【お!いしい けんぶんろく】 Vol.16
麺究者への道/ラーメンを研究してみる
素麺をつくり続ける製麺会社として、素麺づくりに携わる者として、食べる方に喜んでいただける素麺をつくることは何よりの幸せだと感じます。
逆に言えば、お客様に喜んでいただけることはなんなのか、どういう素麺が喜ばれるのか…自問自答の(ほぼ)毎日です。
そこで、「まずは、素麺づくりに携わる者として最低限の他産地の知識を持っていたい」と考え、様々な産地を調べブログに書いてきました。
恥ずかしながら、他の産地について詳しく考えたことがなく(一般的な知識くらいは持ち合わせているつもりですが)、新製品開発を考えていく上でも先人の知恵や他産地の動向、商標や販路など様々な点で知識不足を痛感し、ブログを続けるほどに「もっともっと素麺について知りたい!」そう考えるようになりました。
また、今回は「そうめんサミット」を機に多くの方との交流やSNSでの繋がりからヤル気と刺激をいただくことができました。
ですが、ふと、他の麺類ってどうなの?ということが気になり、ちょっと視野を広げてみる意味でも他の麺類・麺料理について調べてブログに残したいなと考えています。
これまでのブログとは少し方向性が変わるかも知れませんが、よろしくお付き合いください。
思い出したように前のブログの形式を持ち出したりするかも知れませんがご容赦ください。
じゃあ、まずはどの麺類・麺料理から考える?
私たちの食生活に無くてはならない存在といえる麺類。
その種類は多く、素麺と同じく小麦粉を原料とする麺を数えただけでも、うどん、ラーメン、スパゲティなど実にたくさんの種類が思い浮かぶのではないでしょうか。
子どもから大人、歳を重ねて嗜好が変わっても麺料理への欲求は大きいものをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
麺類はその調理方法や提供方法で変化し、食べる時間や環境によって手軽な食事や、〆の一品、究極の一杯など、価値も変わってくるのではないでしょうか。
暑い日には冷たい麺をツルツルッと食べたいですよね。
ちょっと贅沢に食べるなら具材を盛り付けてつゆやスープにこだわったり、あっさり食べるなら薬味にこだわったりとポイントも人それぞれではないでしょうか。
寒い日には熱いスープに浸かった麺をフーフー言いながら食べたいですし、
たくさんの仲間や家族と一緒にお鍋の具材にすることもできますよね。
麺料理は、私たちの様々な生活シーンに溶け込んでいます。
そこで今回は素麺以外で身近な麺類、なかでもラーメンについて掘り下げてみたいと思います。
数ある麺類のなかでも、ラーメンは中国がルーツと言われ、素麺と同様に(素麺もルーツは中国と言われる)日本で独自の発展を遂げた麺料理ではないでしょうか。
今や世界中で日本のラーメンが食べられており、海外からの観光客が日本食としてラーメンを食べる光景もよく見られます。
先日も香港から来た友人が、日本のラーメン屋さんに並んで食券を買っている姿を見て、不思議に感じたのを思い出しました。
今回は、ラーメンの歴史や日本での進化、海外への広がりなどについてご紹介したいと思います。
【目次】
① 麺類の起源は2世紀頃の中国にあり?!
② ラーメンは料理として日本で独自の進化を遂げる
③ 日本と中国のラーメンの違いとは?
④ 日本のラーメンは5つの要素で成り立つ!
⑤ 日本のラーメンは海外でも大人気!
⑥ 《美味しい素麺》夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』編
① 麺類の起源は2世紀頃の中国にあり?!
今や日本の国民食とも言えるラーメン。その原型となっているのは中国の麺料理「拉麺(ラアミエン)」です。
そもそも、小麦を原料とした麺類が生まれたのは、中国北部の黄河流域だったそうです。
メソポタミアで栽培されていた小麦が紀元前3000年ごろに中国に伝わり、華北平野で盛んに栽培されるようになりました。
当時はまだ麺の状態ではなく、小さくちぎったスイトンや平たいワンタンの皮のような形状で食べていたようです。
2世紀頃の「四月月令」という文献に、初めて麺の名前が出てきます。
スイトンやワンタン状の「煮餅」と、ひも状の「水引餅」というものです。
550年頃に書かれた「斉民要術」という書物には「水引餅」が登場。
これが麺の祖先と考えられています。
そのつくり方は、小麦粉をよくふるい、肉の煮出し汁でよくこねて、箸の太さほどの棒状(30センチ)にし、水を張った器の中で指でもみ押さえながら引きのばす、というものです。
「餅」というのは中国では小麦粉を使用した食品全般を指し、調理法により「水で煮る」「蒸してつくる」「焼いてつくる」「油で揚げる」の4つの系統に分けられます。
日本で言う「麺」は水で煮る系統に入るようです。
アジアの麺料理はここから派生していったと考えられるそうです。
日清食品「めんの系譜研究会」の麺の系譜図では、麺を伝統的な製造方法で5系列に分類しています。
【手延べラーメン系列】
水引餅の直系にあたる、練った小麦の生地を手でのばす製法で、モンゴルや中央アジアに伝わりました。
中央アジアでよく食べられている麺料理の「ラグマン」は、中国の「拉麺」が語源と考えられています。
棒状にのばした生地を渦巻きの形に巻いて少し寝かせ、油をコーティングしながら手でのばしていく中細麺で、食べる直前につくるのが特徴。
羊肉または牛肉とトマトをベースにしたスープに、季節の野菜をたっぷり入れて煮込みます。
地方によって食べ方が異なり、大きくは汁麺タイプ、汁なし麺タイプ、炒め麺タイプに分けられるそうです。
【素麺系列】
日本の手延べ素麺と同じで、練った生地をひも状にのばし、表面に植物油を薄く塗って、2本の竹の棒にかけさらに引きのばす製法。
元の時代の文献に見られる「索麺」が日本に伝わり、素麺になったと考えられます。
現在中国では、福建省を中心に「線麺」「麺線」と呼ばれるものがつくられているそうです。
【切り麺系】
練った小麦粉の生地を麺棒でのばし、包丁で細く切ります。
小麦粉以外にそば粉など様々な原料を使った麺づくりに生かされている製法で、日本ではうどんやそばなどがこれにあたります。
【押し出し麺系列】
生地をトコロテンのように押し出して細長くする製法。
粘り気のある小麦粉の生地ではなく、緑豆やそば、米などの生地から麺をつくるために考えられたようです。
【河粉(ホーフェン)系列】
うるち米を水に漬け吸水させて、回転式の石臼でひき、ペースト状になったものを蒸したり煮たりして、刃物で切る製法。
<参考サイト>
・麺の起源、系譜 ~麺はどこからきたのか?~
https://world-noodle-dictionary.com/roots/origin.html
・麺の伝播経路
https://world-noodle-dictionary.com/roots/spread.html
・麺類の起源:麺の歴史は小麦の歴史でもある。多彩な文化を紐解くと食したくなる。
https://kz-pe.com/noodle/
・NATIONAL NOODLE DAY特別企画!麺の歴史と世界の麺を紹介します。
https://www.myojousa.com/ja/blog/national-noodle-day/
・世界の麵の文化史
https://www.syokubunka.or.jp/gallery/ishige/archives/noodle/chapter3.html
② ラーメンは料理として日本で独自の進化を遂げる
ラーメンの料理としての変化を調べてみました。
ラーメンを日本で初めて食べたのは誰でしょうか?
1665年に徳川光圀(水戸黄門)が、中国から招いた儒学者の朱舜水のつくった「汁そば」を食べた、これがラーメンのことだという説が長く信じられてきました。
しかし近年、室町時代の1488年に京都の僧侶たちが「経帯麺」という、現在のラーメンと同じく「かん水」を使った麺を食べたという記録が見つかり、これが日本で初めて食べられたラーメンである可能性があるそうです。
明治時代になると、開国に伴い海外の食文化が多く伝わるようになり、横浜や神戸、長崎などの港町に中国人が進出して中華街が生まれました。
そこでできた中国料理店から、麺料理を含めた中華料理が広がっていったそうです。
函館の「養和軒」にて1884年に提供された「南京そば」というメニューが塩ラーメンだったとされ、これが現在のラーメンのルーツという説があります。
1910年、浅草に開業した「来々軒」で提供されたのが醤油ラーメンの元祖と言われます。
来々軒の成功を機に、ラーメンを提供する店が増え、庶民の味として広がっていったようです。
1923年の関東大震災により、ラーメン店を営んでいた人たちが東京周辺から日本各地へ散らばり、全国でラーメン店が増えたそうです。
福岡県久留米市の「南京千両」というお店では、1937年にとんこつラーメンを開発。
当初は澄んだスープだったそうですが、1947年に誤ってとんこつを沸騰させたことがきっかけで、白濁したスープが生まれたそうです。
第二次世界大戦後には、中国から引き揚げてきた人たちが中国で覚えたラーメンの製法を活かし、各地の闇市で屋台を開業。
安くて美味しくて栄養もとれるラーメンが人気を集めたようです。
1954年には北海道札幌市の「味の三瓶」というお店で、味噌ラーメンが誕生しています。
「ラーメン」という呼称が広まるきっかけとなったのが、1958年、初のインスタントラーメンである「日清チキンラーメン」の発売。
それまで「支那そば」「中華そば」と呼ばれていたそうですが、CMなどで人気商品となり、「ラーメン」という名前が全国的に認知されるようになりました。
1960~70年代になると日本各地でご当地ラーメンがつくられ、観光資源のひとつになったと言われます。
その後、何度となくブームが起こり、多様化し洗練されていった日本のラーメン。
2015年には巣鴨の「Japanese Soba Noodles 蔦」が、ミシュランガイドでラーメン店として世界初の1つ星を獲得したそうです。
※上記は独自調べです。諸説あるものや、「うちが元祖!」ということもあるかと思いますがご容赦ください。
<参考サイト>
・日本のラーメンの歴史
https://www.raumen.co.jp/rapedia/study_history/
・日本のラーメンの起源と歴史とは?中国のラーメンとの違いは?
https://jpnculture.net/ramen/
・ラーメンっていったい何だろう? 要素と歴史を押さえればラーメンの“今“が見える!
https://www.myojousa.com/ja/blog/what-is-ramen/
③ 日本と中国のラーメンの違いとは?
中華料理の「拉麺」は、日本で独自に進化したラーメンとどう違うのでしょうか。
「拉」は引きのばすという意味で、小麦粉にお湯を入れよくこねて長くのばし、たたんでさらに伸ばして細長くしていく手延べ製法でつくられます。
「かん水」を使っていないため、コシが弱くやわらかくてもちもちした食感です。
日本の麺はコシが強くて食べごたえがあり、太さや硬さの種類が選べるお店もありますよね。
日本のラーメンのスープは、肉・魚介・野菜などのだしに醬油や味噌を合わせるなど、複合的な味わいでバラエティに富んでいますが、中国では牛肉・豚肉・魚介からとるようです。
味へのこだわり方も違っていて、日本の優先順位は(1)スープ(2)麺(3)具材、中国は(1)具材(2)麺(3)スープ、なんだそうです。
例えば日本のラーメンは、とんこつ・醤油・味噌といったスープの味わいにより分類できますが、中国では「牛肉」「五目」など、上に乗せる具材で選ぶとのことです。
<参考サイト>
・日本のラーメンと中国のラーメンは違う食べ物だった
https://www.ko-cho.com/blog/contents/1509-02/
・日本のラーメンと中国のラーメン(拉麺・拉面)の違い・特徴
http://chugokugo-script.net/shoku-bunka/ramen.html#%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AB%E9%80%B2%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3
・中国の麺料理(ラーメン、拉麺)
https://world-noodle-dictionary.com/asia/china/
・「あれ?中国ラーメンって日本のラーメンと違うかも」中国のラーメンと日本のラーメンの違いとは!?
https://minnanomen.com/%E3%80%8C%E3%81%82%E3%82%8C%EF%BC%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%A8%E9%81%95%E3%81%86
・日本と中国のラーメンの違いは?ラーメンの発祥・歴史を徹底解説
https://tokyo-ramen-mania.com/ramen-history/
④ 日本のラーメンは5つの要素で成り立つ!
ラーメンは、麺・だし・タレ・脂(油)・具の5つの要素を組みあわせることで無限のレシピを生み出すことができるとも言われています。
【麺】
ラーメンに使用する中華麺の特長は、「かん水」を使用すること。
かん水により、独特のコシや黄色がかった色味が生まれます。
縮れ・ストレート・手もみといった製麺方法や形状、小麦の種類、太さ、加水率(麺に加える水分の割合)、形状などを変化させることによって、オリジナリティを出すことができます。
【だし】
ラーメンのスープはだしとタレ、さらには脂(油)の組み合わせによってつくられます。
主なだしの原料としては、豚骨・鶏ガラ・牛骨などの動物素材、昆布・煮干し・エビ・タイなどの海鮮素材、タマネギ・長ネギ・生姜・ニンニクなどの野菜素材。
まただしのとり方として大きくは、強火で長時間煮込む、濃厚な味と風味の「白湯出汁」(とんこつラーメンに多い)と、濁りを出さないように沸騰寸前の温度以下で仕込む「清湯出汁」(醤油ラーメンに多い)とに分けられます。
【タレ】
基礎となる調味料に、香辛料や肉・魚介のエキスなどを凝縮させてつくります。
醤油ダレ、塩ダレ、味噌ダレが一般的です。
【脂(油)】
旨みを加えるとともに、スープが冷めないようふたをする役割も果たします。ネギ油、マー油、辛味油、ラード、焼きラード、鶏油、エビ油などが使われます。
【具】
チャーシュー、メンマ、ネギ、煮玉子、海苔、キクラゲ、モヤシ、なると、ホウレン草、ワンタン、バター、糸唐辛子、挽肉、白髪ネギ、三つ葉、コーン、角煮など、多種多様です。
<参考サイト>
・ラーメンの歴史と現在
https://artsandculture.google.com/story/CAVxS5QL1jNFKw?hl=ja
⑤ 日本のラーメンは海外でも大人気!
今や日本のラーメンは海外でも高い人気を誇ります。
2015年のある記事では、海外にあるラーメン店は2,000店舗以上とのこと。
ニューヨークでは2000年代にラーメンブームが起き、以降も年々人気が高まっているそうです。
基本の味は醤油、味噌、塩、とんこつなど、日本と同じ。
中でもラーメンでしか味わえないとんこつが人気とのことです。
驚くほど異なるのは、その食べ方。
日本ではラーメン店でゆっくり食事を楽しむイメージはあまりないですが、海外では時間をかけて食べるのだとか。
まずお酒と前菜を楽しみ、メインディッシュとしてラーメンをゆっくり味わうそうです。
おしゃれなディナーとして予約して訪れる客も多く、値段も日本の倍以上するようです。
海外でのラーメン人気は、「チキンラーメン」「カップヌードル」などのインスタントラーメンから始まったと考えられています。
さらに日本の映画やアニメがきっかけとなりラーメンに興味を持ったという人も多いそうです。
ラーメンは日本が誇る食文化として、世界中で愛されているようですね。
今回は、麺(生地)というよりも、ラーメンという料理全体についてクローズアップしてみました。
さて、次回はどんな麺を調べてみようかな。。。
<参考サイト>
・海外のラーメン事情|ラーメンが世界的に人気な理由や味・価格の違いを解説
https://iekeikokuramen.com/ja/archives/2937
⑥ 《美味しい素麺》夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』編
夏の贈り物 「瀬戸凪(せとなぎ)」 こだわりの手延べ麺3種を、 小豆島のおだやかな海と、瀬戸内の多島美をデザインしたパッケージで贈る、 石井製麺所特製の夏限定ギフトです。
400年の手延べ製法を受け継ぐスタンダードな「手延べ素麺」と、 小豆島産の健康野菜“しょうどしま長命草”を練り込んだ「手延べしょうどしま長命草素麺」、 瀬戸内レモンがふわっと香る「手延べレモン素麺」をセットにしています。
古くから相手の健康を気づかって贈り物として重宝されてきた素麺の在り方を大切に、 無添加、着色料不使用にこだわった素麺ギフトです。
届いてすぐに食べられるように、めんつゆ(希釈タイプ)もセットしています。
セット内容: ●手延べ素麺×6束 ●手延べしょうどしま長命草素麺×6束 ●手延べレモン素麺×6束 ●めんつゆ(アルミパック)×10袋
※めんつゆは希釈タイプです。1袋で1人前になります。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』》 https://141seimen.thebase.in/items/62463374
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.15(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』レポート
6月3日と4日の2日間、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されました。
台風の接近で、サミットまで気が気でない1週間でしたが、本番は素晴らしいお天気、そうめんに相応しい晴れ空となりました。
今回はそうめんサミットの2日目レポートをお届けしたいと思います。
【2日目】
この日は、そうめんをテーマにしたエンターテインメントな1日。
2日目は「そうめんと遊ぶ日」となっており、前日の「そうめんを学ぶ日」とは打って変わり、“そうめんをテーマにしたエンターテインメント”な1日になっています。
「流しそうめん」、『そうめん落語』、大道芸、キッチンカーやイベントブースの出店などとても賑やかな一日でした。
1日目は鑑評会や公開討論会など緊張感のあった内容でしたが、この日も天気良く屋外でのイベントも多かったので、多くの人に小豆島ならではの楽しい一日をお過ごしいただけたのではないでしょうか。
オリーブ公園のイベント広場(屋外ステージ)で、流しそうめんが行われました!
小豆島では夏になると、時々、所々で流しそうめんを見ることはありましたが、本当に久しぶりに流しそうめんを見たように思います。
オリーブ公園から望む内海湾は、私も大好きな小豆島の景色のひとつです。
流しそうめんにピッタリなロケーションではないでしょうか。
今回は紙製のトングを用いるといった対策がされていました。
たしかに、この方法であればリスクを軽減することができます。
午前と午後、2回行われた流しそうめんですが、すごい行列であっという間に完食となりました!
来場者が目を丸くするほどの盛況ぶりで、流しそうめんの人を惹きつける力に驚かされます。
もしかすると、流しそうめんはもっと早く、たとえば4月~5月くらいに行うのがいいかもしれません。
「そうめんの季節がやってきた」ことを伝えるのに最適なイベントだと思います。
弊社の工場には、そうめんを天日干しするスペースがあるのですが、ここで毎年、流しそうめんイベントをするのもおもしろそうです。
次に足を運んだのは、『そうめん落語』。
香川県ご出身、FM香川「WEEKEND SHUTTLE」でメインパーソナリティとしても活躍されている落語家、桂こけ枝さんの落語です。
披露されたのはもちろん、そうめんにちなんだ落語。
開演には間に合わず、途中からの観覧でしたが、ホールは立ち見が出るほどの満員御礼でした。
『そば清(そばせい)』の蕎麦をそうめんに置き換えて、そうめんならではのアレンジがされた、おそらくこの日のための特別な演目だと思われます。
食べ比べでお金をせしめる主人公。
何杯でも箸が進み、思った以上に食べてしまえる、そんな“そうめんらしさ”満載の落語でした!
そうめんの大食い勝負なら、私もそれなりに勝負できるかもしれません。
広場にもどると、大道芸が行われていました。
私は存じ上げていなかったのですが、「吉田さんちの大道芸」はテレビにも出演され、SNSの総再生回数が1億回を超える、親子で活動されている大道芸人さんなのだそうです。
大道芸はこれまでも、ときどき目にすることはありましたが…感動して涙が出た大道芸は初めてでした。
お父さんと3人姉妹による、息の合った芸の数々に拍手が起こります。
高校卒業で引退(?)となる長女さんの、幼い頃から磨かれたであろう芸がすごかった!
