【お!いしい けんぶんろく】 Vol.31
栄養成分の機能性について/乳酸菌
素麵を製造する際、気になる天気予報。
そして今、特に気になるのが花粉の飛散情報。
花粉症がツライ季節です(涙)。
私は小豆島に戻る前、かなり花粉症に悩まされていて、鼻から来て、目もツラく、薬に頼っていました。
しかしながら、島に戻ってからは症状も和らいだようで、薬を飲んではいますが、体調的にも改善傾向です。
これだけでも島に戻ってきた価値は、大いに感じております。
さて、最近、花粉症に良い食品というものも多くあり、よく聞くのが乳酸菌を含むヨーグルトではないでしょうか。
先日、「発酵」「熟成」のブログで、醤油についても色々と書いていましたが、そこでも乳酸菌のキーワードは出てきました。
乳酸菌の存在自体を知られるようになったのはつい最近のことなんだそうですが、その活用ははるか昔からあり、食経験も豊富で安全性の高いものだと知られています。
乳酸菌は人間の体の中に存在するものから、食物や自然界に存在するものまで、人体へのさまざまな有用性が紹介されています。
発酵食品を製造する際にはその働きが役立ち、花粉症で苦しむ時期、免疫力が低下して体調を崩しやすい時期にも役立つとされる乳酸菌。
“菌”と聞くとなんだか怖い気もしますが、人間にとって欠かせない“菌”のひとつなんですね。
今もなお研究が進み解明されることも多いそうで、今後もさらなる有用性の発見に期待したいところです。
今回のブログでは「乳酸菌」の機能性や働きを学び、新しい製品に活かすことができればと考え、調べてみました。
乳酸菌入り手延べ素麵ができれば、花粉症対策に素麵を食べていただける日が来るでしょうか。
それはさておき、新製品開発のためだけでなく、日々の健康管理にもお役立ていただける情報としてブログにまとめたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
写真は、最近、新製品開発のために伺った「かがわ産業支援財団」がある「香川産業頭脳化センター」の入り口付近。
「頭脳化」ってどういうことだろう?と思いながら、撮った1枚です。
こちらでお世話になる日を目指して、今後もいろいろと頑張ってまいります。
【目次】
① 人間の強い味方!善玉菌の代表格・乳酸菌
② 乳酸菌と一括りに言っても、実は400種類もある
③ 乳酸菌は「生きたまま腸まで届く」ことが必要なのか?
④ 乳酸菌が摂取できる発酵食品いろいろ
⑤ 腸内環境を整え、健康に役立つ乳酸菌
⑥ 知っておきたい、乳酸菌の効率的な摂り方や食べ方の工夫
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べきくらげ麺編
① 人間の強い味方!善玉菌の代表格・乳酸菌
乳酸菌とは、発酵により糖類から乳酸をつくり出す性質を持つ微生物の総称です。
人や動物の体内をはじめ、自然界に広く存在します。
古くから、ヨーグルト・チーズ・漬け物・味噌・醤油・日本酒など発酵食品の製造に利用されてきました。
乳酸菌研究の歴史は浅く、乳酸菌と健康や老化との関係がわかったのは20世紀初めのことでした。
17世紀、オランダのアントニー・ファン・レーウェンフックが腸内細菌を発見しました。
乳酸菌を初めて本格的に調べたのは「発酵微生物学の始祖」と言われるフランスのパスツールで、1857年、酸っぱくなった乳の中に微生物が存在することを発見したそうです。
さらに研究が進み「ビフィズス菌」「アシドフィルス菌」などが発見され、1908年、免疫の研究でノーベル賞を受賞したロシアのメチニコフが「乳酸菌による不老長寿説」を提唱したそうです。
乳酸菌は、人の腸の中にも存在します。
腸内にはさまざまな種類の細菌が存在しており、大きくは「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3つに分けられます。
食生活の偏りや不規則な生活などにより、これら3つのバランスが崩れることがあります。
乳酸菌が産生する乳酸や酢酸などの有機酸には殺菌作用があり、大腸菌など悪玉菌の繁殖を抑えて腸内細菌のバランスを整える乳酸菌は、善玉菌の代表格と言われています。
乳酸菌にはさまざまな種類があり、その働きも多種多様。
腸内環境を整える他、免疫機能の向上や、コレステロール値の低下、花粉アレルギーの改善といった働きがあることが分かっています。
<参考サイト>
・公益財団法人 腸内細菌学会 乳酸菌について教えてください。
https://bifidus-fund.jp/FAQ/FAQ_17.shtml
・乳酸菌を知る 乳酸菌とは
https://www.biofermin.co.jp/nyusankin/about_nyusankin/about/
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット 乳酸菌
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html
・乳酸菌とは?乳酸菌の働き、乳酸菌を含む食品を紹介
https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=236&category=health
② 乳酸菌と一括りに言っても、実は400種類もある
乳酸菌はおよそ400種類ほど発見されており、いろいろな分け方があります。
<形態による分類>
【乳酸球菌】丸い球状の形をしています。
【乳酸桿菌】細長い棒状の形をしています。
<発酵形式による分類>
【ホモ型乳酸発酵】糖から乳酸のみを生成します。
【ヘテロ型乳酸発酵】糖から乳酸と酢酸またはアルコール、炭酸ガスを生成します。
<発育条件による分類>
【通性嫌気性菌】空気(酸素)があるところでも増殖します。
【偏性嫌気性菌】空気(酸素)のあるところでは増殖しません。
乳酸菌豊富な食べ物の代表格であるヨーグルトの市販品には、「ブルガリア菌」「サーモフィルス菌」「アシドフィルス菌」などが用いられています。
また、乳酸菌飲料には「カゼイ菌」などが使われます。
ヨーグルトなどの製造では、これらの菌の組み合わせや発酵温度などによって、それぞれの製品の特長を出しているそうです。
乳酸菌の中でもよく耳にするものについて、それぞれの特徴や働きを調べてみました。
【ビフィズス菌】
広義では乳酸菌に含まれますが、乳酸だけでなく酢酸もつくる、酸素があると生きていけない、など乳酸菌と異なる特徴を持ちます。
整腸作用が知られており、主に大腸に住みつき、乳酸や酢酸をつくって腸内環境のバランスを整えたり、腸管を適度に刺激して腸管運動を促進したりします。
また病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑制する働きもあると言われています。
形態は棒状の桿菌ですが、増殖する時に枝のように分かれY型になります。
「Bifix(グリコ)」「ナチュレ恵(雪印メグミルク)」などに含まれます。
【ブルガリア菌】
細長い棒状の形状。
腸内に住みつくことができませんが、腸内で乳酸菌や善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きがあります。
また腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、腸壁から水分を吸収し、便通を良くするとのこと。
免疫力を高める効果や美肌効果もあると言われています。
「ブルガリアヨーグルトLB81プレーン(明治)」などに含まれます。
【サーモフィルス菌】
球菌。
ブルガリクス菌の生育をサポートするので、ブルガリクス菌と組み合わせて用いられることが多いそうです。
粘質物を形成し、ヨーグルトの硬さをつくり、離水を防ぎます。
腸内のバリア機能を高める働きや、腸内の免疫細胞に働きかけ、免疫力を高める作用や美肌作用もあると言われています。
【フェーカリス菌】
腸内での増殖が速い乳酸菌で、主に小腸に住みつき、ビフィズス菌やアシドフィルス菌の増殖をサポートします。
整腸剤「新ビオフェルミンS」には、ビフィズス菌・アシドフィルス菌・フェーカリス菌が配合されているそうです。
【アシドフィルス菌】
人の体内にもともと存在し、主に小腸に住みつきます。
熱や酸に強く、直接腸内に働きかけることができます。
乳酸菌の中でも特に乳酸をつくる能力にすぐれており、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。
腸内の免疫力を高める、口臭改善、胃潰瘍予防の作用もあると言われています。
【ラクトコッカス菌】
チーズやサワークリーム、バターなどの乳製品を製造する過程で使用されます。
凝乳作用をサポートし、チーズの熟成過程においては乳成分を分解し、チーズに特有の匂いと風味をつけます。
肌の水分量の減少を抑制するなど、美肌の働きがあると考えられています。
【ロイコノストック菌】
チーズやバターの乳製品を発酵させる過程で使用されます。
日本酒や漬物、納豆にも含まれます。
肥満に関係する腸内細菌の減少、短鎖脂肪酸の増加による体重減少の働きが期待されています。
【カゼイ菌】
乳酸菌飲料には、主にカゼイ菌が含まれています。
人の腸内に多く存在し、腸内に定着する時間が長く、悪玉菌を抑制して腸内環境を整えます。
下痢や便秘を整える整腸作用があり、花粉症の鼻症状にも有用であると考えられています。
【シロタ株】
1930年、後にヤクルトの創始者となる医学博士・代田稔により発見、強化培養された乳酸菌の一種。
胃液や胆汁に負けず、生きたまま腸内に届き、良い菌を増やして悪い菌を減らし、腸内環境を良くしておなかの調子を整える働きがあるそうです。
「ヤクルト」に含まれています。
いろいろな乳酸菌があることが分かりますね。
目的に合わせて食べ別けてみるのが良いのでしょうか?
特にカゼイ菌の入った食品などが気になるところです。。。
<参考サイト>
・乳酸菌について知る
https://www.nyusankin.or.jp/lactic/basics/
・乳酸菌とはどのような菌ですか?
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_065_493/
・乳酸菌の種類ごと効果一覧|お悩み別におすすめの乳酸菌をご紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/26683
・乳酸菌の種類と効能を知り、自分に合う乳酸菌を見つけよう!
https://www.kusurinomadoguchi.com/column/lactic-acid-bacteria-19606/
・シロタ株とは?
https://www.yakult.co.jp/shirota/about/
③ 乳酸菌は「生きたまま腸まで届く」ことが必要なのか?
乳酸菌を含む製品などのキャッチフレーズで「生きたまま腸まで届く」というものをご覧になったことがありませんか。
どういうこと?
何のメリットがあるの?
生きているっていうことは、死んでいるものもあるっていうこと?
と疑問に持たれたことはないでしょうか。
乳酸菌には、「生菌」(生きた乳酸菌)と「死菌」(死滅した乳酸菌)があるそうです。
生きて腸まで届いた乳酸菌は、その多くが腸内環境のバランスを整える作用を持っています。
では、「生菌」でなければ意味や効果がないのでしょうか?
口から体内に入った乳酸菌は、胃酸によって多くが死滅し、腸に届くときには死菌になっていることが多いそうですが、死菌にも善玉菌が退治した悪玉菌を吸着して体外へ出すといった働きがあると報告されています。
また、「死菌」は生きた乳酸菌や常在する腸内細菌などの善玉菌のエサになったり、免疫機能を調整したりする役割が注目されています。
また、死菌によっては生きている菌より免疫効果が高いものもあるそうです。
死菌は胃酸や腸液の影響をほとんど受けないので、生菌より効果が安定しているとも言えるようです。
<参考サイト>
・乳酸菌を加熱殺菌したら意味がない?死んだ菌の効果9選をご紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/28162
④ 乳酸菌が摂取できる発酵食品いろいろ
乳酸菌は、さまざまな食品の製造に利用されています。
乳酸菌を豊富に含む食品を摂取することで健康維持に役立ちます。
乳酸菌が摂れる代表的な食品について、調べてみました。
【ヨーグルト】
紀元前から食べられていたと言われるヨーグルトは、動物の乳に乳酸菌やビフィズス菌を加えて発酵させたもの。
乳酸菌が乳の中にある糖を分解して乳酸をつくる「乳酸発酵」によってできる発酵食品です。
ヨーグルト100gあたりに含まれる乳酸菌の数は約10億個です。
日本では、厚生労働省により発酵乳(いわゆるヨーグルト)1mlあたりの乳酸菌の含有量は1,000万個以上と基準が定められています。
【チーズ】
チーズは大きく分けると「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類あります。
ナチュラルチーズは、乳に乳酸菌を加えて凝固したタンパク質を取り出して成形したもので、さらに熟成させる場合もあります。
加熱しないので、生きたままの乳酸菌を摂取できます。
乳酸菌の含有量は100g中に10億個です。
プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし再び固めたものです。
【ぬか漬け】
米ぬかに塩と水を混ぜて乳酸発酵させたぬか床には、さまざまな乳酸菌が含まれています。
ぬか漬けは乳酸発酵を利用した漬け物です。
この他、野菜に付着している乳酸菌によってつくられるしば漬け、野沢菜漬け、千枚漬け、キムチ、ザワークラウトなどを食べることでも、乳酸菌を摂取できます。
作りたての乳酸菌含有量は1gあたり100万個程度ですが、熟成することにより10億個以上に増えるそうです。
乳酸菌が増殖する際に、他の菌は死滅するので、食中毒の心配はほとんどないとのことです。
【キムチ】
白菜に塩や唐辛子、ニンニクなどを加えて乳酸発酵させる漬け物。
キムチの酸味や旨味は、乳酸菌の発酵によるものです。
本場韓国では魚介塩辛を用いるのが特徴で、これにより乳酸発酵が促進されます。
市販のキムチには発酵させず調味液に漬けただけのものもあるため、「乳酸発酵」「熟成発酵」「発酵キムチ」などの記載があるものを選ぶと良いそうです。
【醤油】
麹に塩水を加えた諸味(もろみ)の中で、糖分の一部をさまざまな有機酸に変えることにより、醤油に酸味と味の伸びや深みを与える役割を果たします。
蔵の中や木桶に住みついている乳酸菌が入り込む場合と、培養したものを添加する場合があります。
(「【Vol.30】麺究者への道/醤油について研究してみる」もご参照ください)
【味噌】
大豆、米麹、塩を原料としてつくられ、発酵の段階で酵母や乳酸菌が生まれます。
乳酸菌は味噌のpH値を下げ(弱酸性にする)、酵母が生成しやすい環境を生み出したり、味を変化させたり色をよくしたりするなど、さまざまな役割を果たしています。
【納豆】
納豆をつくるときには納豆菌が添加され、基本的に乳酸菌は添加されませんが、発酵の過程で空気中の乳酸菌が入り増殖します。
含有量は製法などにより異なります。
納豆菌は熱や胃酸に強く、生きたまま腸に届き、善玉菌の増殖を助ける働きがあり、乳酸菌と一緒に摂ることで相乗効果が期待できるそうです。
製造過程で乳酸菌を加えた「乳酸菌納豆」というものもあり、1g中に数10億個の乳酸菌が含まれています。
【日本酒】
原料は米、米麹、水で、それらをアルコール発酵させるために酵母が必要となります。
酵母を培養する素となるのが「酒母(しゅぼ)」で、これを酸性化するために乳酸菌が使われます。
【乳酸菌飲料】
牛乳などを乳酸菌または酵母で発酵させ、甘味料や果汁、香料などを加えた飲み物。
生きた乳酸菌が含まれているタイプと、加熱殺菌したタイプに分けられます。
さまざまな種類があり、含まれる乳酸菌の種類や量も異なります。
乳酸菌の含有量の基準が決められており、100gあたり約10億個の乳酸菌を含みます。
<参考サイト>
・乳酸菌とは?腸における役割・ヨーグルトなど乳酸菌が摂れる食品から紐解く
https://www.wakamoto-pharm.co.jp/tips/intestine-body/lactic-acid-bacteria/
・乳酸菌が含まれる食品はこれ!
https://www.nutrilite.jp/magazine/lactic-acid-bacteria/content32.html
・乳酸菌が多い食品ランキングTop5|乳酸菌を摂るコツ5選を紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/26681
・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における 発酵乳の規格基準等の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000036782.pdf
・ヨーグルトとは?
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/yogurt/」
・納豆に乳酸菌は入ってる?納豆と乳酸菌の相性と3つの効果とは
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=14258
・醤油の知識 乳酸菌
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0710
⑤ 腸内環境を整え、健康に役立つ乳酸菌
腸内には約1000種類、約100兆個もの細菌がいると言われています。
乳酸菌やビフィズス菌は、悪玉菌の繁殖を抑え、腸の働きを促す「善玉菌」です。
「悪玉菌」は、腸内のタンパク質を腐敗させ、有害物質をつくり出すもので、食中毒の原因でも知られるウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌などがあります。
「日和見菌」は、腸内のバランスが保たれているときは無害ですが、悪玉菌が増えると悪玉菌に加勢するそうです。
バクテロイデスや連鎖球菌などがあります。
腸内細菌は腸の壁に生息しており、お花畑のように種類ごとにまとまって分布していることから「腸内フローラ」と呼ばれます。
腸内フローラのバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7が理想だそうです。
ストレスや加齢、食生活の偏りなどにより悪玉菌が優勢になりバランスが乱れると、腸内の食べ物が腐敗して便秘や下痢、肌荒れなどを引き起こします。
また、便のにおいや口臭が強まる原因にもなるとのことです。
ただし悪玉菌がまったくいなくなると、善玉菌が働かなくなり、食べ物の消化・吸収がうまくいかなくなってしまうため、この「2:1:7」のバランスを保つことが大切なのだそうです。
善玉菌の代表である乳酸菌は、腸内環境を整えるのをはじめ、体に有用なさまざまな働きを持ちます。
主な働きを調べてみました。
【腸内環境を整える】
悪玉菌は酸性を嫌い、アルカリ性を好む性質を持ちます。
逆に善玉菌はアルカリ性を嫌い、酸性を好みます。
乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくり、腸内を弱酸性に保ちます。
腸内が酸性に傾くことで、悪玉菌が増殖しにくい環境になります。
また腸内環境が整うことで、便秘や下痢の予防・改善、肌荒れやニキビの予防などが期待できます。
【免疫機能を向上させる】
腸内には約70%の免疫細胞が集まっています。
私たちの体は、外部から侵入するウイルスや病原菌から守る免疫機能を持っています。
悪玉菌が増えて腸内フローラのバランスが崩れると、免疫の働きが低下し、感染症などを引き起こすリスクが高まります。
乳酸菌は、腸内環境を整えることで、免疫細胞の働きを活性化させると考えられます。
【コレステロール値を下げる】
コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸をつくるために必要な脂質で、食事から摂取したり肝臓などで合成されたりしたものが血液中を流れています。
コレステロール値が高いと血流が悪くなり動脈硬化を引き起こし、血管が詰まると心筋梗塞、脳梗塞などの原因になります。
一部の乳酸菌には、コレステロール値を低下させる働きが期待できるものもあるそうです。
【花粉アレルギーを改善する】
腸内に悪玉菌が増えると、免疫全体が過敏になり、本来無害なものにも反応しやすくなるそうです。
花粉症は、体内に入ってきた花粉に対する免疫反応が過剰になり、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどのアレルギー症状が起きる状態です。
乳酸菌で花粉症の症状が改善したという研究結果が、多数報告されています。
【グルテンを分解する】
腸内環境の話から少しそれますが、「サワー種(だね)」というパンの発酵種は、寝かせる間に、空気中に浮遊する乳酸菌が付いて、小麦やライ麦に含まれる糖類(麦芽糖)を栄養源として増えます。
サワー種に含まれる乳酸菌にはグルテンを分解する働きがあると言われており、発酵時間が長ければ長いほどグルテン量を減少させるそうです。
<参考サイト>
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット 腸内細菌と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
・どうして腸は大切なの?腸内フローラ編
https://hc.kowa.co.jp/the-guard-kowa/intestinal-flora/what/#whatE
・腸内環境を整える乳酸菌は数が命!知っておきたい腸活のポイントとは。
https://www.tamapla-ichounaika.com/knowledge/category/post-32490/
・腸内細菌、乳酸菌と腸のお話
https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/report/intestinal_bacteria/
・サワー種とは何ですか?
https://faq.pasconet.co.jp/faq/show/5?category_id=10&return_path=%2Fcategory%2Fshow%2F10%3Fpage%3D3%26site_domain%3Ddefault%26site_domain%3Ddefault%26sort%3Dsort_access%26sort_order%3Ddesc%26type%3Dshow&site_domain=default
・サワードウを作るコツやおすすめの小麦粉は?
https://bakerista.jp/archives/mag/sourdough
⑥ 知っておきたい、乳酸菌の効率的な摂り方や食べ方の工夫
乳酸菌などの腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物を「プロバイオティクス」と言います。
また、プロバイオティクスの栄養源となりその増殖を助けるオリゴ糖などを「プレバイオティクス」と言います。
体内の乳酸菌を活躍させるには、「プロバイオティクスである乳酸菌を多く含む食品を摂取する」、「プレバイオティクスであるオリゴ糖や食物繊維を摂取する」の2つの方法があると考えられています。
【乳酸菌を多く含む食品を摂取する】
食品から直接摂取した乳酸菌は、腸内にある程度の期間は存在しても、住みつくことはないと考えられています。
そのため、毎日続けて摂取することが大切だそうです。
余分な乳酸菌は便として排出されますが、特定の食品ばかりに偏ると乳酸菌以外の成分として含まれる脂質や糖質、塩分などを過剰摂取してしまうことがあるため、バランスの良い食生活を心がけることが必要とのことです。
【オリゴ糖や食物繊維を摂取する】
腸内にもともと存在する善玉菌のエサとなるものを摂取するという考え方です。
オリゴ糖は、大豆・タマネギ・ネギ・ゴボウ・ニンニク・アスパラガス・バナナなどの食品に多く含まれます。
消化酵素で分解されることはほとんどなく、消化吸収されずに大腸まで届きます。
食物繊維は、納豆・里芋・ゴボウ・キノコ類・海藻などに多く含まれます。
腸内で分解されて善玉菌のエサになる他、腸内の悪玉菌や有害物質を減らす作用も期待できます。
※写真はPhotoAC「豚肉のサワークリーム煮」より
<参考サイト>
・乳酸菌の効果とは?摂取方法や乳酸菌を含む食品を紹介
https://bio-three.jp/contents/lacticacidbacteria-effect.html
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べきくらげ麺 編
腸活と言えば…。
乳酸菌とは直接関係ありませんが、腸内環境を調えるのに良いと言われる「きくらげ」。
そのきくらげを使用した「小豆島手延べきくらげ麺」をご紹介させていただきます。
上述の「プレバイオティクス」と言われる食品の中に、キノコ類も含まれていましたから、乳酸菌との相性も良いでしょうか。
食物繊維や鉄分など、栄養価の高いきくらげ。
小豆島の佃煮でも人気のきくらげを粉末にして練り込んでいます。
ちょっと贅沢に希少な香川県産きくらげを使った、ぷりぷりつるるんとした独特の食感を楽しめる手延べの細麺タイプです。
乳酸菌を含む食品のキムチと一緒にきくらげ麺とあったかスープで、冬の美味しい「腸活」ならぬ「麺活」はいかがでしょうか。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、新製品開発のためにデータベース的にいろいろな素材や成分について調べたものを綴ったものです。色々な食品やそれにまつわる産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、幅広く食品の知識を広げることができれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.30
麺究者への道/醤油について研究してみる
前々回のVol.28のブログでは「発酵」「熟成」について調べてみました。
その時のブログでも書いたのですが、手延べ素麵の進化を考えたときに、天然の美味しさを引き出してくれる「発酵」「熟成」はとても重要なキーワードだと捉えています。
そこで今回のブログからは、古来から「発酵」「熟成」の機能的な部分を活かしつくられるさまざまな食品について調べてみたいと考えました。
その第一弾が「醤油」です。
「発酵」「熟成」の歴史の順番で行くと、他のものもあるかと思いますし、醤油よりも先にできた味噌から取りあげるべきかも知れませんが、そこは、小豆島の製麺所です。
小豆島と言えば、醤油!!
