お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.36
麺究者への道/パンについて研究してみる
今回のブログでは、「発酵」「熟成」を語るなら触れておきたい「パン」について調べてみました。
実は、大手パン屋さんで働いた経験があります(笑)。
その時はアルバイトでしたが、今から思うと、家業を継ぐにあたってとても良い経験であり、知識を得る場であったと思います。
単に、パン好きだったのもありますが(笑)。
今、新製品開発にあたって「発酵」「熟成」について、色々と調べていますが、パンについては素麵の製造に近いところもあり、自分の中では参考になる点も非常に多いと感じています。
また逆に、パンに求められて素麵に求められていないものや、パンにはあって素麵に無いものなど、新商品だけでなく、サービスや製造工程でも学びが多く、こうしてブログを書く際にも改めて勉強になると感じています。
パンの歴史を掘り下げてみると、人間の歴史や文化の進化にパンも大きく関わっていたことに気付かされます。
主食とそうでないものの違いも大いにあるでしょうか。
では、なぜ素麵は主食にならなかったのか。
パンも元々は供物であったり、貴族や富裕層のものであったりしました。
素麵も日本に入ってきたときには、貴族のものであり、供物としても珍重されてきました。
それがいつしか、日常食とされるパンと非日常食(と思っていますが)の素麵では差がつき、食卓に上る回数も大きく異なってきます。
もちろん、手軽に食べることができるパンと、ある程度準備が必要な素麵では、自ずと差が出てしまいますが、果たしてそれだけでしょうか。。。
私は、素麵を日常食として取り入れていただくためには、どのような事が必要か、素麵業界のタブーを越えて考えています。
そういう意味では、近くて遠い「パン」は、私の目標であり、参考であり、ライバルでもあります。
今回のブログでは、知っているようで知らなかったパンのあれこれや、今さら聞けないパンの事情について調べてみました。
パンを専門とされる方には物足りないかも知れませんが、もし、追加情報などあればぜひご教授ください。
今回も最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。
【目次】
① パンの起源はメソポタミア。そして世界へ
② 鉄砲とともに日本に伝えられたパン
③ パン生地の主な製法とは
④ パンの美味しさは発酵により決まる
⑤ 天然酵母とイーストは何が違う?
⑥ 噛み応えの違いで分けられるハード系、ソフト系
⑦ 小麦とアレルゲンフリーを考える
⑧ グルテンを含まない「米粉パン」とは?
⑨ パンに似ている日本の郷土料理
⑩ 《美味しい素麺》手延べ乾平うどん 編
① パンの起源はメソポタミア。そして世界へ
今から8000年~6000年ほど前の古代メソポタミア(現在のイラク、シリア、トルコのあたり)では、小麦などの穀物を粉にして水を加え薄く伸ばして焼く、平たい無発酵パンを食べており、これがパンの原型と言われています。
この平焼きパンの食文化は中近東やインドの文化圏に広まり、今でもピタパンやトルティーヤ、チャパティなどが食されています。
その後、古代エジプトへ小麦栽培とパンづくりが伝わりました。今から約5000年前、パンを焼こうと小麦粉に水を加えて生地をつくり置いておいたところ、空気中の酵母がついて、自然に発酵。
それを焼いてみるといつもよりふっくらして美味しいパンができた、という偶然から発酵パンが生まれたと考えられています。
古代エジプトではビール発酵種を小麦粉に混ぜて「ガレット」と呼ばれる平焼きパンを焼くようになっり、これが世界最古のパンだと言われています。
最初は砂漠の中で強い太陽熱を利用して焼いていましたが、次第に色々な窯を工夫していったようです。
パンは、古代エジプトの人にとって日常の主食であると同時に神に捧げる供物であり、役人の給料でもあったそうです。
当時大麦の粥が主食だった古代ギリシャの歴史家ヘロドトスは、「エジプト人はパン食い人だ」と驚いたとのこと。ラムセス3世の墳墓にはパン職人たちの壁画が描かれ、大量のパンをつくっていた当時の様子が示されているそうです。
エジプト人はパンの製法を国外に伝えることを禁じていましたが、エジプトに捕虜として捕らわれていたヘブライ人により国外に伝えられたと言われています。
ヘブライ人は窯に工夫を加え、半連続的に大量にパンを製造する方法を開発しました。
これが直焼きパンの製法の始まりとのことです。
古代ギリシャでは今から2500年ほど前にエジプトからパンづくりが伝わりました。
特産のオリーブオイルを使った揚げパンや菓子などがつくられたり、酵母が含まれたブドウ液をパンづくりに用いるようになったりしました。
原料も多様化し、大麦、エン麦、粟、レンズ豆、さらにハチミツやクリーム、卵、ドライフルーツなどを使って主食だけでなく嗜好性の高いパンもつくられたそうです。
また、細かい粉をひくことができる「ひき臼」や、オーブンの原型に近い「パン焼き窯」が発明されるなど、製パン技術も大きく進歩したそうです。
※写真はPhotoACより「ポンペイ遺跡のパン屋」
古代ローマ時代、ローマ軍がギリシャへ侵攻すると、奴隷として捕らえられたギリシャのパン職人により、製粉や製パンの技術がローマへ広まりました。
小麦の皮を取り除いて白く口当たりのよいパンをつくるため、馬のしっぽの毛を使った「ふるい」が発明されたそうです。
ローマ市内には国営のパン焼き窯が設置されて大量生産がはじまり、パンの配給も行われたとのことです。
ローマでは貴族や教会が製パン所を支配し、庶民がパンをつくることを禁じました。
全盛期のローマの街には254軒の製パン所があったそうです。
パン職人は結束して組合を組織し、政治的にも地位が高く、様々な特権をもっていました。
ローマ帝国が各地を征服していくのに伴い、パン食文化もヨーロッパ各国に伝えられていきました。
ヨーロッパではそれまで主に大麦を生産していましたが、より美味しい小麦の生産に変化していったそうです。
また小麦の育ちにくいドイツやロシアなど北欧では、ライ麦粉のパンや、ライ麦粉に小麦粉を混ぜたパンをつくるようになったそうです。
ローマ帝国滅亡後、パンづくりの技術はほとんど進歩が見られませんでした。
当時パンづくりが許されていたのは、一部のパン屋と教会や修道院、貴族に限られていました。
14~16世紀、イタリアを中心にルネサンスが起こると、ヨーロッパでは国ごとに特徴のあるパン文化が花開き、国家規模でナショナルブレッドという考え方が生まれてきました。
フランスパン、イギリスパンといった言葉は、「我が国のパン」という意識が強いことから生まれたものです。
またイギリスから新大陸に渡ったパンは、機械化の恩恵を受けて生産の合理化や量産化が進み、アングロアメリカ系と呼ばれるリッチな配合のパンとなっていきました。
ちなみに「パン」と「ブレッド」は同じものです。
「パン」は日本語をはじめ、台湾語、韓国語、ポルトガル語、フランス語、スペイン語などで用いられる呼称で、語源はポルトガル語で「パン」を意味する“pão”だそうです。
「ブレッド」は、英語、デンマーク語、ノルウェー語などで用いられ、長方形の箱型で焼いた「食パン」を指すことが多いとのこと。
語源はゲルマン語で「醸造」を意味する “Brauen”と考えられています。
ちなみに英語圏で「パン」というと、フライパンの短縮形である場合が多く、「パンケーキ」はフライパンで焼くケーキに由来する言葉だそうです。
<参考サイト>
・パンの歴史館
https://www.yamazakipan.co.jp/stylebook/pan-history/index.html
・パンの歴史
https://www.guruman.co.jp/knowledge/knowledge-3523
・パンの歴史は、人類の食へのこだわりの歴史
https://www.pascoshop.com/Page/LP/column/09.html
・おしえて!小麦ごはん
https://delsole-komugigohan.jp/komugigohan/bread/genealogy.html
・パンの歴史
https://www.panstory.jp/history/history.html
・パンは文化だから伝統行事で使われている
https://www.pascoshop.com/Page/LP/column/10.html#:~:text=%E4%BE%8B%E3%81%88%E3%81%B0%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9,%E3%81%8B%E3%82%89%E7%94%9F%E3%81%BE
・「パン」と「ブレッド」「トースト」の違いは?
https://lowch.com/archives/15623
② 鉄砲とともに日本に伝えられたパン
本格的な西洋風のパンが日本へ伝来したのは1543年、種子島に漂着したポルトガル人によって、鉄砲とともに伝えられたとされます。
1549年、フランシスコ・ザビエルらが日本へやってきてキリスト教の布教活動をはじめると、「キリストの肉」とされるパンも全国へ広まりました。
織田信長は異国の衣食住について非常に関心を寄せ、パンも喜んで食べたと伝えられています。
南蛮貿易で栄えた肥前(長崎県)の平戸や長崎では、パンづくりが特に盛んになったそうです。
しかし、食べていたのは主に日本にやってきていた貿易商人や宣教師たちで、米を主食とする日本人にはパン食はなかなか根付きませんでした。
鎖国政策が打ち出されると、唯一オランダ人の入港を許可された長崎の出島だけでパンづくりが細々と続けられました。
1840年に清とイギリスの間でアヘン戦争が始まり、徳川幕府は外国からの攻撃に備える国防対策に着手しました。
江戸湾の警備を命じられた伊豆韮山の代官・江川太郎左衛門は、戦争が起こった時に兵士に持たせる「兵糧」として、携帯に便利で保存性もよく、火をおこさなくてもそのまま食べられるパンに注目。
1842年、本格的な製パン所をつくり、出島からパン職人を招いてパンを焼かせました。
今の乾パンのようなものだったと言われていますが、日本人が日本人のためにつくった初めてのパンであり、江川太郎左衛門は「日本のパンの祖」と呼ばれています。
1858年の開国後、欧米諸国から来日する外国人たちのため、居留地のある横浜に外国人の経営による4軒のパン屋ができました。
これに続き、長崎や函館の居留地でもパンづくりが行われるようになりました。
当時パンは高級品だったため、大衆にまでは浸透していきませんでした。
1874年、「銀座木村家」創業者の木村安兵衛が、日本人の好みに合わせ、日本酒づくりに使う米こうじ(酒種)でつくったパン生地を開発しました。
1875年にはこの生地であんを包んで焼いた「あんパン」を発売し、爆発的な人気を呼びました。その後、庶民の間であんパンやジャムパン、クリームパンなどの菓子パンが定着していきました。
1890年に大凶作が起こり米が不足すると、代用食として食パンに砂糖醤油をつけて焼いた「つけ焼きパン」が大流行したそうです。
明治から大正にかけて、製パン機械や原材料が著しく進歩し、パン産業は飛躍的に発展しました。
イーストが登場したのもこの頃です。
ビール酵母、生イーストを経て、アメリカからドライイーストが輸入されるようになり、1913年にはアメリカでイーストのつくり方を学んだ田辺玄平が国産イーストを開発。
それを使ったパンづくりが行われるようになりました。
第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官マッカーサーは「日本人を米と魚の食生活から解放する」と言明。
救援物資として日本に大量の小麦粉をもたらしました。
日本では「メリケン粉」と呼ばれ、委託加工所でパンが大量生産されるようになったそうです。
「中種法(なかだねほう)」というアメリカ式の製法でつくられた食パンは、やわらかくて日本人好みで、日本人も主食としてパンを食べるようになっていきました。
1946年には小学校でコッペパンと牛乳の学校給食が始まり、1954年に成立した「学校給食法」では、全国の小中学校の給食で主食がパンと定められました。
1964年の東京オリンピックをきっかけとして日本人の食生活の洋風化が進み、フランスパンやデニッシュペストリーなども登場しました。
1980年代に入ると冷凍パン生地技術が発達し、1990年代以降はコンビニエンスストアが急増。
いつでも手軽に、多種多様なパンを買い求められるようになりました。
その後、全国各地のご当地パンが注目されたり、食パンやコッペパンの専門店が誕生したりとパンブームが到来しました。
2011年には、総務省が行なっている家計調査でパンの購入額が初めてお米を上回りました。
製パン技術の進歩により、国産小麦を使った高品質なパンや全粒粉を使用したヘルシー志向の美味しいパンが次々と商品化されています。
農林水産省の調査によると、2021年の日本人の主食の構成比は、米食41.1%:パン食18.7%:麺類14.1%だそうです。
<参考サイト>
・「日本のパン文化の歴史〜パン史は日本史だ!〜」
https://angel-zaidan.org/contents/japanese_bread_culture_dai_1_kai/
③ パン生地の主な製法とは
パンの基本的な材料は、小麦粉と水と塩、ここまでは素麺と同じですが、そこにパン酵母が加わります。
パン酵母は「イースト」とも呼ばれる、約10ミクロンの卵型の微生物です。
パン酵母には、生地の状態を良くする、味と香りのもととなるアルコールやエステルなどの物質を生成する、など様々な働きがあります。
パンに主に使われる小麦粉は、タンパク質の多い強力粉です。
小麦粉を水とこね合わせると、タンパク質の一種である「グルテン」という網目構造の物質が形成されます。
こねることでグルテンができるのは、他の穀物にはない小麦粉ならではの性質です。
グルテンは弾力があり、引っ張ると伸びる性質を持っています。
塩はグルテンを強くして生地を引き締め、雑菌の繁殖を防ぐなどの役割を果たします。
グルテンが膜をつくり、パン酵母が発生させる二酸化炭素(炭酸ガス)を包みこむことで、パン生地が伸びてふくらみます。
ふくらんだ生地を焼くと、ふくらんだまま固まってパンができます。
パン生地は、使う酵母の種類や発酵させる時間、材料の配合量などにより仕上がりが大きく左右されます。
パン生地をつくる方法は細かく分けると約20通りあり、その多くは「ストレート法」「中種法」の2つの方法を応用したものだそうです。
【ストレート法】
必要な材料をまとめて1度にミキシングする製法。
作業工程が少ないため、短時間で簡単にパン生地をつくることができます。
発酵時間が他の製法より短いため、粉の風味を感じやすく、風味豊かでもちもちとした弾力のあるパン生地に仕上がりますが、ボリュームが出ない、大量生産できない、他の製法に比べて日持ちしない、などの短所があるそうです。
フランスパン、クロワッサン、デニッシュなどのパン生地づくりに向いています。
【中種法】
パン生地づくりに使用する小麦粉の一部または全部を先に発酵させて中種をつくり、残りの材料に混ぜ合わせて本仕込みする製法です。
「パン生地に使用する小麦粉の50%以上を中種に使用する」「つくった中種は最低2時間以上発酵させる」という2つの条件を満たす必要があります。
進展性が高く機械にかけても傷みにくい生地になります。
手間と時間がかかりますが、きめが細かくソフトでボリュームのあるパン生地に仕上がるため、ふんわりとした仕上げにしたい食パンなどに適しています。
<参考サイト>
・パンのミニ百科
https://www.yamazakipan.co.jp/entertainment/pan_ency/index.html
・パンの工場見学
https://www.panstory.jp/pankojo/pankojo.html
・パン生地をつくる上で知っておきたい!製パン法の種類
https://koki.company/blog/detail.html?1648456172
・パン作りの基礎
https://yoshitei.net/foundation/index.php?eid=00020
④ パンの美味しさは発酵により決まる
美味しいパンをつくるには、生地をうまく発酵させることが重要です。
パンづくりにおける発酵とは、生地の中にあるショ糖やでんぷんなどの糖分をパン酵母が分解して、炭酸ガスやアルコールを発生させることです。
粉に含まれるでんぷんが酵素によってより小さい麦芽糖に分解されます。
麦芽糖がパン酵母に含まれる酵素によってブドウ糖となり、さらに炭酸ガスとアルコールなどに分解されます。
発生した炭酸ガスは、パン生地の骨格であるグルテンの網目構造のなかに閉じ込められます。
パン生地がふくらみ、同時に発生するアルコールや香気成分、アミノ酸は、パン独特の香りや味わいのもととなります。
パン生地を発酵することにより弾力のあるパンになり、パンに風味や香りが生まれます。
発酵中はパン生地の熟成も進むため、小麦の風味や旨味、弾力を引き出すために大切な工程となっています。
パンの発酵は2段階に分かれています。
【一次発酵】
一次発酵の目的は、パン生地をふくらませることと、熟成により小麦の風味や旨味を引き出すことです。
ゆっくり時間をかけて生地を熟成させるほうが、美味しいパンになります。
一般的な一次発酵の方法は、まるめた生地をボウルに入れ、乾燥を防ぐためにラップをかけ、室温25~35℃、湿度70~75%の環境に置き、生地が2~2.5倍にふくらむまで待ちます。
生地の表面を指でそっと押してすぐに離し、指の跡が残ったら発酵が完了しています。
指を抜いた穴がすぐに元に戻ってしまう場合は発酵不足、穴の周りにシワができて生地表面に多くの気泡がある場合は過発酵とのことです。
一次発酵が不足していると二次発酵もうまくいかず、あまりふくらまないそうです。
ふわふわした感じのない、目の詰まったかたいパンになります。
逆に発酵させすぎると、パサついた食感でアルコール臭と酸味の強いパンになってしまうとのことです。
【二次発酵】
二次発酵は、成形したパン生地を最終的に発酵させることが目的です。
一次発酵の後、パンの成形をおこなうとパンの中の炭酸ガスが抜けていってしまいます。
パンを焼く前に再度発酵させることで、生地の中にまた炭酸ガスが生まれ、パンがふっくらと仕上がります。
一般的な二次発酵の方法は、成形後の生地をオーブンシートに並べ、室温30~40℃、湿度75~80%の環境に置き、生地が2倍程度にふくらむまで待ちます。
生地の表面を指で軽く押し、指の跡が少し残る程度であれば発酵が完了しています。
指の跡が完全に戻ってしまった場合は発酵不足、指の跡がしっかり残った場合は過発酵の状態です。
二次発酵が不足していると、うまくふくらまず粘土のような食感になるそうです。
逆に発酵させすぎると、表面がぼこぼこして焼き色があまりつかず、パサついた食感になってしまうとのことです。
<参考サイト>
・パンの発酵の仕組みと役割は?発酵方法の手順や膨らまない際の6つの原因
https://sala1.jp/column/bread-hakkou/
・パンの美味しさと食感の決め手になる発酵とは
https://koki.company/blog/detail.html?1666934987
・なぜ必要?パン作りに欠かせない「発酵」の役割と方法を解説
https://macaro-ni.jp/106288
⑤ 天然酵母とイーストは何が違う?
酵母は自然界の様々な場所に生息する微生物で、自然界には数百種類もの酵母菌が存在するそうです。
その中で、パンづくりに利用されるのは「サッカロマイセス・セレビシエ」という酵母です。
最近「天然酵母」という言葉をよく見かけるようになりました。
天然酵母パンはヘルシーというイメージがありますが、実は「天然酵母」も「イースト(パン酵母)」も同じ「サッカロマイセス・セレビシエ」に分類されるそうです。
天然酵母を使ったパンとイーストを使ったパンは、具体的に何が違うのか調べてみました。
「イースト」は、パンづくりに適した1種類の酵母を人工的に培養した酵母のことで、天然の酵母の中でも発酵力が高いものを選んでおり、また添加物によって酵母の発酵力や安定性を高めています。
パンの発酵に特化した酵母なので安定した強い発酵力があり、短時間でパンを焼き上げることができます。
イーストを使ったパンはよくふくらみ、ふんわりとやわらかく食べやすい食感に仕上がります。
酸っぱいようなアルコールのような、独特の香りがあります。
焼き立てが最も美味しく、時間がたつと乾燥が進んで味が落ちてしまいます。
「天然酵母」には実は明確な定義がなく、イーストと区別するための表現だそうです。
一般的に、穀物や果実などについている複数の酵母が混ざったものです。
発酵に関係ない酵母も含まれ、発酵する力を強める添加物が入っていないので、発酵力が弱く不安定な場合が多いそうです。
天然酵母に使われる主な素材は、小麦粉・ライ麦・米などの穀物、リンゴ・バナナ・イチゴなどの果物、レーズン・プルーン・いちじくなどのドライフルーツ、桜・ローリエ・ホップなどの植物、そのほかヨーグルトや酒などもあるそうです。
種類ごとに香りや風味が異なり、奥深く複雑な味わいを楽しむことができます。
自然界にいる酵母を一から培養する自家製酵母の場合、まず素材を5~7日間発酵させます。
その後3~4日間、毎日小麦粉を足して酵母を育て、パンをふくらませられる発酵力をつける「種起こし」という工程を経ます。
こうしてできた「種」を使ってパンをつくるので、培養から焼き上がりまで1週間以上かかるとのことです。
最近では、酵母を培養する手間が省けるドライタイプの天然酵母も市販されています。
天然酵母パンは、噛みごたえのあるもっちりとした食感になり、酵母の香りや小麦そのものの甘みなど奥深い味わいと豊かな旨みがあるのが特徴で、時間がたっても美味しく食べられます。
パンの生地をふくらませる材料には「ベーキングパウダー」もありますが、これは炭酸水素ナトリウム(重曹)を主成分とする合成膨張剤で、イースト(酵母)とは全く違うものです。
水分と熱により化学反応を起こして炭酸ガスを発生させ、生地をふくらませます。
生地を寝かせる必要がなく、すぐに形成や焼成に取りかかれます。
サクサクとした軽い食感に仕上がるので、蒸しパンや焼き菓子づくりによく使われます。
<参考サイト>
・天然酵母とイーストの違いとは?パン酵母の種類や使い分けのコツ
https://sala1.jp/column/kobo-yeast-difference/
・天然酵母パンとは?特徴や普通のパンとの違いについても解説!
https://www.kurashiru.com/articles/f27e5eb3-3e0b-4700-8cb1-ef43fa8fa990
・ゼロから学ぶパン酵母
https://www.cotta.jp/special/bread/yeast.php
・天然酵母ってなに?
https://pand.jp/article/bread/3476/
・天然酵母とは?天然酵母パンの秘密
https://www.tontonshop.com/page/67
・失敗しない!自家製酵母の起こし方~酵母作り|お悩み解決
https://tomiz.com/column/troubleshooting-guide/homemade-yeast/
・失敗しない!自家製酵母の起こし方~種起こし&パン作り|お悩み解決
https://tomiz.com/column/troubleshooting-guide/homemade-yeast2/
・インスタントドライイーストとベーキングパウダーの違い
https://www.cotta.jp/special/article/?p=51192
⑥ 噛み応えの違いで分けられるハード系、ソフト系
パンは、その食感の違いにより「ハード系」「ソフト系」と分類されることがあります。
その中間のものを「セミハード系」と言うことも。それぞれの材料や製法にはどのような違いがあるのか、調べてみました。
【ハード系】
材料は基本的に小麦粉・酵母・塩・水のみ。
生地が伸びにくく、ふくらむ力があまり強くないため、スチームを当てて生地表面を湿らせながら焼きます。
焼き上がると、皮はかたくパリッとしており、中身はもっちり歯応えのある食感になります。
バケットなど、料理に合わせて食べる食事パンが多いそうです。
【セミハード系】
ハード系とソフト系の間のかたさの食感のパンで、生地をゆでてつくるベーグルや、イタリアのフォカッチャ、食パンなどがあります。
【ソフト系】
材料は小麦粉・酵母・塩・水に、砂糖や卵、油脂などが加わります。
生地がふくらみやすいので、焼く時にスチームを当てる必要はありません。
全体にふわふわしたやわらかい食感になります。
糖分が多いため焼き色がしっかり付きやすい特徴があります。
バターロールや、ブリオッシュなどの甘いパンがあります。
<参考サイト>
・ハード系パンとソフト系パンの作り方や材料の違いと種類
https://bread-everyday.com/hardbread-softbread-difference/
・ハードパンとソフトパン
https://pan-zukan.com/shurui/hardsoft/
⑦ 小麦とアレルゲンフリーを考える
食品の製造に携わる者として、避けて通れないのが食物アレルギーの問題です。
パンや素麺の主原料である小麦のアレルギーをお持ちの方も少なからずおられます。
「アレルゲンフリー」「アレルゲン不使用」といった言葉がありますが、それぞれ意味合いが異なり、また、日本と海外でもアレルゲンに関する表記の違いがあるということで、調べてみました。
【アレルゲン不使用】
アレルゲンを含む原料を使用せずに製造したものを指します。
アレルゲンを含まない、ということではありません。
例えば同じ製造室内でアレルゲンを使用する食品を製造していた場合、混入の恐れが完全には否定できないからだそうです。
【アレルゲンフリー】
日本国内では、アレルゲン含有量が「数μg/g(数百μg/100g)未満」のものを指します。
検査技術の進歩に伴いアレルゲン含有量の検出下限値は下がっていますが、全く含まないことの証明は不可能なので、ゼロとは言い切らないそうです。
【アレルゲン除去食品】
消費者庁より許可を受けた場合にのみ表示ができる食品で、特定の食品アレルギーの原因物質である特定のアレルゲンを不使用または除去(検出限界以下に低減した場合を含む)したものです。
医師、管理栄養士等と相談し、指導に沿って使用することが適当とされています。
最近よく目にする「グルテンフリー」について、小麦アレルゲンが含まれていないという意味ではありません。
欧米諸国ではセリアック病という自己免疫疾患が一般的な病気のひとつであり、グルテンフリー食品はその治療食として利用されています。
グルテン濃度が20ppm未満であれば「グルテンフリー」の表示が可能だそうです。
輸入食品を利用する際には留意しておきたいものです。
日本ではセリアック病が極めてまれな病気とのこともあり、「グルテンフリー」記載の基準が現時点では定められていません。
グルテン含有量1ppm以下の米粉を「ノングルテン」と表示するガイドラインが策定されているそうです。
セリアック病は食物アレルギーとは異なるメカニズムで起こる病気なので、グルテンフリー食品が小麦アレルギーの人向けとは言い切れないようです。
日本では、ごく微量のアレルゲンによっても食物アレルギーが引き起こされる可能性を考慮して、小麦などの特定原材料を含む食品にあっては、原材料としての使用の意図にかかわらず、原則、当該特定原材料を含む旨を表示する必要があります。
数ppm以上の小麦総タンパク量を含む状況であれば、容器包装に小麦のアレルギー表示をしなければなりません。
また混入の可能性が排除できない場合については、食物アレルギーを持つ人に対する注意喚起表記が推奨されています。
<参考サイト>
・食物アレルギー表示で食品事業者に求められていること
https://www.sujahta.co.jp/analysis/c_06.html#:~:text=%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%92%E5%90%AB%E3%82%80%E5%8E%9F%E6%96%99%E3%82%92,%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE%E3%82%92%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・アレルゲンフリーの表示について
https://www.label-bank.co.jp/blog/allergy/201512allergy
・アレルゲン除去食品ってなに?
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_20231023_01.pdf
・輸入食品の「グルテンフリー」表示について
https://www.label-bank.co.jp/blog/foodlabel/gluten_free201607
・グルテンフリーについて
https://www.label-bank.co.jp/blog/foodlabel/201905gluten-free
・グルテンフリーとグルテンフリー食品が必要な人
https://www.nippn.co.jp/BrandB/eiyou/column/25.html
⑧ グルテンを含まない「米粉パン」とは?
