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2023年7月5日 【Vol.17】メンコレ①/海藻を練り込んだ素麺の新しい価値

 

 

【お!いしい けんぶんろく】 Vol.17

メンコレ①/海藻を練り込んだ素麺の新しい価値

 

 

 

 

生地に食材を練り込んだ白色以外の素麺の魅力について、「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.11各地の特産品や健康への想いを練り込んだ素麺について」を書いたときに色々深く考えさせられました。

全国各地の生産者さんがそれぞれに試行錯誤を重ね、特産品や健康に良い食材などを使って、新しい付加価値を生み出しておられるのを垣間見たりすると私自身もウズウズしてきます。

ちょっとは素麺職人の面構えに(好奇心旺盛なだけですが)なってきたでしょうか。

また、最近は飲食店様や企業様から新しい素麺の開発のご相談などもいただけるようになりました。

素麺屋としては、「夏に美味しい素麺!」のご提供はもちろんですが、素麺会社として一年を通じて皆さまに選ばれる製品の開発がないと、小さな産地ではこれからの時代、より厳しくなっていくと考えています。

素麺屋として、職人として、三代目として日本三大素麺のひとつ「小豆島手延素麺」の根幹は大切にしつつ、その技術や経験を活かした新しい素麺開発をおこなっていきたいと思います。

そのための研究として様々な麺類・麺料理を研究し、今回のように素麺の新しい可能性を感じる素材のコラボ麺をつくっていきたいと考えます。

 

単純に小麦粉に素材の粉を混ぜるのでなく、食材の特性により、機能性が増したり、味わいがより深まることを期待しています。

なかでも海藻は、粉末にして練り込むことで、磯の風味が加わったり、独特の粘りが弾力を生んでのど越しが良くなったりといった相乗効果が得られます。

まずは今回、海藻の栄養価や歴史、海藻を練り込んだ素麺にはどんなものがあるか、などについて調べてみたいと思います。

 

月の後半のブログでは「麺究者の道」として様々な麺類・麺料理の研究を、月の前半は「メンコレ(麺コレクション)」として色々素麺にスポットを当ててみたいなと思っていますので、こちらもどうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。

 

 

干潮時に海の中に道が現れることで有名な小豆島のエンジェルロード。

ここは土庄町という、小豆島のもうひとつの町にあるのですが、この周りにもたくさんの海藻があるそうですよ。

小豆島も海苔の養殖が有名で、石井製麺所でも使用するひじきも収穫できます。

 

 

【目次】

① 海藻は大きく3つに分けられる

② 海藻にはさまざまな栄養成分が豊富に含まれる

③ 縄文人も食べていた?海藻の歴史

④ 各地でつくられている海藻練り込み素麺

⑤ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編

 

 


 

 

① 海藻は大きく3つに分けられる

 

海藻は、海の中に生える藻類です。茎・葉・根に分かれておらず、胞子によって繁殖することが特徴。

日本近海には1,500種以上の海藻が自生していると言われ、約50種類が食用とされているそうです。

海藻は大きく3種類に分類することができます。

 

【緑藻類】

アオサ、青のり、海ブドウなど。

陸上の植物と同じクロロフィルaという色素を持っています。

この色素は赤系と青系の光を吸収して光合成します。

残った緑色の光が吸収されず反射するため、緑色に見えるそうです。

緑藻の仲間が進化して陸上に進出したのが陸の植物だと考えられています。

 

【褐藻類】

ワカメ、昆布、メカブ、アカモク、ひじき、モズクなど。

クロロフィルa以外に、青緑色を吸収するフコキサンチンという色素を持っています。

緑色・橙色・黄色・赤色の光を吸収しないため、それらの色素が混ざり合って褐色に見えるそうです。

 

【紅藻類】

海苔、テングサ、フノリなど。

クロロフィルa以外に、緑色を吸収するフィコエリスリンという色素を持っています。

赤色の光を吸収できないため、赤色に見えるそうです。

海苔の仲間は、フィコシアニンという赤を吸収する色素も持っているため、黒っぽい色をしているそうです。

 

 