石井製麺所の近くには、大小の醤油工場(蔵元)が数多く並ぶ「醤の郷」という観光スポットもあります。
日本中を見まわしても、この距離感にこれだけの醤油会社が並ぶことは珍しいのではないでしょうか。
「醤の郷」を車で通り過ぎる際にも、醤油工場独特の香りを感じることができ、“小豆島を感じる香り”のひとつだと思います。
さらにすごいのは、小豆島にあると言われる大小約20軒ほどの醤油会社(蔵)の醤油の味がひとつずつ違い、特徴があることだと思います。
また、各会社・蔵の特徴を活かした商品も多く、小豆島を長年支える産業のひとつです。
さらに、素麵と切っても切れない関係の“そうめんつゆ”も各社で特徴があります。
香り、味、色、バリエーション、活用方法などもさまざまで、味にこだわったものから、幅広い使用用途がある便利な調味料までいろいろあるので、機会があればぜひ食べ比べていただきたいものです。
近代的な醤油工場だけではなく、小豆島の醤油づくりの特徴のひとつ「木桶(こが)醤油」も多く見られます。
ある醤油会社の社長様にお聞きしたお話によると「木桶でつくる醤油は全国にもあるが、その醤油をつくる木桶の約半数は小豆島にある」そうです。
小豆島の醤油の歴史も小豆島手延べ素麵と同じく約400年間、伝統を守り続けて今日に至ります。
その中で、醤油会社は進化し、次の世代へ残す醤油や調味料を開発されています。
私も見習って、次の世代に残す手延べ素麵をつくっていきたいと思います。
今回、「発酵」「熟成」の勉強のためのブログを書いていますが、私三代目は島に戻ってから、実はまだ醤油会社を(きちんと)見学したことがありません。
まずは予備知識として、醤油について調べてみて、その次は自分の目で確かめてみたいと思います。
今回は素麵もそうですが、小豆島の産業のひとつ、「醤油」について深掘りして、ご覧いただく方と共有できれば幸いです。
最後までお付き合いの程、どうぞよろしくお願いいたします。
【目次】
① 日本の食の歴史と共に進化してきた醤油の歴史
② 知ってるようで知らない?!醤油の三大産地
③ 醤油の色や味わいは発酵・熟成により生まれる
④ 醤油づくりに活躍する微生物とは
⑤ 昔ながらの「木桶仕込」と近代的な「タンク仕込」の違いとは
⑥ 醤油の仲間?世界にもある「魚醤」
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》 丸島醤油株式会社『味醤油』
① 日本の食の歴史と共に進化してきた醤油の歴史
醤油のルーツは、紀元前700年頃の中国の古文書「周礼(しゅうらい)」に記述のある「醤(ひしお)」と言われています。
「醤」とは当時の塩蔵品の総称だったようです。
原料別に「草醤(くさびしお)」「肉醤(ししびしお)」「穀醤(こくびしお)」の3種類に分けられ、「草醤」は漬物、「肉醤」は塩辛類で、「穀醤」が現在の醤油や味噌の原型と考えられています。
日本では飛鳥時代のものと思われる木簡に、「醤」の文字が見られます。
大宝律令によると、宮廷の料理を司る「大膳職(だいぜんしき)」に属する「醤院(ひしおつかさ)」で、大豆を原料とする醤がつくられていたとされます。
奈良時代から平安時代の宮中宴会では、膳の上に「四種器(よぐさもの)」という4種類の調味料「塩・酒・酢・醤」が乗っていたという記録があり、醤の形状が固形から液状へと変化したのもこの頃のようです。
大豆が日本で広く生産されるようになってきた鎌倉時代には、醤の一つである味噌の製造過程において、味噌桶の底に溜まった液体を「溜(たまり)」として利用していたそうです。
これが醤油の原型とされています。
室町時代の中頃には、現在の醬油に近いものがつくられるようになりました。
1597年(慶長2年)の日常用語辞典である「易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)」に、「醤油」の文字が登場しています。
室町時代の末頃から、関西を中心に醤油の醸造が盛んになりました。
江戸時代の中期には、大阪・堺、和歌山・湯浅、兵庫・龍野などの産地で醬油の量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上したと言われ、醬油が庶民にも広く普及した時期であったようです。
江戸幕府が開かれたことに伴い、経済や文化も江戸を中心として発展していきます。
江戸初期には、関西で生産された味や品質の良い「下り(くだり)醤油」が大量に江戸へ送られたという記録が残っています。
江戸時代中期になると関東でも様々な産業が栄え、今の千葉県の銚子や野田が醤油の一大産地となり、江戸の人々の嗜好に合わせた「濃口醬油」が、関東で普及したようです。
江戸時代後期になると、寿司・天ぷら・蕎麦などの日本的な食文化が形成され、醤油は庶民の調味料として定着しました。
明治時代中期から大正時代にかけて、醤油製造の機械化や企業設立など近代化が進み、大量生産体制に移行していきました。
現在、多くの醤油が自動化された工場でつくられています。
その一方で、消費者の本物志向や自然志向の高まりにより、伝統製法でつくられる「天然醸造(本醸造)醤油」の価値が見直されています。
<参考サイト>
・しょうゆの歴史を紐解く
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html
・しょうゆを知る 歴史
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/history
・日本食文化の醬油を知る
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/mame01-a.html
② 知ってるようで知らない?!醤油の三大産地
醤油の代表的な三大産地として知られているのが、「千葉県(銚子・野田)」・「兵庫県(龍野)」・「香川県(小豆島)」です。
それぞれの成り立ちや特色について、調べてみました。
【千葉県】
「キッコーマン」や「ヤマサ醤油」などの大手醤油メーカーが本社を置く千葉県。
銚子と野田は、江戸川と利根川の水運を利用し、原料の入手や大消費地である東京への運搬にも都合がよく、醤油の産地として発展しました。
千葉県の醬油の生産量は、日本全体の3分の1を占めています。
千葉でつくられる醬油の多くは、濃口醬油です。
※写真はPhotoAC「関宿城(野田市)」より
【兵庫県】
日本の醤油生産量の約15%を占めます。
兵庫県西部に位置する龍野市は、淡口(うすくち)醬油の一大産地です。
播磨平野の豊かな小麦、山間部でとれる良質の大豆、赤穂の塩、清らかで鉄分の少ない川の水が、淡口醤油づくりに適しているとのことです。
「ヒガシマル醤油株式会社」は龍野市の企業です。
※写真はPhotoAC「播磨の小京都・龍野の町並み」より
【香川県】
小豆島では、約400年前から伝統的な木桶(こが)仕込みで醬油がつくられてきました。
明治時代末頃には約400軒の蔵元があったとのことです。
現在、日本にある木桶のうち半数にあたる約1000本が小豆島にあり、約20軒の醤油会社(蔵元)が密集しているそうです。
海に囲まれておりもともと製塩業が盛んでしたが、瀬戸内の各地で塩が生産されたため、過剰となってしまった塩を原料として活かせる醤油づくりが始められたとされています。
小豆島の醤油づくりの起源は諸説あるそうですが、大阪城を築城するための石材を切り出す部隊が持っていたのが醤油の前身となる調味料で、小豆島の人がその製法を学んだことが始まりだそうです。
穏やかな気候が醤油づくりに不可欠な麹(こうじ)の発酵に適していること、天下の台所である大阪に近いこと、大豆や小麦などの原料の運送にも便利な立地であることなどから、醬油の産地として発展を遂げたと考えられています。
話が少しそれますが、小豆島には「香川県産業技術センター発酵食品研究所」という組織があります。
明治38年に約400軒存在した醤油の蔵元と地元自治体が、連携して醸造技術の向上を目指すために設立した「組合立小豆島醤油醸造試験場」が始まりで、現在は香川県に移管されています。
醤油調味料だけでなく、佃煮などの加工品、手延べ素麵、オリーブなど、小豆島の地域食品産業全体の新商品開発や品質管理に関する支援を行っています。
また勉強会を実施し、大学や他の研究機関から仕入れた最新の情報の提供や、醤油製造に携わって日が浅い人向けの講習などを行っているそうです。
現在は、石井製麺所も大変お世話になっています。
地域密着型で地域における課題に取り組み成果を挙げている、住民との関わりが見える、などが評価され、平成24年度には「地域づくり総務大臣表彰」を受賞されています。
小豆島にはこうした、醤油などの技術をしっかりと残す・伝える・科学する心強い味方があるのです。
※写真は「香川県発酵食品研究所」
<参考サイト>
・【醤油】歴史と日本の三大名産地の特徴を知ろう!
https://thegate12.com/jp/article/172#content-2
・醤油と聞いて思い当たる地域といえば
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0408
・小豆島醤油の歩み
https://shima-shoyu.com/history/
・香川県産業技術センター発酵食品研究所(動画ですので音量などご注意ください)
https://www.youtube.com/watch?v=iQtjaoQwpY0
③ 醤油の色や味わいは発酵・熟成により生まれる
醬油は、大豆と小麦、塩を発酵熟成させたもので、その製造方法から3つに分けることができます。
大きな違いは「アミノ酸液」を入れているかどうかで、さらに入れるタイミングによって分類されます。
アミノ酸液は、大豆などの穀物を分解させた旨味成分を凝縮した液体です。醤油の3つの製法をご紹介します。
【本醸造方式】
昔ながらの伝統的な製法で、醤油の生産量全体の約8割を占めています。
アミノ酸液を入れず、麹菌本来の力を利用してつくる醤油で、原材料費と時間がかかります。
深い旨みと、芳醇な香りが特徴。
蒸した大豆と炒った小麦に「種麹(たねこうじ)」を加えて麹をつくります。
これを食塩水と一緒にタンクに仕込んで「諸味(もろみ)」をつくります。
攪拌を重ねながら約6~8カ月寝かせると、麹菌や酵母、乳酸菌などが働いて、分解・発酵・熟成され、醤油特有の色・味・香りが生まれます。
麹菌の働きにより、大豆のタンパク質は分解されて旨味成分のアミノ酸に変わり、小麦のデンプンは分解されて甘味のあるブドウ糖に変わります。
【混合醸造方式】
本醸造方式でできた諸味にアミノ酸液などを加えて、1カ月以上撹拌しながら発酵熟成させる製法。
アミノ酸液特有の旨みを生かした醤油になります。
化学的につくられた必要成分を添加することで、短期間で効率よく製造することができます。
アミノ酸液や、大豆などにタンパク質分解酵素を加えて分解させた「酵素分解調味液」、小麦グルテンなどを麹により発酵・分解させた「発酵分解調味液」などを加えることにより、旨味が添加されます。
また、砂糖や果糖ブドウ糖液糖、水あめなどの糖類、またはステビアや甘草などの甘味料を加えることにより、甘味を添加する場合もあります。
【混合方式】
本醸造形式でつくられた「生揚げ(きあげ)醬油」に、アミノ酸液などを混ぜる製法。
混合醸造方式と同様、化学的につくった必要成分を添加することで、短期間で効率よく製造することができます。
醤油は日本農林規格(JIS)により5種類に分類されています。
色の濃さは熟成期間に比例しており、①濃口醬油に比べて②淡口醤油や③白醤油は熟成期間が短めで、旨みは少なめで塩分濃度は高め。
④再仕込醤油や⑤たまり醤油は熟成期間が長く、旨みが多く濃厚な味わいです。
それぞれの製法や特徴について紹介します。
①【濃口醬油】
全国の醤油出荷量の約84%を占める、最も一般的な醤油。
コクのある味、食欲をそそる芳ばしい香り、透明感のある明るい赤橙色が特徴です。
塩味のほか、深い旨味、まろやかな甘味、さわやかな酸味、味をひきしめる苦味を合わせ持っています。
調理用にも卓上でも幅広く使える万能調味料です。
②【淡口醤油】
醤油出荷量の約13%を占める、関西発祥の色の淡い醤油。
基本的な製法は濃口醤油と同じですが、色を淡くするために仕込みの段階で、発酵・熟成をゆるやかにさせる食塩を、濃口より約1割多く使用しています。
また味をまろやかにするため、米を糖化させた甘酒を使います。
素材の色を美しく仕上げる炊き合わせやふくめ煮などの調理に使われます。
③【白醤油】
愛知県碧南市で生まれた、淡口醤油よりさらに淡い琥珀色の醤油。
味は淡白ですが甘味が強く、独特の香りがあります。
脱皮・精白した小麦を主原料に、炒った後皮をむいた大豆を少量使い、約3カ月なるべく低温を保ってつくられます。
色の薄さと香りを生かした吸い物や茶碗蒸し、またせんべいや漬物などにも使用されます。
④【再仕込(さいしこみ)醤油】
山口県柳井地方で生まれ、山陰から北九州地方にかけて多くつくられてきた醤油。
麹を食塩水ではなく生揚げ醤油で仕込むため「再仕込み」と呼ばれます。
色・味・香りともに濃厚で、別名「甘露しょうゆ」とも言われます。
刺身や寿司、冷奴など、主に卓上で使われます。
⑤【たまり醤油】
主に中部地方でつくられる色の濃い醤油。とろみと濃厚な旨み、独特な香りが特徴。
大豆と少量の小麦を蒸して「味噌玉麹」をつくり、食塩水で仕込みます。
底にたまった液を汲み掛けながら約1年間発酵・熟成させます。
諸味から自然に分離されるものを「生引き溜り(きびきたまり)」、後に残った溜味噌を搾ったものを「圧搾溜り」といいます。
寿司や刺身などの卓上用に適するほか、加熱するときれいな赤みが出るので、照り焼きなどの調理用や、佃煮、せんべいなどの加工用にも使われます。
<参考サイト>
・しょうゆの製造法
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/soysauce.html
・しょうゆを知る 製法
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/process
・ しょうゆを知る 種類
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/kinds
・本醸造・混合・混合醸造/醤油の製法による3分類
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0312
・醤油の種類
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0301
④ 醤油づくりに活躍する微生物とは
醤油づくりには微生物の働きが不可欠です。
その代表格が「麹菌」「乳酸菌」「酵母菌」で、この順番で活躍します。
製法の話と重複する部分もありますが、それぞれがどのような働きをするか、整理してみます。
【麹菌】
蒸した大豆と炒った小麦に種麹を付け、3日ほどかけて繁殖させます。
これにより生み出された酵素が、大豆のタンパク質をアミノ酸に、小麦のでんぷんをブドウ糖に、それぞれ分解します。
麹は米や麦などの穀物にコウジカビを繁殖させたもので、麹菌を培養するもととなる種菌が、種麹です。
醤油の出来を左右するこの種麹を専門に生産し、醤油の製造業者に卸す「種麹屋」というものがあり、別名「もやし屋」とも呼ばれています。
米に麹菌を生やして熟成させた状態を「よねのもやし」と言う、京都の酒づくりで使われていた言葉が由来だそうです。
メーカーの要望に応じて、数多くある麹菌を単独または何種類か培養し、保存できるように乾燥させて種麹をつくります。
現在、種麹屋は日本に数件しかないとのことです。
【乳酸菌】
有機酸をつくりだす微生物で、醤油にさわやかな酸味や味の伸び、深みを与えます。
乳酸発酵が進むほど、諸味が酸性になり、酵母菌が活躍しやすい環境になります。
【酵母菌】
アルコール発酵をする微生物。
醤油にはアルコールが数%含まれていて、皿に注いだ時にアルコールが揮発することで香りが立つのだそうです。
醤油づくりでは主に2種類の酵母が働いています。
まず「主発酵酵母」が、ブドウ糖をもとにアルコールを生み出し、乳酸菌がつくった有機酸と化学反応して、複雑な香りを生み出します。
次に「後熟酵母」がゆっくり活動し、味に深みを与えます。
このことから、熟成期間が長いと深い味わいになるのだそうです。
<参考サイト>
・醤油づくりの微生物(麹菌・乳酸菌・酵母菌)
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0707
・日本酒や醤油、味噌に欠かせない「種麹」を育てる『もやし屋』をご存じですか?
https://cuisine-kingdom.com/hishiroku/
・酵母菌
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0711
⑤ 昔ながらの「木桶仕込」と近代的な「タンク仕込」の違いとは
醤油の製法の説明で「麹をタンクに仕込む」とありましたが、伝統的な製法では木桶を使っています。
木桶仕込とタンク仕込ではどのような違いがあるのでしょうか。
【木桶仕込】
木桶の内部に微生物が住み着き、何十年の時間をかけて仲間を増やし独自の生態系をつくっていきます。
「蔵付き酵母」などと言われるもので、その蔵でしか味わえない風味や味わいをつくり出します。
自然の温度変化に応じて発酵するので、仕込みの年ごとに微妙に味が変化することもあり、管理状態によっては品質にバラつきが出る場合もあります。
産地紹介にもありましたが、香川県の小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地です。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から木桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいや旨みを引き出せるそうです。
【タンク仕込】
屋外に設置でき、大容量で大量生産に向いています。
プラスチックや鉄製の素材なので微生物は住み着かず、洗浄してまた新たに微生物を添加し、温度コントロールもできるなど管理がしやすく、常に同じ環境で安定した品質を生み出すことができます。
<参考サイト>
・木桶とタンクの違い
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0715
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品「本場の本物」小豆島桶(こが)仕込醤油
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/891.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
⑥ 醤油の仲間?世界にもある「魚醤」
醤油のような発酵調味料のひとつに「魚醤」があります。
魚醤は、生の魚を塩で漬け込んで発酵させ、魚の旨味成分を凝縮させた液体です。
それぞれの土地で獲れる魚が使われており、独特の濃厚な旨味とにおいがあります。
海に囲まれた日本では、古くから魚醤が使われており、日本三大魚醤と呼ばれる「しょっつる」「いしる」「いかなご醤油」が有名です。
<日本三大魚醤>
【しょっつる】(秋田県)
「塩魚汁」とも表記されます。
ハタハタやイワシを塩漬けし、発酵させたもの。
魚の頭と内臓などを取り除き、常温で1年以上漬け込むのだそう。
20世紀前半頃までは多くの家庭に自家製のしょっつるがあったそうです。
淡口醤油のような色で、くせは少なく、塩気が強いのが特徴です。
しょっつるを使い、ハタハタやセリを入れた「しょっつる鍋」は、秋田の有名な郷土料理です。
【いしる】(石川県)
能登半島でつくられる調味料。
地元では、イカの内臓を原料とし、風味が強くてくせのある味わいの「いしる」(地区によっては「いしり」)、イワシやサバなどの青魚を原料とし、臭みの少ない「よしる」と使い分けていますが、名前は混在していることもあるそうです。
煮物の隠し味や刺身、郷土料理などに使われています。
【いかなご醤油】(香川県)
イカナゴを塩漬けし、発酵させたもの。
樽の中で室温30度前後で6カ月以上熟成させてつくられます。
しょっぱさの中にもまろやかさがあり、豆腐や刺身、野菜の煮つけなどに使われることが多いとのこと。
香川県では1950年代頃まで主に使用されていましたが、大豆醬油の人気により生産が途絶えてしまい、1998年頃に伝統の味として生産が再開されたそうです。
世界でも、東アジアを中心とする各国で魚醤が使われています。
世界は広いです。
<世界の魚醤>
【ナンプラー】(タイ)
カタクチイワシを使い、約1~2年熟成させてつくられます。
魚の旨みが非常に強い醤油のような味わいで、加熱して使われることが多いです。
タイ料理の定番である「トムヤムクン」や「ガパオライス」にも使われます。
【ニョクマム(ヌクマム)】(ベトナム)
イワシやアジなどの青魚を使い、半年~1年ほど熟成させます。
独特の香りが強く塩気は弱めで、生春巻きやフォーなどに少量が使われます。
【エクジョ】(韓国)
イワシが原料ですが、生臭さや独特な風味は抑えらえていて食べやすいのが特徴。
キムチの隠し味としてもよく使われるそうです。
【コルトゥーラ】(イタリア)
カタクチイワシの頭と内臓を取り除き、塩漬けにして約3~4年熟成させます。
マイルドな風味で、パスタやバーニャカウダの隠し味として親しまれています。
【ガルム】(古代ローマ)
古代ローマ時代、ヨーロッパではアンチョビの内臓を原料とする「ガルム」という魚醤が日常的に使われており、ローマ帝国の滅亡とともに衰退したとされます。
最近では現代人の味覚に合わせ、小魚や小エビを塩漬けにした新しいガルムがつくられ、イタリアの味として人気を集めているとのこと。
<参考サイト>
・魚醤は醤油なの?
https://www.s-shoyu.com/knowledge/0316
・日本が誇る伝統の発酵食品「魚醤」の豆知識
https://www.maruichi.com/delicious/file/post-24.php
・魚醤とは?種類やそれぞれの特徴・レシピもご紹介
https://delishkitchen.tv/articles/1177#contents8
・料理の味を引き立たせる能登生まれの調味料
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/33/59isiru_yosiru.pdf
・日本三大魚醤を知って受け継ぐ食文化
https://tempe-oneface.com/kinkatsu/15179/
・世界各国のうま味文化
https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/culture.html
・魚醤とは?特徴や使い方、醤油・ナンプラーとの違いについても解説
https://prezo.jp/column/4688
⑦ 《美味しい小豆島の食財紹介》 丸島醤油株式会社『味醤油』
若者からご年配の方まで、卵かけごはん用から煮物まで、希釈し天つゆにめんつゆにもってこいの、だし入り万能醤油です。ゆでたてうどんに3倍希釈でかけて、ぶっかけうどんをお楽しみください。
本醸造醤油にだしを加えた万能醤油です。かけ醤油、めんつゆ、天つゆ、煮物にご利用いただけます。
(丸島醤油株式会社ホームページより抜粋)
石井製麺所のギフトセットにセットさせていただいている『味醤油』は、大変人気があり、単品の販売はないのかとお問い合わせを頂戴します。
小豆島のスーパーやお土産店で、手軽に手に入りますが、ご近所にあるスーパーとは違いがあるでしょうか。
お醤油としてはもちろん、希釈によってはお出汁の香る調味料として便利な一本です。
石井家でももちろん常備。
またこの『味醤油』が、石井製麺所の麺にピッタリだと考えセットにしておりますので、ぜひ石井製麺所の手延べ麺とご一緒にお試しください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ半生うどんセット》 https://141seimen.thebase.in/items/79953733
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.29
栄養成分の機能性について/ポリフェノール
ちょっと堅いテーマなのですが、以前から新しい手延べ麺の開発をおこなっていく上で、「健康づくりに役立つ」ような手延べ麺ができないかと模索しています。
手延べ素麵や手延べ麺にそこまでを求められていないかもしれませんが、「素麵」の起源は健康を願うものであり、お中元やお歳暮でも相手様の健康などを願って贈るものとして、重宝されてきたと思います。
石井製麺所でも、その“起源”に立ち返り、新しい麺を、健康に良い食べ物を、皆さんに笑顔をお届けできる美味しい手延べ麺を考えていきたいと思っています。
昨年の夏には東京の食品展示会にも参加し、さまざまな企業様が健康に良い麺の開発や食品の提供を考えていらっしゃいました。
興味のあるブースには立ち寄り、より詳しいお話を伺ったりしています。
現在は、県の施設や小麦粉の製粉メーカー様にもご協力をいただきながら、新商品開発を続けています。
その中で、「健康に良い」とはなんだろう?と、ふと考えることがあります。
美味しさはもちろんですが、化学調味料や香料、着色料を入れたり、栄養剤を入れたりすることは違うと考えています。
ただ、世の中で健康に良いと言われているものや、人気のある食べ物などを研究することは大切かなと考え、これまではさまざまな産地の手延べ麺やいろいろな種類の麺料理について調べてきました。
今回からはちょっと焦点を絞って、栄養素についてきちんと整理してみたいなと考えました。
調べてみると知らなかったと言うよりも、認識が間違っていたことや、新しい気づきもありました。
今回は特に、昨今よく耳にする「ポリフェノール」についてです。
皆さんはご存じですか?
言葉は知っていますが、その必要性や働きについてはあまり詳しくは知りませんでした。
そのことについていろいろと調べてみましたので、良ければご参考にいただけましたら。
今回もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
【目次】
① 注目の抗酸化物質・ポリフェノールとは?
② 活性酸素を“除去”するポリフェノール
③ ポリフェノールの構造の違いにより働きも多種多様
④ ポリフェノールが豊富な食品・食材とは?
⑤ 効率的なポリフェノールの摂り方や食べ方の工夫
⑥ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味編
① 注目の抗酸化物質・ポリフェノールとは?
自然界には8,000種類以上のポリフェノールが存在すると言われています。
ポリフェノールはほとんどすべての植物に含まれている、色素や苦味の成分となる化合物で、植物が光合成を行うときにできる抗酸化物質の総称です。
紫外線や乾燥、害虫、塩分、周囲に生息する菌などのストレスから身を守るために生成されるとのことです。
ポリフェノールは、ビタミンやミネラルなどの「栄養素」には分類されていませんが、人間の体の調整役としてとても重要な役割を持つもので、健康のために意識して摂取したい成分です。
ポリフェノールが注目されるようになったきっかけは、1992年にフランスの科学者であるセルジュ・ルノー博士が発表した「フレンチ・パラドックス」に関する研究です。
フランス人の食生活は、肉やチーズ、バターなどの高カロリーなものが多く、心臓系の病気を発症する人が多くても不思議ではありません。
しかし実際には、他の欧州諸国に比べて心臓病による死亡率が低いことが分かりました。
この矛盾の要因が、フランス人が日常的に赤ワインを飲んでいることによると考察したのがセルジュ・ルノー博士です。
この発表により、赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールが健康に役立つと考えられ、世界的に赤ワインブームが起こったそうです。
日本でポリフェノールが注目されるようになった背景のひとつとしては、食生活の変化が挙げられます。
高度経済成長期の1960年代、食の多様化が進みインスタント食品なども開発されました。
1980年代には食べ過ぎや生活習慣が問題となり、栄養学界では、栄養や嗜好に次ぐ食品の第三の働きとして「体調調節面での働き」の研究が進んだそうです。
その対象とされた成分が、ポリフェノールやカロテノイドなどの非栄養素成分だったとのことです。
ところで…知ってるようで知らないのが、「活性酸素」と「抗酸化」というワード。
「抗酸化」というのが、健康に良いというのは知っているつもりですが、なぜ、「抗酸化」が体に良いのでしょうか?