おそらく、親子でひとつの舞台を作り上げる様に、私は尚更、感動したのだと思います。
この年齢になって、跡継ぎとなって、両親と日々仕事をしていますが、親子ならではの良さと難しさがあることを知っていますので…勝手な想像で、申し訳ないですが…
この日のために、三重の鈴鹿市からお越しいただいたとのことです。
ありがとうございました!
ブログを拝見したところ、三女さんは初フェリーだったようで、とても喜んでいらっしゃったとのこと。
小豆島での公演が、いい思い出になっていると嬉しいですね。
「OH!HAPPY MORNING」の公開録音。
私は残念ながら観覧できませんでしたが、やはりすごい人気でした。
終演後に写真撮影会があったようで長い行列ができていました。
翌日の6月5日と6日の放送を聴きまして、全国からリスナーの方がいらっしゃっていたことを知りました。
300人以上が集まったそうです!
キッチンカーや、地元の企業の皆様が出店。
出店されていたブースももちろん拝見してきました。
イベントを中心に見て回ったので、いろいろと食べて回る時間はなかったのですが、こちらもにぎわっておりました。
どうやら、そうめんを使った特別メニューも出ていたそうで、後で知ってもったいないなと思った次第です。
魚のスープで味わう、そうめんのジェノベーゼ風アレンジだったとか…そうなんです。
そうめんはスープにして食べるとすごく美味しいんです!
たとえば朝食に「スープそうめん」は、もっと試してくれる人が増えるといいなと思っています。
そうめんの可能性と美味しさを満喫できた2日間でした!
ということで、そうめんサミットのレポートは以上となります。
ひとりでは回り切れなかったイベントもありましたが、ひとりの“そうめん好き”として、そうめん尽くしの2日間を満喫できました。
会場の雰囲気を少しでも共有できましたら…
もし心残りをあげるとするならば…
島外の生産者、全国のそうめん製造者の方々と、あまり交流できなかったことでしょうか。
特に、若い世代の生産者と話をしてみたいと考えていたのですが、そもそも会場を見回したときに、私と同世代と思われる方を見つけることができませんでした。
冷静に考えれば、そうめんシーズン真っ只中のこの時期に、小豆島まで足を運べる生産者さんは少ないと思います。
その中にあって、淡路島の手延べそうめん生産者の方と、わずかな時間ではありましたが交流できたのは貴重な時間でした。
同じ瀬戸内海に浮かぶ、隣同士の二つの島。
しかし、私の知る限り、交流があるという話は聞いたことがありませんでした。
帰ってから調べてみると、淡路島も天日干しのそうめんがつくられていて、小豆島そうめんと共通した製造風景が見られるようです。
一方で、初めて見る製造機械があったり、家族の連携の仕方、役割分担が違っていたり、勉強になります。
特産品のわかめや玉ねぎを練り込んだそうめんもあるので、「製造方法など情報交換がしたい」といった話にもなりました。
「協同」という話は、原料メーカーや機械メーカーといった、いわゆるステークホルダー的な関係だけでなく、同業他社という関係においても大事になるのでは?と考えています。
後継者問題について考えた時…
作業の負担軽減、製法の改善も重要ですが、実はそれよりも先に、「仲間づくり」が大事なのでは?と…
遠く離れていても、がんばっている同世代の生産者がいることは、勇気づけられるように思うのです。
そうめんそのものが進化していくためにも、皆で意見を出し合い、助け合うネットワークがあってもいいのではないでしょうか。
このサミットをきっかけとして…
ますますそうめん業界のためにがんばっていきたいと気持ちを新たにしました。
そうめん業界の道筋を示し、そうめんサミットを成功に導いた、小豆島手延素麺協同組合の皆様をはじめとする実行委員会の皆様、業界関係者の皆様、当日イベントを盛り上げていただいた皆様に感謝を申し上げます。
当日ご来場いただきました皆様、そうめんファンの皆様にも御礼を申し上げます。
これからツイッターでつながった各地の生産者の方々を訪ねてみたいと思っています。
いつか、全国の生産者の方々が集まるサミットが開催できるとおもしろそうです。
若手のコミュニティもつくっていきたいですね。
小豆島そうめんの、そして日本のそうめんのこれからに、ご期待をいただけると幸いです。
場外サミットも開催!
前回のブログでも書きましたが、そうめんサミットをきっかけに、すごく嬉しい出会いもありました。
手延べそうめんが大好きな小学6年生のSHUNくんが、サミット前日に工場見学にお越しくださいました!
台風の接近が心配された6月2日、お父様と飛行機に乗って、遠路はるばる小豆島まで…
製造体験のため、これから延ばすそうめんを用意していたところ、SHUNくんが到着。
シャッターを開けて、工場の中でそうめんがつくられている様子を見た瞬間のSHUNくんの笑顔が忘れられません。
両手を広げて、喜んでくれました。
SHUNくんは、手延べそうめんを盛り上げる活動をされています。
きっかけは、とあるお店で大好きなそうめんメニューがあったそうですが、生産者の廃業によって、そのメニューが食べられなくなってしまったこと。
自分の好きなそうめんが、後継者不足もあってどんどん生産量が減っている現状を知り、何かできることがないか、と活動を開始。
お父様と二人三脚で、全国のそうめんを食べたり、イベントに出店したり、そしてこの度、初めて手延べそうめんの製造現場を見学することになったそうです。
初めて見る手延べそうめんがつくられる様子に、興味津々。
お土産にとプレゼントした、そうめんを捌く箸を両手に、箸分け作業を体験していただきました。
箸分けはなかなか力のいる作業でもあるのですが、どんどんチャレンジ。
すぐにコツをつかんで、いろんな作業にも挑戦していました。
最後は、そうめんを結束する機械を見ていただき、実際に束ねたそうめんを箱に詰める作業を体験してもらいました。
そうめんの重さを計り、箱に詰めて、中身をそろえるため最後に箱を両側から、ポンポンっと叩く姿は、すごく様になっていました。
私の両親は、まるで孫ができたかのように喜んでおり、短い時間ではありましたが、私たち家族にとっても思い出となる出会いになりました。
サミット当日もご一緒させていただき、弊社がお世話になっている小田象製粉(株)の研究開発担当の方とのお話の場も設けさせていただきました。
実は、SHUNくんに会うことを担当者の方も大変楽しみされていまして、この場を「場外サミット」と仰っていました。
SHUNくんの夢は、そうめんのお店を開くことだそうです。
手延べそうめんを応援してくれているSHUNくんに、生産者としてしっかり応えていきたい。
手延べそうめんがなくなってしまっては、お店ができなくなってしまいます。
そうめんを応援してくれる小学生がいることが、どれだけ喜ばしいことなのか。
SHUNくんと出会えたことも、今回のサミットが小豆島で開催されてよかったと思うことのひとつです。
最後まで、「また工場に行きたい!」と言ってくれていました。
ぜひまた、小豆島に遊びに来てください。
小豆島そうめんは、いつでも歓迎ですよ!
小豆島のいち生産者が、いち参加者として楽しませていただいた「そうめんサミット」。
貴重な出会いと、これからの“やり甲斐”もいただけた、とても貴重な体験でした。
これからも小豆島手延べ素麺をどうぞよろしくお願いいたします。
もちろん、石井製麺所もよろしくお願いいたします!
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.14(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』レポート
6月3日と4日の2日間、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されました。
台風の接近で、サミットまで気が気でない1週間でしたが、本番は素晴らしいお天気、そうめんに相応しい晴れ空となりました。
今回はそうめんサミットのレポートをお届けしたいと思います。
【1日目】
スタートは『日本三大そうめん食べ比べ』から。
兵庫の播州そうめん、奈良の三輪そうめん、そして香川の小豆島そうめん。
それぞれのそうめんを食べたことはありますが、一度に3種類のそうめんを食べるのは初めての体験です。
まずは見た目の比較。
器に盛られたそうめんを見比べると、三輪そうめんが一番細いことがよく分かります。
播州そうめんと小豆島そうめんの違いは僅かですが、若干、小豆島そうめんが太いような気がします。
手延べ製法の性質上、太さに多少のバラつきが生じるので個体差はあると思いますが、見た目だけでも産地を判断できそうでした。
太さが異なれば、食感が変わります。
三輪そうめんは細いので、軽い食感になりそうですが、意外にも食べ応えがある印象でした。
これはおそらく、他のそうめんと同じ感覚で箸に取ると、細い分、より多くの本数のそうめんを取ることになるからかもしれません。
播州そうめんは、はっきりとコシが強いと感じました。
そうめんの一本、一本に存在感があります。気持ちよくのどを通る感じで、噛んだ時にプチっと歯切れのよい感覚も特徴でしょうか。
小豆島そうめんは、こればかりは食べ慣れているところもありますが、ツルツルっと軽やかなのど越しの良さを感じます。
違いを感じたのは歯ごたえ。
芯というほどはっきりしたものではないものの、最初はやわらかく、最後にプチっと切れるような、極端に言えば2段階の噛み応えでした。
そして、味の違い。
これが今回、一番分かりやすい違いでした。
小豆島そうめんは、言葉で表現するのは難しいですが、口に入れたとき、のどを通るときに感じる「風味」があります。
これはおそらく、使っている油が「ごま油」であることが理由だと思われます。
味に影響を及ぼすものとして原材料の違いは大きいはずで、「ごま油」の使用は小豆島ならではの特徴です。
はっきりと断定できないのは、その風味が「ごまの風味」だと言い切れないからです。
(私の舌が未熟だという可能性もありますが…)ごまの味がするとは言えないものの、鼻に抜けて感じられる風味があることは間違いありません。
これが、小豆島の島民にとっての「そうめんの味」なのだと改めて実感しました。
食べ比べてみると、たかがそうめん、されどそうめん、その美味しさには違いがありました。
「私は播州が好き」「私は三輪が一番」「やっぱり小豆島」そんな声が聞こえてくるのも当然だと思います。
繊細な味覚センサーは、その土地の気候、製造環境、職人さん独自のこだわりといった数値化できない微細な違いを感じ取っているのかもしれません。
次に向かったのは『式典・鑑評会結果発表・表彰式』、および『公開討論会』。
今回のサミットでは、「そうめんは、宇宙だ!」と題して、「そうめんを食す。そうめんを語る。そうめんを学ぶ。」ことを掲げています。
これが本サミットのメインイベントです。
サミット=首脳会議の名の通り、全国からそうめんおよび乾麺に関わる組合、企業の代表者や生産者の方々が集まりました。
業界初の試みとして、『第1回 全国そうめん鑑評会』が実施され、その結果発表と表彰式が行われました。
「業界の技術研鑽・品質向上につなげるだけでなく、縮小していくそうめん市場を上向きにし、手延べ文化の維持継承、そうめんに対する消費者の認識・心理的価値を高め、そうめん文化全体を向上させる」ことを目的としています。
全国から全16作品の応募があり、同条件のもと食味に関するブラインド審査の結果、金賞6作品、入賞10作品が選ばれました。
【金賞】以下、五十音順
◯静岡県浜松市 池島フーズ株式会社
◯岡山県浅口市 かも川手延素麺株式会社
◯香川県小豆郡 創麺屋株式会社
◯徳島県つるぎ町半田 半田手延べそうめん協同組合
◯兵庫県たつの市 兵庫県手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 島原手延素麺協同組合/平川製麺
【入賞】以下、五十音順
◯兵庫県南あわじ市 淡路手延素麺協同組合
◯岡山県 岡山県製粉製麺工業協同組合
◯兵庫県たつの市 カネス製麺株式会社
◯香川県坂出市 木下製粉株式会社
◯愛知県蒲郡市 株式会社金トビ志賀
◯秋田県湯沢市 株式会社後文
◯茨城県稲敷郡 茂野製麺株式会社
◯香川県小豆郡 小豆島手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 長崎県有家手延素麺協同組合
◯奈良県桜井市 奈良県三輪素麺工業協同組合
地場産の小麦粉をはじめとする国産原料を使用したそうめんや、食塩や油を使わないそうめんが出品されていました。
小麦粉以外の原料を練り込むそうめんは、今回の応募条件から除外されていたので、シンプルに、小麦粉の味や、製法や技術が評価されやすい鑑評会になったのではないでしょうか。
審査員の方々のコメントを聞くと、どれも美味しく、甲乙をつけるのが難しかったようです。
しかし、5項目(味/香り/コシ/のどごし/色つや)の評価基準で点数化された審査だったため、やはり金賞作品には、金賞たる理由があるのだと思います。
可能であれば、各作品について、具体的な感想を聞きたかったというのが本音ですね。
公開討論会では、審査員の方々と業界団体の代表者の方々が登壇され、鑑評会の結果も踏まえて議論が行われました。
生産者、販売者、飲食店、それぞれの立場から、そうめんの未来を考えます。
そうめんの生産量が減少している、という業界全体の課題。
原因はいくつかあるのでしょうが、食生活の多様化の影響が言及されていました。
日本三大そうめんを食べ比べただけでも分かったように、そうめんには個性があります。
最近は、都内にそうめん専門店が増えており、「そうめんの食べ方」が注目されているようで、料理に合わせて最適なそうめんを選ぶことが大事とのこと。
私も恵比寿にある専門店『そそそ』を訪ねたことがありますが、「明太クリームそうめん」といったメニューが人気を博しているそうです。
飲食店においては、のびにくさも重要になります。
そこで提案されていたのは、「古(ひね)」と呼ばれる熟成麺の活用です。
播州そうめんでは特に、古物(ひねもの)として、ワンランク上のそうめんとして扱われています。
冬に製造したそうめんを、ひと夏(梅雨の時期)の間、蔵の中で寝かせたものを指します。
熟成したそうめんはコシが強くなり、茹でのびもしにくくなるという特徴があります。
一方で、新しいそうめんにも、新しいそうめんらしい良さがあり、やはり原料由来の風味が際立つのは新しい麺とのこと。
これは弊社でも大事にしている考え方になります。
ごま油を使用していたり、その風味が特徴である小豆島そうめんにとっては、できたての新しいそうめんを食べるのが合っていると思います。
そのため、小豆島では古物(ひねもの)は一般的ではないですが、麺のコシが強くなる現象は有効活用できると考えています。
たとえば、練り込み系のそうめんは、その原料によってはコシが弱くなることがあるようです。
そんなとき、数か月の熟成を経ることでコシを強くできる可能性も考えられますね。
後継者不足の問題にも話が及びました。
跡を継ぐ若い人がいないことは、産地を問わない共通の課題です。
小豆島そうめんの場合、平成初期には200件を超える製麺所がありましたが、今では60件ほどになっているそうです。(小豆島手延素麺協同組合の組合員数)
手延べそうめんは、その製法上、長時間作業が必要とされます。
弊社の場合、早朝の3時30分から、およそ15~16時間といったところでしょうか。
これは小麦粉の性質を最大限に生かし、“寝かせては延ばす”を繰り返して麺にしているからです。
美味しさのためには妥協できない、ひとつひとつの工程があります。
そうめん屋単独では、これ以上の作業時間、工程の短縮化は難しいのが現状です。
しかし、他産地では、小麦粉など原料メーカーや製麺機械メーカーとの「協同での技術発展」が既に行われているそうです。
製麺所が要望を出し、新しい小麦粉や機械が開発され、製麺所が実験する。その繰り返しで、作業時間が12時間まで短縮されているとのこと。
会場でお会いした機械メーカーの方から、「小麦粉を練る機械も進化しており、練り方によってその後の熟成時間を短縮できる」という話もお聞きしました。
小豆島のそうめん屋は、他産地と比較しても、1軒あたりの規模が小さいそうです。
(もちろん、規模だけが理由にはなりませんが)弊社もいわゆる家族経営(両親と私)の1社ですので、長年の製麺経験による経験値と技術はあっても、科学的な知見が不足しているのは間違いありません。
自社だけでできることに、限界があるのは明らかです。
討論会を聞きながら、協働での技術発展が不可欠だという理解とともに、その主導はそうめん屋(生産者)でなければならないと強く思いました。
そうめんを深く知り、料理へ生かすことも大切ですが、たとえば「パスタ風にアレンジしたそうめん」があったとして、それはどこまでいっても「~風」でしかなく、パスタには敵わないものだと思います。
本当に必要なのは、他の麺類に寄せていくような、そうめんのアレンジに留まることなく、そうめんそのものの進化と呼べるような、新しいそうめんの開発だと考えています。
生産者にとっても、もちろん食べる人にとっても新しい、画期的なそうめん。
業界が活気づくような、斬新な切り口のそうめん。
奇をてらうのではなく、しかし「おもしろい!」と感じていただける、そんなそうめんを創りたい。
幸いなことに、弊社では新商品やOEM商品の開発にあたって、製粉会社さんや地元研究機関の専門家の方にご協力をいただいております。
「協同」をこれから必要不可欠になる手段と捉えて、主体的に動く。討論会を踏まえた、自分なりの結論です。
1日目の最後は懇親会です。
遅れての参加になってしまい、会場に入ると宴もたけなわでした。近くの席には島の同業者の皆様、同じテーブルには素麺組合の皆様。
実は、素麺組合の、特に生産者の方々とお話するのは、これが初めてでした。
素麺組合には若い組合員で青年部が組織されているそうです。
小豆島において、組合員ではない、いわゆる独立した弊社のようなそうめん屋は、通称アウトサイダーと呼ばれています。
言葉だけ聞くと悪い意味に受け取られるかもしれませんが、あまり深い意味はないはずです(笑)。
「立場や所属の垣根を取り払って、技術交流ができれば…」若手の生産者としてのつながりが、これからの小豆島そうめんにとってプラスになると考えています。
また、ツイッターでフォローをいただきました、そうめん研究家のソーメン二郎さんと、初めてご挨拶をさせていただきました!
ソーメン二郎さん、業界で知らない人はいないでしょうし、そうめんのPRでテレビや雑誌でも大活躍されております。
そうめん発祥の地、奈良県桜井市のご出身、三輪そうめんの製麺所の家系のお生まれで、「実家に帰省するたび、製麺所の廃業を目の当たりに」されたことで、そうめん業界に対する危機感を抱いたそうです。
最近では「クラフトソーメン束の会」を主宰され、全国の小規模な手延べそうめん製造所のつくるそうめんにスポットライトを当てる活動をされています。
いつか、ソーメン二郎さんにも注目してもらえる、新作そうめんを創りたいです。
参考サイト:https://www.mizkan.co.jp/craft-somen/
2日目に続きます。。。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.13(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』
【お!いしいけんぶんろく】ブログが、久々の更新となります。
GWが過ぎ、夏も目前となり、石井製麺所でも忙しい毎日です。
製造の佳境もあって更新作業ができていませんでしたが、6月3日、4日に小豆島で開催される『全国そうめんサミット』については触れなければ!
