【お!いしい けんぶんろく】 Vol.21
メンコレ③/薬草を練り込んだ素麺の健康への期待
石井製麺所の“食材を練り込んだ手延べ麺開発”の一番のきっかけは、「しょうどしま長命草」を使った素麵でした。
召し上がってくださる方に、美味しさはもちろん、健康づくりにもお役立ていただける素麵を考えていたところ、小豆島の長命草生産者さんから「長命草を練り込んだ素麵ができないか」とご相談をいただき、石井製麺所が考える新しい麺の開発に繋がりました。
薬草ではありませんが、小豆島を代表するオリーブを使った素麵も、美味しさと食べやすさ、それに“健康価値の高い”食材であることを活かした手延べ素麵として、開発・販売してまいりました。
ご存じの通り、手延べ素麵は小麦粉と塩と水だけで製造をしています(必要に応じて食用油を表面に塗ります)。
「手延べ製法」は、そのシンプルな素材の特性を活かし、組み合わせて、美味しさを創り出す“究極の製法”(だと私は考えています)として受け継がれ、時に見直され、今日まで繋がっています。
白い素麵に食材・素材(食品粉末など)を混ぜてつくることは、これまで培ってきた製造方法そのままでは非常に難しくなることが多く、素材によっては柔らかくなり過ぎたり、途中で伸びすぎたり、逆に伸びなかったりと大きく製法に影響してしまいます。
石井製麺所では何度も失敗を繰り返し、食材を練り込んで美味しい手延べ麺に仕上げる独自製法を編みだすことができました。
もちろん、無添加、無着色、無香料のこだわりは大切にしています。
また、様々な手延べ麺にチャレンジすることで、必然的に各工程を見直すことになり、これまでの白い手延べ素麵のクオリティ向上に繋がったと感じています。
その甲斐あってか、現在、日本全国より、各地自慢の食材を練り込んだ素麵の製造依頼を頂戴するようになりました。
現在も独自の新麺開発に取り組みながら、独自性のある、新しい麺をお考えの皆さまのお役に立てればと精進しております。
今回は、「メンコレ」第3弾として、生地に薬草(健康に良いと考えられる食材)を練り込んだ素麺について調べてみました。
昔から、人々はいろいろな植物を薬として用いてきました。
何がどんな症状に効くのか試行錯誤を重ね、民間療法として伝承してきたのです。
漢方の用語に「医食同源」という言葉があります。
食べるものと薬になるものの源は同じ、という意味だそうです。
昔の人々が経験として薬用していた植物で、近年その健康への効果が改めてクローズアップされる、といったこともよくあるように思います。
そういった健康効果が大きく期待される植物を「薬草」ととらえ、それらを生地に練り込んだ素麺について、特徴的なものを調べてみましたので、今回もお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
※以下にご紹介する素麺は、2023年9月11日現在の当社調べになります。
ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。

<参考サイト>
・身近な生活にある薬用植物 医薬品の原料となった植物
https://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/medicine.html
・医食同源とは?食事も薬も源は同じ!? 健康を維持するには毎日の食事から
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/eat/?p=9795
【目次】
① 食べると長生きできる!?「長命草」の素麺
② 無病息災を願って食べたい「月桃」の素麺
③ 和ハーブの女王の異名を持つ「ヨモギ」の素麺
④ 漢方にも使われる!青と赤が鮮やかな「シソ」の素麺
⑤ 翌日には芽吹く生命力の強さ「明日葉」の素麺
⑥ 植物繊維が豊富!食べる「い草」の素麺
⑦ 薬草の栽培地でもある島原の「薬草」の素麺
⑧ 《美味しい素麺》しょうどしま長命草素麺 編
① 食べると長生きできる!?「長命草」の素麺
長命草は、「1株食べると、1日長生きする」と言われるほど高い栄養価を持つとされる、香川県小豆島の新しい健康食材。
四国、九州、沖縄などの海岸に自生する、セリ科の多年草です。
潮風が吹き付ける過酷な自然環境でもたくましく育つ塩生植物で、沖縄などでは古くから健康に良い野菜として食されてきました。
ポリフェノールや食物繊維を多く含み、ビタミンやミネラルもバランスよく含んでいます。
長命草には苦味がありますが、素麺にすることで食べやすく、手延べならではのツルッとした食感で美味しく召し上がっていただけます。
翡翠色で抹茶風味の中太麺で、温かいおだしともよく合います。
力を入れて取り組まれる与那国島や南さつま市でも、長命草を使った麺をつくられているそうです。
石井製麺所でも、他産地に負けない美味しい「長命草素麵」をつくり続けてまいります。

<参考サイト>
・しょうどしま長命草プロジェクト
https://shodoshima-choumeisou.com
② 無病息災を願って食べたい「月桃」の素麺
月桃(げっとう)は、沖縄や台湾などの亜熱帯地方に自生している多年草です。
沖縄では古くからその葉や種子・花などを薬草として活用してきました。
旧暦の12月8日には、一年の無病息災を祈願して月桃の葉で餅を包み、蒸して食べる習慣があるそうです。
蒸した際の残り湯は玄関や家の周りにまいて、家の中に邪気が入らないようにするお清めとして使うとのこと。
月桃はポリフェノールが豊富で、抗酸化作用や美肌効果などが期待され、ハーブティーや化粧品などにも使われています。
「げっとう食品」さんは、そんな月桃にほれこんで月桃の葉を練り込んだ素麺をつくっておられます。
オーナーが浦添市で運営されている沖縄そば店では、月桃入りのそばを食べたり、月桃入り素麺を購入したりできるようです。

※写真は「琉球ガラス村」の「福地商店」で販売中の月桃そうめん
「酔処 玉川」さん/https://www.facebook.com/profile.php?id=100064378314649
「吉嶺」さん/https://www.facebook.com/Yushinmi.Okinawa

※写真は製造中の『月桃そうめん』
<参考サイト>
・沖縄産ハーブティーで人気の月桃について!
https://okinawa-cho-sei.easy-myshop.jp/c-fpage?fp=column21
・月桃にとことんほれ込んだ社長のすばとそーみん
https://www.urasoenavi.jp/kankou/2015043000021/
・月桃を使った沖縄そば 麺屋ちばとぉーんどー(浦添市勢理客)
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1555983.html
③ 和ハーブの女王の異名を持つ「ヨモギ」の素麺
ヨモギは古くから日本で役立てられており、「和ハーブの女王」とも呼ばれます。
アジア・ヨーロッパ・アメリカなど世界中で生育し、その種類は250以上あるとも言われているそうです。
紫外線や潮風にさらされる海岸や荒れ地、森林など広く生息できる強い生命力があります。
栄養としては、骨粗しょう症を防ぐとされるビタミンK、抗酸化作用のあるビタミンEなどを豊富に含みます。
ヨモギを使った食べ物としては、春の風物詩である草餅がよく知られていますね。
他にも天ぷらやお茶など食用されるほか、入浴剤として、またお灸のもぐさなどにも使われてきました。
天然のヨモギを練り込んだ素麺が、奈良県三輪、長崎県島原、福島県南会津などでつくられています。
ヨモギ独特の香りや風味が味わえるそうです。

<参考サイト>
・【和ハーブ連載】ヨモギの効果とは?身近な薬草の知られざる力
https://www.yomeishu.co.jp/health/4159/
・三輪の翁 稲垣商店 よもぎそうめん
https://miwaokina.com/products/sousaku/yomogi.html
・のうち製麺 手延べ よもぎ素麺
https://nouchi-seimen.ocnk.net/product/16
・天領よもぎそうめん
https://www.naraya-soba.com/?pid=72380562
④ 漢方にも使われる!青と赤が鮮やかな「シソ」の素麺
シソは漢方にも使われる薬草です。
大きくは青ジソと赤ジソに分けられ、薬味やてんぷらなどで目にする機会が多いのは青ジソですが、漢方に使われるのは主に赤ジソだそうです。
発汗作用や解熱作用、胃液の分泌を良くして胃腸の働きを整える作用、魚介類による食中毒時の解毒・予防などが期待されるため、風邪症状や胃腸の不調などに良いとされる漢方薬に用いられているとのこと。
青ジソは抗菌作用が強いとされ、刺身のツマなどに用いられています。
素麵を食べる際には、薬味として使う方も多いのではないでしょうか。
そのシソを、素麵に練り込んでいるものもあるようです。
大分県大分市で大葉(シソ)の栽培や加工品生産などを手掛けておられる「植木農園」さんでは、青ジソの粉末を練り込んだ緑色の素麺や、梅とシソの粉末を練り込んだピンク色の素麺をつくっておられます。
徳島県徳島市では、徳島県産シソの葉を手摘みし天日で乾燥させ、粉にして生地に練り込んだピンク色をした素麺をつくっておられます。

<参考サイト>
・しそが漢方に用いられる理由。どんな漢方に配合されているかを解説
https://www.yuskin.co.jp/hadaiku/detail.html?pdid=100
・植木農園(大分県)の青じそ入 手延べ素麺は美しく、この上なくおいしいそうめん。強いコシが快感です。
https://kanzo.jp/archives/34648
・植木農園オンラインショップ
https://uekifarm.jp/shop/item.html#soumenao
・阿波紫蘇そうめん
https://gin-sato.jp/SHOP/4580280300497.html
⑤ 翌日には芽吹く生命力の強さ「明日葉」の素麺
明日葉は、独特の苦みを持つセリ科の多年草。
「今日新芽を摘んでも、翌日にはまた新しい芽が出てくる」と言われるほど生命力が強いことからその名がついたとされています。
別名「八丈草」とも言われ、八丈島や大島など伊豆諸島、房総半島、三浦半島、紀伊半島など暖かい太平洋沿岸部に自生している植物です。
古くから食用されており、青汁の原料としても有名ですね。
ミネラルやビタミンなどの栄養を豊富に含む健康野菜で、粉末などに加工されスイーツなどにも使われているそうです。
明日葉を練り込んだ素麺は、八丈島だけでなく、全国各地でつくられているようです。
岐阜県大垣では、明日葉を地域で苗から育てて粉末にし、練り込んで素麺をつくっておられます。
素麺発祥の地である奈良県三輪では、自社栽培の農薬不使用の明日葉を粉末にして練り込んだ素麺をつくっておられます。
翡翠の産地である新潟県糸魚川では、伊豆七島に自生する明日葉を練り込んで、翡翠のような美しい緑色の素麺をつくっておられます。

<参考サイト>
・八丈島の健康野菜あしたば
https://www.hachijo.gr.jp/specials/ashitaba/
・明日葉/アシタバ/あしたば:旬の時期と特徴
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/ashitaba.htm
・八丈島の明日葉・くさや・島とうがらし
https://www.sp-market.biz/shopdetail/000000000589/
・明日葉そうめん
https://ogaki-tokusanhin.jp/product/product-52/
・明日葉入り手延べ三輪素麺
http://www.nishino-farm.com/ashitaba-order/soumenn.html
・明日葉入りひすい麺「姫の糸」
https://e-ee.jp/SHOP/KSHI19071.html
⑥ 植物繊維が豊富!食べる「い草」の素麺
い草は畳の原料として知られていますが、昔は薬草として使われていました。
江戸時代の文献に、い草を細かくすりおろし煎じて飲むことで、感染による炎症を抑えるなどの効果があると記述されているそうです。
近年、食用い草の栽培が進んでおり、食物繊維などが豊富なことから「和のスーパーフード」として注目されています。
健康食品やスイーツ、また入浴剤などが開発されているとのこと。
日本一のい草の産地・熊本県八代市にある「イナダ有限会社」さんは、食用い草の栽培から販売まで手掛けておられます。
い草の粉末を練り込んだ素麺は、レストランや病院、学校の給食などにも採用されているそうです。
ほんのり甘く、つるつる、もちもちとした食感で、ゆで伸びしにくいとのこと。
こちらの会社では、い草を使ったお茶やアイスなどもつくっておられます。

※写真はイメージです。写真はPhoto AC「い草畑」より
<参考サイト>
・意外と知らない畳の話 昔は薬草だったイグサのアロマセラピー効果
https://ichijoya.co.jp/news/%E6%84%8F%E5%A4%96%E3%81%A8%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E7%95%B3%E3%81%AE%E8%A9%B1%E3%80%80%E6%98%94%E3%81%AF%E8%96%AC%E8%8D%89%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%82%B5%E3%81%AE/
・【イナダ有限会社】栄養が凄いと話題の”食べるイ草”を専門店で堪能してきた
https://8246renraku.net/archives/inada-igusa.html
・もちもち食感のこだわり手延べ『藺草麺 細麺』
https://e-igusa.com/SHOP/A13044.html
⑦ 薬草の栽培地でもある島原の「薬草」の素麺
長崎県の島原半島には、日本三大薬園跡のひとつである国指定史跡「旧島原藩薬園跡」があり、現在でも島原では薬草を栽培しているそうです。
そんな薬草を練り込んだ素麺がつくられています。
地元の島原農業高校の生徒が、もっと手軽に、年間を通じて手延べ素麺を食べてほしいとの想いで、「めんの山一」さんと産学連携で共同開発されたのが、「薬草麺のスープカレーそうめん」という商品。
麺には、4種の島原薬草(オオバコ・ウイキョウ・ナズナ・タンポポ)が練り込まれています。
コラーゲン入りカレースープと組み合わせ、片手鍋で3分ゆでれば出来上がりという簡単調理で食べられるそうです。

※写真は「長崎県産品データベース」掲載の「薬草麺のスープカレーそうめんNYK-02」より引用
<参考サイト>
・島原手延べ薬草麺のスープカレーそうめん
https://www.yamaichi-shop.jp/SHOP/NYK-02.html
・薬草麺のスープカレーそうめんNYK-02
https://nagasakisanpin-database.jp/product/%E8%96%AC%E8%8D%89%E9%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%97%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%9D%E3%81%86%E3%82%81%E3%82%93nyk-02/
⑧ 《美味しい素麺》しょうどしま長命草素麺 編
きっかけは、小豆島長命草の会さんから「長命草の粉末を使って、手延べ素麵をつくれないか」でした。
小豆島の農業は塩害との闘い…でもあるそうで、塩に強い農産物があればと、香川大学農学部の先生方と共同で研究をされてきたそうです。
何種類かの野菜や植物が候補に挙げられましたが、「長命草」を選ばれたそうです。
第一に、塩害に強い…どころか、塩を吸って元気になる植物ですから島嶼部である小豆島にはぴったりと言える植物です。
第二に、健康に良い…特に高血糖の方によいと言われているそうで、香川県の(当時)ワースト記録と言われる全国糖尿病患者数を下げるためにも、その効果に注目が集まったそうです。ちなみに、香川県では子供の糖尿病予備群化も深刻で、大人も子供も食べやすく広まりやすい食べ物が求められていたそうで、長命草を練り込んだ麺はまさにぴったりと言える食べ物だと考えます。
第三に、無農薬で栽培できること。食べる方の健康面でも大きく影響が考えられますが、なにより、高齢の農家さんにとって農薬を使わずに栽培できる長命草は、栽培される方の健康にも優しいと言えます。また、農薬を使用しないことから、その分のコストも安くなり安価に提供できることもメリットとなります。
第四に、島でたくさん出る「醤油粕」を活用して、小豆島独自の長命草栽培をおこなえる点です。
「醤油粕」は島にたくさんある醤油製造工場から毎日のように大量に出てきますが、醤油を搾った後の粕は産業廃棄物として処理されていたそうです。しかし、醤油粕に含まれる栄養素が長命草にぴったりで、より栄養価が高まる事も研究で分かってきたそうです。
地域で出る醤油粕を使用して、長命草を育て、それを島の特産品である手延べ素麵に仕上げることは、まさに小豆島ならではのものと言えます。
こうした理由から石井製麺所での「長命草素麵」づくりがはじまり、試行錯誤の上、納得いく仕上がりになったと自負しています。
少しずつですが認知度も高まり、今では人気の素麵となりました。
ぜひ一度、綺麗な翡翠色をした抹茶のような爽やかな風味の「長命草そうめん」を味わってみてください。


《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べしょうどしま長命草素麺》 https://141seimen.thebase.in/items/29007893
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.20
麺究者への道/パスタを研究してみる
先日、弊社の工場見学にもお越しいただいたShunくんがテレビ出演された「イキスギさんについてった」で、VTR出演ですが三代目も少し出演しコメントさせていただきました。
その放送も拝見いたしましたが、コンセプトを持って製品開発するShunくんの姿に感嘆と共感を覚えました。
素麺が好きすぎて…だけでなく、手延べ素麺業界で生産者さんが減っていく現状を危惧して、小学生のShunくんが手延べ素麺の認知度を上げようとするその姿、本当に勉強になりました。
石井製麺所でも、手延べ素麺の新しい形として、さまざまな新麺開発に取り組んでいます。
中にはOEMによる新麺のご相談や製造の委託をいただいています。
この世にあるいろいろな麺が食文化や食卓の変化に伴って進化したように、現代のライフスタイルに合う手延べ素麺を追い求めていきたいと思います。
今回の「麺求者への道」はパスタについてです。
パスタとは、小麦粉と水を練り合わせてつくられた麺食品を総称するイタリア語です。
ひと昔前まではミートソーススパゲティやナポリタン、マカロニサラダくらいしか知らなかったものですが、イタリア料理が日本での市民権を得て、今や本格的なイタリアンから和製パスタまで幅広いメニューが浸透している印象です。
しかも人気は衰えることなく、お店も専門店をはじめ居酒屋やレストラン、ファミリーレストランの業態でもイタリア料理は拡大しています。
パスタも素麺と同様に乾麺をはじめ、つくりたてを食べる生パスタもあり、奥が深く、幅も広い麺類を代表するものです。
パスタが嫌い…という人を見たことがありません。老若男女に愛される麺類のひとつですね。
今回は、パスタの製法や種類、日本でこれほど普及した背景や、食べ方などについて調べてみました。
今なお拡大するその人気の秘密に迫り、手延べ素麺の新しい方向性に活かせればと考えています。
今回もお付き合いの程よろしくお願いいたします。