健康や美容の面から最近注目を集めている「米粉パン」。
その製法や食感など、小麦粉を使ったパンとの違いについて調べてみました。
米を細かく砕いた米粉は、粒子が細かくさらっとしており、水に溶けやすくだまになりにくい特徴があります。
グルテンを含まないため、小麦粉ほどふくらまず、水分を多く含みしっとりもちもちした食感になります。
小麦粉パンに比べ咀嚼する回数が多いので満腹感が得やすく腹持ちが良いのが特徴です。
米粉パンはグルテンアレルギーの人でも安心して食べることができますが、中には小麦のグルテンを添加してつくられているものもあるため、気になる場合はしっかり確認する必要があります。
<参考サイト>
・グルテンフリーで注目される米粉パン!小麦粉との違いを解説
https://koki.company/blog/detail.html?1691370032
・米粉パンの特徴とは?メリットやデメリットもご紹介
https://www.kobeseika.ac.jp/contents/boulanger/rice_flour_bread/
⑨ パンに似ている日本の郷土料理
小麦粉を使った郷土料理は日本各地にありますが、その中でも、生地を練って重曹やベーキングパウダーを加え発酵させて蒸したり焼いたりしてつくる、パンに似た食べ物について、いくつか調べてみました。
【がんづき】(宮城県・岩手県)
小麦粉、ベーキングパウダー、黒砂糖、水だけでつくるシンプルな蒸しパン。
その名は、雁(がん)の肉に似ていることに由来するとされる。
おやつや軽食、また農作業の合間に小腹を満たすために食べられてきた。
※写真はPhotoACより「仙台の「がんづき」」
【小麦まんじゅう】(埼玉県・栃木県)
かつて埼玉県では米の裏作として小麦栽培が盛んで、小麦粉を使ったうどんやお菓子が伝承されてきた。
小麦粉に砂糖、牛乳、重曹、ベーキングパウダー、卵を混ぜ合わせて生地をつくり、小豆あんを包んで蒸した小麦まんじゅうは、七夕やお盆、十五夜などの行事に仏様にお供えする菓子だった。
栃木県は日本有数の麦作地帯で、お盆の前に挽きたての小麦粉が出回るので、お盆の行事時には小麦まんじゅうが食されてきた。
小麦粉と砂糖、重曹でつくった生地であんを包み蒸し上げる。
【焼きまんじゅう】(群馬県)
群馬県では小麦の生産がさかんで、小麦を使った郷土料理も多い。
小麦粉やもち米にどぶろくを加えて発酵させ、蒸してまんじゅうにし、さらに竹串に刺して味噌だれをつけ焼き上げる。
お花見や夏祭りなどの際に食されている。
【炭酸まんじゅう】(群馬県)
小麦粉と重曹、ベーキングパウダー、砂糖を使って生地をつくり、あんを包んで蒸し上げる。
中に高菜やおからなどのおかずを入れて惣菜風にするケースも見られる。
季節行事のおもてなし料理や、農作業の間食、農作業がひと段落した時のご褒美として食べられてきた。
【ばらっぱまんじゅう】(千葉県)
小麦粉にふくらし粉と砂糖を混ぜて生地をつくり、濡れ布巾をかけて数分寝かせ、あんを包んで蒸し上げる。
夏祭りやお盆などのハレの日に食べられている。
【かんこ焼き】(神奈川県)
江戸時代から相模原市津久井地域に伝わる郷土料理。
稲作に適さない山間地で、古くから麦や豆が栽培され、小麦を中心とする粉食文化が根付いている。
小麦粉でつくった生地を少し発酵させ、小豆、かぼちゃ、フキなどの山菜、しめじなどのキノコ、クリ、切り干し大根、漬物など季節の食材を具として包み、軽く焼いたあとに蒸しあげる。昼食やおやつに親しまれている。
【石垣団子】(神奈川県)【石垣もち】(大分県)
火山灰に覆われやせた土地が多かった神奈川県相模原台地では、麦やさつまいもが多く栽培されてきた。
「石垣団子」は、皮をむいたさつまいもをサイコロ状に切り、小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩を混ぜた生地に入れて丸め、蒸し上げる。
農作業の軽食として食べられてきた。
サイコロ状のさつまいもが石垣のように見えることからその名がついたとのこと。
大分県では小麦などの穀物栽培がさかんであったことから、小麦粉を使った郷土料理や菓子が浸透している。
「石垣もち」は、小麦粉とさつまいもだけを使ったシンプルなものや、地域によってはベーキングパウダーを加えてふんわりした食感を出すものもある。
【ほたようかん】(徳島県)
小麦粉と黒糖、重曹、ミョウバンでつくる生地の、蒸しパンのようなお菓子。
中に空洞ができていることを徳島の方言で「ほた」と呼び、ふわふわとしたスポンジのような見た目からその名がついたとのこと。
農作業の間食としてや、豊作を祝うものだったそう。
【みとりまんじゅう】(福岡県)
福岡県は小麦の生産が盛んで、小麦粉は身近な食材として用いられてきた。
小麦粉と砂糖、重曹を混ぜ合わせた生地であんを包み蒸し上げる。蒸した時に生地がふくらんで、きれいな丸い形になる。
今でもお盆につくられ、仏様にお供えされたり近所の親戚に配ったりする風習が残っている。
【ふくれ菓子】(鹿児島県)
鹿児島では江戸時代から黒糖が甘味料として強く根付き、黒糖を使った様々な郷土料理が生まれている。
小麦粉と重曹、溶き卵、粉黒糖、はちみつ、酢、水を混ぜ合わせ、蒸し上げる。
温かいとふんわりした食感で、冷めるともっちりとした食感になる。
かつては豊作を願う祭りの席や、農作業時のお茶うけとして食べられていたとのこと。
近年は郷土菓子として注目され、専門店などもできている。
※写真はPhotoACより「鹿児島県の郷土菓子 ふくれ菓子」
【げたんは】(鹿児島県)
かつて米の集荷地であった横川町(現・霧島市)に集まる人をもてなすための、お茶うけとしてつくられた。見た目が泥に汚れた下駄の歯に似ていたことからその名がついたという説があり、また「三角菓子」とも呼ばれていたとのこと。小麦粉と重曹、黒糖を混ぜ合わせた生地をオーブンで焼き、二等辺三角形になるように切って、黒糖の蜜にくぐらせて食べる。表面は黒糖の蜜のシャリッとした食感、中はしっかりとしたかたい生地で、時間とともに黒糖の蜜が染みこんでいく。
※写真はPhotoACより「げたんは 鹿児島名物 郷土菓子」
<参考サイト>
・農林水産省 うちの郷土料理
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html
⑩ 《美味しい素麺》手延べ乾平うどん 編
「手延べ乾平うどん」とは、小豆島の「手延べ素麺」の製法を生かしてつくられた「手延べうどん」です。
生地を“のばして”麺にするので包丁切りの手打ちうどんと違い、なめらかで角のない舌触りと、ツルツルとしたのど越しが特徴です。
さらに「手延べ乾平うどん」は麺を平たくすることで、スープや出汁に絡みやすくなり、美味しく召し上がっていただけます。
また、夏にお召し上がりいただくのにピッタリな、茹で時間が短めの「手延べうどん」です。
石井製麺所のイチオシの夏うどんと言えば、お家カレーを使ったカレーうどんです。
夏に食べるカレーうどん、美味しいですよね。
ぜひご自宅のカレーでお試しください。
もちろん、温冷どちらでも美味しく召し上がっていただけますので、お出汁を利かせためんつゆで、冷やしうどんとして召し上がっていただいても◎。
煮崩れしにくいので、温かいお出汁やスープと一緒に「豚キムチ鍋うどん」も暑い日にはおすすめです。
ドレッシングをサ〜ッとかけて、豚しゃぶサラダうどんもいかがでしょうか。
賞味期限は約1年となっていますので、備蓄食としてもぜひご活用ください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ乾平うどん》 https://141seimen.thebase.in/categories/5913110
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.35
栄養成分の機能性について/多量ミネラル
早いもので、長野での催事から約1カ月。
普段、自社工場内で作業をしています(地域の寄り合いや近くのお店や会社への配達はあります)が、催事で直接お客様と相対して販売の機会を得ることは大きな学びと、マーケティング戦略に繋がる気づきがあると感じます。
例えば今回の催事でも勝手に、「信州の方は美味しい『蕎麦』を食べておられるので、『素麵』にはご興味が薄いのではないか」と不安を感じておりましたが、「外で食べるなら『蕎麦』、家で食べるなら『素麵』」という方も多く、とてもホッとしたのを思い出します。
何事も向かい合って、きちんとお話をお聴きしてみないと分からないものですね。
これからも思い込みを持たずに、しっかりお客様とお話しさせていただきたいと思いました。
さて、GWも明けていよいよ本格的な夏が近づいてまいりました。
現在は定期的に雨の恵みがある小豆島ですが、オリーブの木も花を付け、まさに今が見頃です。
この時期が来ると、石井製麺所でも益々忙しさが増してきます。
いつもはGW明けに夏の素麺のご案内をお客様へお出ししていますが、今年は催事もあり、少し出すタイミングが遅くなりました。
古くからのお客様からは、「今年の案内はまだですか?」とお声もいただきながら、家族総出で封筒にご案内を詰めて準備させていただきました。
ただ、まだ石井製麺所を知って間もないお客様に対しては、少し早いのではないかなと感じる部分もあります。
やはり暑さを実感する気候になってからが、お客様にも喜ばれるでしょうか。。。
そのあたり、ご意見ございましたらぜひお聞かせください。
暑さで汗がしたたり落ちるくらいの季節に皆さまには、弊社の素麺を美味しく召し上がっていただけることを願っております。
ところで、暑くなって汗をかく季節には熱中症対策としても、塩分やミネラルの補給など注意が必要といわれます。
でも、塩分は「血圧が気になるから」と摂取を控える方もいらっしゃると思います。
素麵をつくる際にも塩は欠かせないのですが、その塩分を気にされる方もいらっしゃいました。
しかしながら素麵の場合は、茹でる際に塩分はほとんどがゆで汁に溶け出してしまうため、素麵自体に含まれる塩分量はほとんど無くなってしまいます(とはいえ、一緒に付けるめんつゆの塩分はあるので漬け過ぎには注意が必要ですが)。
夏場は特に(?)身近で、よく聞く「ミネラル」という言葉ですが、食事と切っても切り離せない大切なもののようです。
この季節、気になるミネラルについて調べてみましたので、今回も最後までお付き合いただけましたら幸いです。
【目次】
① 身体に必要な栄養素・ミネラルとは?
② 「多量ミネラル」それぞれの働きについて
③ 人体に不可欠な「塩」の働き
④ 熱中症を防ぐためにも欠かせない「水分」と「ミネラル」補給
⑤ 手延べ素麵作りに欠かせない「塩」の役割とは
⑥ 素麺を食べても塩分の取り過ぎにならない理由
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》毎日の健康を考えた長命草セット 編
① 身体に必要な栄養素・ミネラルとは?
ミネラルは、身体にとって重要な役割を担っている五大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)の1つで、身体にごく微量に存在しています。
「無機質」とも呼ばれます。
人体の約95%は主要4元素(酸素、炭素、水素、窒素)で構成されており、残りの約5%はミネラルで構成されます。
ミネラルは自然界に100種類以上存在しており、その中でも体内でさまざまな働きをする栄養素で通常の食事からでは不足しがちなものを「必須ミネラル」と言います。
現在、必須ミネラルは16種類とされ、このうち13種類について厚生労働省が摂取基準を定めています。
ミネラルは体内で合成できないため食物として摂る必要があります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、
◎1日の推奨量や目安量が約100mg以上のミネラルを「多量ミネラル」
種類:ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン
◎1日の推奨量や目安量が100mg未満のミネラルを「微量ミネラル」
種類:鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン
と分類しています。
ミネラルが不足すると欠乏症やさまざまな不調が発生しますが、摂りすぎた場合にも過剰症や中毒を起こすものがあります。
<参考サイト>
・身体の調整に欠かせない栄養素~ミネラル~
https://www.mpc-lab.com/blog/20200619#:~:text=%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8F%E3%81%86%E3%81%88%E3%81%A7%E5%BF%85%E8%A6%81%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E6%AC%A0%E3%81%AA%E8%BA%AB%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E6%88%90%E6%A0%84%E9%A4%8A%E7%B4%A0%E3%80%82&te
・e-ヘルスネット ミネラル
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html
・ミネラルの種類とそれぞれの働きを解説!ミネラルを含む食べ物も紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=249&category=health#:~:text=%E3%83%9F%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%AE,%E3%81%AB%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A0%84%E9%A4%8A%E7%B4%A0%E3%81%A7%E
・ミネラルとはどのような栄養素?種類別の働きについて解説
https://www.suntory-kenko.com/column2/article/6010/
・ミネラル類
https://himitsu.wakasa.jp/contents/minerals/
② 「多量ミネラル」それぞれの働きについて
5つの「多量ミネラル」それぞれの働きや過不足による影響について、調べてみました。
【ナトリウム】
食塩の成分でもあり、体内では主に細胞外液に存在し、体液の浸透圧を調節して、胆汁・膵液・腸液などの材料となる重要な成分のひとつです。
ですが、古くから日本人の食事は食塩を含む醤油や味噌などの調味料で味付けしてきており、日本人はWHOが示す食塩摂取量1日5gよりも多く摂取する傾向があるそうです。
食塩などのナトリウムを摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が高くなり、それが中枢神経に働いてのどが渇き、人は水分を摂ります。
水分を摂ると血管に流れる血液量が増え、血圧が高くなるため、高血圧につながります。
またナトリウムの摂りすぎは胃がんなどのリスク上昇の要因となるため、摂取量に注意が必要です。
ナトリウムは、塩、しょうゆ、みそなどの食塩(塩化ナトリウム)を含む調味料の他、ハム、ウインナー、練り製品、即席めんなどの加工食品や野菜の漬け物などにも多く含まれています。
また、うま味調味料などの食品添加物の多くには、グルタミン酸ナトリウムなどのナトリウム塩の形でナトリウムが含まれているそうです。
【カリウム】
野菜、芋、果物などの植物性食品に多く含まれます。
細胞内液の浸透圧のバランスを保つ、神経や筋肉の興奮伝導を調節する、などの働きがあります。
ナトリウムを体外に排出する働きがあり、血圧を正常に保つ働きが期待される一方で、腎機能が低下している場合など、カリウムの摂取量に注意が必要な場合もあるそうです。
カリウムは、ほとんどの細胞の中に存在することから広く食品に含まれますが、特にバナナ、メロン、アボカドなどの果実類、ほうれん草などの野菜類、さつまいもなどのいも類、大豆や小豆などの豆類、魚類、肉類に多く含まれています。
【カルシウム】
乳製品や小魚などに多く含まれ、骨や歯を構成する成分。
また一部のカルシウムは、血液や神経、筋肉内で「カルシウムイオン」として存在し、心筋の収縮作用を増やして筋肉の興奮を抑制する、血液を凝固させする、などの働きを持ちます。
不足すると、骨粗しょう症やイライラの原因の1つとなります。
日本人の食生活では不足しがちなので、積極的に摂りたい栄養素です。
カルシウムは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜類や海藻などに多く含まれます。
なかでも、牛乳や乳製品は、他の食品に比べてカルシウムの吸収率が高いうえに、1回の摂取量も多いので、効率よくカルシウムが摂れるそうです。
【マグネシウム】
ナッツ類や魚介類、精製していない穀物などに多く含まれ、骨や歯の形成に関わり、体内のさまざまな代謝をサポートしています。
体温・血圧を調節するほか、神経情報の伝達や筋肉の収縮などにも関わっているそうです。
不足すると、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞や筋肉のけいれん、神経過敏症などの症状を引き起こします。
また、骨粗しょう症や糖尿病などの生活習慣病のリスクも高まります。
マグネシウムは海水に多く存在しているため魚介類や海藻類に多く含まれます。
その他にも穀類、野菜類、豆類などにも含まれ、香辛料などにも含まれています。
ナッツの中でマグネシウムが一番多いのはかぼちゃの種で100g中530mg含まれているそうです。
【リン】
骨や歯を構成する成分で、細胞の浸透圧やpHバランスを保つ作用などもあります。
さまざまな食品に含まれ、ハムやソーセージなどの加工品にも添加されており、一般的な食事をしていれば不足することはほとんどないそうです。
摂りすぎるとリンの濃度を調節するホルモンを分泌する器官に異常が起こることがあります。
リンは、ハムやソーセージをはじめ、練り物、インスタント麺などの加工食品にも含まれるそうです。
また、肉や魚、卵、乳製品、豆類など、たんぱく質の多い食品に多く含まれているそうです。
<参考サイト>
・減塩食について
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/low-salt/#:~:text=%E9%A3%9F%E5%A1%A9%E3%81%AF%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%81%A8%E5%AF%86%E6%8E%A5,%E8%A1%80%E5%9C%A7%E3%81%8C%E9%AB%98%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
③ 人体に不可欠な「塩」の働き
人間が生きていくうえで大切な働きをしている「塩」は、体内でナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれて存在しており、いろいろなシステムの働きを守り、維持する役割を果たしています。
体内の塩分量は、大人で体重の0.3~0.4%、子供では約0.2%とされています。
例えば体重60kgの人の体内の塩分量は約200gということになります。
【細胞を正常に保つ】
人間の体を構成する細胞は、細胞外液という液に囲まれています。
塩はイオンの状態で細胞外液に多く含まれ、細胞外液の量を維持しています。
このことにより、全身の細胞に酸素や栄養分が運ばれたり、二酸化炭素や老廃物が肺や腎臓に運ばれ排出されたりします。
また、細胞外液の濃度を調整し、バランスを一定に保つことで、細胞の働きを支えています。
【消化や吸収を助ける】
体内の塩化物イオンは胃酸の主成分となり、胃で食べ物を殺菌したり、消化を助けたりしています。
ナトリウムイオンは小腸で、アミノ酸やブドウ糖などの吸収を助けています。
【情報を脳や体に伝える】
神経細胞は、ものを触ったときなどの刺激を脳に伝える、脳から体を動かすように筋肉に命令を伝える、などの働きをしています。
神経細胞が刺激や命令を伝えるときに必要となるのがナトリウムイオンです。
<参考サイト>
・塩と健康の関係
https://www.nihonkaisui.co.jp/small_customer/learning_salt/health
・体内の塩
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/about/human/inside.html
・塩とからだの大事な関係
https://www.shiotokurashi.com/life
④ 熱中症を防ぐためにも欠かせない「水分」と「ミネラル」補給
私たちの体は、暑い時には汗をかいて熱を放出し、体温を調整しています。
夏は汗で水分が失われがちになります。
水分不足になると、発汗機能がうまく働かず体温が急激に上昇し、血液は濃縮され流れが悪くなり、脳への血流が低下して熱中症を引き起こします。
体重の約1%の水分を失うと脱水状態になり、4~5%失うと体温上昇に加え吐き気やめまいなどの症状が現れるそうです。
脱水症状は、脳梗塞や心筋梗塞の発症を引き起こすこともあります。
血液がドロドロになり、熱を放出するために血管が拡張することで血圧が低下し、血液の流れが遅くなり、脳や心臓の血管に血栓が詰まりやすくなるそうです。
汗をかくと、水分だけでなくナトリウムやカリウムなど水溶性のミネラルが排出されてしまいます。
水分補給が大切ですが、水分を一度に大量に摂ると、体内でのミネラルバランスが崩れてしまうこともあります。
暑い時期は食欲が落ちて食事から必要な栄養素をしっかり摂れていない場合もあり、特にミネラル不足に注意が必要です。
ナトリウムが不足すると血圧低下や循環血液量の低下の原因になり、カリウムが不足すると夏バテを引き起こすとされています。
日本人はナトリウムを多く摂りすぎる傾向にあるので、汗で失われた塩分を補給する時は、ナトリウムの摂り過ぎによる血圧上昇を抑える働きのあるカリウムを一緒に摂ることを心がけると良いそうです。
<参考サイト>
・高温多湿の夏は、思わぬ“脱水症状”に注意!
https://www.shaho-net.co.jp/healthup3/summer.html
・発汗により失われる水溶性ミネラル・ビタミンと欠乏症
https://www.kes-eco.co.jp/safety-report/269
・夏バテ防ぐミネラル補給 しっかり3食、バランス重視
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXKZO45767350W9A600C1W10600/
・夏のミネラル補給
https://kenko.sl-creations.co.jp/column/column61.html
⑤ 手延べ素麵作りに欠かせない「塩」の役割とは
素麵は小麦粉を塩水で練り合わせてつくります。
昔は経験知から来るものだと思われますが、現代では塩を入れる理由としては、科学的根拠が証明されているようです。
特に①番は、素麺づくりの極意の部分で、小麦の種類、気温、湿度、水の量にあわせて、毎日毎回微妙に調整しながら製麺しています。
これが、もっと“見える化”させることができれば、“間違いの無い”美味しい素麺が安定してつくれると思うのですが。。。その日が来るように、今はしっかりと先代の作り方を学んでおります。
美味しい素麺をつくるために不可欠な「塩」であることを、改めて認識することができました。
① グルテンを引き締める
麺のコシの元となるグルテンは、小麦粉のたんぱく質が水と合わさることで形成されます。
生地をこねて引きのばすことにより、グルテンが何層にも重なった地層のように組織されます。
塩には、このグルテンを強く引き締める働きがあります。
夏は気温が高く、生地がだれやすくなるので塩を多くし、逆に冬は生地が硬くなるので塩を減らす、といったように、季節や天候などにより塩分濃度の微調整が必要です。
まさに、良い塩梅が美味しい素麺に不可欠なのです。
② 酵素の活性を抑制する
塩が小麦粉に含まれるたんぱく質分解酵素の働きを抑えることで、生地がじっくり熟成され、より弾力が増します。
③ 保存期間を長くする
雑菌が繁殖しにくくなり、保存性が向上します。
④ 乾燥を防ぐ
塩には吸水性があり、水分を蓄えようとします。
熟成を繰り返しながら麺を細く延ばしていく手延べ製法において、塩は急激な乾燥によるひび割れを防ぎ、表面をなめらかに仕上げるのに役立ちます。
⑤ ゆで時間を短縮する
ゆでる時に、麺に含まれている塩がお湯の中に溶けだし、お湯が麺の中に入り込んで、でんぷんが糊化します。
塩を多く含んでいれば、それだけ早くゆで上がることになります。
⑥ 味を良くする
ゆでることで塩分の多くは溶け出しますが、わずかに残った塩味が、麺の風味や旨みを引き立てます。
<参考サイト>
・うどんに塩を入れる理由
https://www.flour.co.jp/news/article/111/
・手延べそうめん、うどんの副原料
https://www.shimabara-soumen.com/article/14245881.html
・うどんと塩
https://www.nichimen.or.jp/know/zatsugaku/19/
⑥ 素麺を食べても塩分の取り過ぎにならない理由
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食塩摂取の目標量(食塩相当量として)は、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されています。
素麵の製麺時に加えた「塩」は、茹でる際にその役目を果たして、最終的にゆで汁に溶け出します。
素麵の「栄養成分表示」では、食塩相当量4.1gと記していますが、ゆで上げ後の食塩相当量は0.4gとなります。
さらに水洗いすることでも塩分が抜けます。
素麺は塩分の多い食品ではないといえると思いますので、どうぞ安心してお召し上がりください。
<参考サイト>
・厚生労働省 e-ヘルスネット「ナトリウム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html#:~:text=%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E6%91%82%E5%8F%96,%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・文部科学省 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/search.html
・そうめんの塩分量は多い?少ない?塩分を控えめにしたおすすめレシピ
https://dime.jp/genre/1405923/
・「そうめん」の塩分量はどれくらい?管理栄養士が教える減塩のコツ3つ
https://macaro-ni.jp/109133?page=2
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》毎日の健康を考えた長命草セット 編
「1株食べれば、1日長生きする。」
そう言い伝えられ、古くから人々の健康を支える野菜として親しまれてきた長命草(ちょうめいそう)。
その名前のとおり、食べる人の健康長寿を支える可能性を秘めた“パワーベジタブル”です。
「しょうどしま長命草」は、小豆島の特産品である醤油の絞り粕を肥料に、
農薬を使わずに栽培された、小豆島育ちの健康野菜です。
そのしょうどしま長命草を丸ごと粉末化したパウダーは、長命草の栄養価をそのまま摂り入れられ、さまざまなお料理にも活用できる微粒粉末です。
三代目はパン作りが趣味なので、よく食パンに混ぜて使っています。
ホットミルクに混ぜると抹茶風味に、冷たいアイスクリームや、ヨーグルトに1杯入れる健康習慣、いかがでしょうか。
しょうどしま長命草素麵は、無添加・無着色にこだわっています。
また、普通の素麵とは製法が若干異なるため、独自製法によりゆっくり丁寧に手延べ製法で仕上げています。
めんつゆで召し上がっていただいても美味しいですが、香草のような風味を生かして、コンソメスープに入れてみたり、ナンプラーで味付けをしたフォー風アレンジもオススメなんです。
暑くてあっさりしたものを食べたくなりますが、そういうときこそ、健康面を考えた健康麺で暑い夏も元気にお過ごしください。
《毎日の健康を考えた長命草セット》 https://141seimen.thebase.in/items/55455003
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.34
麺究者への道/味噌について研究してみる
今、このブログを仕上げているのは、催事真っ最中の長野の空の下です。
ブログ自体は、少しずつ書きためているのですが、ブログの導入部分は最終仕上げなので、いつも後回しになっています。
催事のための準備にも追われ、なかなか仕上げが出来ず、逆に、催事中のホテルの中で、作業をおこなっています。
まあ、他にすることもないので、のんびりと書いています。
さて、今回のブログでは発酵食品の代表格である、味噌について調べた物を綴りました。
醤油や素麺よりも遙か昔から日本人に愛用されてきた食品のためか、本当に多様性に富み地域に根付いた“らしさ”のある味噌が多く見受けられました。
中でも気になったのは、愛知県の「八丁味噌」。
ご存じでしたか?
「八丁味噌」については、GIという商標的な認可で、近代的な製法をおこなう組合に所属する会社と古くからの製法を続ける会社との間で、「どちらが、八丁味噌ブランドなのか?」という点でトラブルとなり、古くからの製法を守り続ける会社が負けるというショッキングなニュースが、まさに最近ありました。
この事件があったから味噌を調べたわけではありませんが、ある意味、小豆島手延べ素麺でも、起こりえる問題だなと考えさせられるニュースでした。
今回のブログでは、いつものように味噌の歴史やその広がり、種類や地域性について調べてみました。
調べる内に味噌はとても優れた健康食で、こんなにも愛される食品なんだと、改めて気付かされました。
その味噌の良さを皆さまにお伝えすることが出来れば幸いです。
今回も最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。
◎4月24日(水)ながの東急様地下1階の催事場から、催事の準備を終えて。
【目次】
① 高級品から、武将に重宝され、庶民の味へ
② 味噌の味と熟成の関係とは?
③ JAS規格ができたばかりの味噌。麹・味・色による分類とは?
④ シンプルな原料で、発酵・熟成を経てつくられる味噌
⑤ 地域特性の多様さが多彩な味噌をつくる
⑥ 味噌問題勃発?!
⑦ 発酵過程で栄養価アップ!味噌の健康作用
⑧ ご当地味噌を使った郷土料理も多種多様
⑨ なめ味噌や、海外の味噌に似た調味料とは?