ということで、ブログを更新する決心(笑)をしました。
ぜひ今回のお話もお目通しいただければ幸いです。
6月3日、4日の2日間、夏の小豆島を舞台に、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されます。
G7広島サミットが開催されたばかりですが、実はそうめん業界にもサミットがあります。
兵庫の播州そうめん、奈良の三輪そうめん、そして香川の小豆島そうめんは「日本三大そうめん」と呼ばれています。
2016年の播州そうめんからスタートしたそうめんサミットは、2018年の三輪そうめん、新型コロナによる延期を経て、いよいよ今年2023年に小豆島そうめんがそのバトンを受け取りました。
新型コロナの巣ごもり需要として、「パスタ」や「そうめん」など、乾麺が注目を集めたのは記憶に新しいかもしれません。
しかし、そうめんの歴史を俯瞰してみると、その生産量は減少傾向にあり、それは弊社創業の頃の話を伝え聞くだけでも間違いのない事実です。
「作れば作るだけ売れる」といった時代があったなんて、今となっては信じられません。
そんな現状を受けて、そうめんをはじめとする乾麺の需要拡大を目指してスタートしたのが、『全国そうめんサミット』です。第3回となる小豆島サミットのテーマは、『そうめんは、宇宙だ!』。
「そうめんなんてどこも同じ」という声に、そうめんの代表的な産地のひとつとして、「そんなことはない」と答えることを目指しています。
原料はほとんど小麦粉だけ、シンプルを極めたような加工食品であるそうめんですが、産地によって使用する原料に特徴があり、製法によってのどごしや舌触りが変わります。
その土地その土地の名産品を練り込んだ、色合いや味わい多種多様な、オリジナリティあふれるそうめんも沢山あります。
そこに生産者、作り手のこだわりまで加わったそうめんは、単純に「そうめん」という言葉では片づけられない、奥の深い食べ物だと思います。
まさにそうめんの世界は、未解明の謎がまだまだ眠っている「宇宙」なのかもしれませんね。
本サミットの見所は、なんといっても「第1回 全国そうめん鑑評会」です。
全国から集まった全16作品のそうめんが、審査員によって評価されます。
審査員は著名な料理人や有識者の方々が務め、その評価基準は5項目(味/香り/コシ/のどごし/色つや)が設けられ、総合5段階で評価されます。
私がこれはすごい!と思うのは、試食用のそうめんの調理について、入念な準備がされていることでしょうか。
そうめんは茹で時間をはじめ、茹で方の影響を強く受けてしまいます。
どんなに作り手が丁寧に、こだわりを込めて作ったそうめんでも、茹で加減を失敗すると、その味わいは大きく損なわれてしまいます。
試作品の調理、その責任は重大です。 当日にそなえて、繰り返しシミュレーションがされているそうです。
ゆがく人、お湯を捨てる人、麺を洗う人、氷で締める人、お皿の準備をする人、お皿に盛る人、審査員の手元まで運ぶ人… そうめんを調理することだけに、これだけのスタッフがそれぞれの役割を果たすべく、準備しています。
業界初、そうめんに真正面から向き合うような鑑評会。
企画した実行委員会の方々、鑑評会に応募された生産者の皆様の挑戦する心に敬意を表するとともに、鑑評会の成功と、鑑評会がそうめん業界の活性化につながることを願っています。
もちろん、ど真剣にそうめんに向き合うイベントだけでなく、そうめんを題材にした桂こけ枝さんの落語や、大道芸など野外イベント、日本三大そうめんの食べ比べに、王道の流しそうめんなど、そうめんを“楽しむ”企画も沢山用意されています。
キッチンカーも出るので、そうめんをメインに、サイドメニューも充実。
人気FMラジオ番組「OH! HAPPY MORNING」の公開録音もあるそうです。
“そうめんづくし”の2日間、全国の「そうめんファン」の皆様にお楽しみいただけますと、小豆島のイチそうめん屋として嬉しく思います。
(ご遠方の皆様へ、本ブログにてサミットの様子をお届けしたいと思います。ぜひご覧くださいませ。)
「仲間さがし」がしたいと思っています!
全国の産地から生産者が集まるサミットですので、ぜひいろいろな産地の方々と交流したいですね。
具体的には、「仲間さがし」がしたいと思っています!
後継者不足は産地を問わずの課題だと思いますが、小豆島の若手生産者のひとりとして、一緒にがんばる仲間がほしいという想いは切実です。
美味しさに妥協しなければ、手延べそうめんづくりはとてもハード。
小麦粉を塩水で練り上げた生地は重いですし、気温や湿度の影響を受けやすいそうめんは、細やかな目配り・気配りが欠かせません。
私が弱いだけかもしれませんが、美味しいそうめんを目指して、ともに切磋琢磨する仲間がいることは心強いです。
昨年末のツイッター開設をきっかけに、全国各地のそうめん屋さんとつながることができました。
産地が違い、作るそうめんは異なれど、皆さん自分のつくるこだわり込めたそうめんを積極的に発信されています。
なかには、製法に関わる悩みや困りごとも投稿されていて、アドバイスが交わされる様子も… 後継者不足がますます進むであろうこれから、産地の垣根と距離を越えたつながりが大事になると感じています。
そしてサミットは、普段は遠く離れた生産者の方々と、リアルにお会いできる、貴重な機会です!
当日は懇親会もありますので、お声がけをさせていただければ幸いです。
写真は、「手延べひじき麺」開発にお力いただいた、池田漁協の皆さん
新たな出会いが生まれそうです。
そして、ツイッターとサミットをきっかけに、新たな出会いが生まれそうです。
「そうめんの美味しさを世界に伝えたい」と活動されているSHUNくんが工場見学に来てくれることになりました!
そうめん大好きな小学6年生で、全国の手延べそうめんの生産量が減少している状況を知って、手延べそうめん業界を盛り上げるために、クラウドファンディングも成功されています。
『俊麺(しゅんめん)』という、オリジナルデザインの手延べそうめんを商品化、「しょうが麺」「ごぼう麺」「にんにく麺」「トマト麺」「しそ麺」それに「白麺」という6種類の手延べ麺です。
いったい、どんな味がするのでしょうか?
一番、気になっているのは「ごぼう麺」。
ごぼうのやさしい風味は、手延べ麺によく合うと思います!
写真はSHUNくん。SHUNくんのお父様よりご提供頂きました。
サミットで小豆島を訪れるにあたり、工場見学をしたいとツイッターで投稿されていました。
その投稿を見た徳島のそうめん屋さんが、「小豆島のそうめん屋さん、どうですか?」とご縁をつないでくださいました。
本当に、ありがたい限りです。
手延べそうめんの製造現場をご覧になるのは初めてとのことですので、そうめんが延ばされる様子や、1束1束、そうめんを束ねる様子など、“手延べならでは”の作業風景をご覧いただければと思っています。
そうめんサミット当日は、3日は午後からの式典・鑑評会結果発表に出席、懇親会への参加、4日は会場内をいろいろと見て歩く予定です。
背中に石井製麺所の名前の入ったユニフォームを着ていますので、もし見かけたらお声掛けください!
手延べそうめんのことや、小豆島のことなど、お答えできるかと思います。
サミットが終わりましたら、当日の様子など、本ブログにてレポートを予定しています。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.12
手延べ素麺三大産地のひとつ・小豆島について
素麺の産地・香川県小豆島は、瀬戸内海に浮かぶ島です。
穏やかな海に囲まれ、風光明媚な景勝地や食にまつわる施設など、見どころいっぱいの観光地でもあります。
お出かけに最適なこれからの季節、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
6月3日・4日には、小豆島で「全国そうめんサミット」が開催される予定。
兵庫県播州、奈良県三輪につぐ第3回となり、関係者だけでなく一般の方にも楽しんでいただける食べ比べなどのイベントが盛りだくさんだそうです。
今回は、小豆島の観光情報や特産品についてご紹介します。
三代目:今回は、夏の需要期を迎える前に今一度、三大産地として整理してみたいと考えました。
そのきっかけは、「全国そうめんサミット」です。
基本的には、小豆島手延素麺組合様が仕切ることになりますが、小豆島で製麺に携わる者として、全く無関係ではありませんし、もちろん、準備や出店でお手伝いもしてまいります。
何よりも楽しみにしているのは、これまでブログでも触れてきた産地の方々にリアルにお会いできることです。
きちんと胸を張って、小豆島手延べ素麺の製麺所三代目として、ご縁をいただく皆さまにご挨拶できるように振り返りの意味も含めてブログに書いてみました。
「全国そうめんサミット」に向けて、小豆島にお越しになる皆さまのご参考になれば幸いです。
<参考サイト>
・第3回全国そうめんサミット2023in 小豆島 公式サイト
https://somen-summit-2023.com
※写真はphotoAC「オリーブ公園の風車から見える風景」より
【目次】
① 小豆島でおすすめの観光スポット
② 食の特産品が豊富な小豆島
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
① 小豆島でおすすめの観光スポット
小豆島と聞いてどんなイメージを思い浮かべますでしょうか?
島には自然や文化、グルメなど、様々な魅力があふれています。
そんな小豆島の魅力を存分に体感できるおすすめスポットを、厳選してご紹介します。
※営業状況など詳細については、各施設にお問い合わせください。
【道の駅 小豆島ふるさと村】
遊ぶ・体験する・泊まる・食べる・買う、の5つを楽しむことができる公共の施設。
「手延べそうめん館」では、素麺の製造工程を見学することができます。箸分け作業の体験(有料)や試食も。
「全国そうめんサミット」の会場にもなります。
【醬の郷(ひしおのさと)】
小豆島の地場産業である醤油と佃煮の工場が集中するエリア。
明治時代に建てられた醬油蔵の漆喰の白壁が、風情ある景観を生んでいます。
醬の郷にある「マルキン醤油記念館」では、小豆島独自の醬油の製法が紹介されており、醤油を使ったグルメも堪能できます。
※写真はphotoAC「醤の郷」より
【かどや製油 資料展示室「今昔館」】(現在は休止中)
安政5年(1858年)の創業以来、発祥の地である小豆島でごま油をつくり続けるかどや製油さんの工場内にある資料展示室。
ごま油の製造工程や歴史を学んだり、テイスティングを体験したりできます。
【オリーブ園】
全国で最初にオリーブ栽培に成功した、日本のオリーブ栽培発祥の地。
3ヘクタールの敷地には、日本最古のオリーブの原木を含む約2,000本のオリーブが植えられています。
世界各国のオリーブオイルをブレンドしてオリジナルオイル作り体験も。
【エンジェルロード】
1日2回、引き潮の間だけ現れる、島から島へ歩いて渡れる砂浜の道。
大切な人と手をつないで渡ると幸せになれるという言い伝えがあるそうです。
※写真はphotoAC「小豆島エンジェルロード(道が出現する前)」より
【寒霞渓】
国立公園で、日本三大渓谷美のひとつ。
ロープウェイから、美しい溪谷と瀬戸内海の素晴らしい景色を一望できます。
秋の紅葉シーズンは、全国各地からたくさんの観光客の方がお越しになります。
※写真はphotoAC「秋の寒霞渓」より
<参考サイト>
・小豆島観光マップ
https://www.shodoshima-kh.jp/enjoy/map.html
・自然もグルメも楽しめる小豆島のおすすめ観光スポット11選
https://www.knt.co.jp/travelguide/kokunai/052/
・ここは押さえておきたい!小豆島のおすすめ観光スポット22選
https://www.ikyu.com/kankou/arealist8428/
・小豆島ふるさと村 素麺工場・見学体験
https://www.shodoshima.jp/expelience/taiken/visitor/567.html
・醤の郷(ひしおのさと)
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=270&c=2
・マルキン醤油記念館
https://marukin.moritakk.com/kinenkan/
・ごま油資料展示室見学 -かどや製油-
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=163&c=2
・かどや製油の資料展示室 今昔館のご案内
https://www.kadoya.com/enjoy/page04.html
・小豆島オリーブ園
https://www.1st-olive.com/guide/
・エンジェルロード
https://www.shodoshima-kh.jp/angel/
・寒霞渓の魅力
https://www.kankakei.co.jp/miryoku/
② 食の特産品が豊富な小豆島
小豆島には、素麺の他にもいろいろな特産品があります。
「オリーブオイル」「醤油」「佃煮」の3品目には、地域食品ブランドの表示基準である「本場の本物」に認定されている商品もあります。
小豆島の素麺づくりに欠かせない「ごま油」も、島の特産品です。
【オリーブオイル】
日本のオリーブ栽培は香川県が95%を占め、オリーブオイルの生産量も日本一。
小豆島オリーブオイルは、精製油や添加物をまったく加えず、オリーブの実を搾っただけのフレッシュな香りと風味が特徴です。
地元で丁寧に手摘みした新鮮な果実を、すぐさま地元の工場に運び、非加熱でつくっています。
明治41年(1908年)、試験的に植樹されたオリーブが、温暖で雨の少ない小豆島の気候風土で根付き、定着しました。
宮内庁御用達の品目に選ばれたり、世界規模のオリーブオイル品評会で好成績を収めたりしたこともあるそうです。
5月頃にオリーブの花が咲き、6月頃から小さな実を付け、徐々に大きくなり9月の下旬には収穫が始まります。
10月10日に「オリーブの新漬け」が解禁され、いよいよオリーブの旬の季節になります。
農家さんは毎日のように収穫に追われ、翌年の1月頃にはだいたいの収穫が終わり、オリーブオイルの搾油作業を行っているようです。
日本の気候で育つオリーブで作られたオイルはとてもマイルドで、和食にとても良く合い、発酵食品にもピッタリだと言われます。
そうめんつゆに数滴垂らして召し上がっていただければ、清々しい香りとめんつゆのコクが相まって、上質なそうめんを味わっていただけるのではないでしょうか。
【桶(こが)仕込醤油】
小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地。
日本の4代醬油産地のひとつでもあります。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶(こが)の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上、新しいものでも50年ほど使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいやうま味を引き出せるそうです。
化学調味料、合成保存料、合成着色料などは一切使用せず、1~2年かけてゆっくり発酵・熟成させてつくられるものや、一度仕込んだ醤油を基にさらに仕込む「再仕込み醤油」などもあります。
小豆島の醤油蔵では、昔ながらの桶仕込みだけでなく、最先端の技術を活用して効率良く醤油をつくる技術も持っています。
「グルテンフリーの醤油」や「オリーブ酵母で仕込む醤油」など、バラエティに富んだ様々な醤油もつくられています。
また、醤油をベースに、出汁の素やめんつゆ、ポン酢、ドレッシングなど家庭になくてはならない調味料の開発も行っておられます。
【佃煮】
太平洋戦争後の昭和20年(1945年)、特産品である醤油を活用した島の経済復興を目的として、佃煮がつくられ始めました。
食糧難の時代に芋のつるを醤油で煮込んだ佃煮を開発したところから始まったそうです。
現在、佃煮の素材は島で数百以上もあるとされますが、「本場の本物」認定品は、30年以上にわたり使われ続けている昆布、のり、わかめ、しいたけ、おじゃこちりめん、きゃらぶきの6品目だけとされています。
具材へのこだわりはもちろん、製造技術に多くの特徴を持つ会社もあります。
最近では、「宇宙食」としての佃煮製造技術を持つ会社から、化学調味料・合成保存料・合成着色料を一切使用せず、自然そのままの味わいにこだわり、心から安心して楽しむことができる佃煮の製造にこだわる、昔ながらの佃煮工場もあります。
【ごま油】
江戸時代末期の安政5年(1858年)、小豆島で創業したのが、ごま油の国内シェア50%以上を占めるかどや製油さんです。
小豆島の手延べ素麺づくりにごま油が使われるからこそ、小豆島で創業されたといえるでしょう。
国内流通する量のほとんどを小豆島にある大規模工場で生産しておられます。
工場は土庄港の近くにあり、風向きによってはごまのよい香りが町中に漂います。
<参考サイト>
・本場の本物 現在の認定品目
https://honbamon.com/product/index.html/page/2
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品 本場の本物
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/899.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
・食の原点 小豆島
http://shodoshima-food.com/?page_id=38
・日本一の生産量「ごま油」
https://furusato-tonosho.furusato-basic.com/features/detail/27
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
小豆島の特産品として忘れてはならないのが、手延べ素麺。
小豆島が素麺の名産地になったのには、いくつかの理由があると考えられます。
ひとつは気候。
瀬戸内海に位置する小豆島は、気候が穏やかで雨が少なく、素麺づくりの最盛期である冬も雪が降ることはほとんどなく乾燥しているため、天日干しでの素麺づくりが行われています。
また、瀬戸内海でとれる塩、以前では讃岐平野で栽培されていた小麦(現在は手延べ素麺作りに合う海外産の小麦を国内で精麦して使用している場合もあります)、良質な清水などの原料が調達しやすかったことも理由のひとつといえるでしょう。
小豆島手延べ素麺づくりに欠かせないごま油や、素麺にベストマッチの醬油が小豆島の特産品であることも、何らかの因果関係がありそうです。
<参考サイト>
・小豆島ってどんな島?(基本・地勢・気候)
https://shodoshima.or.jp/what/
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
小豆島のある香川県にはもうひとつの有名な麺、讃岐うどんがあります。
素麺とうどんはどちらも小麦粉でつくる麺なので、違うのは太さだけと思っている方がおられるかもしれません。
実際は製法が大きく異なるため、それに伴って使う原料や食感なども変わってきます。
具体的にどんな違いがあるか、ご紹介します。
(讃岐うどんにも手延べ製法でつくられたものがありますが、ここでは手打ちうどんと手延べ素麺を比較してご紹介します。)
・油を使うか使わないか
まずは原料について。小麦粉・塩・水は共通ですが、素麺はそれに加えて食用油が必要です。
小豆島手延べ素麺ではごま油を使用しています。
油がえしという製造工程で、麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングします。
手打ちうどんでは油は必要ありません。
・生地をのばすか切るか
手延べ素麺は、練り合わせた生地に油を塗ってよりをかけ、のばしては重ねて…を繰り返しながら細長くしていきます。
この工程により、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、重なった地層のように組織されます。
これをさらによりをかけながら細くのばすことで、断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれるのです。
時間が経ってものびにくいのも特徴のひとつです。
同じ素麺でも手延べではなく、機械で生地を薄くのばし、細く切って乾燥させる「機械製法」で作られた素麺は、断面が四角く、大量生産に向き比較的安価でできますが、手延べ麺のようなツルツル感はありません。
手打ちうどんの場合は、小麦粉・水・塩を混ぜた生地をこねては熟成し…を繰り返して生地を鍛えます。
それを麺棒で薄くのばして、包丁で切ります。原料から麺に仕上がるまでの時間は、手延べ製麺よりはるかに短いです。
グルテンの組織を包丁で断ち切るため、麺の断面は四角く、しこしこした食感が生まれます。
・太さの違い
素麺とうどんの乾めんについては、日本農林規格(JAS)により、直径1.3ミリメートル未満のものが素麺で、1.7ミリメートル以上がうどん、と太さの規格が定められています。
石井製麺所では、冬季限定で「手延べ半生うどん」を販売しております。
小豆島手延べ素麺の製法で仕上げた、角のないツルツル、モチモチした食感が好評いただいております。
また賞味期限の長い「手延べ乾うどん」は通年販売。
素麺と食べ比べていただける「手延べ太さくらべセット」もご用意しております。
太さによる味わいの違いを、ぜひ実感してみてください。
三代目:よく勘違い?されるのが、讃岐うどんと小豆島手延べ素麺を同じもの?に思われることです。
うどんがあるから素麺がある(うどんを細くして素麺を作っている)と思われる方もいらっしゃいますし、実際にそうだと思っていたというお話をよくお聞きします。
ですが、太さは置いておいて、製法はかなり異なる物です。
どちらが簡単と言うことではないのですが、素麺の場合、細く伸ばす分だけどうしても時間がかかる物だと思います。
また、讃岐うどんは“打ちたて”を味わうのが一番ですが、素麺は完成後も(保存状況はしっかりと管理する必要はありますが)、さらに寝かせることで“古物(ひねもの)”と言われる希少な高級素麺になります。
同じような地域で似て非なる食品が発展するのは、離島である地理的な特徴(ガラパゴス的)なのかも知れませんね。
<参考サイト>
・手打ちと手延べの違いまとめ|麺の原料や製法に食感の秘密があった!
https://mlb-nff-nba.com/%E6%89%8B%E6%89%93%E3%81%A1%E3%81%A8%E6%89%8B%E5%BB%B6%E3%81%B9%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%EF%BD%9C%E3%82%88%E3%82%8A%E6%89%8B%E9%96%93%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/
・うどんとそうめんの違い
https://www.flour.co.jp/news/article/070/
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
庄川の扇央部から少し下がったところにある、砺波市大門(おおかど)地区で伝統的につくり続けられている手延べ素麺。
「丸まげ素麺」とも言われるユニークな形状が特徴です。
古風な和紙の包み紙ひとつひとつには、製造者の氏名が記されています。
初冬から晩春にかけ、清流庄川の水を使ってつくられる素麺は、鉢伏山から吹きおろす寒風で乾燥させることで、よくしまったコシのあるなめらかな麺に仕上がります。
細くて長い麺が完全に乾かないうちに丸めて仮包装し、さらに10日間かけて本乾燥する、手間ひまかけた素麺です。
天気が変わりやすいこの地で、外干し作業中に雪が降ってきてもすぐ屋内に運べるよう、麺を丸めるようになったといわれています。
ゆでる時には、丸まげ状の麺を2つに割らないと、とても長い素麺になってしまうとのこと。
丸い形状が鍋にすっぽりとおさまるのでゆでやすいそうです。
大門素麺の起源は江戸時代後期にさかのぼります。
大門村の売薬行商である田守三石衛門が加賀藩の御用素麺を持ち帰ったことから、中島次兵衛という村人が加賀に行ってその製法を習得したそうです。
そして村の有志で農閑期の副業として素麺づくりを行うようになったのが始まりといわれています。
最盛期の昭和初期には60数軒の農家で取り組んでいたという記録があるそうですが、現在では12軒前後の農家が素麺づくりに従事しているとのことです。
<参考サイト>
・砺波市じまんの特産品 大門素麺
http://www.tapc.jp/tokusan/tokusan_somen.html
・古来より伝わる手法をそのままに江戸時代から作り続けられている丸まげ素麺
https://www.corezo-mall-tokusyu.com/ookadosoumen
・JAとなみ野 大門素麺
https://www.ja-tonamino.jp/tokusan/ookado?pcview=true
・大門素麺
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%96%80%E7%B4%A0%E9%BA%BA
・大門素麺について
https://kakizato.jp/noodles/
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
昨年、大変ご好評をいただいた「手延べレモン素麺」が5月1日から販売を再開いたします!
