【お!いしい けんぶんろく】 Vol.1
素麺1200年の歴史と、その三大産地について
【はじめに】
㈲石井製麺所のブログではこれまで、お客様やホームページをご覧くださる方とのコミュニケーションの場(ブログという一方的な発信ではありますが)の一環として、三代目の私が色々見聞したことを綴ってまいりました。
しかしながら、ここ最近、島の取り組みや島外でのイベントに参加させていただく中で、素麺のことをもっと知りたい、それをたくさんの方と共有して、叶うなら後進育成にも繋げていきたい…そういう思いが強くなってきました。
そこで、「素麺の歴史・小豆島手延べ素麵の歴史」を綴りながら『お!いしい けんぶんろく』として、これから色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。
まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本三大素麺の産地について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になれば。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
日本に数多くある麺の中でも、素麺の歴史は古く、9世紀頃に中国から伝わったものがそのルーツとされています。長い年月をかけて各地に広まりながら、産地ごとに独自の進化をとげ、多様な味わいを生み出してきました。そんな素麺の歴史と三大産地の特徴をご紹介します。
【目次】
① 素麺のルーツは中国のお菓子?
② 日本の素麺は神の啓示で生まれた?<三輪>
③ 厳しい品質管理でブランド化を推進<播州>
④ 三輪から持ち帰った技術で独自に発展<小豆島>
⑤ 《産地紹介》香川県・小豆島素麺
⑥ 《美味しい素麺》煮麺 編
① 素麺のルーツは中国のお菓子?
素麺の起源は、奈良時代に遣唐使が中国から持ち帰った「索餅(さくべい)」というお菓子にあると言われています。
小麦粉と米の粉を練って縄のような形にねじったもので、今も長崎県に伝えられている郷土菓子「麻花兒(マファール)」に似たものだったようです。
これをお供えすると疫病が鎮まったという言い伝えがあり、無病息災を祈る食べ物として、とても貴重な食物だったそうです。
927年に完成した、宮中の儀式・作法等を集大成した書物「延喜式」には、「索餅」が旧暦7月7日の七タの儀式に供え物の一つとして供えられた記録があります。
特に平安時代からは、宮中での七夕行事に欠かせない供物とされていました。
<参考サイト>
・島原そうめんの歴史
https://www.shimabara-soumen.com/category/1572537.html
・素麺の起源「索餅(さくべい)と索麺(さくめん)」
https://www.shimabara-soumen.com/article/14261528.html
② 日本の素麺は神の啓示で生まれた?
素麺の三大産地は「三輪(奈良県)」「播州(兵庫県)」「小豆島(香川県)」とされ、この中で最も歴史の古いのが三輪です。
827年、日本最古の神社である三輪山の大神神社で、神主であった大神朝臣狭井久佐(おおみわのあそんさいくさ)の次男・穀主(たねぬし)が、飢饉や疫病に苦しむ民の救済を祈願しました。
すると神から「肥沃な三輪の里に小麦をまいて、その実りを水車の石臼で粉に挽き、癒しの湧き水でこね延ばして糸状にしたもの」という啓示を賜り、三輪の地に適した小麦の栽培を行い、小麦と三輪山の清流で素麺作りを始めた
とされています。
後の江戸時代には、お伊勢参りの途中で多くの人が奈良を訪れ、旅籠で三輪名物として供される素麺を食べたことから、その評判が全国へと広まっていったそうです。
こうした伝承から、大神神社は素麺作りに携わる全国の人から篤く信仰されており、毎年2月5日には素麺の卸値相場を占う「卜定(ぼくじょう)祭」が行われています。
三代目:素麺は元々、神様へのお供え物や健康を祈願する食べ物だったんですよね。石井製麺所では、この考えを基本として原点に立ち返り、「身体に負担の少ない物」、「身体にとって美味しいものづくり」として取り組んでいます。
<参考サイト>
・九州お取り寄せ本舗
https://blog.otoriyose.site/kyusyustroll/1805/
・大神神社HP
https://oomiwa.or.jp/jinja/kamigatari/
・奈良県観光公式サイト
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/page/page_32.html
③ 厳しい品質管理でブランド化を推進<播州>
鎌倉時代、中国から禅宗が伝わると同時に、寺院では点心と呼ばれる間食が広まりました。点心には、索餅から作り方が進歩した「索麺(さくめん)」が使われました。
室町時代初期の古文書「鵤庄引付(いかるがのしょうひきつけ)」に「サウメン」という記述が見られます。
この古文書は現在の兵庫県南部・播州にある斑鳩寺(いかるがでら)のもの。約600年前から播州で素麺が食べられていたことが分かります。当時、素麺は寺院や宮中で食べられるもので、庶民の口にはまだ入らなかったようです。
播州で素麺作りが本格化したのは江戸時代とされています。
龍野藩の許可業種として奨励され、揖保川の水や播州平野で採れる良質な小麦、有名な赤穂の塩などの原材料にも恵まれ、農家の副業として発展を遂げました。生産量が増えるとともに、粗製乱造で産地の信用を落とす事態も発生したため、龍野藩・林田藩・新宮藩内の素麺製造業者が集まり、厳しく品質などを管理しました。
この集まりが元になり、明治時代に「揖保の糸」ブランドが誕生しました。
三代目:2023年は、ぜひとも産地巡りをしたいと考えています。
<参考サイト>
・姫路・西はりま地場産業紹介
http://jibasan.or.jp/jibasan/soumen/index.html
・姫路みたい
https://www.himeji-mitai.com/feature/374539.html
④ 三輪から持ち帰った技術で独自に発展<小豆島>
小豆島の素麺作りは、1598年、小豆島池田村の島民がお伊勢参りの帰路、三輪に立ち寄り、素麺の製造技術を学んで島に持ち帰ったのがルーツとされています。
冬の農閑期に家族の労働だけで生産できるといった利点や、小麦の栽培に適した気候、瀬戸内海の塩や素麺作りに必要なごま油が豊富にとれる、などの環境から、素麺づくりがさかんに行われるようになりました。
現在、素麺の生産高が国内第2位である長崎県・島原へは、小豆島からの移住者が製麺技術を伝えたという説もあります。
小豆島の手延べ素麵の独自性としては、製法に「ごま油」を使うところでしょうか。
三代目:来月は、そのごま油で日本トップシェアを誇る小豆島を代表する「かどや製油」さんにお邪魔して、詳しくお話を伺ってきたいと思います。
なぜ、小豆島だけがごま油を使うのか?