⑩ 《美味しい素麺》手延べ黒ごま麺 編
① 高級品から、武将に重宝され、庶民の味へ
味噌は、大豆や麹、塩などを発酵・熟成させてつくる日本の古来からの発酵調味料です。
そのルーツについては、中国もしくは朝鮮半島経由で伝わったという説と、弥生時代から日本独自の塩蔵を経て発展したという説があるそうです。
中でも有力なのが、中国で生まれた、肉や魚を塩で漬けて発酵させた「醤(ひしお)」や、大豆や雑穀と塩を合わせて発酵させた「豉(くき)」が、日本に伝わり独自の発展を遂げたという説です。
奈良時代、701年に完成した「大宝律令」に「未醤」という文字が書かれており、「みしょう」 から 「みしょ」 、「みそ」へと変化していったと考えられています。
平安時代に初めて「味噌」という文字が文献に現れ、「延喜式(えんぎしき)」という法典では貴族の給与や贈答品として使われていたという記述があります。
当時は寺院や貴族階級のみが食することのできる貴重な高級食材で、おかずとしての「なめ物」だったようです。
鎌倉時代には、中国からの僧の影響ですり鉢が広まり、粒味噌をすりつぶしたものを使った味噌汁が誕生したとされています。
これにより、禅宗の質素倹約の食事である「一汁一菜」の形態が、鎌倉武士の食事の基本として確立されたそうです。
室町時代には大豆の生産量が増え、農民が自家製の味噌をつくるようになり、保存食として庶民にも浸透しました。
味噌汁以外の料理も、室町時代に生み出されたそうです。
戦国時代には武将たちが戦陣食として味噌を用いました。
貴重なタンパク源として、干したり焼いたりして携帯しやすくしていたそうです。
江戸時代、江戸の人口が増え、三河や仙台から味噌が江戸に送られるようになりました。味噌汁が庶民の味となり、味噌が生活に根付いていきました。
昭和時代、味噌の容器が樽からカップへ変化し、だし入り味噌が登場するなど、社会変化に合わせて進化していきました。
<参考サイト>
・味噌のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/hakkofood/02.html#:~:text=%E3%81%BE%E3%81%9F%E3%80%81%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%81%AB%E3%82%82%E3%80%8C%E8%B1%86%E6%9D%BF,%E3%81%9F%E8%AA%BF%E5%91%B3%E6%96%99%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・マルコメ 味噌のこと
https://www.marukome.co.jp/miso/
・味噌 特定非営利活動法人 うま味インフォメーションセンター
https://www.umamiinfo.jp/richfood/foodstuff/miso.html
・みそ(味噌)を知る イチビキ
https://www.ichibiki.co.jp/enjoy/knowledge_miso/
・みその豆知識 かねこみそ
https://kanekomiso.co.jp/knowledge/knowledge-of-miso/#section1
・味噌 ひかり味噌
https://www.hikarimiso.co.jp/enjoy-miso/encyclopedia/type.html
② 味噌の味と熟成の関係とは?
味噌の旨味は、大豆タンパクが分解されてできるアミノ酸(主にグルタミン酸)に影響され、熟成の進んだものほど旨味が強くなります。
さらに塩味や酸味、甘味が調和し、良い香りと適度な粘度が加わって形成されるそうです。
また熟成が進むと舌に感じる刺激が和らいで伸びとコクのある味わいになるとのことです。
味噌は仕込み初期には塩辛く感じられ、熟成するにつれて、塩分濃度は同じですが塩辛味が減少します。
この現象を「塩なれ」といい、乳酸やペプチド、アミノ酸など、酸味や旨味成分の影響を受けた結果起こるものだそうです。
味噌の甘味は、麹が多いほど強くなります。
これは、米や麦のデンプンが麹のアミラーゼにより糖に分解されるからとのことです。
熟成期間が長くなると、糖分は酵母や乳酸菌により消費されるため減少するそうです。
③ JAS規格ができたばかりの味噌。麹・味・色による分類とは?
味噌にはとても多くの種類があり、その多様性に対して規格を設けるためのグループ分けが困難といった理由により、「日本農林規格(JAS)」でも明確な基準がありませんでした。
2022年3月、味噌の海外市場における競争力の強化や日本からの輸出拡大などを目的としてJAS規格が制定されました。
日本独自の伝統的な生産方法として、①こうじ菌は「Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー)」に限定②こうじは「ばらこうじ」または「豆こうじ」に限定、という、主に2つの基準を定めています。
味噌は「麹の種類」「味」「色」により大きく分類することができます。
【麹の種類による分類】
味噌は大豆と塩、そして麹でつくられます。主に3種類の麴が使われています。
<米味噌>
「米麹」を原料に使用した味噌で、国内生産量の約80%を占める。「赤味噌」や「白味噌」も、米味噌の一種。塩味と酸味があるのが特徴。
<麦味噌>
大麦やハダカムギを使った「麦麹」でつくる味噌。田舎味噌とも呼ばれ、熟成期間が短い。麦特有の香ばしさがあり、さっぱりとした甘味が特徴。生産量は全国の約5%で、主に九州・四国・中国地方でつくられている。
<豆味噌>
蒸した大豆に麹菌を付けた「豆麹」を使用する味噌。
赤黒い色で、渋みや酸味の強い個性的な味わい。生産量は全国の約5%で、主に愛知県、岐阜県、三重県でつくられている。
<調合味噌(合わせ味噌)>
米味噌、麦味噌、豆味噌を混ぜたものや、醸造段階で米麹と麦麹を合わせてつくるものなど、2種類以上の味噌を組み合わせた味噌。生産量は全国の約10%。
【味による分類】
塩味の強さにより分けられます。また塩分が一定なら、「麹歩合」(原料の大豆に対する米や麦の比率)が高いほうが、甘味が強くなります。
<甘味噌>
塩分濃度5~7%程度。関西地方で食べられる「白味噌」や、東京の伝統的な「江戸甘味噌」など。
<甘口味噌>
塩分濃度7~11%程度。流通している多くの味噌がこれに分類される。文字通り甘いものから、甘じょっぱいと感じるものまで幅広い。
<辛口味噌>
塩分濃度11~13%程度。もっとも塩味が強く、すっきりした味わいが特徴。かつては主流だったが、現在では主に北の地域でつくられている。
【色による分類】
味噌は主に熟成期間によって色が変わります。
短いと白っぽく、長くなるにつれて淡色、赤色になり、長期熟成になると黒っぽく変化していきます。
発酵・熟成中に、原料の大豆などに含まれるアミノ酸が糖と反応して褐色に変化する「メイラード反応」が起こることにより色が変化します。
完成してからも熟成が進むため、時間が経つにつれて味噌の色は濃くなっていきます。
<白味噌>
熟成期間約1カ月。甘味の強い白味噌が一般的で、塩分が高めのものもある。
<淡色味噌>
熟成期間約4~8カ月。全国的に流通しており、スーパーなどでよく見かける味噌。
<赤味噌>
熟成期間1年以上。色が濃く、中には黒色に近いものもある。
<参考サイト>
・味噌をもっと楽しもう~味噌の分類~
https://misovation.com/blogs/journal/types-miso#link3
・いろいろなJAS認証 みそ
http://jascert.or.jp/veriousjas/miso/
④ シンプルな原料で、発酵・熟成を経てつくられる味噌
味噌がどのようにつくられているか調べてみました。
最も多く食べられている米味噌を例にご紹介します。
【大豆を洗い、水に浸す】
乾燥させた大豆をよく洗い、一晩以上水に浸漬させる。水をたっぷり含んだ大豆の水を切り、温める。
【蒸したり煮たりして、冷ます】
水で戻した大豆を、高温・高圧で、短時間で蒸し上げてやわらかくし、しっかり冷ます。
【米を蒸して種麹を付ける】
洗って水に浸漬した米を蒸し上げ、広げて少し冷ます。種麹をまんべんなく振りかけ、温度・湿度管理をしながら麹菌を繁殖させる。
【原料を混ぜ合わせ、仕込む】
大豆を細かくつぶし、米麹と塩、水を加えてよく混ぜ、容器に仕込む。
【発酵・熟成させる】
仕込んだ味噌を発酵・熟成させることにより、風味豊かな味噌が出来上がる。
<発酵>
麴菌が持つアミラーゼが米のデンプンを分解してぶどう糖(グルコース)に、プロテアーゼは大豆のタンパク質を分解してペプチドやアミノ酸にする。
<熟成>
発酵過程でできたブドウ糖から、酵母によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵により酸味や香り成分がつくられる。
※写真はPhotoACより「味噌蔵」
⑤ 地域特性の多様さが多彩な味噌をつくる
味噌の発酵・熟成は微生物の働きによるもので、微生物の働き方は気候風土、環境、水質などさまざまな条件によって変わり、蔵によっても違いがあります。
また、それぞれの地域の原料事情や食習慣、嗜好に合わせて、多彩な味噌がつくられています。
各地で食べられている個性豊かな味噌について、調べてみました。
※各味噌紹介でのお料理写真は、必ずしも地域の味噌を使用した物かどうかは分かりませんが、その地域の味噌を使ったお料理をご紹介しています。なお、次の項目でも地域に根付く味噌を使った郷土料理をご紹介しています。予めご了承ください。
【北海道味噌】(北海道)
さっぱりとした味わいで、食材の風味を活かしてくれる。昔から新潟や佐渡との結びつきが強かったことから、越後味噌や佐渡味噌と似ている。
※写真はPhotoACより「北海道の味噌ラーメン」
【津軽味噌】(青森県)
麹歩合が低く塩分が高めの長期熟成の赤色辛口味噌で、「津軽3年みそ」と言われる。かつて凶作が頻発することから、ききんに備えて長期保存できるみそづくりが盛んになったと言われている。
※写真はPhotoACより「青森貝味噌焼き」
【仙台味噌】(宮城県)
戦国時代、伊達政宗は味噌を兵糧として製造したとされる。軍用だけでなく産業発展のために良質なみそづくりを続けたと言われる。当時から伝わる伝統的な長期熟成型の味噌。
※写真はPhotoACより「仙台味噌の焼きおにぎり」
【会津味噌】(福島県)
会津盆地の寒暖差の大きな厳しい気候の中でつくられる、300年の歴史を持つ長期熟成型の赤色辛口味噌。
※写真はPhotoACより「しんごろう」
【信州味噌】(長野県)
生産量日本一で、全国で生産・消費される味噌の約40%を占める。武田信玄の時代、大豆栽培が盛んに行われ、味噌づくりに適した気候と水質もあって全域に広まったとのこと。
※写真はPhotoACより「信州味噌漬け」
【江戸甘味噌】(東京都)
米麹を多く使用し、10日ほどの短期でつくられる赤色甘口味噌。どじょう鍋などにも用いられる。濃厚な甘みと光沢が特徴。
【東海豆味噌】(愛知県、岐阜県、三重県)
中京地方を中心につくられている豆味噌で、「名古屋味噌」「三河味噌」「三州味噌」「八丁味噌」などと呼ばれる。わずかな酸味と苦味、濃厚な旨味を持つ。
※写真はPhotoACより「五平餅」
【西京味噌】(京都府)
米麹の割合が非常に高く、強い甘味があるのが特徴。懐石料理や普茶料理で必要不可欠。関西では、お正月に白味噌のお雑煮が食べられている。
※写真はPhotoACより「鰆の西京焼き」
【越後味噌】(新潟県)
上越地方では、味噌汁に米麹の粒がふわっと浮かぶことから「浮麹(うきこうじ)味噌」と呼ばれる、淡い赤色でさわやかな味わいの味噌。中越・上越地方では麹歩合が低めの、赤色で華やかな香りを持つ味噌、と地域性がある。
【佐渡味噌】(新潟県)
麹が多く使われ、長期間熟成させるため塩なれしたコク深い旨味を感じられる味噌。
【加賀味噌】(石川県)
石川県の味噌は米味噌で、加賀地方では米麹を多く使い長時間熟成させたものが多く、山吹色でやや辛口。能登地方では水分が多くてやわらかく塩辛いとのこと。
【讃岐味噌】(香川県)
麦味噌文化圏の四国の中でも、瀬戸内に面する海沿岸地域では、濃厚な甘みがある豊かな風味の、米味噌の白色甘味噌もつくられている。白味噌仕立てであん餅を入れる雑煮が食される。
※写真はPhotoACより「元旦あんもち雑煮」
【御膳味噌】(徳島県)
麹の割合が高く、豊かな旨味のある赤色甘口味噌。塩分は辛口味噌と同等ながら、中辛に位置する味わい。阿波藩主・蜂須賀公の御膳に供されたのが名前の由来とされる。
【瀬戸内麦味噌】(愛媛県)
米味噌圏と麦味噌圏が交差する地域で好まれる麦味噌。特に愛媛でつくられるものは麹の割合が高いため、麦独特の芳香と軽やかな甘味がある。
【府中味噌】(広島県)
皮を取り除いた大豆を原料とした、白やクリーム色の甘味噌。きめ細やかで豊かな風味とコクが特徴の、白色甘味噌の代表格。
【九州麦味噌】(九州地方)
九州では麦味噌が主流。温暖な気候のため、熟成期間は比較的短め。熊本県は「肥後味噌」、鹿児島県は「薩摩味噌」など昔の藩の名称で呼ばれる味噌が多くある。
<参考サイト>
・越後みその特徴
https://niigata-echigomiso.amebaownd.com/pages/3944496/page_201602191132
⑥ 味噌問題勃発?!
地域の特産品のブランド価値を高めるため、国が定めている制度に「地域団体商標制度」と「GI(地理的表示)制度」というものがあります。
うまく活用すれば消費者に品質や信頼性をアピールし競争力を高めることができる制度で、その性格や対象範囲にそれぞれ違いがあるそうです。
しかしながら、味噌に関して地域性を大切にしすぎたためか、愛知県の名産である「八丁味噌」では、登録に関して、実はGIをめぐってトラブルが発生し、訴訟問題にまで発展してしまいました。
2017年12月に、愛知県全体を生産地とし、近代的製法で生産する業者組合の「八丁味噌」について、農林水産省がGIの登録を認可しました。
これに異議を申し立てたのが、愛知県岡崎の老舗味噌会社の2業者です。
両社は、他業者が八丁味噌を製造する際「木樽で2年以上熟成させる」という伝統的な製法を継承していないことなどを理由に、国にGI登録の取り消しを求めていました。
組合に加盟していない2社だけがGIマークを商品に付けられず、著しい不利益を被る、という主張です。
結論から言うと、2024年3月、最高裁は原告側の上告を棄却し、老舗側の敗訴が確定しました。
これにより老舗側は2026年2月以降は、製品に「八丁味噌」の名称を自由に使えなくなりますが、GI登録品との混同を防ぐ表示をするなど適切に対応すれば名称を使用できる、とのことです。
地域性(多数)を大切にするのか、昔ながらの製法(少数)を大切にするのか…今後も課題となるのでしょうね。
小豆島の手延べ素麺もまさに、そういった問題が考えられるのではないかと思います。
参考までにそれぞれの制度について、調べてみました。
【地域団体商標制度】
2005年に法制化された、特許庁が審査・登録する制度で、あらゆる商品やサービスが対象となります。
特定の地域に関連する商品やサービスに対して、例えば「地域名+商品・サービスの名称」のような地域ブランドの名称を商標として登録することで、特定の団体が地域団体商標マークおよびその名称を独占して使用することができる制度です。
農協や商工会議所など地域に根ざした団体しか利用できない制度とのことです。
(例)「有田みかん」「和歌山ラーメン」「泉州水なす」
【GI(地理的表示)制度】
農林水産省が管轄するもので、農林水産物と、酒類を除く飲食料品を対象とし、2015年に制度化されました。
特定の地域で生産される農林水産物や食品について、その地域と結びついた名称を表示することにより、品質や特性を保証する制度。
約25年の生産実績を有することが求められます。
GIは地域の共有財産となります。
国際的な取り決めに基づいた制度なので、海外市場での競争力を高めることにもつながるそうです。
(例)「紀州金山寺味噌」「わかやま布引だいこん」「神戸ビーフ」
<参考サイト>
・農林水産物のブランディング ~地域団体商標とGI制度
https://www.kinokapat.jp/blog-trademark-004/
・「地域団体商標マーク」と「GIマーク」との相違点
https://www.syohyo-jp.com/mame/chiikidantai_gi.html
・【解説】地域団体商標制度と地理的表示保護制度とは?何が違う?
https://www.primeworks-ip.com/tmds/33/
・「八丁味噌」のGI登録をめぐる地元での対立構造
https://www.syohyo-jp.com/mame/8miso_gi.html
・「八丁味噌」ブランド訴訟、ついに決着 岡崎市の老舗側の敗訴が確定 「混同を防ぐ表示をすれば…」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/313755#:~:text=%E8%BE%B2%E6%9E%97%E6%B0%B4%E7%94%A3%E7%9C%81%E3%81%8C%E5%9C%B0%E7%90%86,%E6%A3%84%E5%8D%B4%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
・八丁味噌、老舗の敗訴確定 表示登録訴訟、名称に制限
https://news.yahoo.co.jp/articles/2fca91696892873689b8c9f8756752a55e3a3c0a
⑦ 発酵過程で栄養価アップ!味噌の健康作用
味噌の主原料となる大豆は、良質なタンパク質を豊富に含み「畑のミルク」とも呼ばれています。
味噌は発酵する過程で、アミノ酸やビタミン類が大量に生成されます。
生命維持に欠かせない必須アミノ酸9種類が、味噌にはすべて含まれているとのことです。
味噌に含まれるタンパク質は、分解されて消化吸収しやすい形となっており、他の食べ物の消化吸収を助ける働きも期待できます。
大豆に含まれる大豆イソフラボンは、骨の健康維持に役立ちます。
他にも、味噌に含まれるビタミンEやサポニン、褐色成分のメラノイジンなどには抗酸化作用があり、肝臓内の過酸化物質の増加を抑制することが確認されているそうです。
また、リノール酸やペプチド、レシチンなどの成分が含まれ、悪玉コレステロールを抑制する働きが期待でき、生活習慣病やがんのリスクを下げることが分かっています。
また、味噌に含まれる食物繊維が腸内をきれいにしたり、微生物が腸内の腐敗物や有害物を体外に送り出したりしてくれます。
まさに健康食の代表格とも言えるのが、日本で古くから愛されてきた味噌なのです。
<参考サイト>
・味噌が健康にいいのはなぜ?味噌汁を毎日の食卓に!
https://www.genmaikoso.co.jp/cultivate/web/detail.asp?id=161
・【管理栄養士執筆】味噌の栄養価まとめ 健康に良い味噌の選び方を解説
https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/miso-nutrition
⑧ ご当地味噌を使った郷土料理も多種多様
全国には様々な種類の味噌があり、味噌を使った郷土料理もバラエティに富んでいます。
代表的なものや、特徴的なものを調べてみました。
【石狩鍋】(北海道)
古くからサケ漁がさかんな石狩川で、漁師たちが暖を取るためにつくったのが発祥とされる。脂ののったサケのあらと野菜や豆腐を昆布出汁の鍋に入れ、たっぷりの味噌で味を調える。
※写真はPhotoACより「石狩鍋 土鍋」
【しょうが味噌おでん】(青森県)
極寒の冬に体を温めるため、おでんにショウガ入り味噌をかけたのが始まりとされる。津軽味噌に酒、みりん、だし汁を混ぜて煮立て、生のおろしショウガを加える。
※写真はPhotoACより「味噌おでん」
【ばっけ味噌】(宮城県)
「ばっけ」とはフキノトウを指す宮城の方言。あく抜きしたフキノトウを茹でて刻み、クルミや味噌と合わせたもの。ごはんや肉、魚、豆腐に乗せたり、おにぎりの具にしたりして食べる。
※写真はPhotoACより「ご飯のお供 ふきのとう味噌」
【じゃじゃ麺】(岩手県)
茹でたうどんを皿に乗せ、甘辛い肉味噌や刻んだ長ネギ、キュウリを盛り付ける。
中国の家庭料理「炸醤麺(ジャージャー麺)」がルーツで、第二次世界大戦時に旧満州で食べた味を、帰国後に屋台で再現したのが始まりとのこと。
※写真はPhotoACより「盛岡じゃじゃ麺」
【こんにゃく味噌おでん】(群馬県)
群馬県の特産品であるこんにゃくを切って串に刺し、たっぷりの味噌と酒で煮込み、味噌だれを塗って食べる。一部の地域では、こんにゃくの水気を切るため布巾に思い切りたたきつけることから「ひっぱたきおでん」とも呼ばれている。
【落花生味噌】(千葉県)
千葉県は落花生収穫量が全国の8割を占める。農家の人たちが市場に出回らない規格外の落花生の活用方法として考案した料理。各家庭で好みの味噌や味付けでつくられ、酒のつまみやご飯のおかず、お茶請けとして食べられている。
※写真はPhotoACより「ピーナッツ味噌」
【味噌田楽】(愛知県)
豆腐を切って串に刺して焼き、八丁味噌などの赤味噌に木の芽を乗せたり、すって混ぜ込んだりした味噌だれを付けて食べる。こんにゃくやサトイモを使ったものもあり、家庭でもつくられている。
※写真はPhotoACより「味噌田楽」
【煮味噌】(愛知県)
ダイコン、ニンジン、ゴボウ、サトイモなど、四季折々の食材を味噌で煮込んだ料理で、「味噌煮」とも呼ばれる。味噌とみりんで味付けをする場合や、味噌と出汁で味噌汁風にする場合など、家庭によってバリエーションがある。
【味噌煮込みうどん】(愛知県)
八丁味噌仕立ての汁にコシの強いうどんを入れて煮こんでつくる、愛知県を代表する麺料理のひとつ。土鍋を使い、油揚げや鶏肉、かまぼこ、ネギを入れ、最後にひと煮立ちさせる前に卵を割り入れるのが一般的な食べ方とのこと。
※写真はPhotoACより「味噌煮込みうどん」
【味噌カツ】(愛知県)
昭和40年代、カツに豆味噌でつくったたれをかけて提供したのが始まりという説が多数ある。豆味噌をベースに砂糖やみりんを加えて出汁で伸ばしたたれは、濃厚でコクのある甘辛い味わい。
※写真はPhotoACより「味噌カツ」
【ふな味噌】(愛知県、岐阜県)
木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)ではフナなどの川魚が豊富に獲れ、重要なタンパク源として食してきた。フナを大豆と一緒に弱火で時間をかけて火を入れ、豆味噌(赤味噌)と砂糖を加えてさらに煮詰める。赤味噌により川魚特有の臭みが消え、旨味が増すとのこと。
※写真はPhotoACより「鮒味噌」
【朴葉味噌】(岐阜県)
落葉広葉樹の朴の葉の上に味噌を乗せ、炭火などで焼きながら食べる。林業が盛んだった飛騨地域で、山仕事を生業とする人たちが朴葉を皿の代わりにして味噌を焼いたのが始まりと言われている。
※写真はPhotoACより「朴葉味噌」
【漬物味噌煮】(岐阜県)
塩気の強い豆味噌の「郡上味噌」と煮干し出汁の鍋に、白菜の切り漬けを入れて煮込む料理。家庭料理として親しまれ、季節の野菜や肉などを入れて食べる。
【豆腐の味噌漬け】(熊本県)
豆腐の水気をよく絞り、塩分濃度が高めの味噌に漬けたり、砂糖をまぶして味噌に漬けたりしてつくる料理。硬めの豆腐が用いられ、豆腐を常温で長期保存できるようにしたもの。半年ほど漬けた豆腐には、ウニやチーズのような濃厚な風味があるとのこと。薄くスライスして、ご飯に乗せたりお酒の肴にしたりする。
※写真はPhotoACより「味噌漬け豆腐」
【冷汁】(宮崎県)
魚のすり身に、炙った味噌とすりゴマなどを合わせて味を整え、豆腐やキュウリ、青ジソ、ミョウガなどを加える。魚の骨や昆布などでとった出汁で伸ばして冷ましたものを、熱々の米飯や麦飯にかけて食べる料理。「すったて」、「つったて」と呼ぶ地域もある。
※写真はPhotoACより「冷や汁」
【地鶏の味噌ころばかし】(宮崎県)
「ころばかし」とは県西地方の方言で、鍋の中で煮転がすこと。昔から伝わる家庭料理のひとつ。一口大に切った地鶏とショウガを鍋で炒め、中火でやわらかくなるまで煮て、みそと砂糖を加え煮詰める。こんにゃくやダイコン、ゴボウ、ニンジンの乱切りを加えることも。
【豚味噌】(鹿児島県)
豚バラのブロック肉を湯がいて一口大にカットし、粒味噌と砂糖、カツオ節、落花生の粉と混ぜ合わせる料理。ごはんや豆腐、うどんに乗せたり、おにぎりの具にしたりして食べる。
出典:農林水産省Webサイトより「豚味噌」(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/butamiso_kagoshima.html)
<参考サイト>
・うちの郷土料理:農林水産省
https://www.maff.go.jp/result.html?cx=015840603635610229114%3Ad5nyfxhiq78&ie=UTF-8&q=%E5%91%B3%E5%99%8C&sa=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&siteurl=www.maff.go.jp%2Fj%2Fkeikaku%2Fsyokubunka%2Fk_ryouri%2Fsearch_menu%2Fmenu%2Fnimiso_aichi.html&ref=&ss=674j140506j11#gsc.ta
・全国みそ料理めぐり
https://miso.or.jp/museum/miso_culinary_tour/
・愛知ご当地グルメ図鑑 みそかつ
https://www.tabemaro.jp/gourmet/misokatsu/
・豆腐の味噌漬け
https://traditional-foods.maff.go.jp/menu/toufunomisoduke
⑨ なめ味噌や、海外の味噌に似た調味料とは?