2022年5月の発売から夏季限定品として発売し、8月末日までに約4000袋も販売させていただきました。
本当にありがとうございます。
その人気の「手延べレモン素麺」が帰ってきます。
当社独自製法により、小麦と一緒に瀬戸内産レモン果皮を練り上げていますので、麺を口に運ぶたび、ふわっとレモンの香りが拡がります。
食欲の落ちる暑い日でも、食欲をかき立てる優しいレモンの香り。
暑い夏に、ぜひおすすめしたい素麺です。
もちろん、香料・着色料・保存料は一切使用していませんので安心してお召し上がりください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.11
各地の特産品や健康への想いを練り込んだ素麺について
素麺は、小麦粉・水・塩といったシンプルな食材で作られています。
しかしながら、長年にわたる素麺の製造の歴史において、産地ごとの特性アピールの必要性の高まりや、製麺所独自の開発などにより、さまざまな素麺が作られるようになってきたのではないでしょうか。
スープや具材の添付、特徴的なパッケージなどで差別化が図られているものもありますが、今回は製造する過程で別の食材を生地に練り込むことにより、独自の色あいや味わいを生み出しているものを調べてみました。
食材を加えることで見た目の変化だけでなく、その食材が持つ風味や健康効果を素麺にプラスすることができます。
思い通りの商品を完成させるまでには、配合量や製法などさまざまな試行錯誤が必要ですが、全国各地でバラエティ豊かな練り込み素麺が数多く生み出されています。
素麺を使ったさまざまなメニューも魅力的ですが、素麺自体の特色を楽しんでいただくきっかけになればと思います。
今回は、いろいろな食材を練り込んだ素麺について調べた結果をご紹介します。
※以下にご紹介する素麺は、2023年4月10日現在の当社調べになります。ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。
三代目:インターネットで調べただけですので、産地に行けばもっと色々な素麺があると思いますが、それでも本当にたくさんの素麺が見つかりました。実際に石井製麺所でも、さまざまな素材を加えて製麺していますが、思った通りの色が出なかったり、素麺の細さにまで伸ばせなかったりとひとつの麺を作るのも本当に大変です。
様々な産地の製麺所が独自性を出すために多種多様な素麺を作られていることを知ると、「負けていられない!」と“製麺者魂(?)”に火が付きます。
年々、色々な原料メーカーや販売店様から新麺開発のご相談もいただきます。
今後もノウハウをしっかりと蓄積しながら、美味しい素麺を作り続けていきたいものです。
【目次】
① 各地の特産品や想いを練り込んだ魅力的で独特な素麺たち
② 《産地紹介》岩手県・卵麺(らんめん)
③ 石井製麺所の新しい素麺への想い・これからの素麺作り
④ 《美味しい素麺》手延べ 小豆島オリーブオイル素麺 編
① 各地の特産品や想いを練り込んだ魅力的で独特な素麺たち
国内のさまざまな素麺の産地や製麺所では、多種多様な食材を練り込んだ素麺(麺)が開発されているようです。
インターネットでざっと調べただけでも、60種類以上が確認できました。
中には、味の想像がつかないようなものも。
大まかに分類してご紹介します。
まずは、海産物を使った素麺から。日本は海に囲まれているので、色々なものができそうですね。
<海藻>
素麺につきものの海苔や、だしに欠かせない昆布などの海藻は、素麺と相性が良いようです。
粉末にして練り込むことで、磯の風味が加わったり、独特の粘りが弾力を生んでのど越しが良くなったりといった相乗効果が得られます。
佐賀県有明海の海苔や、岩手県三陸産の昆布やメカブ、徳島県鳴門のワカメ、宮城県のアカモク(新潟県ではナガモと呼ばれているそうです)、新潟県のフノリなどを使った素麺が作られています。
<魚介類>
魚介類を練り込んだ素麺は、麺自体からだしが出るので、より旨みが増すようです。
熊本県甲佐町で育てたウナギの白焼きを練り込んだもの。
タイのエキスを入れた縁起の良い素麺。
ウニを練り込んだ風味豊かなもの。
オキアミの一種であるイサダを使ったピンク色の素麺や、イカスミを入れた真っ黒な素麺もあります。
※写真はphotoAC「小豆島エンジェルロード(道が出現する前)」より
小麦以外のものを使用した麺や穀物・豆類・芋などを練り込んだ珍しい素麺たち。
<穀類>
山形県のブランド米「はえぬき」「どまんなか」、それぞれの米粉を使用した素麺もあります。
岩手県一関市では古代米の「黒米(紫黒米)」を、山形県西川町では発芽胚芽米を練り込んだ素麺も。
岩手県軽米町で作られる稗(ひえ)を使った素麺は、胡桃に似た甘味とシコシコした食感が特徴だそうです。
長崎県には、雑穀16種類(小豆・もちきび・もち麦・もち玄米・ハト麦・もち赤米・黒豆・丸麦・稗・青大豆・発芽玄米・もち黒米・とうもろこし・もちあわ・胚芽押麦・黄大豆)を練り込んだ素麺が。
ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な、体に良い素麺とのことです。
<ごま、芋、豆類>
石井製麺所でも販売している黒ごまの粉末を練り込んだ素麺は、兵庫県播州や長崎県島原といった素麺の産地でも作られていますが、熊本県に本社のあるごま食品製造販売会社・オニザキさんの「黒胡麻そうめん」は、なんとごまの粒をそのまま生地に練り込んでいるそうです。
ごまの風味と食感がしっかり味わえる素麺ですね。
新潟県では五泉産のえごまの葉を練り込んだ素麺があります。
九州産の紫芋や、山口県柳井でとれた自然薯を入れたものも。
京都府丹波市や岡山県美作市では、それぞれの地域で生産した黒豆を使った素麺を作っています。
食材として練り込みやすいのは野菜や薬草など。キレイな色の麺に仕上げることもできます。
<野菜>
全国各地で、それぞれの地域の特産品である野菜を練り込んだ素麺が開発されているようです。
なじみ深いものでは、ニンジン、カボチャ、ホウレン草、オクラ、トマト、タマネギ、ゴボウ、レンコン、シソ、小松菜など。
他にも、岐阜県大垣市では地域で苗から育てた明日葉が、石川県金沢市では能登野菜の中島菜が、それぞれ素麺に使われています。
<果物>
石井製麺所ではオリーブオイルを練り込み、表面にも塗って仕上げたオリーブオイル素麺がありますが、同じく小豆島でオリーブの果実を練り込んだ素麺を作っておられる生産者さんもいます(ちなみにオリーブは野菜ではなく果物に分類されるようです)。
梅や、カボス・伊予柑・ユズ・ミカンなどの柑橘類は、その酸味が素麺と相性ばっちりですね。
これらの果物の産地で、練り込み素麺が作られているようです。
驚いたのは、甘い果物を練り込んだ素麺の種類の多さです。
栃木県のイチゴ「とちおとめ」や山形県のサクランボ、千葉県市川の梨、大分県清川の桃なども、その果汁を使用した素麺が販売されています。
他にブルーベリー、メロン、ブドウ、ネーブルなどの素麺もあるようです。
小豆島でもスモモの素麺があります。
ユニークなのは福岡県香春町の柿の皮を使った素麺。特産品である干し柿の製造過程でできる渋柿の皮を練り込んでいるそうです。
味はほんのり甘みがあり、モチモチとした食感とのこと。
食材を無駄にせず有効活用する、素敵な取り組みですね。
<葉>
植物の葉にも、食物繊維が豊富なものや健康への効果が期待できるとして食用されるものがいろいろあります。
素麺の産地である徳島県半田では、稲の若葉。山形県月山では、桜の葉。千葉県市川では、国産の赤松の葉を粉にして練り込んだ素麺があります。
徳島県の特産品である阿波藍の産地・上勝町では、手摘みした藍の葉を天日乾燥して粉にし、素麺に練り込んでいます。
<薬味>
素麺にピッタリの薬味が、あらかじめ練り込まれた素麺もあります。
奈良県三輪市、栃木県栃木市、千葉県市川市では、ショウガ。徳島県上勝町ではワサビが、粉末にして素麺に練り込まれています。
熊本県には、ニンニクを練り込んだ素麺もあるそうです。
<その他植物>
他にも、その地域ならではの植物を使った素麺が各地で販売されているようです。
素麺発祥の地といわれる奈良県三輪では、これまた特産品である吉野葛を加えた素麺が。
葛特有のつるみと弾力が味わえるそうです。
熊本県八代市は、畳の原料として知られるい草の産地。い草の粉末を入れた素麺が、学校の給食などにも採用されているそうです。
素麺の生産量第2位の長崎県島原では、昔から薬草を栽培していたそうで、4種類の島原薬草(オオバコ・ウイキョウ・ナズナ・タンポポ)を練り込んだ素麺があります。
輸出品としても人気のある、日本ならではの特産品を練り込んだ素麺たち。
<お茶、酒>
緑茶の粉末や抹茶を練り込んだ素麺は、長崎県島原市、奈良県三輪市、静岡県菊川市など、素麺やお茶の名産地で作られているようです。
岩手県北上市には、桑の葉の茶粉末を使った素麺があります。
兵庫県播州は、素麺とともに日本酒の産地としても有名。清酒を加えて作った素麺は、旨みが増し、のどごしがぐっと滑らかになるそうです。
<番外編>
【お!いしい けんぶんろく】Vol.6「冬が手延べ素麺づくりに最適な理由」でご紹介した、愛媛県の五色(ごしき)素麺。
もち麦・蜜柑・梅・抹茶などを練り込んだ色とりどりの素麺が特産品となっています。
三代目:こうしてみると本当に多種多様な素麺があることに驚かされます。
実際に試してみて断念したもの、まだ挑戦していないものなどもあるので参考にできれば。
特に難しいのが“伸ばし”に影響を受ける糖分や酸を含んだ食材を利用するときです。
カリウムが多いものなども影響を受けるようです。
産地の方々と交流しながら、自分たちの特色を出せる素麺開発に取り組めればよいなと思います。
<参考サイト>
・肥後そう川×甲佐養鰻場コラボ「くまもと うなぎ麺」
https://www.47club.jp/45M-000092mvx/goods/detail/10168401/
・軽米町産業開発の公式ショッピングサイト 稗そうめん
http://www.karumaisan.jp/shop/products/detail.php?product_id=41
・ごまのオニザキ 黒胡麻そうめん
https://www.onizaki.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=24&category_id=14
・上石津の特産品 明日葉そうめん
https://ogaki-tokusanhin.jp/product/product-52/
・【のと野菜使用】中島菜手延そうめん
https://www.umai-mon.com/user/product/24470
・手延べオリーブそうめん
https://www.saegusaseimen.com/item/OSS-1/
・福岡県香春町の特産品【柿皮そうめん】ドン‼
https://kawarakanko.thebase.in/items/30030013
・阿波藍そうめん
https://gin-sato.jp/SHOP/4580280300473.html
・【イナダ有限会社】栄養が凄いと話題の”食べるイ草”を専門店で堪能してきた
https://8246renraku.net/archives/inada-igusa.html
・島原手延べ薬草麺のスープカレーそうめん
https://www.yamaichi-shop.jp/SHOP/NYK-02.html
・日本盛 手延酒そうめん
https://shop.nihonsakari.co.jp/shop/g/g05477-0-0/
② 《産地紹介》岩手県・卵麺(らんめん)
岩手県では、盛岡冷麺・じゃじゃ麺・わんこそばなどたくさんの種類の麺が製造販売されています。
それらに比べて全国的な知名度は高くないようですが、岩手県の名産品のひとつとして地域に根付いているのが「卵麺」で、「鶏卵素麺」ともいわれます。
県南部の奥州市江刺区周辺でよく食されているそうです。
小麦粉と塩に、新鮮な卵をふんだんに使って練り上げる素麺は、黄色でほんのり卵の風味が感じられ、水分をあまり使わないためシャキッとした歯ごたえがあり、ゆでのびしにくいのが特徴とのこと。
今から約300年前、松屋十蔵というキリシタン信者が遠く長崎県から岩手県へ逃れてきました。
そしてオランダ人から伝授されたという鶏卵を使った麺を「蘭麺」として売り出したのが始まりと言われています。
卵と小麦粉を合わせるのは、カステラの製法から生まれたアイデアのようです。
明治時代になり、岩手を訪れた板垣退助がこの麺を大変気に入って「蘭麺」や「鶏卵素麺」より短く分かりやすい「卵麺」という名を提案した、というエピソードが伝えられています。
※写真はAdobe Stock「岩手県奥州市 春と明治記念館」より
<参考サイト>
・郷土料理|ほんのり香る卵と歯ごたえがおいしい 卵めん(岩手県)
https://www.shizensyokuhin.jp/archives/articles/753
・江刺岩谷堂 吉田製麺「卵めん」
https://www.umai-mon.com/user/collection/929
・卵めんの吉田製麺
https://ranmen.co.jp/item-detail/81000
③ 石井製麺所の新しい素麺への想い・これからの素麺作り
素麺は夏の食べ物というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、冷やしても温かくしても美味しく、一年を通して食べていただける食材です。
より多くの機会に、いろんな楽しみ方で食べていただけるよう、石井製麺所では厳選された食材を練り込んだ素麺の商品開発に積極的に取り組んでいます。
『食べて美味しいだけではなく、体にもうれしい、皆さんに喜んでいただける素麺を』
その想いで、健康に良い食材や、小豆島の特産品を練り込んだ素麺を開発しています。
こだわりの素麺をご紹介します。
<しょうどしま長命草素麺>
「1株食べると、1日長生きする」と言われるほど高い栄養価を持つとされる、小豆島の新しい健康食材「長命草」100%の粉末を練り込んでいます。
翡翠色で抹茶風味の中太麺で、温かいおだしともよく合います。
<楽々膳・黒>
「黒」の食材にこだわった健康麺シリーズ。
「薬膳」では黒い食べ物は冬に食べるとよいと言われているそうです。
小豆島産ひじき、香川県産きくらげ、黒ごまをそれぞれ練り込んだ素麺です。
<小豆島オリーブオイル素麺>
健康的なオイルとして注目される、貴重な小豆島産のオリーブオイルを生地に練り込み、表面にも塗って仕上げています。
<レモン素麺>
瀬戸内産レモン果皮を使用。レモンの香りがふわっと広がり食欲をそそります。
<山芋素麺>
山芋パウダーを練り込み、もちもちツルンとした食感が特徴。
<蕎麦風味>
良質なそば粉と小麦粉、山芋パウダーを絶妙なブレンドで練り込み、オリーブオイルを表面に塗って仕上げています。
※写真は石井製麺所の手延べ麺 蕎麦風味の掛場のいちシーン
<参考サイト>
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
④ 《美味しい素麺》手延べ 小豆島オリーブオイル素麺 編
皆さんは「小豆島」といえば、何を連想されるでしょうか?
最近では新聞広告やテレビCMなどで多く見かけるオリーブ(オイル)だったりしませんでしょうか?
小豆島でのオリーブ栽培の始まりは約110年前に遡ります。
それから何度も栄枯盛衰を繰り返し、現在では小豆島の主要な特産品になっています。
しかしながら、小豆島内のオリーブ生産量は気候の影響や、農家さんの高齢化などもあり生産量は大きくなく、収穫も大変なご苦労があるとお聞きします。
そんな貴重な小豆島産のオリーブオイルを使用したちょっぴり贅沢な素麺です。
小豆島産のオリーブオイルを生地に練り込み、さらに表面にも塗って 仕上げた、ますます小豆島を感じていただける一品です。
健康的なオイルとして注目されるオリーブオイルは素麺との相性も良いので、よりなめらかで見た目にも美しい素麺ができます。
さっぱりとしてツルツルとした食感が楽しめる素麺です。
小豆島では5月頃に小さくて白いオリーブの花が見頃となりますので、観光にお越しの際はぜひご覧になってみてください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ小豆島オリーブオイル素麺》 https://141seimen.thebase.in/items/12170333
三代目:次回のブログは4/23ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.10
麺類の美味しさを際立たせる薬味や具材について
素麺やうどんなどの麺類は、他の食材と合わせることで美味しさがより際立ったり、栄養バランスがぐんと良くなったりします。
香りや彩りを添える薬味や、ボリュームを増して新たな味わいを生み出す具材は、まさに多種多様。
麺の種類や地域によっても好まれるものが異なり、バラエティに富んでいます。
今回は、麺類によく合う薬味や具材について、その働きや地域による違いなどをご紹介します。
三代目:私がお素麺を食べるときは割とシンプルなつもりですが、地域やご家庭によっても食べ方に違いがあると思います。
特に具材などは、嗜好にもよるので多種多様な感じではないでしょうか。
また、麺類全般に視野を拡げると、うどんと素麺のように太さが違うだけの麺類でも、全くといって良いほど食べ方や盛り付け方も変わってきます。
今回は、ブログの中で他産地について書き進める内に、具材について気になったので調べてみました。
皆さんのご家庭ではどのように素麺を食べられるのでしょうか?