【目次】
① パスタに適した性質の「デュラム小麦」が主原料
② 長さや太さ、形状は千差万別!
③ パスタの起源は古代ローマのおかゆ?
④ パスタとソースの組み合わせは無限!?
⑤ 所変われば料理も変わる!パスタ入りスープ
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
① パスタに適した性質の「デュラム小麦」が主原料
パスタに使われる小麦粉は、素麺やパン、天ぷら粉などに使われるものとは種類が異なるそうです。
「デュラム小麦」というグルテン含有量が多い硬質の小麦をセモリナ状(粗びき)にした、鮮やかな黄色の「デュラムセモリナ粉」で、良質のタンパク質を多く含み、弾力性に富むため生地を形成しやすく、ゆでても形がくずれにくいコシの強さが特徴です。
このデュラムセモリナ粉に水を加えてよく練り、生地をつくります。
穴の開いた金型(ダイス)から高い圧力をかけて押し出し、さまざまな太さや形のパスタに成形します。
これを適当な長さに切断し、高温の熱風で水分を取り除いて乾燥させます。
ロングパスタは乾燥させてから切断するそうです。
こちらは素麺の製法に似ていますね。
乾燥パスタに茶色や白の斑点が見えるのは、デュラム小麦の胚乳の硬い部分や皮の一部などのためとのこと。
生地にイカスミ、トウガラシ、ホウレン草、トマトなどを練り込んで、風味や彩りを添える場合もあります。
本場イタリアでは、乾燥パスタはデュラムセモリナ粉と水で作ることが法律で義務付けられているそうです。
一方、生パスタは普通の小麦粉を使い、卵を加えることも多く、家庭で手打ちすることもあるようです。
生パスタは製造過程で加熱しないため小麦本来の香りや旨みが残りやすい、ゆで時間が短い、食感がもちもちしている、などの特長があります。

<参考サイト>
・Wikipedia「パスタ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%B9%E3%82%BF#%E5%A4%96%E9%83%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF
・パスタを知る 日本パスタ教会
https://www.pasta.or.jp/knowledge
・パスタを知る 日清製粉グループ
https://www.nisshin.com/entertainment/encyclopedia/pasta/
・生パスタとは?乾燥パスタ麺との違いは?作り方・茹で時間や料理レシピなども紹介!
https://chisou-media.jp/posts/2880
② 長さや太さ、形状は千差万別!
パスタの種類は500種類以上とも言われています。
イタリアでは地方によって同じ種類でも違う呼び方の場合もあり、明確に分類することは困難なようです。
その形状から、大きくロングパスタとショートパスタの2つに分けられますが、そのほかにも板状や団子状、詰め物入りのものなどもあります。
【ロングパスタ】
・スパゲティ:太さ約1.7〜2.0mm、断面は円形
「ひも」を意味するイタリア語が語源。
日本で一番なじみが深いパスタ。

・スパゲッティーニ:太さ約1.6mm(スパゲティより少し細め)
あっさりしたシンプルなソースによく合う。
・カペッリーニ:太さ約1.2mm未満、断面が円形(パスタの中で最も細い)
「髪の毛」を意味するイタリア語が語源。
冷製やスープの具に良く使われる。

・リングイーネ:断面が、短径1mm、長径3mmほどの楕円形
もちもちした食感で、ソースがよく絡む。

・タリアテッレ(フェットチーネ):幅4〜8mm前後の平打ちパスタ
北部ではタリアテッレ、南部ではフェットチーネと呼ばれる。
ホウレン草などの野菜を練り込んだものも。

・パッパルデッレ:幅10〜30mmの平打ちパスタ
「食いしん坊」を意味するイタリア語が語源。
【ショートパスタ】
・ペンネ
先が尖った円筒形で、「ペン先」が語源。
トマトソースと相性が良い。
表面に波状の筋が入ったものはペンネリガーテと呼ばれる。

・フジッリ
らせん状にねじれた形状。
ソースが絡みやすく、グラタンやサラダなどにも使われる。

・マッケローニ
日本ではマカロニでおなじみ。
直径3〜5mmの円筒形。
「素晴らしい」が語源。

・リガトーニ
直径8〜15mmの円筒形。
「線を引く」が語源。
表面に波状の筋が入っていて、もちもちした食感。

・ファルファッレ
真ん中をつまんだリボンのような形状。
「蝶」が語源。
サラダやスープの具材に使われる。

・コンキリエ
巻貝のような形状。
「貝」が語源。
大型のものはコンキリオーニといい、中に具材を入れることも。

・オレキエッテ
丸い生地を親指の腹で押してくぼみをつくった、ドーム型の形状。
「赤ちゃんの耳」が語源。

【その他】
・ラザニア
板状の平打ちパスタ。
ゆでたラザニアにホワイトソースとミートソースを重ね、チーズをのせてオーブンで焼き上げる調理法が一般的。

・ニョッキ
小麦粉にジャガイモ、ホウレン草、カボチャなどを混ぜてつくる団子状のパスタ。
ショートパスタの元祖とも言われている。

・ラビオリ
小さな袋状の生パスタで、中に肉や野菜、チーズなどの具材が入っており、ゆでたものにバターやハーブをからめる、ソースをかけてオーブンで焼く、などの調理法がある。

<参考サイト>
・パスタの種類を解説!特徴に合わせたおすすめレシピもご紹介
https://www.kurashiru.com/articles/c9a1a093-9680-4ef2-9023-6e2a7862d8ef#183782
③ パスタの起源は古代ローマのおかゆ?
パスタの起源については、主に2つの説があるそうです。
1つは、紀元前4世紀のヨーロッパ。
エトルリア人の遺跡からパスタをつくる道具が出土しています。
古代ローマのパスタは、焼いたり揚げたりして食べられていたようです。
また、小麦やキビなどの穀物を粗挽きにして煮込んだ「プルス」というおかゆのような食べ物が元祖とも言われています。
これを板状に伸ばして焼いたものが、ピッツァやラザニアの原型に近いとのこと。
もう1つの説は、1500年前に麺類の始まりとされた中国の「湯餅(たんぴん)」が、マルコ・ポーロによってイタリアに伝えられたというものです。
中世になると、パスタをスープに入れたり、ゆでてソースと和えたりしていたと考えられ、15世紀にはスパゲティの元祖ともいえる棒状の乾燥パスタがつくられるようになったそうです。
16世紀に押し出し製法の圧力機が発明され、量産が可能になったことで、飢饉に備える非常食として富裕層以外にも広まりました。
また、大航海時代に新大陸から持ち込まれたトマトが17世紀頃からナポリ地方を中心に食用として栽培が盛んになり、パスタとトマトの組み合わせが広く普及したそうです。
1770年代、それまで手づかみで食べる庶民の食べ物だったスパゲティを、ナポリ国王のフェルディナンド2世が宮廷で食べるために考案されたのが、先が4本に分かれたフォークと言われています。
18世紀後半には産業革命により、パスタ製造の機械化が急速に進みました。
日本に初めてパスタが持ち込まれたのは、幕末の横浜の外国人居留地だったと言われています。
国内で作られたのは明治16年(1883年)頃、フランス人宣教師が長崎にマカロニ工場をつくったのが最初だそうです。
パスタが一般化したのは昭和30年(1955年)以降、イタリアから本格的製造機が輸入されてからのこと。
その頃は複数の小麦粉をブレンドして日本人の好みに合わせていたそうです。
昭和61年(1986年)頃から、デュラムセモリナ100%の国産パスタが家庭にも浸透していきました。
メニューの変遷としては、戦後、ミートソーススパゲティやナポリタンがデパートの食堂や喫茶店で定番となり、1970年代にはファミリーレストランのメニューとしても登場。
1980年代には本格的なイタリアンレストランが開業され、1990年代には「イタめし」がブームとなり、パスタの存在感が拡大してきたということです。

<参考サイト>
・起源は紀元前4世紀!?知られざるパスタの歴史
https://food-drink.pintoru.com/pasta/history-of-pasta/
・【知っておきたい食の豆知識】パスタの歴史と種類について
https://cuisine-kingdom.com/historyofpasta/
④ パスタとソースの組み合わせは無限!?
パスタをゆでる時は、水に対して1%の塩を入れます。
下味をつけてソースとの味なじみを良くする、パスタを引き締めてコシを出す、デンプンの糊化を遅らせて表面がぬるぬるするのを防ぐ、などの役割があるそうです。
ゆで加減は「アルデンテ」がベストとされています。
アルデンテとはイタリア語で「歯ごたえのある」という意味で、少し歯ごたえが残る程度のゆで加減ということ。
一般的に「髪の毛1本分の芯が残る程度」などと言われます。
表示されているゆで時間より少し早めに1本引き上げて、硬さを確かめるとよいようです。
アルデンテでゆで上げ、ソースと和えたり炒めたりすることで、食べる時にちょうど良い硬さになるそうです。
冷製パスタの場合は、表示時間より少し長めにゆでて、氷水で急速に冷やしてパスタをしめると歯ごたえが良くなります。
ゆで上がったパスタはソースと組み合わせて食べられます。主なソースの種類とその特徴などをご紹介します。
【トマト】
トマトの酸味や甘み、旨みを生かしたソース。
トマトを煮詰めることで酸味が程よく飛び、濃厚な味わいが引き出される。
「ポモドーロ」や、辛い「アラビアータ」、魚介類を使った「ペスカトーレ」や「マリナーラ」、アサリを使った「ボンゴレ・ロッソ」など。
【オイル】
オリーブオイルをメインに、ニンニクや唐辛子を合わせたシンプルなソース。
素材そのものの味や香りをダイレクトに味わえる。
「ペペロンチーノ」や、アサリの「ボンゴレ・ビアンコ」など。
【クリーム】
バター、生クリーム、牛乳を使用したまろやかなソース。
平打ちパスタのフェットチーネと相性が良いとされる。
キノコとベーコンの「ポルチーニクリーム」や、トマトソースと合わせた「トマトクリーム」など。
【バジル】
イタリア料理で定番のハーブであるバジルの葉をペースト状にしたソース。
バジルの香りが独特の味わいを生む。
「ジェノベーゼ」など。
【ミート】
ひき肉と細かく刻んだタマネギなどをトマトで煮込み、ウスターソースやケチャップ、砂糖などで甘く味付けした、アメリカ発祥のソース。
ワインで具材を煮込んだ「ボロネーゼ」など。
【チーズ】
チーズを溶かし込んだソース。
濃厚なチーズの旨みをパスタに絡めて楽しめる。
ベーコン、卵、チーズにコショウをきかせた「カルボナーラ」、4種類のチーズを組み合わせた「クアットロ・フォルマッジョ」など。
【和風・その他】
醬油や麺つゆ、納豆、梅、キノコなどを使った日本独自のソースや、大葉やネギ、海苔などのトッピング、日本発祥のメニューも。
「たらこパスタ」はたらこをそのまま、もしくは生クリームやバターと絡める。
「ナポリタン」は、タマネギやピーマンを炒め、ケチャップを絡めてつくる。
パスタとソースの相性については、細いものや小さいもの、表面に凹凸があるものはソースが絡みやすいので、オイルなど軽いソースと合います。
逆に、太いものや大きいもの、表面がつるつるしているものは、ミートやチーズなど濃厚なソースと合わせるのが基本だそうです。

<参考サイト>
・パスタをゆでるときに塩を入れるのはなぜ?適切な分量も解説
https://delishkitchen.tv/articles/760
・全部知ってる?パスタソースの種類と特徴一覧
https://food-drink.pintoru.com/pasta/type-of-pasta-sauce/
・パスタソースの種類と特長を解説!あなたはいくつ知っている?
https://nishikiya-shop.com/column/220
⑤ 所変われば料理も変わる!パスタ入りスープ
日本には、ソースがサラッとしたスープ状の「スープパスタ」があり、パスタ料理のひとつとして認識されています。
イタリアにはスープにパスタを入れた料理がありますが、それはあくまでもスープという位置づけなのだそうです。
イタリアのスープには「ズッパ」と「ミネストラ」というものがあり、どちらも野菜たっぷりのスープです。
これらを明確に区別することはイタリア人でも難しいようですが、「ズッパ」はパンが添えられたり具として入っていたりするもの。
「ミネストラ」は、パスタやお米が入ったスープを指す言葉のようです。
日本では「ミネストローネ」という言葉をよく聞きますが、こちらはジャガイモや豆類が入っているスープで、イタリアではあまり聞かれない言葉とのこと。
他に「ミネストリーナ」というものもあり、これはブロードというだし汁に小さいパスタが入っているシンプルなスープで、おかゆや雑炊のように体調の悪い時などに食べられるものだそうです。

<参考サイト>
・イタリア版おかゆ?パスタ入りスープ!ミネストリーナ
https://itagiappo.com/minestrina-27
・おすすめレシピ付き!イタリアの食べるスープ「ズッパ」とは?
https://tabicoffret.com/article/78691/#1.2
・ズッパとミネストラ
http://blog.tre-panche.ciao.jp/?eid=272
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
後味すっきり、夏に食べたいレモン風味の手延べ素麺です。
実は9月30日までの期間限定素麺ですので、この機会にぜひお求めください。
レモン素麺には、瀬戸内レモンの果皮粉末を練り込み、ふわっとレモンの香りを楽しめる素麺に仕上げています。
手延べ製法ならではのツルツル感と、すっきりとした味わいで、暑い夏でもどんどん箸が進むお素麺になっております。
レモンの果実は、果皮に香りが、果汁に酸味が含まれています。
めんつゆに果汁を加えることで酸味をプラス。
さらにレモン感あふれる素麺をお楽しみいただけます。
夏の思い出の〆に手延べレモン素麺はいかがでしょうか。
写真は、塩焼きそば風レモン素麺です。

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べレモン素麺》 https://141seimen.thebase.in/items/62424747
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.19
メンコレ②/魚介を練り込んだ素麺の旨さの魅力
8月2日〜4日に東京国際展示場で開催された「和麺産業展」に行ってまいりました。
既存の麺の進化形はもちろん、弊社も参考になるようなさまざまな食材を練り込んだ麺などを拝見しお話を伺いました。
驚いたのは、製麺所・製麺会社が新麺を開発しているだけでなく、異業種からの参入が多いことでした。
原料の輸入会社さんが乾麺をつくられたり、医療器販売会社さんが地域の健康に繋がる製品を開発したいと米粉麺をつくられたりと、そのチャレンジ精神はとても勉強になりました。
中でも、原料メーカーさんでは、その原料を活かせる場として乾麺をつくられている(製造委託)ということで話が弾み、弊社にも依頼があるなど思ってもみない収穫もありました。
食材を練り込んだ麺は、手延べ製法でも色々あると思いますが弊社でも独自の製法を開発しています。
新しい麺開発に色々な方々と取り組んで新しい方向性に繋がれば嬉しく思います。
さて今回のブログでは、「Vol.17 メンコレ①/海藻を練り込んだ素麺の新しい価値」に引き続き、生地に食材を練り込んだ素麺について調べてみました。
テーマは、「魚介を練り込んだ素麺」です。
魚介そのものは素麺に合わせる具材として相性が良く、「鯛そうめん」や「サバそうめん」など、各地の郷土料理にもなっていますね。
つゆやだしの原料にも使われることから素麵との関連性は深いものがあります。
また、素麵自体はシンプルな味わいで、つゆやだしの美味しさに大きく左右されますから切っても切れない関係ですね。
今回は、素麺自体に魚介を練り込むという、ちょっと珍しい麺について深掘りしてみました。
素麺自体に魚介を練り込むことで麺自体からだしが出るので、より旨みが増すようですし、小麦粉や胡麻油の芳ばしさの風味だけでなく、魚介と合わせた旨い麺づくりに繋がれば。
小豆島も海に囲まれ海産物の活用は比較的取り入れやすいと思うので、素麵として新しい方向性のひとつかなと注目しております。
ブログを進めるにあたって色々調べてみたのですが、5種類の素麺が特徴的かなと思ったのでブログでご紹介させていただきます。
もちろん他にもあるかもしれませんが、今回はこれらの素麺について、開発の経緯や製法など分かる限りでまとめてみました。
またお付き合いの程、よろしくお願いいたします。
※以下にご紹介する素麺は、2023年8月15日現在の当社調べになります。
ご紹介した地域以外でも同様の商品を扱っておられるかもしれませんのでご了承ください。
また、これ以外にもこんな食材を練り込んだ素麺がある、という情報をお持ちの方は、ぜひお知らせください。

【目次】
① イカスミを練り込んだ「漆黒の素麺」
② 岩手に春を告げるイサダを練り込んだ「ピンク色の素麵」
③ ウニの風味と旨みが味わえる「黄色の素麺」
④ ウナギの白焼きを練り込んだ「滋味深い素麺」
⑤ おめでたい贈答品にピッタリの鯛を練り込んだ「めでタイ素麵」
⑥ 《美味しい素麺》新しい麺へのチャレンジ(試作) 編
① イカスミを練り込んだ「漆黒の素麺」
長崎県島原の手延べ素麺に、特殊製法でイカスミを練り込んだ麺があります。
手延べならではのコシの強さと、なめらかな口当たりが特徴。
口の周りや歯が黒くなってしまうことなく、イカスミの風味を満喫できます。
和風だけでなく中華風や洋風にアレンジするなど、パスタ感覚で楽しめるそうです。
実際に南島原で食べてみましたが、手延べ独特のツルツルッとした食感はそのままに、旨みを感じた記憶があります。
ただ、真っ黒な麺が出てきたときは衝撃を受けましたが…。
こちらの商品開発のきっかけは、高知県産の魚介類を一次加工し販売している企業に、長崎県の製麺工場から電話がかかってきたことだそうです。
長崎の素麺と高知のイカスミのコラボ商品といったところでしょうか。
イカスミはパスタやパエリヤなどでも活用され美味しさは証明されていますよね。
イカスミはイカが敵から逃げる時に吐き出す墨で、タウリンという旨味成分が豊富に含まれており、まろやかなコクと甘みがあります。
ペプチドグリカンという成分に、免疫力を高めてくれる働きがあると期待されています。
また色素成分のメラニンには、花粉症や食物アレルギーを引き起こす細胞の活性化を抑える作用があるという研究結果も。
そのほか、細菌の増殖を抑える、肌の水分量や弾力を維持する、などの働きも注目されるそうですよ。
また、沖縄には、沖縄県産モズクとイカスミを練り込んだ素麺があり、モズクの加工・販売を手掛ける企業が販売されています。