<参考サイト>

・同じ海藻でも色が違うのは、なぜなの?

https://www.kaneryo.co.jp/media/seaweed/928/

・ワカメ、昆布、メカブ、ヒジキの他に、食用の海藻はどんなものがありますか?

https://www.kaneryo.co.jp/media/seaweed/2171/

・海藻のはなし

http://kaisou.churashima.okinawa/distribute/index.html

 

 


 

 

② 海藻にはさまざまな栄養成分が豊富に含まれる

 

海藻には、鉄分やカルシウムなどのミネラルや、食物繊維などの栄養分が豊富に含まれており、生活習慣病の予防や、美容、ダイエットへの効果が期待されています。

主な栄養成分についてご紹介します。

 

【鉄分】

ひじき、海苔、昆布、ワカメなどに多く含まれます。

鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、体じゅうに酸素を届ける役割をしています。

不足すると貧血などにより、めまいや立ちくらみ、息切れなどの症状を引き起こす可能性があるそうです。

 

【マグネシウム】

ひじき、メカブ、モズクなどに多く含まれます。

骨や歯の成長を促進したり、強く保ったりする働きがあります。

神経情報の伝達や、血管の柔軟性を保つ役割もあるとのこと。

 

【カルシウム】

ひじき、海苔、昆布、ワカメ、アオサなどに多く含まれます。

牛乳よりも多くカルシウムを含む海藻もたくさんあります。

骨や歯を丈夫に保つほか、血液を固める、筋肉の収縮をスムーズにするなどの働きもあるとされています。

 

【ヨウ素】

昆布、ワカメ、海苔などに多く含まれます。

新陳代謝を促したり、成長ホルモンを活性化させたりする役割を担う甲状腺ホルモンを生成する働きがあります。

ただし過剰摂取すると甲状腺の機能を低下させてしまう可能性があるとされています。

 

【食物繊維】

ワカメ、ひじき、海苔、昆布などに多く含まれます。

水に溶けやすい水溶性食物繊維を多く含み、時間をかけて栄養素を吸収するため、血糖値の上昇を緩やかにします。

また、腸内環境を整えて大腸がんの発生を抑制する効果も期待されています。

 

【フコキサンチン】

美肌成分とも呼ばれるコラーゲンの分解を予防し、生成を助けます。

また、メラニンを生成するチロシナーゼの働きを阻害することで、日焼けを防ぐ作用があると考えられています。

さらに、脂肪の分解促進や蓄積抑制、DHAの生成促進など、さまざまな働きが注目されています。

 

【フコイダン】

メカブや昆布、モズクなどのネバネバ成分に多く含まれます。

免疫力を高める働きがあると言われ、風邪や花粉症の予防などに役立つと考えられています。

抗酸化作用も期待できます。

 

【アルギン酸】

肌を保湿する働きがあるとされています。

 

【セルロース】

便秘の改善や、老廃物の排出を促す働きがあるとされています。

 

 

<参考サイト>

・海藻は健康に良い?!海藻に含まれる成分と健康増進への効果

https://www.kaisou-tuhan.com/?mode=f13

・海藻に含まれる栄養にはメリットがたくさん!海藻に含まれる栄養素と働きを解説

https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/29527

 

 


 

 

③ 縄文人も食べていた?海藻の歴史

 

日本人は、古くから魚や貝類を採取して食用してきました。

先史時代の貝塚からは、腐りやすいためか海藻は出土していませんが、貝類のエサとなる海藻も食用されてきたと考えられます。

島根県の猪目(いのめ)洞窟からは、縄文時代や弥生時代などの遺物が出土しており、貝殻や魚の骨に混じってアラメやホンダワラ類とみられる海藻類が検出されたとのことです。

高知県の竜河洞遺跡では、多数の貝殻に混じり、ひじきとみられる海藻が付着した土器片が見つかっています。

青森県の泥炭遺跡では、縄文式土器の中からワカメのような海藻が束になった状態で見つかったとのことです。

 