なぜ、小豆島でごま油が盛んに使われたのか?
など、小豆島にとって切っても切り離せない「ごま油」についても知りたいことがたくさんありまして。
「ごま油」を使った独自製法が、小豆島手延べ素麵の美味しさの秘訣のひとつだと考えます。
三代目:日本三大産地の共通項は、水、空気(風や乾燥具合)だといわれています。もちろん、ルーツが同じでも時代と共に製法が進化してどんどん美味しく、たくさん生産されるようになってきました。私たち石井製麺所では、昔ながらの製法を大切にしつつ、「素麺の目的」をしっかりと見える化して、新しい素麺、これからの時代に必要とされる素麺をつくり続けていきたいなと感じました。
伝統産業といわれながら何も知らずにつくり続けるのではなく、これまでを振り返り、これからの美味しい素麺づくりに活かせることができればと考えています。
しばらくは産地について調べていきたいと思います。
この産地探求の旅が、また新しい素麺に繋がると期待しています。
<参考サイト>
・小豆島物語
https://shodoshima.npnp.jp/about/somen/
⑤ 《産地紹介》香川県・小豆島素麺
豊かな自然と温暖な気候に恵まれた小豆島。
瀬戸内における海上交通の要衝だったため、塩や小麦などの原料調達がしやすく、江戸時代にはその地の利を活かして素麺作りがさかんに行われるようになりました。
小豆島素麺の特徴は、特産の純正ごま油を塗りながら練った生地を、木の箸を使って極細の糸状になるまで丁寧に引き伸ばし、天日でじっくり乾燥させる、伝統的な手練りの手延べ法で作られること。
一般的な手延べ素麺では菜種油を使いますが、「ごま油」を使うことで素麺の酸化が抑えられ、油臭さを取り除く必要がありません。手間暇かけて作ることで、豊かな風味とコシが生まれます。
黄みがかった色も特徴の一つです。
<参考サイト>
・うどん県旅ネット
https://www.my-kagawa.jp/shodoshima/feature/shodoshima/beauty4
⑥ 《美味しい素麺》煮麺 編
お素麺は、シンプルなだけに色々な味付けや盛り付け、合わせるお出汁などで食べ方も色々変わりますよね。また、地域性の高い食べ方や季節的にも色々とあります。
最近では、素麺ブームといわれているので東京にたくさんの“素麺専門店”ができているそうで、たくさんの方に素麺を食べていただく機会も多くなってきたと感じます。
ネットで探せば、たくさんのレシピも出てきますし、「たくさん素麺をもらったけど、食べ方に困る」なんてお話や「余った素麺を美味しく食べるレシピ」というのもあったりして、素麺をつくるものとしては大変ありがたいお話ですが、余らせたり困ったりするものでなく、食事の“ピンチ”や“困った”時の一品としてご活用いただければと思います。
お湯が沸いて1分半(細麺タイプの場合)で美味しく頂けるので、時短メニューにもぴったりですし、小豆島手延べ素麺は麺の表面にごま油が塗られているので、茹で上がり後、水を切ってしばらく冷蔵庫に入れていても、つゆをかければさらさらっと麺がほぐれて美味しく召し上がっていただけます。
素麺の特徴を生かして、ぜひご家庭でも美味しい素麺を召し上がっていただきたいと思います。
今回は、美味しい『煮麺』の作り方について。
といっても、美味しいレシピは今の時代、ネットにたくさん出ていますので、私から「こうすれば美味しい!」というのはないんですけども、温かい麺として美味しく召し上がっていただける当製麺所の「煮麺におすすめの麺BEST3」を発表したいと思います。
第3位は!「手延べしょうどしま長命草素麺」です!
ゆでたての香りは抹茶のようなすがすがしい香りで、麺も少し太麺で温かいお出汁にも湯で伸びしにくくい点がおすすめです。着色料無添加なので、長命草の自然な緑色が見た目にも綺麗です。石井製麺所では、フォー風のスープと一緒にエビなどを盛り付けて食べるのが人気です。
長命草の栄養価を手軽に取り入れて、毎日食べていただきたいと開発した麺で、最近、人気急上昇の素麺です。
第2位は!「手延べ素麺 太麺」です!
一般的にはひやむぎといわれる太さです。小麦粉の香ばしい香りが口の中で広がって、太麺独特のシコシコとコシのある食感、噛み切った時の弾力感が美味しい麺です。
第1位は!「山芋素麺」です!
この麺の特徴は、何といってももちもちプリンとした食感で、寒い時期はスタンダードな素麺からこちらの「山芋素麺」を選ばれる方が大変多いです。真っ白の麺が見た目にも綺麗ですので、食べ方も色々とアレンジできそうです。個人的には、秋の味覚のキノコや山の幸などと合うと思っています。
皆様もぜひ、色々と試してみてくださいね。
皆様のレシピや食べ方、こんな麺が食べてみたいなどあれば、ぜひお聞かせください。
三代目:次回のブログは11/15ごろ、アップしたいと思います。