<参考サイト>
・濃厚な「イカスミ」にはどんな栄養がある?効果効能やおすすめレシピを紹介【管理栄養士解説】
https://macaro-ni.jp/111284
・島原そうめん イカスミ 練り込み
https://item.rakuten.co.jp/ko-yo-/1602834/
・興洋フリーズ株式会社
https://www.ko-yo-freeze.co.jp/
・モズク入りイカスミそうめん
http://www.mo19.com/shopping/2009/04/post_15.html
② 岩手に春を告げるイサダを練り込んだ「ピンク色の素麵」
イサダ漁の解禁は、三陸に春の訪れを告げる風物詩。
イサダは、岩手県が水揚げ量日本一を誇るオキアミの一種で、ピンク色の小さなエビのような形をしています。
その乾燥粉末を生地に練り込んだのが、「古館製麺」さんの「三陸イサダそうめん」。
「平成30年度岩手県水産加工品コンクール」において最高賞である「農林水産大臣賞」を受賞されています。
原材料には、有機JAS認定岩手県産ナンブコムギの小麦粉を100%使用。
食塩は震災の津波で一度は生産が途絶えましたが新たに「薪釜直煮製法」として復活を遂げた岩手県野田村の「のだ塩」だけを使用されているとのこと。
エビのような風味の、桜色の素麺で、冷やしても温めてもおいしいと評判です。
イサダは主に、釣りの巻き餌や養殖魚の餌として使われてきましたが、傷みやすいので食用としての有効利用が進んでいなかったそうです。
しかしながら近年は、EPAやDHA、アスタキサンチンなどの栄養を豊富に含み中性脂肪の蓄積を予防するとして注目されています。
イサダを使いやすい乾燥粉末にすることで、酸化が抑えられ冷蔵保存することが可能になったそうです。

※写真はイメージです。写真はPhoto AC「オキアミ」より
<参考サイト>
・e地産地消 イサダ
https://www.ehealthyrecipe.com/meal/chisan_chisho/detail.php?szid=2104
・イサダ(ツノナシオキアミ)いわて食財図鑑
https://www.iwate-syokuzaiclub.com/shokuzai/data.php?n=217
・《こぼれ話23》イサダから健康によいパウダー
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/138907.html
・平成30年度復興シーフードショーIWATEを開催しました!(県水産加工品コンクール結果発表)
https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/suisan/suisanbutsu/suisan/1017987.html
・古舘製麺所「三陸イサダそうめん」が「農林水産大臣賞」を受賞しました
http://hattouya.com/2019/02/02/525/
・古舘製麺所 三陸イサダそうめん
https://hattouya.shop-pro.jp/?pid=113515928
③ ウニの風味と旨みが味わえる「黄色の素麺」
長崎県島原の「野内製麺」さんがつくっておられるのが、壱岐市から取り寄せたバフンウニを何度もこしながら生地に練り込んだ素麺。
黄色がかった美しい色の、ウニ特有の豊かな風味と旨みが味わえる手延べ麺だそうです。
驚いたのは「麺の中に練りウニを練り込むことで豊かな風味と旨みが味わえます。」ということで、粉末化などせず練りウニを練り込んでいるとのことですからちょっと想像がつきません。
乾麺にするから乾燥するからといっても常温以下の乾燥温度ですから、このお素麺はとても興味深いです。
乾燥粉末にせず練り込むことができるなら、食材の旨味や栄養価をそのまま取り入れることができると思うので、健康麺を考える石井製麺所ではとても参考にしたい素麵です。
ウニに含まれる栄養価には、抗酸化作用のあるビタミンEが豊富に含まれており、生活習慣病の予防や、血行を良くするなどの働きがあると言われます。
またカロテンやビタミンB群、アミノ酸なども豊富に含まれています。

※写真はイメージです。写真はPhoto AC「バフンウニ」より
<参考サイト>
・野内製麺 手延べ ウニそうめん
https://nouchi-seimen.ocnk.net/product/15
・ふるさとチョイス 手延べウニそうめん
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/42214/5534373
・ウニ/海胆/海栗/雲丹/うにの栄養価と効用
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fish/uni3.htm#google_vignette
④ ウナギの白焼きを練り込んだ「滋味深い素麺」
熊本市の南東に位置する甲佐町の、白旗町のふもとにある養殖場で育てたウナギを練り込んだ素麺があります。
きれいな水と豊かな自然環境の中、循環式水質浄化システムを採用した完全屋内型施設で丁寧に育てられたウナギは、肉厚で脂がほどよくのり、繊細でやわらかく弾力のある肉質が特徴とのこと。
養鰻場を営む企業が地元の製麺会社である「肥後そう川」さんとコラボし、熊本県産の小麦粉を使った生地にウナギの白焼きを練り込んだ素麺が生まれました。
モチモチとした食感でのど越しがよいそうです。
ウナギといえば滋養強壮に良い食べ物というイメージがあり、その栄養価の高さは有名ですよね。
不飽和脂肪酸のDHAやEPA、カルシウム、ビタミンA・B1・D・E、タンパク質、コラーゲンなどが豊富に含まれており、動脈硬化や高血圧の予防、目の健康維持、疲労回復などの働きが期待できます。
この素麵の他にも「肥後そう川」さんは、特産品を活かしたオリジナルの手延べ麺の開発などを数多く手がけておられるようです。
企業姿勢としてとても勉強になりました。

※写真はイメージです。写真はPhoto AC「生鰻」より
<参考サイト>
・鰻の白焼きを練り込んだ うなぎ 手延べ麺
https://item.rakuten.co.jp/aomikan/10000969/
・うなぎ 手延べ麺 熊本産うなぎを練りこみました
https://gurusuguri.com/shop/z591800/gurusuguri_06/
・鰻屋 源八郎
https://gurusuguri.com/shop/z591800/
・商品開発 肥後そう川
https://www.sougawa.com/private-brand/
・うなぎに含まれる栄養と効果・効能|うなぎを使ったレシピを紹介
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/30617
⑤ おめでたい贈答品にピッタリの鯛を練り込んだ「めでタイ素麵」
縁起物の代表格であるタイを練り込んだおめでたい素麺が、ざっと調べただけでも3つの地域でつくられています。
面白いのは、練り込むタイの状態が三者三様なことです。
宮崎県宮崎市の「清家商会」さんがつくっておられる「たいめん」は、九州産小麦を100%使用した生地に、タイのエキスと満潮の塩を練り込んだ素麺。
煮込むと、タイの旨みと塩の甘みが上質のだしとして溶け出すそうです。
福岡県福津市の地域商社である「福津いいざい」さんの素麺は「めんたい」。
玄界灘産の天然鯛の骨と皮をじっくり乾燥させて粉末にし、練り込んだ素麺です。
贅沢なのど越しとタイの濃厚な旨みが凝縮されているとのこと。
骨と皮を使うことでフードロス削減にも取り組み、環境にやさしい商品づくりをされています。
小豆島の「岡上食品」さんでは、生地を練る際にタイのだしを合わせ、コシと風味を活かした素麺に仕上げておられます。
小豆島に居ながら存じ上げませんでした。
ぜひ一度、タイを使った素麵の開発含め、素麺づくりについてお話を伺ってみたいと思います。

※写真はイメージです。写真はPhoto AC「新鮮な鯛の氷漬け」より
<参考サイト>
・たいめん
http://seikeshokai.kokage.cc/web-content/taihot.html
・ふるさとチョイス 福津発祥そうめん『めんたい』
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/40224/5807301?query_id
・瀬戸内 鯛そうめん 2個セット
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/37322/5379828
⑥ 《美味しい素麺》新しい麺へのチャレンジ(試作) 編
実は、何度か小豆島産や他の地域も含めて海産物を利用した新麺開発にチャレンジしたことがあります。
正直…。
とっても美味しくできました!
しかしながら、原料の安定供給が難しいものや原価の高いものがあり、現段階ではペンディング中のものもありますが、試作は済んでいるので上手くいけばぜひ販売をしていきたいと考えています。
熊本の「肥後そう川」さんのように、地域に役立つ商品開発や、素晴らしい食材をお持ちの方々とコラボ商品などどんどん進めて行きたいと思います。
ぜひ今後も石井製麺所の手延べ麺にご期待ください。

※写真は(有)石井製麺所「X」の投稿より
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.18
麺究者への道/冷麺を研究してみる
暑さの厳しい夏に食べたくなるのが、冷たく冷やした麺料理。
もちろん素麺(ひやむぎ)もそうですが、そばやうどん、そしてちょっと別格?なのが「冷麺」ではないでしょうか?
「冷麺」もその名の通り冷たい麺ですが、もともとは冬に食べられていたそうですよ。
ところで、「冷麺」って、人によってイメージするもの変わりませんか?
先日も知人と「冷麺」について話していましたが、どうも話がかみ合わないので、具材や食べ方を聞くと「冷麺」と「冷やし中華」の違いでした。
あと、中華料理店に行って「冷麺」と書いているので注文したら「冷やし中華」が出てきた…なんてことありませんか?
これは僕の間違った認識なのかも知れませんが、そのような勘違い(?)って素麺では無いような気がします。
「冷麺」の発祥の地は韓国だそうですが、そこから伝わった日本や中国、それぞれの地で独自の進化を遂げたようです。
そのひとつが冷麺と混同されがちな「冷やし中華」で、中華と名が付くものの実は日本発祥の料理なんだそうです。
前回は「ラーメン」の研究として深掘りしてみましたが、今回は、素麺同様、夏の風物詩ともいえる「冷麺」の日本と韓国、中国の冷麺事情や、冷やし中華をはじめとする冷やし麺などについて調べてみました。。
お付き合いの程よろしくお願いいたします。

【目次】
① 冷麺のルーツは朝鮮半島、日本に来たのは昭和初期
② 日本の二大ご当地冷麺「盛岡冷麺」「別府冷麺」
③ 冷やし中華=冷麺!? 日本生まれの冷やし麺
④ 暑い夏を乗り切るために考え出された、数々の冷やし麺料理たち
⑤ 本場韓国の冷麺の食べ方と、地域ごとの違い
⑥ 中国に伝わった冷麺と、中国で食べられている冷やし麺
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べ黒ごま麺 編
① 冷麺のルーツは朝鮮半島、日本に来たのは昭和初期
冷麺は、現在の北朝鮮の平壌(ピョンヤン)と咸鏡南道咸興(ハムギョンナムドハムン)に起源があると言われています。
1849年に書かれた「東国歳時記」という書物によると、「そば粉を使った麵に、大根や白菜のキムチと豚肉をのせた料理」と紹介されているそうです。
この頃使われていたキムチは、現在のような辛いものではなく、唐辛子を使わずつくられる「水キムチ」という辛くないキムチだったと考えられています。
新暦の12月にあたる11月の季節料理として紹介されており、寒い冬に、床暖房でやや暑くなりがちなオンドル部屋の中で食べる料理だったそうです。
1950年、朝鮮戦争が勃発した際に、南に逃れた北側出身者を通じて、韓国に本格的に普及したと言われています。
麺のつくり方は、主原料であるそば粉とつなぎのデンプンや小麦粉を混ぜて練り、穴の開いたシリンダー状の容器で押し出し、そのまま熱湯に入れて茹で、すぐに冷水でしめます。
日本で朝鮮半島式の冷麺を提供する現存最古の店が、神戸市長田にあります。
1939年(昭和14年)、日本の統治下にあった平壌の出身者が開業した「元祖 平壌冷麺屋」です。
現在、日本では多くの韓国料理店や焼肉店で、日本人の口に合うようアレンジされた冷麺が定番メニューとして提供されています。
※上記は独自調べです。諸説あるものや、「うちが元祖!」ということもあるかと思いますがご容赦ください。

<参考サイト>
・Wikipedia「冷麺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E9%BA%BA#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%86%B7%E9%BA%BA
・冷麺は冬の食べ物だった 冷麺の歴史と起源
http://www.in-ava.com/reimen.html
・韓国冷麺の特徴とは?さっぱりおいしいアレンジレシピもご紹介!
https://www.kurashiru.com/articles/cd254390-35f8-4647-aef1-19d078cf8e46
・【2021年版】「冷麺」の歴史からアレンジレシピまでこれを読めばすべてわかる!
https://heijoen.co.jp/channel/165/
② 日本の二大ご当地冷麺「盛岡冷麺」「別府冷麺」
日本で広まった冷麺が各地で発展を遂げ、地元の名物グルメになっている代表的な例を2つ、調べてみました。
【盛岡冷麺】(岩手県)
1954年(昭和29年)、咸興(ハムン)出身の在日朝鮮人1世の方が開業した「食道園」が発祥とされています。
故郷の味を再現しようと、高麗キジのだし汁に似た牛スープに、酸味と辛みのあるキムチを組み合わせたことで、独自の味とスタイルを完成させたそうです。

<麺>
小麦粉を主材料とする透明感のある太麺で、コシが強く、表面はツルッとのどごしが良いのが特徴です。
当初は麺が噛み切れないなどと酷評されたそうですが、次第にやみつきになる人が増え、評判を呼びました。
<スープ>
牛骨に鶏ガラを加えた、コクや旨みがたっぷりのだし。
冷たくすることで、麺のコシの強さをより味わえるそうです。
<具>
キャベツと大根のキムチ、牛肉のチャーシュー、ゆで卵、三杯酢漬けのきゅうりなど、麺やスープとの相性が良いものをそろえています。
中でもキムチは、爽やかな酸味や辛み、シャキシャキ食感で、スープのコクを引き立てます。
キムチの量によって、冷麺全体の辛さ調整ができるとのことです。
「盛岡冷麺」というブランド名は、1987年(昭和62年)に「ぴょんぴょん舎」を開業した在日2世の方が確立させたそうです。
盛岡冷麺の生麺は、「さぬきうどん」などとともに、公正取引委員会から「特産」「名産」などの表示に基準が設けられた10品目の一つとなっています。
※公正取引委員会が承認した、「名産」「特産」「本場」「名物」などの表示ができる基準(生産地や原料、加水量、製法など)を設けた麺類10品目は、以下の通りです。
「札幌ラーメン」「盛岡冷めん」「甲州ほうとう」「信州そば」「名古屋きしめん」「出雲そば」「さぬきうどん」「長崎チャンポン」「長崎炒麺」「沖縄そば」
盛岡市では、焼肉店は焼肉を食べる店というよりも盛岡冷麺を食べる店として位置づけられているそうです。
焼肉店以外の飲食店でも提供されたり、スーパーで家庭用冷麺が多く販売されたりしています。
盛岡冷麺は、わんこそば・じゃじゃ麺とともに「盛岡三大麺」として、観光客からも人気を集めているそうです。
【別府冷麺】(大分県)
1950年(昭和25年)頃、中国東北部(旧満州)からの引揚者が開業した「食堂アリラン」が発祥とされています。
旧満州は朝鮮との国境が近く、朝鮮系の民族も多いため朝鮮の食文化が浸透していたそうです。
別府冷麺の特長は、魚介をベースとした和風だしのスープです。

<麺>
原料は、小麦粉、そば粉、でんぷんなど。
冷麺専門店では太めでもちもちした弾力のある麺が、焼き肉店ではつるつるしてのどごしの良い中細麺が提供されることが多いようです。
<スープ>
スープは、昆布やカツオだしなどの魚介をベースとした、あっさりした和風だし。
当初は肉系のスープでしたが、海の幸に恵まれた別府ならではの味わいとして和風だしに変更したところ、好評を集めたとのこと。
<具>
牛肉などのチャーシュー、キムチなど。専門店ではキャベツ、焼肉店では白菜のキムチを使うことが多いそうです。
食堂やラーメン店、居酒屋などでも、金属製の器ではなくラーメン用の丼鉢などに盛りつけられて提供されています。
別府冷麺は食事としても、お酒を飲んだ後のしめにも食べられており、夏だけではなく冬にもよく食べられているそうです。
※上記は独自調べです。諸説あるものや、「うちが元祖!」ということもあるかと思いますがご容赦ください。
<参考サイト>
・全国製麺協同組合連合会 公正取引委員会承認10品目
https://zenmenren.or.jp/meisan/shonin/index.html
・生めん類の表示に関する公正競争規約
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/noodles.pdf
・昆布だしにキャベツキムチ 湯の町に根付いた別府冷麺
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO45154270T20C19A5KNTP00/
・大分の郷土料理と謎のとり天せんべいの秘密 別府冷麺
http://www.takarabussan.com/toritenbus/single5.html
・大分 別府冷麺
https://www.kirishima.co.jp/aji/2011/summer/35/
③ 冷やし中華=冷麺!? 日本生まれの冷やし麺
「冷麺」という言葉は、西日本ではいわゆる「冷やし中華」を指すことがあるそうです。
<広島県呉市「呉冷麺」>
広島県呉市のご当地グルメ「呉冷麺」は平打ちの中華麺を使っており、チャーシューやキュウリ、ゆで卵、エビなどをのせたもの。
スープは唐辛子の辛みやごまの旨みをきかせた鶏ガラベースで、独特な味わいだそうです。
老舗ラーメン店「珍来軒」が、夏場の売り上げ不振を解消するために考案したメニューで、今では季節を問わず人気なんだとか。
<京都「冷麺」>
京都では、1939年(昭和14年)創業の「中華のサカイ」で、独自製法でつくった中華麺に焼き豚やキュウリなどをのせ、濃厚なごまだれをかけた料理を「冷麺」として提供していたそうです。
このことから、特に関西では「冷やし中華」よりも「冷麺」という言葉が定着したと考えられます。
<北海道「冷やしラーメン」>
北海道では、「冷やし中華」は「冷やしラーメン」とも呼ばれるそうです。
山形発祥の「冷やしラーメン」とは全く異なるものです。
いわゆる「冷やし中華」と呼ばれる料理は、ゆでて冷水で冷やした中華麺を、深めの皿全体に平たく盛り、その上に細切りにした具材を乗せるのが一般的です。
よく使われる具材は、ハムやチャーシュー、蒸し鶏などの肉類と、錦糸卵、キュウリやトマトなどの夏野菜。
これらを細長く切り、中心から放射線状に彩りよく盛りつけます。
たれは醤油ベースとごまベースの2種類がポピュラーで、具材の上からたっぷりかけます。
<冷やし中華の発祥>
冷やし中華の発祥については諸説あるようですが、日本生まれの料理と言って良いようです。
有力とされる2つの説を調べてみました。
① 1937年(昭和12年)、仙台の「中国料理 龍亭」の店主が考案したという説
熱い料理が多い中華料理の、夏場の売り上げを上げるため、また仙台の七夕の季節に観光客にアピールするご当地メニューを話し合う中で考案されたと言われています。
冷たい中華麺の上にのせた具は、ゆでたキャベツ、塩もみしたキュウリ、スライスした人参、チャーシュー、トマト。たれは醤油に酢を加えたもので、現在のベースとなっています。
中国料理である「涼拌麺(りゃんばんめん)」(もやしと細切りの肉を冷たい麺にのせ、ゴマ味のたれをかける料理)の名で提供され、高額ながら人気メニューだったそうです。
② 1933年(昭和8年)、東京神田神保町にある「揚子江菜館」の店主が「涼拌麺」とざるそばにヒントを得て創作したという説
「五色涼拌麺」(五目冷やしそば)というメニューで現在も提供されているそうです。
細く切った具を放射状に盛り付ける現在のスタイルの原型と考えられています。
この形は、富士山とそこに積もる雪をイメージしているそうです。たれは黒酢を使った独特な味わいです。

