じゃがいもとひじきの煮物 山梨県
・おうちで海ごはん「ひじきごはん」
⑤ 世界のひじき事情と、韓国のひじき料理
日本で一般的に食されるひじきは、他の国ではあまり一般的ではないようです。
もともと英語圏では海藻を食べる文化がほぼなかったそうですが、アメリカでは1960年代から「ひじき」という言葉が広く使われはじめ、マクロビオティック運動の影響を受けて、日本から輸入された乾燥ひじきがアジア系アメリカ人の食料品店などで扱われるようになったとのことです。
1970年代には日本食レストランの増加に伴い、アメリカでひじきを食べることも増えたそうです。
調べてみると韓国料理でひじきを使ったものがいくつかありましたので、紹介します。
【トッパプ(ひじきご飯)】(韓国)
全羅道の海辺や島に住む人々がよく食べる、ひじきを入れて炊いたご飯。
細かく刻んだキムチを混ぜて食べたり、ニンジンの千切り、豆腐、明太子をひじきと一緒に入れてご飯を炊いたりもする。
【トンナムルムッチム(ひじきの和え物)】(韓国)
「ムッチム」は和え物のこと。
ひじきを戻し水気を切って、醤油、砂糖、粉唐辛子、ごま油、すりごま、おろしニンニクなどで和える。
好みでコチュジャン、魚醤、酢などを入れたり、スライスしたタマネギや生唐辛子、ネギのみじん切りを入れたりすることも。
【ひじきの豆腐和え】(韓国)
ひじきを戻し水気を切って醤油とみりんで和えたものに、水気を切った豆腐を粗くつぶしながら加え、白ごまを入れて和える。
※写真はPhotoACより
<参考サイト>
・【欧米にない食文化】外国人は日本の“ひじき”をどう思う?
https://yukashikisekai.com/?p=109894
・トッパプ(ひじきご飯)
https://japanese.visitkorea.or.kr/svc/contents/contentsView.do?vcontsId=181429
・ムッチム 和え物
https://www.moranbong.co.jp/hanshoku/gourmet/detail/10960.html
・ひじきの豆腐あえ韓国風|松田美智子の季節の仕事
https://tennenseikatsu.jp/_ct/17771375
・韓国料理店に負けないレシピ – ひじきキムチレシピ
https://kankoku-ryouri.jp/tokimt/
⑥ ひじきを練り込んだ麺あれこれ
ひじきを練り込んだ麺について調べてみましたが、あまりたくさんは見つけられませんでした。
石井製麺所でも「小豆島手延べひじき麺」をご提供しておりますが、他社様でも蕎麦のような色合いのヘルシーな素麺がありましたので、紹介します。
【ひじき麺】(長崎県╱荒木商会)
食感のアクセントになるよう少し粗めの粒にしたひじきを、生地に練り込んでつくった素麺。
手延べならではのつるっとした食感と、ほんのり広がるひじきの香りが楽しめる。
・長崎県大村発 磯仕立てひじき麺【合資会社荒木商会】
http://www.infomart.co.jp/foods/specialty/20121204_f.asp
【ひじき麺】(岡山県╱宮田製麺)
五島・対馬など長崎県近海で採れた良質なひじきを使ってつくった麺。
つるっとしたのど越しともちもちした歯ごたえが楽しめる。
・宮田製麺株式会社 ひじき麺
http://oisiisoumen.com/shopdetail/009000000001/008/Y/page1/price/
【ひじき麺】(小豆島╱ナガセ)
小豆島産ひじきを、北海道産小麦100%の生地に練り込んだ麺。
湯がいた後に水で洗う必要がなく、スープ附属で手軽に温かい麺が楽しめる。
もちもちとした仕上がりで、贈答用にも。
・ひじき麺 自宅用10食セット
https://nagase.shop-pro.jp/?pid=43688195&csid=2

⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編
小豆島の海の香りがひろがる手延べ麺。
小豆島で採れたひじきを粉末加工して練り込んでいます。
小豆島の池田漁協と協同で開発した手延べ麺で、海に囲まれた小豆島らしさを大切にした石井製麺所のこだわり麺です。
温かいお出汁にもよくあう太麺仕上げです。



《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in
《小豆島手延べひじき麺》 https://141seimen.thebase.in/items/69194828
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。