今回のブログで食べ方のバリエーションが拡がれば幸いです。
【目次】
① 薬味の歴史とその役割
② いろいろな薬味とその働き
③ 麺の種類別、人気の薬味や具材
④ 各地でいろんな具材と食べられている素麺
⑤ 健康に役立つ具材や食べ方
⑥ 《産地紹介》宮城県・白石温麺(うーめん)
⑦ 《美味しい素麺》手延べしょうどしま長命草素麺 編
① 薬味の歴史とその役割
薬味は、素麺やうどんなどの麺料理に欠かせない名脇役。
漢方用語で、主となる薬に加える補助の薬のことを「加薬味」と呼んだのが語源と考えられています。
中国では昔から、自然界に存在するすべての動植物は健康維持や増進にとって重要な食べ物であるという「食医同源」「食薬同源」の思想がありました。
ここから生まれた「中医学」が発展して「薬膳」となり、日本でも「医食同源」として、現代でも栄養学や健康のための食事指導などにおいて参考にされているそうです。
日本では中世より薬味の概念が発展し始め、江戸時代になってから広く利用されるようになったそうです。
大根・ネギ・シソ・カラシ・ショウガ・ワサビ・山椒・ユズなどが、料理に香りや辛みを加えるために用いられていたようです。
薬味の作用としては、食欲増進・芳香を添える・風味を添える・季節やいろどりを出す・異臭をやわらげる・毒消しや防腐効果・消化を助ける、といった働きがあると言われています。
三代目:私は、彩りや味の変化のつもりで薬味を使っていることが大半でしたが、語源から考えても“薬”と切っても切れない考え方だったんですね。
「医食同源」と言われるように、食は体の健康を支える大きな要因なのですから、“薬味”という考え方はとても重要なんだと考えさせられました。
ちょこんと添えるネギや生姜にも意味があって、それは先人からの教えでもあると思います。
麺づくりの麺を考えるだけでなく、具材も含めたお客様の食べ方もイメージして、考えることが大切なんだと改めて思いました。
<参考サイト>
・“薬味”は“薬”?
https://sozairyoku.jp/%E2%80%9C%E8%96%AC%E5%91%B3%E2%80%9D%E3%81%AF%E2%80%9C%E8%96%AC%E2%80%9D
・薬味の歴史と夏の薬味
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/joho/1307_joho01.html
・日本における香辛料の発展と歴史
https://voxspice.jp/spicestory/1108
・そうめんに薬味が必要な理由とは?薬味の役割をご紹介
https://delishkitchen.tv/articles/483
・そばのあいうえお「や 薬味(やくみ)」
https://www.nichimen.or.jp/know/aiueo/ya/
② いろいろな薬味とその働き
麺料理などによく用いられる薬味について、期待される働きをご紹介します。
<ネギ>
アリシンという物質が含まれ、胃腸の働きを高める、血行を良くする、新陳代謝を活発にする、疲労物質である乳酸を分解する、などの作用があるとされます。
ビタミンなども多く含まれています。
<ショウガ>
辛み成分ショウガオールに強い殺菌作用があり、生で食べると解毒作用も。
香り成分シオネールには食欲増進作用が期待されます。
また、胃液や唾液の分泌を促して消化を良くしたり、加熱すると新陳代謝を促して、体を温め冷えを改善すると考えられています。
<ミョウガ>
香り成分アルファピネンに、食欲増進や消化促進、抗菌作用があるとされます。
血行を良くして発汗を促したり、ホルモンバランスを整えたりする働きもあると言われています。
<ワサビ>
アリルイソチオシアネートという辛み成分に、抗菌・抗虫作用や、食欲増進、血栓予防、免疫力向上などの働きがあるとされます。
<シソ>
香り成分ぺリルアルデヒドやシアニジンに殺菌・防腐作用があり、食中毒の予防が期待できます。
胃液の分泌を促して食欲を増進させたり、神経をしずめイライラを抑えたりする働きもあるとされています。
<三つ葉>
クリプトテーネンという香り成分に、食欲を増進させ消化を促したり、気持ちをリラックスさせイライラを解消させたりする働きがあるとされます。
<ゴマ>
栄養価が高く、血中コレステロールを下げる働きのある不飽和脂肪酸や抗酸化物質も豊富に含みます。
そのままよりすりゴマにしたほうが栄養成分が吸収されやすいそうです。
<大根おろし>
ビタミンCやジアスターゼという消化酵素が多く含まれており、消化を助け、胃腸の働きを整える働きが期待されます。
辛み成分には、殺菌作用や臭みを消す働きもあると言われます。
<梅干し>
強い抗菌作用があり、食あたり予防に使われてきました。
クエン酸が豊富に含まれ、疲労回復にも期待されます。
血液をサラサラにしたり胃腸や肝臓の働きを高めるとも言われています。
<ユズ>
ビタミンCとクエン酸が豊富に含まれ、疲労回復に役立つとされます。
食欲増進や胃腸の働きを整える作用も期待できます。
<海苔>
食物繊維やビタミンB1、B2を多く含みます。
特にビタミンB1、B2は糖質を効率良くエネルギーに変えてくれるので、食欲が無いときや疲れやすいときに食べると疲労回復にも効果的。
三代目:麺料理ではないのですが、以前、台湾旅行で「酸菜白肉鍋」というお鍋料理を食べた時の話です。
たくさんの調味料や薬味、付け合わせが並べられていて、それを自分好みに“調合”してお鍋をいただくのですが、そのときの食べ方は同席した人それぞれでした。
食べるメニューは同じなのですが薬味で個性が出るというか、変化を付けることでそれぞれの味になるのは面白いなと感じたことがあります。
今思えば、その時の体調で食べたい味を無意識に調整していたのかも知れません。
具材を人それぞれに合わせて変えるというのは大変ですが、薬味や付け合わせなら対応できそうですよね。
素麺はそういった意味で、たくさんの方に受け入れられやすい土壌があるのかなと感じます。
<参考サイト>
・飲食店なら知っておきたい薬味の役割!効果・効能も紹介!
https://www.inshokuten.com/kitchen/magazine/47
・薬味の種類|それぞれの効能や特徴
https://www.kurashiru.com/articles/2166dab3-e54d-4d62-8b53-2a2774a5b98a
・薬味の効能と健康パワーを知っていますか?
https://story.ajinomoto.co.jp/health/004.html
・実はすごい海苔の健康効果!日本人だからこそ享受できる海苔のパワー
https://marche.onward.co.jp/shop/pages/appetizers121.aspx
③ 麺の種類別、人気の薬味や具材
素麺やうどん、ラーメンなど、麺の種類別に、どんな薬味や具材が好んで合わせられているか調べてみました。
同じ小麦粉から作られる麺でも、それぞれの個性が表れる興味深い結果となりました。
<素麺>
「あなたがそうめんに必ず入れる薬味はどれ?」という2021年のインターネット調査によると、トップ5は、ネギ、ショウガ、ミョウガ、ワサビ、シソという結果でした。
以下は薬味というより具材に入りそうなものですが、錦糸卵、キュウリ、納豆、シーチキン、オクラ、メカブ、トマト、明太子、などの回答もありました。
素麺に入れる具材の人気ランキングも探しましたが、見当たりませんでした。
<うどん>
少し古いですが、2013年のインターネット調査「好きなうどんの具材ランキング」では、トップ5は天ぷら・かき揚げ、油揚げ、卵、わかめ、肉となっていました。
以下、山菜、とろろ、大根おろし、とろろ昆布、もち、と続きます。
<ラーメン>
「ラーメンの具材で好きなものを選んでください(複数回答可)」という2017年のインターネット調査によると、トップ5はチャーシュー、煮玉子、ネギ、メンマ、もやし、となっていました。以下、炒め野菜、海苔、ワンタン、キクラゲ、肉味噌とのことです。
<パスタ>
具材というとバリエーションが豊富すぎるのでしょうか、人気の具材ランキングは見つけられませんでしたが、「一番好きなパスタの味」という2022年のインターネット調査がありました。
トップ5はたらこ・明太子、カルボナーラ、ボロネーゼ、ポモドーロ・トマトソース、ペペロンチーノとなっています。
以下、ジェノベーゼ、ナポリタン、ミートソース、和風パスタ、アラビアータ、と続きます。
三代目:ラーメンと素麺は形状だけでなく製法や原料も異なりますが、素麺とうどんは全く同じ原料で太さが違うだけ。
薬味はほとんど同じでも、うどんは盛り付けの具材を色々と選ぶことで“食事”として成立しているような気がします。
最近では、素麺の専門店が増えていると言われますが、そちらでは“食事”としての素麺を味わえるようなメニューやレシピの工夫があるようです。
石井製麺所では白い素麺だけでなく毎日食べていただけるような、食べ続けるからには体に負担が少なく栄養価の良いものになればと…例えば『長命草素麺』のように健康面へ配慮した素麺もご用意しております。
そういう意味では、毎日の食事にお楽しみいただけるような具材や食べ方を合わせたご提案も考えていきたいと思います。
<参考サイト>
・「そうめんに必ず入れる薬味」ランキングTOP34!第1位は「ネギ」に決定!
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/364344/
・好きなうどんの具材ランキング 1位は「天ぷら、かき揚げ」で61%
https://news.nifty.com/article/item/neta/12225-130515002272/
・ラーメンの具材、トップに君臨するのは!?
https://www.kinrei.com/fan/news/kokumen/201801/15095535.php
・好きなパスタの味ランキングTOP15!千票以上から選ばれた人気の種類は?
https://macaro-ni.jp/108527
④ 各地でいろんな具材と食べられている素麺
素麺の具材について調べてみると、地域ごとにさまざまな具材や味付けで食べられていることが分かりました。
ぜひ、素麺アレンジの参考にしてみてください。
<具材いろいろ>
・冷やし中華風
関西では、キュウリ、錦糸卵、ハム、カニカマなどを素麺のうえにトッピングして食べる習慣があります。
・ナスそうめん
石川県金沢市では、ナスと素麺を一緒にだしで煮て、醤油や味噌で味付けする郷土料理があります。
また香川県では、ナスを油で炒めて砂糖と醬油で味付けしたものに、ゆでた素麺を加えます。
どちらも家庭料理として一般的に食べられているようです。
・サバそうめん
甘辛いだしで煮たサバの切り身を、その煮汁にからませた素麺に乗せる、滋賀県長浜市の郷土料理。
ご当地グルメとして飲食店でも提供されています。
かつて日本海から京都を結ぶ「鯖街道」と呼ばれるルートがあり、サバが入手しやすかったそうです。
・鯛そうめん
タイをのせた素麺は、お祝いの料理として供される地域が多く見られ、「鯛麺」とも呼ばれています。
香川県では、ゆでた素麺を大皿に盛り、その上にタイの姿煮をのせます。
広島県や愛媛県の瀬戸内海沿岸地域ではさらに、木の芽やキュウリ、錦糸卵、シイタケの煮たものなどを添えます。
愛媛県松山市では五色素麺を用いることが多いそうです。
熊本県では、上益城地域でタイの姿煮をのせる形のほか、天草地域ではタイのアラを炊いて、煮汁を素麺にかけるそうです。
徳島県牟岐町には、れんこ鯛を甘辛く煮付け、その煮汁で素麺を食す「島そうめん」と呼ばれる料理があります。
素麺は錦糸卵やかまぼこ、ネギなどで飾り付け。れんこ鯛とともにお祝いごとの席で供されます。
<味付けにひと工夫>
・酢味噌そうめん
静岡県や愛知県の一部では、めんつゆではなく酢味噌を素麺にかける食べ方があるそうです。
赤味噌に、酢、みりん、砂糖を混ぜた酢味噌のさっぱりとした酸味が、食欲の落ちやすい夏にぴったりです。
・白エビ素干だしのそうめん
富山県の名産品である白エビは夏が旬ですが、素干しにすることで長期保存が可能になります。
白エビの素干しでとった、旨みが凝縮されただしに、醤油や砂糖を加えてつゆをつくります。
<あたたかくして>
・にゅうめん
素麺発祥の地とされる奈良県や、三大産地のひとつである兵庫県播磨地方では、素麺は夏は冷やして、冬はあたたかいつゆに入れて「にゅうめん」として、と一年を通して食されています。
・ばち汁
兵庫県播磨地方や岡山県浅口地方には、手延べ素麺をつくる過程で出る麺の端の部分を使った汁ものがあります。三味線のばちに似た形状から「ばち」と呼ばれ、素麺よりコシが強く塩気が多いのが特徴。野菜をだしで煮てばちを入れ、醤油で味をととのえる「ばち汁」が、家庭や給食で食されています。
<炒めて>
・油ゾーメン
鹿児島県奄美地域の郷土料理で、豚肉と野菜、素麺を炒めたもの。
沖縄の「そうめんチャンプルー」に似ていますが、炒める時にだし汁を入れるためのど越しが良いのが特徴です。
手軽に作れるので家庭で食べられているほか、飲食店でも提供されています。
・ソーミンタシヤー
素麺と野菜やツナなどを、塩や醬油で炒めてシンプルに仕上げる、沖縄県の家庭料理。
ちなみによく知られている「チャンプルー」は、炒めた豆腐が入るものを指すそうです。
<参考サイト>
・そうめんの薬味や、つけつゆは関東と関西では違うものなの?
https://kenkoubaizou.com/k2k0000282-post/
・そうめんの地域別の食べ方まとめ!飽きずに美味しく食べる工夫も公開
https://shop.ninben.co.jp/blog/?p=3799
・地域別そうめんの食べ方ランキングTOP10!みんなが試したいアレンジは?
https://macaro-ni.jp/111998
・うちの郷土料理 種類検索 麺料理
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/type/noodles.html
⑤ 健康に役立つ具材や食べ方
いろんな具材と相性の良い素麺を、毎日の食生活でもっと上手に活用してみませんか?健康に役立つ具材や食べ方を、調べてみました。
<消化を促進する>
おなかの調子が良くないなど、胃に負担の少ない食事を心がけたいときに。素麺は短い時間で消化できる食材です。
100gあたりの消化時間は約2時間。同量の白米やうどん、そばは約2時間30分、パンは約3時間だそうです。
柔らかくて脂質や刺激の少ない素麺は、胃にやさしい食べ物といえます。
あたたかくして食べるとより良いようです。
合わせる具材としては、繊維のやわらかい茹で野菜、例えば、大根、タマネギ、キャベツなど。
また、豆腐や鶏ささみ、大根おろし、梅干しなどもおすすめです。
<糖質や脂質の吸収を穏やかにする>
ダイエット中など、糖質や脂質の取りすぎが気になる方に。
素麺は、うどんやパスタ、中華麺と比べると、1食あたり10gほど糖質量が少ないそうです。
合わせる具材としては、食物繊維が豊富なものがおすすめです。
具体的には、野菜、きのこ類、海藻類、豆類など。
食物繊維は、消化吸収を穏やかにして血糖値の上昇を抑えるため、糖質の吸収を抑える働きがあるそうです。
<塩分の排出を促す>
素麺はつくる過程で塩を使いますが、食べるときにゆでる、また水洗いすることにより、塩分の多くは抜けます(【お!いしい けんぶんろく】Vol.9「人体にも手延べ素麺にとっても欠かせない塩について」参照)。
塩分の取り過ぎが気になる方は、めんつゆの塩分量に注意が必要です。
出汁を強めに利かせたり、薬味を工夫したりと味に変化を持たせることで、体への負担を減らして美味しく召し上がっていただけます。
また、カリウムが豊富に含まれる食材を合わせてとるとよいでしょう。
具体的には、アボカド、ホウレンソウ、小松菜、枝豆、ワカメ、海苔など。長命草にも多く含まれます。
カリウムには塩分の排出を促す働きがあります。
三代目:もっとライフスタイルに合わせた素麺・麺の開発が必要だなと感じました。
<参考サイト>
・体調不良の時におすすめ!消化に良い食材「そうめん」
https://www.handamen.com/blog/somen_digestion/
・そうめんは消化に良い食べ物?消化時間の比較と消化を良くするおすすめレシピ
https://gourmet-note.jp/posts/19180
・【管理栄養士監修】糖質の吸収を抑える夏の麺類レシピ!