「活性酸素」が体に悪いのでしょうか?
このあたりを正しく理解して、「抗酸化」作用のある食べ物や栄養素を健康のために上手に摂取したいですよね。
<参考サイト>
・ポリフェノールの力
https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/konnichiwa/201102/navi.html
・ポリフェノールの種類と効果と摂取方法
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/polyphenol.html
・ポリフェノールとは?体への効果と摂取できる食品・飲み物を解説!
https://medipalette.lotte.co.jp/bodycondition/979
・ポリフェノール
https://himitsu.wakasa.jp/contents/polyphenol/
・ポリフェノールの種類と効果を解説!最適な1日の摂取量とは?
https://zenb.jp/blogs/column/polyphenol01
② 活性酸素を“除去”するポリフェノール
「ポリフェノール」の「ポリ」は「たくさんの」の意味とのこと。
「フェノール」は、ベンゼン環(炭素原子6つで構成される平面六角形の構造のこと)に、水酸基(OH)が結合した化合物です。
水酸基には、活性酸素をとらえて除去する能力=抗酸化力があるため、ポリフェノールは抗酸化作用を持つ成分と言えるそうです。
活性酸素は人間の体内に存在している物質で、外界から侵入してきた細菌やウイルスを撃退する役目を担っていますが、ストレスや喫煙、紫外線などの様々な要因により、体内で必要以上に増加してしまいます。
増えすぎた活性酸素が体内のタンパク質や脂質、DNAなどを傷つけることにより、老化や生活習慣病などの原因になったり、肌を酸化させることでシミやしわを引き起こしたりすると考えられています。
ポリフェノールは抗酸化作用を持ち、活性酸素を除去することにより、さまざまな病気に対抗する力やアンチエイジングの働きが期待されています。
詳しく分かっていなかった点ですが、「活性酸素」が悪いわけでなく、抗酸化防御機構と呼ばれるものを正常に保つために、食べ物などから抗酸化物質を上手く摂取していくことが大切だということですね。
石井製麺所でも、「健康に良い素麺とは何か?」を常に考え、化学物質や栄養剤に加え香料や着色料などを混ぜた商品ではなく、自然由来の抗酸化物質(ポリフェノール)を一緒に摂取できるような手延べ麺は、これからの食生活でも必要性が高まるのではないかと考えています。
③ ポリフェノールの構造の違いにより働きも多種多様
ポリフェノールは、その構造の違いによりいくつかのカテゴリーに分けられます。
中でも研究が進んでいるのがフラボノイド類で、食品の機能性研究の対象とされています。
「フラボノイド」は、狭義では化学構造の違いにより、「フラボン」「フラボノール」「フラバノン」「フラバノール」「フラバン」「イソフラボン」などに分類されます。
広義では、化学構造で2つのベンゼン環が炭素3つで結合された基本構造を持つものを「フラボノイド系」と言い、赤ワインやブドウの果皮に含まれる「アントシアニン」や、緑茶に含まれる「カテキン」、ごまに含まれる「セサミン」も、フラボノイド系に分類されるそうです。
フラボノイド類以外でも、コーヒーに含まれる「クロロゲン酸」、カレーの色素である「クルクミン」などは一般にも知られており、食品の機能性研究の対象にもなっています。
ポリフェノールの代表的なものを調べてみました。
抗酸化作用の他にも、種類によりさまざまな健康効果が期待できるようです。
【イソフラボン】
主に大豆に含まれるフラボノイド。ほとんどは胚芽部分に含まれ、種皮には含まれないことが分かっている。
油揚げや豆腐、納豆、きな粉などからも摂取できる。
女性ホルモンに似た働きをするため、更年期症状の緩和に役立つとされる。
また、骨からカルシウムが流れ出るのを防ぎ骨粗しょう症予防にも期待される。
【アントシアニン】
ブルーベリーや赤シソ、紫キャベツなどに含まれる赤~紫色の色素成分。
目の網膜に存在するロドプシンというタンパク質の再合成を促進する働きがあり、視力回復が期待できる。
【カテキン】
緑茶の渋み成分で、「タンニン」とも呼ばれる。
緑茶には8種類のカテキンが含まれ、その重さの約15〜20%を占める。
殺菌作用や、体内の活性酸素やウイルスの働きを抑制し、免疫機能をアップさせる作用で、風邪などの予防に役立つ。生活習慣病予防にも期待される。
【セサミン】
ごまの種子に含まれるゴマリグナンというリグナン類の一種。
ごま1粒に1%未満しか含まれない希少な成分。
肝臓の機能を高める働きがあり、二日酔いや悪酔いの予防に期待できる。
コレステロール値や血圧を正常に保つ働きもあるとされる。
【フラボノール】
天然に多く存在し、野菜や果物、穀類のほとんどに含まれるフラボノイド。
タマネギやエシャロットに含まれる「ケルセチン」、ニラやブロッコリーに含まれる「ケンフェロール」が知られている。
【ルチン】
蕎麦に多く含まれ、イチジク、トマト、アスパラガスなどにも含まれる。
毛細血管を強くし、血流改善に役立つと考えられている。
全身の血行が良くなることで、冷えや肩こりの改善にも期待される。
【フェルラ酸】
玄米に多く含まれる。
アミノ酸の一種であるチロシンに似た構造で、メラニンの生成を抑制し、シミやしわ予防が期待できる。
【クルクミン】
カレー粉の主成分であるターメリック (ウコン) に含まれる黄色の色素。
スパイスや着色料として利用されている。肝機能の強化や、アセトアルデヒドを分解して二日酔いや悪酔いを予防する働きがある。
【カカオポリフェノール】
チョコレート(カカオ豆)に含まれる。血管を広げ血圧を低下させる作用、LDLコレステロールの酸化を抑え動脈硬化予防、アレルギーの改善などが期待される。
【クロロゲン酸】
コーヒーの生豆中の約5〜8%を占め、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーにも含まれることが分かっている。
ゴボウ、サツマイモ、ジャガイモなどにも含まれる。
脂肪の消費量がアップし、内臓脂肪を低減するとされる。
長命草にも多く含まれるポリフェノールです。
<参考サイト>
・No.127 今さら聞けないシリーズ ポリフェノール
https://www.tanaka-cl.or.jp/aging-topics/topics-127/
・フラボノイドの種類と効果と摂取量
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/flavonoid.html
・セサミン
https://himitsu.wakasa.jp/contents/sesamin/
④ ポリフェノールが豊富な食品・食材とは?
人にはもともと抗酸化防御機能が備わっていて、体内でも抗酸化作用を持つ物質を生み出し、余分な活性酸素の除去をおこなっています。
しかしながら体内で抗酸化物質を生産する力が足りなくなるため、食品から食べて補う必要が出てきます。
そのため、厚生労働省でもポリフェノールの摂取やポリフェノールを多く含む食べ物の飲食を勧めています。
ポリフェノールを多く含む、食べ物や飲み物を知って上手に生活に取り入れていくのも良いですね。
ただし、積極的に摂りたい成分ですが、健康リスクもあるので過剰摂取には気をつけましょう。
【赤ワイン】
100gあたり230mg、500種類以上のポリフェノールを含む。
抗酸化作用で動脈硬化を予防し、心臓病のリスクを低下させる働きが知られるが、アルコールの摂りすぎには注意が必要。
【緑茶】
100gあたり115mg、乾物として15%前後、渋みのもととなるカテキンが豊富に含まれる。
日照量が多いほどカテキンの合成が進むので、春に摘む一番茶より、夏に摘む二番茶や三番茶の方がカテキンの含有量が高くなる。
また葉が成熟するにつれカテキン含有量は低くなる。
茶葉中には形の違う4種類のカテキンが存在し、製造工程において加熱処理を行うことで形が一部変化するため、合計8種類のカテキンが存在する。
抗菌・抗ウイルスや体脂肪低減などの作用が知られている。
【紅茶】
100gあたり96mg。
赤い色や渋みのもととなるテアフラビンやテアルビジンが豊富。
これらは、カテキンが化学反応を起こしたもの。
紅茶の製造工程で、茶葉をもむことにより葉の中の細胞が壊れると、カテキン同士が酵素によって酸化し、カテキン類が複数結合したこれらのポリフェノールになるとのこと。
虫歯菌を抑える、インフルエンザウイルスの感染力を奪うなどの作用があると言われる。
【コーヒー】
100gあたり200mg。
褐色や苦味、香りのもととなるクロロゲン酸が豊富に含まれる。
血糖値の上昇抑制や血圧改善、脂肪の吸収抑制などの作用があり、生活習慣病予防が期待できる。
カフェインも含むため、摂りすぎや摂取する時間帯には注意が必要。
【トマトジュース、野菜ジュース】
100gあたり69mg。
トマトにはリコピンが含まれている。
【チョコレート、ココア】
原料のカカオに、フラバノールが豊富に含まれる。
心血管系の機能を健康に保つ作用や、ストレス軽減、認知機能改善などの働きが報告されている。
糖分の摂りすぎに注意が必要。
【大豆】
イソフラボンが豊富。
大豆以外の食品に含まれるイソフラボン類とは組成が異なるため、働きも異なると考えられる。
大豆由来のイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに構造が似ており、似たような働きで更年期症状の軽減に役立つとされる。
【蕎麦】
蕎麦の実にはルチンが豊富で、特に「韃靼(だったん)そば」と呼ばれる品種は、一般的なそばの100倍以上ルチンを含むとされる。
高血圧予防や、毛細血管を強くする作用があるとのこと。
【ショウガ】
ショウガオール、ジンゲロール、ジンゲロンという3つのポリフェノールを含む。
胃の働きを助ける、血行を促進して体を温める、殺菌などの作用があり、古くから漢方としても使われてきた。
【ブルーベリー】
果皮の濃い青紫色の色素成分であるアントシアニンが豊富。
視覚情報を脳に伝えるために重要なロドプシンという成分の再合成を促進する働きがあり、目の健康に役立つ。
【モロヘイヤ】
生100gあたり640mg。ケルセチンを豊富に含む。
【ゴボウ】
生100gあたり340mg。クロロゲン酸を多く含む。
【ホウレン草】
多くの種類のフラボノイドが含まれる。
【長命草】
機能性に注目が集まる「クロロゲン酸」を多く含んでいることが分析結果でも明らかになっている。
<参考サイト>
・【飲み物と食べ物別】ポリフェノールが多い食品ランキング
https://www.marine-bio.co.jp/polyphenol/article53/
・お茶の成分と健康性カテキン
https://www.ocha.tv/components_and_health/benefits_greentea/catechin/
⑤ 効率的なポリフェノールの摂り方や食べ方の工夫
人はポリフェノールの約8割を水分から、残りを食べ物から摂取しているそうです。
健康のためにポリフェノールを効率よく摂取するには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
水に溶けやすいため、まとめて摂取しても余った分は尿と一緒に排出されてしまうとのことです。
ポリフェノールの持続効果は摂取してから約3~4時間ほどなので、毎日こまめに摂るのが良いそうです。
熱には強く、加熱調理による損失は少ないとのこと。
色の濃い植物の実、特にその皮や種に多く含まれるので、捨ててしまいがちな皮や種を意識的に取り入れると良いようです。
野菜から摂る場合は、生で食べるのが一番効果的だそうですが、難しい場合は皮ごとゆでただし汁やスープを活用するのも良いとのことです。
大豆にも多く含まれるため、日本人の食生活では無意識のうちに豆腐や味噌、醬油などからポリフェノールを摂取しているそうです。
またポリフェノールは、緑茶やコーヒーなどの飲み物に多く含まれるので、食事の合間に飲み物から摂取すると効率的です。
タンパク質と結合して変性するので、コーヒーや紅茶のポリフェノールを最大限に活かしたい場合は、ミルクを入れずに飲むのが良いそうです。
また砂糖を入れる場合は糖分の摂りすぎに気を付ける必要があります。
1日のポリフェノール摂取基準量に厳密な基準はありませんが、1000~1500mg摂取するのが良いとされています。
積極的に摂りたいポリフェノールですが、過剰摂取は逆に健康被害につながる場合もあるそうです。
たとえば、ワインの摂りすぎはアルコール中毒、コーヒーの摂りすぎはカフェイン中毒などに注意が必要です。
特定の食品ばかり食べるのではなくバランスの良い食生活を心がけることが大切と言えるので、例えば、素麵などの麺類なら、トッピングや食べ合わせなど、いろいろ工夫することでいろいろなポリフェノールが摂れそうですね。
<参考サイト>
・ポリフェノールの効果と摂り方
https://www.karadacare-navi.com/foods/08/
・ポリフェノール
https://www.stroke-rehabfacility.com/eating-habit/polyphenol.html
・ポリフェノール摂取のコツ お茶・コーヒーでこまめに
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXKZO21365040R20C17A9W10601/
・ポリフェノールの健康価値
https://www.kao.com/jp/healthscience/report/report066/report066_01/
⑥ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編
ポリフェノールと聞くと、なんだかワインやカカオなどを思い浮かべたりするかも知れませんが、蕎麦にも多く含まれているそうです。
上述しましたが蕎麦に含まれる「ルチン」には、「毛細血管を強くし、血流改善に役立つと考えられている」や「全身の血行が良くなることで、冷えや肩こりの改善にも期待される」とありました。
温かいお蕎麦を食べるだけでもホッとして、元気になれた気がしますが、栄養的にもそうだったんですね。
さて、なぜお蕎麦の紹介かというと、このブログをアップする頃には、かなり間際になりますが、節分蕎麦として石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」をご紹介したかったからです。
節分蕎麦をご存じですか?
以前にもご紹介させていただきましたが、“本来”の「年越し蕎麦」はというと、節分に食べる「節分蕎麦」が「年越し蕎麦」だったそうです。
節分とは、季節の変わり目のことで、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれ前日でしたが、今では特に立春の前日を指して節分と呼ばれるようになっています。
立春の前日の節分は“大寒”の最終日で、冬から春への節目の日です。そのため江戸時代には、大晦日ではなく節分を本当の年越しと言う考え方があったそうです。
ですので、研究家の方によれば“本来”の「年越し蕎麦」は、「節分蕎麦」と言うことになるそうですよ。
「節分蕎麦」とは、節分の日に食べる豆や恵方巻きのように縁起がよいメニューと言われていますが、江戸時代の頃には節分料理の元祖として全国に広まっていたそうです。
「節分蕎麦」をあまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の節分には「節分蕎麦」を石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」で召し上がってみるのはいかがでしょうか。
石井製麺所のオリジナル手延べ麺「手延べ麺 蕎麦風味」は、小麦粉8に対して、蕎麦粉2を混ぜ、手延べ製法でつくった麺です。
蕎麦の風味を感じながら、手延べ麺独特のツルッとした食感が楽しめると冬に人気の商品です。
ぜひ一度、お試しください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.28
麺究者への道/「発酵」「熟成」「腐敗」はどう違う?
新年ひとつめのブログになります。
今年もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
年末は、新しいお取引様からのご要望や新製品開発など、本当にありがたいお話で忙しくしておりました。
おかげさまで新しいことにチャレンジさせていただける機会もあり、今年はワクワクドキドキなことが待っているんだろうなと期待でいっぱいです。
さて、昨年来、色々なテーマでブログ(私としては自分の勉強や新製品開発のデータベースとして)を書いてまいりましたが、今年も色々と勉強しながら記していきたいなと思います。
何年か後に振り返ったときに、このブログのために色々勉強したことが役立ったと言えるように、しっかりと調べていきたいと思いますので、もし内容にお気づきの点がございましたらご連絡ください。
今年の一つ目のテーマですが…
実は最近、新製品開発や島の中での事業者さんとの会話の中で当たり前のように耳にする「発酵」「熟成」という言葉が気になっています。
小豆島は「醤油」の産地であり、島には県立の「発酵食品研究所」があります。
日本酒の酒蔵さんもありますし、無添加でお味噌をつくる方もいらっしゃいます。
最近ではクラフトビールに取り組む方などもおられ、「発酵」「熟成」を活かしたさまざまな産業や食品を目にするようになりました。
実は、手延べ素麵も「発酵」「熟成」というキーワードを使用しますし、その働きを活かした工程もあります。
ただ、言葉として知っていても、実はなにが「発酵」でどうすることが「熟成」なのか…
「発酵」させることで、素麵に何が起きていて、「熟成」するということはどのような影響があるのか、実はよくは分かっていません。
もちろん、素麺をつくる工程では、その前と後で違いは分かりますし、必要なことは分かります。
ですが、その仕組みや働きなどについて理解している訳でなく、「そうしてきたからそうする」感じで製造工程を守り続けてきました。
「発酵」「熟成」は品質に大きく影響します。
例えば味や香り、いわゆる風味ということに大きな影響を及ぼします。
ということは、食品にとってとても重要なことを、「前からやっているからこれからも続ける」ということになり、もしかしたら美味しい素麵をつくる大切なポイントをスルーしているのかもしれない…そう思うと、もっとなにか、できることがあるんじゃないかと思えてきて、色々なことを知りたくなりました。
これまでに取り組んできている新製品開発にも関わっていくことですし、開発の方向性にも繋がります。
また、もしかしたら「発酵」「熟成」を活かすことで素麺づくりの製法も変化・進化させることができるかも知れません。
そんな可能性を感じましたし、信じています。
そこで、今年は「発酵」「熟成」について少し勉強し、さまざまな食品についても勉強したいと思います。
できれば島内の事業者さんを訪ね、新しい繋がりを広げていきたいと考えています。
自分自身のためであり、このブログをご覧いただく方のお役に立てればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
写真は、12月に小豆島一番の観光地、寒霞渓から見下ろした写真です。
標高も600メートルくらいあるので、空気も冷たくて身もシャンと引き締まります。
【目次】
① 知ってるようで知らない「発酵」「熟成」「腐敗」の違い
② 発酵には欠かせない微生物のチカラと理解
③ 先人の知恵はすごい!発酵のパワー
④ 発酵で生まれた多くの食品たち
⑤ 熟成の3つの技法とは?
⑥ 味・栄養・食感など、熟成のメリットいろいろ
⑦ 熟成で美味しくなるメカニズム
⑧ 【新春特別価格】『小豆島福箱』発売中
① 知ってるようで知らない「発酵」「熟成」「腐敗」の違い
味や栄養の面で注目されている「発酵」と「熟成」は、どちらも食材が一定期間を経て変化することを表す言葉ですが、具体的にはどういう意味なのでしょうか。
人間に有害な変化である「腐敗」も含めて、調べてみました。
「発酵」とは
「発酵」とは、食材に付着した菌やカビなどの微生物がタンパク質や糖質を分解して、旨味の素となるアミノ酸やアルコールなどをつくり出すことにより、人間にとって有益な状態に変化させることだそうです。
旨味や風味、栄養価が増したり、保存性が高まったりします。
発酵には微生物の働きが不可欠で、麹菌や乳酸菌、酵母菌といった微生物によって、味噌、醤油、ヨーグルト、チーズ、ワインなどの発酵食品がつくり出されます。
「熟成」とは
「熟成」は、近年話題の熟成肉を例にとると、肉がもともと持っている酵素がタンパク質などを分解することで柔らかくなり、アミノ酸が増加することで美味しくなります。
また、清酒、ウイスキーなど酒類の熟成は、保存・貯蔵中に起きる化学的変化とのことです。
発酵と熟成は線引きが難しいところもあり、例えば味噌は、米に麹菌をつけて発酵させ、発酵の段階が終わると麹菌由来の酵素により熟成の段階に入るので「発酵熟成させた食品」と呼ばれるそうです。
「腐敗」とは
「腐敗」は発酵と同じ原理で微生物の働きによるものですが、人間にとって有益ではないものに変化してしまうことです。
においや見た目、味などが劣化し、食べられなくなります。
話は変わりますが、バナナなどの果物の場合、熟成と腐敗の区別は分かりにくいですよね
「腐りかけが美味しい」とは言われますが…
<参考サイト>
・「発酵」と「熟成」は何が違うのか?
https://ajibana.jp/trivia/465/
・発酵と熟成の違いとは?
https://www.mizkan.co.jp/osu-information/base/difference.html
・発酵と腐敗・熟成の違いって何?
https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/20181025/10134/
② 発酵には欠かせない微生物のチカラと理解
発酵に欠かせない微生物は、「細菌」「酵母」「カビ」の3種類に分けられます。
それぞれにどんなものがどんな発酵食品を生み出しているかを分けて整理してみました。
【細菌】
細菌は、カビや酵母に比べて最も小さな単細胞の微生物で、細胞分裂を繰り返して増殖します。
腸内環境を整えることで知られる「乳酸菌」は、糖類を分解して乳酸に変える働きがあります。
牛乳に乳酸菌を加えるとヨーグルトやチーズができます。
また、ぬか漬けやキムチなどの漬物は、原料の野菜に含まれるブドウ糖や果糖などを乳酸菌が分解して発酵したものです。
「乳酸菌」が生成する乳酸により、pHを下げること(酸性)で食中毒細菌などの増殖を抑え、保存性が高まります。
また乳酸菌はアミノ酸を生み出すことで、発酵食品に独特の風味が生まれます。
「納豆菌」は、田んぼや畑、枯れ草、稲わらなどに生息する細菌です。
煮大豆に納豆菌を加えると、発酵の過程でタンパク質を分解し、旨味成分であるアミノ酸を生成して納豆ができます。
納豆菌は生きたまま腸内にたどり着き、善玉菌を活性化させ悪玉菌を抑制して腸内環境を改善したり、「ナットウキナーゼ」というタンパク質分解酵素が血液をサラサラにする働きがあるそうです。
「酢酸菌」は、アルコールを酢酸に変える、酢をつくるのに欠かせない細菌です。
酢酸によりpHを低下させて他の微生物を近寄らせない環境をつくり、防腐や静菌・殺菌の働きをするとのこと。
また酢の強い酸味と刺激臭も、酢酸によるものです。酢酸菌は腸内の免疫スイッチを刺激して活性化させ、花粉症やアレルギーを抑制する作用があると言われます。
【酵母】
酵母による発酵は、主にアルコール発酵で、ブドウ糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。
大麦を発芽させてつくった麦芽からの麦汁にビール酵母を加え、アルコール発酵させるとビールができます。
ブドウの果汁にワイン酵母を加え、アルコール発酵させるとワインができます。
また酵母から出る炭酸ガスは、パンの発酵に利用されています。
パンづくりに使われる酵母は大きく分けて「イースト」と「天然酵母」の2種類。
イーストはパン専用の酵母として基本的に1種類の酵母を培養させたものです。
天然酵母は穀物や果物など自然にある酵母を育てたもので、乳酸菌など他の菌も混ざっているそうです。
【カビ】
カビは糸状細胞の微生物で、胞子を飛ばして拡散し、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして広がります。
カツオ節をつくるのに使われる「カツオブシカビ」や、ブルーチーズで知られる「青カビ」などのほか、「麹菌」もカビの一種です。
麹菌は、味噌や醤油、みりん、米酢、甘酒、日本酒、焼酎、漬け物など、日本由来の発酵調味料や発酵食品をつくるのに使われるカビです。
そのまま使うのではなく、お米、麦、大豆などに加えて培養させた「麹」にして使用します。
菌を繁殖させた食材により、「米麹」「麦麹」「大豆麹」など麹の種類が変わります。
麹菌が生み出す酵素の働きで、食材の体内での消化・吸収の効率が良くなったり、腸内の善玉菌が活性化して腸内環境が良くなったりします。
また麹菌は、豊富なビタミンやミネラルなどの栄養素をつくるそうです。
<参考サイト>
・発酵食品にはどんな種類があるの?主な発酵食品一覧
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/hakkou-table
・発酵のきほん
https://www.hakko-blend.com/study/
③ 先人の知恵はすごい!発酵のパワー
食材は発酵させることにより、人間に有益な変化が起こります。
その主な働きや作用について3つありますが、よくぞこんな発見ができたものだと驚きます。
そして、それが現代にでも役に立ち、今まさに健康や食問題の解決に繋がるんですから、本当に素晴らしいことですね。
【食品の保存性向上】
ある環境のなかに特定の微生物が一定数以上いる場合、他の微生物は繁殖することができないそうです。
発酵を促す微生物が増えることにより、腐敗菌を寄せつけないようにするため、食品の保存性が高まります。
また発酵によって生まれる乳酸や酢酸、アルコール自体にも殺菌効果があるので、雑菌の増殖を抑え、食品のおいしさが保たれるとのことです。
【味わいや香りアップ】
食材が微生物により分解され発酵する過程で、アミノ酸やイノシン酸、グアニル酸などの旨味成分が生まれます。
また発酵食品の独特な香りについても、発酵過程で微生物の作用によって生成される香気成分によるものだそうです。
【栄養価や健康機能が高まる】
発酵の過程で、微生物がビタミン類などさまざまな栄養成分をつくり出します。
元の食材よりも栄養価が高まったり、新しい栄養成分が加わったりします。
また、栄養成分が体内に吸収されやすくなる、腸内環境を整え免疫力が高まる、活性酸素の発生を抑え酸化を防ぐ、などのメリットもあります。
<参考サイト>
・発酵食品って何がいいの?
