【お!いしい けんぶんろく】 Vol.19
メンコレ②/魚介を練り込んだ素麺の旨さの魅力
8月2日〜4日に東京国際展示場で開催された「和麺産業展」に行ってまいりました。
既存の麺の進化形はもちろん、弊社も参考になるようなさまざまな食材を練り込んだ麺などを拝見しお話を伺いました。
驚いたのは、製麺所・製麺会社が新麺を開発しているだけでなく、異業種からの参入が多いことでした。
原料の輸入会社さんが乾麺をつくられたり、医療器販売会社さんが地域の健康に繋がる製品を開発したいと米粉麺をつくられたりと、そのチャレンジ精神はとても勉強になりました。
中でも、原料メーカーさんでは、その原料を活かせる場として乾麺をつくられている(製造委託)ということで話が弾み、弊社にも依頼があるなど思ってもみない収穫もありました。
食材を練り込んだ麺は、手延べ製法でも色々あると思いますが弊社でも独自の製法を開発しています。
新しい麺開発に色々な方々と取り組んで新しい方向性に繋がれば嬉しく思います。
さて今回のブログでは、「Vol.17 メンコレ①/海藻を練り込んだ素麺の新しい価値」に引き続き、生地に食材を練り込んだ素麺について調べてみました。
テーマは、「魚介を練り込んだ素麺」です。
魚介そのものは素麺に合わせる具材として相性が良く、「鯛そうめん」や「サバそうめん」など、各地の郷土料理にもなっていますね。
つゆやだしの原料にも使われることから素麵との関連性は深いものがあります。
また、素麵自体はシンプルな味わいで、つゆやだしの美味しさに大きく左右されますから切っても切れない関係ですね。
今回は、素麺自体に魚介を練り込むという、ちょっと珍しい麺について深掘りしてみました。
素麺自体に魚介を練り込むことで麺自体からだしが出るので、より旨みが増すようですし、小麦粉や胡麻油の芳ばしさの風味だけでなく、魚介と合わせた旨い麺づくりに繋がれば。
小豆島も海に囲まれ海産物の活用は比較的取り入れやすいと思うので、素麵として新しい方向性のひとつかなと注目しております。
ブログを進めるにあたって色々調べてみたのですが、5種類の素麺が特徴的かなと思ったのでブログでご紹介させていただきます。
もちろん他にもあるかもしれませんが、今回はこれらの素麺について、開発の経緯や製法など分かる限りでまとめてみました。
またお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
※以下にご紹介する素麺は、2023年8月15日現在の当社調べになります。
ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。
【目次】
① イカスミを練り込んだ「漆黒の素麺」
② 岩手に春を告げるイサダを練り込んだ「ピンク色の素麵」
③ ウニの風味と旨みが味わえる「黄色の素麺」
④ ウナギの白焼きを練り込んだ「滋味深い素麺」
⑤ おめでたい贈答品にピッタリの鯛を練り込んだ「めでタイ素麵」
⑥ 《美味しい素麺》新しい麺へのチャレンジ(試作) 編
① イカスミを練り込んだ「漆黒の素麺」
長崎県島原の手延べ素麺に、特殊製法でイカスミを練り込んだ麺があります。
手延べならではのコシの強さと、なめらかな口当たりが特徴。
口の周りや歯が黒くなってしまうことなく、イカスミの風味を満喫できます。
和風だけでなく中華風や洋風にアレンジするなど、パスタ感覚で楽しめるそうです。
実際に南島原で食べてみましたが、手延べ独特のツルツルッとした食感はそのままに、旨みを感じた記憶があります。
ただ、真っ黒な麺が出てきたときは衝撃を受けましたが…。
こちらの商品開発のきっかけは、高知県産の魚介類を一次加工し販売している企業に、長崎県の製麺工場から電話がかかってきたことだそうです。
長崎の素麺と高知のイカスミのコラボ商品といったところでしょうか。
イカスミはパスタやパエリヤなどでも活用され美味しさは証明されていますよね。
イカスミはイカが敵から逃げる時に吐き出す墨で、タウリンという旨味成分が豊富に含まれており、まろやかなコクと甘みがあります。
ペプチドグリカンという成分に、免疫力を高めてくれる働きがあると期待されています。
また色素成分のメラニンには、花粉症や食物アレルギーを引き起こす細胞の活性化を抑える作用があるという研究結果も。
そのほか、細菌の増殖を抑える、肌の水分量や弾力を維持する、などの働きも注目されるそうですよ。
また、沖縄には、沖縄県産モズクとイカスミを練り込んだ素麺があり、モズクの加工・販売を手掛ける企業が販売されています。
<参考サイト>
・濃厚な「イカスミ」にはどんな栄養がある?効果効能やおすすめレシピを紹介【管理栄養士解説】