https://sixthsenselab.jp/puravida/articles/1808_01/
・そうめんは塩分が多い?すぐに使える塩分を摂りすぎない減塩レシピ
https://dime.jp/genre/1405923/
⑥ 《産地紹介》宮城県・白石温麺(うーめん)
宮城県白石市の特産品である「温麺(うーめん)」は素麺の一種ですが、油を使わないでつくるのが特徴です。
一般的な手延べ素麺は、麺と麺がくっついたり乾燥したりするのを防ぐため、油を塗っています。
白石温麺は油を使わず、長さも9cmと短いことから、消化が良くて食べやすいと言われています。
太さは素麺より0.3㎜ほど太めで、食べごたえがあります。
白石温麺の歴史は約400年前、江戸時代にさかのぼります。
白石の城下町にいた鈴木味右衛門という青年は、胃腸が弱く病弱な父親が元気になる食べ物を日々探し回っていたそうです。
ある日彼は、旅の僧侶から油を使わず麺を作る方法を教えられ、苦心の末つくった麺を温めて父に食べさせました。
その美味しさと食べやすさから食が進み、父親は回復したそうです。
この麺を献上され、誕生秘話を聞いた白石城の城主・片倉小十郎が、味右衛門の父への想いに感銘を受け、「人を思いやる温かい心を持つ麺」という意味を込めてこの麺を「温麺」と名付けたと言われています。
さっぱりと上品な味わいで、仙台藩主の伊達家から大名・公家への贈答にも用いられたそうです。
白石地方は、蔵王連峰から流れる白石川の清流や温和で乾燥した気候に恵まれ、小麦粉が豊富に採れることから、良質な温麺の産地となりました。
温麺は一年を通して食されており、醤油や味噌でつくった汁につけて食べるのが一般的だそうです。
その扱いやすさと食べやすさから、離乳食や高齢の方の食事にも重宝されているとのことです。
<参考サイト>
・白石うーめん(温麺) の優しいおいしさ|歴史と名店をご紹介
https://shiroishi.ne.jp/feature/1802
・白石温麺|歴史が育んだ伝統の味
https://shiroishi.ne.jp/feature/4256
・白石うーめん(温麺) の歴史
http://www.u-men.co.jp/shiroishi_u-men/
・うーめん(白石温麺)とは?そうめんとの違いや食べ方をご紹介
https://delishkitchen.tv/articles/1493
・Wikipedia「温麺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A9%E9%BA%BA
⑦ 《美味しい素麺》手延べしょうどしま長命草素麺 編
「素麺で始める 新しい健康習慣」をコンセプトに開発した健康麺です。
大切なお客様のために、からだに嬉しい素麺を作りたい。
そう考えていたときに出会ったのが「しょうどしま長命草」でした。
「1株食べると、1日長生きする」と言われるほど、高い栄養価と、強い生命力を持つ長命草。
小豆島の特産品である醤油を製造するときにできる醤油粕を肥料として、無農薬で栽培された「しょうどしま長命草」は、小豆島生まれの新しい健康野菜です。
石井製麺所では手延べ製法にこだわり、小豆島で初めて、「手延べ製法による長命草素麺」を商品化しました。
無添加・無着色にもこだわり、安心してお召し上がりいただける、ツルツル食感が自慢の一品です。
石井製麺所では、「しょうどしま長命草」栽培を応援しています。
石井製麺所の所有する畑の一部を「しょうどしま長命草」栽培に活用いただき、一緒に島の食について考えています。
大切な方への贈り物にピッタリなお素麺です。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べしょうどしま長命草素麺》 https://141seimen.thebase.in/items/29007893
三代目:次回のブログは4/10ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.9
人体にも手延べ素麺にとっても欠かせない『塩』について
素麺は、小麦粉を塩水で練り合わせて作ります。
調べると小麦粉を使った麺づくりに塩が用いられるようになった歴史は古く、平安時代中期の書物「延喜式」には、素麺のルーツとされる「索餅」の材料として塩の記述が見られます。
今回は、人体にも不可欠な塩の働きやその歴史、手延べ素麺における塩の役割などをご紹介します。
三代目:石井製麺所では、午前3時30分頃から練り作業を行っています。
天候や温度・湿度を観て、小麦粉と食塩水の最適な配合量を量り、30分~40分ほど丁寧に練り合わせます。
この工程をしっかりおこなわないと、この後のすべての工程が台無しになってしまいます。
ただ小麦粉に食塩水を加えるのではなく、上手く混ざるように食塩水を流し込む場所とタイミングを選んでいます。
こまめに手を加えながら、グルテンがしっかり形成された麺生地をつくるためにムラなく、無駄なく練り上げます。
【目次】
① 人体に不可欠な塩の働き
② 手延べ素麺の原料としての塩の役割
③ 素麺を食べても塩分取り過ぎにならない理由
④ 奥が深い塩の歴史《世界編》
⑤ 知っていそうで知らない?!塩の歴史《日本編》
⑥ 《産地紹介》三重県・大矢知(おおやち)素麺
⑦ 《美味しい素麺》小豆島便り〈冬〉(ギフトセット) 編
① 人体に不可欠な塩の働き
塩は、人間が生きていくうえで大切な働きをしています。
体内の塩分量は、大人で体重の0.3~0.4%、子供では約0.2%とされています。
例えば体重60kgの人の体内の塩分量は約200gということになります。
塩は体内でナトリウムイオンと塩化物イオンに分かれて存在しており、いろいろなシステムの働きを守り、維持する役割を果たしています。
<細胞を正常に保つ>
人間の体を構成する細胞は、細胞外液という液に囲まれています。
塩はイオンの状態で細胞外液に多く含まれ、細胞外液の量を維持しています。
このことにより、全身の細胞に酸素や栄養分が運ばれたり、二酸化炭素や老廃物が肺や腎臓に運ばれ排出されたりします。
また、細胞外液の濃度を調整し、バランスを一定に保つことで、細胞の働きを支えています。
<消化や吸収を助ける>
体内の塩化物イオンは胃酸の主成分となり、胃で食べ物を殺菌したり、消化を助けたりしています。
ナトリウムイオンは小腸で、アミノ酸やブドウ糖などの吸収を助けています。
<情報を脳や体に伝える>
神経細胞は、ものを触ったときなどの刺激を脳に伝える、脳から体を動かすように筋肉に命令を伝える、などの働きをしています。
神経細胞が刺激や命令を伝えるときに必要となるのがナトリウムイオンです。
以前は塩の取り過ぎが高血圧の原因と考えられていましたが、近年では、塩の摂取と血圧の上昇は必ずしも結びつかないことが明らかになってきているそうです。
三代目:私、実は3月の前半に体調を崩して入院しておりました。
術後経過も順調で、復帰して現在は元気にしております。
いわゆる病院食というと、「味気がない」といったイメージがあり、「手術後は重湯だった」というお話も聞いたことがありました。
もちろん、病気の内容や重さによって食事の内容は変わるのだと思いますが、意外にも手術翌朝の朝食から「ふりかけ」が付いていたり、栄養バランスが考えられた食事ながらも、ちゃんと塩気があるものが出されました。
今になって振り返ると、この塩気がとても美味しく、ありがたく感じられました。
「傷ついた体に染み渡る」といった感じでしょうか。なんとなくですが、回復しようとする体が塩気を求めていたように思います。
どうやら「塩気がある食事が出るようになると、不思議と食欲が湧いてきておかわりが欲しくなった」という患者さんもいらっしゃるようです。
食欲がわいてきたからではなく、塩気を取ると美味しく感じ、おかわりが欲しくなったみたいですね。
人間は塩味の刺激により、美味しいと感じる正常な味覚が保たれるんでしょうね。
大学生の時分にも、アーチェリー部で活動をしていたときは、熱中症や脱水症状を起こさないように、塩分(ミネラル分)補給はとても気をつけていました。
激しい発汗や下痢などで体内の塩分が足りなくなると、脱水症状、血圧低下、立ち眩み、倦怠感、精神不安定、眠気、脱力感など、さまざまな症状が現れるそうですから、闇雲に塩分を拒否するのでは無く、上手に向き合っていく必要がありますね。
<参考サイト>
・塩と健康の関係
https://www.nihonkaisui.co.jp/small_customer/learning_salt/health
・体内の塩
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/about/human/inside.html
・塩とからだの大事な関係
https://www.shiotokurashi.com/life
② 手延べ素麺の原料としての塩の役割
素麺やうどん、ひやむぎなどの麺は、小麦粉と水だけではなく塩を加えて作られます。
塩を入れる理由としては、科学的根拠のあるものがいくつかあります。先人達のアイデアや知恵は本当に素晴らしいものです。
この手延べ素麺作りの叡智を活かし、さらなる美味しい素麺作りを続けたいものです。
<グルテンを引き締める>
麺のコシの元となるグルテンは、小麦粉のたんぱく質が水と合わさることで形成されます。
生地をこねて引きのばすことにより、グルテンが何層にも重なった地層のように組織されます。
塩には、このグルテンを強く引き締める働きがあります。
夏は気温が高く、生地がだれやすくなるので塩を多くし、逆に冬は生地が硬くなるので塩を減らす、といったように、季節や天候などにより塩分濃度の微調整が必要です。
まさに、良い塩梅が美味しい素麺に不可欠なのです。
<酵素の活性を抑制する>
塩が小麦粉に含まれるたんぱく質分解酵素の働きを抑えることで、生地がじっくり熟成され、より弾力が増します。
<保存期間を長くする>
水分活性が小さくなるため雑菌が繁殖しにくくなり、保存性が向上します。
<乾燥を防ぐ>
塩には吸水性があり、水分を蓄えようとします。
熟成を繰り返しながら麺を細く延ばしていく手延べ製法において、塩は急激な乾燥によるひび割れを防ぎ、表面をなめらかに仕上げるのに役立ちます。
<ゆで時間を短縮する>
ゆでる時に、麺に含まれている塩がお湯の中に溶けだし、お湯が麺の中に入り込んで、でんぷんが糊化します。
塩を多く含んでいれば、それだけ早くゆで上がることになります。
<味を良くする>
ゆでることで塩分の多くは溶け出しますが、わずかに残った塩味が、麺の風味や旨みを引き立てます。
三代目:今、新麺開発を行っているのですが、塩の重要性を特に感じます。
麺の伸びをよくするのにも、止めるのも塩加減ひとつです。
入院中は、新麺開発を進めることができず、体がウズウズしていましたが、ここはグッと我慢の日々でした。
新麺開発のための理論を整理するために色々とまとめ直していましたが、やはり塩加減というのが肝心で、これから暖かくなるにつれ、また塩分量も変化させないといけません。
“麺は生き物”と感じることが多々ありますが、塩によってコントロールする技術や経験を積み、麺づくりと上手に付き合っていきたいものです。
そのためにも今回の『塩』というテーマは、今の時分にピッタリなのだと感じます。
新麺を試作で伸ばす様子。
今回は、想像以上に伸びてしまい、塩加減の難しさを痛感しました。
これはこれで美味しく食べましたが、皆さまにお届けするのはもう少し先になりそうです。
<参考サイト>
・うどんに塩を入れる理由
https://www.flour.co.jp/news/article/111/
・手延べそうめん、うどんの副原料
https://www.shimabara-soumen.com/article/14245881.html
・うどんと塩
https://www.nichimen.or.jp/know/zatsugaku/19/
③ 素麺を食べても塩分取り過ぎにならない理由
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、食塩摂取の目標量(食塩相当量として)は、成人1人1日当たり男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されています。
文部科学省の食品成分データベースによると、手延べ素麺(乾麺)の1人前100gに含まれる塩分の量は5.8gですが、ゆでるとお湯に溶けだすため、塩分量は0.3gにまで減少します。
さらに水洗いすることでも塩分が抜けます。
このように、素麺はけして塩分の多い食品ではありません。
三代目:塩分の取り過ぎが気になる方は、たっぷりのお湯でゆでてしっかり水洗いすることを心掛けてみてください。それだけでも随分変わります。
また、一番肝心なのは、食べる際にめんつゆの塩分量に気を付けられることだと思います。
出汁を強めに利かせたり、薬味を工夫したり味に変化を持たせることで美味しく、ぐっと体に負担が少なく召し上がっていただけます。
最近ではオリーブオイルを数滴垂らして召し上がっていただくこともおすすめしています。
特に私がおすすめしているのは、和風出汁に合うオリーブオイルです。
コクが出て、清々しい香りがして、つるんっと召し上がっていただけますよ。ぜひお試しください。
<参考サイト>
・厚生労働省 e-ヘルスネット「ナトリウム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html#:~:text=%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E6%91%82%E5%8F%96,%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・文部科学省 食品成分データベース
https://fooddb.mext.go.jp/search.html
・そうめんは塩分が多い?すぐに使える塩分を摂りすぎない減塩レシピ
https://dime.jp/genre/1405923/
・「そうめん」の塩分量はどれくらい?管理栄養士が教える減塩のコツ3つ
https://macaro-ni.jp/109133?page=2
④ 奥が深い塩の歴史《世界編》
地球の表面積の70%は海で、海水には塩が約3%の濃度で溶けています。
人類は大昔から、生活に欠かせない塩を手に入れるため、各地でそれぞれの環境に応じてさまざまな製塩を行ってきました。
現在、世界中で1年間に約1億8千万トンの塩が生産され、そのうちの約4分の1が海水から、残りは岩塩や塩湖などから採られているそうです。
古代文明の塩の歴史について、記録を記したものがあったので3つの時代についてご紹介します。
<古代中国>
山西省運城市の運城塩湖では、紀元前6000年には製塩所ができ、湖面に浮かぶ塩の結晶を採っていたとされています。
紀元前450年頃には、塩を煮詰めるために鉄鍋を使ったという記録が残っているそうです。塩づくりに鉄を使ったことが分かる最初の資料と考えられています。
唐の時代、塩の製造や販売は国が取りしきっており、王朝は財政状況に合わせて塩の値段を操作することで、万里の長城の建造費を捻出することができたと言われています。
<古代ローマ>
ローマ帝国では、塩は誰にでも与えられるべき、多くの人に行きわたらせたいものと考えられており、庶民の食卓にも塩が置かれていたそうです。
イタリアやローマから広がる領土には多くの製塩所がつくられ、その周辺に都市が築かれました。
塩を各地に運ぶためにつくられた「塩の道」が世界へと広がり、ローマ勢力はその勢力を拡大していったとされます。
給料を意味する「サラリー」、兵士を意味する「ソルジャー」という言葉は、ラテン語で塩を意味する「サル」が由来とされています。
<古代エジプト>
古代エジプトでは、ナイル川の先に広がるアフリカの砂漠の干上がった湖から塩を入手することが容易だったようです。
塩を調味料の材料にしたり、肉や魚、野菜を塩漬けにしたりしていたという記録が、パピルスや壁画で残っているとのことです。
葬儀のお供え物として、塩漬けの魚と食卓塩入れがあったという話もあります。
※写真はAdobe Stock「Pamukkale, natural pool with blue water, Turkey」より
<参考サイト>
・世界の塩・日本の塩
https://www.tabashio.jp/collection/salt/s4/index.html
・塩の歴史
https://www.shionavi.com/salt/history
⑤ 知っていそうで知らない?!塩の歴史《日本編》
日本で塩づくりが始まったのは、縄文時代の終わり頃と考えられているそうです。
狩猟生活を送っている時代は、海から取れる魚貝類には塩味がついており、動物の肉にも塩分が含まれているため、人体はそれほど塩分を必要としなかったようです。
稲作をはじめとした農耕生活に変わり、食生活が穀物主体のものになると、ナトリウム不足になりがちなため、塩分を摂取する必要が生じてきたと言われます。
日本は岩塩などの塩資源に恵まれておらず、多雨多湿のため天日だけで塩を作ることも難しく、海水を煮詰めて塩の結晶を取り出すしかなかったようで、それぞれの時代で知恵と工夫を凝らした製塩法が生み出されたようです。
四方を海に囲まれた日本は簡単に塩が採れると考えてしまいますが、岩塩などから塩が採れる国と比べ、人力で海水をくみ上げたり、海水を煮詰めたり、精製も必要で時間も手間も掛かることから、日本で塩は長い間、大変貴重なものだったということがうかがえます。
以下に、日本での古来からの塩の製法を調べてみました。
<縄文・弥生時代>
海水をそのまま煮詰める「直煮(じきに)製塩」。全国各地で、製塩用の土器が出土しているそうです。
煮詰める途中で土器が割れるなど、一筋縄ではいかなかったと想像されます。
<弥生時代>
ホンダワラなどの海藻を積み重ねた上から、海水をかけては乾かす作業を繰り返していたようです。
塩の結晶が付いた海藻を焼き、できた灰を釜に入れて海水を加え濃い塩水にし、その上澄みを煮詰めて塩をつくる「藻塩焼(もしおやき)製塩」を行っていたとされます。
海藻は乾燥しにくく燃えにくいので少しの塩しか採れなかったそうです。
<室町時代中期>
「揚浜式(あげはましき)塩田製塩」が行われるようになりました。
粘土板の上に砂を敷き詰め、水が染み込まないように固めた塩田に、人力で汲み上げた海水を繰り返しまいて天日乾燥させ、砂に塩分を付着させます。
砂が乾いたら海水で洗い流してかん水を採り、釜屋と呼ばれる小屋で煮詰めて製塩をおこなったようです。
<江戸時代>
潮の干満差を利用して塩田に海水を引き込み、毛細管現象によって砂を湿らせる「入浜式(いりはましき)塩田製塩」が行われ、海水を汲み上げる労力が要らなくなったそうです。
それ以外の作業は「揚浜式塩田」と同様でした。
瀬戸内海沿岸の10カ国(長門、周防、安芸、備前、備中、備後、播磨、伊予、讃岐、阿波(現在の兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県))を中心に大規模な「入浜式塩田」が築造され、「十州塩田」と呼ばれました。
「入浜式塩田」という方法は、塩の干満差が大きい瀬戸内海沿岸で開発・発展してきたとされ、現在でも塩のメーカーが瀬戸内海沿岸に多いのは、ここに由来しているそうです。
昭和30年頃までの約400年にわたり、日本独特の製塩法として盛んに行われたそうです。
<1953年~1971年>
昭和30年頃から「流下式枝条架併用(りゅうかしきしじょうかへいよう)塩田製塩」が主流となりました。
ポンプで汲み上げた海水を、緩やかな傾斜をつけた塩田に流し、水分を蒸発させて濃い海水にします。
これを竹の枝を組んだ「枝条架」の上からしたたらせ、太陽と風で水分を飛ばしてさらに濃縮させ、煮詰めて塩をつくります。
これまでの「入浜式塩田」と比べ、生産量は2.5~3倍に増加し、労力は約10分の1 になったそうです。
<1972年~>
イオンの性質を利用して海水中の塩分を集める「イオン交換膜製塩」に、全面的に切り替えられました。
塩の主成分・塩化ナトリウム(NaCl)は、海水中では電気を帯びたイオン(Na+とCl-)になっています。
陽イオンだけを通す陽イオン交換膜と、陰イオンだけを通す陰イオン交換膜を交互に並べ、電気を流すことで、濃い(Na+とCl-が多い)塩水と、薄い(少ない)塩水ができます。
こうしてできた濃い塩水を煮詰めて塩が作られています。
「イオン交換膜」による製塩法が開発されるまで、日本では実に1000年以上も塩田による製塩が続いてきたのです。
<1997年~>
1905年から「塩専売法」という法律のもと、塩の製造・販売は国により管理されてきました。
1997年、新しい法律に変わったことで「イオン交換膜製法」以外でも塩をつくることができるようになりました。
2002年には塩の製造・輸入・流通が完全に自由化されたことで、塩製造者が増え、様々な方法で塩づくりが行なわれています。
三代目:塩が大変貴重だったということから、手延べ素麺作りが発達したのは、塩が比較的身近にあった海に近いエリアであるのが納得できます。
まあ、海に囲まれている日本ですから海に面していること自体は珍しくも無いのでしょうが、海に面していない奈良県桜井市の三輪素麺が発祥となったのは、少し不思議な感じがしますね。この辺は、機会があればまた調べてみたいと思います。
※写真はPhotoAC「香川県宇多津町 うたづ臨海公園にある復元塩田」より
<参考サイト>
・日本の塩 世界の塩
http://www.tokyosalt.co.jp/woldsolt
・世界の塩造り、日本の塩造り
https://www.nihonkaisui.co.jp/small_customer/learning_salt/Japanese_salt
・日本の塩づくりの歴史
https://www.shiojigyo.com/siohyakka/made/history.html
・日本の塩つくりの歴史
https://www.hakatanoshio.co.jp/salt/history/
・株式会社天塩「塩とは」