https://www.hakko-blend.com/study/whats/01/
④ 発酵で生まれた多くの食品たち
私たちが普段口にしている食べ物や飲み物の中にも、発酵の力によりつくられているものがたくさんあります。
【発酵食品】
<大豆系>
代表的な納豆は、納豆菌で発酵させた「糸引き納豆」と、麹菌で発酵させた糸を引かない「塩辛納豆」の2種類に分けられます。
「糸引き納豆」はさらに、大豆を丸ごと蒸してつくる「丸大豆納豆」、大豆を炒ってひき、皮を取り除いた後に納豆菌をつけて発酵させた「ひきわり納豆」、ひきわり納豆に米麹と塩を加えて、発酵・熟成させた「五斗納豆」に分けられるそうです。
インドネシアの「テンペ」など、海外にも納豆に似た食品があります。
※写真はPhotoAC「テンペ」より
<野菜系>
野菜などを漬け込んで風味と保存性を高める漬物には、つくる過程で発酵させる「発酵漬物」があります。
塩分を含む漬け床に漬け込むことで、野菜から出た水の中で乳酸菌が育ち、その働きによって漬物ができます。
野菜にもともと付着している乳酸菌が、糖類などを分解して乳酸を生成することによりpHが低下することで酸性になるそうです。
そのため酸味が出て、また酸に弱い腐敗菌の働きが抑えられることで保存性が高まるとのこと。
空気中などから付着した酵母も増殖することで、漬物特有の風味が生まれます。
韓国の「キムチ」や、ドイツの「ザワークラウト」、欧米の「ピクルス」なども発酵漬物です。
<肉系>
生ハムは、豚肉を塩水や塩で漬けて乾燥させ、燻製などの加工をせず、発酵・熟成させてつくられます。
ドライソーセージは、豚肉とアルコール、塩を混ぜて腸詰めにし、乳酸菌により発酵させつくられます。
※写真はPhotoAC「熟成サラミ」より
<魚介系>
魚介類にはもともとイノシン酸が多く含まれており、さらに発酵する過程でアミノ酸類が増え、イノシン酸も増えるそうです。
カツオ節は、カツオブシカビを何度もつけて燻したり乾燥させたりしてつくられます。
寿司の原型とも言われるなれずしは、魚を塩とご飯で発酵させたものです。
塩辛は、魚やイカの身・内臓などを塩漬けにして、発酵・熟成させています。
<その他>
乳製品であるヨーグルトやチーズ、また、パンやチョコレートも発酵食品です。
ヨーグルトは、牛乳に含まれる乳糖を乳酸菌で分解させてつくられます。
チーズは乳酸の発酵により酸化させた後に、加熱したり、酵素を添加して凝固させたりしてつくられます。
【発酵飲料】
<アルコール>
日本酒は、米に清酒酵母や麹を加え、発酵させてつくります。
ビールは、麦芽のでんぷんを糖化し、ビール酵母を加えて発酵させます。
ワインは、原料のブドウにワイン酵母を加えてつくります。
焼酎や泡盛も、発酵の力でつくるアルコール飲料です。
<発酵茶>
お茶の葉には酸化酵素が含まれており、摘んだ後そのままにしておくと徐々に発酵していくそうです。
発酵が進むと茶葉の色や香りが変化します。
発酵の方法や度合により「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」「後発酵茶」の4種類に分けられるとのことです。
緑茶や煎茶は発酵をさせずにつくられます。
ウーロン茶は、葉の周辺部の色が茶色に変色し始めたら火を入れ、発酵を止める半発酵茶です。
紅茶は、発酵の途中で揉む工程を入れて茶葉を傷つけることにより発酵を促進し、最後まで発酵させる発酵茶です。
プーアール茶は、茶葉を摘んですぐに火を入れて発酵を止めますが、その後、麹菌などの微生物によって発酵させる後発酵茶です。
<その他>
甘酒(麹甘酒)は、炊いたご飯に米麹を加えてつくられます。
麹菌や麹菌の酵素の働きにより、ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群などの栄養素がつくり出されます。
麹甘酒はノンアルコールですが、酒粕に砂糖と水を加えた酒粕甘酒はアルコールを含みます。
【発酵調味料】
「醤油」は、麹菌の酵素で大豆のタンパク質を分解してつくられ、醤油乳酸菌や酵母などの働きにより熟成が進みます。
「味噌」は、大豆と麹、塩が原料です。麹の種類により、米味噌や豆味噌、麦味噌などがあります。
「酢」は、酒に酢酸菌を加えてつくります。原料の種類により、米酢、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガーなどがあります。
「みりん」は、もち米と米麹、焼酎が原料です。麹菌の酵素がでんぷんを糖化することでつくられます。
他にも塩麹や醤油麹、中国の豆板醤、韓国のコチュジャンなどがあります。
魚醤は魚と塩を発酵させた調味料で、タイのナンプラーもその一種です。
<参考サイト>
・ゆたかな食文化を支えるさまざまな発酵・発酵食品
https://www.hakko-blend.com/study/
・発酵食品の一覧を紹介!効果や食べ方のポイントとともに確認しよう
https://www.u-can.co.jp/course/data/in_html/1473/column/column01.html
・主な発酵食品を一覧でチェック!効果・効能を高める健康レシピで豊かな食生活を
https://brunofans.jp/2023/05/post-709.html
・食べておいしく、カラダにやさしい発酵食品!
https://www.nissui.co.jp/recipe/fish-kitchen/featured/c00004/index.html
・乳酸菌 乳酸菌が含まれる食品はこれ!
https://www.nutrilite.jp/magazine/lactic-acid-bacteria/content32.html
・製法の違いで分けるお茶の種類
https://shop.chanoma.co.jp/column/kind/kind.html
⑤ 熟成の3つの技法とは?
発酵と並ぶ食材の変化である熟成には、日本古来の技法から新しく生まれたものまで、3つの技術があるそうです。
これらの技術について、熟成肉の例が分かりやすいと思うので整理してみます。
【枯らし熟成】
肉を枝肉のまま吊るし、3~4週間かけて熟成させる、かつて日本のお肉屋さんでよく見られた方法。
骨のまま吊るすことで、肉に負担がかかりにくいそうです。
冷蔵庫内で肉に最適な菌が自然に付着し、水分がゆっくり引き出されることで旨味が凝縮するとのこと。
表面のカビをそぎ落とす必要があるなど効率が良くないことから、真空技術の発達や流通の発展などにより、あまり活用されなくなったそうです。
【ドライエイジング】
管理された環境で乾燥させながら熟成する、ニューヨークから伝わった方法。
専用の貯蔵庫の中で湿度・温度を調整し、風を循環させながら水分を抜き、2週間~2カ月かけて熟成させます。
熟成の過程で自然に微生物がつきます。
こちらも表面のカビをそぎ落とす必要があります。
【ウェットエイジング】
真空にして、0℃~1℃の貯蔵庫で1~2週間寝かす技法です。
元々は、輸送の際に肉の劣化を防ぐため真空にしていたところ、数日寝かせると肉の酵素の働きにより柔らかくなり、旨味も増すことが分かったそうです。
他の技法に比べて管理がしやすいですが、旨味や香りはあまり増えないとのことです。
<参考サイト>
・熟成とは?発酵との違いと熟成することで食材が美味しくなる理由
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/jyukuseitoha
・大ブームの「赤身肉」&「熟成肉」を詳しく知ろう!【熟成肉編】
https://ourage.jp/column/healthy_gohan/38302/
⑥ 味・栄養・食感など、熟成のメリットいろいろ
熟成により、食材のタンパク質が分解されてアミノ酸が増えます。
このことにより、さまざまな効果が現れます。
ただし熟成と腐敗は紙一重なので、プロによる管理と見極めが必要です。
自宅で熟成させるのは難しいようです。
【旨味が増す】
アミノ酸は旨味成分のひとつなので、熟成が進みアミノ酸が増えることで美味しさをより感じられるようになります。
【芳醇な香りがする】
熟成香と言われる芳醇な香りがします。
【栄養分が吸収されやすくなる】
タンパク質は人の体をつくるのに必要ですが、そのままでは吸収されません。
熟成によりアミノ酸に変化することで、栄養分が吸収されやすくなります。
【食感がやわらかくなる】
酵素の働きにより肉の筋線維が分解され、食感がやわらかくなります。
⑦ 熟成で美味しくなるメカニズム
味噌や醤油、お酒、チーズなどの発酵食品にも、長期間熟成させるものが多いですね。
熟成により旨味が増すメカニズムについて、もう少し詳しく調べてみました。
タンパク質は、アミノ酸が長くつながったもので、味はほとんどありません。
食品に含まれるタンパク質が、食品自体が持つ酵素や空気中の微生物などにより分解される、つまり熟成することで、アミノ酸や、アミノ酸が複数つながったペプチドになります。
アミノ酸やペプチドは様々な味を持っているため、分解されればされるほど、旨味が強く感じられるようになります。
ペプチドは非常に種類が多く味もアミノ酸より複雑多様で、コクや濃厚感、異味異臭に対するマスキング効果などを持つものもあるとのことです。
旨味成分であるアミノ酸のグルタミン酸やイノシン酸に、ペプチドが加わることにより、相乗効果で深いコクや濃厚な味わいが生まれたり、塩味や酸味、苦味が弱くなったりして、より美味しくなると考えられています。
またペプチドは加熱処理を行うと他の物質と反応し、新たな風味が生まれます。
これにはメイラード反応と呼ばれる現象が関与しており、食品に独特の良い香りが生まれることが知られています。
ただしペプチドには苦味を持っているものなどもあり、味に良い影響を及ぼすものばかりではないそうです。
<参考サイト>
・「うま味」とともに「おいしさ」をアップさせる「熟成」…深まる「味わい」の秘密は「タンパク質」の「分解」だった!
https://gendai.media/articles/-/111803?page=2
・ペプチドは、おいしい!?
http://topics.foodpeptide.com/?eid=453628
⑧ 【新春特別価格】『小豆島福箱』発売中
昨年は、さまざまな形で小豆島の美味しいものをご紹介したり販売したりさせていただきました。
そこで、今回は新年のスペシャル企画として、石井製麺所の人気商品と組み合わせた「小豆島福箱」をご用意しました。
中身は…
・石井製麺所:手延べ半生うどん、手延べきくらげ麺
・岬工房:オリーブ新漬け
・瀬戸の香:小豆島の釜めしの素
・丸島醤油:味醤油
・箭木椎茸園:原木干し椎茸
・安田農業集団:特別栽培米
を詰め合わせた、小豆島ならではの美味しいセットをご用意させていただきました。
オリーブの新漬けは、何と言っても、小豆島の今だけの味覚で、日本独自のものです。
オリーブの独特のオイリーな優しい食感と、塩加減の良い塩梅が魅力な「オリーブのお漬物」です。
塩加減がご飯のおかずにも合いますし、お酒のアテにもちょうど良いようです。
知り合いの日本酒ソムリエさん、ワインソムリエさんにも「日本酒に合う!」「ワインに合う!」とお褒めをいただきました。
ぜひとも食べてみていただきたい味覚です。
釜めしは、きっと日本全国の地域にそれぞれの味が根付いているんでしょうね。
小豆島は醤油の産地ですから、釜飯(炊き込みご飯)には、ちょっとうるさいですよ!
そんな中、古くから佃煮の製造をおこなってきた瀬戸の香さんがつくる「おばあちゃんがつくった」優しい味わいの釜めしの素です。
具材も国産にこだわり、「あぁ〜美味しい〜」って心から言える(僕は言いました)釜飯を味わっていただけますよ。
味醤油は、これは本当に台所に一本、置いておいて欲しい調味料です。
これ一本で、めんつゆから、煮物の味付け、お味噌汁の隠し味、おでんや炊き込みご飯にも使えるので本当に万能な調味料です。
1本あればお料理の幅がぐんと拡がると思います。
濃縮つゆなので1本あればかなりもつので便利ですよね。
原木椎茸を使った干し椎茸は、島でも人気の商品です。
島の産直コーナーに毎日並べられていますが、毎日ほぼ完売で、わざわざこれをまとめて買いに来る人までいるそうです。
干し椎茸は、縁起物でも知られていますし、日本人ならではの旨みの素ですよね。
特別栽培米のお米は、田植えをする前にレンゲを咲かせ、それをすき込み肥料としています。
苗を植え付け栽培する際には、できるだけ農薬を減らして栽培されています。
令和5年度の収穫米で、玄米で保存し、出荷されるギリギリに精米してお届けさせていただきます。
特別なブランド米でなく、島の農家さんが丁寧につくられたお米を、セットにしてお届けさせていただきます。
セットで美味しく、何度も味わいたくなる「小豆島の美味しいものをセットにした福箱」はいかがでしょうか。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《新春特別商品 小豆島福箱》 https://141seimen.thebase.in/items/81778481
最後に…
1月1日に起きた「能登半島地震」で被災された方、影響を受けられた方に、心よりお見舞い申し上げます。
連日の報道により、お亡くなりになられた方が多くいらっしゃるとのこと。
ご遺族の皆様へ、心よりお悔やみ申し上げます。
また、救助や復興に携わられるすべての方の安全と健康を心よりお祈り申し上げます。
石井製麺所でも何かできることがないか、ボランティアで活動される方々と連携を取りながら、少しでもお役に立ちたいと考えています。
お役に立てることがございましたら、ぜひお声がけください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.27
メンコレ⑥/カラフルな食材を練り込んだ素麺の存在感
このブログを書き出してから、様々な産地を調べたり、食材を練り込んだ手延べ素麺・麺を調べたりしてきました。
それは、弊社が新しい取り組みとして様々な企業様とのコラボ商品やOEM商品のご依頼をいただくようになったことも、ひとつの理由です。
調べてみると実に色々な手延べ素麺(特殊麺)がありました。
また、他の麺類の製麺に対する進化を知ることで手延べ素麺の可能性ややりたいことも色々と出てきました。
その方向性のひとつとして、先日お伺いした石丸製麺の石丸社長のお言葉がとても心に残っています。
「産地の特産品を活かした素材を利用し、新しい価値を創り出し、一緒に地域を元気にしていく。それを“うどん”で実現していく」
といったお言葉でした(少し美化して言葉を補っているかも知れませんが、頭の中に残っているお言葉です)。
※伺った際のお話について詳しくは「【お“いしい”けんぶんろく】vol.24 麺求者への道/うどんを研究してみる」をご覧いただけましたら。
石井製麺所でも産地と共に歩み、奇をてらった“延命”のための手延べ素麺の製造ではなく、これからも手延べ素麺がたくさんの方から必要とされ美味しく召し上がっていただけるように成長していきたいと考えています。
もちろん、化学調味料や着色料などはできるかぎり使用せず、食材や自然由来のものを活用し、健康を守ることができる食品を目指したいと思っています。
そこで、今回は“色”に着目してみました。
素麺と言えば白い細麺が思い浮かぶと思いますが、色々な食材を生地に練り込むことにより、文字通り「色々」な色の麺をつくることができます。
1980年代後半まで関東を中心に、冷や麦にはピンクや緑の麺を数本入れている商品が多かったそうです。
これは、素麺と並べて売るときにお店の人が区別しやすいように、という理由からとのことです。
商品管理が進化した現在ではそうした実用的な意味はなくなりましたが、製麺技術の向上もあって多様な食材を練り込んだ素麺が開発されており、食材の色を生かしたカラフルなものもたくさんあります。
色のついた素麺が食卓に上ることで、食欲を増進させたり、祝いのお膳を鮮やかに彩ったり、子供が喜んでくれたり、いつもの食事のちょっとしたアクセントになったりします。
今回は「メンコレ」第6弾として、カラフルな食材を練り込んだ素麺について、“色々”調べてみましたので、ぜひお付き合いの程よろしくお願いいたします。
※以下にご紹介する素麺は、2023年12月18日現在の当社調べになります。
ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。
<参考サイト>
・そうめんやひやむぎにピンクや緑色の色付きの麺が入っているのはなぜ?
https://jpnculture.net/somen-hiyamugi/
【目次】
① カラフル素麺の元祖!?愛媛県の「五色素麺」
② カラバリが楽しい!ご当地オリジナル素麺
③ まだまだある!果物や野菜の色を生かした素麺
④ 《美味しい手延べ素麺》手延べ山芋素麺 編
① カラフル素麺の元祖!?愛媛県の「五色素麺」
愛媛県松山市の郷土料理として知られる「五色素麺」は、その名の通り5色の素麺です。
人工着色料は使わず、もち麦・蜜柑・梅・抹茶など自然のもので着色されているそうです。
その由来は江戸時代にさかのぼるといわれます。
享保7年(1722年)、寛永から続く製麺会社の八代目・長門屋市左衛門の娘が椿神社に参拝したとき、美しい五色の糸が下駄に絡みついたのを見て、父親に「そうめんに五色の色をつけてみては?」とすすめたそうです。
これを機に色麺の技術が編み出されたと伝えられています。
試行錯誤の末、赤はベニハナ、黄色はクチナシ、濃紺はタカナ、緑はクチナシとタカナを使って色をつけたそうです。
5色の彩りのそうめんは評判となり、参勤交代の折に献上した八代将軍徳川吉宗から「格別上品至極」と賞賛されたとのこと。
また、朝廷からも「美麗五色は唐糸の如く美し」との綸旨を賜り、「五色そうめん」の名が全国に知られるようになったと言われています。
五色素麺を愛した著名人も数多く、近松門左衛門は「味はいうまでもなく、その美しい姿はまるで冬の日に輝きながら、舞い踊っている陽炎のよう」と賞しています。
正岡子規は「文月のものよ五色の糸そうめん」という句を残しています。
また、愛媛を代表するお座敷唄である「伊予節」にも、松山の名物名所のひとつとして「おとに名高き五色そうめん」と唄われています。
<参考サイト>
・五色そうめんの歴史
https://goshiki-soumen.co.jp/history/
・色麺300年! 愛媛の夏の味・五色そうめんの覚悟
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202206030011
② カラバリが楽しい!ご当地オリジナル素麺
全国の素麺の産地で、カラフルな素麺を何色か組み合わせた商品が販売されています。
色々と調べてみました。
【いろいろそうめん】(愛媛県松山)
カラフル素麺の元祖ともいえる「五色素麺」を生み出した老舗「五色そうめん株式会社」さんでは、今も変わらず次々と新しい素麺を開発されています。
特徴的なのが「いろいろそうめん」。
クレヨン風のパッケージに、柚子・梅・伊予柑・抹茶・クチナシ・黒ごまといった自然素材と天然色素を練り込んだ色麺を詰め合わせた楽しい商品です。
中にはノートも入っていて、盛り付けイメージなどの絵や文字を書いて楽しめるそうです。
ほかにも、もち麦・蜜柑・梅・抹茶を使った極細の素麺を詰め合わせた「媛のまゆ糸」、白麺にもち麦・蜜柑・梅・抹茶の色麺を3割と多めに混ぜ合わせた「ケンカしないそうめん」、白麺と色麺を程よく混ぜ合わせた「梅の香そうめん」「柚子の香そうめん」「伊予の香そうめん」などを販売されています。
【色撫子】【みわのにじ】(奈良県三輪)
素麺発祥の地である奈良県三輪でも、カラフルな素麺がつくられています。
嘉永3年(1850年)創業の老舗である「株式会社池利」さんで販売されている「色撫子」は、白・梅・青シソ・カボス・紫イモの5色。
ほかにも、彩り鮮やかな七夕の七色(白・人参・梅・カボチャ・シイタケ・ホウレン草・紫イモ)、四季の四色(白・梅・シソ・カボス)、夏野菜(トマト・オクラ・カボチャ)などのセットを販売されています。
明治38年(1905年)創業の「株式会社三輪そうめん小西」さんでつくられている「みわのにじ」は、虹に見立てた7色の素麺の詰め合わせ。
白・紅シソ・トマト・生姜・青シソ・ブルーベリー・紫イモ・ヨモギだそうです。
ほかにもトマト・カボチャ・オクラの夏野菜を練り込んだ3色のセットを販売されています。
【野菜そうめん】(長崎県島原)
国内の手延べそうめんの約3割を製造している長崎県島原にある、安政5年(1858年)創業の「高橋謙作製麺」さんでは、八女茶・パプリカ・カボチャ・紫芋を使った「無添加手延べ野菜そうめん」をつくられています。
野菜の味はほとんどせず野菜が苦手な方でも食べられますが、温めて食べると野菜の風味が感じられるそうです。
【縁のむすび】(富山県砺波)
「丸まげ素麺」とも呼ばれるユニークな形が特徴の「大門素麺」の産地である富山県砺波市では、「株式会社柿里」さんが、その形状を生かした素麺を開発されています。
カラフルな素麺を花の形に丸めた「組紐」シリーズという商品で、カボチャ・紫イモ・桜・パプリカ・抹茶を使っています。お祝いごとや法要の引き出物、プチギフトなどに使える商品展開をされています。
【沖縄のそうめん】(沖縄県)
沖縄の「サン食品」さんは、沖縄特産のゴーヤー(ニガウリ)・紅イモ・ウッチン(ウコン)を練り込んだそうめんをつくられています。
【俊麺(しゅんめん)】
ちょっと番外編ですが、石井製麺所にお越しいただいたSHUNくんが開発した「俊麺(しゅんめん)」もここでご紹介させていただきます。
オリジナルデザインの手延べそうめんを商品化、「しょうが麺」「ごぼう麺」「にんにく麺」「トマト麺」「しそ麺」それに「白麺」という6種類の手延べ麺があります。
パッケージのキャラクターも独自に考えられたそうです。
公式オンラインショップ:https://shunmen2626.base.shop/
<参考サイト>
・いろいろそうめん
https://www.goshiki-soumen.shop/shopdetail/000000000125/
・三輪そうめん池利 色そうめん
https://ikerishop.com/SHOP/1059448/list.html
・三輪そうめん小西 みわのにじ
https://marche.onward.co.jp/shop/g/gOWM1003766/
・無添加手延べ野菜そうめん
https://item.rakuten.co.jp/kyushumall/422140134004/
・【長崎県南島原市】高橋謙作製麺
https://shop.nihonmono.jp/collections/producer-108
・柿里
https://kakizato.jp/
・沖縄のそうめん(乾麺)
https://www.ryukyu-h.com/cat370000.html
③ まだまだある!果物や野菜の色を生かした素麺
このほかにも、各地の特産物を練り込んだ素麺には、果物や野菜などの美しい色を生かしたものが数多くあります。
調べてみると本当に色々ありますね。
【イチゴ】
栃木県のイチゴ「とちおとめ」を生地に練り込み、独自の低温熟成で半生に仕上げた素麺がつくられています。
薄いピンク色の麺で、開封するとイチゴミルクのような甘い香りが広がりますが、ゆでるとほんのり香る程度になるそうです。
大分県でも、大分県産のイチゴを練り込んだ素麺がつくられています。
【サクランボ】
山形県には、特産のサクランボの果汁を練り込んだ素麺があります。
薄いきれいなピンク色の乾麺です。
【ナシ】
千葉県には、地域ブランドである「市川の梨」のピューレを限界まで練り込み、シャリシャリした食感が楽しめる麺があります。
薄い黄色で、素麺より少し太い冷や麦タイプとのこと。
【モモ】
大分県では、清川特産の「クリーンピーチ」というモモを使った素麺がつくられています。
モモの味は際立てていないそうですが、ゆで上げると鮮やかなピンク色の麺が楽しめます。
【メロン】
熊本県には、熊本県産小麦と特産の「七城メロン」の果汁を使った素麺があります。
薄い緑色で、麺からメロンと赤穂塩による出汁が出るそうです。
【ブドウ】
熊本県産のブドウを種や皮ごと搾って練り込んだ素麺が、熊本県でつくられています。
淡いピンク色の麺です。
【柿の皮】
福岡県香春町では、特産である「採銅所のあま干し柿」の製造過程でできる渋柿の皮を練り込んだ素麺がつくられています。
少しくすんだ柿色で、独特の甘みと風味が感じられるそうです。
【タマネギ】