<参考サイト>
・シンプルだけど独特!呉市のご当地グルメ【呉冷麺】のおすすめ店6選
https://icotto.jp/presses/13358
・Wikipedia「冷やし中華」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E3%82%84%E3%81%97%E4%B8%AD%E8%8F%AF
・冷やし中華、冷やしラーメン、冷麺。あなたの地方では何と呼ぶ?
https://tenki.jp/suppl/romisan/2018/06/13/28189.html
・呼び方違うの?冷やし中華と冷麺の違い|関西人が間違えてしまう理由とは
https://mlb-nff-nba.com/%E5%86%B7%E3%82%84%E3%81%97%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E3%81%A8%E5%86%B7%E9%BA%BA%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%EF%BD%9C%E9%96%A2%E8%A5%BF%E4%BA%BA%E3%81%8C%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%97%E3%81%BE/
・夏の大定番!冷やし中華の知られざる発祥のいきさつを徹底紹介
https://jp.pokke.in/blog/7328/
・冷やし中華とは中国から伝わった料理?
https://sozairyoku.jp/%E5%86%B7%E3%82%84%E3%81%97%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%8B%E3%82%89%E4%BC%9D%E3%82%8F%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%96%99%E7%90%86%EF%BC%9F
④ 暑い夏を乗り切るために考え出された、数々の冷やし麺料理たち
暑い夏を乗り切るために考え出された知恵として、素麺、冷麺、冷やし中華をはじめ、ざるそばや冷やしうどんなどなど冷たい麺料理はたくさんあります。
そこで、ご当地グルメになっているものを中心に、いくつか詳細を調べてみました。
【冷やしラーメン】(山形県)
味も見た目も普通のラーメンのように、冷たいスープに冷たい中華麺が入っています。
氷を浮かべることも。

【冷やし辛麺】(宮崎県)
宮崎県のご当地グルメ「辛麺」を冷たくして食べる料理。
麺はそば粉と小麦粉を使用した、独特のコシのある麺。
スープには大量のニンニクと唐辛子が使われ、旨みと辛みが混在します。
具はニラ、ニンニク、卵、ひき肉など。
【冷やし担々麺】
担々麺は中国四川省発祥の、辛く味付けしたひき肉やザーサイ細切りなどをのせた麺料理。
本場では汁のない料理でしたが、日本で独自の進化を遂げ、多様なバリエーションが生まれています。
冷やし担々麺の発祥についても調べましたが、はっきりとは分かりませんでした。
今や大手食品メーカーから家庭用のチルド食品も出ており、冷やし中華のように市民権を得る日も近いのかもしれません。

【へぎそば】(新潟県)
魚沼地方発祥。
つなぎにフノリという海藻を使ったそばを、「へぎ(片木)」という器に少量ずつ盛り付けます。

【越前おろしそば】(福井県)
嶺北地方でよく食べられています。
大根おろしにだしを加えてつけ汁にしたり、大根おろしをのせてだしをかけたりと、食べ方はお店によって異なりますが、大根の辛みとそばの甘みがよく合います。

【水沢うどん】(群馬県)
日本三大うどんの一つで、太くてコシの強い手打ちうどん。
冷たいざるうどんを、しょうゆだれやごまだれなど豊富な種類のつけ汁で食します。

【きしころ】(愛知県)
名古屋名物のきしめんを「冷やし」または「常温」で食します。
幅の広いきしめんの上に、ホウレン草やカツオ節をのせます。
【おざら】(山梨県)
山梨の郷土料理であるほうとうの専門店で、夏の季節に好まれる料理。
ほうとうより細い麺をゆでて冷水でしめ、温かい醬油ベースのつゆに入れて食べます。
肉や旬の野菜、きのこなどの具を入れることも。
【冷やしカレーうどん】(京都府)
京都の暑い夏を乗り切るために考案されたとのこと。
京都市内の10店舗以上で提供されているそうです。

<参考サイト>
・【全国】夏には、暑さを吹き飛ばす冷たい麺が一番!おすすめご当地ひんやり麺10選
https://icotto.jp/presses/16830
・暑い夏の旅をもっと楽しく!夏に食べたいご当地の冷やし麺10選
https://www.nta.co.jp/media/tripa/articles/ZjVhE
・Wikipedia「冷やし麺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E3%82%84%E3%81%97%E9%BA%BA
・冷し辛麺 宮崎県発祥のご当地麺
https://www.otoshu.com/c/50/8500783
・辛麺【郷土料理ものがたり】
http://kyoudo-ryouri.com/food/2151.html
・Wikipedia「担担麺」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8B%85%E6%8B%85%E9%BA%BA#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%8B%85%E6%8B%85%E9%BA%BA
・農林水産省 うちの郷土料理「おざら」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ozara_yama_nashi.html
⑤ 本場韓国の冷麺の食べ方と、地域ごとの違い
韓国での冷麺に話を戻します。。。
韓国でも夏になると街の食堂に「冷麺開始」の文字が見かけられるそうですが、冷麺専門店では通年提供されています。
韓国式の冷麺は弾力があるので、ハサミで食べやすい長さに切ります。
お店によって、スタッフが切ってくれる場合と、客がセルフで切る場合があるそうです。
卓上にからしや酢などの調味料が置かれており、自分で味をととのえることができます。
冷麺と一緒に、牛骨を煮込んだやさしい味の「ユッス」という温かいスープが出てくるお店が多いそうです。
韓国の冷麺は、「水冷麺」と「ビビン冷麺」に大きく分けることができます。
「水冷麺」は平壌、「ビビン冷麺」は咸興が発祥です。
その他の地域の冷麺も含め、いくつか調べてみました。
【平壌の冷麺】
<麺>
麺にはそば粉と緑豆粉が使われており、太くて黒っぽく噛み切りやすいのが特徴。
<スープ>
スープは、牛肉や鶏肉、キジ肉などからとるやさしい味わいのだしに、辛くない水キムチを加えてさっぱりと仕立てます。
<具材>
冷水でしめた麺の上にゆで卵や大根、梨などの具材をのせます。
【咸興の冷麺】
<麺>
ジャガイモやトウモロコシなどのデンプンでつくったコシの強い麺で、細くて白っぽく嚙み切りにくいのが特徴。
<タレ(スープ)>
コチュジャンをベースとした辛口の赤いたれを麺に絡めます。
<具>
具は肉類やゆで卵、キュウリの千切りなどで、よくかき混ぜてから食べます。たれを絡めたエイなどの刺身をのせることもあるそうです。
【晋州の冷麺】
魚介だしのすっきりした味わいのスープが特徴。
そば粉が主原料の弾力ある太麺に、錦糸卵やキュウリ、梨、キムチのほか、牛肉のチヂミなどを細切りにして盛り付けるそうです。
【その他の冷麺】
原料にくず粉を使った冷麺もあります。
土茶色でほのかな香りのある独特の味わいだそうです。
生地に緑茶を混ぜ込んだ、緑がかった色の冷麺もあります。
地方によっては、どんぐり粉を練り込んだ麺もあるそうです。
【冷麺から派生した料理】
釜山のある慶尚南道地方では、小麦粉を使った麺「ミルミョン」が名物になっているそうです。
スープは野菜と肉のだしがベースで、豚肉をのせることが多いとのこと。
また、ファストフード店などで提供される、冷麺よりも太くて固い「チョルミョン」という麺料理があります。
千切り野菜やゆで卵と甘辛ソースを絡めて食べるそうです。

<参考サイト>
・冷麺
https://www.konest.com/contents/gourmet_guide_detail.html?sc=2169
・おうち韓食 冷麺
https://www.moranbong.co.jp/hanshoku/gourmet/detail/9160.html
・冷麺 / ネンミョン
https://www.seoulnavi.com/special/5037666
⑥ 中国に伝わった冷麺と、中国で食べられている冷やし麺
中国でも冷麺の食文化があります。
19世紀末に朝鮮族が中国東北部へ移住した際、冷麺も伝えられたとのこと。
朝鮮族では、旧正月の4日午後と誕生日に細長い冷麺を食べると長生きできるという言い伝えがあったそうです。
冷麺は今や中国の朝鮮族料理の代表的なメニューとなっており、東北地方の吉林省がルーツの「延吉冷麺」は、中国十大麺の一つに選ばれています。
牛肉や野菜のだしに漢方薬を加えたスープが特徴。
日本の冷やし中華の誕生に影響を与えた「涼拌麺」は上海料理と位置付けられていますが、夏を感じる麺料理として中国全土に浸透しているのが「涼皮(リャンピー)」。
屋台でも販売されるB級グルメの定番だそうです。
陕西(シャンシー)省発祥の平打ち麺で、小麦粉や米粉、デンプンなどでつくられます。
麺はゆでずに蒸して切るとのこと。
具は、千切りにしたキュウリやニンジン、ゆでたモヤシなど。
薬味に、パクチーや唐辛子、生姜、ニンニクなど。
醤油やラー油、お酢、胡麻ペースト、ピーナッツペーストなどを混ぜたたれをかけます。
トッピングや味付けのバリエーションが豊富な冷やし麺です。

※写真はphotoAC「中国北京の町並み(北京郵電大学)」より。写真はイメージです。
<参考サイト>
・冷麺は韓国や北朝鮮だけじゃない!知られざる延吉冷麺の世界を『千里香 上野店』で学んできた
https://80c.jp/restaurant/20220825-1.html
・日本の「冷やし中華」は中国人ウケしない…?「冷たい麺料理」不人気のワケ
https://gendai.media/articles/-/74173?page=2
・涼皮(リャンピー)は中国の冷やし中華的存在!?ピリ辛風味の冷やし麺が絶品の『MOOGA』
https://food-mania.jp/hiyashimen-mooga/
⑦ 《美味しい素麺》小豆島手延べ黒ごま麺 編
「黒」の食材にこだわった健康麺 〈楽々膳・黒〉シリーズの手延べ麺です。
石井製麺所の独自製法により、素材の良さをそのまま練り込みながら、手延べ麺ならではのツルツルシコシコした食感を味わっていただけます。
黒ごまは食物繊維や良質な必須脂肪酸、アントシアニン、セサミンなど健康成分を多く含みます。
その黒ごまを炒って粉末化したものを練り込むことで、より香りが際立つ手延べ麺に仕上がっています。
ごまの風味香る太麺仕上げのツルツル麺が、いろいろなスープやタレにもよく合います。
色々な具材を盛り付けて、冷麺のようなあっさりとした冷たいスープをかけて、ツルツルッと召し上がってみるのはいかがでしょうか。

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《小豆島手延べ黒ごま麺》 https://141seimen.thebase.in/items/69195918
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.17
メンコレ①/海藻を練り込んだ素麺の新しい価値
生地に食材を練り込んだ白色以外の素麺の魅力について、「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.11各地の特産品や健康への想いを練り込んだ素麺について」を書いたときに色々深く考えさせられました。
全国各地の生産者さんがそれぞれに試行錯誤を重ね、特産品や健康に良い食材などを使って、新しい付加価値を生み出しておられるのを垣間見たりすると私自身もウズウズしてきます。
ちょっとは素麺職人の面構えに(好奇心旺盛なだけですが)なってきたでしょうか。
また、最近は飲食店様や企業様から新しい素麺の開発のご相談などもいただけるようになりました。
素麺屋としては、「夏に美味しい素麺!」のご提供はもちろんですが、素麺会社として一年を通じて皆さまに選ばれる製品の開発がないと、小さな産地ではこれからの時代、より厳しくなっていくと考えています。
素麺屋として、職人として、三代目として日本三大素麺のひとつ「小豆島手延素麺」の根幹は大切にしつつ、その技術や経験を活かした新しい素麺開発をおこなっていきたいと思います。
そのための研究として様々な麺類・麺料理を研究し、今回のように素麺の新しい可能性を感じる素材のコラボ麺をつくっていきたいと考えます。
単純に小麦粉に素材の粉を混ぜるのでなく、食材の特性により、機能性が増したり、味わいがより深まることを期待しています。
なかでも海藻は、粉末にして練り込むことで、磯の風味が加わったり、独特の粘りが弾力を生んでのど越しが良くなったりといった相乗効果が得られます。
まずは今回、海藻の栄養価や歴史、海藻を練り込んだ素麺にはどんなものがあるか、などについて調べてみたいと思います。
月の後半のブログでは「麺究者の道」として様々な麺類・麺料理の研究を、月の前半は「メンコレ(麺コレクション)」として色々素麺にスポットを当ててみたいなと思っていますので、こちらもどうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。

干潮時に海の中に道が現れることで有名な小豆島のエンジェルロード。
ここは土庄町という、小豆島のもうひとつの町にあるのですが、この周りにもたくさんの海藻があるそうですよ。
小豆島も海苔の養殖が有名で、石井製麺所でも使用するひじきも収穫できます。
【目次】
① 海藻は大きく3つに分けられる
② 海藻にはさまざまな栄養成分が豊富に含まれる
③ 縄文人も食べていた?海藻の歴史
④ 各地でつくられている海藻練り込み素麺
⑤ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編
① 海藻は大きく3つに分けられる
海藻は、海の中に生える藻類です。茎・葉・根に分かれておらず、胞子によって繁殖することが特徴。
日本近海には1,500種以上の海藻が自生していると言われ、約50種類が食用とされているそうです。
海藻は大きく3種類に分類することができます。
【緑藻類】
アオサ、青のり、海ブドウなど。
陸上の植物と同じクロロフィルaという色素を持っています。
この色素は赤系と青系の光を吸収して光合成します。
残った緑色の光が吸収されず反射するため、緑色に見えるそうです。
緑藻の仲間が進化して陸上に進出したのが陸の植物だと考えられています。
【褐藻類】
ワカメ、昆布、メカブ、アカモク、ひじき、モズクなど。
クロロフィルa以外に、青緑色を吸収するフコキサンチンという色素を持っています。
緑色・橙色・黄色・赤色の光を吸収しないため、それらの色素が混ざり合って褐色に見えるそうです。
【紅藻類】
海苔、テングサ、フノリなど。
クロロフィルa以外に、緑色を吸収するフィコエリスリンという色素を持っています。
赤色の光を吸収できないため、赤色に見えるそうです。
海苔の仲間は、フィコシアニンという赤を吸収する色素も持っているため、黒っぽい色をしているそうです。

<参考サイト>
・同じ海藻でも色が違うのは、なぜなの?
https://www.kaneryo.co.jp/media/seaweed/928/
・ワカメ、昆布、メカブ、ヒジキの他に、食用の海藻はどんなものがありますか?
https://www.kaneryo.co.jp/media/seaweed/2171/
・海藻のはなし
http://kaisou.churashima.okinawa/distribute/index.html
② 海藻にはさまざまな栄養成分が豊富に含まれる
海藻には、鉄分やカルシウムなどのミネラルや、食物繊維などの栄養分が豊富に含まれており、生活習慣病の予防や、美容、ダイエットへの効果が期待されています。
主な栄養成分についてご紹介します。
【鉄分】
ひじき、海苔、昆布、ワカメなどに多く含まれます。
鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、体じゅうに酸素を届ける役割をしています。
不足すると貧血などにより、めまいや立ちくらみ、息切れなどの症状を引き起こす可能性があるそうです。
【マグネシウム】
ひじき、メカブ、モズクなどに多く含まれます。
骨や歯の成長を促進したり、強く保ったりする働きがあります。
神経情報の伝達や、血管の柔軟性を保つ役割もあるとのこと。
【カルシウム】
ひじき、海苔、昆布、ワカメ、アオサなどに多く含まれます。
牛乳よりも多くカルシウムを含む海藻もたくさんあります。
骨や歯を丈夫に保つほか、血液を固める、筋肉の収縮をスムーズにするなどの働きもあるとされています。
【ヨウ素】
昆布、ワカメ、海苔などに多く含まれます。
新陳代謝を促したり、成長ホルモンを活性化させたりする役割を担う甲状腺ホルモンを生成する働きがあります。
ただし過剰摂取すると甲状腺の機能を低下させてしまう可能性があるとされています。
【食物繊維】
ワカメ、ひじき、海苔、昆布などに多く含まれます。
水に溶けやすい水溶性食物繊維を多く含み、時間をかけて栄養素を吸収するため、血糖値の上昇を緩やかにします。
また、腸内環境を整えて大腸がんの発生を抑制する効果も期待されています。
【フコキサンチン】
美肌成分とも呼ばれるコラーゲンの分解を予防し、生成を助けます。
また、メラニンを生成するチロシナーゼの働きを阻害することで、日焼けを防ぐ作用があると考えられています。
さらに、脂肪の分解促進や蓄積抑制、DHAの生成促進など、さまざまな働きが注目されています。
【フコイダン】
メカブや昆布、モズクなどのネバネバ成分に多く含まれます。
免疫力を高める働きがあると言われ、風邪や花粉症の予防などに役立つと考えられています。
抗酸化作用も期待できます。
【アルギン酸】
肌を保湿する働きがあるとされています。
【セルロース】
便秘の改善や、老廃物の排出を促す働きがあるとされています。