・島原そうめん イカスミ 練り込み
https://item.rakuten.co.jp/ko-yo-/1602834/
・興洋フリーズ株式会社
https://www.ko-yo-freeze.co.jp/
・モズク入りイカスミそうめん
http://www.mo19.com/shopping/2009/04/post_15.html
② 岩手に春を告げるイサダを練り込んだ「ピンク色の素麵」
イサダ漁の解禁は、三陸に春の訪れを告げる風物詩。
イサダは、岩手県が水揚げ量日本一を誇るオキアミの一種で、ピンク色の小さなエビのような形をしています。
その乾燥粉末を生地に練り込んだのが、「古館製麺」さんの「三陸イサダそうめん」。
「平成30年度岩手県水産加工品コンクール」において最高賞である「農林水産大臣賞」を受賞されています。
原材料には、有機JAS認定岩手県産ナンブコムギの小麦粉を100%使用。
食塩は震災の津波で一度は生産が途絶えましたが新たに「薪釜直煮製法」として復活を遂げた岩手県野田村の「のだ塩」だけを使用されているとのこと。
エビのような風味の、桜色の素麺で、冷やしても温めてもおいしいと評判です。
イサダは主に、釣りの巻き餌や養殖魚の餌として使われてきましたが、傷みやすいので食用としての有効利用が進んでいなかったそうです。
しかしながら近年は、EPAやDHA、アスタキサンチンなどの栄養を豊富に含み中性脂肪の蓄積を予防するとして注目されています。
イサダを使いやすい乾燥粉末にすることで、酸化が抑えられ冷蔵保存することが可能になったそうです。
※写真はイメージです。写真はPhoto AC「オキアミ」より
<参考サイト>
・e地産地消 イサダ
https://www.ehealthyrecipe.com/meal/chisan_chisho/detail.php?szid=2104
・イサダ(ツノナシオキアミ)いわて食財図鑑
https://www.iwate-syokuzaiclub.com/shokuzai/data.php?n=217
・《こぼれ話23》イサダから健康によいパウダー
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/138907.html
・平成30年度復興シーフードショーIWATEを開催しました!(県水産加工品コンクール結果発表)
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/suisan/suisanbutsu/suisan/1017987.html
・古舘製麺所「三陸イサダそうめん」が「農林水産大臣賞」を受賞しました
http://hattouya.com/2019/02/02/525/
・古舘製麺所 三陸イサダそうめん
https://hattouya.shop-pro.jp/?pid=113515928
③ ウニの風味と旨みが味わえる「黄色の素麺」
長崎県島原の「野内製麺」さんがつくっておられるのが、壱岐市から取り寄せたバフンウニを何度もこしながら生地に練り込んだ素麺。
黄色がかった美しい色の、ウニ特有の豊かな風味と旨みが味わえる手延べ麺だそうです。
驚いたのは「麺の中に練りウニを練り込むことで豊かな風味と旨みが味わえます。」ということで、粉末化などせず練りウニを練り込んでいるとのことですからちょっと想像がつきません。
乾麺にするから乾燥するからといっても常温以下の乾燥温度ですから、このお素麺はとても興味深いです。
乾燥粉末にせず練り込むことができるなら、食材の旨味や栄養価をそのまま取り入れることができると思うので、健康麺を考える石井製麺所ではとても参考にしたい素麵です。
ウニに含まれる栄養価には、抗酸化作用のあるビタミンEが豊富に含まれており、生活習慣病の予防や、血行を良くするなどの働きがあると言われます。
またカロテンやビタミンB群、アミノ酸なども豊富に含まれています。
※写真はイメージです。写真はPhoto AC「バフンウニ」より
<参考サイト>
・野内製麺 手延べ ウニそうめん
https://nouchi-seimen.ocnk.net/product/15
・ふるさとチョイス 手延べウニそうめん
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/42214/5534373
・ウニ/海胆/海栗/雲丹/うにの栄養価と効用
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fish/uni3.htm#google_vignette