日本には、味噌汁や料理に調味料として使う味噌だけではなく、そのままおかずとして食べる「なめ味噌」というものもあります。
また海外にも、味噌に似た調味料がありますので、いくつか調べてみました。
【金山寺味噌】(和歌山県、千葉県、静岡県など)
なめ味噌の代表的なもの。3種類の穀物(米・大豆・ハダカムギ)に麹菌を付けて麹にし、ウリ・ナス・ショウガ・シソなどの野菜を合わせて発酵・熟成させてつくられる。和歌山では伝統的に茶粥と一緒に食べるとのこと。
※写真はPhotoACより「金山寺味噌」
【そてつ味噌】(鹿児島県奄美、沖縄県粟国島)
原料は、ソテツの実から取ったデンプンと玄米を麹にしたソテツ麹と、大豆やサツマイモ、塩。ソテツの種子を主原料とするものと、玄米を主原料とするものがあり、後者はなめ味噌として食べられているとのこと。
【豆板醤(トウバンジャン)】(中国)
ソラマメに唐辛子と塩を加え発酵させてつくる、中国の代表的な唐辛子味噌。麻婆豆腐や担々麺などの中華料理に欠かせない調味料。生のソラマメにカビづけをしてソラマメ麹をつくり、塩漬けにして発酵後、唐辛子を加えて熟成させるのが、伝統的な製法とのこと。
※写真はPhotoACより「麻婆豆腐」
【甜麺醤(テンメンジャン)】(中国)
回鍋肉や北京ダックなどに使われる中華甘味噌で、小麦粉、塩、麹を発酵させたもの。小麦本来の甘さが引き出されていて、料理にまろやかなコクと甘みを与える。日本では大豆を使ってつくる場合もあるとのこと。
※写真はPhotoACより「北京ダック」
【コチュジャン】(韓国)
ビビンパやプルコギなどの韓国料理に欠かせない唐辛子味噌。甘さと辛さが調和しており、コクのある味わい。「メジュ」と呼ばれる、もち米などの穀物に煮大豆をすりつぶして納豆のように枯草菌で発酵させたものに、醤油・唐辛子を加え、さらに発酵・熟成させてつくる。
【マーマイト】(イギリス)
ビールの製造過程で発生する酵母に塩を足し、砂糖を少し入れて煮詰めてつくる発酵食品。イギリスではトーストに塗るのが一般的な食べ方で、スープや煮込み料理に入れることもあるとのこと。こげ茶色でドロッとしていて独特のにおいと味わいがある。
【ベジマイト】(オーストラリア)
「マーマイト」に似た食品で、さまざまな野菜をイースト菌で発酵させたもの。黒いペースト状で、八丁味噌、アンチョビ、チーズ、醤油を足したような独特の塩辛い味と、ビール酵母のような発酵臭が特徴的。
ニュージーランドには「ビタマイト」という似た食品があるとのこと。
<参考サイト>
・世界の料理は微生物であふれている!|世界の発酵食品10選
https://micsmagazine.com/basic/2438/post
・酵母の力で体の内側からきれいに!イギリス発の発酵食品「マーマイト」の魅力
https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/20190710/11401/
・マズいのにハマる人続出!? 謎の調味料「ベジマイト」ってなんだ
https://macaro-ni.jp/33137
⑩ 《美味しい素麺》手延べ黒ごま麺 編
味噌に合う手延べ麺と言えば、石井製麺所の中では、この「手延べ黒ごま麺」もそのひとつだと思います。
三代目個人の嗜好ですが、豆板醤(中国の代表的な唐辛子味噌)とにんにくを利かせた濃厚な味付けの担々麺スープで食べる「手延べ黒ごま担々麺」は美味しくてハマります。
「黒の食材」を練り込んだ“健康麺”ですので、冬におすすめしていますが、夏には汗が噴き出すほどの辛い味付けで、味わってみるのもいかがでしょうか。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ黒ごま麺》 https://141seimen.thebase.in/items/69195918
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.33
栄養成分の機能性について/ビタミンC・クエン酸
早いもので、5月1日より「手延べレモン素麺」を販売再開いたします。
この時期だけの味覚としていつもご好評をいただき、これまでにたくさんの方にお召し上がりいただいております。
下の写真は、そのレモン素麺を乾燥しているところです。
レモン素麺が始まると製麺所は、とてもフルーティな香りでいっぱいになります。
普段は小麦粉とごま油の芳ばしい香りでいっぱいですが、この日はレモンの香りが一際心地よい時間です。
ただレモン素麺は、ノバシから乾燥にかけて非常に気をつかう、なかなか製麺の難しい素麺のひとつなんです。
レモンに含まれる成分のせいだと考えられますが、とてものばしにくく、通常の素麺に比べて長い熟成時間が必要です。無理にのばしてしまうと、干している(乾燥させている)ときにも「プチプチ」と切れてしまうことがあります。
そうなってしまうと手の施しようがありません。。。
そうならないためにも、湿度や温度、水や塩加減に細心の注意を払いながらいつも製造をしています。
素麺づくり…特にレモン素麺は、干すまでに品質が決まるといっても過言ではありません。
(もちろん干してから、裁断、包装して出荷するまでにも大切な工程はありますが…)
そのため、従来の白い素麺のように、“いつもの”つくり方では上手く行きません。
小麦粉のブレンド割合を調整したり、のばす工程で特注の道具を使用するなど、さまざまに工夫を凝らして独自の製法を用いています。
もし機会がございましたら、「そんな手間暇の掛かる素麺なんだな〜」と思い出していただきながら、召し上がってみてください。
今回は、そんなレモンに多く含まれているという「ビタミンC」や「クエン酸」について調べてみました。
パッと思い浮かぶのは、酸っぱい食べ物で、なんとなく「ビタミンC」も「クエン酸」も同じように思っていましたが、実は全然別の物でした。
私三代目も大学生の時にアーチェリー部で副主将を務めた経験がありますが、暑い時期に集中力を高めたり健康に気を使う時にはいつも、「ビタミンC」や「クエン酸」を意識して活用していた記憶が蘇ります。
夏に失われがちな成分と聞きますから、やはり暑い時期には意識して摂取したいものですね。
ちょっとした気遣いで暑い夏も健やかに過ごせるヒントもあると思いますので、今回も最後までお付き合いただけましたら幸いです。
【目次】
① ご存じですか?!ビタミンCとクエン酸の違いとは?
② オレンジ果汁から発見されたビタミンC
③ 体内でつくれないビタミンC、摂取のコツは?
④ グルテン形成を助けるビタミンC
⑤ 紀元前から健康効果が注目されてきたクエン酸
⑥ クエン酸の効率的な摂り方や食べ方の工夫
⑦ 素麵の茹で水に梅干しを入れるとクエン酸の力で歯応えUP!
⑧ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺編
① ご存じですか?!ビタミンCとクエン酸の違いとは?
同じものと勘違いされることがある「ビタミンC」と「クエン酸」は、まったく別の物質です。
どちらもレモンなどの果物に多く含まれる水溶性の有機酸であり、酸っぱいイメージがあることから混同されてしまうようです。
ビタミンCは体内でつくれず、食品からの摂取が必須の栄養素です。
酸味はありますがクエン酸ほどではありません。
レモン果汁にはビタミンCの100倍以上のクエン酸が含まれるとのことで、レモンの酸味の主成分はクエン酸だそうです。
クエン酸は体内で合成でき、食品からの摂取が必須ではありませんが、炭水化物のひとつとしてエネルギー源になります。
ビタミンC とクエン酸それぞれについて詳しく調べてみましたので、次の段落からご紹介します。
<参考サイト>
・クエン酸とビタミンCの違いは?【全く違う別の物質です】
https://kagakucook.com/citric-acid-is-not-vitamin-c/
・クエン酸とビタミンCは違うもの?相乗効果で疲労回復!それぞれの効果と豊富に含む食べ物
https://kosodate-yakuzaishi.com/citric-acid-vitamin-c/
② オレンジ果汁から発見されたビタミンC
ビタミンとは、体の機能を正常に保つために必要な有機化合物です。
人間の体内では合成することができないので、食物から摂取する必要があります。
その性質から水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分けられ、ビタミンCは水溶性ビタミンのひとつです。
16世紀から18世紀にかけての大航海時代に、新鮮な野菜や果物の摂取量が極端に少なかった船員たちの間で「壊血病」と呼ばれる病気が流行しました。
血管がもろくなり、口や鼻から多く出血する症状が、血液が壊れていくようであったことからその名がついたそうです。
壊血病の症状は他にも、貧血・筋力量の低下・呼吸困難・いらつきなどがあるとのことです。
18世紀中頃、イギリス海軍のジェイムズ・リンドが、壊血病の治療に柑橘系の果物が有効であると示しました。
1919年、生化学者のジャック・ドラモンドが、オレンジ果汁の中に壊血病を防ぐ物質を発見し、1920年に初めて「ビタミンC」と命名されたそうです。
ビタミンCはアスコルビン酸とも言われ、コラーゲンの生成に欠かせない化合物です。
コラーゲンは皮膚・血管・軟骨などに存在し、細胞と細胞をつなぐ繊維状のタンパク質です。
ビタミンCが不足するとコラーゲンが合成されないため、血管がもろくなり出血を起こす壊血病の原因になります。
ビタミンCには他にも、鉄の吸収を促進する働きや、毛細血管・歯・軟骨などを正常に保つ働き、皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用、ストレスや風邪などの病気に対する抵抗力を強める働きがあります。
また、抗酸化作用が注目されており、がんや動脈硬化の予防、老化防止に役立つことが期待されています。
<参考サイト>
・厚生労働省e-ヘルスネット ビタミン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
・ビタミンCの働きと1日の摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-c.html
・ビタミンCの必要性~歴史から見るビタミンC~
https://www.mpc-lab.com/blog/20200604
・ビタミンCの働きと1日に摂取する目安量は?ビタミンCを多く含む食品も紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=180&category=health
・ビタミンCを多く含む食品
https://www.otsuka.co.jp/college/nutrients/vitamin-c.html
③ 体内でつくれないビタミンC、摂取のコツは?
ビタミンCは体内で、活性酸素を消去したり、コラーゲンなどをつくるのに必要な酵素の働きを助けたりすることで多く消費されます。
また、ストレスや喫煙などによっても消費量が多くなることが分かっています。
ビタミンCの推奨摂取量は、成人で1日100mgとされています。
余剰分は体外に排出されますが、過剰摂取による不調が現れたという報告もあります。
1度にまとめて摂取するよりも、1日3回の食事の栄養バランスを整えてこまめに摂取することが理想だそうです。
ビタミンCは、柑橘系の果物や野菜など、身近にある様々な食材に含まれています。
【1回の食事量に含まれているビタミンCの含有量】
・パプリカ(赤)生:1/2個(65g)あたり111mg
・キャベツ生:50gあたり21mg
・ブロッコリーゆで:1/2株(80g)あたり44mg
・キウイフルーツ(黄)生:1個(80g)あたり112mg
・イチゴ生:5個(75g)あたり47mg
・ミカン生:1個(100g)あたり35mg
ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いため、加熱調理で何割かは損失してしまうといわれているそうです。
調理時に水や熱に接する時間を短くすることや、煮出した汁ごと食べる、電子レンジを活用する、など工夫したいものです。
なおジャガイモやサツマイモはビタミンCがデンプンにより保護されているので、調理後もほとんど分解されず残っているそうです。
④ グルテン形成を助けるビタミンC
私たちの素麺づくりにおいて、その出来を左右する小麦粉の「グルテン」がビタミンCの影響を受けるらしいということで、調べてみました。
グルテンは小麦粉独自のタンパク質で、こねたり練ったりすることでできる繊維状の組織です。
グルテンにはグルテニンとグリアジンという2種類のタンパク質があり、この2つが絡み合って形成されます。
生地を引き伸ばす工程を繰り返す手延べ製法では、グルテンの向きが揃うことにより、ツルツルしたなめらかな食感が生まれて美味しくなります。
ビタミンCには、グルテンの中のゴムのような役割を担うグルテニン同士の結合を助ける働きがあるため、結果として生地の弾力性が高まりコシが強くなるとのことです。
昔から、パン生地に柑橘系の果汁を加えると品質の良いパンができることが知られていたそうです。
1938年にはビタミンCが製パン性の向上に寄与していることが証明され、その反応機構はある程度解明されています。
ビタミンCが空気中の酸素との接触などにより酸化され、酸化型ビタミンCとなります。
これが間接的に反応してグルテンの結合を進めるなどの働きにより、生地の弾性が高まるということです。
<参考サイト>
・パン作りを科学的に解説!絶対に失敗しないパン作りの基礎~グルテンに影響する食材~
https://okashikagaku.hatenablog.com/entry/2020/01/28/%E3%83%91%E3%83%B3%E4%BD%9C%E3%82%8A%E3%82%92%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%81%AB%E8%A7%A3%E8%AA%AC%EF%BC%81%E7%B5%B6%E5%AF%BE%E3%81%AB%E5%A4%B1%E6%95%97%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%83%91#%E3%82%A2%E3%
・グルテンに影響を与える材料
https://note.com/otsukayosuke/n/n4c3a27ea2ee8
・グルテン
https://www.patissient.com/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%B3/
・製パンにおけるビタミンCの働きとは
https://www.panpedia.jp/lesson/pdf/2013.10_4-7.pdf
⑤ 紀元前から健康効果が注目されてきたクエン酸
クエン酸は、酢や柑橘類に含まれる酸味成分のひとつ。
人間が生きていく上で重要なエネルギーをつくり出すために必要不可欠な成分です。
また乳酸の生成を抑制し、疲労回復にも役立つとして、クエン酸を多く含む食品が古くから親しまれています。
クエン酸は1784年にスウェーデンの科学者シェーレがレモン果汁より発見しましたが、それよりはるか以前からその健康効果が人々に注目されていたと言われています。
紀元前460~377年の古代ギリシャでは、医者のヒポクラテスがお酢の力に注目して様々な病気の治療に利用したとの記録が残っています。
日本でも、4世紀前半頃から初めて食用の酢がつくられるようになったとされており、7世紀初めには酢をつくる官職が置かれていたほど貴重なものとして扱われていたそうです。
1953年、イギリスの生化学者H.A.クレブスにより「クエン酸回路」が発見されました。
クエン酸回路とは、細胞内のミトコンドリアで行われる、体を動かすのに不可欠なエネルギーをつくり出すシステムです。
摂取した食べ物の栄養素が体内に吸収され、酵素やビタミンによって分解される過程でエネルギーがつくられる仕組みのことで、クエン酸はクエン酸回路での化学反応において中心的な役割を担っています。
人間の体は約60兆個の細胞からできていて、ひとつひとつの細胞でクエン酸回路を正常に行うために、クエン酸は非常に重要な役割を持つ成分とのことです。
クエン酸の摂取によりクエン酸回路を活性化すると代謝アップにつながり、ダイエットにも役立つそうです。
他にもクエン酸には、疲労物質である乳酸を分解することにより、疲労回復や筋肉痛を軽減する働きがあるとされています。
また、その酸味により唾液や胃液の分泌を促して、食欲増進や夏バテ防止などにも役立ちます。
マグネシウムやカルシウムなどのミネラルの吸収促進、美肌、肝臓の機能改善などにも良いとされています。
<参考サイト>
・わかさの秘密 クエン酸
https://himitsu.wakasa.jp/contents/citric-acid/
・クエン酸の効果とは?お菓子・お料理・お掃除活用法
https://www.kyoritsu-foods.co.jp/feature/kuensan/
・疲労をためない手軽な工夫?疲労回復に役立つクエン酸を上手に取りましょう
https://brand.taisho.co.jp/contents/sports/529/
・クエン酸の効果・効能とは?健康効果が期待できる食品を紹介
https://www.suntory-kenko.com/column2/article/3388/
⑥ クエン酸の効率的な摂り方や食べ方の工夫
クエン酸は体内で合成されますが、体内には大量にためておくことができず、余った分は体外に排出されてしまうので、分散してこまめに摂取するのが良いそうです。
運動した後に摂るよりも運動前に摂ることで、エネルギーの生成がスムーズに行われ、運動中に疲労物質が分解が促進されて疲れが残りにくくなるとのことです。
クエン酸は、レモン、みかん、グレープフルーツなどの柑橘類や梅干し、酢など、酸味のある食べ物に多く含まれます。
大きめのレモン1個に約4g、梅干し1個に1gのクエン酸が含まれているそうです。
クエン酸を多く含む食材と相性の良い組み合わせについて、いくつか調べてみました。
【レモンとはちみつ】
はちみつの主成分であるブドウ糖と多糖は消化吸収が早く、体内ですぐエネルギーに変わるため、クエン酸を豊富に含むレモンと組み合わせることでさらにエネルギー代謝が促進します。
また、レモンのクエン酸がはちみつのビタミンB群の吸収を良くする、酸味が緩和され抗酸化に役立つ皮の部分も食べやすくなる、などの相乗効果が期待できます。
夏にはよくお世話になりました。
【梅干しと鶏むね肉】
鶏むね肉に含まれるイミダペプチドという抗酸化成分が、活性酸素による酸化ストレスから細胞がダメージを受けるのを防ぐとされます。
クエン酸が豊富な梅干しと一緒に摂ることで、エネルギー代謝の促進が期待できます。
クエン酸の働きで鶏むね肉がやわらかくなる効果もあります。
【梅干しと鶏レバー】
梅干しに含まれるクエン酸が、鶏レバーに含まれる鉄分の吸収を高めてくれます。
【グレープフルーツとホウレンソウ】
クエン酸の働きで、ホウレンソウに豊富に含まれるマグネシウムがより効率よく吸収できます。
<参考サイト>
・クエン酸が多く含まれる食べ物は?食べ合わせについても調査!
https://www.marine-bio.co.jp/citric-acid/article13/
⑦ 素麵の茹で水に梅干しを入れるとクエン酸の力で歯応えUP!
クエン酸は果物や野菜などに含まれる成分ですが、さらさらした白色の結晶性の粉末状で市販されているものもあります。
クエン酸の働きを調理などに活かすコツについて、いくつか調べてみました。
【根菜類の下ごしらえに】
ゴボウ、レンコンなどの根菜類は、水1リットルにクエン酸小さじ1(3g)を溶かした水につけておくと、黒ずみを防いできれいに仕上がるそうです。
【キャベツの下茹でに】
キャベツを茹でる時にクエン酸を少量お湯に加えておくと、独特の臭みが気にならなくなるそうです。
【大根おろしに】
大根おろしが辛い時に、クエン酸を少量加えると辛みが抑えられて食べやすくなります。
【焼酎やウイスキーに】
焼酎やウイスキーにごく少量のクエン酸を加えると、酸味がさらに美味しくなるそうです。
【素麺を茹でる時に】
鍋にたっぷりのお湯と梅干を2~3個入れ、沸騰した後2~3分煮ます。
そのお湯で素麺を茹でると、歯応えがぐんとアップします。
梅干しを入れることで茹で水が弱酸性に傾くと、麺のグルテンがしなやかになり、結果としてデンプンが溶けにくくなり、歯応えを保ちながらのどごし良く茹で上がるとのことです。
小豆島の製麺所の方に聞くと、このへん、色々な各ご家庭での食べ方や説があるようです。
茹でている時に梅干しを入れる方がいたり、お酢を入れたりする方もいらっしゃいます。
あと、ちなみにですが、茹でている時に「びっくり水」を入れる方がいらっしゃいますが、石井製麺所ではおすすめしません。
お湯の温度が下がってしまい、茹で時間がかかることでシャキッと茹で上がらなくなってしまいます。
しっかりとぐらぐらと沸騰したお湯に入れて茹でることをおすすめします。
<参考サイト>
・そうめんの科学
https://ntv.co.jp/megaten/oa/20180624.html
・コシのある素麺は梅干しでつくる!
https://note.com/travelingfoodlab/n/n0b2920e0f7e3
⑧ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
5月1日から販売を再開する「手延べレモン素麺」。
袋を開けて麺を茹でると、レモンの爽やかな香りが広がります。
酸っぱい素麺ではないのですが、レモンらしいほのかな香りと、すっきりとした味わいが特徴で、
コシの強い麺が夏の暑い日に気持ちよくのどを通る素麺に仕上がっております。
レモン(に含まれる成分)と素麺(特に小麦粉)は上述のように、実は、とても良好な関係のものなんです。
ですから、レモン素麺はちょっと“ミーハー”なイメージがあるかも知れませんが、製法、食べ方、食べる方の健康を考えた“良い出来”の素麺だと自負しています。
多少手間は掛かるのですが、毎年楽しみにしてくださるお客様もいらっしゃっいますので、私たちも精一杯製麺に取り組んでいます。
このブログを書いている時点で、販売はまだ解禁になっていませんが、販売再開の際には一度お召し上がりいただけましたら幸いです。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.32
麺究者への道/納豆について研究してみる
Vol.28のブログから「発酵」「熟成」について調べています。
前回は、「醤油」について色々な角度から学びを深めてみましたが、今回は、素麺とは少し離れた立ち位置(?)の「納豆」についてです。
調べてみてまず驚いたのが、日本では西に行くほど納豆が食べられていないとか…(もちろん好き好きもあるかと思いますが)
石井家では、全員納豆を食べます。
小豆島ではどうなんでしょうか?
ただ、小豆島は醤油の産地ですから、納豆をつくる際の「納豆菌」は醤油をつくる際の「麹菌」「酵母」の天敵らしく、醤油蔵の見学の際には「朝、納豆を食べていませんか?」と聞かれるところもあるのだそうです。
といっても、醤油自体は納豆にかけて食べたりするので相性は良いと思いますが、原料加工の際には相性の悪い物なんだそうです。
前回調べた醤油は、素麺と同じくらいの歴史でしたが、納豆はなんと!弥生時代から食べられていたそうです。
下でも述べていますが、偶然発見されたものだと考えられていて、煮豆をわらの上に落としたら、香ばしいニオイがして食べたら美味しかった…そこから納豆の製造方法が確立されて今日もつくり食べ続けてられているのだそうです。
そう考えるとスゴいですよね。
良いニオイがしたからと言っても、糸を引く食べ物をよくぞ口にしたなと思います。
今では当たり前かも知れませんが。
また、納豆は昔から、栄養価のある物、健康に良い食材としても知られていたんだと思います。
現代でこそ科学の力で、何が良いのか調べることができますが、当時はそんな知識も無く、実体験で体に良い物として食べられてきたんだと思います。
そういった食品の良さを引き出す「発酵・熟成」について、今回は「納豆」というテーマで掘り下げてみたいと思います。
最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。
【目次】
① 偶然生まれた?謎に包まれる納豆の起源と、その歴史
② 発酵の過程で健康成分を増やす&生み出す納豆菌
③ 発酵と熟成の温度管理がカギ!納豆のつくり方
④ 糸を引かないものもある!?納豆の種類あれこれ
⑤ 意外な組み合わせも!納豆と相性の良い食材とは?
⑥ 順当?意外?納豆とかかわりの深〜い地域
⑦ 地域が違えばこんなに違う!納豆の食べ方あれこれ
⑧ 納豆は万国共通!?世界の大豆発酵食品いろいろ
⑨ 《美味しい素麺》手延べ山芋素麺 編
① 偶然生まれた?謎に包まれる納豆の起源と、その歴史
納豆は、煮たり蒸したりして柔らかくした大豆を発酵させた食べ物です。
日本人が納豆を食べるようになった時期ははっきりとは分かりません。
ですが、米や大豆の栽培が普及し、野菜の煮炊きが行われるようになった弥生時代と推測されています。
当時の竪穴式住居の床には、納豆菌の格好の住みかとなる稲わらが敷かれていたそうです。
煮た大豆が稲わらの上に落ちたのか、稲わらでくるんで保存したのかで、納豆菌が大豆に偶然付着したのがきっかけという説があります。
納豆の発祥には他にもいろいろな説があります。
飛鳥時代、聖徳太子が愛馬にエサとして与えていた煮豆の残りをわらに包んで、数日後に開けてみると糸を引き、美味しい豆になっていた、という説。
平安時代、源義家という武将が地元の農民に緊急の食糧供出を命じ、慌てた農民が大豆を煮てすぐわらに包み供出。
数日後、香ばしい匂いにわらを開けてみると、糸を引き美味しい豆になっていたという説。
ちなみに源義家の伝承は、水戸納豆でおなじみの茨城県や、秋田県など各地にあるそうです。
他にも、時期や地域もさまざまな説があるようです。
「納豆」という言葉が確認できる最古の書物は、平安時代の「新猿楽記(しんさるがくき)」とのことですが、これは糸を引かない「塩辛納豆」のことだったとも言われています。
南北朝時代には、光厳法皇という人が村人に「藁包納豆」の製法を伝えたという記録が残っているそうです。
室町時代には糸引き納豆が広く知られるようになり、日常的に食されるようになりました。
「納豆」の語が糸引き納豆を指していることが明らかな、現存する最古の史料は、15世紀の「精進魚類物語」という御伽草子だそうです。
戦国時代においては、栄養価が高く保存性が良い納豆は、重要な兵糧のひとつとして武士のタンパク源やスタミナ源となりました。
古代から京都のお寺でつくられていた「塩辛納豆」が浜名湖畔などに伝わって「浜納豆」として名産品になり、足利義勝や今川義元、豊臣秀吉などの武将などにも好まれたそうです。特に徳川家康は「浜納豆」がお気に入りで、江戸幕府の歴代将軍に献上されていたとも言われています。
江戸時代には一般庶民にも広く食べられるようになり、京都や江戸では「納豆売り」が毎朝納豆を売り歩きました。
ざるにわらを敷いて納豆を盛り、天秤棒にぶら下げて、量り売りしていたとのこと。
またこれとは別に、漬物店などの店頭でわらに包んだ納豆も売られていたそうです。
明治維新以降、清潔志向の高まりなどから、わらに包んだ納豆が一般化されていきました。
大正時代には、包装形態が経木(きょうぎ)や紙の箱などに変わっていきます。
その後、納豆の製造方法などの研究が進み、1960年代以降の冷蔵輸送技術の発展と普及によって全国的に広く流通するようになり、その健康機能性の高さが注目され、人気の食材となっています。
昭和50年代には製造工程がオートメーション化され、包装も現在のようなフィルムパッケージが主流となりました。
<参考サイト>
・納豆のまめ知識
https://www.mizkan.co.jp/natto-information/
・納豆の話
https://hakkousyoku.com/natto/
・納豆の豆知識
https://www.takanofoods.co.jp/fun/nattomame/
・Wikipedia 納豆
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%8D%E8%B1%86
・名物・浜納豆
https://ymy.co.jp/hamanatto.php
② 発酵の過程で健康成分を増やす&生み出す納豆菌
納豆をつくる時に欠かせない「納豆菌」は、「枯草菌(こそうきん)」という細菌の一種です。
納豆菌は、田んぼや畑、枯れ草など身近なところに存在し、特に稲わらに多く生息しています。
煮大豆に納豆菌を加えると、発酵する過程で大豆のタンパク質を分解して吸収しやすくなり、納豆特有の香りや味、ネバネバが生まれます。
この粘性物質は、旨み成分の一種であるグルタミン酸が結合した「ポリグルタミン酸」というもので、昆布の旨み成分と同じものです。
糸を引けば引くほど、旨み成分が増します。
納豆菌は非常に高い繁殖力を持ち、乾燥や熱にとても強いため、取り扱いに注意が必要な場合があります。
酒蔵や味噌・醬油蔵、パン工房などに納豆菌が入り込むと、それぞれの食品の発酵に必要な麹菌や酵母などに良くない影響を与えてしまいます。
また熱湯消毒したり石鹸で洗ったりしても完全に殺菌できないため、納豆菌を持ち込んではいけないとされています。
納豆菌は胃酸にも強いため、生きたまま腸内にたどり着いてもともといる善玉菌を活性化させたり、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善したりする働きがあります。
納豆菌は食物繊維があると腸内での働きが盛んになるため、食物繊維も豊富な納豆を食べることで整腸を促進します。
また大豆に納豆菌を加えて発酵させる過程で、タンパク質分解酵素である「ナットウキナーゼ」を生成します。
ナットウキナーゼは、血栓を溶かし、血液をサラサラにする働きが知られています。
納豆を食べるときに25回以上混ぜてより粘りを出すことで、ナットウキナーゼが胃酸で溶けるのを防ぎ、腸で効率良く吸収されやすいという説もあるそうです。
さらに納豆菌は、骨の形成促進に深く関わる「ビタミンK2」を多く生み出します。
納豆菌の発酵により、増加する成分もあります。
原料の大豆が持つ「大豆イソフラボン」は、増加して腸から吸収しやすい「アグリコン型イソフラボン」の形に変化します。
女性ホルモンと似た働きを持つことから、ホルモンバランスを整え、更年期症を改善することが期待できます。
また、アンチエイジング作用が注目される「ポリアミン」は、私たちの体内でもつくられている、細胞の新陳代謝を正常に行うために必要不可欠な成分です。
大豆発酵食品にはポリアミンが多く含まれ、特に納豆は納豆菌による発酵によりとりわけ多く含まれているそうです。
<参考サイト>
・納豆菌とは
https://www.hakko-blend.com/study/b_05.html
・「納豆の発酵による機能性」納豆菌
https://natto.or.jp/kenkou/nattokin/nat09.html
・納豆の健康効果 納豆の発酵と健康成分
http://www.natto-science.jp/effect02.html
・ 女性にうれしい成分 女性にうれしい納豆の健康成分と発酵効果
http://www.natto-science.jp/woman03.html
・【医師監修】納豆菌とは?特徴・効果・効能を説明。腸内環境にいい理由や「強い」といわれる理由を解説
https://www.happiness-direct.com/shop/pg/1h-vol294/#:~:text=%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%A8,%E3%81%AB%E6%AE%BA%E8%8F%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
・みそ・醤油・酒など食品工場で納豆を食べてはいけないのはなぜ?|食品工場で気を付けるべき細菌
https://www.exseal.co.jp/blog/taxonomy-07/8944/
③ 発酵と熟成の温度管理がカギ!納豆のつくり方
納豆の基本的な材料は、大豆と納豆菌のみです。
納豆の発酵はおよそ20~24時間程度と、味噌や醤油と比べて短時間です。
伝統的な製法は、まず大豆を蒸して冷まします。
煮沸消毒した稲わらでつくった「わらづと」に入れ、40℃前後の環境で発酵させると、わらにすみついた天然の納豆菌が繁殖して、20〜24時間ほどで納豆が出来上がります。
現在、一般的なのは、培養された納豆菌を用いた製法です。
まず、きれいに洗浄した原料の大豆を水に浸します。
この工程を「浸漬(しんせき)」と呼びます。
大豆に水をしっかり吸収させると、もとの2~2.3倍くらいの重さになります。
こうすることで、煮る工程での熱の通りを良くして、煮豆の風味や固さなどを均一にできるそうです。
浸漬時間は水温や大豆の品種、粒の大きさなどによって調節されるそうです。
水を吸わせた大豆を、高圧の圧力釜で蒸し上げます。
これを「蒸煮(じょうしゃ)」と呼びます。
蒸煮によってやわらかくふっくらとした煮豆になり、納豆菌が栄養を取りやすく増殖しやすい環境になります。
また納豆菌がつくり出す様々な酵素類が浸透して大豆の成分を分解しやすい状態にします。
蒸煮の時間や温度は、各メーカーが大豆の品種や産地により工夫しています。
次に、蒸煮した煮豆に純粋培養した納豆菌を噴霧して、表面に付着させます。
雑菌の混入を防ぐため、煮豆の温度が70~90度くらいで接種するのが理想的とのことです。
これを販売用の容器に小分けして、「室(むろ)」と呼ばれる発酵室に入れ、38~42度で16~24時間ほど発酵させます。
その後、発酵室から出して冷却し、5度以下の低温で24時間ほど熟成して発酵で増えた納豆菌を休眠させて完成です。
大豆と市販の納豆を使えば、自宅でも納豆をつくることができるそうです。
乾燥大豆にしっかり吸水させてじっくり茹で上げ、市販のひきわり納豆と混ぜて納豆菌をいきわたらせます。
保温バッグで発酵、冷蔵庫で熟成、などを経て自家製納豆ができるとのことです。
<参考サイト>
・納豆はどうやって作られる?納豆の製造工程を解説
https://sonomono.jp/natto-hakase/natto-hakase-1/
・納豆ができるまで
https://natto.or.jp/make/index.html
・材料たったの2つ!大豆の存在感抜群な「納豆」のつくり方
https://www.hakko-blend.com/food/challenge/09.html
④ 糸を引かないものもある!?納豆の種類あれこれ
納豆は、糸を引く「糸引き納豆」と、糸を引かない「塩辛納豆」の2種類に分けられます。
糸引き納豆はさらに「丸大豆納豆」「ひきわり納豆」「五斗納豆」の3種類に分類されます。
納豆の種類とそれぞれの特徴について、調べてみました。
【糸引き納豆】
私たちが日常よく目にする、大豆を発酵させてつくるネバネバ糸を引く納豆です。
<丸大豆納豆>
大豆を丸ごと煮て納豆菌で発酵させた、もっともポピュラーな納豆。
使用する大豆の大きさにより、大粒・中粒・小粒・極小粒に分類されます。
大豆を皮つきのまま使っているので、歯ごたえを感じられます。
<ひきわり納豆>
大豆を炒ってあらく挽き、皮を取り除いてから煮て納豆菌で発酵させてつくります。
青森、秋田、岩手などでは江戸時代以前からつくられていたとのことです。
大豆の表面積が大きいため納豆菌の旨みを強く感じられ、また皮がないので食感がやわらかく消化しやすいそうです。
<五斗納豆>
ひきわり納豆に麹や食塩をまぜて熟成させたもの。
山形県米沢地方に昔から伝わる郷土食で、以前は冬の保存食として重宝されたそうです。
五斗(約90リットル)も入る大樽で仕込んだのがその名の由来とのこと。
現在では塩分を減らし「雪割り納豆」の名で売られているそうです。
【塩辛納豆】
奈良時代に中国から伝わったもので、お寺でつくられることが多く「寺納豆」とも呼ばれるそうです。
精進料理を食する禅寺で、不足しがちなタンパク質を補える食べ物として広まったと考えられます。
京都の大徳寺で保存食として今もつくり続けられている「大徳寺納豆」や、静岡の浜名湖畔に伝わる「浜納豆」も、同じ種類です。
大豆と小麦と麹菌を塩水に漬け込んで熟成させるため、つくるのに数カ月~1年かかります。
出来上がると黒褐色の半分乾燥したものになり、糸引き納豆のようなネバネバはなく、塩辛く、たまり醤油や八丁味噌のような独特の風味があります。
お茶請けなどで少しずつ食べたり、調味料として使ったりするそうです。
ちなみに「甘納豆」は発酵食品ではなく、砂糖で煮詰めた小豆などにグラニュー糖をまぶし、乾燥させたお菓子で、遠州名物の塩辛納豆「浜納豆」に似ていることがその名の由来だそうです。
※写真はPhotoAC「大徳寺納豆」より
<参考サイト>
・大徳寺納豆とは
https://www.honke-isoda.com/contents/category/about/
・納豆の種類と特徴│おすすめの選び方やおいしく食べる豆知識も
https://www.shufoo.net/plus/shopping_tips/440
⑤ 意外な組み合わせも!納豆と相性の良い食材とは?