https://www.amashio.co.jp/shio/#h-anker2
⑥ 《産地紹介》三重県・大矢知(おおやち)素麺
大矢知素麺は、三重県四日市市大矢知地区で作られる素麺です。
今から約200年前の江戸時代末期、1人の旅の僧侶が大矢知の農家に一夜の宿を請い、人々の親切なもてなしに大変喜んで、そのお礼として素麵の作り方を授けたのがその始まりとされています。
朝明川の清流と、鈴鹿おろしと呼ばれる乾燥した北西の季節風という気候風土に加え、北勢地域が小麦の産地であったことなど、素麺づくりに適したこともあり、農閑期である冬の副業として、素麺づくりが盛んになったと言われています。
明治時代には近代的な手延べ製法が伝わり、昭和初期の最盛期には生産者が300軒を超え、手延べ製法を用いてひやむぎやきしめん、うどんも生産されるようになったそうです。
機械生産への移行などにより生産者は急速に減少し、現在は10件ほどの事業者が伝統的な手延べ製麺の技術をつないでいるとのことです。
大矢知素麺は少し太めの麺で、手延べならではの強いコシやなめらかな舌触り、歯切れの良さが特徴です。
農林水産省の統計(平成21年)によると、手延べ素麺の都道府県別生産量において、三重県は全国第9位となっています。
<参考サイト>
・Wikipedia「大矢知素麺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%9F%A2%E7%9F%A5%E7%B4%A0%E9%BA%BA
・四日市市広報2022年2月上旬号
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1643956619284/simple/202202joujun0205.pdf
・大矢知手延べそうめんの歴史
http://soumen-guide.net/archives/140
・大矢知手延べそうめんの特徴
http://soumen-guide.net/archives/143
・乾めん類の都道府県別生産量
https://www.shimabara-soumen.com/article/14800426.html
⑦ 《美味しい素麺》小豆島便り〈冬〉(ギフトセット) 編
小豆島民にとって“馴染み深い品々”を集めました。
小豆島には手延べそうめんのほかにも、 醤油やオリーブといった歴史ある食品産業があります。
当店自慢のそうめん・うどんと、 小豆島を代表する食品をセットでお届けします。
数ある醤油蔵、オリーブオイルメーカーのなかでも、 古くから島民の食卓に欠かせない二品を選びました。
濃縮タイプで大きめサイズの万能つゆと、 さらっとクセのない味わいのオリーブオイルは、 色々な料理にお使いいただけます。
本文でも書いたように、素麺に含まれる塩分は茹でたり、水ですすいだりしている内に自然と流れ落ちていきますが、めんつゆなどに含まれる塩分が多いと結局同じことになってしまいます。
山芋の粉を練り込んだ「手延べ山芋素麺」や「手延べオリーブオイル素麺」など、普通の素麺とはまた違った味わいやお料理にお使いいただける素麺をセットにしています。
ですから、濃く味付けしたり濃いつゆにつけたりしなくても美味しく召し上がっていただけるのではないでしょうか。
また、石井製麺所の素麺を美味しく召し上がっていただくのにおすすめなつゆ「マルキンデラックスつゆ」もセットにしています。
6倍濃縮タイプなので、塩分が気になる方は少し薄めるなどお好みの濃度でお召し上がりいただけます。
さらに、オリーブオイルもセットしていますので、めんつゆに少し垂らしてお召し上がりいただければ、コクが出て美味しくなると思います。
石井製麺所の人気の素麺とおすすめ商品をセットにしたギフトセットですので、ご自宅用はもちろん、大切な方への贈り物にいかがでしょうか。
春先のお祝い事にもピッタリですよ。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《小豆島便り<冬>》 https://141seimen.thebase.in/items/55454413
三代目:次回のブログは3/27ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.8
小豆島手延べ素麺ならではの『ごま油』について
「手延べ素麺」とは一般的に、小麦粉に食塩と水を混ぜこねて生地を作り、食用植物油を塗りながら手を使って細く伸ばし麺に仕上げたもので、その太さにより素麺、ひやむぎ、うどんなどと規定されています(【お!いしい けんぶんろく】 Vol.4「素麺の規格は太さにより決まっている」参照)
今回のブログでは、手延べ素麺づくりの工程では欠かせない食用植物油、今回は小豆島独自とも言える『ごま油』について掘り下げてみたいと思います。
なぜ小豆島だけで素麺づくりにごま油が使われるようになったのか…実は、はっきりしたことは分かっていないそうです。
ですが、美味しさや機能性の面で多くのメリットがあり、ごま油を使うことは理にかなっていると言えます。
今回は、ごま油の歴史や栄養価、素麺に適している理由などについてご紹介します。
三代目:昨年12月、小豆島土庄町にあるごま油で有名な『かどや製油』様へ工場見学に行ってきました。
圧倒的な国内シェアを誇り、海外への輸出も積極的に行うお会社様ですから、緊張して伺ったのですがご対応頂いたご担当者様はじめ、研究部門のご担当者様含め多くの方にお迎えいただき、アットホームな雰囲気で一気に和んでしまいました。
工場で働くほとんどの方が小豆島ご出身とのことで、とても身近にも感じました。
恥ずかしながら、そういったことが全く分かっていませんでした。
ですが、今回の訪問を通じて『ごま油』の良さや、その理にかなった小豆島手延べ素麺の美味しさの秘訣などに触れることができたと思います。
『かどや製油』様へのリスペクトと感謝の気持ちを込めて、色々と調べてみましたので、よければ皆さまもご一緒に『ごま油』の魅力にお付き合いください。
今回、快く訪問を受け入れてくださった『かどや製油』の皆さまです。
【目次】
① 古代文明の時代から重用されてきた『ごま』と『ごま油』
② 日本で奈良時代から使われている『ごま油』
③ 『ごま油』の栄養と健康や美容への効果
④ 素麺作りに『ごま油』を使うメリットとは
⑤ 『かどや製油』の『ごま油』について
⑥ 《産地紹介》愛知県・和泉素麺
⑦ 《美味しい素麺》手延べ素麺 太麺 編
① 古代文明の時代から重用されてきた『ごま』と『ごま油』
『ごま』はアフリカのサバンナ地帯が原産地とされています。今から約6000年前、アフリカの人々が原生の『ごま』を食用に改良したのが始まりで、そこから中東やヨーロッパに伝わり、さらにシルクロードを経由して、中国や日本に伝来したと考えられています。
古代エジプトでは、搾った『ごま油』を灯火や香料などにするほか、卵や蜂蜜と合わせて滋養強壮の妙薬として使っていたそうです。
あのクレオパトラがボディオイルとして愛用していたという説も。
またミイラを保存するための防腐剤として活用されたという記述もあるそうです。
世界最古の文明であるメソポタミアでは、天地創造の神話において、神が人間の世界を作る時、ごま酒を飲んだと伝えられているそうです。
『ごま』は、菓子、軟膏、儀式用の燈明など、さまざまな場面で利用されていたとのこと。
粘土板に『ごま』と銀貨の交換レートが記載されていた記録も残っているそうです。
2500年ほど前のギリシャでは、医学の父と呼ばれるヒポクラテスの書に、『ごま』が薬用として利用されていた記録があるそうです。
インダス文明を代表するモヘンジョダロ遺跡やハラッパ遺跡でも、『ごま』が多数出土しています。
代表的な利用方法として、人類最古の医学といわれる健康法「アーユルヴェーダ」では、『ごま油』が薬剤として用いられるそうです。
中国では、紀元前3000年頃の浙江良渚遺跡から『ごま』が出土しているとのことです。
世界最古と言われる医薬書「神農本草経」には、黒ごまは「気力を増し、脳髄を補い、飢えず、老いず、寿を増す」不老不死の薬効があると記されているとのこと。
宋の時代の医薬学書「経史証類大観本草」では、練りごまと蜂蜜を混ぜて丸めた「精神丸(せいしんがん)」という薬が、よろずの病を治すとして紹介されているそうです。
<参考サイト>
・【ごまの豆知識①】ごまはどこから来たの?ごまの歴史について
https://www2.katagi.co.jp/blog/2017/07/blog2.html
・「ごま」にまつわるよもやま話。起源と歴史、日本伝来について
https://www.kenkodojo.com/column/knowledge/detail174/
・ごまのはじまり(ごまの起源)
https://www.kuki-info.co.jp/learn-enjoy/stories.html
② 日本で奈良時代から使われている『ごま油』
日本では紀元前1200年頃、縄文時代末期の遺跡で『ごま』の種子が発見されています。
その後、仏教伝来とともに大陸から『ごま』の搾油技術が伝わり、灯油が作られるようになったそうです。
奈良時代には栽培が始まり、食用文化も広がり始めたようです。
正倉院文書には、米や麦の粉を蜜でからめて『ごま油』で揚げた、かりんとうのような菓子があったという記述があるそうです。
平安時代の辞書「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」には、「油飯(あぶらいい)」という料理の解説として「ごま油にて飯を炊く」との旨が書かれていて、ご飯を炊くときに水と一緒にごま油を入れていたと推測できるとか。
食べることができたのは貴族だけで、『ごま油』は庶民にはまだまだ手の届かないものだったようです。
鎌倉時代に中国から伝わったすり鉢が普及したことから、室町時代には『ごま』料理の幅が広がったと言われます。
室町時代の書とされる「大草家料理書」には、鯛南蛮焼の作り方に『ごま油』の記述が見られるそうです。
江戸時代の初期に黄檗宗の開祖である隠元禅師が中国から伝えた「普茶料理(ふちゃりょうり)」という精進料理には、『ごま油』を用いた揚げ物などのメニューがあり、現代でも親しまれている南部胡麻煎餅や、ごま和え、ごま豆腐などの料理も誕生したようです。
明治時代になると、料亭やてんぷら店の広がりに伴い、『ごま油』が一般に普及していったようです。
三代目:こうやって見ると、小豆島に手延べ素麺が伝わってきたときには、まだ『ごま油』はとても貴重なものだったと推測できます。
『かどや製油』様に伺ったところ、「小豆島に手延べ素麺が伝わったのが先か、『ごま油』の製造が先なのか」は、よく分かっていないそうです。
また、『かどや製油』様も昔から今のように大きかったわけではなく、たくさんの製油所が統合されて大きくなっていったそうなのですが、「なぜ『かどや製油』に統合されたのか」も、よく分かっていないそうです。
小豆島でも『ごま』の栽培は行っていたのでしょうが、『ごま油』を作るとなると相当な量の『ごま』が必要だったのではないでしょうか。
しかも、手延べ素麺発祥の地の三輪素麺でも使わない物であり、希少で高価な『ごま油』を誰が使ってみようと思ったのでしょうか。
※写真はAdobe Stock「朱雀門広場の遣唐使船」より
<参考サイト>
・ごま油の豆知識
https://www.nisshin-oillio.com/goods/goma/knowledge/import.php
・ごま油のお話し
https://www.oil.or.jp/info/59/page01.html
③ 『ごま油』の栄養と健康や美容への効果
特有の芳ばしい香りが特徴の『ごま油』には、ここまでで調べたように「美味しさ」はもちろん、「健康」「美容」「薬」「長寿」などの特徴があり、「抗酸化作用」をはじめとした健康効果をもたらす体にうれしい成分が多く含まれています。
こうした作用が小豆島手延べ素麺の美味しさの秘訣になっているのだと考えられます。
ここでは『ごま油』の主な栄養成分について調べてみたので、ご紹介したいと思います。
<ゴマリグナン>
ポリフェノールの一種で強い抗酸化作用があり、老化予防などに役立つと言われています。
また活性酸素を取り除く働きもあり、生活習慣病の予防にも期待されています。
ゴマリグナンの中で最も多く含まれているセサミンには、アルコールの分解促進、コレステロールの減少、血圧上昇の抑制、肝機能の改善、免疫力を高めるなどの働きが期待できます。
またセサモリンは、『ごま油』の製造過程でセサミノールやセサモールに変化します。これらには、油の酸化を抑制する効果もあるとされています。
<リノール酸>
不飽和脂肪酸のひとつで、体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある成分です。
『ごま油』は、全食品の中でも上位に入るほどリノール酸を豊富に含みます。
血中の総コレステロール値を低下させ、動脈硬化を予防する効果があるとされています。
<オレイン酸>
不飽和脂肪酸のひとつ。
悪玉コレステロール値を下げる働きや、腸の働きを活性化して便秘の解消に役立つ働きがあると言われています。
<ビタミンE>
強い抗酸化作用があり、体をストレスから守り老化を抑える働きがあります。
不飽和脂肪酸の酸化を防いでシミやしわの増加を予防、悪玉コレステロールの酸化を防いで動脈硬化予防、毛細血管を広げて血行を改善し冷え性を解消、などの効果が期待できます。
日本人が摂取するビタミンEの約30%は、植物油から摂取しているそうです。
<セレン>
ミネラルの一種で、活性酸素に対抗する酵素を作る働きがあり、老化防止やがんの発症リスクの軽減が期待されています。
ビタミンEと一緒に摂取することで相乗的な作用が期待できます。
これらの成分は、『ごま』の堅い皮の内側にあり、皮つきのまま食べると体に良いとされる成分も吸収されずにそのまま体外に排出されてしまうそうです。
そのため、吸収の良い食べ方には、
煎りごま」よりも「すりごま」「ねりごま」「液状」の状態の方が、栄養成分が消化・吸収されやすくなるそうです。
三代目:自分よりも強い立場の人へ取り入ろうとする際に「ごまをする」という表現がありますが、「ごますり」は栄養価の吸収を助けるためですから、本来、相手を思いやる行為なのかも知れませんね。
<参考サイト>
・スーパーフード・ごまで健康生活
https://www.kadoya.com/enjoy/page06.html
・アンチエイジング効果にも期待!ごま油の栄養
https://magokoro-care-shoku.com/column/nutrition-of-sesame-oil/#%E2%97%86%E3%81%94%E3%81%BE%E6%B2%B9%E3%81%AE%E4%BF%9D%E5%AD%98%E6%96%B9%E6%B3%95
・ごま油の健康効果・効能・栄養|上手な選び方と使い方
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=12301
④ 素麺作りに『ごま油』を使うメリットとは
手延べ素麺では、麺の生地の表面に油を塗りながら引き伸ばし巻いていく「油がえし」という工程があります(【お!いしい けんぶんろく】 Vol.2 「手間を惜しまない伝統の製法・手延べ素麺」参照)。
麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングする工程です。
他の産地では綿実油を使って行いますが、小豆島では100%純正の『天然ごま油』を使います。
抗酸化作用の強い『ごま油』を使うことで、素麺の酸化が抑えられるため、油臭さを取り除く工程が必要ありません。
素麺は熟成させることでコシが強くなり、ゆで伸びしにくくなります。
適切に管理された倉庫で貯蔵された素麺は、高温多湿の梅雨を越すことで熟成し、麺質が変化します。
梅雨を1回越したものを「新物」、2回越したものを「古物(ひねもの)」、3回越したものを「大古物(おおひねもの)」と言い、古いものほど貴重とされる産地もあります。
小豆島素麺で使われる『ごま油』は、油の酸化を抑える働きのあるゴマリグナンやγ-トコフェロール(ビタミンEの一種)を含んでいるため、麺の劣化が抑制され、美味しさや風味を保ったまま長持ちさせることができると考えられています。
小豆島手延べ素麺に『ごま油』を使用することで、麺にできる『ごま油』のコーティングが酸化を防ぎ、ゆっくりと麺を熟成させることができ、またそれが特有の芳ばしい風味や黄味がかった色合いを生み、小豆島の手延べ素麺の特長のひとつとなっていると言えます。
三代目:『かどや製油』様で、様々な油の酸化度合いを比較した図を拝見させていただきましたが、『ごま油』が大変優れていることが一目瞭然でした。乾麺を保存するのに、まさにピッタリな『ごま油』が身近にあったからこそ、小豆島手延べ素麺はここまで発展したのだと感じます。
先人たちの、美味しくしようとするその知恵や努力が、今まさに、産地の大きな特徴ともなっています。
<参考サイト>
・小豆島はそうめんの町
https://shodoshima.npnp.jp/about/somen/
・「そうめん」も熟成がおいしい?
https://www.educe-shokuiku.jp/news/food/somen/
・手延べそうめんの「厄(やく)」とは
https://www.shimabara-soumen.com/14662419348225
・そうめんは古いもののほうがおいしいって本当!?
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/08/post-2913.html
⑤ 『かどや製油』の『ごま油』について
石井製麺所がある小豆島町と反対側にある小豆島のもうひとつの町、土庄町に『かどや製油』様はあります。
土庄町には高松や岡山から港にフェリーが入ってくる航路がありますが、着岸前には目の前に大きく拡がる工場を見ることができます。
時間帯によって(風向きによって)、『ごま』の芳ばしい香りが町中に漂うのも、小豆島ならではのこと。
『ごま油』の国内シェア約50%を占める『かどや製油』様は、小豆島発祥の企業です。
江戸時代末期の安政5年(1858年)に創業。
店舗と工場が交差点の角にあったことから「かどや」の名が付いたそうです。
小豆島の素麺づくりに欠かせない『ごま油』を扱い、関西で広く知られるようになりました。
昭和32年(1957年)、東日本地区の代理店である小澤商店と共同で出資して、東京の品川に本社を置き、全国に事業を拡大しました。
今でも小豆島で大規模工場を稼働しています。
『ごま油』には、『ごま油』100%の「純正ごま油」と、大豆や菜類などの食用油をブレンドして作った「調合ごま油」の2種類があるそうです。
現在は、「特定保健用食品」の許可を得た「トクホのごま油」も販売しておられます。
かどやの「純正ごま油」の原料は、『ごま』100%。
良質な『ごま』ならではの香りや味、栄養価の高さが特徴です。
もちろん、石井製麺所では、『かどや製油』様の『ごま油』を使って手延べ素麺を作っています。
三代目:これだけすごいお会社様ですから、本当に感心しきりなのですが、最後に。
日本全国、世界のあちこちに『ごま油』を供給されているので、見学をしていても気になったのは油を搾った残りかす…。
とんでもない量が出て困っているのでは?と思ったのですが、それは全て動物用飼料として再利用されているそうです。
そんな『ごま』を知り尽くした『かどや製油』様に負けないように、小豆島手延べ素麺をもっとたくさんの方に食べていただけるように精進してまいります。
<参考サイト>
・かどや製油株式会社
https://www.kadoya.com/specialty/pure/
・日本を代表するごま油!小豆島のかどや製油の歴史
https://humoto.jp/skanko/page-279/
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
⑥ 《産地紹介》愛知県・和泉素麺
今回は、手延べ麺を製造する8産地目をご紹介します。
和泉素麺は、愛知県安城市和泉町に江戸時代中期から伝わる手延べ素麺です。天明の大飢饉(1782年~1788年)の頃、麦を生産していた和泉地区で、貧困に苦しむ農民が副業として素麺作りを覚え、広まったと言われています。
和泉素麺の特徴は、日本一とも言われるその長さ。麺を約3メートル60センチの長さまで伸ばして作り、長いまま商品としています。
その昔、木造家屋に使用される「貫(ぬき:柱などに通す水平材のこと)」という木材を、麺をつくる時に用いて長く伸ばすようになったそうです。
この貫の長さが、昔の尺度で二間分(一間=約1メートル80センチ)あったことから、日本一長い素麺ができたと言われています。
和泉素麺のもうひとつの大きな特徴は、半生麺であること。
多くの手延べ素麺の産地では乾燥している冬に素麺を作りますが、和泉素麺は夏に作られます。
日中の暑い日差しで乾燥させた麺を、夕方頃から吹く三河湾の湿った南東の風、通称「そうめんの風」によって半生の状態に戻します。
これにより、麺はしんなりと柔らかく絹のような風合いになり、表面はなめらかでのど越しもよく、もちもちの食感が生み出されるそうです。
一度乾燥させているので、日持ちもするとのこと。
この独特の半生戻し製法を生み出したのも、和泉村の人々の知恵ではないかと考えられています。
文化5年(1808年)和泉村庄屋の都築孫助が、重原藩(刈谷)への暑中見舞品として素麺を贈っていたと言われています。
この素麺が好評で、それから毎年、陣屋の暑中見舞いに贈ったり、藩内の庄屋連中にも素麺料理をふるまったりしていたそうです。
昭和の初めには天皇陛下への献上品となったこともあるようです。
ピーク時には和泉地区を中心に60~70軒の製麺所があった時期もあるそうですが、食糧事情が緩和された昭和40年頃には、生産戸数は2~3軒までに激減し、現在では、古来からの伝統的な製造方法を継承して製造している生産業者は数軒のみだそうです。
※写真はPhotoAC「愛知県安城市の安城七夕まつり」より
<参考サイト>
・もっちもちで長~~い半生そうめん!愛知「和泉そうめん」の魅力とは?