<参考サイト>
・海藻は健康に良い?!海藻に含まれる成分と健康増進への効果
https://www.kaisou-tuhan.com/?mode=f13
・海藻に含まれる栄養にはメリットがたくさん!海藻に含まれる栄養素と働きを解説
https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/29527
③ 縄文人も食べていた?海藻の歴史
日本人は、古くから魚や貝類を採取して食用してきました。
先史時代の貝塚からは、腐りやすいためか海藻は出土していませんが、貝類のエサとなる海藻も食用されてきたと考えられます。
島根県の猪目(いのめ)洞窟からは、縄文時代や弥生時代などの遺物が出土しており、貝殻や魚の骨に混じってアラメやホンダワラ類とみられる海藻類が検出されたとのことです。
高知県の竜河洞遺跡では、多数の貝殻に混じり、ひじきとみられる海藻が付着した土器片が見つかっています。
青森県の泥炭遺跡では、縄文式土器の中からワカメのような海藻が束になった状態で見つかったとのことです。
海藻は、大和朝廷時代には神事の供物として用いられたそうです。
701年の「大宝律令」では租税の対象となっていました。
797年の「続日本紀」によると、昆布が朝廷に献上品として納められており、僧侶の供養料にも用いられていたとのこと。
中世以降には、ワカメが職人の給料として支払われていたそうです。
江戸時代になると、交通網が発達したことにより、コンブ、海苔、ワカメ、テングサ、ひじき、フノリなどが全国に流通するようになってきました。
乾燥すると軽くなるので、より普及しやすかったようです。
現代において、海藻は光合成することにより炭素を吸収することから、CO2吸収源対策の新たな選択肢として注目されているそうです。
環境にやさしい食材とされる海藻をさまざまな製品に利用しようと、開発が進められているそうですよ。

<参考サイト>
・縄文時代から海藻好きな日本人
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kaisotonya/unchiku/jomon.html
・泥炭・貝塚遺跡
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kaisotonya/unchiku/kaizuka.html
・海藻製品 にっぽん伝統食図鑑 農林水産省
https://traditional-foods.maff.go.jp/bunrui/kaisouseihin
④ 各地でつくられている海藻練り込み素麺
海藻が採取される地域で、海藻を練り込んだ素麺が多く開発されているようです。
開発の経緯などが分かる事例を中心に、いくつか調べてみました。
【海苔】
兵庫県明石市の海苔業者と、素麺職人が共同で研究開発。
素麺1束に寿司海苔1枚分が含まれています。
造りたては鮮やかな緑色ですが、徐々に紫色に変色してしまうため、当初は直売所での対面販売だけだったそうです。
今はネットでも購入できるようですが、期間限定生産で、色が変わらない方法を研究し続けておられるとのことです。
名産地である佐賀県有明産の海苔をブレンドした素麺もあります。
こちらは2人前(160g)に3枚(全形)分練り込まれているそうです。
【昆布】
昆布の養殖が盛んな岩手県普代でつくられています。
昆布をロープに植えつけ、黒崎沖の荒波で育てると、半年で5メートルほどの長さに成長するそうです。
刈り取った昆布をボイルして細く切り、シート状にして乾燥させた「すき昆布」に加工される工程で、余った昆布を粉末にして素麺に練り込んでいるとのこと。
つるつるした食感で、磯の風味と香りが感じられるそうです。
【ワカメ・メカブ】
兵庫県淡路島では、鳴門海峡産ワカメを練り込んだ手延べ素麺があります。
ワカメを乾燥、粉末加工して練り込み、磯の香りとしっかりしたコシ、なめらかな舌触りを味わえる緑色の麺に仕上げています。
同じく鳴門海峡産のワカメの、根っこの部分であるメカブを練り込んだ素麺もつくられています。
鮮やかな翡翠色で、香りとモチモチ、シコシコした食感が楽しめる、食物繊維などの栄養分も豊富に含んだヘルシーな素麺です。
メカブを入れすぎると生地がのびずちぎれてしまうため、試作を繰り返してギリギリの量を練り込んでいるそうです。
岩手県では三陸産のワカメとメカブを練り込んだ素麺もつくられています。
【アカモク・ナガモ】
宮城県白石市の特産品である「温麺(うーめん)」に、フコイダンを多く含む健康食材として注目されるアカモクの粉末を練り込んだ素麺がつくられています。
ゆでると特有のぬめりが出て、つるりとした食感が生まれるそうです。
徳島県でも、伊島産のアカモクを練り込んだ素麺がつくられています。
アカモクは新潟県佐渡では「ナガモ」と呼ばれており、これを練り込んだナガモ素麺もつくられています。
【フノリ】
新潟県魚沼の有名なグルメである「へぎそば」には、つなぎにフノリという海藻が使われています。
このフノリをつなぎに使った、油を使わない素麺が開発されています。
元々はへぎそばのお店のまかないとして作られたとのこと。
従業員に好評だったことから、本格的な生産に取り組んだそうです。
強いコシとつるつるした食感の、薄い緑色の素麺です。
【アオサ】
長崎県島原や愛媛県松山、福島県相馬などでつくられています。
磯の香りとのど越しの良いつるっとした食感が味わえます。
【モズク】
沖縄では、モズクを使ったなめらかでコシの強い素麺がつくられています。
【ひじき】
長崎県大村では、漁獲高全国1位を誇る長崎県産のひじきを使った素麺があります。
遠赤外線の装置を利用してつくられており、つるっとした喉ごしとモチモチした歯ごたえが特徴とのこと。
「第1回大村ふるさと産品新作展 最優秀グランプリ」や「第30回長崎県特産品新作展 奨励賞」など、受賞歴多数。
同じく長崎県の島原でもひじき入り素麺がつくられています。
岡山県鴨方では、瀬戸内牛窓産の風味豊かなひじきを使い、食感のアクセントになるよう少し粗めの粒で生地に練り込んでいます。

写真は、石井製麺所で販売しております「小豆島手延べひじき麺」です。
健康を気づかう方に美味しく召し上がっていただければと、「薬膳」を勉強してたどり着いた素麺です。
きっかけは小豆島の漁協さんからのご相談でした。
ほんのりと磯の香りがする素麺で、冷やし素麺はもちろんですが、温かいつゆやスープとも相性の良い素麺です。
<参考サイト>
・兵庫県東播手延素麺協同組合 変わりダネ
http://bansyuuji.com/kawaridane.html
・海苔そうめん よかもんさがし
https://yokamonsagashi.jp/products/2169/
・昆布麺3兄弟+新商品「ふだい昆布そうめん」、郷土食「昆布はっと」
https://www.vill.fudai.iwate.jp/kanko/goods/konbumen.html
・淡路島手延べわかめそうめん
https://hyogomania.jp/SHOP/awhsm–s000063.html
・芽かぶそうめん 平野製麺所
https://mekabumen.net/mekabusoumen/
・小山製麺 めかぶそうめん
https://gotokumaru.jp/?pid=114880794
・【宮城 はたけなか製麺】クセになる食感 あかもくうーめん 温麺
https://item.rakuten.co.jp/syokoku-umaimonomeguri/h-a20/
・伊島 あかもくそうめん
https://fukura-tenobe-seimenjyo.jp/?pid=158392400
・佐渡のなが藻そうめん
https://shop.odakesyokuhin.co.jp/products/nagamosomen
・海藻ふのり仕立て 魚沼そうめん
https://shop.ng-life.jp/kojimaya/0038-003/
・あおさそうめん開発
https://nagasakinsfund.com/wakamedaiana/
・島原手延べあおさそうめん
https://wakameya.theshop.jp/items/59526993
・あおさそうめん
https://www.maruyama-foods1.com/p/%E3%81%82%E3%81%8A%E3%81%95%E3%81%9D%E3%81%86%E3%82%81%E3%82%93/
・もずく素麺
https://arakaki-tsusho.co.jp/?p=561
・長崎県大村発 磯仕立てひじき麺【合資会社荒木商会】
http://www.infomart.co.jp/foods/specialty/20121204_f.asp
・めんの山一 手延べひじき麺 5束袋入
https://www.yamaichi-shop.jp/SHOP/MHB-05.html
・宮田製麺株式会社 ひじき麺
http://oisiisoumen.com/shopdetail/009000000001/008/Y/page1/price/
⑤ 《美味しい素麺》小豆島手延べひじき麺 編
「黒」の食材にこだわった健康麺 〈楽々膳・黒〉
小豆島の海の香りがひろがる手延べ麺。
食物繊維、鉄分、ミネラル、ビタミンなど栄養素を多く含む小豆島産ひじきの粉末を練り込んでいます。
小豆島の池田漁協と協同で開発した手延べ麺で、海に囲まれた小豆島らしさを大切にした石井製麺所のこだわり麺です。
温かいお出汁にもよくあう太麺仕上げです。
開発秘話については、こちらもぜひご覧ください。

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《小豆島手延べひじき麺》 https://141seimen.thebase.in/items/69194828
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.16
麺究者への道/ラーメンを研究してみる
素麺をつくり続ける製麺会社として、素麺づくりに携わる者として、食べる方に喜んでいただける素麺をつくることは何よりの幸せだと感じます。
逆に言えば、お客様に喜んでいただけることはなんなのか、どういう素麺が喜ばれるのか…自問自答の(ほぼ)毎日です。
そこで、「まずは、素麺づくりに携わる者として最低限の他産地の知識を持っていたい」と考え、様々な産地を調べブログに書いてきました。
恥ずかしながら、他の産地について詳しく考えたことがなく(一般的な知識くらいは持ち合わせているつもりですが)、新製品開発を考えていく上でも先人の知恵や他産地の動向、商標や販路など様々な点で知識不足を痛感し、ブログを続けるほどに「もっともっと素麺について知りたい!」そう考えるようになりました。
また、今回は「そうめんサミット」を機に多くの方との交流やSNSでの繋がりからヤル気と刺激をいただくことができました。
ですが、ふと、他の麺類ってどうなの?ということが気になり、ちょっと視野を広げてみる意味でも他の麺類・麺料理について調べてブログに残したいなと考えています。
これまでのブログとは少し方向性が変わるかも知れませんが、よろしくお付き合いください。
思い出したように前のブログの形式を持ち出したりするかも知れませんがご容赦ください。
じゃあ、まずはどの麺類・麺料理から考える?
私たちの食生活に無くてはならない存在といえる麺類。
その種類は多く、素麺と同じく小麦粉を原料とする麺を数えただけでも、うどん、ラーメン、スパゲティなど実にたくさんの種類が思い浮かぶのではないでしょうか。
子どもから大人、歳を重ねて嗜好が変わっても麺料理への欲求は大きいものをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
麺類はその調理方法や提供方法で変化し、食べる時間や環境によって手軽な食事や、〆の一品、究極の一杯など、価値も変わってくるのではないでしょうか。
暑い日には冷たい麺をツルツルッと食べたいですよね。
ちょっと贅沢に食べるなら具材を盛り付けてつゆやスープにこだわったり、あっさり食べるなら薬味にこだわったりとポイントも人それぞれではないでしょうか。
寒い日には熱いスープに浸かった麺をフーフー言いながら食べたいですし、
たくさんの仲間や家族と一緒にお鍋の具材にすることもできますよね。
麺料理は、私たちの様々な生活シーンに溶け込んでいます。
そこで今回は素麺以外で身近な麺類、なかでもラーメンについて掘り下げてみたいと思います。
数ある麺類のなかでも、ラーメンは中国がルーツと言われ、素麺と同様に(素麺もルーツは中国と言われる)日本で独自の発展を遂げた麺料理ではないでしょうか。
今や世界中で日本のラーメンが食べられており、海外からの観光客が日本食としてラーメンを食べる光景もよく見られます。
先日も香港から来た友人が、日本のラーメン屋さんに並んで食券を買っている姿を見て、不思議に感じたのを思い出しました。
今回は、ラーメンの歴史や日本での進化、海外への広がりなどについてご紹介したいと思います。

【目次】
① 麺類の起源は2世紀頃の中国にあり?!
② ラーメンは料理として日本で独自の進化を遂げる
③ 日本と中国のラーメンの違いとは?
④ 日本のラーメンは5つの要素で成り立つ!
⑤ 日本のラーメンは海外でも大人気!
⑥ 《美味しい素麺》夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』編
① 麺類の起源は2世紀頃の中国にあり?!
今や日本の国民食とも言えるラーメン。その原型となっているのは中国の麺料理「拉麺(ラアミエン)」です。
そもそも、小麦を原料とした麺類が生まれたのは、中国北部の黄河流域だったそうです。
メソポタミアで栽培されていた小麦が紀元前3000年ごろに中国に伝わり、華北平野で盛んに栽培されるようになりました。
当時はまだ麺の状態ではなく、小さくちぎったスイトンや平たいワンタンの皮のような形状で食べていたようです。
2世紀頃の「四月月令」という文献に、初めて麺の名前が出てきます。
スイトンやワンタン状の「煮餅」と、ひも状の「水引餅」というものです。
550年頃に書かれた「斉民要術」という書物には「水引餅」が登場。
これが麺の祖先と考えられています。
そのつくり方は、小麦粉をよくふるい、肉の煮出し汁でよくこねて、箸の太さほどの棒状(30センチ)にし、水を張った器の中で指でもみ押さえながら引きのばす、というものです。
「餅」というのは中国では小麦粉を使用した食品全般を指し、調理法により「水で煮る」「蒸してつくる」「焼いてつくる」「油で揚げる」の4つの系統に分けられます。
日本で言う「麺」は水で煮る系統に入るようです。
アジアの麺料理はここから派生していったと考えられるそうです。
日清食品「めんの系譜研究会」の麺の系譜図では、麺を伝統的な製造方法で5系列に分類しています。
【手延べラーメン系列】
水引餅の直系にあたる、練った小麦の生地を手でのばす製法で、モンゴルや中央アジアに伝わりました。
中央アジアでよく食べられている麺料理の「ラグマン」は、中国の「拉麺」が語源と考えられています。
棒状にのばした生地を渦巻きの形に巻いて少し寝かせ、油をコーティングしながら手でのばしていく中細麺で、食べる直前につくるのが特徴。
羊肉または牛肉とトマトをベースにしたスープに、季節の野菜をたっぷり入れて煮込みます。
地方によって食べ方が異なり、大きくは汁麺タイプ、汁なし麺タイプ、炒め麺タイプに分けられるそうです。
【素麺系列】
日本の手延べ素麺と同じで、練った生地をひも状にのばし、表面に植物油を薄く塗って、2本の竹の棒にかけさらに引きのばす製法。
元の時代の文献に見られる「索麺」が日本に伝わり、素麺になったと考えられます。
現在中国では、福建省を中心に「線麺」「麺線」と呼ばれるものがつくられているそうです。
【切り麺系】
練った小麦粉の生地を麺棒でのばし、包丁で細く切ります。
小麦粉以外にそば粉など様々な原料を使った麺づくりに生かされている製法で、日本ではうどんやそばなどがこれにあたります。
【押し出し麺系列】
生地をトコロテンのように押し出して細長くする製法。
粘り気のある小麦粉の生地ではなく、緑豆やそば、米などの生地から麺をつくるために考えられたようです。
【河粉(ホーフェン)系列】
うるち米を水に漬け吸水させて、回転式の石臼でひき、ペースト状になったものを蒸したり煮たりして、刃物で切る製法。