納豆に薬味などの食材を加えて食べる人も多いと思います。
味はもちろん、栄養面で相性の良い食材にはどんなものがあるか、調べてみました。
【ネギ・ニラ・ニンニク】
納豆に含まれるビタミンB1の吸収を促進する「硫化アリル」が豊富な食材です。
ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える働きがあり、疲労回復にも役立つ成分です。
【しらす・ちりめんじゃこ】
カルシウムが補えます。
【キムチ】
キムチは乳酸菌による発酵食品です。
納豆に含まれるオリゴ糖が、キムチの乳酸菌のえさとなり、相乗効果で腸内の善玉菌を活性化することが期待できます。
【ヤマイモ】
ジアスターゼやアミラーゼなどの消化酵素が豊富です。
【チーズ】
同じ発酵食品で、味の相性も良いです。ビタミンAが豊富に含まれます。
【トマト】
納豆にあまり含まれないビタミンCやビタミンAを補えます。
【アボカド】
食物繊維やオレイン酸、カリウムが多く含まれています。
納豆におすすめの調味料は、醤油やたれ以外にもいろいろあるようです。
【酢】
納豆のにおいが軽減し、ふわふわした食感になります。
【砂糖】
砂糖の保水力で粘りが増します。北海道や東北では定番の食べ方という地域もあるそうです。
【マヨネーズ】
コクが出て、まろやかになります。
逆に、気をつけたい組み合わせや食べ方も調べてみました。
僕も知らず知らずの内にやっていました。
【生卵(卵白)】
卵に含まれる「アビジン」という成分が、納豆に含まれる「ビオチン」の働きを抑制します。
ビオチンはビタミンBの一種で、私たちの皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康に深く関わる成分です。
アビジンは卵白のみに含まれ、熱に弱いので、納豆に混ぜる場合は半熟卵や卵黄のみにすると良いようです。
【熱々のごはん】
ナットウキナーゼは50度を超える熱で効果が弱まってしまうため、ごはんを少し冷ましてから納豆を乗せたり、別々に口に運んだりすると良いようです。
【一部の薬】
食材ではありませんが、「ワーファリン」という経口抗凝固剤を服用している人は納豆を食べてはいけないそうです。
納豆に含まれるビタミンKには血液を凝固させる作用があり、また納豆菌が腸内でビタミンKを産生するため、血液をサラサラにするワーファリンの効果を妨げてしまいます。
心配な方は医師や薬剤師に必ず相談してください。
<参考サイト>
・納豆と相性のいい・悪い食べ合わせ食材とは?プラスワンして栄養効果を高めよう
https://www.food-joint.shop/column/20200531/
・納豆と相性が良い・悪い食材の組み合わせ
https://www.medifoods.jp/blog/post-887.html
・納豆の栄養は最強?期待できる効能や食べ合わせ・薬飲み合わせなどの疑問を管理栄養士が解説
https://tokubai.co.jp/news/articles/5884
⑥ 順当?意外?納豆とかかわりの深〜い地域
納豆の購入金額は東高西低と言われます。
「納豆に関する調査」(全国納豆協同組合連合会納豆PRセンター・2021年6月)によると、「納豆を全く食べない」という回答が、中国地方と四国地方で22.1%と最も多く、ついで近畿地方が17.4%、九州地方が13.8%だったそうです。
一方、東北地方は5.0%、関東地方は7.9%、北海道が8.1%とのことで、東西で好き嫌いが大きく分かれているようです。
大手納豆メーカーでは、地域ごとにたれの味付けを変えたり、西日本ではにおいを抑えた商品を販売したりなどの工夫で、売り上げを拡大しているそうです。
納豆の生産や消費が多い地域について、調べてみました。
【茨城県水戸市】
茨城県は納豆の生産量が全国1位。
大豆づくりに適した地で、古くから小粒大豆の名産地でした。
農家などで自家製の納豆づくりが盛んで、1889年(明治22年)に初代笹沼清左衛門という人が商品化したのが「水戸納豆」の始まりだそうです。
これが水戸土産として人気となり、全国に広まったとのこと。
※写真はPhotoAC「水戸駅前の水戸黄門像 助さん像 格さん像」より
【福島県福島市】
納豆購入額ランキングで2019年~2022年と4年連続日本一だったそうですが、特に納豆に関する歴史は知られていないとのこと。
山間部で越冬のために貴重なタンパク源だったのではないか、また、学校給食で頻繁に納豆が出されるため小さい頃から納豆を食べる習慣ができているのではないか、などの理由が考えられるそうです。
※写真はPhotoAC「会津若松城」より
【熊本県】
納豆の消費量は西に行くほど少ないと言われるなか、熊本は関東並みの消費量だそうです。
熊本の武将・加藤清正が朝鮮出兵の際に持ち込んだ煮大豆が納豆の起源という説があり、それ以来納豆を食べる文化が根付いたとも言われています。
※写真はPhotoAC「熊本城天守閣」より
<参考サイト>
・西日本に“納豆嫌い”が多い理由とは?北海道「牛乳納豆茶漬け」に鳥取県「スタミナ納豆」…納豆の地域性に迫る
https://www.walkerplus.com/article/1108597/
・納豆の歴史|源義家がはじまり?納豆の発祥から現在まで
https://tempe-oneface.com/plant_based/14944/
・納豆のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/hakkofood/03.html
・「納豆」購入額“4年連続”福島市が日本一!「モモ」も断トツ、意外なものも・・・
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/318457?display=1
⑦ 地域が違えばこんなに違う!納豆の食べ方あれこれ
納豆について色々調べていくうちに、地域によって食べ方のバリエーションが様々であることが分かりました。
気軽に試せそうなものもありますね。
【砂糖醤油納豆】(北海道)
北海道の一部の人は、納豆に砂糖、醤油を混ぜて食べるのを好むそうです。
【納豆もち】(山形県)
醤油やたれを混ぜた納豆をもちにからめ、ネギをまぶします。砂糖を入れることもあるそうです。
【ひっぱりうどん】(山形県)
村上地方では、サバ缶・納豆・鰹節でつけだれをつくり、うどんを入れて食べるそうです。
※写真はPhotoAC「ひっぱりうどん」より
【おみ漬け納豆】(山形県)
青菜を刻んで他の野菜と漬けた「おみ漬け」と納豆を混ぜて食べます。
※写真はPhotoAC「おみ漬け納豆(黒豆納豆)」より
【納豆汁】(山形県・秋田県)
すり潰した納豆を混ぜたみそ汁。山形県ではいもがら(サトイモなどの茎を乾燥させたもの)を入れた納豆汁を、1月7日に七草の代わりに食べるそうです。秋田県横手地方では、山菜類やキノコ、豆腐を入れた納豆汁を正月三が日、雑煮の代わりに食べ続ける風習があるそうです。
※写真はPhotoAC「納豆汁」より
【砂糖入り納豆】(秋田県)
納豆に砂糖を混ぜて食べます。年配の方に多い食べ方だそうです。
【納豆天ぷら】(秋田県)
シソ・ネギ・胡椒をきかせた納豆の天ぷらです。
※写真はPhotoAC「納豆揚げ」より
【納豆餃子】(福島県)
具に納豆を入れた餃子です。
【ひしょ納豆】(福島県)
喜多方市では、納豆に塩と米こうじ・米をまぜた「三五八(さごはち)」や甘酒を入れて3カ月ほどおいてから食べる料理があります。
【そぼろ納豆(しょぼろ納豆)】(茨城県)
納豆と刻んだ切り干し大根を合わせて、塩や醤油などに漬けこんだ水戸市の伝統的な料理。現在でも日常的に食べられているそうです。
※写真はPhotoAC「そぼろ納豆」より
【きりざい】(新潟県)
魚沼地方の郷土料理で、細かく刻んだ野菜や漬物と納豆を混ぜたもの。これに砂糖を入れることもあるそうです。
※写真はPhotoAC「きりざい」より
【納豆もち】(京都府)
つきたてのもちに大量の納豆を混ぜ、巨大なロール状にしたものを、正月の間食べ続ける風習があります。
【納豆茶漬け】(滋賀県)
坂本で幼少期を過ごした魯山人が広めたと言われる料理。海苔やあられなどをトッピングし、わさびなどを添えて茶漬けにします。
※写真はPhotoAC「納豆茶漬け」より
【スタミナ納豆】(鳥取県)
挽肉とニンニク、ひきわり納豆を炒めた料理で、学校給食で人気のメニューとのことです。
【納豆雑煮】(熊本県)
雑煮に入ったもちを一度取り出して、納豆とあえて食べます。雑煮の中に納豆を入れる地域もあるそうです。
【納豆味噌】(沖縄県)
ひきわり納豆やアーモンドを入れた肉みそのような料理で、学校給食で人気のメニューだそうです。
<参考サイト>
・納豆に砂糖をかけて食べる地域は? 適切な量やうれしい効果をチェック
https://hugkum.sho.jp/353695
・納豆のプロに聞いた!日本国内地域別「納豆」の食べ方
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5922553
・【納豆アレンジ】全国各地の郷土料理やおすすめレシピを納豆大好きライターが紹介
https://thegate12.com/jp/article/668
・【これって美味しいの?】つきたて餅に“つゆだくの納豆”を…山形県の郷土料理「納豆餅」が話題に
https://maidonanews.jp/article/14394442
・納豆汁 山形県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/nattojiru_yamagata.html
・そぼろ納豆/しょぼろ納豆 茨城県
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/soboronatto_ibaraki.html
・郷土料理 ひしょ納豆
https://www.gimu.fks.ed.jp/plugin/databases/detail/2/18/252
・鳥取県の郷土料理、スタミナ納豆! レシピ・作り方
https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1930018339/
・沖縄の学校給食でおなじみ「納豆みそ」とはなんぞや
https://www.dee-okinawa.com/topics/2023/12/nattoumiso.html
⑧ 納豆は万国共通!?世界の大豆発酵食品いろいろ
納豆は日本独自の食べ物というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は海外でも、納豆のような大豆の発酵食品がたくさんありました。
【チョングッチャン】(韓国)
茹でた大豆を、納豆菌に似た枯草菌で発酵させ、発酵後に塩と唐辛子粉などを加えて貯蔵性を高めたもの。日本の納豆のような糸を引く粘り気と独特の香りがあり、チゲをつくるのによく使われるそうです。
※写真はPhotoAC「チョングッチャン」より
【トゥアナオ】(タイ・ラオス)
「トゥア」=豆、「ナオ」=腐った、の意味。茹でた大豆を枯草菌で発酵させたもの。粒状やペースト状、さらにそれを薄くせんべい状に広げて乾燥させたもの、があるそうです。もち米と一緒に食べたり、炒め物などに使われたりします。
【テンペ】(インドネシア)
茹でた大豆をバナナの葉で包み、テンペ菌というクモノスカビの一種で発酵させた、ブロック状のもの。白いカビで覆われており、日本の納豆のような粘り気やにおいはないそうです。揚げ物や炒め物などに使われることが多く、ヴィーガン食材として世界的にも注目されているとのこと。
※写真はPhotoAC「テンペ」より
【豆豉(トウチ)】(中国)
中国には、北京語で「豆」(タチオ)と呼ぶ、日本の塩辛納豆に近いもので、色が黒く塩気の効いた食べ物があります。「豉」(シ)は納豆のことだそうです。そのまま食べるというよりは、調味料として使われます。
※写真はPhotoAC「豆豉」より
【キネマ】(ネパール)
粘りがあり、糸を引くもので、製法も日本の納豆と似ています。日本でいう味噌のような調味料として使われるそうです。
【リビイッパ】(ブータン)
「リビ」=大豆、「イッパ」=発酵の意味。茹でた大豆をビニル袋に入れ自然発酵させたり、バナナの葉で包んで発酵させたりするそうです。丸く平たく成形し、焼いて食べられているとのことです。
【バーリュ】(インド)
においも味も日本の糸引き納豆にそっくりだそうです。
【ペーポー】(ミャンマー)
直訳すると臭い豆という意味。糸を引かない納豆をつぶしたものを薄いせんべい状にしたり、調味料として使ったりします。
【ダワダワ】(ナイジェリア)
大豆ではなく「パルキア」という豆が原料で、炒ってから煮てひきわりにし、ヒョウタンに入れて発酵させます。スープの調味料として使われるそうです。
【ネテトウ】(セネガル)
こちらも「パルキア」からつくられます。豆の形を残した塩からい半生のものや、乾燥させたもの、スモークしたもの、粉末にしたもの、があります。スープなとの調味料に使われます。
【スンバラ】(ブルキナファソ)
「ネレ」などのマメ科の植物を原料としてつくられます。豆の形を残して球状にして保存され、調味料として使われるそうです。
<参考サイト>
・納豆まめ知識
https://www.mizkan.co.jp/natto-information/mame/
・海外にも納豆はありますか?
https://www.natto.or.jp/hyakka/ped_natto02.html
・納豆の健康秘密と世界の発酵大豆食品をご紹介:知っておきたい6つの効能!
https://kikuya0029.com/blog/2394/
・ミャンマーの発酵食品
https://shinowazuri.com/tea-guide-article/myanmar/myanmar-scenery/%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%85%B5%E9%A3%9F%E5%93%81.html
⑨ 《美味しい素麺》手延べ山芋素麺 編
ネバネバ繋がりではありませんが、手延べ山芋素麺をご紹介させていただきます。
普通の素麺よりもモチモチとした食感が特徴で、この時期に大変人気があります。
温かい日が続いたかと思えば、急に気温が下がったり、日中は暖かくても日が沈むと肌寒さがまだまだ身に染みたり。
そんな時期だからこそ、温かいお出汁といただいても良し、麺は冷たくお出汁をアツアツにしたものをぶっかけていただく「ひやあつぶっかけ」でも良し、水洗いした麺を冷たいツユでいただいても良し…のこの時期重宝する手延べ素麺です。
石井製麺所のラインアップとしては古株ですが、現在も好評をいただき、リピーターの多い素麺です。
納豆がお好きな方は、納豆を山芋素麺にトッピングして、召し上がってみてはいかがでしょうか。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ山芋素麺》 https://141seimen.thebase.in/categories/4801493
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.31
栄養成分の機能性について/乳酸菌
素麵を製造する際、気になる天気予報。
そして今、特に気になるのが花粉の飛散情報。
花粉症がツライ季節です(涙)。
私は小豆島に戻る前、かなり花粉症に悩まされていて、鼻から来て、目もツラく、薬に頼っていました。
しかしながら、島に戻ってからは症状も和らいだようで、薬を飲んではいますが、体調的にも改善傾向です。
これだけでも島に戻ってきた価値は、大いに感じております。
さて、最近、花粉症に良い食品というものも多くあり、よく聞くのが乳酸菌を含むヨーグルトではないでしょうか。
先日、「発酵」「熟成」のブログで、醤油についても色々と書いていましたが、そこでも乳酸菌のキーワードは出てきました。
乳酸菌の存在自体を知られるようになったのはつい最近のことなんだそうですが、その活用ははるか昔からあり、食経験も豊富で安全性の高いものだと知られています。
乳酸菌は人間の体の中に存在するものから、食物や自然界に存在するものまで、人体へのさまざまな有用性が紹介されています。
発酵食品を製造する際にはその働きが役立ち、花粉症で苦しむ時期、免疫力が低下して体調を崩しやすい時期にも役立つとされる乳酸菌。
“菌”と聞くとなんだか怖い気もしますが、人間にとって欠かせない“菌”のひとつなんですね。
今もなお研究が進み解明されることも多いそうで、今後もさらなる有用性の発見に期待したいところです。
今回のブログでは「乳酸菌」の機能性や働きを学び、新しい製品に活かすことができればと考え、調べてみました。
乳酸菌入り手延べ素麵ができれば、花粉症対策に素麵を食べていただける日が来るでしょうか。
それはさておき、新製品開発のためだけでなく、日々の健康管理にもお役立ていただける情報としてブログにまとめたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
写真は、最近、新製品開発のために伺った「かがわ産業支援財団」がある「香川産業頭脳化センター」の入り口付近。
「頭脳化」ってどういうことだろう?と思いながら、撮った1枚です。
こちらでお世話になる日を目指して、今後もいろいろと頑張ってまいります。
【目次】
① 人間の強い味方!善玉菌の代表格・乳酸菌
② 乳酸菌と一括りに言っても、実は400種類もある
③ 乳酸菌は「生きたまま腸まで届く」ことが必要なのか?
④ 乳酸菌が摂取できる発酵食品いろいろ
⑤ 腸内環境を整え、健康に役立つ乳酸菌
⑥ 知っておきたい、乳酸菌の効率的な摂り方や食べ方の工夫
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べきくらげ麺編
① 人間の強い味方!善玉菌の代表格・乳酸菌
乳酸菌とは、発酵により糖類から乳酸をつくり出す性質を持つ微生物の総称です。
人や動物の体内をはじめ、自然界に広く存在します。
古くから、ヨーグルト・チーズ・漬け物・味噌・醤油・日本酒など発酵食品の製造に利用されてきました。
乳酸菌研究の歴史は浅く、乳酸菌と健康や老化との関係がわかったのは20世紀初めのことでした。
17世紀、オランダのアントニー・ファン・レーウェンフックが腸内細菌を発見しました。
乳酸菌を初めて本格的に調べたのは「発酵微生物学の始祖」と言われるフランスのパスツールで、1857年、酸っぱくなった乳の中に微生物が存在することを発見したそうです。
さらに研究が進み「ビフィズス菌」「アシドフィルス菌」などが発見され、1908年、免疫の研究でノーベル賞を受賞したロシアのメチニコフが「乳酸菌による不老長寿説」を提唱したそうです。
乳酸菌は、人の腸の中にも存在します。
腸内にはさまざまな種類の細菌が存在しており、大きくは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3つに分けられます。
食生活の偏りや不規則な生活などにより、これら3つのバランスが崩れることがあります。
乳酸菌が産生する乳酸や酢酸などの有機酸には殺菌作用があり、大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑えて腸内細菌のバランスを整える乳酸菌は、善玉菌の代表格と言われています。
乳酸菌にはさまざまな種類があり、その働きも多種多様。
腸内環境を整える他、免疫機能の向上や、コレステロール値の低下、花粉アレルギーの改善といった働きがあることが分かっています。
<参考サイト>
・公益財団法人 腸内細菌学会 乳酸菌について教えてください。
https://bifidus-fund.jp/FAQ/FAQ_17.shtml
・乳酸菌を知る 乳酸菌とは
https://www.biofermin.co.jp/nyusankin/about_nyusankin/about/
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット 乳酸菌
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html
・乳酸菌とは?乳酸菌の働き、乳酸菌を含む食品を紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=236&category=health
② 乳酸菌と一括りに言っても、実は400種類もある
乳酸菌はおよそ400種類ほど発見されており、いろいろな分け方があります。
<形態による分類>
【乳酸球菌】丸い球状の形をしています。
【乳酸桿菌】細長い棒状の形をしています。
<発酵形式による分類>
【ホモ型乳酸発酵】糖から乳酸のみを生成します。
【ヘテロ型乳酸発酵】糖から乳酸と酢酸またはアルコール、炭酸ガスを生成します。
<発育条件による分類>
【通性嫌気性菌】空気(酸素)があるところでも増殖します。
【偏性嫌気性菌】空気(酸素)のあるところでは増殖しません。
乳酸菌豊富な食べ物の代表格であるヨーグルトの市販品には、「ブルガリア菌」「サーモフィルス菌」「アシドフィルス菌」などが用いられています。
また、乳酸菌飲料には「カゼイ菌」などが使われます。
ヨーグルトなどの製造では、これらの菌の組み合わせや発酵温度などによって、それぞれの製品の特長を出しているそうです。
乳酸菌の中でもよく耳にするものについて、それぞれの特徴や働きを調べてみました。
【ビフィズス菌】
広義では乳酸菌に含まれますが、乳酸だけでなく酢酸もつくる、酸素があると生きていけない、など乳酸菌と異なる特徴を持ちます。
整腸作用が知られており、主に大腸に住みつき、乳酸や酢酸をつくって腸内環境のバランスを整えたり、腸管を適度に刺激して腸管運動を促進したりします。
また病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑制する働きもあると言われています。
形態は棒状の桿菌ですが、増殖する時に枝のように分かれY型になります。
「Bifix(グリコ)」「ナチュレ恵(雪印メグミルク)」などに含まれます。
【ブルガリア菌】
細長い棒状の形状。
腸内に住みつくことができませんが、腸内で乳酸菌や善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きがあります。
また腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、腸壁から水分を吸収し、便通を良くするとのこと。
免疫力を高める効果や美肌効果もあると言われています。
「ブルガリアヨーグルトLB81プレーン(明治)」などに含まれます。
【サーモフィルス菌】
球菌。
ブルガリクス菌の生育をサポートするので、ブルガリクス菌と組み合わせて用いられることが多いそうです。
粘質物を形成し、ヨーグルトの硬さをつくり、離水を防ぎます。
腸内のバリア機能を高める働きや、腸内の免疫細胞に働きかけ、免疫力を高める作用や美肌作用もあると言われています。
【フェーカリス菌】
腸内での増殖が速い乳酸菌で、主に小腸に住みつき、ビフィズス菌やアシドフィルス菌の増殖をサポートします。
整腸剤「新ビオフェルミンS」には、ビフィズス菌・アシドフィルス菌・フェーカリス菌が配合されているそうです。
【アシドフィルス菌】
人の体内にもともと存在し、主に小腸に住みつきます。
熱や酸に強く、直接腸内に働きかけることができます。
乳酸菌の中でも特に乳酸をつくる能力にすぐれており、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。
腸内の免疫力を高める、口臭改善、胃潰瘍予防の作用もあると言われています。
【ラクトコッカス菌】
チーズやサワークリーム、バターなどの乳製品を製造する過程で使用されます。
凝乳作用をサポートし、チーズの熟成過程においては乳成分を分解し、チーズに特有の匂いと風味をつけます。
肌の水分量の減少を抑制するなど、美肌の働きがあると考えられています。
【ロイコノストック菌】
チーズやバターの乳製品を発酵させる過程で使用されます。
日本酒や漬物、納豆にも含まれます。
肥満に関係する腸内細菌の減少、短鎖脂肪酸の増加による体重減少の働きが期待されています。
【カゼイ菌】
乳酸菌飲料には、主にカゼイ菌が含まれています。
人の腸内に多く存在し、腸内に定着する時間が長く、悪玉菌を抑制して腸内環境を整えます。
下痢や便秘を整える整腸作用があり、花粉症の鼻症状にも有用であると考えられています。
【シロタ株】
1930年、後にヤクルトの創始者となる医学博士・代田稔により発見、強化培養された乳酸菌の一種。
胃液や胆汁に負けず、生きたまま腸内に届き、良い菌を増やして悪い菌を減らし、腸内環境を良くしておなかの調子を整える働きがあるそうです。
「ヤクルト」に含まれています。
いろいろな乳酸菌があることが分かりますね。
目的に合わせて食べ別けてみるのが良いのでしょうか?