兵庫県淡路島には、特産のタマネギをローストして甘みと旨みをさらに引き出し、粉末状にして練り込んだ素麺があります。
風味豊かな、茶色の麺です。
【ゴボウ】
宮崎県では、特産のゴボウを練り込んでつくられた素麺があります。
薄い茶色の麺で、豚骨スープと合わせても楽しめるそうです。
【レンコン】
熊本県八代で、農薬・化学肥料不使用で古くから栽培されてきた品種のレンコンを粉末にして生地に練り込んだ素麺がつくられています。
レンコンの色が薄く付いた麺です。
こうして見ると、九州地方で色々な素麺がつくられていることが分かります。
農業も盛んであり、島原素麺のように多くの製麺会社が近くにあるからでしょうか。
石井製麺所も、農家さんや企業からオリジナル素麺づくりで頼られる存在になりたいものです。
※写真はPhotoAC「熊本城」より
<参考サイト>
・本格的な半生麺!ピンクの「苺そうめん」が女性に大人気♪
https://ichigo.university/somen
・newめん-いちご-
https://somenryubu.base.shop/items/70143603
・さくらんぼそうめん
http://www.shoji-men.jp/shop.cgi?id=42
・市川の梨麺
https://www.tflaaap.com/goods/%E5%B8%82%E5%B7%9D%E3%81%AE%E6%A2%A8%E9%BA%BA/
・手延べ 桃そうめん
https://www.niji-dept.com/view/item/000000000496
・メロンそうめん
https://kikuchi-marugoto.com/products/detail.php?key=688&tml=list
・手延ぶどう素麺
https://rokuzikan.com/items/60d3d8f984ec6e36829eb98e
・福岡県香春町の特産品【柿皮そうめん】ドン‼
https://kawarakanko.thebase.in/items/30030013
・淡路島手延べ 玉ねぎそうめん
https://fukura-tenobe-seimenjyo.jp/?pid=122808077
・手延べごぼめんつゆ付
https://hinata-buyersnavi.pref.miyazaki.lg.jp/site/seikeshokai/items/3/
・蓮根手延そうめん
https://www.tac21supercarrot.jp/shopdetail/002005000013/
④ 《美味しい手延べ素麺》手延べ山芋素麺 編
今回のテーマのカラフルさからは真逆かも知れませんが、石井製麺所の人気手延べ麺をご紹介させていただきます。
からだに嬉しい山芋のパウダーを麺生地に練り込み、モチモチツルンとした食感が特長の素麺です。
古くから栄養満点の食べ物として親しまれてきた山芋。
我が家でも子どもの頃から、すりおろした山芋がよく食卓に並びました。
冷やした素麺はもちろん、にゅうめんやパスタ風のお料理としてアレンジしても美味しく召し上がっていただけます。
麺は白色ですが、その分、カラフルな季節野菜を盛りつけると、鮮やかさが増して見え、より一層食卓が明るくなる一品だと思います。
寒い季節には温かいおだしと一緒に召し上がってみてください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.26
麺究者への道/米粉を使った麺を研究してみる
日本には多くの種類の麺がありますが、素麺を含めそのほとんどが小麦粉を原料としています。
一方、アジア各地では、米を使った麺がバリエーション豊かに食されています。
なぜ米を主食とする日本で、米を使った麺が発達しなかったのかについては、諸説あるようです。
米を使った麺が発達しなかった理由として…
①そのままの形で煮炊きして食べられるため麺にする必要がなかった。
②麺のつなぎの役割を果たすグルテンが含まれていないため麺状にするのが難しかった。
③日本のジャポニカ米は、アジア各国のインディカ米に比べて水分が多く、米粉にするのに適していなかった。
などが挙げられています。
8月に行った東京の展示会では、「ウェルネスフード」をテーマにした展示で、出店者の多くが健康に良いとされる食材などを展示されていましたが、いくつかのブースでは米粉を使った食品や、中には米粉を使った麺を製造・販売されている所もありました。
展示されているお会社様に試食などをさせていただきながら色々とお話を伺いました。
前々から興味のあるのは米粉を使った麺。
手延べ麺には不向きですが、ヘルシーなイメージのある米粉を何とか使用できないか…と考えたこともあります。
一概に、米粉は体に良く、小麦が悪いということは無いと思いますが、色々と知りたいと考え今回のブログのテーマにしました。
また、現状のように小麦の価格の高騰が続くと、使用そのものが難しくなる可能性もありますし、手延べ麺の新しい可能性として視野に入れておきたいというのも、テーマにした理由のひとつです。
米粉の良さやデメリット、世界の米粉の使われ方など参考にできればと考えています。
今回は、米の分類や日本の米粉文化、世界の米を使った麺などについて、調べてみました。
<参考サイト>
・米麺と穀物の価格高騰
https://www.nakagawaseimen.com/q6jthzbva6dg1aie76a/%E7%B1%B3%E9%BA%BA%E3%81%A8%E7%A9%80%E7%89%A9%E3%81%AE%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E9%AB%98%E9%A8%B0
・なぜ「ビーフン」に成長の余地があるのか 最大手「ケンミン食品」が狙う空白市場
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1912/17/news057_3.html
【目次】
① そもそも、お米ってなに?アジアで拡がる農作物
② 文化と共に歩む、日本での米粉の拡がり
③ 米でも麺に!アジア各地で食べられている米の麺
④ 国内外でも、ますます注目が高まる米粉の魅力
⑤ 日本の食卓にも浸透する米粉麺
⑥ 《美味しい手延べ麺》瀬戸凪<楽々膳・黒> 編
① そもそも、お米ってなに?アジアで拡がる農作物
米は、小麦・トウモロコシと並んで世界の3大農作物とも言われるイネ科の植物です。
農耕が始まった約1万年前から、人類はそれぞれに定住した土地で、栽培に適した野生植物を選び出し、農作物として確立させていきました。
イネは長江流域やインドで利用されてきたものです。
※写真はPhotoACの『バングラデシュの田園風景』より
イネ科イネ属の植物は23種77系統が知られています。
その中で栽培されているのは
「アジアイネ(オリザ・サティバ)」
「アフリカイネ(オリザ・グラベリマ)」
の2種類のみです。
現在、世界で生産されるイネの多くがアジアイネだそうです。
さらにアジアイネは、「ジャポニカ」と「インディカ」の2系統に大別されます。
日本でよく食べられているのは「ジャポニカ」で、耐冷性が高い短粒種です。
熱を加えると粘り気が出るのが特徴で、炊いたり蒸したりして食べるのが一般的です。
主にインドやタイ、ベトナム、中国、アメリカ大陸などで栽培されている「インディカ」は、耐冷性が低く、細長い長粒種です。
粘り気が少なく、煮て食べるのが一般的です。
「ジャポニカ」はさらに「うるち米」と「もち米」に分けられます。
「うるち米」は、主要部位である胚乳が透き通っているため、全体的に半透明に見えます。
炊いてごはんにしたり、きりたんぽや五平餅にしたりする他、うるち米を粉にした上新粉は柏餅や草餅などの和菓子の原料として使われています。
「もち米」は、乳白色で不透明で、少し丸みのある形です。
おもちや赤飯、おこわ、ちまきなどに使われます。
もち米を粉にした白玉粉やもち粉、道明寺粉は、おはぎや白玉、大福などの和菓子の原料として使われます。
うるち米ともち米の違いは、デンプンの構成にあります。
お米に含まれるデンプンは、分子構造の違いから「アミロース」と「アミロペクチン」に分けられます。
この割合が、うるち米は2対8で、もち米はアミロペクチンのみとなっています。
アミロペクチンは、調理時に粘性を生じるという特徴があるため、もち米は粘りがあってもちもちしているのです。
※写真はPhotoACの『ミャンマーの水田地帯』より
<参考サイト>
・国内産米粉総合情報サイト 米粉の魅力>アラカルト
https://www.komeko-life.com/alacarte
・グリコ栄養食品たべもの事典 米粉(お米の粉)について
https://www.glico.com/nutrition/tabemono/kome/01/index.html
・うるち米ともち米ってどう違うの?それぞれの活用レシピも!
https://www.kurashiru.com/articles/759fb9cc-478a-4552-a914-6546103f285f
② 文化と共に歩む、日本での米粉の拡がり
先に述べたように、日本ではジャポニカ米をごはんとして食べる以外に、米粉として和菓子の原料に利用していますが、その歴史は奈良時代にさかのぼります。
日本にイネが伝わったのは縄文時代後期で、弥生時代に大きく広がりました。
「日本書紀」(720年)によると、イネを「水田種子(タナツモノ)」、クリ・ヒエ・ムギ・マメを「陸田種子(ハタツモノ)」とし、この5つ(五穀)を人間の食べ物としています。
奈良時代に遣唐使により、小麦粉や米粉で型をつくって油で揚げた煎餅のような唐菓子が伝わったと考えられており、これが米粉の始まりとされています。
その後、中国(宗や元)に留学した僧侶が持ち帰った点心や、1571年の南蛮菓子の渡来などの影響もあり、江戸時代には茶道の発展とともに、日本独自の和菓子が完成。
その和菓子の原料として米粉が利用されてきました。
当初は挽き臼を使い人力で米を粉にしていましたが、やがて水車が普及し、米粉は庶民にも広がりました。
明治以降の機械化を経て、より良質な米粉がつくれるようになり、現在では製粉技術の進化によって、パンや麺、スイーツなどにも幅広く利用されています。
<参考サイト>
・米粉ってなに?米粉の歴史
https://komeko.kilo.jp/whatqa2/histry.html
・米粉について|米粉タイムズ
https://komeko-times.jp/about/
③ 米でも麺に!アジア各地で食べられている米の麺
アジア各地では、インディカ米を中心に麺類への利用が盛んで、今も食文化として定着しています。
各国で食べられている、米粉を使った麺をご紹介します。
【ビーフン】(中国)
漢字で書くと「米粉」で、中国福建省や台湾などで米の麺を「ビーフン」と発音し、日本にもその名で広まりました。
うるち米を製粉し、水を混ぜて団子状にして蒸したものを穴から押し出し、麺状にして乾燥させたもので、食べる時は熱湯で戻します。
近年では原材料の一部にトウモロコシやジャガイモのデンプンを加え、伸びたり切れたりしにくくしたものも増えています。
広東省、香港、マカオでは、細いものを「マイファン(米粉)」と呼び、炒めて食べることが多いそうです。
太いものは「ラーイファン(瀬粉)」と呼びスープに入れて食べます。
平打ちのものは「ホーファン(河粉)」で、炒めてもスープに入れても食べるとのことです。
【フォー】(ベトナム)
ベトナムは米の生産が盛んで、米粉料理の種類はなんと143種類と、世界一多いそうです。
米の麺で有名なのが平打ちの「フォー」。
うるち米を水に浸け、挽いてペースト状にしたものを、熱した金属板の上に薄く流し、固まった後に裁断して麺状に加工します。
フォーを使った料理としては「フォーガー(鶏肉のフォー)」と「フォーボー(牛肉のフォー)」などがあります。
麺の切り口が丸く、そばくらいの太さのものは「ブン」と呼ばれ、スープに米麺と牛肉が入った「ブンボーフエ」や、魚の入った「ブンカーニャチャン」、つけ麺スタイルの「ブンチャー」など、料理のバリエーションが豊富です。
※写真はPhotoACの『ブンボーフエ』より
ベトナム南部では、乾燥によりコシを強くした素麺のような細い平打ちの「フーティウ」という麺もあり、エビや豚肉などを入れた「フーティウナムヴァン」という料理が有名。
汁なしで食べることもあるそうです。
※写真はPhotoACの『フーティウミー』より
【クイティアオ】(タイ)
タイでは米を原料にした麺を「クイティアオ」と呼び、スープに入れるか炒めるなどして食べるそうです。
水をつけた米を臼でひき、ドロドロの状態にするところまでは同じですが、その先の作り方や太さ、断面の形の違いによって次のような種類に分けられます。
・「センヤイ」ドロドロの米の汁をシート状にして蒸し、幅1~3cmに切った生麺。
・「センレック」ドロドロの米の汁をシート状にして蒸し、幅1mmほどに切り乾麺にする。
・「センミー」切るのではなく、スパゲッティのように生地を押し出して作る。日本でいうビーフン。
・「カノムチーン」生のビーフン。発酵生地を使用しており、歯ざわりはネットリしている。
※写真はPhotoACの『クイティアオ』より
【カオピヤック・セン】(ラオス)
ラオスを代表する麺である「カオピヤック・セン」は、ベトナムの「フォー」と同じもの。
鶏か豚のどちらかの具を入れて食べるそうです。
また、発酵生地を使った細い麺を「カオプン」といい、ココナッツミルク、豚肉、すり身の魚などが入った汁をかけ、青菜やもやしなどの野菜をたっぷり混ぜて食べます。
食べ方や見た目は、タイの「カノムチーン」によく似ているとのこと。
【ラクサ】(マレーシア)
米を原料とする押し出し麺を「ラクサ」といい、それを使った麺料理も同じように呼びます。
日本のラーメン同様、地域によって味が異なるそうです。
スープに麺を入れ、スパイス類やハーブをたっぷり入れて煮込んで食べます。
スープは大きく2種類に分けられ、魚だしをベースに酸味を加えたさっぱり系と、海老や鶏のスープにココナッツミルクを加えたクリーミー系があるとのこと。
※写真はPhotoACの『シンガポール ラクサ』より
【セヴァイ】(インド)
「セヴァイ」という米の麺は、生米をすりつぶして作った液を蒸すか、加熱しながら練って団子状にしたものを、ところてん式に押し出してつくられます。
レモンなどで酸味をつけたり、ココナッツミルクで甘くしたりして食べるそうです。
【モンバッ】(ミャンマー)
米粉が原料の麺を「モンバッ」と呼び、太さにより分類されているそうです。
うどんよりやや細めのものを「ナンジー」、素麺ほどの太さのものを「ナンデー」、太めの中華麺くらいのものを「ナンラッ」、平打ち麺を「ナンビャー」と呼びます。
ミャンマーの代表的な麺料理である「モヒンガー」は、モンバッにナマズなどの魚ベースの汁をかけたもの。
麺はナンデーやナンラッが使われ、揚げものなどをのせて食べるのが一般的だそうです。
※写真はPhotoACの『モヒンガー ミャンマー料理』より
<参考サイト>
・世界の米めん
https://www.kenmin.co.jp/be-fun-labo/be-fun-labo02
・アジアの麺料理(ラーメン、そば、うどん)
https://world-noodle-dictionary.com/asia/
・ベトナム米粉料理はなんと143種類で世界一!麺・生春巻き・焼き物など一挙ご紹介
https://sekaiwoman.com/column/20211123
・計算し尽くされた美味しさのベトナムつけ麺「ブンチャー」|世界のアジア麺④
https://dancyu.jp/read/2022_00005980.html
・ラオスの【カオピヤック・セン】とタイにおける米麺の考察
https://gonsuu.hatenablog.com/entry/2019/10/21/184733
・マレーシアの麺事情 Noodle in Malaysia
https://malaysianfood.org/noodle/
・バダウ~ミャンマーよもやま話
https://badauk.com/nitijou/taberu/birumaryouri/menrui/
・大いにハマったミャンマーの麺料理「モヒンガー」|世界のアジア麺③
https://dancyu.jp/read/2022_00005947.html
④ 国内外でも、ますます注目が高まる米粉の魅力
日本人の主食である米の消費量は、1962年の一人年間消費量約118.3kgをピークに下がり続け、2020年には50.7kgと、1962年時の半分以下になりました。
自給率100%が見込める数少ない農作物である米の消費拡大を目指し、日本では米粉の普及に注力してきました。
米粉の魅力のひとつは、グルテンを含まないためアレルギーの人も安心して食べられることです。
小麦に多く含まれるグルテンはアレルギー症状を引き起こすことがあり、また自己免疫疾患であるセリアック病の原因とされています。
セリアック病患者の多い欧米のスーパーでは多様なグルテンフリー食品が販売されており、米粉のパンなども流通しています。
近年の欧米圏のグルテンフリー志向や、小麦粉価格の急騰などもあり、米粉は消費量・生産量ともに2018年ごろから増加し、過去5年で約1.8倍になっているそうです。
製粉技術が進歩して米粉の精製度が向上し、和菓子や煎餅だけでなくパンやケーキにも適した粉がつくれるようになり、「菓子・料理用」「パン用」「麺用」など用途別に基準を定められるようになったとのことです。
<参考サイト>
・国内産米粉総合情報サイト 米粉はグルテンアレルギー患者の救世主
https://www.komeko-life.com/healthy
・グルテンフリーから世界を視野に、日本の米粉開発の最前線
https://www.my.metro.tokyo.lg.jp/w/001-20221024-00008095
・米粉によるグルテンフリー市場の取り込みに向けて
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/attach/pdf/index-241.pdf
⑤ 日本の食卓にも浸透する米粉麺
米粉への注目の高まりを背景に、日本でも米粉を使った様々な麺がつくられています。
小麦粉の代わりに米を使い、デンプンなどをつなぎに用いて成形します。
もちもちとした食感とつるっとしたのどごしで、和洋中いろいろな料理に合わせやすいのが魅力。
小麦アレルギーの方にも食べられる食品として、米粉100%のものも色々つくられています。
また米粉は、小麦粉に比べてわずかながらカロリーが高いのですが、米粉の麺は小麦粉の麺よりも少し低カロリーとのこと。
米粉のほうが小麦粉よりも吸水率が高くより多くの水を吸い込む、などの理由から、同じ重さの麺だと米粉を使ったもののほうがカロリーが低くなる、ということのようです。
【米粉うどん】
ゆで上がりが早いのが特徴で、さっぱりしていて食べやすい麺です。玄米全粒粉を加えたうどんも販売されています。
【米粉ラーメン】
麺単体や、スープとセットにしたものなど、様々なものが流通しています。
【米粉そば】
米粉を練りこみ、つなぎに海藻を使用したそばは、もちもちした食感が楽しめるそうです。
【米粉素麺】
小麦粉と米粉を使ったものや、米粉100%のものがあります。
【米粉冷麺】
「ひとめぼれ」の米粉を使った盛岡冷麺が、スープとセットで販売されています。
【フォー】
日本でも定着してきたフォーは、もともとはビーフンと水だけが原料でしたが、タピオカなどを混ぜてつくることも増えてきているそうです。
【ビーフン】
手軽に食べられるインスタント食品として、味付きの乾麺が有名です。
【米粉パスタ】
スパゲティやマカロニ、ペンネ、フェットチーネなどが販売されており、半生タイプもあります。小麦粉パスタにはないもちっとした食感が特徴です。
【その他】
発芽玄米と馬鈴薯デンプンを使用した麺や、米粉100%の麺などもあります。
<参考サイト>
・小麦粉のカロリーは高いのか?米粉との違いや驚きの真実とは
https://www.avan-sweets.com/article/detail/others-kcal/44
・グルテンフリー 生麺独特の食感とおいしさに自信があります
https://www.kobayashiseimen.info/ricenoodles
・国内産米粉総合情報サイト 米粉商品のご紹介
https://www.komeko-life.com/product_cat/noodles
・米粉麺・玄米麺の種類とレシピをご紹介
https://amanecu.com/?mode=f14
・『7代目ケンミン焼ビーフン』
https://www.kenmin.co.jp/products/brands/be-fun/
⑥ 《美味しい手延べ麺》瀬戸凪<楽々膳・黒> 編
素麺は、夏だけのものではありません。
温かいおだしと一緒に召し上がっていただければ、寒い季節にもピッタリのメニューです。
ただ、石井製麺所では、もう一歩踏み込んで、冬の季節にこそ“食べたくなる”麺をお届けしたいと考え、新しい手延べ麺を考えました。
それが、瀬戸凪<楽々膳・黒>の「手延べ黒ごま麺」「手延べきくらげ麺」「手延べひじき麺」の三品です。
これらは、薬膳に基づいて“黒の食べ物”にこだわり、手延べ麺に食材を練り込んでいます。
薬膳では“黒い食べ物”は、冬に食べると良いとされ、特に体力や免疫力を司る『腎』をいたわるといわれ着目されています。
そこで、“黒い食べ物”の代表格であり小豆島とご縁の深い「黒ごま」「きくらげ」「ひじき」を選び練り込んでいます。
「手延べ黒ごま麺」は、温かいおだしに合うようにと少し太い麺に仕上げています。
茹で伸びしにくく、温かいスープや具材とも絡み合って食べやすい少し黒みがかった麺が特長です。
「手延べきくらげ麺」は、きくらげの良さが活きた麺に仕上がっています。
細麺ながら独特のプリプリッとしてツルツルな食感が特長の手延べ麺です。
「手延べひじき麺」は、小豆島の池田漁協様との協同開発による手延べ麺です。
小豆島産の食材を使った麺をつくりたいと考えていた三代目に、ピッタリの食材と偶然の出会いが重なり、完成することができました。
手延べ素麺は美味しく召し上がっていただくことも大切ですが、食べる方の健康を思いやる麺でもありたいと考えています。
“健康面”のことを考えた“健康麺”を、この季節に大切な方への贈りものなどにいかがでしょうか。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《瀬戸凪<楽々膳・黒>》 https://141seimen.thebase.in/items/74185483
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.25
メンコレ⑤/オリーブを練り込んだ素麺への想い
今回は「メンコレ」第5弾として、生地にオリーブを練り込んだ素麺を取り上げたいと思います。
オリーブを練り込む…というのは、産地だからできる小豆島独自のものではないでしょうか。
実は石井製麺所のお隣はオリーブ会社さんで、石井製麺所がお届けする小豆島産オリーブオイルを練り込んだ手延べ素麵はそちらからオリーブオイルをいただき、製造しています。
石井製麺所のオリーブオイル素麺は、オリーブオイルを生地に練りこみ、表面にも塗って仕上げた商品ですが、小豆島手延素麺協同組合さんはじめ、小豆島のほかの生産者さんでも「オリーブ素麺」を製造しておられます。
しかしながら、正直、三代目の私もオリーブのことについてそこまで詳しくはありませんでしたが、今回はオリーブ栽培に携わる方やオリーブの研究をされる方からお話を聞く機会を得たこともあり、ブログのネタとしてまとめてみたいと考えました。
素麵の他に、オリーブで有名な小豆島では、9月下旬~11月上旬にオリーブの収穫が最盛期を迎えます。
オリーブの実は木から離れたその瞬間から劣化するといわれ、収穫後24時間以内には搾油され加工するそうです。
そのため、オリーブオイルの加工も最盛期は11~12月となり、収穫から搾油まで島のオリーブ農家さんは大忙しの時期なんだそうです(9月下旬から10月頃まではオリーブの新漬けといったお漬物づくりで大忙しとなるようです)。
先日、オリーブ農家さんを訪ねた際に搾りたてのオリーブオイルをいただきましたが、新米や新茶のようにフレッシュで香り高くとても美味しいもので、オリーブオイルもまさに季節の味わいなんだと感じました。
そして、皆さんはそのオリーブオイルの味わいに差があるなんてご存じでしたか?