https://icotto.jp/presses/11264
・和泉手延長そうめん
https://www.masugiseimen.com/izumi.php
・和泉そうめん(安城和泉手延べめん)の歴史
https://www.fukurokuju-gift.com/hpgen/HPB/entries/14.html
・私たちのこだわり | うどん 通販は半生手延べ一丈麺「和泉そうめん丈山の里」
https://www.izumi-somen.co.jp/p_process/
・和泉の長そうめんの由来
http://www.miyakoseimen.com/jp/business/
⑦ 《美味しい素麺》手延べ素麺 太麺 編
「小豆島400年の伝統」と「石井製麺所のこだわり」の基本といえる手延べ素麺の太麺をご紹介いたします。
小豆島の穏やかで雨の少ない気候の中で、400年を超える伝統を持つ手延べ素麺。
石井製麺所では「天日干し」と「屋内干し」のバランスにこだわり、日々最適な乾燥具合を目指して、素麺に寄り添いながら心を込めてつくっています。
こちらは一般的な素麺より、少し太めに仕上げた「太素麺」です。
2日間かけてじっくり乾かすことで、太めでありながらよく締まった麺に仕上げています。
太めの麺はにゅうめんなど、温かい食べ方によく合います。
サラダ、パスタなど洋風アレンジもできます。
一度お召し上がりいただくとリピートされる方の多い一品です。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ素麺 太麺》 https://141seimen.thebase.in/items/29006413
三代目:次回のブログは3/13ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.7
めんつゆの歴史と地域性について
めんつゆは、醤油と砂糖やみりんなどを煮て作る「かえし」に、だしを合わせた混合調味料です。
素麺やそば、うどんなどの麺料理だけでなく、家庭料理の味付けにも広く使われており、いまや購入金額は醤油を上回っています。
今回は、素麺と相性の良いめんつゆの歴史や地域性についてご紹介します。
三代目:ブログのネタとして、「めんつゆ」って切口が新しいのではと考え、歴史などを少し調べてみました。
素麺にとって「めんつゆ」は切っても切れない大切なもののひとつだと思います。
どんなに美味しい素麺も、めんつゆが美味しくなければ台無しになってしまいますし。とても大切ですよね
美味しい素麺と自信があるからこそ、美味しいめんつゆについても考えてみたいと思いました。
【目次】
① 醬油の歴史と三大産地
② めんつゆの起源は室町時代
③ 地域による味の違い<醬油>
④ 地域による味の違い<だし>
⑤ 《産地紹介》岡山県・備中(びっちゅう)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べ半生うどん 編
① 醬油の歴史と三大産地
めんつゆの主な材料である醬油は、大豆と小麦、塩を発酵熟成させたものです。
まずはその醤油について深掘りしてみます。
そのルーツは、紀元前700年頃の中国の古文書「周礼(しゅうらい)」に記述のある「醤(ひしお)」と言われています。
「醤」とは当時の塩蔵品の総称だったようです。
原料別に「草醤(くさびしお)」「肉醤(ししびしお)」「穀醤(こくびしお)」の3種類に分けられ、「草醤」は漬物、「肉醤」は塩辛類で、「穀醤」が現在の醤油や味噌の原型と考えられています。
日本では飛鳥時代のものと思われる木簡に、「醤」の文字が見られます。
大宝律令によると、宮廷の料理を司る「大膳職(だいぜんしき)」に属する「醤院(ひしおつかさ)」で、大豆を原料とする醤が作られていたとされています。
奈良時代から平安時代の宮中宴会では、膳の上に「四種器(よぐさもの)」という4種類の調味料「塩・酒・酢・醤」が乗っていたという記録があり、醤の形状が固形から液状へと変化したのもこの頃のようです。
大豆が日本で広く生産されるようになってきた鎌倉時代には、醤の一つである味噌の製造過程において、味噌桶の底に溜まった液体を「溜(たまり)」として利用していたそうです。
これが醤油の原型とされています。
室町時代の中頃には、現在の醬油に近いものが作られるようになりました。
1597(慶長2)年の日常用語辞典である「易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)」に、「醤油」の文字が登場しています。
室町時代の末頃から、関西を中心に醤油の醸造が盛んになりました。
江戸時代の中期には、大阪・堺、和歌山・湯浅、兵庫・龍野などの産地で醬油の量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上したと言われ、醬油が庶民にも広く普及した時期であったようです。
江戸幕府が開かれたことに伴い、経済や文化も江戸を中心として発展していきます。
江戸初期には、関西で生産された味や品質の良い「下り(くだり)醤油」が大量に江戸へ送られたという記録が残っています。
江戸時代中期になると関東でも様々な産業が栄え、今の千葉県の銚子や野田が醤油の一大産地となり、江戸の人々の嗜好に合わせた「濃口醬油」が、関東で普及したようです。
現在、醤油の代表的な産地として知られているのが、千葉県・兵庫県・香川県です。
千葉県の銚子と野田は、江戸川と利根川の水運を利用し、原料の入手や消費地への運搬にも都合がよく、醤油の産地として発展しました。
千葉県の醬油の生産量は、日本全体の3分の1を占めています。千葉で作られる醬油の多くは、濃口醬油です。
日本の醤油生産量の約15%を占める兵庫県。
その西部に位置する龍野市は、淡口醬油の一大産地です。
播磨平野の豊かな小麦、山間部でとれる良質の大豆、赤穂の塩、清らかで鉄分の少ない川の水が、淡口醤油作りに適しているとのことです。
香川県の小豆島では、木桶仕込みで醬油が作られてきました。
海に囲まれておりもともと製塩業が盛んでしたが、瀬戸内の各地で塩が生産されたため、過剰となってしまった塩を原料として活かせる醤油作りが始められたとされています。
温暖な気候が醤油作りに不可欠な麹の発酵に適していること、天下の台所である大阪に近いこと、原料の運送にも便利な立地であることなどから、醬油の産地として発展を遂げたと考えられています。
<参考サイト>
・しょうゆの歴史を紐解く
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html
・しょうゆを知る 歴史
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/history
・日本食文化の醬油を知る
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/mame01-a.html
・【醤油】歴史と日本の三大名産地の特徴を知ろう!
https://thegate12.com/jp/article/172#content-2
② めんつゆの起源は室町時代
醬油を使ったかえしができる以前の室町時代頃は、うどんを「たれみそ」と呼ばれるものにつけて食べていたそうです。
みそに水を加えて煮つめ、布袋に入れて吊るして漉したもので、これがめんつゆの原型と考えられています。
江戸時代初期、そばが食品として普及しました。
当初はたれみそにつけて食べていましたが、作るのに手間がかかる、絞りかすが出るなどの点から、醤油ベースのそばつゆができたようです。
1751年(寛延4年)の「蕎麦全書」という書物には、たれみそを使ったつゆと醤油を使ったつゆの2種類の作り方が記述されています。
江戸時代後期には、醤油にみりんやだしを合わせたものが流通するようになりました。
明治時代になると甘味の強いつゆが好まれるようになり、砂糖を加えたものが主流となりました。
女性や子供もそばを食べるようになり、その嗜好に合わせたからと考えられています。
商品としてのめんつゆは、1952年に中京の食品メーカーが販売したものが最初と言われています。
1997年制定のJAS規格では、めん類等用つゆは「しょうゆに糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等)から抽出しただしを加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたもの」と定義されています。
1980年代以降、日本人1人当たりの醤油の消費量は減少傾向にありますが、めんつゆは需要が高まり消費量が伸び、1994年にはつゆ・たれ類の世帯当たりの年間支出金額が醬油を上回り、2012年にはその差が2倍以上に拡大しています。
三代目:めんつゆって、比較的新しい物と思い込んでいましたが、歴史のある食べ物だったんですね。
そう考えると、めんつゆにつけて食べる今のスタイルは、実はもう何百年も続いているということなんですよね。
小豆島出身なのでお醤油にはこだわりがありましたが、これからはめんつゆにももっと想いを巡らせて、手延べ麺の食べ方や味わい方も研究していきたいですね。
<参考サイト>
・めんつゆについて
https://food-drink.pintoru.com/mentsuyu/about-mentsuyu/
・めんつゆの躍進
https://www.foodwatch.jp/daizu039
・ウィキペディア「めんつゆ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%81%E3%82%93%E3%81%A4%E3%82%86
③ 地域による味の違い<醬油>
めんつゆの味を決める2大要素、醬油とだし。それぞれ地域ごとに、好まれる味や素材が異なるようです。
醬油は、その製造方法から3つに分けることができます。
<本醸造方式>
大豆と小麦を、麹菌や酵母、乳酸菌など微生物の力により時間をかけて発酵熟成させる、昔ながらの醸造法。深い旨みと、芳醇な香りが特徴。生産量全体の約9割を占めています。
<混合醸造方式>
本醸造方式でできたもろみにアミノ酸液(大豆などに酸を加え加水分解して作ったもの)などを加えて発酵熟成させる製法。
<混合方式>
本醸造形式で作った生揚げ醬油にアミノ酸液などを混ぜる製法。そこから砂糖類や甘味料などを加えて旨みとのバランスを調整するなどアレンジされることもあります。
これらを踏まえ、地域ごとに好まれる醬油の傾向を見ていきます。
<北海道>
本醸造方式の濃口醬油に加え、共働きで農地開拓していたことから手軽に調理できる濃縮つゆが広く普及。特産品である昆布のだしを使った昆布醬油も多く使われます。
<東北>
甘口の本醸造醬油や、やや甘めの混合醬油が沿岸部を中心に好まれます。濃縮つゆやだし醬油が、醤油代わりに日常的に使われているようです。
秋田では、ハタハタやイワシを使った「しょっつる」という魚醬が作られます。
<関東>
本醸造の濃口醬油がほとんど。海に面した江戸で、魚の臭みを和らげる濃口醬油が広まったとされます。甘味料を添加せず、すっきりした味わいが特徴。
<北陸>
甘口の本醸造醬油や甘い混合方式の濃口醬油が主に使われています。北洋漁業の漁師の嗜好に影響を受けたという説も。石川では、イカの内臓やイワシを使った「いしる」という魚醬が作られます。
<中部>
本醸造方式の濃口醬油が多く使われます。
また愛知・岐阜・三重を中心とした地方では、豆味噌の製造過程で生まれた色の濃い「たまり醬油」と、小麦が主原料の色の淡い「しろ醬油」も作られています。
<近畿>
本醸造方式の濃口醬油と淡口醬油を、料理により使い分けます。淡口醬油は江戸時代に兵庫県龍野で生まれたとされます。
<中国>
九州北部の甘い醬油が入ってきたことにより、やや甘い混合醬油が多く使われます。瀬戸内に比べ、日本海に面した萩地方の醬油はより甘いと言われています。
地元産の牡蠣エキスを使った牡蠣醬油などの加工品も作っています。
<四国>
地域により特徴が分かれます。
高知や愛媛は九州の影響を受けて、甘味の強い混合醬油が好まれます。
江戸時代から醬油の産地として知られる香川県小豆島では、関東同様、甘味料を使用しない本醸造の濃口醬油が使われます。
讃岐うどんのつゆには、混合の淡口醬油が使われています。
また香川ではいかなごを使った「いかなごしょうゆ」も作られていました。
<九州・沖縄>
混合方式の濃口醬油と淡口醬油を料理により使い分けます。九州南部では強い甘味のある醬油が好まれる傾向にあります。
沖縄は、東京からの物資調達が多かった背景もあり、濃口醬油が多く使われます。
<参考サイト>
・関東は濃いめ、関西は淡め、九州は甘め…ではほかの地域は?日本各地で違う「しょうゆ文化」の謎に迫る
https://news.yahoo.co.jp/articles/9618729e58a029b78d8e1bd63c1a0e6e39b5b1b8
・しょうゆのすべて
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/index.html
・「調味料」地域性 醬油編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_03.html
・しょうゆと郷土料理
https://www.kikkoman.co.jp/pdf/no26_j_008_025.pdf
④ 地域による味の違い<だし>
だしの味が関東と関西で異なることは、よく知られていると思います。
関東では主にかつお節が、関西では昆布が多く使われます。
この違いの理由については、2つの説があるようです。
1つは、昆布の流通。
室町時代、北海道でとれる昆布が船で京都まで運ばれる、通称「昆布ロード」が確立しました。
江戸時代には北前船で酒田から下関を通り、大阪を経由して江戸へ向かう西廻り航路が開かれました。
関西では京都の公家文化の影響で、上質な昆布のだしを使って素材の味を引き出す京料理が誕生。
天下の台所と呼ばれ、比較的裕福な商人の町であった大阪でも、昆布だしが広まったようです。
江戸まで運ばれた昆布は関西で売れ残ったものだったので、関東には昆布だしが根付かなかった、という説です。
当時の関東では肉体労働者が多かったことから、味付けの濃いものが好まれ、濃厚なかつおだしやそれに合う濃口醬油が発展していったと考えられています。
もう1つの説は、水質の影響です。
関西の水は硬度が低く、昆布だしを引き出すのに適しており、関東の水は関西に比べ硬度が高いので昆布だしが出にくいと言われています。
そこで濃いだしをとるために、関東ではかつお節が多く使われるようになったという説です。
関東と関西だけでなく日本の各地域で、それぞれの特産品などの影響により、だしの種類は異なります。地域ごとによく使われるだしの種類を見ていきます。
<北海道>
かつお節、昆布など。
くせのないさっぱりとしただしが好まれます。
<東北>
煮干し中心、さば節など。
魚の香りがしっかりとした、濃いだしが好まれます。
<関東>
かつお節、さば節など。
関東では江戸時代の中期頃から、カビつけした枯節が好まれるようになりました。甘味があり、上品な香りが特徴で、まろやかな味わいです。
<北陸>
昆布、かつお節など。昆布の加工品も多く使われます。甘めのだしが好まれます。
<中部>
・さば節、むろあじ節など。味も香りも強めの濃い出汁が好まれます。
<関西>
・昆布、かつお節、さば節、煮干しなど。
関西では、カビつけをしないかつおの荒節が好まれました。昆布をメインに、煮干しやかつおなどを合わせただしが特徴。澄んだ黄金色の上品なだしを、薄口醤油に合わせます。
<中国>
煮干し、焼きアゴ、かつお節など。
パンチのきいた濃い煮干しのだしが好まれます。
<四国・九州>
煮干し、焼きアゴなど。
黒潮に乗ってイワシがたくさん獲れたことから、高級品だったかつお節や昆布の代用品として手に入りやすい煮干しが使われ、その文化が根付いたと考えられています。
<沖縄>
かつお節、豚骨。
沖縄はかつお節の消費量が全国1位です。中国に輸出する際の中継港であったことや、太平洋戦争時に水産業を積極的に行っていたことが理由ではないかと考えられています。
三代目:お醤油の違いはそれなりに分かっているつもりでしたが(今回調べて、結構知らないことが多かったですが)、だしにもこんなに違いがあるのに驚きでした。
醤油×だしの種類でめんつゆの味わいが変わるとすると、その組合せはとっても多いものになりますよね。
さらにだしを重ね合わせたりすると…そう考えると、めんつゆひとつとっても楽しみが大きくひろがりますね。
<参考サイト>
・「だし」の誕生と発達
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/17/2.html
・地域ごとで全く違う!?日本各地の出汁文化!
https://gyoumuyo-dashi.com/2020/03/20/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%A7%E5%85%A8%E3%81%8F%E9%81%95%E3%81%86%EF%BC%81%EF%BC%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%90%84%E5%9C%B0%E3%81%AE%E5%87%BA%E6%B1%81%E6%96%87%E5%8C%96%EF%BC%81/
・だしの話
https://shop.ninben.co.jp/blog/?cat=20
・だしを知る
https://www.e-bonito.com/know/
・「だし」の地域性 節類・煮干編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_01.html
・「だし」地域性 昆布編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_02.html
⑤ 《産地紹介》岡山県・備中(びっちゅう)素麺
今回は、手延べ麺を製造する7産地目をご紹介します。
備中手延べ素麺は、昔の備中国にあたる岡山県浅口市鴨方町とその周辺の里庄町・矢掛町・笠岡市などで作られる手延べ素麺で「備中素麺」と呼ばれ、地元でもとても人気が高いそうです。その生産の中心となる地名からか「鴨方素麺」とも呼ばれていたり、商標名では「かも川」の名称が有名なんだそうです。
この地域では素麺を一年中常備している家庭が多く、冷やして食べるだけでなく温かいにゅうめんも日常的に食べられており、みそ汁に入れたり、赤ちゃんの離乳食にする家庭もあるそうです。
弾力があり煮崩れしにくいコシの強さと、なめらかなのど越し、歯切れの良さが特長だとか。
備中での麺づくりの歴史は大変古く、吉備国に「麦切(むぎきり)」という記述が古書に残っているそうです。朝廷に献上されたという記述が残っているそうです。少なくとも9世紀頃には吉備地方でうどんやそうめんの原型のようなものが作られていたと考えれています。
香川をはじめ、岡山、兵庫(播磨)は古くから小麦の産地で、後にその品質の高さから「三県物」と呼ばれるようにまでなった歴史があります。
備中素麺は、杉谷川の清流と、備中の大動脈とも言われる高梁川流域で栽培された小麦、瀬戸内海沿岸で作られる塩といった良質な素材が入手しやすい土地柄と晴天の多い気候からか、素麺作りが盛んになっていったと伝えれています。さらに、杉谷川には多くの水車が設置され、製粉から製麺まで一体化した素麺作りを行っていたようです。
江戸時代後期の文政年間に浅口郡口林村の原田敬助という人が、伊勢参りの道中、播州で素麺を食べたことをきっかけに、製麺職人を播州から村に移住させたとされています。
最初は小坂東村(現・浅口市鴨方町小坂東)の杉谷川流域に技術者が住み、そこから地元住民に製麺技術が伝わったと伝えられているので、「麦切」に見られるような小麦の加工品づくりとしての土壌は古くからあったことから、地元でも定着は早く人気が出たのかも知れませんね。
明治になると農家の副業にとどまらず、製麺を専業とする業者が多数生まれ、明治32年(1899年)には組合が結成されたそうです。
昭和初期にはいち早く工業化に着手し、手延べ用のこね機やイタギ機を開発。
手延べ作業の効率を上げることにより、大量生産と品質の安定化に成功したとされています。
最盛期には播磨に次いで生産量全国2位となり、約200の業者で年間約10万〜12万箱を製造していたそうです。
農林水産省の統計(平成21年)によると、手延べ素麺の都道府県別生産量において、岡山県は第6位となっています。
三代目:岡山県の備中素麺の名前は知っていましたが、歴史などは全く知りませんでした。小豆島での素麺づくりと共通項も多く、とても興味が湧いています。
このブログを書くたびに行ってみたい産地が増えて大変です(汗)。
まだまだブログを書いているだけなので、実際に産地や工場を見学させていただき、勉強していきたいと思います。
また、様々な産地で私のような後継者がいらっしゃれば、ぜひお目に掛かってお話を伺ってみたいと考えています。
<参考サイト>
・【備中手延べ麺】そうめん・うどん・ひやむぎまで。江戸時代からの名産品
https://fuuraiki.com/bitchuu-tenobemen/
・備中手延べそうめん
http://soumen-guide.net/archives/115
・乾めん類の都道府県別生産量
https://www.shimabara-soumen.com/article/14800426.html
⑥ 《美味しい素麺》手延べ半生うどん 編
小豆島には21の醤油蔵があり、独自の醤油やめんつゆを作っておられます。
すごいのは、各蔵によってそれぞれ味が異なるということ。ですから、島の方たちにも一人ひとりの“推しめんつゆ”があります。
島に来られた際には、ぜひ醤油やめんつゆなどの味の違いを楽しんでくださいね。
さて、今回はめんつゆのお話を書いたので、1つのめんつゆで二度美味しい「手延べ半生うどん」の食べ方をご紹介します。
たっぷりの水を鍋に入れ沸騰させます。
半生うどんは少し茹で時間が長いですが、焦らずじっくり茹でてください。
パッケージに記載の通りに茹で、冷たい水でサッとゆすげば麺が引き締まり、もちもちでシコシコな独特の食感を味わっていただけます。
そして、ネギやおろし生姜などの薬味を入れたお好みのめんつゆに、麺をひたして食べれば冷やしうどん(ざるうどん)として召し上がっていただけます。
器やタライなどにお湯を張って、その中に浸し麺が冷めないようにしながら、“釜揚げうどん”としてめんつゆにつけながら食べるのも、寒い日にはおすすめです。
もう1つの食べ方は、同じように麺を茹で冷たい水でサッとゆすぎ、しっかりと麺の水を切って薬味と一緒に器へ盛り付けておきます。
それと同時にめんつゆを火に掛け沸騰させ、器に盛ったうどんの上にバサッと掛ければ“冷やあつぶっかけうどん”のできあがりです。
お好みで温玉などを盛り付ければ“釜玉うどん”に。
めんつゆは熱々でも、麺は冷たく引き締まっているのでそのギャップが美味しいですよ。冬でもおすすめの召し上がり方です。
めんつゆ自体にも色々と味わいがありますが、冷たくしたり温めたり、さらに、麺を冷やしたり温かくしたり。
その組合せで色々と味わいが変わって、美味しく召し上がっていただけます。
石井製麺所の「手延べ半生うどん」は、冬季限定商品となっていますので、ぜひこの機会に色々と食べ方をお楽しみください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ半生うどん》 https://141seimen.thebase.in/items/29007530
三代目:次回のブログは2/27ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。