特にカゼイ菌の入った食品などが気になるところです。。。
<参考サイト>
・乳酸菌について知る
https://www.nyusankin.or.jp/lactic/basics/
・乳酸菌とはどのような菌ですか?
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_065_493/
・乳酸菌の種類ごと効果一覧|お悩み別におすすめの乳酸菌をご紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/26683
・乳酸菌の種類と効能を知り、自分に合う乳酸菌を見つけよう!
https://www.kusurinomadoguchi.com/column/lactic-acid-bacteria-19606/
・シロタ株とは?
https://www.yakult.co.jp/shirota/about/
③ 乳酸菌は「生きたまま腸まで届く」ことが必要なのか?
乳酸菌を含む製品などのキャッチフレーズで「生きたまま腸まで届く」というものをご覧になったことがありませんか。
どういうこと?
何のメリットがあるの?
生きているっていうことは、死んでいるものもあるっていうこと?
と疑問に持たれたことはないでしょうか。
乳酸菌には、「生菌」(生きた乳酸菌)と「死菌」(死滅した乳酸菌)があるそうです。
生きて腸まで届いた乳酸菌は、その多くが腸内環境のバランスを整える作用を持っています。
では、「生菌」でなければ意味や効果がないのでしょうか?
口から体内に入った乳酸菌は、胃酸によって多くが死滅し、腸に届くときには死菌になっていることが多いそうですが、死菌にも善玉菌が退治した悪玉菌を吸着して体外へ出すといった働きがあると報告されています。
また、「死菌」は生きた乳酸菌や常在する腸内細菌などの善玉菌のエサになったり、免疫機能を調整したりする役割が注目されています。
また、死菌によっては生きている菌より免疫効果が高いものもあるそうです。
死菌は胃酸や腸液の影響をほとんど受けないので、生菌より効果が安定しているとも言えるようです。
<参考サイト>
・乳酸菌を加熱殺菌したら意味がない?死んだ菌の効果9選をご紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/28162
④ 乳酸菌が摂取できる発酵食品いろいろ
乳酸菌は、さまざまな食品の製造に利用されています。
乳酸菌を豊富に含む食品を摂取することで健康維持に役立ちます。
乳酸菌が摂れる代表的な食品について、調べてみました。
【ヨーグルト】
紀元前から食べられていたと言われるヨーグルトは、動物の乳に乳酸菌やビフィズス菌を加えて発酵させたもの。
乳酸菌が乳の中にある糖を分解して乳酸をつくる「乳酸発酵」によってできる発酵食品です。
ヨーグルト100gあたりに含まれる乳酸菌の数は約10億個です。
日本では、厚生労働省により発酵乳(いわゆるヨーグルト)1mlあたりの乳酸菌の含有量は1,000万個以上と基準が定められています。
【チーズ】
チーズは大きく分けると「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類あります。
ナチュラルチーズは、乳に乳酸菌を加えて凝固したタンパク質を取り出して成形したもので、さらに熟成させる場合もあります。
加熱しないので、生きたままの乳酸菌を摂取できます。
乳酸菌の含有量は100g中に10億個です。
プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし再び固めたものです。
【ぬか漬け】
米ぬかに塩と水を混ぜて乳酸発酵させたぬか床には、さまざまな乳酸菌が含まれています。
ぬか漬けは乳酸発酵を利用した漬け物です。
この他、野菜に付着している乳酸菌によってつくられるしば漬け、野沢菜漬け、千枚漬け、キムチ、ザワークラウトなどを食べることでも、乳酸菌を摂取できます。
作りたての乳酸菌含有量は1gあたり100万個程度ですが、熟成することにより10億個以上に増えるそうです。
乳酸菌が増殖する際に、他の菌は死滅するので、食中毒の心配はほとんどないとのことです。
【キムチ】
白菜に塩や唐辛子、ニンニクなどを加えて乳酸発酵させる漬け物。
キムチの酸味や旨味は、乳酸菌の発酵によるものです。
本場韓国では魚介塩辛を用いるのが特徴で、これにより乳酸発酵が促進されます。
市販のキムチには発酵させず調味液に漬けただけのものもあるため、「乳酸発酵」「熟成発酵」「発酵キムチ」などの記載があるものを選ぶと良いそうです。
【醤油】
麹に塩水を加えた諸味(もろみ)の中で、糖分の一部をさまざまな有機酸に変えることにより、醤油に酸味と味の伸びや深みを与える役割を果たします。
蔵の中や木桶に住みついている乳酸菌が入り込む場合と、培養したものを添加する場合があります。
(「【Vol.30】麺究者への道/醤油について研究してみる」もご参照ください)
【味噌】
大豆、米麹、塩を原料としてつくられ、発酵の段階で酵母や乳酸菌が生まれます。
乳酸菌は味噌のpH値を下げ(弱酸性にする)、酵母が生成しやすい環境を生み出したり、味を変化させたり色をよくしたりするなど、さまざまな役割を果たしています。
【納豆】
納豆をつくるときには納豆菌が添加され、基本的に乳酸菌は添加されませんが、発酵の過程で空気中の乳酸菌が入り増殖します。
含有量は製法などにより異なります。
納豆菌は熱や胃酸に強く、生きたまま腸に届き、善玉菌の増殖を助ける働きがあり、乳酸菌と一緒に摂ることで相乗効果が期待できるそうです。
製造過程で乳酸菌を加えた「乳酸菌納豆」というものもあり、1g中に数10億個の乳酸菌が含まれています。
【日本酒】
原料は米、米麹、水で、それらをアルコール発酵させるために酵母が必要となります。
酵母を培養する素となるのが「酒母(しゅぼ)」で、これを酸性化するために乳酸菌が使われます。
【乳酸菌飲料】
牛乳などを乳酸菌または酵母で発酵させ、甘味料や果汁、香料などを加えた飲み物。
生きた乳酸菌が含まれているタイプと、加熱殺菌したタイプに分けられます。
さまざまな種類があり、含まれる乳酸菌の種類や量も異なります。
乳酸菌の含有量の基準が決められており、100gあたり約10億個の乳酸菌を含みます。
<参考サイト>
・乳酸菌とは?腸における役割・ヨーグルトなど乳酸菌が摂れる食品から紐解く
https://www.wakamoto-pharm.co.jp/tips/intestine-body/lactic-acid-bacteria/
・乳酸菌が含まれる食品はこれ!
https://www.nutrilite.jp/magazine/lactic-acid-bacteria/content32.html
・乳酸菌が多い食品ランキングTop5|乳酸菌を摂るコツ5選を紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/26681
・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における 発酵乳の規格基準等の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000036782.pdf
・ヨーグルトとは?
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/yogurt/」
・納豆に乳酸菌は入ってる?納豆と乳酸菌の相性と3つの効果とは
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=14258
・醤油の知識 乳酸菌
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0710
⑤ 腸内環境を整え、健康に役立つ乳酸菌
腸内には約1000種類、約100兆個もの細菌がいると言われています。
乳酸菌やビフィズス菌は、悪玉菌の繁殖を抑え、腸の働きを促す「善玉菌」です。
「悪玉菌」は、腸内のタンパク質を腐敗させ、有害物質をつくり出すもので、食中毒の原因でも知られるウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌などがあります。
「日和見菌」は、腸内のバランスが保たれているときは無害ですが、悪玉菌が増えると悪玉菌に加勢するそうです。
バクテロイデスや連鎖球菌などがあります。
腸内細菌は腸の壁に生息しており、お花畑のように種類ごとにまとまって分布していることから「腸内フローラ」と呼ばれます。
腸内フローラのバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7が理想だそうです。
ストレスや加齢、食生活の偏りなどにより悪玉菌が優勢になりバランスが乱れると、腸内の食べ物が腐敗して便秘や下痢、肌荒れなどを引き起こします。
また、便のにおいや口臭が強まる原因にもなるとのことです。
ただし悪玉菌がまったくいなくなると、善玉菌が働かなくなり、食べ物の消化・吸収がうまくいかなくなってしまうため、この「2:1:7」のバランスを保つことが大切なのだそうです。
善玉菌の代表である乳酸菌は、腸内環境を整えるのをはじめ、体に有用なさまざまな働きを持ちます。
主な働きを調べてみました。
【腸内環境を整える】
悪玉菌は酸性を嫌い、アルカリ性を好む性質を持ちます。
逆に善玉菌はアルカリ性を嫌い、酸性を好みます。
乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくり、腸内を弱酸性に保ちます。
腸内が酸性に傾くことで、悪玉菌が増殖しにくい環境になります。
また腸内環境が整うことで、便秘や下痢の予防・改善、肌荒れやニキビの予防などが期待できます。
【免疫機能を向上させる】
腸内には約70%の免疫細胞が集まっています。
私たちの体は、外部から侵入するウイルスや病原菌から守る免疫機能を持っています。
悪玉菌が増えて腸内フローラのバランスが崩れると、免疫の働きが低下し、感染症などを引き起こすリスクが高まります。
乳酸菌は、腸内環境を整えることで、免疫細胞の働きを活性化させると考えられます。
【コレステロール値を下げる】
コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸をつくるために必要な脂質で、食事から摂取したり肝臓などで合成されたりしたものが血液中を流れています。
コレステロール値が高いと血流が悪くなり動脈硬化を引き起こし、血管が詰まると心筋梗塞、脳梗塞などの原因になります。
一部の乳酸菌には、コレステロール値を低下させる働きが期待できるものもあるそうです。
【花粉アレルギーを改善する】
腸内に悪玉菌が増えると、免疫全体が過敏になり、本来無害なものにも反応しやすくなるそうです。
花粉症は、体内に入ってきた花粉に対する免疫反応が過剰になり、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどのアレルギー症状が起きる状態です。
乳酸菌で花粉症の症状が改善したという研究結果が、多数報告されています。
【グルテンを分解する】
腸内環境の話から少しそれますが、「サワー種(だね)」というパンの発酵種は、寝かせる間に、空気中に浮遊する乳酸菌が付いて、小麦やライ麦に含まれる糖類(麦芽糖)を栄養源として増えます。
サワー種に含まれる乳酸菌にはグルテンを分解する働きがあると言われており、発酵時間が長ければ長いほどグルテン量を減少させるそうです。
<参考サイト>
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット 腸内細菌と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
・どうして腸は大切なの?腸内フローラ編
https://hc.kowa.co.jp/the-guard-kowa/intestinal-flora/what/#whatE
・腸内環境を整える乳酸菌は数が命!知っておきたい腸活のポイントとは。
https://www.tamapla-ichounaika.com/knowledge/category/post-32490/
・腸内細菌、乳酸菌と腸のお話
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/intestinal_bacteria/
・サワー種とは何ですか?
https://faq.pasconet.co.jp/faq/show/5?category_id=10&return_path=%2Fcategory%2Fshow%2F10%3Fpage%3D3%26site_domain%3Ddefault%26site_domain%3Ddefault%26sort%3Dsort_access%26sort_order%3Ddesc%26type%3Dshow&site_domain=default
・サワードウを作るコツやおすすめの小麦粉は?
https://bakerista.jp/archives/mag/sourdough
⑥ 知っておきたい、乳酸菌の効率的な摂り方や食べ方の工夫
乳酸菌などの腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物を「プロバイオティクス」と言います。
また、プロバイオティクスの栄養源となりその増殖を助けるオリゴ糖などを「プレバイオティクス」と言います。
体内の乳酸菌を活躍させるには、「プロバイオティクスである乳酸菌を多く含む食品を摂取する」、「プレバイオティクスであるオリゴ糖や食物繊維を摂取する」の2つの方法があると考えられています。
【乳酸菌を多く含む食品を摂取する】
食品から直接摂取した乳酸菌は、腸内にある程度の期間は存在しても、住みつくことはないと考えられています。
そのため、毎日続けて摂取することが大切だそうです。
余分な乳酸菌は便として排出されますが、特定の食品ばかりに偏ると乳酸菌以外の成分として含まれる脂質や糖質、塩分などを過剰摂取してしまうことがあるため、バランスの良い食生活を心がけることが必要とのことです。
【オリゴ糖や食物繊維を摂取する】
腸内にもともと存在する善玉菌のエサとなるものを摂取するという考え方です。
オリゴ糖は、大豆・タマネギ・ネギ・ゴボウ・ニンニク・アスパラガス・バナナなどの食品に多く含まれます。
消化酵素で分解されることはほとんどなく、消化吸収されずに大腸まで届きます。
食物繊維は、納豆・里芋・ゴボウ・キノコ類・海藻などに多く含まれます。
腸内で分解されて善玉菌のエサになる他、腸内の悪玉菌や有害物質を減らす作用も期待できます。
※写真はPhotoAC「豚肉のサワークリーム煮」より
<参考サイト>
・乳酸菌の効果とは?摂取方法や乳酸菌を含む食品を紹介
https://bio-three.jp/contents/lacticacidbacteria-effect.html
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べきくらげ麺 編
腸活と言えば…。
乳酸菌とは直接関係ありませんが、腸内環境を調えるのに良いと言われる「きくらげ」。
そのきくらげを使用した「小豆島手延べきくらげ麺」をご紹介させていただきます。
上述の「プレバイオティクス」と言われる食品の中に、キノコ類も含まれていましたから、乳酸菌との相性も良いでしょうか。
食物繊維や鉄分など、栄養価の高いきくらげ。
小豆島の佃煮でも人気のきくらげを粉末にして練り込んでいます。
ちょっと贅沢に希少な香川県産きくらげを使った、ぷりぷりつるるんとした独特の食感を楽しめる手延べの細麺タイプです。
乳酸菌を含む食品のキムチと一緒にきくらげ麺とあったかスープで、冬の美味しい「腸活」ならぬ「麺活」はいかがでしょうか。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.30
麺究者への道/醤油について研究してみる
前々回のVol.28のブログでは「発酵」「熟成」について調べてみました。
その時のブログでも書いたのですが、手延べ素麵の進化を考えたときに、天然の美味しさを引き出してくれる「発酵」「熟成」はとても重要なキーワードだと捉えています。
そこで今回のブログからは、古来から「発酵」「熟成」の機能的な部分を活かしつくられるさまざまな食品について調べてみたいと考えました。
その第一弾が「醤油」です。
「発酵」「熟成」の歴史の順番で行くと、他のものもあるかと思いますし、醤油よりも先にできた味噌から取りあげるべきかも知れませんが、そこは、小豆島の製麺所です。
小豆島と言えば、醤油!!
石井製麺所の近くには、大小の醤油工場(蔵元)が数多く並ぶ「醤の郷」という観光スポットもあります。
日本中を見まわしても、この距離感にこれだけの醤油会社が並ぶことは珍しいのではないでしょうか。
「醤の郷」を車で通り過ぎる際にも、醤油工場独特の香りを感じることができ、“小豆島を感じる香り”のひとつだと思います。
さらにすごいのは、小豆島にあると言われる大小約20軒ほどの醤油会社(蔵)の醤油の味がひとつずつ違い、特徴があることだと思います。
また、各会社・蔵の特徴を活かした商品も多く、小豆島を長年支える産業のひとつです。
さらに、素麵と切っても切れない関係の“そうめんつゆ”も各社で特徴があります。
香り、味、色、バリエーション、活用方法などもさまざまで、味にこだわったものから、幅広い使用用途がある便利な調味料までいろいろあるので、機会があればぜひ食べ比べていただきたいものです。
近代的な醤油工場だけではなく、小豆島の醤油づくりの特徴のひとつ「木桶(こが)醤油」も多く見られます。
ある醤油会社の社長様にお聞きしたお話によると「木桶でつくる醤油は全国にもあるが、その醤油をつくる木桶の約半数は小豆島にある」そうです。
小豆島の醤油の歴史も小豆島手延べ素麵と同じく約400年間、伝統を守り続けて今日に至ります。
その中で、醤油会社は進化し、次の世代へ残す醤油や調味料を開発されています。
私も見習って、次の世代に残す手延べ素麵をつくっていきたいと思います。
今回、「発酵」「熟成」の勉強のためのブログを書いていますが、私三代目は島に戻ってから、実はまだ醤油会社を(きちんと)見学したことがありません。
まずは予備知識として、醤油について調べてみて、その次は自分の目で確かめてみたいと思います。
今回は素麵もそうですが、小豆島の産業のひとつ、「醤油」について深掘りして、ご覧いただく方と共有できれば幸いです。
最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。
【目次】
① 日本の食の歴史と共に進化してきた醤油の歴史
② 知ってるようで知らない?!醤油の三大産地
③ 醤油の色や味わいは発酵・熟成により生まれる
④ 醤油づくりに活躍する微生物とは
⑤ 昔ながらの「木桶仕込」と近代的な「タンク仕込」の違いとは
⑥ 醤油の仲間?世界にもある「魚醤」
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》 丸島醤油株式会社『味醤油』
① 日本の食の歴史と共に進化してきた醤油の歴史
醤油のルーツは、紀元前700年頃の中国の古文書「周礼(しゅうらい)」に記述のある「醤(ひしお)」と言われています。
「醤」とは当時の塩蔵品の総称だったようです。
原料別に「草醤(くさびしお)」「肉醤(ししびしお)」「穀醤(こくびしお)」の3種類に分けられ、「草醤」は漬物、「肉醤」は塩辛類で、「穀醤」が現在の醤油や味噌の原型と考えられています。
日本では飛鳥時代のものと思われる木簡に、「醤」の文字が見られます。
大宝律令によると、宮廷の料理を司る「大膳職(だいぜんしき)」に属する「醤院(ひしおつかさ)」で、大豆を原料とする醤がつくられていたとされます。
奈良時代から平安時代の宮中宴会では、膳の上に「四種器(よぐさもの)」という4種類の調味料「塩・酒・酢・醤」が乗っていたという記録があり、醤の形状が固形から液状へと変化したのもこの頃のようです。
大豆が日本で広く生産されるようになってきた鎌倉時代には、醤の一つである味噌の製造過程において、味噌桶の底に溜まった液体を「溜(たまり)」として利用していたそうです。
これが醤油の原型とされています。
室町時代の中頃には、現在の醬油に近いものがつくられるようになりました。
1597年(慶長2年)の日常用語辞典である「易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)」に、「醤油」の文字が登場しています。
室町時代の末頃から、関西を中心に醤油の醸造が盛んになりました。
江戸時代の中期には、大阪・堺、和歌山・湯浅、兵庫・龍野などの産地で醬油の量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上したと言われ、醬油が庶民にも広く普及した時期であったようです。
江戸幕府が開かれたことに伴い、経済や文化も江戸を中心として発展していきます。
江戸初期には、関西で生産された味や品質の良い「下り(くだり)醤油」が大量に江戸へ送られたという記録が残っています。
江戸時代中期になると関東でも様々な産業が栄え、今の千葉県の銚子や野田が醤油の一大産地となり、江戸の人々の嗜好に合わせた「濃口醬油」が、関東で普及したようです。
江戸時代後期になると、寿司・天ぷら・蕎麦などの日本的な食文化が形成され、醤油は庶民の調味料として定着しました。
明治時代中期から大正時代にかけて、醤油製造の機械化や企業設立など近代化が進み、大量生産体制に移行していきました。
現在、多くの醤油が自動化された工場でつくられています。
その一方で、消費者の本物志向や自然志向の高まりにより、伝統製法でつくられる「天然醸造(本醸造)醤油」の価値が見直されています。
<参考サイト>
・しょうゆの歴史を紐解く
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html
・しょうゆを知る 歴史
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/history
・日本食文化の醬油を知る
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/mame01-a.html
② 知ってるようで知らない?!醤油の三大産地
醤油の代表的な三大産地として知られているのが、「千葉県(銚子・野田)」・「兵庫県(龍野)」・「香川県(小豆島)」です。
それぞれの成り立ちや特色について、調べてみました。
【千葉県】
「キッコーマン」や「ヤマサ醤油」などの大手醤油メーカーが本社を置く千葉県。
銚子と野田は、江戸川と利根川の水運を利用し、原料の入手や大消費地である東京への運搬にも都合がよく、醤油の産地として発展しました。
千葉県の醬油の生産量は、日本全体の3分の1を占めています。
千葉でつくられる醬油の多くは、濃口醬油です。
※写真はPhotoAC「関宿城(野田市)」より
【兵庫県】
日本の醤油生産量の約15%を占めます。
兵庫県西部に位置する龍野市は、淡口(うすくち)醬油の一大産地です。
播磨平野の豊かな小麦、山間部でとれる良質の大豆、赤穂の塩、清らかで鉄分の少ない川の水が、淡口醤油づくりに適しているとのことです。
「ヒガシマル醤油株式会社」は龍野市の企業です。
※写真はPhotoAC「播磨の小京都・龍野の町並み」より
【香川県】
小豆島では、約400年前から伝統的な木桶(こが)仕込みで醬油がつくられてきました。
明治時代末頃には約400軒の蔵元があったとのことです。
現在、日本にある木桶のうち半数にあたる約1000本が小豆島にあり、約20軒の醤油会社(蔵元)が密集しているそうです。
海に囲まれておりもともと製塩業が盛んでしたが、瀬戸内の各地で塩が生産されたため、過剰となってしまった塩を原料として活かせる醤油づくりが始められたとされています。
小豆島の醤油づくりの起源は諸説あるそうですが、大阪城を築城するための石材を切り出す部隊が持っていたのが醤油の前身となる調味料で、小豆島の人がその製法を学んだことが始まりだそうです。
穏やかな気候が醤油づくりに不可欠な麹(こうじ)の発酵に適していること、天下の台所である大阪に近いこと、大豆や小麦などの原料の運送にも便利な立地であることなどから、醬油の産地として発展を遂げたと考えられています。
話が少しそれますが、小豆島には「香川県産業技術センター発酵食品研究所」という組織があります。
明治38年に約400軒存在した醤油の蔵元と地元自治体が、連携して醸造技術の向上を目指すために設立した「組合立小豆島醤油醸造試験場」が始まりで、現在は香川県に移管されています。
醤油調味料だけでなく、佃煮などの加工品、手延べ素麵、オリーブなど、小豆島の地域食品産業全体の新商品開発や品質管理に関する支援を行っています。
また勉強会を実施し、大学や他の研究機関から仕入れた最新の情報の提供や、醤油製造に携わって日が浅い人向けの講習などを行っているそうです。
現在は、石井製麺所も大変お世話になっています。
地域密着型で地域における課題に取り組み成果を挙げている、住民との関わりが見える、などが評価され、平成24年度には「地域づくり総務大臣表彰」を受賞されています。
小豆島にはこうした、醤油などの技術をしっかりと残す・伝える・科学する心強い味方があるのです。
※写真は「香川県発酵食品研究所」
<参考サイト>
・【醤油】歴史と日本の三大名産地の特徴を知ろう!
https://thegate12.com/jp/article/172#content-2
・醤油と聞いて思い当たる地域といえば
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0408
・小豆島醤油の歩み
https://shima-shoyu.com/history/
・香川県産業技術センター発酵食品研究所(動画ですので音量などご注意ください)
https://www.youtube.com/watch?v=iQtjaoQwpY0
③ 醤油の色や味わいは発酵・熟成により生まれる
醬油は、大豆と小麦、塩を発酵熟成させたもので、その製造方法から3つに分けることができます。
大きな違いは「アミノ酸液」を入れているかどうかで、さらに入れるタイミングによって分類されます。
アミノ酸液は、大豆などの穀物を分解させた旨味成分を凝縮した液体です。醤油の3つの製法をご紹介します。
【本醸造方式】
昔ながらの伝統的な製法で、醤油の生産量全体の約8割を占めています。
アミノ酸液を入れず、麹菌本来の力を利用してつくる醤油で、原材料費と時間がかかります。
深い旨みと、芳醇な香りが特徴。
蒸した大豆と炒った小麦に「種麹(たねこうじ)」を加えて麹をつくります。
これを食塩水と一緒にタンクに仕込んで「諸味(もろみ)」をつくります。
攪拌を重ねながら約6~8カ月寝かせると、麹菌や酵母、乳酸菌などが働いて、分解・発酵・熟成され、醤油特有の色・味・香りが生まれます。
麹菌の働きにより、大豆のタンパク質は分解されて旨味成分のアミノ酸に変わり、小麦のデンプンは分解されて甘味のあるブドウ糖に変わります。
【混合醸造方式】
本醸造方式でできた諸味にアミノ酸液などを加えて、1カ月以上撹拌しながら発酵熟成させる製法。
アミノ酸液特有の旨みを生かした醤油になります。
化学的につくられた必要成分を添加することで、短期間で効率よく製造することができます。
アミノ酸液や、大豆などにタンパク質分解酵素を加えて分解させた「酵素分解調味液」、小麦グルテンなどを麹により発酵・分解させた「発酵分解調味液」などを加えることにより、旨味が添加されます。
また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖、水あめなどの糖類、またはステビアや甘草などの甘味料を加えることにより、甘味を添加する場合もあります。
【混合方式】
本醸造形式でつくられた「生揚げ(きあげ)醬油」に、アミノ酸液などを混ぜる製法。
混合醸造方式と同様、化学的につくった必要成分を添加することで、短期間で効率よく製造することができます。
醤油は日本農林規格(JIS)により5種類に分類されています。
色の濃さは熟成期間に比例しており、①濃口醬油に比べて②淡口醤油や③白醤油は熟成期間が短めで、旨みは少なめで塩分濃度は高め。
④再仕込醤油や⑤たまり醤油は熟成期間が長く、旨みが多く濃厚な味わいです。
それぞれの製法や特徴について紹介します。
①【濃口醬油】
全国の醤油出荷量の約84%を占める、最も一般的な醤油。
コクのある味、食欲をそそる芳ばしい香り、透明感のある明るい赤橙色が特徴です。
塩味のほか、深い旨味、まろやかな甘味、さわやかな酸味、味をひきしめる苦味を合わせ持っています。
調理用にも卓上でも幅広く使える万能調味料です。
②【淡口醤油】
醤油出荷量の約13%を占める、関西発祥の色の淡い醤油。
基本的な製法は濃口醤油と同じですが、色を淡くするために仕込みの段階で、発酵・熟成をゆるやかにさせる食塩を、濃口より約1割多く使用しています。
また味をまろやかにするため、米を糖化させた甘酒を使います。
素材の色を美しく仕上げる炊き合わせやふくめ煮などの調理に使われます。
③【白醤油】
愛知県碧南市で生まれた、淡口醤油よりさらに淡い琥珀色の醤油。
味は淡白ですが甘味が強く、独特の香りがあります。
脱皮・精白した小麦を主原料に、炒った後皮をむいた大豆を少量使い、約3カ月なるべく低温を保ってつくられます。
色の薄さと香りを生かした吸い物や茶碗蒸し、またせんべいや漬物などにも使用されます。
④【再仕込(さいしこみ)醤油】
山口県柳井地方で生まれ、山陰から北九州地方にかけて多くつくられてきた醤油。
麹を食塩水ではなく生揚げ醤油で仕込むため「再仕込み」と呼ばれます。
色・味・香りともに濃厚で、別名「甘露しょうゆ」とも言われます。
刺身や寿司、冷奴など、主に卓上で使われます。
⑤【たまり醤油】
主に中部地方でつくられる色の濃い醤油。とろみと濃厚な旨み、独特な香りが特徴。
大豆と少量の小麦を蒸して「味噌玉麹」をつくり、食塩水で仕込みます。
底にたまった液を汲み掛けながら約1年間発酵・熟成させます。
諸味から自然に分離されるものを「生引き溜り(きびきたまり)」、後に残った溜味噌を搾ったものを「圧搾溜り」といいます。
寿司や刺身などの卓上用に適するほか、加熱するときれいな赤みが出るので、照り焼きなどの調理用や、佃煮、せんべいなどの加工用にも使われます。
<参考サイト>
・しょうゆの製造法
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/soysauce.html
・しょうゆを知る 製法
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/process
・ しょうゆを知る 種類
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/kinds
・本醸造・混合・混合醸造/醤油の製法による3分類
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0312
・醤油の種類
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0301
④ 醤油づくりに活躍する微生物とは
醤油づくりには微生物の働きが不可欠です。
その代表格が「麹菌」「乳酸菌」「酵母菌」で、この順番で活躍します。
製法の話と重複する部分もありますが、それぞれがどのような働きをするか、整理してみます。
【麹菌】
蒸した大豆と炒った小麦に種麹を付け、3日ほどかけて繁殖させます。
これにより生み出された酵素が、大豆のタンパク質をアミノ酸に、小麦のでんぷんをブドウ糖に、それぞれ分解します。
麹は米や麦などの穀物にコウジカビを繁殖させたもので、麹菌を培養するもととなる種菌が、種麹です。
醤油の出来を左右するこの種麹を専門に生産し、醤油の製造業者に卸す「種麹屋」というものがあり、別名「もやし屋」とも呼ばれています。
米に麹菌を生やして熟成させた状態を「よねのもやし」と言う、京都の酒づくりで使われていた言葉が由来だそうです。
メーカーの要望に応じて、数多くある麹菌を単独または何種類か培養し、保存できるように乾燥させて種麹をつくります。
現在、種麹屋は日本に数件しかないとのことです。
【乳酸菌】
有機酸をつくりだす微生物で、醤油にさわやかな酸味や味の伸び、深みを与えます。
乳酸発酵が進むほど、諸味が酸性になり、酵母菌が活躍しやすい環境になります。
【酵母菌】
アルコール発酵をする微生物。
醤油にはアルコールが数%含まれていて、皿に注いだ時にアルコールが揮発することで香りが立つのだそうです。
醤油づくりでは主に2種類の酵母が働いています。
まず「主発酵酵母」が、ブドウ糖をもとにアルコールを生み出し、乳酸菌がつくった有機酸と化学反応して、複雑な香りを生み出します。
次に「後熟酵母」がゆっくり活動し、味に深みを与えます。
このことから、熟成期間が長いと深い味わいになるのだそうです。
<参考サイト>
・醤油づくりの微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌)
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0707
・日本酒や醤油、味噌に欠かせない「種麹」を育てる『もやし屋』をご存じですか?