④ ウナギの白焼きを練り込んだ「滋味深い素麺」
熊本市の南東に位置する甲佐町の、白旗町のふもとにある養殖場で育てたウナギを練り込んだ素麺があります。
きれいな水と豊かな自然環境の中、循環式水質浄化システムを採用した完全屋内型施設で丁寧に育てられたウナギは、肉厚で脂がほどよくのり、繊細でやわらかく弾力のある肉質が特徴とのこと。
養鰻場を営む企業が地元の製麺会社である「肥後そう川」さんとコラボし、熊本県産の小麦粉を使った生地にウナギの白焼きを練り込んだ素麺が生まれました。
モチモチとした食感でのど越しがよいそうです。
ウナギといえば滋養強壮に良い食べ物というイメージがあり、その栄養価の高さは有名ですよね。
不飽和脂肪酸のDHAやEPA、カルシウム、ビタミンA・B1・D・E、タンパク質、コラーゲンなどが豊富に含まれており、動脈硬化や高血圧の予防、目の健康維持、疲労回復などの働きが期待できます。
この素麵の他にも「肥後そう川」さんは、特産品を活かしたオリジナルの手延べ麺の開発などを数多く手がけておられるようです。
企業姿勢としてとても勉強になりました。
※写真はイメージです。写真はPhoto AC「生鰻」より
<参考サイト>
・鰻の白焼きを練り込んだ うなぎ 手延べ麺
https://item.rakuten.co.jp/aomikan/10000969/
・うなぎ 手延べ麺 熊本産うなぎを練りこみました
https://gurusuguri.com/shop/z591800/gurusuguri_06/
・鰻屋 源八郎
https://gurusuguri.com/shop/z591800/
・商品開発 肥後そう川
https://www.sougawa.com/private-brand/
・うなぎに含まれる栄養と効果・効能|うなぎを使ったレシピを紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/30617
⑤ おめでたい贈答品にピッタリの鯛を練り込んだ「めでタイ素麵」
縁起物の代表格であるタイを練り込んだおめでたい素麺が、ざっと調べただけでも3つの地域でつくられています。
面白いのは、練り込むタイの状態が三者三様なことです。
宮崎県宮崎市の「清家商会」さんがつくっておられる「たいめん」は、九州産小麦を100%使用した生地に、タイのエキスと満潮の塩を練り込んだ素麺。
煮込むと、タイの旨みと塩の甘みが上質のだしとして溶け出すそうです。
福岡県福津市の地域商社である「福津いいざい」さんの素麺は「めんたい」。
玄界灘産の天然鯛の骨と皮をじっくり乾燥させて粉末にし、練り込んだ素麺です。
贅沢なのど越しとタイの濃厚な旨みが凝縮されているとのこと。
骨と皮を使うことでフードロス削減にも取り組み、環境にやさしい商品づくりをされています。
小豆島の「岡上食品」さんでは、生地を練る際にタイのだしを合わせ、コシと風味を活かした素麺に仕上げておられます。
小豆島に居ながら存じ上げませんでした。
ぜひ一度、タイを使った素麵の開発含め、素麺づくりについてお話を伺ってみたいと思います。
※写真はイメージです。写真はPhoto AC「新鮮な鯛の氷漬け」より
<参考サイト>
・たいめん
http://seikeshokai.kokage.cc/web-content/taihot.html
・ふるさとチョイス 福津発祥そうめん『めんたい』
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/40224/5807301?query_id
・瀬戸内 鯛そうめん 2個セット
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/37322/5379828
⑥ 《美味しい素麺》新しい麺へのチャレンジ(試作) 編
実は、何度か小豆島産や他の地域も含めて海産物を利用した新麺開発にチャレンジしたことがあります。
正直…。
とっても美味しくできました!
しかしながら、原料の安定供給が難しいものや原価の高いものがあり、現段階ではペンディング中のものもありますが、試作は済んでいるので上手くいけばぜひ販売をしていきたいと考えています。
熊本の「肥後そう川」さんのように、地域に役立つ商品開発や、素晴らしい食材をお持ちの方々とコラボ商品などどんどん進めて行きたいと思います。
ぜひ今後も石井製麺所の手延べ麺にご期待ください。
※写真は(有)石井製麺所「X」の投稿より
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。