一口にオリーブオイルといっても奥が深いようで、知ってるようで知らなかったオリーブの価値をさらに知ることができた気がします。
オリーブの歴史や、世界のオリーブオイル事情などをはじめ、日本のオリーブの歴史を含めてとても感慨深いものがあり、改めて小豆島の特産品であるオリーブを大切にしたいと感じました。
今回は麺に関してのお話は少なくなってしまいましたが、お付き合いの程、よろしくお願いいたします。
※以下にご紹介する素麺は、2023年11月14日現在の当社調べになります。
ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。
写真はオリーブの農家さんを訪れた際にいただいた、“搾りたて”のオリーブ果汁(オイル)です。
まだ濾過されていないこともあり、見た目には少し濁りがあり、味わいには苦味や辛味、青臭い風味が口の中に拡がり、複雑な味わいがありました。
ここから、濾過され雑味を取り除き、一定の味わいになるように複数の品種のオイルとブレンドされて皆さまのお手元に届けられます。
<参考サイト>
・旬のオリーブオイルを味わうなら11〜12月がおすすめ。秋の小豆島でオリーブ収穫!
https://colocal.jp/topics/lifestyle/shodoshima/20221107_152643.html
・今まさに一番のおいしさ! オリーブオイルにも旬がある
https://weathernews.jp/s/topics/201912/170165/
【目次】
① 世界から日本、そして小豆島へ続くオリーブの歴史
② 世界と日本のオリーブ産地
③ オリーブオイルの種類や、産地による味わいの違い
④ 小豆島手延素麺協同組合の「島の光 オリーブそうめん」
⑤ 石井製麺所の「小豆島オリーブオイル素麺」
⑥ 《美味しい小豆島の食財》オリーブ新漬け(お漬物) 編
① 世界から日本、そして小豆島へ続くオリーブの歴史
オリーブはモクセイ科の常緑樹で、地中海沿岸では樹齢3000~4000年のものもあり、その生命力の強さから「生命の樹」とも呼ばれているそうです。
約8000年前、地中海沿岸からアフリカ北岸一帯に自生していました。
5000年~6000年前にはすでに栽培が始められていたようです。
現在のトルコ南部・シリア周辺に住んでいたフェニキア人が、海上交易を通じて近隣の国々にオリーブ栽培を伝えたと考えられています。
地中海東部からギリシャへ、またアフリカ経由でイタリア南部やスペイン南部へ、さらにアメリカ大陸やアジアなどへ広がり、現在では南半球を含め世界各国で栽培されています。
オリーブは地中海沿岸の人々にとって神話や聖書などにも登場するほど大切なものでした。
ギリシャ神話では「聖なる木」として、女神アテナのシンボルのひとつになっています。
また旧約聖書の「創世記」にあるノアの箱舟の話に出てくることから、平和のシンボルともされています。
日本の歴史にオリーブが初めて登場するのは、安土桃山時代です。文禄3年(1594年)、キリスト教の宣教師から豊臣秀吉への進物に、オリーブの実1樽があったそうです。
また同じ頃ポルトガルの宣教師がオリーブオイルを日本に持ち込み、蘭方医たちが「ホルト(ポルトガル)の油」と呼んで薬用に使ったと言われています。
香川県(讃岐地方)出身で有名な「平賀源内」もオリーブに少しご縁があったと聞きます。
実は、日本の在来種でもあった「モガシ」を平賀源内が「オリーブ」と勘違いして、「ホルトノキ(ホルトの油が採れる木)」と名付けてしまい、現在も「モガシ」の和名は「ホルトノキ」とされています。
江戸時代、鎖国政策により日本ではオリーブがあまり普及しませんでしたが、幕末から明治にかけてヨーロッパを訪れた日本人が、オリーブオイルが医薬品、美容、また料理に日常的に使われているのを目にし、輸出も目論み、国内でのオリーブ栽培の取り組みが始まったそうです。
明治初期には、フランスからオリーブ樹の苗木が持ち込まれ、盛んに栽培実験がおこなわれたそうです。
その際には、ブドウ、レモン、ゴムの木、ユーカリの木などと一緒に輸入され、日本の農業と産業の活性化に繋がるようにと、オリーブ栽培の研究が進められたそうです。
そういった国内の歴史については、小豆島にある風車で有名な「小豆島オリーブ公園」内の資料館でも見ることができます。
日本での本格的な栽培がおこなわれたのは現在の神戸で、旧外国人居留地としても有名な北野(現在の神戸北野ホテルあたり)だそうです。
しかしながら、災害や害虫の被害、オリーブを栽培する資金不足に加え、急速な市街区域の開発に伴い、日本初のオリーブ農園は終焉を迎えることになったそうです。
やがて、再びオリーブに脚光が当たる時代が来ます。
日露戦争の戦後補償で手に入れた海域で獲れる海産物の加工用にと、オリーブオイルの必要性に注目が集まりました。
国産のオリーブオイルに漬けてヨーロッパへ輸出しようと考えられ、オリーブオイルの国内製造を目指して明治41年(1908年)小豆島でオリーブの試験栽培を開始。
これが現在の小豆島のオリーブ産業の礎と考えられています。
当時は、鹿児島と三重でも同時に試験栽培がおこなわれたそうですが、さまざまな要因が重なり上手く行かず、穏やかな気候で雨の少ない小豆島では順調に生育し、幾度かの盛衰を繰り返し、今日もなおオリーブ栽培が盛んにおこなわれています。
※写真はPhotoAC「オリーブ原木」
<参考サイト>
・【オリーブ】の種類と旬の時期、選び方のコツを解説。特産地はどこ?
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/11/post-3164.html
・オリーブの歴史
https://www.1st-olive.com/guide/story/
・オリーブの起源と歴史
https://www.healthyolive.com/olive-history/
・人間とオリーブの3000年を超える歴史とその関係性
https://www.nippon-olive.co.jp/contents/tree/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%96%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2/
・オリーブの歴史と品質
https://www.my-kagawa.jp/feature/olive110/quality
・日本のオリーブ・歴史
https://www.healthyolive.com/olive-history/japan.html
・世界に誇る「小豆島産オリーブ」110年の歴史
https://www.guidoor.jp/media/shodoshima-olive/
・道の駅 小豆島オリーブ公園 公式サイト
https://www.olive-pk.jp/index.html
・ホルトノキ(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%8E%E3%82%AD
② 世界と日本のオリーブ産地
オリーブは美容や健康促進の面でも注目されていて、生産量は年々増加しています。
温暖な気候の地中海沿岸諸国で多く栽培されています。
オリーブオイルといえばイタリア料理のイメージがありますが、オリーブの生産量世界一はスペインで、総栽培面積は約260万ヘクタールにもなります。
特に南部のアンダルシア地方は世界最大のオリーブ栽培地で、カタルーニャ地方とともにローマ時代からの一大オリーブオイル産地として有名です。
イタリアはオリーブの生産量が世界2位で、その栽培面積は全体で約114万ヘクタールとのこと。
国内最大の産地は南部のプーリア地方ですが、他にも北部のリグーリア地方、中部のトスカーナ地方などが主な産地です。南北に長い地形のため、地域により多様な品種を栽培しているそうです。
スペインとイタリアだけで、全世界の半分以上のオリーブが生産されています。
ギリシャでもオリーブが多く栽培されています。
ちなみにギリシャは記録に残る世界最古のオリーブオイル生産国で、オリーブオイルの消費量は1人当たり年間12.5リットルと世界一だそうです。
その他、モロッコ、トルコ、チュニジアなどがオリーブ生産量の上位を占めます。
栽培面積は、香川県全体で約207ヘクタール(2017年実績、2021年調)だそうで、国内ではダントツの栽培面積を誇り、実の収穫量はそのほとんどが香川県産で、オリーブオイルの生産量も日本一なんです。
比較的穏やかな天候が多く、雨も少なく湿度が低い瀬戸内の気候が、オリーブ栽培に適しているとされます。
オリーブは香川県の県花や県木にも指定されています。
香川県の他に、岡山、広島、熊本、大分、長崎、兵庫、和歌山、静岡などでも栽培に取り組まれ、試験栽培時には上手く行かなかった鹿児島や三重県でも栽培がおこなわれており、多くの地域に拡がりを見せています。
<参考サイト>
・オリーブオイルの産地と特徴
https://www.nisshin-oillio.com/olive/olive01.html
・【世界】オリーブの産地・生産量ランキング
https://urahyoji.com/crops-olive-w/
・日本と世界のオリーブ事情を比較
https://www.healthyolive.com/world/data.html
・オリーブの主要生産国
https://www.osfarm.co.jp/about/olives
・小豆島オリーブオイル
https://honbamon.com/product/10-syodoshima-oliveoil/index.html
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品 本場の本物 小豆島オリーブ
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/892.html
・【都道府県】オリーブの産地・生産量ランキング
https://urahyoji.com/crops-olive/
③ オリーブオイルの種類や、産地による味わいの違い
オリーブオイルは、その成分の1つである「遊離オレイン酸」の割合(酸度)により、大きく3つに分類することができます。
遊離オレイン酸の割合が少ないものほど酸化しにくく、上質なオリーブオイルと言えるそうです。
<オリーブオイルの世界基準>
化学処理を一切行わず、オリーブの実を搾ってろ過しただけのオイルは全て「バージンオリーブオイル」と呼ばれます。
地中海沿岸のオリーブ生産国が中心となってオリーブの品質基準が厳格に決められていて、「バージンオリーブオイル」の中でも、指標として酸度が0.8%以下で、専門家による官能検査(匂いや味の審査)で認められたものだけが「エキストラバージンオリーブオイル」と呼ばれます。
世界基準では、品質が良い順に「エキストラバージンオリーブオイル」、「バージンオリーブオイル」、「オリーブオイルランパンテ」などと分けられます。
精製せずに作られたオリーブオイルはオリーブの香りや味わいをダイレクトに感じられ、辛みの強いものからマイルドでフルーティな味わいのものまで幅広くあるそうです。
オリーブオイルは、産地ごとの気候や土壌、気温、品種、収穫時期、摘み方、搾り方によって、その風味や香り、色などの個性が異なるそうです。
「エキストラバージンオリーブオイル」は、その風味を活かすため、パンに付ける、サラダにかけるなど、生のまま使うのがおすすめとのことです。
<日本独自のオリーブオイルの品質>
地元で丁寧に手摘みした新鮮な果実を、すぐさま地元の工場に運び、非加熱でつくっています。
日本はオリーブオイルの品質基準をつくる協会(IOC)には属していないので、ヨーロッパとは基準が異なりますが、独自基準で品質の良いオリーブオイルに「エキストラバージンオリーブオイル」とランクを付けて販売しています。
また、以前から日本独自のオリーブオイルの種類に「ピュア」という呼び名があり、これは日本国内だけの品質基準だそうです。
現在は、「オリーブオイル」という名前に分類されるので、国内で購入できるオリーブオイルとしては、「エキストラバージンオリーブオイル」と「ピュアオリーブオイル(オリーブオイル)」となります。
現在、小豆島のオリーブ農家さんの中には、世界的基準で認められるようにとわざわざ海外の認定機関へサンプルを送り検査を受け、厳格に「エキストラバージンオリーブオイル」の認定を受けておられるところもあります。
また香川県では、香川県産オリーブオイルに対する消費者の信頼を高めることを目標として、「かがわオリーブオイル品質評価・適合表示制度」を設けており、県独自で定めた品質評価基準に適合した製品に「品質適合」のマークが表示できるようになっているそうです。
近年は、小豆島でつくられるオリーブオイルが世界的なコンテストでも優秀賞を獲得していて、「フロスオレイ」(世界オリーブオイルガイドブック」に掲載されるだけではなく、「OLIVE JAPAN」(国際的なオリーブオイルの品評会)で金賞を受賞するなど、高い評価を獲得しているそうです。
世界からも認められる良質なオリーブオイルが多くなっているとのことなので、ぜひ味わってみたいものですね。
日本の気候で育つオリーブでつくられたオイルはとてもマイルドで、和食にとても良く合い、発酵食品にもピッタリだと言われます。
ぜひ、そうめんつゆに垂らして、召し上がってみてくださいね。
お味噌汁や納豆に掛けるとコクが出て旨味が増し、お刺身などのつけ醤油の代わりにしても美味しそうです。
「ピュアオリーブオイル」は搾っただけのオイルを精製し香りや味のない「油」の状態にしたものと、「エキストラバージンオリーブオイル」や「バージンオリーブオイル」とブレンドした食用オイルとされています。
200℃くらいまでの高温に耐えられるので調理用(加熱用)としておすすめだそうです。
<オリーブオイルの味わいの違い>
オリーブの味は、オリーブの実に含まれるポリフェノールの種類や量によって変化します。
さらに「ブレンダー」といわれる専門職の方が、複数のオリーブオイルを混ぜ合わせさまざまな味わいに仕上げるオリーブオイルもあるそうです。
ブレンドすることにより、単一の品種では味わえない、独特の風味や美味しさが生まれるそうですよ。
青い実を搾ったものは、辛みやオリーブ独特の苦味が強い場合がありますが、青々しくフレッシュで爽やかな香りで、海外でも人気の高い味わいだそうです。
サラダやカルパッチョ、肉料理や、青魚などのお料理に合うようです。
逆に黒く熟した実をつかうと、とてもフルーティな味わいのオイルになるとか。
温野菜やクリーム系パスタ、鶏肉や白身魚などのお料理に合うようです。
オリーブオイルには、むせかえるほど喉の奥からカッとくる辛さのあるものから、青りんごや青いバナナを連想させるとても甘い香りが鼻と口に拡がる味わいのものまであるそうです。
オリーブ単体でもオリーブオイルオイルの味わいには差がありますが、オリーブオイルにガーリックやトウガラシなどを漬け込んだ、「フレーバーオイル」というものもあります。
素材の持つ香りや味わいを移し調味されたオイルのことで、料理の仕上げなどにピッタリなものもあるそうです。
<参考サイト>
・オリーブオイルを知ろう!~エキストラバージン、ピュアオリーブオイルの違いとは~
https://www.nippon-olive.co.jp/contents/food/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%92%E7%9F%A5%E3%82%8D%E3%81%86/
・オリーブオイルはどれがおすすめ?産地や種類など選び方のポイントも解説!
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/sweets/detail/000944.html
・オリーブオイル「イタリア産」「スペイン産」の違いは?
https://www.gourmetcaree.jp/matome/2023/01/27/olive/
・オリーブオイル専門店「オリオテーカ」に聞く、オリーブオイルの基礎知識
https://www.nisshin.com/entertainment/otokonoryouri/column/index09.html
・イタリアだけじゃない!オリーブオイルの原産地ごとの特徴
https://food-drink.pintoru.com/olive-oil/country-of-origin/
・かがわオリーブオイル品質評価・適合表示制度
https://www.pref.kagawa.lg.jp/seiryu/olive/kfvn.html
④ 小豆島手延素麺協同組合の「島の光 オリーブそうめん」
小豆島手延素麺協同組合さんの手延べ素麺ブランド「島の光」に、オリーブを使った素麺があります。
オリーブの実をペースト状にして生地に練り込み、表面にオリーブオイルを塗って仕上げた、オリーブ果実の黒い粒が見える美しい緑色の素麺。
小豆島手延べそうめんならではののどごしの良さとコシの強さも魅力です。
<参考サイト>
・小豆島手延素麺協同組合 手延そうめん 島の光
https://www.shimanohikari.or.jp/product/soumen.html#
・島の光 手延べオリーブそうめん 0.9kg 化粧箱入
https://www.somen-shimanohikari.shop/shopdetail/000000000016/
⑤ 石井製麺所の「小豆島オリーブオイル素麺」
健康的な食品として世界中で注目される 「オリーブオイル」を練り込んだ 石井製麺所だけの手延べ素麺です。
小豆島ではオリーブの収穫時に、実に傷を付けないよう、丁寧に一粒ずつ手摘みされています。
秋になると島内をはじめ、島外からの援農者の方々が一緒になって、オリーブの実を短期間で収穫されます。
農家さんによると、今年のオリーブの出来具合は順調とのことですので、今年も良い品質のオリーブオイルが期待できそうです。
小豆島産オリーブオイルは、健康的な食品として人気も高いのですが、小豆島でつくられる量には限りもあり、希少な小豆島の特産品で格別の味わいがあります。
小豆島の穏やかな気候で育ったおかげか秋に収穫する実は、日本人に合う優しい風味のエキストラバージンオリーブオイルに仕上がるそうです。
そのオリーブオイルを練込んだ手延べ麺は、ツルンとした食感が魅力的です。
細く白い麺は、さまざまな食材とも相性よく、素麺チャンプルやお野菜と合わせてサラダ仕立てにしても美味しく召し上がっていただけます。
着色料・保存料・化学調味料など一切使用していませんので安心してお召し上がりいただけます。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《小豆島オリーブオイル素麺》 https://141seimen.thebase.in/items/12170333
⑥ 《美味しい小豆島の食財》オリーブ新漬け(お漬物) 編
素麵のご紹介ではありませんが、オリーブの新漬けという、まさに日本独自のオリーブの食べ方です。
オリーブの実にはアク(苦味成分)が多く、そのままでは決して食べられません。
ヨーロッパでは、アクをほとんど抜かずに塩漬けや酢漬けにされて食べられています。
オリーブの新漬けは、丁寧に選果され、選別され、アク抜きがおこなわれ、ようやく塩漬けにされるとても手間の掛かるお漬物です。
ですが、オリーブの実の独特の食感と程良いしょっぱさが、お酒のアテにいいのはもちろん、ご飯を炊くときに一緒に入れて炊く方もいらっしゃいます。
以前に、知り合いのオリーブ農家さんが東京でおこなわれた日本酒の会やワインのテイスティング会でオリーブの新漬けを出されたときに、「アテとして一番合う」と利き酒師さんやワインソムリエさんにご評価いただけたと言っておられました。
農家さんの中では、オイルよりも新漬けづくりに力を入れる方もいるなど、オリーブの食べ方のひとつとしてとても人気があるとのことです。
また、収穫したての秋冬にしか出回らず、賞味期限も短いことから、まさにこの時期の旬の味覚としてもおすすめです。
新漬けの製造方法は、小豆島でオリーブの栽培に成功してから、大変ご苦労されて開発された製法だそうです。
何度も試行錯誤を繰り返し、今のような美味しい新漬けが食べられるようになったとのことです。
小豆島にお越しの際は、ぜひ「オリーブの新漬け」を味わってみてください。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.24
麺究者への道/うどんを研究してみる
先日、香川県を代表する讃岐うどんメーカー「石丸製麺株式会社」様を訪ね、石丸社長様とお話をさせていただく機会がありました。
最近では、様々なメーカー様を訪ね見知を拡げているところですが、今回は香川県を代表する讃岐うどんメーカーであり、社長様直々のご対応もあり恐縮しっぱなしでした。
工場見学も石丸社長自らのご説明と共に隅々まで拝見し、大変貴重な時間を過ごさせていただきました。
石丸社長様から伺うお話からは、「うどん愛」はもちろん、「郷土愛」「食べる方への思いやり」「共同開発するお会社様へのリスペクト」「日本全国の産地への思いやり」を感じっぱなしで、ただただ感動しておりました。
石井製麺所も規模は違いますが、「素麺愛」「郷土愛」「食べる方への思いやり」「産地との協同」には取り組んでいますので、大変勉強になりました。
同じ麺をつくる者同士、規模は違っても同じ志を持って歩んでいきたいと考えております。
今回は、石丸製麺様への訪問や、弊社冬季限定の「手延べ半生うどん」の販売再開ということもあり、“うどん”を深掘りしてみたいと考えました。
うどんといっても、地域やご家庭によっても好みの分かれるところだと思います。
また、小麦粉からつくられる食品ですから素麺との違いは、どういった所にあるのでしょうか。
香川県は「うどん」と「素麺」の産地。
といっても製法は全く異なりますから、私は全く別の食べ物として考えています。
とはいえ一般的に、うどんは素麺同様、小麦粉と塩と水を主な原料とした麺ですから、その点は素麺と同じです。
農林水産省による日本農林規格では、乾麺類はその太さにより「うどん」「ひやむぎ」「そうめん」「きしめん」などに分類されており、直径1.7㎜以上のものが「うどん」と定義されています。
のどごしが良く多彩なアレンジも可能なうどんは、年齢性別を問わず好まれており、消化も良いので体調不良の時や離乳食にも活用される身近な食材です。
今回は、その“うどんの価値”について迫ってみたいと思います。
その主原料となる小麦の歴史や品種、製法や食べ方、地域性などについても調べてみましたので、今回もお付き合いの程よろしくお願いいたします。
この工場見学の後日、石丸社長様から直筆のお手紙まで頂戴しました。
<参考サイト>
・石丸製麺株式会社
https://isimaru.co.jp/
・ひやむぎとそうめんの違い 全国乾麺協同組合連合会
https://www.kanmen.com/topic/04_chigai.html
【目次】
① 製粉技術の発達が、小麦の食用を広める
② 国産小麦の開発に歴史あり!うどん用国産小麦生産の取り組み
③ 目的や産地のこだわりなど、製法や流通形状による分類
④ うどんを侮ることなかれ!多彩な料理方法やトッピング
⑤ うどんは地域によって、食感・味付けなどが違う?!