<参考サイト>
・麺の起源、系譜 ~麺はどこからきたのか?~
https://world-noodle-dictionary.com/roots/origin.html
・麺の伝播経路
https://world-noodle-dictionary.com/roots/spread.html
・麺類の起源:麺の歴史は小麦の歴史でもある。多彩な文化を紐解くと食したくなる。
https://kz-pe.com/noodle/
・NATIONAL NOODLE DAY特別企画!麺の歴史と世界の麺を紹介します。
https://www.myojousa.com/ja/blog/national-noodle-day/
・世界の麵の文化史
https://www.syokubunka.or.jp/gallery/ishige/archives/noodle/chapter3.html
② ラーメンは料理として日本で独自の進化を遂げる
ラーメンの料理としての変化を調べてみました。
ラーメンを日本で初めて食べたのは誰でしょうか?
1665年に徳川光圀(水戸黄門)が、中国から招いた儒学者の朱舜水のつくった「汁そば」を食べた、これがラーメンのことだという説が長く信じられてきました。
しかし近年、室町時代の1488年に京都の僧侶たちが「経帯麺」という、現在のラーメンと同じく「かん水」を使った麺を食べたという記録が見つかり、これが日本で初めて食べられたラーメンである可能性があるそうです。
明治時代になると、開国に伴い海外の食文化が多く伝わるようになり、横浜や神戸、長崎などの港町に中国人が進出して中華街が生まれました。
そこでできた中国料理店から、麺料理を含めた中華料理が広がっていったそうです。
函館の「養和軒」にて1884年に提供された「南京そば」というメニューが塩ラーメンだったとされ、これが現在のラーメンのルーツという説があります。
1910年、浅草に開業した「来々軒」で提供されたのが醤油ラーメンの元祖と言われます。
来々軒の成功を機に、ラーメンを提供する店が増え、庶民の味として広がっていったようです。
1923年の関東大震災により、ラーメン店を営んでいた人たちが東京周辺から日本各地へ散らばり、全国でラーメン店が増えたそうです。
福岡県久留米市の「南京千両」というお店では、1937年にとんこつラーメンを開発。
当初は澄んだスープだったそうですが、1947年に誤ってとんこつを沸騰させたことがきっかけで、白濁したスープが生まれたそうです。
第二次世界大戦後には、中国から引き揚げてきた人たちが中国で覚えたラーメンの製法を活かし、各地の闇市で屋台を開業。
安くて美味しくて栄養もとれるラーメンが人気を集めたようです。
1954年には北海道札幌市の「味の三瓶」というお店で、味噌ラーメンが誕生しています。
「ラーメン」という呼称が広まるきっかけとなったのが、1958年、初のインスタントラーメンである「日清チキンラーメン」の発売。
それまで「支那そば」「中華そば」と呼ばれていたそうですが、CMなどで人気商品となり、「ラーメン」という名前が全国的に認知されるようになりました。
1960~70年代になると日本各地でご当地ラーメンがつくられ、観光資源のひとつになったと言われます。
その後、何度となくブームが起こり、多様化し洗練されていった日本のラーメン。
2015年には巣鴨の「Japanese Soba Noodles 蔦」が、ミシュランガイドでラーメン店として世界初の1つ星を獲得したそうです。
※上記は独自調べです。諸説あるものや、「うちが元祖!」ということもあるかと思いますがご容赦ください。

<参考サイト>
・日本のラーメンの歴史
https://www.raumen.co.jp/rapedia/study_history/
・日本のラーメンの起源と歴史とは?中国のラーメンとの違いは?
https://jpnculture.net/ramen/
・ラーメンっていったい何だろう? 要素と歴史を押さえればラーメンの“今“が見える!
https://www.myojousa.com/ja/blog/what-is-ramen/
③ 日本と中国のラーメンの違いとは?
中華料理の「拉麺」は、日本で独自に進化したラーメンとどう違うのでしょうか。
「拉」は引きのばすという意味で、小麦粉にお湯を入れよくこねて長くのばし、たたんでさらに伸ばして細長くしていく手延べ製法でつくられます。
「かん水」を使っていないため、コシが弱くやわらかくてもちもちした食感です。
日本の麺はコシが強くて食べごたえがあり、太さや硬さの種類が選べるお店もありますよね。
日本のラーメンのスープは、肉・魚介・野菜などのだしに醬油や味噌を合わせるなど、複合的な味わいでバラエティに富んでいますが、中国では牛肉・豚肉・魚介からとるようです。
味へのこだわり方も違っていて、日本の優先順位は(1)スープ(2)麺(3)具材、中国は(1)具材(2)麺(3)スープ、なんだそうです。
例えば日本のラーメンは、とんこつ・醤油・味噌といったスープの味わいにより分類できますが、中国では「牛肉」「五目」など、上に乗せる具材で選ぶとのことです。

<参考サイト>
・日本のラーメンと中国のラーメンは違う食べ物だった
https://www.ko-cho.com/blog/contents/1509-02/
・日本のラーメンと中国のラーメン(拉麺・拉面)の違い・特徴
http://chugokugo-script.net/shoku-bunka/ramen.html#%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AB%E9%80%B2%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3
・中国の麺料理(ラーメン、拉麺)
https://world-noodle-dictionary.com/asia/china/
・「あれ?中国ラーメンって日本のラーメンと違うかも」中国のラーメンと日本のラーメンの違いとは!?
https://minnanomen.com/%E3%80%8C%E3%81%82%E3%82%8C%EF%BC%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%A8%E9%81%95%E3%81%86
・日本と中国のラーメンの違いは?ラーメンの発祥・歴史を徹底解説
https://tokyo-ramen-mania.com/ramen-history/
④ 日本のラーメンは5つの要素で成り立つ!
ラーメンは、麺・だし・タレ・脂(油)・具の5つの要素を組みあわせることで無限のレシピを生み出すことができるとも言われています。
【麺】
ラーメンに使用する中華麺の特長は、「かん水」を使用すること。
かん水により、独特のコシや黄色がかった色味が生まれます。
縮れ・ストレート・手もみといった製麺方法や形状、小麦の種類、太さ、加水率(麺に加える水分の割合)、形状などを変化させることによって、オリジナリティを出すことができます。
【だし】
ラーメンのスープはだしとタレ、さらには脂(油)の組み合わせによってつくられます。
主なだしの原料としては、豚骨・鶏ガラ・牛骨などの動物素材、昆布・煮干し・エビ・タイなどの海鮮素材、タマネギ・長ネギ・生姜・ニンニクなどの野菜素材。
まただしのとり方として大きくは、強火で長時間煮込む、濃厚な味と風味の「白湯出汁」(とんこつラーメンに多い)と、濁りを出さないように沸騰寸前の温度以下で仕込む「清湯出汁」(醤油ラーメンに多い)とに分けられます。
【タレ】
基礎となる調味料に、香辛料や肉・魚介のエキスなどを凝縮させてつくります。
醤油ダレ、塩ダレ、味噌ダレが一般的です。
【脂(油)】
旨みを加えるとともに、スープが冷めないようふたをする役割も果たします。ネギ油、マー油、辛味油、ラード、焼きラード、鶏油、エビ油などが使われます。
【具】
チャーシュー、メンマ、ネギ、煮玉子、海苔、キクラゲ、モヤシ、なると、ホウレン草、ワンタン、バター、糸唐辛子、挽肉、白髪ネギ、三つ葉、コーン、角煮など、多種多様です。

<参考サイト>
・ラーメンの歴史と現在
https://artsandculture.google.com/story/CAVxS5QL1jNFKw?hl=ja
⑤ 日本のラーメンは海外でも大人気!
今や日本のラーメンは海外でも高い人気を誇ります。
2015年のある記事では、海外にあるラーメン店は2,000店舗以上とのこと。
ニューヨークでは2000年代にラーメンブームが起き、以降も年々人気が高まっているそうです。
基本の味は醤油、味噌、塩、とんこつなど、日本と同じ。
中でもラーメンでしか味わえないとんこつが人気とのことです。
驚くほど異なるのは、その食べ方。
日本ではラーメン店でゆっくり食事を楽しむイメージはあまりないですが、海外では時間をかけて食べるのだとか。
まずお酒と前菜を楽しみ、メインディッシュとしてラーメンをゆっくり味わうそうです。
おしゃれなディナーとして予約して訪れる客も多く、値段も日本の倍以上するようです。
海外でのラーメン人気は、「チキンラーメン」「カップヌードル」などのインスタントラーメンから始まったと考えられています。
さらに日本の映画やアニメがきっかけとなりラーメンに興味を持ったという人も多いそうです。
ラーメンは日本が誇る食文化として、世界中で愛されているようですね。
今回は、麺(生地)というよりも、ラーメンという料理全体についてクローズアップしてみました。
さて、次回はどんな麺を調べてみようかな。。。

<参考サイト>
・海外のラーメン事情|ラーメンが世界的に人気な理由や味・価格の違いを解説
https://iekeikokuramen.com/ja/archives/2937
⑥ 《美味しい素麺》夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』編
夏の贈り物 「瀬戸凪(せとなぎ)」 こだわりの手延べ麺3種を、 小豆島のおだやかな海と、瀬戸内の多島美をデザインしたパッケージで贈る、 石井製麺所特製の夏限定ギフトです。
400年の手延べ製法を受け継ぐスタンダードな「手延べ素麺」と、 小豆島産の健康野菜“しょうどしま長命草”を練り込んだ「手延べしょうどしま長命草素麺」、 瀬戸内レモンがふわっと香る「手延べレモン素麺」をセットにしています。
古くから相手の健康を気づかって贈り物として重宝されてきた素麺の在り方を大切に、 無添加、着色料不使用にこだわった素麺ギフトです。
届いてすぐに食べられるように、めんつゆ(希釈タイプ)もセットしています。
セット内容: ●手延べ素麺×6束 ●手延べしょうどしま長命草素麺×6束 ●手延べレモン素麺×6束 ●めんつゆ(アルミパック)×10袋
※めんつゆは希釈タイプです。1袋で1人前になります。

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《夏限定セット『瀬戸凪(せとなぎ)』》 https://141seimen.thebase.in/items/62463374
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.15(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』レポート
6月3日と4日の2日間、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されました。
台風の接近で、サミットまで気が気でない1週間でしたが、本番は素晴らしいお天気、そうめんに相応しい晴れ空となりました。
今回はそうめんサミットの2日目レポートをお届けしたいと思います。

【2日目】
この日は、そうめんをテーマにしたエンターテインメントな1日。
2日目は「そうめんと遊ぶ日」となっており、前日の「そうめんを学ぶ日」とは打って変わり、“そうめんをテーマにしたエンターテインメント”な1日になっています。
「流しそうめん」、『そうめん落語』、大道芸、キッチンカーやイベントブースの出店などとても賑やかな一日でした。
1日目は鑑評会や公開討論会など緊張感のあった内容でしたが、この日も天気良く屋外でのイベントも多かったので、多くの人に小豆島ならではの楽しい一日をお過ごしいただけたのではないでしょうか。


オリーブ公園のイベント広場(屋外ステージ)で、流しそうめんが行われました!
小豆島では夏になると、時々、所々で流しそうめんを見ることはありましたが、本当に久しぶりに流しそうめんを見たように思います。
オリーブ公園から望む内海湾は、私も大好きな小豆島の景色のひとつです。
流しそうめんにピッタリなロケーションではないでしょうか。
今回は紙製のトングを用いるといった対策がされていました。
たしかに、この方法であればリスクを軽減することができます。
午前と午後、2回行われた流しそうめんですが、すごい行列であっという間に完食となりました!
来場者が目を丸くするほどの盛況ぶりで、流しそうめんの人を惹きつける力に驚かされます。
もしかすると、流しそうめんはもっと早く、たとえば4月~5月くらいに行うのがいいかもしれません。
「そうめんの季節がやってきた」ことを伝えるのに最適なイベントだと思います。
弊社の工場には、そうめんを天日干しするスペースがあるのですが、ここで毎年、流しそうめんイベントをするのもおもしろそうです。
次に足を運んだのは、『そうめん落語』。
香川県ご出身、FM香川「WEEKEND SHUTTLE」でメインパーソナリティとしても活躍されている落語家、桂こけ枝さんの落語です。
披露されたのはもちろん、そうめんにちなんだ落語。
開演には間に合わず、途中からの観覧でしたが、ホールは立ち見が出るほどの満員御礼でした。
『そば清(そばせい)』の蕎麦をそうめんに置き換えて、そうめんならではのアレンジがされた、おそらくこの日のための特別な演目だと思われます。
食べ比べでお金をせしめる主人公。
何杯でも箸が進み、思った以上に食べてしまえる、そんな“そうめんらしさ”満載の落語でした!
そうめんの大食い勝負なら、私もそれなりに勝負できるかもしれません。
広場にもどると、大道芸が行われていました。
私は存じ上げていなかったのですが、「吉田さんちの大道芸」はテレビにも出演され、SNSの総再生回数が1億回を超える、親子で活動されている大道芸人さんなのだそうです。
大道芸はこれまでも、ときどき目にすることはありましたが…感動して涙が出た大道芸は初めてでした。
お父さんと3人姉妹による、息の合った芸の数々に拍手が起こります。
高校卒業で引退(?)となる長女さんの、幼い頃から磨かれたであろう芸がすごかった!
おそらく、親子でひとつの舞台を作り上げる様に、私は尚更、感動したのだと思います。
この年齢になって、跡継ぎとなって、両親と日々仕事をしていますが、親子ならではの良さと難しさがあることを知っていますので…勝手な想像で、申し訳ないですが…
この日のために、三重の鈴鹿市からお越しいただいたとのことです。
ありがとうございました!
ブログを拝見したところ、三女さんは初フェリーだったようで、とても喜んでいらっしゃったとのこと。
小豆島での公演が、いい思い出になっていると嬉しいですね。
「OH!HAPPY MORNING」の公開録音。
私は残念ながら観覧できませんでしたが、やはりすごい人気でした。
終演後に写真撮影会があったようで長い行列ができていました。
翌日の6月5日と6日の放送を聴きまして、全国からリスナーの方がいらっしゃっていたことを知りました。
300人以上が集まったそうです!


キッチンカーや、地元の企業の皆様が出店。
出店されていたブースももちろん拝見してきました。
イベントを中心に見て回ったので、いろいろと食べて回る時間はなかったのですが、こちらもにぎわっておりました。
どうやら、そうめんを使った特別メニューも出ていたそうで、後で知ってもったいないなと思った次第です。
魚のスープで味わう、そうめんのジェノベーゼ風アレンジだったとか…そうなんです。
そうめんはスープにして食べるとすごく美味しいんです!
たとえば朝食に「スープそうめん」は、もっと試してくれる人が増えるといいなと思っています。
そうめんの可能性と美味しさを満喫できた2日間でした!
ということで、そうめんサミットのレポートは以上となります。
ひとりでは回り切れなかったイベントもありましたが、ひとりの“そうめん好き”として、そうめん尽くしの2日間を満喫できました。
会場の雰囲気を少しでも共有できましたら…
もし心残りをあげるとするならば…
島外の生産者、全国のそうめん製造者の方々と、あまり交流できなかったことでしょうか。
特に、若い世代の生産者と話をしてみたいと考えていたのですが、そもそも会場を見回したときに、私と同世代と思われる方を見つけることができませんでした。
冷静に考えれば、そうめんシーズン真っ只中のこの時期に、小豆島まで足を運べる生産者さんは少ないと思います。
その中にあって、淡路島の手延べそうめん生産者の方と、わずかな時間ではありましたが交流できたのは貴重な時間でした。
同じ瀬戸内海に浮かぶ、隣同士の二つの島。
しかし、私の知る限り、交流があるという話は聞いたことがありませんでした。
帰ってから調べてみると、淡路島も天日干しのそうめんがつくられていて、小豆島そうめんと共通した製造風景が見られるようです。
一方で、初めて見る製造機械があったり、家族の連携の仕方、役割分担が違っていたり、勉強になります。
特産品のわかめや玉ねぎを練り込んだそうめんもあるので、「製造方法など情報交換がしたい」といった話にもなりました。
「協同」という話は、原料メーカーや機械メーカーといった、いわゆるステークホルダー的な関係だけでなく、同業他社という関係においても大事になるのでは?と考えています。
後継者問題について考えた時…
作業の負担軽減、製法の改善も重要ですが、実はそれよりも先に、「仲間づくり」が大事なのでは?と…
遠く離れていても、がんばっている同世代の生産者がいることは、勇気づけられるように思うのです。
そうめんそのものが進化していくためにも、皆で意見を出し合い、助け合うネットワークがあってもいいのではないでしょうか。
このサミットをきっかけとして…
ますますそうめん業界のためにがんばっていきたいと気持ちを新たにしました。
そうめん業界の道筋を示し、そうめんサミットを成功に導いた、小豆島手延素麺協同組合の皆様をはじめとする実行委員会の皆様、業界関係者の皆様、当日イベントを盛り上げていただいた皆様に感謝を申し上げます。
当日ご来場いただきました皆様、そうめんファンの皆様にも御礼を申し上げます。
これからツイッターでつながった各地の生産者の方々を訪ねてみたいと思っています。
いつか、全国の生産者の方々が集まるサミットが開催できるとおもしろそうです。
若手のコミュニティもつくっていきたいですね。
小豆島そうめんの、そして日本のそうめんのこれからに、ご期待をいただけると幸いです。
場外サミットも開催!
前回のブログでも書きましたが、そうめんサミットをきっかけに、すごく嬉しい出会いもありました。
手延べそうめんが大好きな小学6年生のSHUNくんが、サミット前日に工場見学にお越しくださいました!
台風の接近が心配された6月2日、お父様と飛行機に乗って、遠路はるばる小豆島まで…
製造体験のため、これから延ばすそうめんを用意していたところ、SHUNくんが到着。
シャッターを開けて、工場の中でそうめんがつくられている様子を見た瞬間のSHUNくんの笑顔が忘れられません。
両手を広げて、喜んでくれました。

SHUNくんは、手延べそうめんを盛り上げる活動をされています。
きっかけは、とあるお店で大好きなそうめんメニューがあったそうですが、生産者の廃業によって、そのメニューが食べられなくなってしまったこと。
自分の好きなそうめんが、後継者不足もあってどんどん生産量が減っている現状を知り、何かできることがないか、と活動を開始。
お父様と二人三脚で、全国のそうめんを食べたり、イベントに出店したり、そしてこの度、初めて手延べそうめんの製造現場を見学することになったそうです。

初めて見る手延べそうめんがつくられる様子に、興味津々。
お土産にとプレゼントした、そうめんを捌く箸を両手に、箸分け作業を体験していただきました。
箸分けはなかなか力のいる作業でもあるのですが、どんどんチャレンジ。
すぐにコツをつかんで、いろんな作業にも挑戦していました。

最後は、そうめんを結束する機械を見ていただき、実際に束ねたそうめんを箱に詰める作業を体験してもらいました。
そうめんの重さを計り、箱に詰めて、中身をそろえるため最後に箱を両側から、ポンポンっと叩く姿は、すごく様になっていました。
私の両親は、まるで孫ができたかのように喜んでおり、短い時間ではありましたが、私たち家族にとっても思い出となる出会いになりました。

サミット当日もご一緒させていただき、弊社がお世話になっている小田象製粉(株)の研究開発担当の方とのお話の場も設けさせていただきました。
実は、SHUNくんに会うことを担当者の方も大変楽しみされていまして、この場を「場外サミット」と仰っていました。
SHUNくんの夢は、そうめんのお店を開くことだそうです。
手延べそうめんを応援してくれているSHUNくんに、生産者としてしっかり応えていきたい。
手延べそうめんがなくなってしまっては、お店ができなくなってしまいます。
そうめんを応援してくれる小学生がいることが、どれだけ喜ばしいことなのか。
SHUNくんと出会えたことも、今回のサミットが小豆島で開催されてよかったと思うことのひとつです。
最後まで、「また工場に行きたい!」と言ってくれていました。
ぜひまた、小豆島に遊びに来てください。
小豆島そうめんは、いつでも歓迎ですよ!