海藻は、大和朝廷時代には神事の供物として用いられたそうです。

701年の「大宝律令」では租税の対象となっていました。

797年の「続日本紀」によると、昆布が朝廷に献上品として納められており、僧侶の供養料にも用いられていたとのこと。

中世以降には、ワカメが職人の給料として支払われていたそうです。

 

江戸時代になると、交通網が発達したことにより、コンブ、海苔、ワカメ、テングサ、ひじき、フノリなどが全国に流通するようになってきました。

乾燥すると軽くなるので、より普及しやすかったようです。

 

現代において、海藻は光合成することにより炭素を吸収することから、CO2吸収源対策の新たな選択肢として注目されているそうです。

環境にやさしい食材とされる海藻をさまざまな製品に利用しようと、開発が進められているそうですよ。

 

 

<参考サイト>

・縄文時代から海藻好きな日本人

https://www.rakuten.ne.jp/gold/kaisotonya/unchiku/jomon.html

・泥炭・貝塚遺跡

https://www.rakuten.ne.jp/gold/kaisotonya/unchiku/kaizuka.html

・海藻製品 にっぽん伝統食図鑑 農林水産省

https://traditional-foods.maff.go.jp/bunrui/kaisouseihin

 

 


 

 

④ 各地でつくられている海藻練り込み素麺

 

海藻が採取される地域で、海藻を練り込んだ素麺が多く開発されているようです。

開発の経緯などが分かる事例を中心に、いくつか調べてみました。

 

【海苔】

兵庫県明石市の海苔業者と、素麺職人が共同で研究開発。

素麺1束に寿司海苔1枚分が含まれています。

造りたては鮮やかな緑色ですが、徐々に紫色に変色してしまうため、当初は直売所での対面販売だけだったそうです。

今はネットでも購入できるようですが、期間限定生産で、色が変わらない方法を研究し続けておられるとのことです。

名産地である佐賀県有明産の海苔をブレンドした素麺もあります。

こちらは2人前(160g)に3枚(全形)分練り込まれているそうです。

 

【昆布】

昆布の養殖が盛んな岩手県普代でつくられています。

昆布をロープに植えつけ、黒崎沖の荒波で育てると、半年で5メートルほどの長さに成長するそうです。

刈り取った昆布をボイルして細く切り、シート状にして乾燥させた「すき昆布」に加工される工程で、余った昆布を粉末にして素麺に練り込んでいるとのこと。

つるつるした食感で、磯の風味と香りが感じられるそうです。

 

【ワカメ・メカブ】

兵庫県淡路島では、鳴門海峡産ワカメを練り込んだ手延べ素麺があります。

ワカメを乾燥、粉末加工して練り込み、磯の香りとしっかりしたコシ、なめらかな舌触りを味わえる緑色の麺に仕上げています。

同じく鳴門海峡産のワカメの、根っこの部分であるメカブを練り込んだ素麺もつくられています。

鮮やかな翡翠色で、香りとモチモチ、シコシコした食感が楽しめる、食物繊維などの栄養分も豊富に含んだヘルシーな素麺です。

メカブを入れすぎると生地がのびずちぎれてしまうため、試作を繰り返してギリギリの量を練り込んでいるそうです。

 

岩手県では三陸産のワカメとメカブを練り込んだ素麺もつくられています。

 

【アカモク・ナガモ】

宮城県白石市の特産品である「温麺(うーめん)」に、フコイダンを多く含む健康食材として注目されるアカモクの粉末を練り込んだ素麺がつくられています。

ゆでると特有のぬめりが出て、つるりとした食感が生まれるそうです。

 

徳島県でも、伊島産のアカモクを練り込んだ素麺がつくられています。

 

アカモクは新潟県佐渡では「ナガモ」と呼ばれており、これを練り込んだナガモ素麺もつくられています。

 

【フノリ】

新潟県魚沼の有名なグルメである「へぎそば」には、つなぎにフノリという海藻が使われています。

このフノリをつなぎに使った、油を使わない素麺が開発されています。

元々はへぎそばのお店のまかないとして作られたとのこと。

従業員に好評だったことから、本格的な生産に取り組んだそうです。

強いコシとつるつるした食感の、薄い緑色の素麺です。

 