⑥ 日本三大うどん?!各地のご当地うどんをリサーチ
⑦ 《美味しい手延べ麺》手延べ半生うどん 編
① 製粉技術の発達が、小麦の食用を広める
野生の麦は、今から1万年ほど前の西アジアやイラクあたりの山岳地帯の草原で生えていたことが分かっています。
1万年〜8500年前頃には、野生の麦に加え栽培した麦も食べていたようです。
小麦と大麦はまだ区別されず、石と石の間に挟んで粗く砕き、焼いて食べていたとのこと。
紀元前6500年頃、小麦よりも大麦の方が栽培や収穫が容易であったことから、多く栽培されるようになりました。
大麦は、臼で粗挽きして土器で煮たお粥のような形状で食べられていたそうです。
小麦は、山岳地帯からメソポタミア平原や地中海沿岸、エジプトにまで広がりました。
紀元前3000年頃の古代エジプトで、「サドルカーン」と呼ばれる粉挽き専用の平らで大きな石がつくられ、小麦の外皮を取り除いた粉ができるようになりました。
この小麦の粉に水を加えてこねると弾力と粘りのあるかたまりができます。
これをオーブンで焼くと、比較的やわらかくおいしいものができたそうです。
その後、手で回転させながら粉を挽く石臼が発明されました。
大麦の粉よりも小麦の粉の方が美味しいパンをつくれるため、大麦ではなく小麦が主に食べられるようになったとのこと。
紀元前400年頃にはギリシアで、その100年後にはローマで「水車」を使った製粉工場がつくられました。
600年頃には、オランダやイギリスの東海岸で「風車」を使った製粉工場が広がりました。
日本では、弥生時代の中末期には小麦や大麦が栽培されていたことから、麦を何らかの形で食べていたと考えられます。
4世紀には米とともに麦、粟、稗なども主食とされ、8世紀には朝廷が小麦や大麦の畑作を奨励したそうです。
「麦」は万葉集にも登場しています。
“うどんのもと”となる料理は飛鳥時代に中国から伝来しましたが、現代のものとはかなり違っていたようです。
室町時代には僧侶の間食だったものが、茶の湯の普及とともに一般の人も食べるようになり、安土桃山時代にかけて日本の風土や人々の嗜好に合うよう変化し、日本独特のめん類へと発展したと考えられます。
世界の製粉の発展に話を戻すと、動力が水車や風車になっても、17世紀頃までは小麦を一回挽いて粉と外皮を分けるだけのものでした。
17世紀のフランスで、石臼で挽いた小麦をふるいで分けることを繰り返す、今日の製粉技術と同じ考え方の段階式製粉方法が始まりました。
1833年に、回転する二本のロールの間を通して小麦を潰す「ロール式製粉機」がスイスで初めて実用化。
品質の良い小麦粉が大量に生産できるようになりました。
日本では1872年(明治5年)に政府が石臼式製粉機をフランスから購入し、東京の浅草蔵前に、水車を動力とした官営の機械製粉工場が建設されました。
明治20年代以降、現在に続く大手製粉会社の前身となる会社が相次いで創立され、機械製粉が本格化していきました。
<参考サイト>
・小麦・小麦粉の歴史
https://www.seifun.or.jp/pages/92/
・小麦粉の歴史・文化
https://www.nisshin.com/entertainment/encyclopedia/flour/flour_03.html
② 国産小麦の開発に歴史あり!うどん用国産小麦生産の取り組み
うどんの生産量1位を誇る香川県のホームページ「県産小麦のあゆみ」によると、小麦の栽培品種として優先される条件は、安定して多くの量が収穫できることに加えて、近年は、製粉や製麺への適性が良好であることが品種選定の大きなポイントだそうです。
香川県の小麦の生産量と栽培面積は、ともに1961~1962年頃が戦後のピークだったとのこと。
その後、高度経済成長に伴う小麦の生産意欲の低下や、収穫期の長雨による大被害などにより、1973年の栽培面積は1962年のわずか2%となりました。
オイルショックを機に世界的な食糧危機が叫ばれ、日本の食糧自給率の低さが問題視されるようになると、輸入に依存していた小麦についても、国・県・農業団体等が麦作振興の各種施策や推進運動を展開するようになったそうです。
これにより麦作の収益性が向上し、小麦の作付け面積も回復していったとのこと。
1970年代からオーストラリア産の小麦がうどんの原料に使われはじめました。
現在では年間約70万トンものうどん用小麦がオーストラリアから輸入されており、日本で消費されるうどんの原料の大半を占めています。
オーストラリア産小麦は、小麦粉生地の安定性、うどんの黄白色の色調、適度な弾力の食感、ゆでた後の麺の劣化の遅さなどの優れた特性により、高く評価されてきました。
手延べ素麺の原料としても、オーストラリア産の小麦が適しているとされ、多くの素麺製麺所が使用しています。
こうした状況の中、讃岐うどんを地元産小麦でつくろうという強い想いのもと、2000年に開発されたのがうどん用の小麦「さぬきの夢」。
香川県の農業試験場が品種交配・選抜を繰り返し、10年がかりで開発しました。
「さぬきの夢」はもっちりした食感や旨みには定評がありますが、タンパク質の量が少なくもろい性質のため、生地にした際の弾力が弱く、うどんにすると切れやすいなどの扱いにくさが課題でした。
弾力の弱さを克服しようと新品種の開発が進められ、小麦特有のたんぱく質「グルテン」に着目。
数万の個体から最もバランスのとれたグルテンを持つ新しい品種が選抜されました。
グルテンの切れやすさを比較した実験では、今の品種の3倍以上の時間が経っても新品種は切れなかったとのこと。
2024年秋から本格的な栽培が始められる予定だそうです。
<参考サイト>
・県産小麦のあゆみ
https://www.pref.kagawa.lg.jp/seiryu/sanukinoyume/menpaku/03_ayumi.html
・讃岐うどん 支える小麦 産地オーストラリアと日本の開発最前線
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230510/k10014062521000.html
・「さぬきの夢2000」小麦開発ストーリー
https://flour-net.com/column/sanukinoyume/sanuki2000_story/
・うどん用小麦「さぬきの夢」
https://www.flour.co.jp/knowledge/sanuki-no-yume/
③ 目的や産地のこだわりなど、製法や流通形状による分類
「手打ちうどん」という言葉を目にすることはよくあると思いますが、うどんにも、素麺同様「手延べ製法」でつくられたものもあります。
弊社の「乾うどん」「半生うどん」も手延べ製法で製麺しています。
また販売されている形状も、生麺や乾麺など様々あるので、それらの分類を整理してみました。
<製法による分類>
【手延べ製法】
基本的に手延べ素麺をつくるときと工程は同じですが、太さや長さが異なるため、実際には作業の時間や手間のかけ方が異なります。
弊社の場合は、生地づくりから麺の完成までに、乾うどんで約30時間かかります。半生うどんは、天日乾燥と室内乾燥、その後の熟成を経て、適切な半生状態を見極め、その日のうちに袋詰めします。このへんは、製麺所ごとに異なるかも知れません。
手延べですので、麺を平らにして切るのではなく、簡単に言うと引っ張って伸ばしていくため麺の断面は丸になります。
特に素麺と違うのは、乾燥時間でしょうか。
素麺は細いので、天日干しした際に表面と内部の乾燥差は大きく出ませんが、うどんは太いため表面と内部の乾燥(水分量)具合に差が生まれます。基本的には、ゆっくり乾燥させるのが重要で、急に乾燥させると表面が割れてしまったり、茹で上げたときに麺が裂けるなど影響が出ます。
石井製麺所での「半生うどん」の製造現場。「箸分け」の様子。
【手打ち製法】
手打ち製法をウリにするうどん屋さんが店先で、デモンストレーションしているのをよく見かけられるのではないでしょうか。
生地を練り上げて寝かせたら、よく踏んで(力強く練ることで)、麺棒で平たく伸ばし、包丁で麺の形に切ります。
よく踏むことでグルテンのつながりが形成され、コシが強くなります。
平たく伸ばし包丁で切るので、麺の断面は四角になります。
生地づくりから麺の完成までに約2~3時間かかります。
【機械製麺】
鉄製のロールの間を数段階通して生地をのばし、ロールカッターという切り刃で麺の形に切ります。
生地から形になるまで約20分で完成するそうです。
<流通形態による分類>
【干しうどん】
製麺したあと乾燥させ、保存しやすくしたもの。細うどんに多いそうです。
【生うどん】
小麦粉に対して26~35%の水(食塩水等)を加えて製麺したものが生めんと考えられます。
製麺後そのまま、もしくは表面に粉をまぶして包装されます。
麺の熟成度が時間とともに変化するため、長期保存には向いていません。
【半生うどん】
生麺を作る工程に、常温または加熱空気や湿熱空気などにより乾燥する工程を加え、最終的な水分含有率を減らし、酸化を抑えた状態のもの。
干しうどんよりも高水分の段階で乾燥を止めることで、常温で1~2カ月ほど日持ちします。
密閉された袋に入れる、脱酸素材を入れるなどにより、さらに酵素活性を抑えるのが一般的です。
石井製麺所(手延べ素麺所がつくるものは恐らくほとんど同じですが)では、生うどんをつくる工程での水分量の変化ではなく、乾麺の製法を改良して「半生」にしています。
同じ「半生」でも、生麺からの発想の製法と、乾麺からの発想の製法では考え方も工程も異なりますね。
【うどん玉(ゆでうどん)】
冷蔵麺(チルド麺)。ゆでた麺を加熱殺菌後、袋に入れて完全密封し、10℃以下で冷蔵保存したもの。
すでに一度ゆでているため、簡単に調理できるのが特徴です。
【冷凍うどん】
麺をゆでて冷水で締めた直後に、短時間で凍結させる急速凍結技術が用いられます。
打ちたて、ゆでたての最もおいしい状態を長期間保つことができます。
石井製麺所での「半生うどん」の製造現場。
<参考サイト>
・製法による麺の違い
https://kamote.co.jp/college/course_03.php
・Wikipediaうどん
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%A9%E3%82%93
・うどんの種類
https://www.tablemark.co.jp/udon/udon-univ/lecture02/index.html
・生うどん、半生うどん、乾燥うどんの違い
https://www.kijoan.com/staffb/namaudonhannamaudonkansoudonhikaku.html
④ うどんを侮ることなかれ!多彩な料理方法やトッピング
江戸時代初期までうどんは味噌味で食べられていましたが、醤油の発達に伴い、元禄年間には出汁と醤油を合わせたつゆで食されるようになったそうです。
主なうどん料理についてご紹介します。
<料理方法や食べ方による分類>
【かけうどん・すうどん】
温かいつゆにゆでたうどんを入れて、具は薬味程度。麺本来のおいしさを味わいます。
※写真はPhotoACの『すうどん』より
【釜揚げうどん】
釜でゆでた麺を、ゆで汁と一緒に器に移し、つけ汁につけながら食べます。
讃岐うどんでは、うどんを入れた器に生卵を割り入れ醤油をかけた「釜玉うどん」も人気です。
讃岐うどんの名店「山越うどん」がメニューの略称として「釜玉」と呼んだのが始まりとのこと。
※写真はPhotoACの『釜玉うどん』より
【ぶっかけうどん】
ゆであがった麺を冷水で締め、濃いめのつゆを麺に直接かけて食します。ネギや大根おろしなどのトッピングをかき混ぜて食べるのも美味。
【ざるうどん】
ゆでた麺を冷水で締め、ざるに盛ってつけ汁につけながら食べます。天ぷらなどを添える場合も。
【煮込みうどん】
うどんを他の具材とともに鍋で煮込み、熱々を食します。
※写真はPhotoACの『味噌煮込みうどん』より
【うどんすき】
だし汁で野菜や魚介肉類とともにうどんを煮て食べる鍋料理で、大阪の郷土料理。
1960年に「美々卯」が「うどんすき」を商標登録していましたが、1988年に「杵屋」が「杵屋うどんすき」を売り出し、1991年にその商標権が認められ、1997年には、すでに普通名称化しているという判決が出されました。現在は誰でも「うどんすき」の名称を用いることができます。
※写真はPhotoACの『うどんすき』より
【おだまきうどん】
茶碗蒸しの材料にうどんを入れたもの。
【カレーうどん】
和風出汁にカレー粉を加えデンプンでとろみを付けた汁にうどんを入れたもの。1904年(明治37年)東京の蕎麦屋が提供したのが由来という説が有力だそうです。
※写真はPhotoACの『カレーうどん』より
【焼きうどん】
野菜や肉などとうどんを炒め、ソースなどで味付けします。戦後、福岡県北九州市の食堂街で、そばの代用としてうどんで焼きそばをつくったのが発祥と言われます。
※写真はPhotoACの『焼きうどん』より
<トッピングによる分類>
【天ぷらうどん】
エビなどの天ぷらや、かき揚げをのせたもの。地域によってはさつま揚げをのせたものも。
※写真はPhotoACの『天ぷらうどん』より
【きつねうどん】
甘く煮た油揚げをのせたもの。
※写真はPhotoACの『きつねうどん』より
【たぬきうどん】
関東では天かすをのせたもの。京都では、細切りの油揚げをのせてくずあんをかけ、おろしショウガを添えたものを指すそうです。大阪では天かすをのせたうどんを「はいからうどん」と呼びます。
【きざみうどん】
細く刻んで油抜きした油揚げをのせたもの。
※天ぷらうどん、きつねうどん、たぬきうどんの解説については、「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.22 麺究者への道/蕎麦を研究してみる」の項目で「蕎麦に合わせる具材や薬味はバラエティ豊か!」を参照。
【肉うどん】
牛肉や豚肉を甘辛く煮てのせたもの。
※写真はPhotoACの『肉うどん』より
【力うどん】
餅をのせたもの。
※写真はPhotoACの『力うどん』より
【月見うどん】
かけうどんに生卵を落としたもの。
※写真はPhotoACの『月見うどん』より
【とじうどん】
卵とじうどん。丼の表面を半熟卵でとじたもの。
※写真はPhotoACの『玉子とじうどん』より
【山かけうどん・とろろうどん】
山芋などをすりおろしてのせたもの。
※写真はPhotoACの『とろろうどん』より
【かやくうどん・五目うどん・おかめうどん】
なると、ホウレン草、鶏肉など数種類の具をのせたもの。
※写真はPhotoACの『かやくうどん』より
<参考サイト>
・【うどん】の種類と特産地を紹介。おすすめの食べ方は?
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2020/03/post-10116.html
・うどんの種類
https://www.tablemark.co.jp/udon/udon-univ/lecture02/index.html
・うどんのカルボナーラ??人気の「かまたまうどん」はどうやって誕生したのか
https://kagawakenudon.com/wiki/531/
・杵屋うどんすき事件
https://www.eonet.ne.jp/~sobakiri/frame-2/ki20.html
・Wikipedia うどんすき
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%86%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%99%E3%81%8D#%E8%AA%BF%E7%90%86%E3%83%BB%E5%85%B7%E6%9D%90
・カレーうどんの歴史
https://curry-udon.jp/about/
⑤ うどんは地域によって、食感・味付けなどが違う?!
うどんは日本全国で食べられていますが、好まれる麺の食感やつゆの味付けなどは地域により様々です。
うどんの本場・香川ではコシの強いかためのうどん、九州ではやわらかいうどん、東京や大阪ではその中間が好まれます。
つゆは大きく関東風と関西風に分けることができます。
関東風のつゆはカツオ節をベースに、みりんや砂糖、濃口醬油などでととのえた濃いめの味付けで、黒っぽい見た目です。
関西風のつゆは昆布ベースのだし、またはイリコやカツオ節との合わせだしで、淡口醬油や塩による薄めの味付けです。
関東風のつゆは黒っぽく(上写真)、関西風はうっすら黄金色した色合いです(下写真)。
独自の味付けとしては、愛知では「味噌煮込みうどん」が有名です。
他にも、埼玉ではすったゴマや白みそをすり潰し、だし汁で伸ばしてつゆにする「すったて(冷汁うどん)」、長野県では大根のしぼり汁をつけつゆにする「おしぼりうどん」などがあります。
各地のご当地うどんについては、次の段落で色々と調べたものを見比べてみます。
<参考サイト>
・地域によって異なる麺の嗜好
https://gyoumuyou-men.com/usefulinfo/399/
・さまざまな味付けでうどんを楽しもう!うどんの地域性やおすすめアレンジレシピをご紹介
https://www.yamaki-shop.com/shop/pages/udon.aspx
⑥ 日本三大うどん?!各地のご当地うどんをリサーチ
全国各地にご当地うどんがあり、「讃岐うどん」、「稲庭うどん」はその代表格として「日本三大うどん」と呼ばれています。
3つめについては意見が分かれており、「水沢うどん」、「五島うどん」、「氷見うどん」などが挙げられます。
これらの5つを合わせて「日本五大うどん」と呼ばれる場合もあるそうですよ。
【讃岐うどん】(香川県)
香川県はその気候や土壌が小麦の栽培に適しており、塩や醤油の生産も盛んで、うどんのだしに使うイリコの一大産地でもあったことから、うどんの生産量・消費量ともに日本一となっています。
弘法大師・空海が現在の中国である唐からうどんの製法を持ち帰ったのが始まりという説があるそうです。
手打ち製法でつくられ、生地を手でこね足で踏むことで生まれる強いコシが特徴。
甘い風味のイリコ出汁が基本で、シンプルなかけうどんや釜揚げ、釜玉、ぶっかけなど、うどんを主役とした食べ方が好まれます。
【稲庭うどん】(秋田県)
秋田県の稲庭地区は奥羽山脈に囲まれた豪雪地帯で、半年もの間、雪があるそうです。
厳しい冬を乗り切るために小麦の栽培が始められ、冬の保存食になるようにと考えられたものが稲庭うどんにつながったとされています。
手延べ製法で手間ひまかけてつくられ、独自のコシとなめらかな舌ざわり、つるつるしたのどごしが特徴です。
植物油を使わず、打ち粉としてデンプンを使います。幅2~3mmと細めで平べったい形状で、ゆでると透明感のある薄い黄色。
カツオと昆布の出汁を使ったすっきりとした味わいのつゆで食します。
※写真はPhotoACの『稲庭うどん』より
【水沢うどん】(群馬県)
飛鳥時代、群馬県伊香保町の水澤寺の創建に力を注いだ高麗の渡来僧がうどんの製法を伝授。
その後、上州産の小麦と水沢山から湧き出た名水でつくったうどんを、水澤寺の参詣客にふるまったのが始まりと言われます。
手打ち製法でつくられる、やや太めで透明感がある麺は、つるっとしたのどごしの良さとしっかりしたコシの強さが特徴。
冷たいざるうどんとして、醬油だれやゴマだれなどのつけ汁で食べるのが一般的です。
※写真はPhotoACの『水沢うどん』より
【五島うどん】(長崎県)
五島の特産である食用の椿油を塗布しながら生地を引きのばし、細い麺に仕上げる手延べ製法でつくられます。
生地には上五島で製造された塩が練り込まれています。
直径2mmで断面は丸く、しっかり熟成を重ねるためコシが強くて切れにくいのが特徴です。
アゴ(トビウオ)を炭火で焼いて乾燥させた「焼きアゴ」を使った風味豊かな出汁のつゆで食します。
※写真はPhotoACの『五島うどん』より
【氷見うどん】(富山県)
江戸時代中期、高岡屋創業の弥三右衛門が、能登門前の総持寺のうどんをつくり、能登輪島から素麺の技術などを取り入れて「糸うどん」の製法を編み出したのが始まりとされています。
加賀藩前田候の御用達うどんとして献上されていました。
手打ちの工程で生地をつくり、手延べ製法で引き伸ばして麺に仕上げる、手打ちと手延べの良さを兼ね備えたうどんです。
ひも状の細めの乾麺で、強いコシと弾力、餅のような粘りある食感が特徴。
※写真はPhotoACの『氷見うどん』より
その他にも、いろいろなご当地うどんを北から順に調べてみました。
【ひっぱりうどん】(山形県)
村山市の戸沢地区に伝わる食べ方。乾麺をゆで、鍋から直接、箸でひっぱり上げて取り、納豆やサバ缶などでつくったタレにつけて食べます。
※写真はPhotoACの『ひっぱりうどん』より
【すったて(冷や汁うどん)】(埼玉県)
大宮市、川越市、加須市周辺で食べられる家庭料理。ゴマ、白味噌、シソの葉、砂糖などをすり鉢ですって、冷水やだし汁を加えて伸ばしたつゆに、ショウガやミョウガなどの薬味を入れて食します。
※写真はPhotoACの『すったてうどん』より
【耳うどん】(栃木県)
栃木県の郷土料理。小麦粉をこねて薄く伸ばし、長方形に切り分けて片側をたたんでつまみ、耳の形にします。カツオ節か煮干しの出汁に醤油とみりんを加えた濃いめの汁に、小ネギと人参を加え、下ゆでした「耳うどん」を入れます。すいとんに似たもっちりした食感が特徴。
※写真はPhotoACの『耳うどん』より
【ひもかわうどん・おっきりこみ】(群馬県)
桐生地方に伝わる幅広の「ひもかわうどん」。その幅は1㎝から10㎝のものも。つるんとしたのどごしで、醤油ベースのつゆに付けたり、野菜と一緒に煮込んだりして食べます。
「おっきりこみ」という郷土料理は、この麺を下ゆでせずに野菜などの具と一緒に味噌や醤油ベースの汁で煮込んだものです。
※写真はPhotoACの『ひもかわうどん』より
【吉田うどん】(山梨県)
富士吉田市および郡内地方の郷土料理。コシの強い太麺を、醬油と味噌を合わせた出汁に入れ、馬肉とキャベツをのせるのが定番です。
※写真はPhotoACの『吉田うどん』より
【ほうとう】(山梨県)
小麦粉を水で練って切った麺を、野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込んだ郷土料理。地域によってはうどん状の長い麺ではなく、すいとんのようなかたまりの場合も。
※写真はPhotoACの『ほうとう』より
【おしぼりうどん】(長野県)
埴科郡坂城町を中心とするエリアで食べられている郷土料理で、釜揚げうどんの一種。ねずみ大根という地元の大根をすりおろして絞った汁に、味噌、カツオ節、ネギなどを入れ、熱々の釜揚げうどんをつけて食べます。
※写真はPhotoACの『ねずみ大根』より
【味噌煮込みうどん】(愛知県)
三河地方の郷土料理で、「名古屋めし」の代表格。岡崎地方で作られる八丁味噌を使い、煮込んでも崩れないようなかためのうどんを、鶏肉や野菜と一緒に土鍋で煮込みます。
※写真はPhotoACの『味噌煮込みうどん』より
【きしめん】(愛知県)
名古屋名物の平たいうどん。「ひもかわうどん」の起源という説も。ゆでた麺に熱いつゆをかけて、油揚げや鶏肉などの具を入れ、ネギやカツオ節をのせて食べるのが定番です。
※写真はPhotoACの『きしめん』より
【伊勢うどん】(三重県)
コシのないもっちりとやわらかい極太の麺は、1時間近くゆで上げています。たまり醤油にカツオ節やイリコ、昆布などのだしを加えてつくった、濃厚な黒いタレにうどんを絡め、青ネギをのせて食します。
※写真はPhotoACの『伊勢うどん』より
【かすうどん】(大阪府)
大阪の南部、河内地域で食べられてきたうどん。牛の小腸(ホルモン)を細切れにし脂が抜けるまでじっくり素揚げした「油かす」をトッピングして食します。
※写真はPhotoACの『かすうどん』より
【たらいうどん】(徳島県)
徳島県に伝わる郷土料理で、大釜でゆでたうどんをたらいに移し、大人数で食べます。山仕事をする人たちの、仕事納めのふるまい料理がルーツとされています。「ジンゾク」という川魚で出汁をとった淡泊なつゆに、コシの強いうどんを付けて食します。
※写真はPhotoACの『たらいうどん』より
【博多うどん】(福岡県)
太めでやわらかくもちもちとした食感のうどんを、昆布ベースに煮干、サバ節、カツオ節、アゴ(トビウオ)などを加えただしに薄口醤油を加えたつゆで食します。「ごぼう天」や「丸天」(魚のすり身の揚げ物)をのせるのが定番。
※写真はPhotoACの『博多うどん』より
<参考サイト>
・【日本三大うどん】香川「讃岐」・秋田「稲庭」、もうひとつは?
https://tabizine.jp/article/515033/
・日本三大うどん、讃岐と稲庭ともう一つは?実は意見割れる“第3のうどん”
https://biz-journal.jp/2022/07/post_304845.html
・日本のご当地うどん博物館!