小豆島のいち生産者が、いち参加者として楽しませていただいた「そうめんサミット」。
貴重な出会いと、これからの“やり甲斐”もいただけた、とても貴重な体験でした。
これからも小豆島手延べ素麺をどうぞよろしくお願いいたします。
もちろん、石井製麺所もよろしくお願いいたします!
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.14(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』レポート
6月3日と4日の2日間、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されました。
台風の接近で、サミットまで気が気でない1週間でしたが、本番は素晴らしいお天気、そうめんに相応しい晴れ空となりました。
今回はそうめんサミットのレポートをお届けしたいと思います。

【1日目】
スタートは『日本三大そうめん食べ比べ』から。
兵庫の播州そうめん、奈良の三輪そうめん、そして香川の小豆島そうめん。
それぞれのそうめんを食べたことはありますが、一度に3種類のそうめんを食べるのは初めての体験です。



まずは見た目の比較。
器に盛られたそうめんを見比べると、三輪そうめんが一番細いことがよく分かります。
播州そうめんと小豆島そうめんの違いは僅かですが、若干、小豆島そうめんが太いような気がします。
手延べ製法の性質上、太さに多少のバラつきが生じるので個体差はあると思いますが、見た目だけでも産地を判断できそうでした。
太さが異なれば、食感が変わります。
三輪そうめんは細いので、軽い食感になりそうですが、意外にも食べ応えがある印象でした。
これはおそらく、他のそうめんと同じ感覚で箸に取ると、細い分、より多くの本数のそうめんを取ることになるからかもしれません。
播州そうめんは、はっきりとコシが強いと感じました。
そうめんの一本、一本に存在感があります。気持ちよくのどを通る感じで、噛んだ時にプチっと歯切れのよい感覚も特徴でしょうか。
小豆島そうめんは、こればかりは食べ慣れているところもありますが、ツルツルっと軽やかなのど越しの良さを感じます。
違いを感じたのは歯ごたえ。
芯というほどはっきりしたものではないものの、最初はやわらかく、最後にプチっと切れるような、極端に言えば2段階の噛み応えでした。
そして、味の違い。
これが今回、一番分かりやすい違いでした。
小豆島そうめんは、言葉で表現するのは難しいですが、口に入れたとき、のどを通るときに感じる「風味」があります。
これはおそらく、使っている油が「ごま油」であることが理由だと思われます。
味に影響を及ぼすものとして原材料の違いは大きいはずで、「ごま油」の使用は小豆島ならではの特徴です。
はっきりと断定できないのは、その風味が「ごまの風味」だと言い切れないからです。
(私の舌が未熟だという可能性もありますが…)ごまの味がするとは言えないものの、鼻に抜けて感じられる風味があることは間違いありません。
これが、小豆島の島民にとっての「そうめんの味」なのだと改めて実感しました。

食べ比べてみると、たかがそうめん、されどそうめん、その美味しさには違いがありました。
「私は播州が好き」「私は三輪が一番」「やっぱり小豆島」そんな声が聞こえてくるのも当然だと思います。
繊細な味覚センサーは、その土地の気候、製造環境、職人さん独自のこだわりといった数値化できない微細な違いを感じ取っているのかもしれません。
次に向かったのは『式典・鑑評会結果発表・表彰式』、および『公開討論会』。
今回のサミットでは、「そうめんは、宇宙だ!」と題して、「そうめんを食す。そうめんを語る。そうめんを学ぶ。」ことを掲げています。
これが本サミットのメインイベントです。
サミット=首脳会議の名の通り、全国からそうめんおよび乾麺に関わる組合、企業の代表者や生産者の方々が集まりました。

業界初の試みとして、『第1回 全国そうめん鑑評会』が実施され、その結果発表と表彰式が行われました。
「業界の技術研鑽・品質向上につなげるだけでなく、縮小していくそうめん市場を上向きにし、手延べ文化の維持継承、そうめんに対する消費者の認識・心理的価値を高め、そうめん文化全体を向上させる」ことを目的としています。
全国から全16作品の応募があり、同条件のもと食味に関するブラインド審査の結果、金賞6作品、入賞10作品が選ばれました。
【金賞】以下、五十音順
◯静岡県浜松市 池島フーズ株式会社
◯岡山県浅口市 かも川手延素麺株式会社
◯香川県小豆郡 創麺屋株式会社
◯徳島県つるぎ町半田 半田手延べそうめん協同組合
◯兵庫県たつの市 兵庫県手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 島原手延素麺協同組合/平川製麺
【入賞】以下、五十音順
◯兵庫県南あわじ市 淡路手延素麺協同組合
◯岡山県 岡山県製粉製麺工業協同組合
◯兵庫県たつの市 カネス製麺株式会社
◯香川県坂出市 木下製粉株式会社
◯愛知県蒲郡市 株式会社金トビ志賀
◯秋田県湯沢市 株式会社後文
◯茨城県稲敷郡 茂野製麺株式会社
◯香川県小豆郡 小豆島手延素麺協同組合
◯長崎県南島原市 長崎県有家手延素麺協同組合
◯奈良県桜井市 奈良県三輪素麺工業協同組合
地場産の小麦粉をはじめとする国産原料を使用したそうめんや、食塩や油を使わないそうめんが出品されていました。
小麦粉以外の原料を練り込むそうめんは、今回の応募条件から除外されていたので、シンプルに、小麦粉の味や、製法や技術が評価されやすい鑑評会になったのではないでしょうか。
審査員の方々のコメントを聞くと、どれも美味しく、甲乙をつけるのが難しかったようです。
しかし、5項目(味/香り/コシ/のどごし/色つや)の評価基準で点数化された審査だったため、やはり金賞作品には、金賞たる理由があるのだと思います。
可能であれば、各作品について、具体的な感想を聞きたかったというのが本音ですね。
公開討論会では、審査員の方々と業界団体の代表者の方々が登壇され、鑑評会の結果も踏まえて議論が行われました。
生産者、販売者、飲食店、それぞれの立場から、そうめんの未来を考えます。
そうめんの生産量が減少している、という業界全体の課題。
原因はいくつかあるのでしょうが、食生活の多様化の影響が言及されていました。
日本三大そうめんを食べ比べただけでも分かったように、そうめんには個性があります。
最近は、都内にそうめん専門店が増えており、「そうめんの食べ方」が注目されているようで、料理に合わせて最適なそうめんを選ぶことが大事とのこと。
私も恵比寿にある専門店『そそそ』を訪ねたことがありますが、「明太クリームそうめん」といったメニューが人気を博しているそうです。
飲食店においては、のびにくさも重要になります。
そこで提案されていたのは、「古(ひね)」と呼ばれる熟成麺の活用です。
播州そうめんでは特に、古物(ひねもの)として、ワンランク上のそうめんとして扱われています。
冬に製造したそうめんを、ひと夏(梅雨の時期)の間、蔵の中で寝かせたものを指します。
熟成したそうめんはコシが強くなり、茹でのびもしにくくなるという特徴があります。
一方で、新しいそうめんにも、新しいそうめんらしい良さがあり、やはり原料由来の風味が際立つのは新しい麺とのこと。
これは弊社でも大事にしている考え方になります。
ごま油を使用していたり、その風味が特徴である小豆島そうめんにとっては、できたての新しいそうめんを食べるのが合っていると思います。
そのため、小豆島では古物(ひねもの)は一般的ではないですが、麺のコシが強くなる現象は有効活用できると考えています。
たとえば、練り込み系のそうめんは、その原料によってはコシが弱くなることがあるようです。
そんなとき、数か月の熟成を経ることでコシを強くできる可能性も考えられますね。
後継者不足の問題にも話が及びました。
跡を継ぐ若い人がいないことは、産地を問わない共通の課題です。
小豆島そうめんの場合、平成初期には200件を超える製麺所がありましたが、今では60件ほどになっているそうです。(小豆島手延素麺協同組合の組合員数)
手延べそうめんは、その製法上、長時間作業が必要とされます。
弊社の場合、早朝の3時30分から、およそ15~16時間といったところでしょうか。
これは小麦粉の性質を最大限に生かし、“寝かせては延ばす”を繰り返して麺にしているからです。
美味しさのためには妥協できない、ひとつひとつの工程があります。
そうめん屋単独では、これ以上の作業時間、工程の短縮化は難しいのが現状です。
しかし、他産地では、小麦粉など原料メーカーや製麺機械メーカーとの「協同での技術発展」が既に行われているそうです。
製麺所が要望を出し、新しい小麦粉や機械が開発され、製麺所が実験する。その繰り返しで、作業時間が12時間まで短縮されているとのこと。
会場でお会いした機械メーカーの方から、「小麦粉を練る機械も進化しており、練り方によってその後の熟成時間を短縮できる」という話もお聞きしました。
小豆島のそうめん屋は、他産地と比較しても、1軒あたりの規模が小さいそうです。
(もちろん、規模だけが理由にはなりませんが)弊社もいわゆる家族経営(両親と私)の1社ですので、長年の製麺経験による経験値と技術はあっても、科学的な知見が不足しているのは間違いありません。
自社だけでできることに、限界があるのは明らかです。
討論会を聞きながら、協働での技術発展が不可欠だという理解とともに、その主導はそうめん屋(生産者)でなければならないと強く思いました。
そうめんを深く知り、料理へ生かすことも大切ですが、たとえば「パスタ風にアレンジしたそうめん」があったとして、それはどこまでいっても「~風」でしかなく、パスタには敵わないものだと思います。
本当に必要なのは、他の麺類に寄せていくような、そうめんのアレンジに留まることなく、そうめんそのものの進化と呼べるような、新しいそうめんの開発だと考えています。
生産者にとっても、もちろん食べる人にとっても新しい、画期的なそうめん。
業界が活気づくような、斬新な切り口のそうめん。
奇をてらうのではなく、しかし「おもしろい!」と感じていただける、そんなそうめんを創りたい。
幸いなことに、弊社では新商品やOEM商品の開発にあたって、製粉会社さんや地元研究機関の専門家の方にご協力をいただいております。
「協同」をこれから必要不可欠になる手段と捉えて、主体的に動く。討論会を踏まえた、自分なりの結論です。
1日目の最後は懇親会です。
遅れての参加になってしまい、会場に入ると宴もたけなわでした。近くの席には島の同業者の皆様、同じテーブルには素麺組合の皆様。
実は、素麺組合の、特に生産者の方々とお話するのは、これが初めてでした。
素麺組合には若い組合員で青年部が組織されているそうです。
小豆島において、組合員ではない、いわゆる独立した弊社のようなそうめん屋は、通称アウトサイダーと呼ばれています。
言葉だけ聞くと悪い意味に受け取られるかもしれませんが、あまり深い意味はないはずです(笑)。
「立場や所属の垣根を取り払って、技術交流ができれば…」若手の生産者としてのつながりが、これからの小豆島そうめんにとってプラスになると考えています。
また、ツイッターでフォローをいただきました、そうめん研究家のソーメン二郎さんと、初めてご挨拶をさせていただきました!
ソーメン二郎さん、業界で知らない人はいないでしょうし、そうめんのPRでテレビや雑誌でも大活躍されております。
そうめん発祥の地、奈良県桜井市のご出身、三輪そうめんの製麺所の家系のお生まれで、「実家に帰省するたび、製麺所の廃業を目の当たりに」されたことで、そうめん業界に対する危機感を抱いたそうです。

最近では「クラフトソーメン束の会」を主宰され、全国の小規模な手延べそうめん製造所のつくるそうめんにスポットライトを当てる活動をされています。
いつか、ソーメン二郎さんにも注目してもらえる、新作そうめんを創りたいです。
参考サイト:https://www.mizkan.co.jp/craft-somen/
2日目に続きます。。。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.13(番外編)
『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』
【お!いしいけんぶんろく】ブログが、久々の更新となります。
GWが過ぎ、夏も目前となり、石井製麺所でも忙しい毎日です。
製造の佳境もあって更新作業ができていませんでしたが、6月3日、4日に小豆島で開催される『全国そうめんサミット』については触れなければ!
ということで、ブログを更新する決心(笑)をしました。
ぜひ今回のお話もお目通しいただければ幸いです。
6月3日、4日の2日間、夏の小豆島を舞台に、『第3回 全国そうめんサミット2023 in小豆島』が開催されます。
G7広島サミットが開催されたばかりですが、実はそうめん業界にもサミットがあります。
兵庫の播州そうめん、奈良の三輪そうめん、そして香川の小豆島そうめんは「日本三大そうめん」と呼ばれています。
2016年の播州そうめんからスタートしたそうめんサミットは、2018年の三輪そうめん、新型コロナによる延期を経て、いよいよ今年2023年に小豆島そうめんがそのバトンを受け取りました。
新型コロナの巣ごもり需要として、「パスタ」や「そうめん」など、乾麺が注目を集めたのは記憶に新しいかもしれません。
しかし、そうめんの歴史を俯瞰してみると、その生産量は減少傾向にあり、それは弊社創業の頃の話を伝え聞くだけでも間違いのない事実です。
「作れば作るだけ売れる」といった時代があったなんて、今となっては信じられません。
そんな現状を受けて、そうめんをはじめとする乾麺の需要拡大を目指してスタートしたのが、『全国そうめんサミット』です。第3回となる小豆島サミットのテーマは、『そうめんは、宇宙だ!』。
「そうめんなんてどこも同じ」という声に、そうめんの代表的な産地のひとつとして、「そんなことはない」と答えることを目指しています。
原料はほとんど小麦粉だけ、シンプルを極めたような加工食品であるそうめんですが、産地によって使用する原料に特徴があり、製法によってのどごしや舌触りが変わります。
その土地その土地の名産品を練り込んだ、色合いや味わい多種多様な、オリジナリティあふれるそうめんも沢山あります。
そこに生産者、作り手のこだわりまで加わったそうめんは、単純に「そうめん」という言葉では片づけられない、奥の深い食べ物だと思います。
まさにそうめんの世界は、未解明の謎がまだまだ眠っている「宇宙」なのかもしれませんね。

本サミットの見所は、なんといっても「第1回 全国そうめん鑑評会」です。
全国から集まった全16作品のそうめんが、審査員によって評価されます。
審査員は著名な料理人や有識者の方々が務め、その評価基準は5項目(味/香り/コシ/のどごし/色つや)が設けられ、総合5段階で評価されます。
私がこれはすごい!と思うのは、試食用のそうめんの調理について、入念な準備がされていることでしょうか。
そうめんは茹で時間をはじめ、茹で方の影響を強く受けてしまいます。
どんなに作り手が丁寧に、こだわりを込めて作ったそうめんでも、茹で加減を失敗すると、その味わいは大きく損なわれてしまいます。
試作品の調理、その責任は重大です。 当日にそなえて、繰り返しシミュレーションがされているそうです。
ゆがく人、お湯を捨てる人、麺を洗う人、氷で締める人、お皿の準備をする人、お皿に盛る人、審査員の手元まで運ぶ人… そうめんを調理することだけに、これだけのスタッフがそれぞれの役割を果たすべく、準備しています。
業界初、そうめんに真正面から向き合うような鑑評会。
企画した実行委員会の方々、鑑評会に応募された生産者の皆様の挑戦する心に敬意を表するとともに、鑑評会の成功と、鑑評会がそうめん業界の活性化につながることを願っています。
もちろん、ど真剣にそうめんに向き合うイベントだけでなく、そうめんを題材にした桂こけ枝さんの落語や、大道芸など野外イベント、日本三大そうめんの食べ比べに、王道の流しそうめんなど、そうめんを“楽しむ”企画も沢山用意されています。
キッチンカーも出るので、そうめんをメインに、サイドメニューも充実。
人気FMラジオ番組「OH! HAPPY MORNING」の公開録音もあるそうです。
“そうめんづくし”の2日間、全国の「そうめんファン」の皆様にお楽しみいただけますと、小豆島のイチそうめん屋として嬉しく思います。
(ご遠方の皆様へ、本ブログにてサミットの様子をお届けしたいと思います。ぜひご覧くださいませ。)

「仲間さがし」がしたいと思っています!
全国の産地から生産者が集まるサミットですので、ぜひいろいろな産地の方々と交流したいですね。
具体的には、「仲間さがし」がしたいと思っています!
後継者不足は産地を問わずの課題だと思いますが、小豆島の若手生産者のひとりとして、一緒にがんばる仲間がほしいという想いは切実です。
美味しさに妥協しなければ、手延べそうめんづくりはとてもハード。
小麦粉を塩水で練り上げた生地は重いですし、気温や湿度の影響を受けやすいそうめんは、細やかな目配り・気配りが欠かせません。
私が弱いだけかもしれませんが、美味しいそうめんを目指して、ともに切磋琢磨する仲間がいることは心強いです。
昨年末のツイッター開設をきっかけに、全国各地のそうめん屋さんとつながることができました。
産地が違い、作るそうめんは異なれど、皆さん自分のつくるこだわり込めたそうめんを積極的に発信されています。
なかには、製法に関わる悩みや困りごとも投稿されていて、アドバイスが交わされる様子も… 後継者不足がますます進むであろうこれから、産地の垣根と距離を越えたつながりが大事になると感じています。
そしてサミットは、普段は遠く離れた生産者の方々と、リアルにお会いできる、貴重な機会です!
当日は懇親会もありますので、お声がけをさせていただければ幸いです。

写真は、「手延べひじき麺」開発にお力いただいた、池田漁協の皆さん
新たな出会いが生まれそうです。
そして、ツイッターとサミットをきっかけに、新たな出会いが生まれそうです。
「そうめんの美味しさを世界に伝えたい」と活動されているSHUNくんが工場見学に来てくれることになりました!
そうめん大好きな小学6年生で、全国の手延べそうめんの生産量が減少している状況を知って、手延べそうめん業界を盛り上げるために、クラウドファンディングも成功されています。
『俊麺(しゅんめん)』という、オリジナルデザインの手延べそうめんを商品化、「しょうが麺」「ごぼう麺」「にんにく麺」「トマト麺」「しそ麺」それに「白麺」という6種類の手延べ麺です。
いったい、どんな味がするのでしょうか?
一番、気になっているのは「ごぼう麺」。
ごぼうのやさしい風味は、手延べ麺によく合うと思います!