https://cuisine-kingdom.com/hishiroku/
・酵母菌
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0711
⑤ 昔ながらの「木桶仕込」と近代的な「タンク仕込」の違いとは
醤油の製法の説明で「麹をタンクに仕込む」とありましたが、伝統的な製法では木桶を使っています。
木桶仕込とタンク仕込ではどのような違いがあるのでしょうか。
【木桶仕込】
木桶の内部に微生物が住み着き、何十年の時間をかけて仲間を増やし独自の生態系をつくっていきます。
「蔵付き酵母」などと言われるもので、その蔵でしか味わえない風味や味わいをつくり出します。
自然の温度変化に応じて発酵するので、仕込みの年ごとに微妙に味が変化することもあり、管理状態によっては品質にバラつきが出る場合もあります。
産地紹介にもありましたが、香川県の小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地です。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から木桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいや旨みを引き出せるそうです。
【タンク仕込】
屋外に設置でき、大容量で大量生産に向いています。
プラスチックや鉄製の素材なので微生物は住み着かず、洗浄してまた新たに微生物を添加し、温度コントロールもできるなど管理がしやすく、常に同じ環境で安定した品質を生み出すことができます。
<参考サイト>
・木桶とタンクの違い
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0715
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品「本場の本物」小豆島桶(こが)仕込醤油
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/891.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
⑥ 醤油の仲間?世界にもある「魚醤」
醤油のような発酵調味料のひとつに「魚醤」があります。
魚醤は、生の魚を塩で漬け込んで発酵させ、魚の旨味成分を凝縮させた液体です。
それぞれの土地で獲れる魚が使われており、独特の濃厚な旨味とにおいがあります。
海に囲まれた日本では、古くから魚醤が使われており、日本三大魚醤と呼ばれる「しょっつる」「いしる」「いかなご醤油」が有名です。
<日本三大魚醤>
【しょっつる】(秋田県)
「塩魚汁」とも表記されます。
ハタハタやイワシを塩漬けし、発酵させたもの。
魚の頭と内臓などを取り除き、常温で1年以上漬け込むのだそう。
20世紀前半頃までは多くの家庭に自家製のしょっつるがあったそうです。
淡口醤油のような色で、くせは少なく、塩気が強いのが特徴です。
しょっつるを使い、ハタハタやセリを入れた「しょっつる鍋」は、秋田の有名な郷土料理です。
【いしる】(石川県)
能登半島でつくられる調味料。
地元では、イカの内臓を原料とし、風味が強くてくせのある味わいの「いしる」(地区によっては「いしり」)、イワシやサバなどの青魚を原料とし、臭みの少ない「よしる」と使い分けていますが、名前は混在していることもあるそうです。
煮物の隠し味や刺身、郷土料理などに使われています。
【いかなご醤油】(香川県)
イカナゴを塩漬けし、発酵させたもの。
樽の中で室温30度前後で6カ月以上熟成させてつくられます。
しょっぱさの中にもまろやかさがあり、豆腐や刺身、野菜の煮つけなどに使われることが多いとのこと。
香川県では1950年代頃まで主に使用されていましたが、大豆醬油の人気により生産が途絶えてしまい、1998年頃に伝統の味として生産が再開されたそうです。
世界でも、東アジアを中心とする各国で魚醤が使われています。
世界は広いです。
<世界の魚醤>
【ナンプラー】(タイ)
カタクチイワシを使い、約1~2年熟成させてつくられます。
魚の旨みが非常に強い醤油のような味わいで、加熱して使われることが多いです。
タイ料理の定番である「トムヤムクン」や「ガパオライス」にも使われます。
【ニョクマム(ヌクマム)】(ベトナム)
イワシやアジなどの青魚を使い、半年~1年ほど熟成させます。
独特の香りが強く塩気は弱めで、生春巻きやフォーなどに少量が使われます。
【エクジョ】(韓国)
イワシが原料ですが、生臭さや独特な風味は抑えらえていて食べやすいのが特徴。
キムチの隠し味としてもよく使われるそうです。
【コルトゥーラ】(イタリア)
カタクチイワシの頭と内臓を取り除き、塩漬けにして約3~4年熟成させます。
マイルドな風味で、パスタやバーニャカウダの隠し味として親しまれています。
【ガルム】(古代ローマ)
古代ローマ時代、ヨーロッパではアンチョビの内臓を原料とする「ガルム」という魚醤が日常的に使われており、ローマ帝国の滅亡とともに衰退したとされます。
最近では現代人の味覚に合わせ、小魚や小エビを塩漬けにした新しいガルムがつくられ、イタリアの味として人気を集めているとのこと。
<参考サイト>
・魚醤は醤油なの?
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0316
・日本が誇る伝統の発酵食品「魚醤」の豆知識
https://www.maruichi.com/delicious/file/post-24.php
・魚醤とは?種類やそれぞれの特徴・レシピもご紹介
https://delishkitchen.tv/articles/1177#contents8
・料理の味を引き立たせる能登生まれの調味料
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/33/59isiru_yosiru.pdf
・日本三大魚醤を知って受け継ぐ食文化
https://tempe-oneface.com/kinkatsu/15179/
・世界各国のうま味文化
https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/culture.html
・魚醤とは?特徴や使い方、醤油・ナンプラーとの違いについても解説
https://prezo.jp/column/4688
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》 丸島醤油株式会社『味醤油』
若者からご年配の方まで、卵かけごはん用から煮物まで、希釈し天つゆにめんつゆにもってこいの、だし入り万能醤油です。ゆでたてうどんに3倍希釈でかけて、ぶっかけうどんをお楽しみください。
本醸造醤油にだしを加えた万能醤油です。かけ醤油、めんつゆ、天つゆ、煮物にご利用いただけます。
(丸島醤油株式会社ホームページより抜粋)
石井製麺所のギフトセットにセットさせていただいている『味醤油』は、大変人気があり、単品の販売はないのかとお問い合わせを頂戴します。
小豆島のスーパーやお土産店で、手軽に手に入りますが、ご近所にあるスーパーとは違いがあるでしょうか。
お醤油としてはもちろん、希釈によってはお出汁の香る調味料として便利な一本です。
石井家でももちろん常備。
またこの『味醤油』が、石井製麺所の麺にピッタリだと考えセットにしておりますので、ぜひ石井製麺所の手延べ麺とご一緒にお試しください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ半生うどんセット》 https://141seimen.thebase.in/items/79953733
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.29
栄養成分の機能性について/ポリフェノール
ちょっと堅いテーマなのですが、以前から新しい手延べ麺の開発をおこなっていく上で、「健康づくりに役立つ」ような手延べ麺ができないかと模索しています。
手延べ素麵や手延べ麺にそこまでを求められていないかもしれませんが、「素麵」の起源は健康を願うものであり、お中元やお歳暮でも相手様の健康などを願って贈るものとして、重宝されてきたと思います。
石井製麺所でも、その“起源”に立ち返り、新しい麺を、健康に良い食べ物を、皆さんに笑顔をお届けできる美味しい手延べ麺を考えていきたいと思っています。
昨年の夏には東京の食品展示会にも参加し、さまざまな企業様が健康に良い麺の開発や食品の提供を考えていらっしゃいました。
興味のあるブースには立ち寄り、より詳しいお話を伺ったりしています。
現在は、県の施設や小麦粉の製粉メーカー様にもご協力をいただきながら、新商品開発を続けています。
その中で、「健康に良い」とはなんだろう?と、ふと考えることがあります。
美味しさはもちろんですが、化学調味料や香料、着色料を入れたり、栄養剤を入れたりすることは違うと考えています。
ただ、世の中で健康に良いと言われているものや、人気のある食べ物などを研究することは大切かなと考え、これまではさまざまな産地の手延べ麺やいろいろな種類の麺料理について調べてきました。
今回からはちょっと焦点を絞って、栄養素についてきちんと整理してみたいなと考えました。
調べてみると知らなかったと言うよりも、認識が間違っていたことや、新しい気づきもありました。
今回は特に、昨今よく耳にする「ポリフェノール」についてです。
皆さんはご存じですか?
言葉は知っていますが、その必要性や働きについてはあまり詳しくは知りませんでした。
そのことについていろいろと調べてみましたので、良ければご参考にいただけましたら。
今回もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
【目次】
① 注目の抗酸化物質・ポリフェノールとは?
② 活性酸素を“除去”するポリフェノール
③ ポリフェノールの構造の違いにより働きも多種多様
④ ポリフェノールが豊富な食品・食材とは?
⑤ 効率的なポリフェノールの摂り方や食べ方の工夫
⑥ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味編
① 注目の抗酸化物質・ポリフェノールとは?
自然界には8,000種類以上のポリフェノールが存在すると言われています。
ポリフェノールはほとんどすべての植物に含まれている、色素や苦味の成分となる化合物で、植物が光合成を行うときにできる抗酸化物質の総称です。
紫外線や乾燥、害虫、塩分、周囲に生息する菌などのストレスから身を守るために生成されるとのことです。
ポリフェノールは、ビタミンやミネラルなどの「栄養素」には分類されていませんが、人間の体の調整役としてとても重要な役割を持つもので、健康のために意識して摂取したい成分です。
ポリフェノールが注目されるようになったきっかけは、1992年にフランスの科学者であるセルジュ・ルノー博士が発表した「フレンチ・パラドックス」に関する研究です。
フランス人の食生活は、肉やチーズ、バターなどの高カロリーなものが多く、心臓系の病気を発症する人が多くても不思議ではありません。
しかし実際には、他の欧州諸国に比べて心臓病による死亡率が低いことが分かりました。
この矛盾の要因が、フランス人が日常的に赤ワインを飲んでいることによると考察したのがセルジュ・ルノー博士です。
この発表により、赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールが健康に役立つと考えられ、世界的に赤ワインブームが起こったそうです。
日本でポリフェノールが注目されるようになった背景のひとつとしては、食生活の変化が挙げられます。
高度経済成長期の1960年代、食の多様化が進みインスタント食品なども開発されました。
1980年代には食べ過ぎや生活習慣が問題となり、栄養学界では、栄養や嗜好に次ぐ食品の第三の働きとして「体調調節面での働き」の研究が進んだそうです。
その対象とされた成分が、ポリフェノールやカロテノイドなどの非栄養素成分だったとのことです。
ところで…知ってるようで知らないのが、「活性酸素」と「抗酸化」というワード。
「抗酸化」というのが、健康に良いというのは知っているつもりですが、なぜ、「抗酸化」が体に良いのでしょうか?
「活性酸素」が体に悪いのでしょうか?
このあたりを正しく理解して、「抗酸化」作用のある食べ物や栄養素を健康のために上手に摂取したいですよね。
<参考サイト>
・ポリフェノールの力
https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/konnichiwa/201102/navi.html
・ポリフェノールの種類と効果と摂取方法
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/polyphenol.html
・ポリフェノールとは?体への効果と摂取できる食品・飲み物を解説!
https://medipalette.lotte.co.jp/bodycondition/979
・ポリフェノール
https://himitsu.wakasa.jp/contents/polyphenol/
・ポリフェノールの種類と効果を解説!最適な1日の摂取量とは?
https://zenb.jp/blogs/column/polyphenol01
② 活性酸素を“除去”するポリフェノール
「ポリフェノール」の「ポリ」は「たくさんの」の意味とのこと。
「フェノール」は、ベンゼン環(炭素原子6つで構成される平面六角形の構造のこと)に、水酸基(OH)が結合した化合物です。
水酸基には、活性酸素をとらえて除去する能力=抗酸化力があるため、ポリフェノールは抗酸化作用を持つ成分と言えるそうです。
活性酸素は人間の体内に存在している物質で、外界から侵入してきた細菌やウイルスを撃退する役目を担っていますが、ストレスや喫煙、紫外線などの様々な要因により、体内で必要以上に増加してしまいます。
増えすぎた活性酸素が体内のタンパク質や脂質、DNAなどを傷つけることにより、老化や生活習慣病などの原因になったり、肌を酸化させることでシミやしわを引き起こしたりすると考えられています。
ポリフェノールは抗酸化作用を持ち、活性酸素を除去することにより、さまざまな病気に対抗する力やアンチエイジングの働きが期待されています。
詳しく分かっていなかった点ですが、「活性酸素」が悪いわけでなく、抗酸化防御機構と呼ばれるものを正常に保つために、食べ物などから抗酸化物質を上手く摂取していくことが大切だということですね。
石井製麺所でも、「健康に良い素麺とは何か?」を常に考え、化学物質や栄養剤に加え香料や着色料などを混ぜた商品ではなく、自然由来の抗酸化物質(ポリフェノール)を一緒に摂取できるような手延べ麺は、これからの食生活でも必要性が高まるのではないかと考えています。
③ ポリフェノールの構造の違いにより働きも多種多様
ポリフェノールは、その構造の違いによりいくつかのカテゴリーに分けられます。
中でも研究が進んでいるのがフラボノイド類で、食品の機能性研究の対象とされています。
「フラボノイド」は、狭義では化学構造の違いにより、「フラボン」「フラボノール」「フラバノン」「フラバノール」「フラバン」「イソフラボン」などに分類されます。
広義では、化学構造で2つのベンゼン環が炭素3つで結合された基本構造を持つものを「フラボノイド系」と言い、赤ワインやブドウの果皮に含まれる「アントシアニン」や、緑茶に含まれる「カテキン」、ごまに含まれる「セサミン」も、フラボノイド系に分類されるそうです。
フラボノイド類以外でも、コーヒーに含まれる「クロロゲン酸」、カレーの色素である「クルクミン」などは一般にも知られており、食品の機能性研究の対象にもなっています。
ポリフェノールの代表的なものを調べてみました。
抗酸化作用の他にも、種類によりさまざまな健康効果が期待できるようです。
【イソフラボン】
主に大豆に含まれるフラボノイド。ほとんどは胚芽部分に含まれ、種皮には含まれないことが分かっている。
油揚げや豆腐、納豆、きな粉などからも摂取できる。
女性ホルモンに似た働きをするため、更年期症状の緩和に役立つとされる。
また、骨からカルシウムが流れ出るのを防ぎ骨粗しょう症予防にも期待される。
【アントシアニン】
ブルーベリーや赤シソ、紫キャベツなどに含まれる赤~紫色の色素成分。
目の網膜に存在するロドプシンというタンパク質の再合成を促進する働きがあり、視力回復が期待できる。
【カテキン】
緑茶の渋み成分で、「タンニン」とも呼ばれる。
緑茶には8種類のカテキンが含まれ、その重さの約15〜20%を占める。
殺菌作用や、体内の活性酸素やウイルスの働きを抑制し、免疫機能をアップさせる作用で、風邪などの予防に役立つ。生活習慣病予防にも期待される。
【セサミン】
ごまの種子に含まれるゴマリグナンというリグナン類の一種。
ごま1粒に1%未満しか含まれない希少な成分。
肝臓の機能を高める働きがあり、二日酔いや悪酔いの予防に期待できる。
コレステロール値や血圧を正常に保つ働きもあるとされる。
【フラボノール】
天然に多く存在し、野菜や果物、穀類のほとんどに含まれるフラボノイド。
タマネギやエシャロットに含まれる「ケルセチン」、ニラやブロッコリーに含まれる「ケンフェロール」が知られている。
【ルチン】
蕎麦に多く含まれ、イチジク、トマト、アスパラガスなどにも含まれる。
毛細血管を強くし、血流改善に役立つと考えられている。
全身の血行が良くなることで、冷えや肩こりの改善にも期待される。
【フェルラ酸】
玄米に多く含まれる。
アミノ酸の一種であるチロシンに似た構造で、メラニンの生成を抑制し、シミやしわ予防が期待できる。
【クルクミン】
カレー粉の主成分であるターメリック (ウコン) に含まれる黄色の色素。
スパイスや着色料として利用されている。肝機能の強化や、アセトアルデヒドを分解して二日酔いや悪酔いを予防する働きがある。
【カカオポリフェノール】
チョコレート(カカオ豆)に含まれる。血管を広げ血圧を低下させる作用、LDLコレステロールの酸化を抑え動脈硬化予防、アレルギーの改善などが期待される。
【クロロゲン酸】
コーヒーの生豆中の約5〜8%を占め、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーにも含まれることが分かっている。
ゴボウ、サツマイモ、ジャガイモなどにも含まれる。
脂肪の消費量がアップし、内臓脂肪を低減するとされる。
長命草にも多く含まれるポリフェノールです。
<参考サイト>
・No.127 今さら聞けないシリーズ ポリフェノール
https://www.tanaka-cl.or.jp/aging-topics/topics-127/
・フラボノイドの種類と効果と摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/flavonoid.html
・セサミン
https://himitsu.wakasa.jp/contents/sesamin/
④ ポリフェノールが豊富な食品・食材とは?
人にはもともと抗酸化防御機能が備わっていて、体内でも抗酸化作用を持つ物質を生み出し、余分な活性酸素の除去をおこなっています。
しかしながら体内で抗酸化物質を生産する力が足りなくなるため、食品から食べて補う必要が出てきます。
そのため、厚生労働省でもポリフェノールの摂取やポリフェノールを多く含む食べ物の飲食を勧めています。
ポリフェノールを多く含む、食べ物や飲み物を知って上手に生活に取り入れていくのも良いですね。
ただし、積極的に摂りたい成分ですが、健康リスクもあるので過剰摂取には気をつけましょう。
【赤ワイン】
100gあたり230mg、500種類以上のポリフェノールを含む。
抗酸化作用で動脈硬化を予防し、心臓病のリスクを低下させる働きが知られるが、アルコールの摂りすぎには注意が必要。
【緑茶】
100gあたり115mg、乾物として15%前後、渋みのもととなるカテキンが豊富に含まれる。
日照量が多いほどカテキンの合成が進むので、春に摘む一番茶より、夏に摘む二番茶や三番茶の方がカテキンの含有量が高くなる。
また葉が成熟するにつれカテキン含有量は低くなる。
茶葉中には形の違う4種類のカテキンが存在し、製造工程において加熱処理を行うことで形が一部変化するため、合計8種類のカテキンが存在する。
抗菌・抗ウイルスや体脂肪低減などの作用が知られている。
【紅茶】
100gあたり96mg。
赤い色や渋みのもととなるテアフラビンやテアルビジンが豊富。
これらは、カテキンが化学反応を起こしたもの。
紅茶の製造工程で、茶葉をもむことにより葉の中の細胞が壊れると、カテキン同士が酵素によって酸化し、カテキン類が複数結合したこれらのポリフェノールになるとのこと。
虫歯菌を抑える、インフルエンザウイルスの感染力を奪うなどの作用があると言われる。
【コーヒー】
100gあたり200mg。
褐色や苦味、香りのもととなるクロロゲン酸が豊富に含まれる。
血糖値の上昇抑制や血圧改善、脂肪の吸収抑制などの作用があり、生活習慣病予防が期待できる。
カフェインも含むため、摂りすぎや摂取する時間帯には注意が必要。
【トマトジュース、野菜ジュース】
100gあたり69mg。
トマトにはリコピンが含まれている。
【チョコレート、ココア】
原料のカカオに、フラバノールが豊富に含まれる。
心血管系の機能を健康に保つ作用や、ストレス軽減、認知機能改善などの働きが報告されている。
糖分の摂りすぎに注意が必要。
【大豆】
イソフラボンが豊富。
大豆以外の食品に含まれるイソフラボン類とは組成が異なるため、働きも異なると考えられる。
大豆由来のイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに構造が似ており、似たような働きで更年期症状の軽減に役立つとされる。
【蕎麦】
蕎麦の実にはルチンが豊富で、特に「韃靼(だったん)そば」と呼ばれる品種は、一般的なそばの100倍以上ルチンを含むとされる。
高血圧予防や、毛細血管を強くする作用があるとのこと。
【ショウガ】
ショウガオール、ジンゲロール、ジンゲロンという3つのポリフェノールを含む。
胃の働きを助ける、血行を促進して体を温める、殺菌などの作用があり、古くから漢方としても使われてきた。
【ブルーベリー】
果皮の濃い青紫色の色素成分であるアントシアニンが豊富。
視覚情報を脳に伝えるために重要なロドプシンという成分の再合成を促進する働きがあり、目の健康に役立つ。
【モロヘイヤ】
生100gあたり640mg。ケルセチンを豊富に含む。
【ゴボウ】
生100gあたり340mg。クロロゲン酸を多く含む。
【ホウレン草】
多くの種類のフラボノイドが含まれる。
【長命草】
機能性に注目が集まる「クロロゲン酸」を多く含んでいることが分析結果でも明らかになっている。
<参考サイト>
・【飲み物と食べ物別】ポリフェノールが多い食品ランキング
https://www.marine-bio.co.jp/polyphenol/article53/
・お茶の成分と健康性カテキン
https://www.ocha.tv/components_and_health/benefits_greentea/catechin/
⑤ 効率的なポリフェノールの摂り方や食べ方の工夫
人はポリフェノールの約8割を水分から、残りを食べ物から摂取しているそうです。
健康のためにポリフェノールを効率よく摂取するには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
水に溶けやすいため、まとめて摂取しても余った分は尿と一緒に排出されてしまうとのことです。
ポリフェノールの持続効果は摂取してから約3~4時間ほどなので、毎日こまめに摂るのが良いそうです。
熱には強く、加熱調理による損失は少ないとのこと。
色の濃い植物の実、特にその皮や種に多く含まれるので、捨ててしまいがちな皮や種を意識的に取り入れると良いようです。
野菜から摂る場合は、生で食べるのが一番効果的だそうですが、難しい場合は皮ごとゆでただし汁やスープを活用するのも良いとのことです。
大豆にも多く含まれるため、日本人の食生活では無意識のうちに豆腐や味噌、醬油などからポリフェノールを摂取しているそうです。
またポリフェノールは、緑茶やコーヒーなどの飲み物に多く含まれるので、食事の合間に飲み物から摂取すると効率的です。
タンパク質と結合して変性するので、コーヒーや紅茶のポリフェノールを最大限に活かしたい場合は、ミルクを入れずに飲むのが良いそうです。
また砂糖を入れる場合は糖分の摂りすぎに気を付ける必要があります。
1日のポリフェノール摂取基準量に厳密な基準はありませんが、1000~1500mg摂取するのが良いとされています。
積極的に摂りたいポリフェノールですが、過剰摂取は逆に健康被害につながる場合もあるそうです。
たとえば、ワインの摂りすぎはアルコール中毒、コーヒーの摂りすぎはカフェイン中毒などに注意が必要です。
特定の食品ばかり食べるのではなくバランスの良い食生活を心がけることが大切と言えるので、例えば、素麵などの麺類なら、トッピングや食べ合わせなど、いろいろ工夫することでいろいろなポリフェノールが摂れそうですね。
<参考サイト>
・ポリフェノールの効果と摂り方
https://www.karadacare-navi.com/foods/08/
・ポリフェノール
https://www.stroke-rehabfacility.com/eating-habit/polyphenol.html
・ポリフェノール摂取のコツ お茶・コーヒーでこまめに
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXKZO21365040R20C17A9W10601/
・ポリフェノールの健康価値
https://www.kao.com/jp/healthscience/report/report066/report066_01/
⑥ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編
ポリフェノールと聞くと、なんだかワインやカカオなどを思い浮かべたりするかも知れませんが、蕎麦にも多く含まれているそうです。
上述しましたが蕎麦に含まれる「ルチン」には、「毛細血管を強くし、血流改善に役立つと考えられている」や「全身の血行が良くなることで、冷えや肩こりの改善にも期待される」とありました。
温かいお蕎麦を食べるだけでもホッとして、元気になれた気がしますが、栄養的にもそうだったんですね。
さて、なぜお蕎麦の紹介かというと、このブログをアップする頃には、かなり間際になりますが、節分蕎麦として石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」をご紹介したかったからです。
節分蕎麦をご存じですか?