https://udon.mu/
・本場で食べたい!わざわざ食べに行きたい日本全国のご当地うどん20選
https://www.nta.co.jp/media/tripa/articles/NYci8
・うどんと地域性―日本全国ご当地うどん―
https://www.tablemark.co.jp/udon/udon-univ/index.html#tab-1
⑦ 《美味しい手延べ麺》手延べ半生うどん 編
これまでも石井製麺所では、伝統的な手延べ製法を護り続けながら、常により良い素麺、うどんを考えてまいりました。
なかでも季節限定の手延べ「半生うどん」は、最適な乾燥の見極めなど繊細な技術が求められ、日々の素麺づくりで磨かれた勘と、製法研究の積み重ねが活きてきます。
「半生うどん」のためだけに、無添加といえるこだわりの特別な小麦粉を使用しています。
これが、製法、気候と相まってもちもち感がたまらなく美味しい「半生うどん」に仕上げることができています。
手延べ「半生うどん」の 独特な食感には独自の製法が活きています。
「半生うどん」は、小豆島手延べ素麺と同じく手延べ製法で製造していますが、麺の太さが違うため、乾燥方法や乾燥時間がまったく異なります。
「半生うどん」では麺の太さを活かし外側と芯部分とで乾燥具合に差を付けます。
こうすることで、芯部分の水分が時間をかけて麺全体にゆきわたり、手延べ製法ならではのツルツルなめらかな舌触りと、まるで生麺のようなもちもちした独特の食感が生まれるのです。
麺のもちもち感を生む小豆島の冬の気候も、美味しい「半生うどん」をつくるのに欠かせません。
優しい陽射し、吹き抜ける島風、程良い気温で冬も比較的穏やかな気候の小豆島。
絶妙な乾燥具合を実現できるこの環境こそが、美味しい「半生うどん」にとって必要不可欠な製造条件といえます。
しかしながら、しっかりと乾燥させる素麺と違い保存期間が短く、蒸し暑さに弱いという課題が生じてしまいました。
そこで、私どもとしては、皆さまに美味しい麺をお届けするのはもちろんですが、何よりも安全・安心な麺をお届けすることを目標としており、誠に勝手ながら「半生うどん」は季節限定の販売とさせていただいております。
石井製麺所での「半生うどん」の製造現場。「天日干し」の様子。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ半生うどん》 https://141seimen.thebase.in/categories/2325454
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.14(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』レポート
6月3日と4日の2日間、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されました。
台風の接近で、サミットまで気が気でない1週間でしたが、本番は素晴らしいお天気、そうめんに相応しい晴れ空となりました。
今回はそうめんサミットのレポートをお届けしたいと思います。
【1日目】
スタートは『日本三大そうめん食べ比べ』から。
兵庫の播州そうめん、奈良の三輪そうめん、そして香川の小豆島そうめん。
それぞれのそうめんを食べたことはありますが、一度に3種類のそうめんを食べるのは初めての体験です。
まずは見た目の比較。
器に盛られたそうめんを見比べると、三輪そうめんが一番細いことがよく分かります。
播州そうめんと小豆島そうめんの違いは僅かですが、若干、小豆島そうめんが太いような気がします。
手延べ製法の性質上、太さに多少のバラつきが生じるので個体差はあると思いますが、見た目だけでも産地を判断できそうでした。
太さが異なれば、食感が変わります。
三輪そうめんは細いので、軽い食感になりそうですが、意外にも食べ応えがある印象でした。
これはおそらく、他のそうめんと同じ感覚で箸に取ると、細い分、より多くの本数のそうめんを取ることになるからかもしれません。
播州そうめんは、はっきりとコシが強いと感じました。
そうめんの一本、一本に存在感があります。気持ちよくのどを通る感じで、噛んだ時にプチっと歯切れのよい感覚も特徴でしょうか。
小豆島そうめんは、こればかりは食べ慣れているところもありますが、ツルツルっと軽やかなのど越しの良さを感じます。
違いを感じたのは歯ごたえ。
芯というほどはっきりしたものではないものの、最初はやわらかく、最後にプチっと切れるような、極端に言えば2段階の噛み応えでした。
そして、味の違い。
これが今回、一番分かりやすい違いでした。
小豆島そうめんは、言葉で表現するのは難しいですが、口に入れたとき、のどを通るときに感じる「風味」があります。
これはおそらく、使っている油が「ごま油」であることが理由だと思われます。
味に影響を及ぼすものとして原材料の違いは大きいはずで、「ごま油」の使用は小豆島ならではの特徴です。
はっきりと断定できないのは、その風味が「ごまの風味」だと言い切れないからです。
(私の舌が未熟だという可能性もありますが…)ごまの味がするとは言えないものの、鼻に抜けて感じられる風味があることは間違いありません。
これが、小豆島の島民にとっての「そうめんの味」なのだと改めて実感しました。
食べ比べてみると、たかがそうめん、されどそうめん、その美味しさには違いがありました。
「私は播州が好き」「私は三輪が一番」「やっぱり小豆島」そんな声が聞こえてくるのも当然だと思います。
繊細な味覚センサーは、その土地の気候、製造環境、職人さん独自のこだわりといった数値化できない微細な違いを感じ取っているのかもしれません。
次に向かったのは『式典・鑑評会結果発表・表彰式』、および『公開討論会』。
今回のサミットでは、「そうめんは、宇宙だ!」と題して、「そうめんを食す。そうめんを語る。そうめんを学ぶ。」ことを掲げています。
これが本サミットのメインイベントです。
サミット=首脳会議の名の通り、全国からそうめんおよび乾麺に関わる組合、企業の代表者や生産者の方々が集まりました。
業界初の試みとして、『第1回 全国そうめん鑑評会』が実施され、その結果発表と表彰式が行われました。
「業界の技術研鑽・品質向上につなげるだけでなく、縮小していくそうめん市場を上向きにし、手延べ文化の維持継承、そうめんに対する消費者の認識・心理的価値を高め、そうめん文化全体を向上させる」ことを目的としています。
全国から全16作品の応募があり、同条件のもと食味に関するブラインド審査の結果、金賞6作品、入賞10作品が選ばれました。
【金賞】以下、五十音順
◯静岡県浜松市 池島フーズ株式会社
◯岡山県浅口市 かも川手延素麺株式会社
◯香川県小豆郡 創麺屋株式会社
◯徳島県つるぎ町半田 半田手延べそうめん協同組合
◯兵庫県たつの市 兵庫県手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 島原手延素麺協同組合/平川製麺
【入賞】以下、五十音順
◯兵庫県南あわじ市 淡路手延素麺協同組合
◯岡山県 岡山県製粉製麺工業協同組合
◯兵庫県たつの市 カネス製麺株式会社
◯香川県坂出市 木下製粉株式会社
◯愛知県蒲郡市 株式会社金トビ志賀
◯秋田県湯沢市 株式会社後文
◯茨城県稲敷郡 茂野製麺株式会社
◯香川県小豆郡 小豆島手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 長崎県有家手延素麺協同組合
◯奈良県桜井市 奈良県三輪素麺工業協同組合
地場産の小麦粉をはじめとする国産原料を使用したそうめんや、食塩や油を使わないそうめんが出品されていました。
小麦粉以外の原料を練り込むそうめんは、今回の応募条件から除外されていたので、シンプルに、小麦粉の味や、製法や技術が評価されやすい鑑評会になったのではないでしょうか。
審査員の方々のコメントを聞くと、どれも美味しく、甲乙をつけるのが難しかったようです。
しかし、5項目(味/香り/コシ/のどごし/色つや)の評価基準で点数化された審査だったため、やはり金賞作品には、金賞たる理由があるのだと思います。
可能であれば、各作品について、具体的な感想を聞きたかったというのが本音ですね。
公開討論会では、審査員の方々と業界団体の代表者の方々が登壇され、鑑評会の結果も踏まえて議論が行われました。
生産者、販売者、飲食店、それぞれの立場から、そうめんの未来を考えます。
そうめんの生産量が減少している、という業界全体の課題。
原因はいくつかあるのでしょうが、食生活の多様化の影響が言及されていました。
日本三大そうめんを食べ比べただけでも分かったように、そうめんには個性があります。
最近は、都内にそうめん専門店が増えており、「そうめんの食べ方」が注目されているようで、料理に合わせて最適なそうめんを選ぶことが大事とのこと。
私も恵比寿にある専門店『そそそ』を訪ねたことがありますが、「明太クリームそうめん」といったメニューが人気を博しているそうです。
飲食店においては、のびにくさも重要になります。
そこで提案されていたのは、「古(ひね)」と呼ばれる熟成麺の活用です。
播州そうめんでは特に、古物(ひねもの)として、ワンランク上のそうめんとして扱われています。
冬に製造したそうめんを、ひと夏(梅雨の時期)の間、蔵の中で寝かせたものを指します。
熟成したそうめんはコシが強くなり、茹でのびもしにくくなるという特徴があります。
一方で、新しいそうめんにも、新しいそうめんらしい良さがあり、やはり原料由来の風味が際立つのは新しい麺とのこと。
これは弊社でも大事にしている考え方になります。
ごま油を使用していたり、その風味が特徴である小豆島そうめんにとっては、できたての新しいそうめんを食べるのが合っていると思います。
そのため、小豆島では古物(ひねもの)は一般的ではないですが、麺のコシが強くなる現象は有効活用できると考えています。
たとえば、練り込み系のそうめんは、その原料によってはコシが弱くなることがあるようです。
そんなとき、数か月の熟成を経ることでコシを強くできる可能性も考えられますね。
後継者不足の問題にも話が及びました。
跡を継ぐ若い人がいないことは、産地を問わない共通の課題です。
小豆島そうめんの場合、平成初期には200件を超える製麺所がありましたが、今では60件ほどになっているそうです。(小豆島手延素麺協同組合の組合員数)
手延べそうめんは、その製法上、長時間作業が必要とされます。
弊社の場合、早朝の3時30分から、およそ15~16時間といったところでしょうか。
これは小麦粉の性質を最大限に生かし、“寝かせては延ばす”を繰り返して麺にしているからです。
美味しさのためには妥協できない、ひとつひとつの工程があります。
そうめん屋単独では、これ以上の作業時間、工程の短縮化は難しいのが現状です。
しかし、他産地では、小麦粉など原料メーカーや製麺機械メーカーとの「協同での技術発展」が既に行われているそうです。
製麺所が要望を出し、新しい小麦粉や機械が開発され、製麺所が実験する。その繰り返しで、作業時間が12時間まで短縮されているとのこと。
会場でお会いした機械メーカーの方から、「小麦粉を練る機械も進化しており、練り方によってその後の熟成時間を短縮できる」という話もお聞きしました。
小豆島のそうめん屋は、他産地と比較しても、1軒あたりの規模が小さいそうです。
(もちろん、規模だけが理由にはなりませんが)弊社もいわゆる家族経営(両親と私)の1社ですので、長年の製麺経験による経験値と技術はあっても、科学的な知見が不足しているのは間違いありません。
自社だけでできることに、限界があるのは明らかです。
討論会を聞きながら、協働での技術発展が不可欠だという理解とともに、その主導はそうめん屋(生産者)でなければならないと強く思いました。
そうめんを深く知り、料理へ生かすことも大切ですが、たとえば「パスタ風にアレンジしたそうめん」があったとして、それはどこまでいっても「~風」でしかなく、パスタには敵わないものだと思います。
本当に必要なのは、他の麺類に寄せていくような、そうめんのアレンジに留まることなく、そうめんそのものの進化と呼べるような、新しいそうめんの開発だと考えています。
生産者にとっても、もちろん食べる人にとっても新しい、画期的なそうめん。
業界が活気づくような、斬新な切り口のそうめん。
奇をてらうのではなく、しかし「おもしろい!」と感じていただける、そんなそうめんを創りたい。
幸いなことに、弊社では新商品やOEM商品の開発にあたって、製粉会社さんや地元研究機関の専門家の方にご協力をいただいております。
「協同」をこれから必要不可欠になる手段と捉えて、主体的に動く。討論会を踏まえた、自分なりの結論です。
1日目の最後は懇親会です。
遅れての参加になってしまい、会場に入ると宴もたけなわでした。近くの席には島の同業者の皆様、同じテーブルには素麺組合の皆様。
実は、素麺組合の、特に生産者の方々とお話するのは、これが初めてでした。
素麺組合には若い組合員で青年部が組織されているそうです。
小豆島において、組合員ではない、いわゆる独立した弊社のようなそうめん屋は、通称アウトサイダーと呼ばれています。
言葉だけ聞くと悪い意味に受け取られるかもしれませんが、あまり深い意味はないはずです(笑)。
「立場や所属の垣根を取り払って、技術交流ができれば…」若手の生産者としてのつながりが、これからの小豆島そうめんにとってプラスになると考えています。
また、ツイッターでフォローをいただきました、そうめん研究家のソーメン二郎さんと、初めてご挨拶をさせていただきました!
ソーメン二郎さん、業界で知らない人はいないでしょうし、そうめんのPRでテレビや雑誌でも大活躍されております。
そうめん発祥の地、奈良県桜井市のご出身、三輪そうめんの製麺所の家系のお生まれで、「実家に帰省するたび、製麺所の廃業を目の当たりに」されたことで、そうめん業界に対する危機感を抱いたそうです。
最近では「クラフトソーメン束の会」を主宰され、全国の小規模な手延べそうめん製造所のつくるそうめんにスポットライトを当てる活動をされています。
いつか、ソーメン二郎さんにも注目してもらえる、新作そうめんを創りたいです。
参考サイト:https://www.mizkan.co.jp/craft-somen/
2日目に続きます。。。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.12
手延べ素麺三大産地のひとつ・小豆島について
素麺の産地・香川県小豆島は、瀬戸内海に浮かぶ島です。
穏やかな海に囲まれ、風光明媚な景勝地や食にまつわる施設など、見どころいっぱいの観光地でもあります。
お出かけに最適なこれからの季節、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
6月3日・4日には、小豆島で「全国そうめんサミット」が開催される予定。
兵庫県播州、奈良県三輪につぐ第3回となり、関係者だけでなく一般の方にも楽しんでいただける食べ比べなどのイベントが盛りだくさんだそうです。
今回は、小豆島の観光情報や特産品についてご紹介します。
三代目:今回は、夏の需要期を迎える前に今一度、三大産地として整理してみたいと考えました。
そのきっかけは、「全国そうめんサミット」です。
基本的には、小豆島手延素麺組合様が仕切ることになりますが、小豆島で製麺に携わる者として、全く無関係ではありませんし、もちろん、準備や出店でお手伝いもしてまいります。
何よりも楽しみにしているのは、これまでブログでも触れてきた産地の方々にリアルにお会いできることです。
きちんと胸を張って、小豆島手延べ素麺の製麺所三代目として、ご縁をいただく皆さまにご挨拶できるように振り返りの意味も含めてブログに書いてみました。
「全国そうめんサミット」に向けて、小豆島にお越しになる皆さまのご参考になれば幸いです。
<参考サイト>
・第3回全国そうめんサミット2023in 小豆島 公式サイト
https://somen-summit-2023.com
※写真はphotoAC「オリーブ公園の風車から見える風景」より
【目次】
① 小豆島でおすすめの観光スポット
② 食の特産品が豊富な小豆島
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
① 小豆島でおすすめの観光スポット
小豆島と聞いてどんなイメージを思い浮かべますでしょうか?
島には自然や文化、グルメなど、様々な魅力があふれています。
そんな小豆島の魅力を存分に体感できるおすすめスポットを、厳選してご紹介します。
※営業状況など詳細については、各施設にお問い合わせください。
【道の駅 小豆島ふるさと村】
遊ぶ・体験する・泊まる・食べる・買う、の5つを楽しむことができる公共の施設。
「手延べそうめん館」では、素麺の製造工程を見学することができます。箸分け作業の体験(有料)や試食も。
「全国そうめんサミット」の会場にもなります。
【醬の郷(ひしおのさと)】
小豆島の地場産業である醤油と佃煮の工場が集中するエリア。
明治時代に建てられた醬油蔵の漆喰の白壁が、風情ある景観を生んでいます。
醬の郷にある「マルキン醤油記念館」では、小豆島独自の醬油の製法が紹介されており、醤油を使ったグルメも堪能できます。
※写真はphotoAC「醤の郷」より
【かどや製油 資料展示室「今昔館」】(現在は休止中)
安政5年(1858年)の創業以来、発祥の地である小豆島でごま油をつくり続けるかどや製油さんの工場内にある資料展示室。
ごま油の製造工程や歴史を学んだり、テイスティングを体験したりできます。
【オリーブ園】
全国で最初にオリーブ栽培に成功した、日本のオリーブ栽培発祥の地。
3ヘクタールの敷地には、日本最古のオリーブの原木を含む約2,000本のオリーブが植えられています。
世界各国のオリーブオイルをブレンドしてオリジナルオイル作り体験も。
【エンジェルロード】
1日2回、引き潮の間だけ現れる、島から島へ歩いて渡れる砂浜の道。
大切な人と手をつないで渡ると幸せになれるという言い伝えがあるそうです。
※写真はphotoAC「小豆島エンジェルロード(道が出現する前)」より
【寒霞渓】
国立公園で、日本三大渓谷美のひとつ。
ロープウェイから、美しい溪谷と瀬戸内海の素晴らしい景色を一望できます。
秋の紅葉シーズンは、全国各地からたくさんの観光客の方がお越しになります。
※写真はphotoAC「秋の寒霞渓」より
<参考サイト>
・小豆島観光マップ
https://www.shodoshima-kh.jp/enjoy/map.html
・自然もグルメも楽しめる小豆島のおすすめ観光スポット11選
https://www.knt.co.jp/travelguide/kokunai/052/
・ここは押さえておきたい!小豆島のおすすめ観光スポット22選
https://www.ikyu.com/kankou/arealist8428/
・小豆島ふるさと村 素麺工場・見学体験
https://www.shodoshima.jp/expelience/taiken/visitor/567.html
・醤の郷(ひしおのさと)
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=270&c=2
・マルキン醤油記念館
https://marukin.moritakk.com/kinenkan/
・ごま油資料展示室見学 -かどや製油-
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=163&c=2
・かどや製油の資料展示室 今昔館のご案内
https://www.kadoya.com/enjoy/page04.html
・小豆島オリーブ園
https://www.1st-olive.com/guide/
・エンジェルロード
https://www.shodoshima-kh.jp/angel/
・寒霞渓の魅力
https://www.kankakei.co.jp/miryoku/
② 食の特産品が豊富な小豆島
小豆島には、素麺の他にもいろいろな特産品があります。
「オリーブオイル」「醤油」「佃煮」の3品目には、地域食品ブランドの表示基準である「本場の本物」に認定されている商品もあります。
小豆島の素麺づくりに欠かせない「ごま油」も、島の特産品です。
【オリーブオイル】
日本のオリーブ栽培は香川県が95%を占め、オリーブオイルの生産量も日本一。
小豆島オリーブオイルは、精製油や添加物をまったく加えず、オリーブの実を搾っただけのフレッシュな香りと風味が特徴です。
地元で丁寧に手摘みした新鮮な果実を、すぐさま地元の工場に運び、非加熱でつくっています。
明治41年(1908年)、試験的に植樹されたオリーブが、温暖で雨の少ない小豆島の気候風土で根付き、定着しました。
宮内庁御用達の品目に選ばれたり、世界規模のオリーブオイル品評会で好成績を収めたりしたこともあるそうです。
5月頃にオリーブの花が咲き、6月頃から小さな実を付け、徐々に大きくなり9月の下旬には収穫が始まります。
10月10日に「オリーブの新漬け」が解禁され、いよいよオリーブの旬の季節になります。
農家さんは毎日のように収穫に追われ、翌年の1月頃にはだいたいの収穫が終わり、オリーブオイルの搾油作業を行っているようです。
日本の気候で育つオリーブで作られたオイルはとてもマイルドで、和食にとても良く合い、発酵食品にもピッタリだと言われます。
そうめんつゆに数滴垂らして召し上がっていただければ、清々しい香りとめんつゆのコクが相まって、上質なそうめんを味わっていただけるのではないでしょうか。
【桶(こが)仕込醤油】
小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地。
日本の4代醬油産地のひとつでもあります。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶(こが)の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上、新しいものでも50年ほど使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいやうま味を引き出せるそうです。
化学調味料、合成保存料、合成着色料などは一切使用せず、1~2年かけてゆっくり発酵・熟成させてつくられるものや、一度仕込んだ醤油を基にさらに仕込む「再仕込み醤油」などもあります。
小豆島の醤油蔵では、昔ながらの桶仕込みだけでなく、最先端の技術を活用して効率良く醤油をつくる技術も持っています。
「グルテンフリーの醤油」や「オリーブ酵母で仕込む醤油」など、バラエティに富んだ様々な醤油もつくられています。
また、醤油をベースに、出汁の素やめんつゆ、ポン酢、ドレッシングなど家庭になくてはならない調味料の開発も行っておられます。
【佃煮】
太平洋戦争後の昭和20年(1945年)、特産品である醤油を活用した島の経済復興を目的として、佃煮がつくられ始めました。
食糧難の時代に芋のつるを醤油で煮込んだ佃煮を開発したところから始まったそうです。
現在、佃煮の素材は島で数百以上もあるとされますが、「本場の本物」認定品は、30年以上にわたり使われ続けている昆布、のり、わかめ、しいたけ、おじゃこちりめん、きゃらぶきの6品目だけとされています。
具材へのこだわりはもちろん、製造技術に多くの特徴を持つ会社もあります。
最近では、「宇宙食」としての佃煮製造技術を持つ会社から、化学調味料・合成保存料・合成着色料を一切使用せず、自然そのままの味わいにこだわり、心から安心して楽しむことができる佃煮の製造にこだわる、昔ながらの佃煮工場もあります。
【ごま油】
江戸時代末期の安政5年(1858年)、小豆島で創業したのが、ごま油の国内シェア50%以上を占めるかどや製油さんです。
小豆島の手延べ素麺づくりにごま油が使われるからこそ、小豆島で創業されたといえるでしょう。
国内流通する量のほとんどを小豆島にある大規模工場で生産しておられます。
工場は土庄港の近くにあり、風向きによってはごまのよい香りが町中に漂います。
<参考サイト>
・本場の本物 現在の認定品目
https://honbamon.com/product/index.html/page/2
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品 本場の本物
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/899.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
・食の原点 小豆島
http://shodoshima-food.com/?page_id=38
・日本一の生産量「ごま油」
https://furusato-tonosho.furusato-basic.com/features/detail/27
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
小豆島の特産品として忘れてはならないのが、手延べ素麺。
小豆島が素麺の名産地になったのには、いくつかの理由があると考えられます。
ひとつは気候。
瀬戸内海に位置する小豆島は、気候が穏やかで雨が少なく、素麺づくりの最盛期である冬も雪が降ることはほとんどなく乾燥しているため、天日干しでの素麺づくりが行われています。
また、瀬戸内海でとれる塩、以前では讃岐平野で栽培されていた小麦(現在は手延べ素麺作りに合う海外産の小麦を国内で精麦して使用している場合もあります)、良質な清水などの原料が調達しやすかったことも理由のひとつといえるでしょう。
小豆島手延べ素麺づくりに欠かせないごま油や、素麺にベストマッチの醬油が小豆島の特産品であることも、何らかの因果関係がありそうです。
<参考サイト>
・小豆島ってどんな島?(基本・地勢・気候)
https://shodoshima.or.jp/what/
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
小豆島のある香川県にはもうひとつの有名な麺、讃岐うどんがあります。
素麺とうどんはどちらも小麦粉でつくる麺なので、違うのは太さだけと思っている方がおられるかもしれません。
実際は製法が大きく異なるため、それに伴って使う原料や食感なども変わってきます。
具体的にどんな違いがあるか、ご紹介します。
(讃岐うどんにも手延べ製法でつくられたものがありますが、ここでは手打ちうどんと手延べ素麺を比較してご紹介します。)
・油を使うか使わないか
まずは原料について。小麦粉・塩・水は共通ですが、素麺はそれに加えて食用油が必要です。
小豆島手延べ素麺ではごま油を使用しています。
油がえしという製造工程で、麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングします。
手打ちうどんでは油は必要ありません。
・生地をのばすか切るか
手延べ素麺は、練り合わせた生地に油を塗ってよりをかけ、のばしては重ねて…を繰り返しながら細長くしていきます。
この工程により、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、重なった地層のように組織されます。
これをさらによりをかけながら細くのばすことで、断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれるのです。
時間が経ってものびにくいのも特徴のひとつです。
同じ素麺でも手延べではなく、機械で生地を薄くのばし、細く切って乾燥させる「機械製法」で作られた素麺は、断面が四角く、大量生産に向き比較的安価でできますが、手延べ麺のようなツルツル感はありません。
手打ちうどんの場合は、小麦粉・水・塩を混ぜた生地をこねては熟成し…を繰り返して生地を鍛えます。
それを麺棒で薄くのばして、包丁で切ります。原料から麺に仕上がるまでの時間は、手延べ製麺よりはるかに短いです。
グルテンの組織を包丁で断ち切るため、麺の断面は四角く、しこしこした食感が生まれます。
・太さの違い
素麺とうどんの乾めんについては、日本農林規格(JAS)により、直径1.3ミリメートル未満のものが素麺で、1.7ミリメートル以上がうどん、と太さの規格が定められています。
石井製麺所では、冬季限定で「手延べ半生うどん」を販売しております。
小豆島手延べ素麺の製法で仕上げた、角のないツルツル、モチモチした食感が好評いただいております。
また賞味期限の長い「手延べ乾うどん」は通年販売。
素麺と食べ比べていただける「手延べ太さくらべセット」もご用意しております。
太さによる味わいの違いを、ぜひ実感してみてください。
三代目:よく勘違い?されるのが、讃岐うどんと小豆島手延べ素麺を同じもの?に思われることです。
うどんがあるから素麺がある(うどんを細くして素麺を作っている)と思われる方もいらっしゃいますし、実際にそうだと思っていたというお話をよくお聞きします。
ですが、太さは置いておいて、製法はかなり異なる物です。
どちらが簡単と言うことではないのですが、素麺の場合、細く伸ばす分だけどうしても時間がかかる物だと思います。
また、讃岐うどんは“打ちたて”を味わうのが一番ですが、素麺は完成後も(保存状況はしっかりと管理する必要はありますが)、さらに寝かせることで“古物(ひねもの)”と言われる希少な高級素麺になります。
同じような地域で似て非なる食品が発展するのは、離島である地理的な特徴(ガラパゴス的)なのかも知れませんね。
<参考サイト>
・手打ちと手延べの違いまとめ|麺の原料や製法に食感の秘密があった!
https://mlb-nff-nba.com/%E6%89%8B%E6%89%93%E3%81%A1%E3%81%A8%E6%89%8B%E5%BB%B6%E3%81%B9%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%EF%BD%9C%E3%82%88%E3%82%8A%E6%89%8B%E9%96%93%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/
・うどんとそうめんの違い
https://www.flour.co.jp/news/article/070/
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
庄川の扇央部から少し下がったところにある、砺波市大門(おおかど)地区で伝統的につくり続けられている手延べ素麺。
「丸まげ素麺」とも言われるユニークな形状が特徴です。
古風な和紙の包み紙ひとつひとつには、製造者の氏名が記されています。
初冬から晩春にかけ、清流庄川の水を使ってつくられる素麺は、鉢伏山から吹きおろす寒風で乾燥させることで、よくしまったコシのあるなめらかな麺に仕上がります。
細くて長い麺が完全に乾かないうちに丸めて仮包装し、さらに10日間かけて本乾燥する、手間ひまかけた素麺です。
天気が変わりやすいこの地で、外干し作業中に雪が降ってきてもすぐ屋内に運べるよう、麺を丸めるようになったといわれています。
ゆでる時には、丸まげ状の麺を2つに割らないと、とても長い素麺になってしまうとのこと。
丸い形状が鍋にすっぽりとおさまるのでゆでやすいそうです。
大門素麺の起源は江戸時代後期にさかのぼります。
大門村の売薬行商である田守三石衛門が加賀藩の御用素麺を持ち帰ったことから、中島次兵衛という村人が加賀に行ってその製法を習得したそうです。
そして村の有志で農閑期の副業として素麺づくりを行うようになったのが始まりといわれています。
最盛期の昭和初期には60数軒の農家で取り組んでいたという記録があるそうですが、現在では12軒前後の農家が素麺づくりに従事しているとのことです。
<参考サイト>
・砺波市じまんの特産品 大門素麺
http://www.tapc.jp/tokusan/tokusan_somen.html
・古来より伝わる手法をそのままに江戸時代から作り続けられている丸まげ素麺
https://www.corezo-mall-tokusyu.com/ookadosoumen
・JAとなみ野 大門素麺
https://www.ja-tonamino.jp/tokusan/ookado?pcview=true
・大門素麺
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%96%80%E7%B4%A0%E9%BA%BA
・大門素麺について
https://kakizato.jp/noodles/
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
昨年、大変ご好評をいただいた「手延べレモン素麺」が5月1日から販売を再開いたします!
2022年5月の発売から夏季限定品として発売し、8月末日までに約4000袋も販売させていただきました。
本当にありがとうございます。
その人気の「手延べレモン素麺」が帰ってきます。
当社独自製法により、小麦と一緒に瀬戸内産レモン果皮を練り上げていますので、麺を口に運ぶたび、ふわっとレモンの香りが拡がります。
食欲の落ちる暑い日でも、食欲をかき立てる優しいレモンの香り。
暑い夏に、ぜひおすすめしたい素麺です。
もちろん、香料・着色料・保存料は一切使用していませんので安心してお召し上がりください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。