写真はSHUNくん。SHUNくんのお父様よりご提供頂きました。
サミットで小豆島を訪れるにあたり、工場見学をしたいとツイッターで投稿されていました。
その投稿を見た徳島のそうめん屋さんが、「小豆島のそうめん屋さん、どうですか?」とご縁をつないでくださいました。
本当に、ありがたい限りです。
手延べそうめんの製造現場をご覧になるのは初めてとのことですので、そうめんが延ばされる様子や、1束1束、そうめんを束ねる様子など、“手延べならでは”の作業風景をご覧いただければと思っています。
そうめんサミット当日は、3日は午後からの式典・鑑評会結果発表に出席、懇親会への参加、4日は会場内をいろいろと見て歩く予定です。
背中に石井製麺所の名前の入ったユニフォームを着ていますので、もし見かけたらお声掛けください!
手延べそうめんのことや、小豆島のことなど、お答えできるかと思います。
サミットが終わりましたら、当日の様子など、本ブログにてレポートを予定しています。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.12
手延べ素麺三大産地のひとつ・小豆島について
素麺の産地・香川県小豆島は、瀬戸内海に浮かぶ島です。
穏やかな海に囲まれ、風光明媚な景勝地や食にまつわる施設など、見どころいっぱいの観光地でもあります。
お出かけに最適なこれからの季節、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
6月3日・4日には、小豆島で「全国そうめんサミット」が開催される予定。
兵庫県播州、奈良県三輪につぐ第3回となり、関係者だけでなく一般の方にも楽しんでいただける食べ比べなどのイベントが盛りだくさんだそうです。
今回は、小豆島の観光情報や特産品についてご紹介します。
三代目:今回は、夏の需要期を迎える前に今一度、三大産地として整理してみたいと考えました。
そのきっかけは、「全国そうめんサミット」です。
基本的には、小豆島手延素麺組合様が仕切ることになりますが、小豆島で製麺に携わる者として、全く無関係ではありませんし、もちろん、準備や出店でお手伝いもしてまいります。
何よりも楽しみにしているのは、これまでブログでも触れてきた産地の方々にリアルにお会いできることです。
きちんと胸を張って、小豆島手延べ素麺の製麺所三代目として、ご縁をいただく皆さまにご挨拶できるように振り返りの意味も含めてブログに書いてみました。
「全国そうめんサミット」に向けて、小豆島にお越しになる皆さまのご参考になれば幸いです。
<参考サイト>
・第3回全国そうめんサミット2023in 小豆島 公式サイト
https://somen-summit-2023.com
※写真はphotoAC「オリーブ公園の風車から見える風景」より
【目次】
① 小豆島でおすすめの観光スポット
② 食の特産品が豊富な小豆島
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
① 小豆島でおすすめの観光スポット
小豆島と聞いてどんなイメージを思い浮かべますでしょうか?
島には自然や文化、グルメなど、様々な魅力があふれています。
そんな小豆島の魅力を存分に体感できるおすすめスポットを、厳選してご紹介します。
※営業状況など詳細については、各施設にお問い合わせください。
【道の駅 小豆島ふるさと村】
遊ぶ・体験する・泊まる・食べる・買う、の5つを楽しむことができる公共の施設。
「手延べそうめん館」では、素麺の製造工程を見学することができます。箸分け作業の体験(有料)や試食も。
「全国そうめんサミット」の会場にもなります。
【醬の郷(ひしおのさと)】
小豆島の地場産業である醤油と佃煮の工場が集中するエリア。
明治時代に建てられた醬油蔵の漆喰の白壁が、風情ある景観を生んでいます。
醬の郷にある「マルキン醤油記念館」では、小豆島独自の醬油の製法が紹介されており、醤油を使ったグルメも堪能できます。
※写真はphotoAC「醤の郷」より
【かどや製油 資料展示室「今昔館」】(現在は休止中)
安政5年(1858年)の創業以来、発祥の地である小豆島でごま油をつくり続けるかどや製油さんの工場内にある資料展示室。
ごま油の製造工程や歴史を学んだり、テイスティングを体験したりできます。
【オリーブ園】
全国で最初にオリーブ栽培に成功した、日本のオリーブ栽培発祥の地。
3ヘクタールの敷地には、日本最古のオリーブの原木を含む約2,000本のオリーブが植えられています。
世界各国のオリーブオイルをブレンドしてオリジナルオイル作り体験も。
【エンジェルロード】
1日2回、引き潮の間だけ現れる、島から島へ歩いて渡れる砂浜の道。
大切な人と手をつないで渡ると幸せになれるという言い伝えがあるそうです。
※写真はphotoAC「小豆島エンジェルロード(道が出現する前)」より
【寒霞渓】
国立公園で、日本三大渓谷美のひとつ。
ロープウェイから、美しい溪谷と瀬戸内海の素晴らしい景色を一望できます。
秋の紅葉シーズンは、全国各地からたくさんの観光客の方がお越しになります。
※写真はphotoAC「秋の寒霞渓」より
<参考サイト>
・小豆島観光マップ
https://www.shodoshima-kh.jp/enjoy/map.html
・自然もグルメも楽しめる小豆島のおすすめ観光スポット11選
https://www.knt.co.jp/travelguide/kokunai/052/
・ここは押さえておきたい!小豆島のおすすめ観光スポット22選
https://www.ikyu.com/kankou/arealist8428/
・小豆島ふるさと村 素麺工場・見学体験
https://www.shodoshima.jp/expelience/taiken/visitor/567.html
・醤の郷(ひしおのさと)
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=270&c=2
・マルキン醤油記念館
https://marukin.moritakk.com/kinenkan/
・ごま油資料展示室見学 -かどや製油-
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=163&c=2
・かどや製油の資料展示室 今昔館のご案内
https://www.kadoya.com/enjoy/page04.html
・小豆島オリーブ園
https://www.1st-olive.com/guide/
・エンジェルロード
https://www.shodoshima-kh.jp/angel/
・寒霞渓の魅力
https://www.kankakei.co.jp/miryoku/
② 食の特産品が豊富な小豆島
小豆島には、素麺の他にもいろいろな特産品があります。
「オリーブオイル」「醤油」「佃煮」の3品目には、地域食品ブランドの表示基準である「本場の本物」に認定されている商品もあります。
小豆島の素麺づくりに欠かせない「ごま油」も、島の特産品です。
【オリーブオイル】
日本のオリーブ栽培は香川県が95%を占め、オリーブオイルの生産量も日本一。
小豆島オリーブオイルは、精製油や添加物をまったく加えず、オリーブの実を搾っただけのフレッシュな香りと風味が特徴です。
地元で丁寧に手摘みした新鮮な果実を、すぐさま地元の工場に運び、非加熱でつくっています。
明治41年(1908年)、試験的に植樹されたオリーブが、温暖で雨の少ない小豆島の気候風土で根付き、定着しました。
宮内庁御用達の品目に選ばれたり、世界規模のオリーブオイル品評会で好成績を収めたりしたこともあるそうです。
5月頃にオリーブの花が咲き、6月頃から小さな実を付け、徐々に大きくなり9月の下旬には収穫が始まります。
10月10日に「オリーブの新漬け」が解禁され、いよいよオリーブの旬の季節になります。
農家さんは毎日のように収穫に追われ、翌年の1月頃にはだいたいの収穫が終わり、オリーブオイルの搾油作業を行っているようです。
日本の気候で育つオリーブで作られたオイルはとてもマイルドで、和食にとても良く合い、発酵食品にもピッタリだと言われます。
そうめんつゆに数滴垂らして召し上がっていただければ、清々しい香りとめんつゆのコクが相まって、上質なそうめんを味わっていただけるのではないでしょうか。

【桶(こが)仕込醤油】
小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地。
日本の4代醬油産地のひとつでもあります。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶(こが)の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上、新しいものでも50年ほど使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいやうま味を引き出せるそうです。
化学調味料、合成保存料、合成着色料などは一切使用せず、1~2年かけてゆっくり発酵・熟成させてつくられるものや、一度仕込んだ醤油を基にさらに仕込む「再仕込み醤油」などもあります。
小豆島の醤油蔵では、昔ながらの桶仕込みだけでなく、最先端の技術を活用して効率良く醤油をつくる技術も持っています。
「グルテンフリーの醤油」や「オリーブ酵母で仕込む醤油」など、バラエティに富んだ様々な醤油もつくられています。
また、醤油をベースに、出汁の素やめんつゆ、ポン酢、ドレッシングなど家庭になくてはならない調味料の開発も行っておられます。

【佃煮】
太平洋戦争後の昭和20年(1945年)、特産品である醤油を活用した島の経済復興を目的として、佃煮がつくられ始めました。
食糧難の時代に芋のつるを醤油で煮込んだ佃煮を開発したところから始まったそうです。
現在、佃煮の素材は島で数百以上もあるとされますが、「本場の本物」認定品は、30年以上にわたり使われ続けている昆布、のり、わかめ、しいたけ、おじゃこちりめん、きゃらぶきの6品目だけとされています。
具材へのこだわりはもちろん、製造技術に多くの特徴を持つ会社もあります。
最近では、「宇宙食」としての佃煮製造技術を持つ会社から、化学調味料・合成保存料・合成着色料を一切使用せず、自然そのままの味わいにこだわり、心から安心して楽しむことができる佃煮の製造にこだわる、昔ながらの佃煮工場もあります。
【ごま油】
江戸時代末期の安政5年(1858年)、小豆島で創業したのが、ごま油の国内シェア50%以上を占めるかどや製油さんです。
小豆島の手延べ素麺づくりにごま油が使われるからこそ、小豆島で創業されたといえるでしょう。
国内流通する量のほとんどを小豆島にある大規模工場で生産しておられます。
工場は土庄港の近くにあり、風向きによってはごまのよい香りが町中に漂います。
<参考サイト>
・本場の本物 現在の認定品目
https://honbamon.com/product/index.html/page/2
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品 本場の本物
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/899.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
・食の原点 小豆島
http://shodoshima-food.com/?page_id=38
・日本一の生産量「ごま油」
https://furusato-tonosho.furusato-basic.com/features/detail/27
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
小豆島の特産品として忘れてはならないのが、手延べ素麺。
小豆島が素麺の名産地になったのには、いくつかの理由があると考えられます。
ひとつは気候。
瀬戸内海に位置する小豆島は、気候が穏やかで雨が少なく、素麺づくりの最盛期である冬も雪が降ることはほとんどなく乾燥しているため、天日干しでの素麺づくりが行われています。
また、瀬戸内海でとれる塩、以前では讃岐平野で栽培されていた小麦(現在は手延べ素麺作りに合う海外産の小麦を国内で精麦して使用している場合もあります)、良質な清水などの原料が調達しやすかったことも理由のひとつといえるでしょう。
小豆島手延べ素麺づくりに欠かせないごま油や、素麺にベストマッチの醬油が小豆島の特産品であることも、何らかの因果関係がありそうです。

<参考サイト>
・小豆島ってどんな島?(基本・地勢・気候)
https://shodoshima.or.jp/what/
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
小豆島のある香川県にはもうひとつの有名な麺、讃岐うどんがあります。
素麺とうどんはどちらも小麦粉でつくる麺なので、違うのは太さだけと思っている方がおられるかもしれません。
実際は製法が大きく異なるため、それに伴って使う原料や食感なども変わってきます。
具体的にどんな違いがあるか、ご紹介します。
(讃岐うどんにも手延べ製法でつくられたものがありますが、ここでは手打ちうどんと手延べ素麺を比較してご紹介します。)
・油を使うか使わないか
まずは原料について。小麦粉・塩・水は共通ですが、素麺はそれに加えて食用油が必要です。
小豆島手延べ素麺ではごま油を使用しています。
油がえしという製造工程で、麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングします。
手打ちうどんでは油は必要ありません。
・生地をのばすか切るか
手延べ素麺は、練り合わせた生地に油を塗ってよりをかけ、のばしては重ねて…を繰り返しながら細長くしていきます。
この工程により、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、重なった地層のように組織されます。
これをさらによりをかけながら細くのばすことで、断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれるのです。
時間が経ってものびにくいのも特徴のひとつです。
同じ素麺でも手延べではなく、機械で生地を薄くのばし、細く切って乾燥させる「機械製法」で作られた素麺は、断面が四角く、大量生産に向き比較的安価でできますが、手延べ麺のようなツルツル感はありません。
手打ちうどんの場合は、小麦粉・水・塩を混ぜた生地をこねては熟成し…を繰り返して生地を鍛えます。
それを麺棒で薄くのばして、包丁で切ります。原料から麺に仕上がるまでの時間は、手延べ製麺よりはるかに短いです。
グルテンの組織を包丁で断ち切るため、麺の断面は四角く、しこしこした食感が生まれます。
・太さの違い
素麺とうどんの乾めんについては、日本農林規格(JAS)により、直径1.3ミリメートル未満のものが素麺で、1.7ミリメートル以上がうどん、と太さの規格が定められています。
石井製麺所では、冬季限定で「手延べ半生うどん」を販売しております。
小豆島手延べ素麺の製法で仕上げた、角のないツルツル、モチモチした食感が好評いただいております。
また賞味期限の長い「手延べ乾うどん」は通年販売。
素麺と食べ比べていただける「手延べ太さくらべセット」もご用意しております。
太さによる味わいの違いを、ぜひ実感してみてください。
三代目:よく勘違い?されるのが、讃岐うどんと小豆島手延べ素麺を同じもの?に思われることです。
うどんがあるから素麺がある(うどんを細くして素麺を作っている)と思われる方もいらっしゃいますし、実際にそうだと思っていたというお話をよくお聞きします。
ですが、太さは置いておいて、製法はかなり異なる物です。
どちらが簡単と言うことではないのですが、素麺の場合、細く伸ばす分だけどうしても時間がかかる物だと思います。
また、讃岐うどんは“打ちたて”を味わうのが一番ですが、素麺は完成後も(保存状況はしっかりと管理する必要はありますが)、さらに寝かせることで“古物(ひねもの)”と言われる希少な高級素麺になります。
同じような地域で似て非なる食品が発展するのは、離島である地理的な特徴(ガラパゴス的)なのかも知れませんね。

<参考サイト>
・手打ちと手延べの違いまとめ|麺の原料や製法に食感の秘密があった!
https://mlb-nff-nba.com/%E6%89%8B%E6%89%93%E3%81%A1%E3%81%A8%E6%89%8B%E5%BB%B6%E3%81%B9%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%EF%BD%9C%E3%82%88%E3%82%8A%E6%89%8B%E9%96%93%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/
・うどんとそうめんの違い
https://www.flour.co.jp/news/article/070/
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
庄川の扇央部から少し下がったところにある、砺波市大門(おおかど)地区で伝統的につくり続けられている手延べ素麺。
「丸まげ素麺」とも言われるユニークな形状が特徴です。
古風な和紙の包み紙ひとつひとつには、製造者の氏名が記されています。
初冬から晩春にかけ、清流庄川の水を使ってつくられる素麺は、鉢伏山から吹きおろす寒風で乾燥させることで、よくしまったコシのあるなめらかな麺に仕上がります。
細くて長い麺が完全に乾かないうちに丸めて仮包装し、さらに10日間かけて本乾燥する、手間ひまかけた素麺です。
天気が変わりやすいこの地で、外干し作業中に雪が降ってきてもすぐ屋内に運べるよう、麺を丸めるようになったといわれています。
ゆでる時には、丸まげ状の麺を2つに割らないと、とても長い素麺になってしまうとのこと。
丸い形状が鍋にすっぽりとおさまるのでゆでやすいそうです。
大門素麺の起源は江戸時代後期にさかのぼります。
大門村の売薬行商である田守三石衛門が加賀藩の御用素麺を持ち帰ったことから、中島次兵衛という村人が加賀に行ってその製法を習得したそうです。
そして村の有志で農閑期の副業として素麺づくりを行うようになったのが始まりといわれています。
最盛期の昭和初期には60数軒の農家で取り組んでいたという記録があるそうですが、現在では12軒前後の農家が素麺づくりに従事しているとのことです。

<参考サイト>
・砺波市じまんの特産品 大門素麺
http://www.tapc.jp/tokusan/tokusan_somen.html
・古来より伝わる手法をそのままに江戸時代から作り続けられている丸まげ素麺
https://www.corezo-mall-tokusyu.com/ookadosoumen
・JAとなみ野 大門素麺
https://www.ja-tonamino.jp/tokusan/ookado?pcview=true
・大門素麺
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%96%80%E7%B4%A0%E9%BA%BA
・大門素麺について
https://kakizato.jp/noodles/
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
昨年、大変ご好評をいただいた「手延べレモン素麺」が5月1日から販売を再開いたします!
2022年5月の発売から夏季限定品として発売し、8月末日までに約4000袋も販売させていただきました。
本当にありがとうございます。
その人気の「手延べレモン素麺」が帰ってきます。
当社独自製法により、小麦と一緒に瀬戸内産レモン果皮を練り上げていますので、麺を口に運ぶたび、ふわっとレモンの香りが拡がります。
食欲の落ちる暑い日でも、食欲をかき立てる優しいレモンの香り。
暑い夏に、ぜひおすすめしたい素麺です。
もちろん、香料・着色料・保存料は一切使用していませんので安心してお召し上がりください。

《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。