【アオサ】

長崎県島原や愛媛県松山、福島県相馬などでつくられています。

磯の香りとのど越しの良いつるっとした食感が味わえます。

 

【モズク】

沖縄では、モズクを使ったなめらかでコシの強い素麺がつくられています。

 

【ひじき】

長崎県大村では、漁獲高全国1位を誇る長崎県産のひじきを使った素麺があります。

遠赤外線の装置を利用してつくられており、つるっとした喉ごしとモチモチした歯ごたえが特徴とのこと。

第1回大村ふるさと産品新作展 最優秀グランプリ」や「第30回長崎県特産品新作展 奨励賞」など、受賞歴多数。

 

同じく長崎県の島原でもひじき入り素麺がつくられています。

 

岡山県鴨方では、瀬戸内牛窓産の風味豊かなひじきを使い、食感のアクセントになるよう少し粗めの粒で生地に練り込んでいます。

 

写真は、石井製麺所で販売しております「小豆島手延べひじき麺」です。

健康を気づかう方に美味しく召し上がっていただければと、「薬膳」を勉強してたどり着いた素麺です。

きっかけは小豆島の漁協さんからのご相談でした。

ほんのりと磯の香りがする素麺で、冷やし素麺はもちろんですが、温かいつゆやスープとも相性の良い素麺です。

 

<参考サイト>

・兵庫県東播手延素麺協同組合 変わりダネ

http://bansyuuji.com/kawaridane.html

・海苔そうめん よかもんさがし

https://yokamonsagashi.jp/products/2169/

・昆布麺3兄弟+新商品「ふだい昆布そうめん」、郷土食「昆布はっと」

https://www.vill.fudai.iwate.jp/kanko/goods/konbumen.html

・淡路島手延べわかめそうめん

https://hyogomania.jp/SHOP/awhsm–s000063.html

・芽かぶそうめん 平野製麺所

https://mekabumen.net/mekabusoumen/

・小山製麺 めかぶそうめん

https://gotokumaru.jp/?pid=114880794

・【宮城 はたけなか製麺】クセになる食感 あかもくうーめん 温麺

https://item.rakuten.co.jp/syokoku-umaimonomeguri/h-a20/

・伊島 あかもくそうめん

https://fukura-tenobe-seimenjyo.jp/?pid=158392400

・佐渡のなが藻そうめん

https://shop.odakesyokuhin.co.jp/products/nagamosomen

・海藻ふのり仕立て 魚沼そうめん

https://shop.ng-life.jp/kojimaya/0038-003/

・あおさそうめん開発

https://nagasakinsfund.com/wakamedaiana/

・島原手延べあおさそうめん

https://wakameya.theshop.jp/items/59526993

・あおさそうめん

https://www.maruyama-foods1.com/p/%E3%81%82%E3%81%8A%E3%81%95%E3%81%9D%E3%81%86%E3%82%81%E3%82%93/

・もずく素麺

https://arakaki-tsusho.co.jp/?p=561

・長崎県大村発 磯仕立てひじき麺【合資会社荒木商会】

http://www.infomart.co.jp/foods/specialty/20121204_f.asp

・めんの山一 手延べひじき麺 5束袋入

https://www.yamaichi-shop.jp/SHOP/MHB-05.html

・宮田製麺株式会社 ひじき麺

http://oisiisoumen.com/shopdetail/009000000001/008/Y/page1/price/

 

 

 


 

 

⑤ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編

 

「黒」の食材にこだわった健康麺 〈楽々膳・黒〉

小豆島の海の香りがひろがる手延べ麺。
食物繊維、鉄分、ミネラル、ビタミンなど栄養素を多く含む小豆島産ひじきの粉末を練り込んでいます。
小豆島の池田漁協と協同で開発した手延べ麺で、海に囲まれた小豆島らしさを大切にした石井製麺所のこだわり麺です。

温かいお出汁にもよくあう太麺仕上げです。

開発秘話については、こちらもぜひご覧ください。

 

 

 

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/

 

《小豆島手延べひじき麺》 https://141seimen.thebase.in/items/69194828

 

 

『お!いしい けんぶんろく』について

本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。

色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。