以前にもご紹介させていただきましたが、“本来”の「年越し蕎麦」はというと、節分に食べる「節分蕎麦」が「年越し蕎麦」だったそうです。
節分とは、季節の変わり目のことで、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれ前日でしたが、今では特に立春の前日を指して節分と呼ばれるようになっています。
立春の前日の節分は“大寒”の最終日で、冬から春への節目の日です。そのため江戸時代には、大晦日ではなく節分を本当の年越しと言う考え方があったそうです。
ですので、研究家の方によれば“本来”の「年越し蕎麦」は、「節分蕎麦」と言うことになるそうですよ。
「節分蕎麦」とは、節分の日に食べる豆や恵方巻きのように縁起がよいメニューと言われていますが、江戸時代の頃には節分料理の元祖として全国に広まっていたそうです。
「節分蕎麦」をあまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の節分には「節分蕎麦」を石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」で召し上がってみるのはいかがでしょうか。
石井製麺所のオリジナル手延べ麺「手延べ麺 蕎麦風味」は、小麦粉8に対して、蕎麦粉2を混ぜ、手延べ製法でつくった麺です。
蕎麦の風味を感じながら、手延べ麺独特のツルッとした食感が楽しめると冬に人気の商品です。
ぜひ一度、お試しください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
商品について
新春のお慶びを申し上げます。
おかげさまで石井製麺所一同、新しい年を迎えることができました。
年始より私たちの仕事について、あらためて考える毎日です。
小豆島のイチ製麺所として、変わらず美味しい手延べ麺をつくり続けるとともに、
私たちが思う島の魅力も、どんどん発信していきたいと思います。
お客様に「美味しい!」と喜んでいただけるように、毎日に磨きをかけて参ります。
本年も何卒、宜しくお願い申し上げます。
『小豆島福箱』のお買い求めはこちらから→【新春特別価格】小豆島福箱 | 石井製麺所 (thebase.in)
日頃のご愛顧に感謝をこめて、今年も2つの新春特別企画をご用意しました。
一、【新春特別価格】『小豆島福箱』発売
恒例の福袋企画、今年も『小豆島福箱』を限定20箱でご用意しました!
「もっと小豆島の美味しいものを皆さんに食べていただきたくて…」
今年は半生うどんはもちろん、小豆島の美味しいものを厳選して詰め合わせました。
セット内容
◯手延べ半生うどん×2袋
◯手延べきくらげ麺6束×1袋
◯小豆島のお米(2kg)×1袋
◯釜めしの素×1袋
◯新漬けオリーブ×1袋
◯干し椎茸×1袋
◯味醤油(360ml)×1本
小豆島のお米『安田の郷』は、数量が少なく、島外にはあまり出回っていませんが、
実は地元で美味しいと評判のお米なんです。
飲食店でも重宝されており、観光のお客様にも好評とのこと。
手延べ麺とお米が美味しく楽しめるお得なセットですので、
ぜひこの機会にお買い求めくださいませ。
二、新春プレゼントくじ(こちらは昨年ご利用いただいたお客様が対象となります。)
本ページにて、「新春プレゼントくじ」の当選番号を発表します。
ささやかではございますが、新年のお祝いとしてお楽しみいただけると幸いです。
お手元の「寒中お見舞いハガキ」のお年玉くじ番号の「下4桁」の番号を使用します。
石井製麺所の独自抽選で当選番号を決定するプレゼント企画です。
令和6年1月17日(水) 更新
大変お待たせをいたしました。
本日抽選を行いまして、下記の通り当選番号が決定いたしました。
当選番号
3225(3名)
4565(3名)
6244(4名)
ご当選された皆様、おめでとうございます!
プレゼントは順次お届けいたしますので、今しばらくお待ちくださいませ。
惜しくも抽選に漏れたお客様も、300円の割引券がございますので、ぜひご利用くださいませ。(下記に詳細がございます。)
抽選発表日:令和6年1月17日(水)
有効期限:令和6年 3月 末日
プレゼントの詳細は下記の通りです。【条件】をご確認くださいませ。
※プレゼントは自動適用いたします。
☆特等(大当たり) 『小豆島福箱』1箱(10名様)
【内容】:手延べ半生うどん×2袋、手延べきくらげ麺6束×1袋、小豆島のお米(2kg)×1袋、釜めしの素×1袋、新漬けオリーブ×1袋、干し椎茸×1袋、味醤油(360ml)×1本
【条件】:下4桁が一致
当選者の発表は、プレゼントの発送をもってかえさせていただきます。
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お!いしい けんぶんろくブログ
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.28
麺究者への道/「発酵」「熟成」「腐敗」はどう違う?
新年ひとつめのブログになります。
今年もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
年末は、新しいお取引様からのご要望や新製品開発など、本当にありがたいお話で忙しくしておりました。
おかげさまで新しいことにチャレンジさせていただける機会もあり、今年はワクワクドキドキなことが待っているんだろうなと期待でいっぱいです。
さて、昨年来、色々なテーマでブログ(私としては自分の勉強や新製品開発のデータベースとして)を書いてまいりましたが、今年も色々と勉強しながら記していきたいなと思います。
何年か後に振り返ったときに、このブログのために色々勉強したことが役立ったと言えるように、しっかりと調べていきたいと思いますので、もし内容にお気づきの点がございましたらご連絡ください。
今年の一つ目のテーマですが…
実は最近、新製品開発や島の中での事業者さんとの会話の中で当たり前のように耳にする「発酵」「熟成」という言葉が気になっています。
小豆島は「醤油」の産地であり、島には県立の「発酵食品研究所」があります。
日本酒の酒蔵さんもありますし、無添加でお味噌をつくる方もいらっしゃいます。
最近ではクラフトビールに取り組む方などもおられ、「発酵」「熟成」を活かしたさまざまな産業や食品を目にするようになりました。
実は、手延べ素麵も「発酵」「熟成」というキーワードを使用しますし、その働きを活かした工程もあります。
ただ、言葉として知っていても、実はなにが「発酵」でどうすることが「熟成」なのか…
「発酵」させることで、素麵に何が起きていて、「熟成」するということはどのような影響があるのか、実はよくは分かっていません。
もちろん、素麺をつくる工程では、その前と後で違いは分かりますし、必要なことは分かります。
ですが、その仕組みや働きなどについて理解している訳でなく、「そうしてきたからそうする」感じで製造工程を守り続けてきました。
「発酵」「熟成」は品質に大きく影響します。
例えば味や香り、いわゆる風味ということに大きな影響を及ぼします。
ということは、食品にとってとても重要なことを、「前からやっているからこれからも続ける」ということになり、もしかしたら美味しい素麵をつくる大切なポイントをスルーしているのかもしれない…そう思うと、もっとなにか、できることがあるんじゃないかと思えてきて、色々なことを知りたくなりました。
これまでに取り組んできている新製品開発にも関わっていくことですし、開発の方向性にも繋がります。
また、もしかしたら「発酵」「熟成」を活かすことで素麺づくりの製法も変化・進化させることができるかも知れません。
そんな可能性を感じましたし、信じています。
そこで、今年は「発酵」「熟成」について少し勉強し、さまざまな食品についても勉強したいと思います。
できれば島内の事業者さんを訪ね、新しい繋がりを広げていきたいと考えています。
自分自身のためであり、このブログをご覧いただく方のお役に立てればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
写真は、12月に小豆島一番の観光地、寒霞渓から見下ろした写真です。
標高も600メートルくらいあるので、空気も冷たくて身もシャンと引き締まります。
【目次】
① 知ってるようで知らない「発酵」「熟成」「腐敗」の違い
② 発酵には欠かせない微生物のチカラと理解
③ 先人の知恵はすごい!発酵のパワー
④ 発酵で生まれた多くの食品たち
⑤ 熟成の3つの技法とは?
⑥ 味・栄養・食感など、熟成のメリットいろいろ
⑦ 熟成で美味しくなるメカニズム
⑧ 【新春特別価格】『小豆島福箱』発売中
① 知ってるようで知らない「発酵」「熟成」「腐敗」の違い
味や栄養の面で注目されている「発酵」と「熟成」は、どちらも食材が一定期間を経て変化することを表す言葉ですが、具体的にはどういう意味なのでしょうか。
人間に有害な変化である「腐敗」も含めて、調べてみました。
「発酵」とは
「発酵」とは、食材に付着した菌やカビなどの微生物がタンパク質や糖質を分解して、旨味の素となるアミノ酸やアルコールなどをつくり出すことにより、人間にとって有益な状態に変化させることだそうです。
旨味や風味、栄養価が増したり、保存性が高まったりします。
発酵には微生物の働きが不可欠で、麹菌や乳酸菌、酵母菌といった微生物によって、味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、ワインなどの発酵食品がつくり出されます。
「熟成」とは
「熟成」は、近年話題の熟成肉を例にとると、肉がもともと持っている酵素がタンパク質などを分解することで柔らかくなり、アミノ酸が増加することで美味しくなります。
また、清酒、ウイスキーなど酒類の熟成は、保存・貯蔵中に起きる化学的変化とのことです。
発酵と熟成は線引きが難しいところもあり、例えば味噌は、米に麹菌をつけて発酵させ、発酵の段階が終わると麹菌由来の酵素により熟成の段階に入るので「発酵熟成させた食品」と呼ばれるそうです。
「腐敗」とは
「腐敗」は発酵と同じ原理で微生物の働きによるものですが、人間にとって有益ではないものに変化してしまうことです。
においや見た目、味などが劣化し、食べられなくなります。
話は変わりますが、バナナなどの果物の場合、熟成と腐敗の区別は分かりにくいですよね
「腐りかけが美味しい」とは言われますが…
<参考サイト>
・「発酵」と「熟成」は何が違うのか?
https://ajibana.jp/trivia/465/
・発酵と熟成の違いとは?
https://www.mizkan.co.jp/osu-information/base/difference.html
・発酵と腐敗・熟成の違いって何?
https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/20181025/10134/
② 発酵には欠かせない微生物のチカラと理解
発酵に欠かせない微生物は、「細菌」「酵母」「カビ」の3種類に分けられます。
それぞれにどんなものがどんな発酵食品を生み出しているかを分けて整理してみました。
【細菌】
細菌は、カビや酵母に比べて最も小さな単細胞の微生物で、細胞分裂を繰り返して増殖します。
腸内環境を整えることで知られる「乳酸菌」は、糖類を分解して乳酸に変える働きがあります。
牛乳に乳酸菌を加えるとヨーグルトやチーズができます。
また、ぬか漬けやキムチなどの漬物は、原料の野菜に含まれるブドウ糖や果糖などを乳酸菌が分解して発酵したものです。
「乳酸菌」が生成する乳酸により、pHを下げること(酸性)で食中毒細菌などの増殖を抑え、保存性が高まります。
また乳酸菌はアミノ酸を生み出すことで、発酵食品に独特の風味が生まれます。
「納豆菌」は、田んぼや畑、枯れ草、稲わらなどに生息する細菌です。
煮大豆に納豆菌を加えると、発酵の過程でタンパク質を分解し、旨味成分であるアミノ酸を生成して納豆ができます。
納豆菌は生きたまま腸内にたどり着き、善玉菌を活性化させ悪玉菌を抑制して腸内環境を改善したり、「ナットウキナーゼ」というタンパク質分解酵素が血液をサラサラにする働きがあるそうです。
「酢酸菌」は、アルコールを酢酸に変える、酢をつくるのに欠かせない細菌です。
酢酸によりpHを低下させて他の微生物を近寄らせない環境をつくり、防腐や静菌・殺菌の働きをするとのこと。
また酢の強い酸味と刺激臭も、酢酸によるものです。酢酸菌は腸内の免疫スイッチを刺激して活性化させ、花粉症やアレルギーを抑制する作用があると言われます。
【酵母】
酵母による発酵は、主にアルコール発酵で、ブドウ糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。
大麦を発芽させてつくった麦芽からの麦汁にビール酵母を加え、アルコール発酵させるとビールができます。
ブドウの果汁にワイン酵母を加え、アルコール発酵させるとワインができます。
また酵母から出る炭酸ガスは、パンの発酵に利用されています。
パンづくりに使われる酵母は大きく分けて「イースト」と「天然酵母」の2種類。
イーストはパン専用の酵母として基本的に1種類の酵母を培養させたものです。
天然酵母は穀物や果物など自然にある酵母を育てたもので、乳酸菌など他の菌も混ざっているそうです。
【カビ】
カビは糸状細胞の微生物で、胞子を飛ばして拡散し、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして広がります。
カツオ節をつくるのに使われる「カツオブシカビ」や、ブルーチーズで知られる「青カビ」などのほか、「麹菌」もカビの一種です。
麹菌は、味噌や醤油、みりん、米酢、甘酒、日本酒、焼酎、漬け物など、日本由来の発酵調味料や発酵食品をつくるのに使われるカビです。
そのまま使うのではなく、お米、麦、大豆などに加えて培養させた「麹」にして使用します。
菌を繁殖させた食材により、「米麹」「麦麹」「大豆麹」など麹の種類が変わります。
麹菌が生み出す酵素の働きで、食材の体内での消化・吸収の効率が良くなったり、腸内の善玉菌が活性化して腸内環境が良くなったりします。
また麹菌は、豊富なビタミンやミネラルなどの栄養素をつくるそうです。
<参考サイト>
・発酵食品にはどんな種類があるの?主な発酵食品一覧
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/hakkou-table
・発酵のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/
③ 先人の知恵はすごい!発酵のパワー
食材は発酵させることにより、人間に有益な変化が起こります。
その主な働きや作用について3つありますが、よくぞこんな発見ができたものだと驚きます。
そして、それが現代にでも役に立ち、今まさに健康や食問題の解決に繋がるんですから、本当に素晴らしいことですね。
【食品の保存性向上】
ある環境のなかに特定の微生物が一定数以上いる場合、他の微生物は繁殖することができないそうです。
発酵を促す微生物が増えることにより、腐敗菌を寄せつけないようにするため、食品の保存性が高まります。
また発酵によって生まれる乳酸や酢酸、アルコール自体にも殺菌効果があるので、雑菌の増殖を抑え、食品のおいしさが保たれるとのことです。
【味わいや香りアップ】
食材が微生物により分解され発酵する過程で、アミノ酸やイノシン酸、グアニル酸などの旨味成分が生まれます。
また発酵食品の独特な香りについても、発酵過程で微生物の作用によって生成される香気成分によるものだそうです。
【栄養価や健康機能が高まる】
発酵の過程で、微生物がビタミン類などさまざまな栄養成分をつくり出します。
元の食材よりも栄養価が高まったり、新しい栄養成分が加わったりします。
また、栄養成分が体内に吸収されやすくなる、腸内環境を整え免疫力が高まる、活性酸素の発生を抑え酸化を防ぐ、などのメリットもあります。
<参考サイト>
・発酵食品って何がいいの?
https://www.hakko-blend.com/study/whats/01/
④ 発酵で生まれた多くの食品たち
私たちが普段口にしている食べ物や飲み物の中にも、発酵の力によりつくられているものがたくさんあります。
【発酵食品】
<大豆系>
代表的な納豆は、納豆菌で発酵させた「糸引き納豆」と、麹菌で発酵させた糸を引かない「塩辛納豆」の2種類に分けられます。
「糸引き納豆」はさらに、大豆を丸ごと蒸してつくる「丸大豆納豆」、大豆を炒ってひき、皮を取り除いた後に納豆菌をつけて発酵させた「ひきわり納豆」、ひきわり納豆に米麹と塩を加えて、発酵・熟成させた「五斗納豆」に分けられるそうです。
インドネシアの「テンペ」など、海外にも納豆に似た食品があります。
※写真はPhotoAC「テンペ」より
<野菜系>
野菜などを漬け込んで風味と保存性を高める漬物には、つくる過程で発酵させる「発酵漬物」があります。
塩分を含む漬け床に漬け込むことで、野菜から出た水の中で乳酸菌が育ち、その働きによって漬物ができます。
野菜にもともと付着している乳酸菌が、糖類などを分解して乳酸を生成することによりpHが低下することで酸性になるそうです。
そのため酸味が出て、また酸に弱い腐敗菌の働きが抑えられることで保存性が高まるとのこと。
空気中などから付着した酵母も増殖することで、漬物特有の風味が生まれます。
韓国の「キムチ」や、ドイツの「ザワークラウト」、欧米の「ピクルス」なども発酵漬物です。
<肉系>
生ハムは、豚肉を塩水や塩で漬けて乾燥させ、燻製などの加工をせず、発酵・熟成させてつくられます。
ドライソーセージは、豚肉とアルコール、塩を混ぜて腸詰めにし、乳酸菌により発酵させつくられます。
※写真はPhotoAC「熟成サラミ」より
<魚介系>
魚介類にはもともとイノシン酸が多く含まれており、さらに発酵する過程でアミノ酸類が増え、イノシン酸も増えるそうです。
カツオ節は、カツオブシカビを何度もつけて燻したり乾燥させたりしてつくられます。
寿司の原型とも言われるなれずしは、魚を塩とご飯で発酵させたものです。
塩辛は、魚やイカの身・内臓などを塩漬けにして、発酵・熟成させています。
<その他>
乳製品であるヨーグルトやチーズ、また、パンやチョコレートも発酵食品です。
ヨーグルトは、牛乳に含まれる乳糖を乳酸菌で分解させてつくられます。
チーズは乳酸の発酵により酸化させた後に、加熱したり、酵素を添加して凝固させたりしてつくられます。
【発酵飲料】
<アルコール>
日本酒は、米に清酒酵母や麹を加え、発酵させてつくります。
ビールは、麦芽のでんぷんを糖化し、ビール酵母を加えて発酵させます。
ワインは、原料のブドウにワイン酵母を加えてつくります。
焼酎や泡盛も、発酵の力でつくるアルコール飲料です。
<発酵茶>
お茶の葉には酸化酵素が含まれており、摘んだ後そのままにしておくと徐々に発酵していくそうです。
発酵が進むと茶葉の色や香りが変化します。
発酵の方法や度合により「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」「後発酵茶」の4種類に分けられるとのことです。
緑茶や煎茶は発酵をさせずにつくられます。
ウーロン茶は、葉の周辺部の色が茶色に変色し始めたら火を入れ、発酵を止める半発酵茶です。
紅茶は、発酵の途中で揉む工程を入れて茶葉を傷つけることにより発酵を促進し、最後まで発酵させる発酵茶です。
プーアール茶は、茶葉を摘んですぐに火を入れて発酵を止めますが、その後、麹菌などの微生物によって発酵させる後発酵茶です。
<その他>
甘酒(麹甘酒)は、炊いたご飯に米麹を加えてつくられます。
麹菌や麹菌の酵素の働きにより、ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群などの栄養素がつくり出されます。
麹甘酒はノンアルコールですが、酒粕に砂糖と水を加えた酒粕甘酒はアルコールを含みます。
【発酵調味料】
「醤油」は、麹菌の酵素で大豆のタンパク質を分解してつくられ、醤油乳酸菌や酵母などの働きにより熟成が進みます。
「味噌」は、大豆と麹、塩が原料です。麹の種類により、米味噌や豆味噌、麦味噌などがあります。
「酢」は、酒に酢酸菌を加えてつくります。原料の種類により、米酢、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガーなどがあります。
「みりん」は、もち米と米麹、焼酎が原料です。麹菌の酵素がでんぷんを糖化することでつくられます。
他にも塩麹や醤油麹、中国の豆板醤、韓国のコチュジャンなどがあります。
魚醤は魚と塩を発酵させた調味料で、タイのナンプラーもその一種です。
<参考サイト>
・ゆたかな食文化を支えるさまざまな発酵・発酵食品
https://www.hakko-blend.com/study/
・発酵食品の一覧を紹介!効果や食べ方のポイントとともに確認しよう
https://www.u-can.co.jp/course/data/in_html/1473/column/column01.html
・主な発酵食品を一覧でチェック!効果・効能を高める健康レシピで豊かな食生活を
https://brunofans.jp/2023/05/post-709.html
・食べておいしく、カラダにやさしい発酵食品!
https://www.nissui.co.jp/recipe/fish-kitchen/featured/c00004/index.html
・乳酸菌 乳酸菌が含まれる食品はこれ!
https://www.nutrilite.jp/magazine/lactic-acid-bacteria/content32.html
・製法の違いで分けるお茶の種類
https://shop.chanoma.co.jp/column/kind/kind.html
⑤ 熟成の3つの技法とは?
発酵と並ぶ食材の変化である熟成には、日本古来の技法から新しく生まれたものまで、3つの技術があるそうです。
これらの技術について、熟成肉の例が分かりやすいと思うので整理してみます。
【枯らし熟成】
肉を枝肉のまま吊るし、3~4週間かけて熟成させる、かつて日本のお肉屋さんでよく見られた方法。
骨のまま吊るすことで、肉に負担がかかりにくいそうです。
冷蔵庫内で肉に最適な菌が自然に付着し、水分がゆっくり引き出されることで旨味が凝縮するとのこと。
表面のカビをそぎ落とす必要があるなど効率が良くないことから、真空技術の発達や流通の発展などにより、あまり活用されなくなったそうです。
【ドライエイジング】
管理された環境で乾燥させながら熟成する、ニューヨークから伝わった方法。
専用の貯蔵庫の中で湿度・温度を調整し、風を循環させながら水分を抜き、2週間~2カ月かけて熟成させます。
熟成の過程で自然に微生物がつきます。
こちらも表面のカビをそぎ落とす必要があります。
【ウェットエイジング】
真空にして、0℃~1℃の貯蔵庫で1~2週間寝かす技法です。
元々は、輸送の際に肉の劣化を防ぐため真空にしていたところ、数日寝かせると肉の酵素の働きにより柔らかくなり、旨味も増すことが分かったそうです。
他の技法に比べて管理がしやすいですが、旨味や香りはあまり増えないとのことです。
<参考サイト>
・熟成とは?発酵との違いと熟成することで食材が美味しくなる理由
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/jyukuseitoha
・大ブームの「赤身肉」&「熟成肉」を詳しく知ろう!【熟成肉編】
https://ourage.jp/column/healthy_gohan/38302/
⑥ 味・栄養・食感など、熟成のメリットいろいろ
熟成により、食材のタンパク質が分解されてアミノ酸が増えます。
このことにより、さまざまな効果が現れます。
ただし熟成と腐敗は紙一重なので、プロによる管理と見極めが必要です。
自宅で熟成させるのは難しいようです。
【旨味が増す】
アミノ酸は旨味成分のひとつなので、熟成が進みアミノ酸が増えることで美味しさをより感じられるようになります。
【芳醇な香りがする】
熟成香と言われる芳醇な香りがします。
【栄養分が吸収されやすくなる】
タンパク質は人の体をつくるのに必要ですが、そのままでは吸収されません。
熟成によりアミノ酸に変化することで、栄養分が吸収されやすくなります。
【食感がやわらかくなる】
酵素の働きにより肉の筋線維が分解され、食感がやわらかくなります。
⑦ 熟成で美味しくなるメカニズム
味噌や醤油、お酒、チーズなどの発酵食品にも、長期間熟成させるものが多いですね。
熟成により旨味が増すメカニズムについて、もう少し詳しく調べてみました。
タンパク質は、アミノ酸が長くつながったもので、味はほとんどありません。
食品に含まれるタンパク質が、食品自体が持つ酵素や空気中の微生物などにより分解される、つまり熟成することで、アミノ酸や、アミノ酸が複数つながったペプチドになります。
アミノ酸やペプチドは様々な味を持っているため、分解されればされるほど、旨味が強く感じられるようになります。
ペプチドは非常に種類が多く味もアミノ酸より複雑多様で、コクや濃厚感、異味異臭に対するマスキング効果などを持つものもあるとのことです。
旨味成分であるアミノ酸のグルタミン酸やイノシン酸に、ペプチドが加わることにより、相乗効果で深いコクや濃厚な味わいが生まれたり、塩味や酸味、苦味が弱くなったりして、より美味しくなると考えられています。
またペプチドは加熱処理を行うと他の物質と反応し、新たな風味が生まれます。
これにはメイラード反応と呼ばれる現象が関与しており、食品に独特の良い香りが生まれることが知られています。
ただしペプチドには苦味を持っているものなどもあり、味に良い影響を及ぼすものばかりではないそうです。
<参考サイト>
・「うま味」とともに「おいしさ」をアップさせる「熟成」…深まる「味わい」の秘密は「タンパク質」の「分解」だった!
https://gendai.media/articles/-/111803?page=2
・ペプチドは、おいしい!?
http://topics.foodpeptide.com/?eid=453628
⑧ 【新春特別価格】『小豆島福箱』発売中
昨年は、さまざまな形で小豆島の美味しいものをご紹介したり販売したりさせていただきました。
そこで、今回は新年のスペシャル企画として、石井製麺所の人気商品と組み合わせた「小豆島福箱」をご用意しました。
中身は…
・石井製麺所:手延べ半生うどん、手延べきくらげ麺
・岬工房:オリーブ新漬け
・瀬戸の香:小豆島の釜めしの素
・丸島醤油:味醤油
・箭木椎茸園:原木干し椎茸
・安田農業集団:特別栽培米
を詰め合わせた、小豆島ならではの美味しいセットをご用意させていただきました。
オリーブの新漬けは、何と言っても、小豆島の今だけの味覚で、日本独自のものです。
オリーブの独特のオイリーな優しい食感と、塩加減の良い塩梅が魅力な「オリーブのお漬物」です。
塩加減がご飯のおかずにも合いますし、お酒のアテにもちょうど良いようです。
知り合いの日本酒ソムリエさん、ワインソムリエさんにも「日本酒に合う!」「ワインに合う!」とお褒めをいただきました。
ぜひとも食べてみていただきたい味覚です。
釜めしは、きっと日本全国の地域にそれぞれの味が根付いているんでしょうね。
小豆島は醤油の産地ですから、釜飯(炊き込みご飯)には、ちょっとうるさいですよ!
そんな中、古くから佃煮の製造をおこなってきた瀬戸の香さんがつくる「おばあちゃんがつくった」優しい味わいの釜めしの素です。
具材も国産にこだわり、「あぁ〜美味しい〜」って心から言える(僕は言いました)釜飯を味わっていただけますよ。
味醤油は、これは本当に台所に一本、置いておいて欲しい調味料です。
これ一本で、めんつゆから、煮物の味付け、お味噌汁の隠し味、おでんや炊き込みご飯にも使えるので本当に万能な調味料です。
1本あればお料理の幅がぐんと拡がると思います。
濃縮つゆなので1本あればかなりもつので便利ですよね。
原木椎茸を使った干し椎茸は、島でも人気の商品です。
島の産直コーナーに毎日並べられていますが、毎日ほぼ完売で、わざわざこれをまとめて買いに来る人までいるそうです。
干し椎茸は、縁起物でも知られていますし、日本人ならではの旨みの素ですよね。
特別栽培米のお米は、田植えをする前にレンゲを咲かせ、それをすき込み肥料としています。
苗を植え付け栽培する際には、できるだけ農薬を減らして栽培されています。
令和5年度の収穫米で、玄米で保存し、出荷されるギリギリに精米してお届けさせていただきます。
特別なブランド米でなく、島の農家さんが丁寧につくられたお米を、セットにしてお届けさせていただきます。
セットで美味しく、何度も味わいたくなる「小豆島の美味しいものをセットにした福箱」はいかがでしょうか。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《新春特別商品 小豆島福箱》 https://141seimen.thebase.in/items/81778481
最後に…
1月1日に起きた「能登半島地震」で被災された方、影響を受けられた方に、心よりお見舞い申し上げます。
連日の報道により、お亡くなりになられた方が多くいらっしゃるとのこと。
ご遺族の皆様へ、心よりお悔やみ申し上げます。
また、救助や復興に携わられるすべての方の安全と健康を心よりお祈り申し上げます。
石井製麺所でも何かできることがないか、ボランティアで活動される方々と連携を取りながら、少しでもお役に立ちたいと考えています。
お役に立てることがございましたら、ぜひお声がけください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。