【お!いしい けんぶんろく】 Vol.8
小豆島手延べ素麺ならではの『ごま油』について
「手延べ素麺」とは一般的に、小麦粉に食塩と水を混ぜこねて生地を作り、食用植物油を塗りながら手を使って細く伸ばし麺に仕上げたもので、その太さにより素麺、ひやむぎ、うどんなどと規定されています(【お!いしい けんぶんろく】 Vol.4「素麺の規格は太さにより決まっている」参照)
今回のブログでは、手延べ素麺づくりの工程では欠かせない食用植物油、今回は小豆島独自とも言える『ごま油』について掘り下げてみたいと思います。
なぜ小豆島だけで素麺づくりにごま油が使われるようになったのか…実は、はっきりしたことは分かっていないそうです。
ですが、美味しさや機能性の面で多くのメリットがあり、ごま油を使うことは理にかなっていると言えます。
今回は、ごま油の歴史や栄養価、素麺に適している理由などについてご紹介します。
三代目:昨年12月、小豆島土庄町にあるごま油で有名な『かどや製油』様へ工場見学に行ってきました。
圧倒的な国内シェアを誇り、海外への輸出も積極的に行うお会社様ですから、緊張して伺ったのですがご対応頂いたご担当者様はじめ、研究部門のご担当者様含め多くの方にお迎えいただき、アットホームな雰囲気で一気に和んでしまいました。
工場で働くほとんどの方が小豆島ご出身とのことで、とても身近にも感じました。
恥ずかしながら、そういったことが全く分かっていませんでした。
ですが、今回の訪問を通じて『ごま油』の良さや、その理にかなった小豆島手延べ素麺の美味しさの秘訣などに触れることができたと思います。
『かどや製油』様へのリスペクトと感謝の気持ちを込めて、色々と調べてみましたので、よければ皆さまもご一緒に『ごま油』の魅力にお付き合いください。
今回、快く訪問を受け入れてくださった『かどや製油』の皆さまです。
【目次】
① 古代文明の時代から重用されてきた『ごま』と『ごま油』
② 日本で奈良時代から使われている『ごま油』
③ 『ごま油』の栄養と健康や美容への効果
④ 素麺作りに『ごま油』を使うメリットとは
⑤ 『かどや製油』の『ごま油』について
⑥ 《産地紹介》愛知県・和泉素麺
⑦ 《美味しい素麺》手延べ素麺 太麺 編
① 古代文明の時代から重用されてきた『ごま』と『ごま油』
『ごま』はアフリカのサバンナ地帯が原産地とされています。今から約6000年前、アフリカの人々が原生の『ごま』を食用に改良したのが始まりで、そこから中東やヨーロッパに伝わり、さらにシルクロードを経由して、中国や日本に伝来したと考えられています。
古代エジプトでは、搾った『ごま油』を灯火や香料などにするほか、卵や蜂蜜と合わせて滋養強壮の妙薬として使っていたそうです。
あのクレオパトラがボディオイルとして愛用していたという説も。
またミイラを保存するための防腐剤として活用されたという記述もあるそうです。
世界最古の文明であるメソポタミアでは、天地創造の神話において、神が人間の世界を作る時、ごま酒を飲んだと伝えられているそうです。
『ごま』は、菓子、軟膏、儀式用の燈明など、さまざまな場面で利用されていたとのこと。
粘土板に『ごま』と銀貨の交換レートが記載されていた記録も残っているそうです。
2500年ほど前のギリシャでは、医学の父と呼ばれるヒポクラテスの書に、『ごま』が薬用として利用されていた記録があるそうです。
インダス文明を代表するモヘンジョダロ遺跡やハラッパ遺跡でも、『ごま』が多数出土しています。
代表的な利用方法として、人類最古の医学といわれる健康法「アーユルヴェーダ」では、『ごま油』が薬剤として用いられるそうです。
中国では、紀元前3000年頃の浙江良渚遺跡から『ごま』が出土しているとのことです。
世界最古と言われる医薬書「神農本草経」には、黒ごまは「気力を増し、脳髄を補い、飢えず、老いず、寿を増す」不老不死の薬効があると記されているとのこと。
宋の時代の医薬学書「経史証類大観本草」では、練りごまと蜂蜜を混ぜて丸めた「精神丸(せいしんがん)」という薬が、よろずの病を治すとして紹介されているそうです。
<参考サイト>
・【ごまの豆知識①】ごまはどこから来たの?ごまの歴史について
https://www2.katagi.co.jp/blog/2017/07/blog2.html
・「ごま」にまつわるよもやま話。起源と歴史、日本伝来について
https://www.kenkodojo.com/column/knowledge/detail174/
・ごまのはじまり(ごまの起源)
https://www.kuki-info.co.jp/learn-enjoy/stories.html
② 日本で奈良時代から使われている『ごま油』
日本では紀元前1200年頃、縄文時代末期の遺跡で『ごま』の種子が発見されています。
その後、仏教伝来とともに大陸から『ごま』の搾油技術が伝わり、灯油が作られるようになったそうです。
奈良時代には栽培が始まり、食用文化も広がり始めたようです。
正倉院文書には、米や麦の粉を蜜でからめて『ごま油』で揚げた、かりんとうのような菓子があったという記述があるそうです。
平安時代の辞書「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」には、「油飯(あぶらいい)」という料理の解説として「ごま油にて飯を炊く」との旨が書かれていて、ご飯を炊くときに水と一緒にごま油を入れていたと推測できるとか。
食べることができたのは貴族だけで、『ごま油』は庶民にはまだまだ手の届かないものだったようです。
鎌倉時代に中国から伝わったすり鉢が普及したことから、室町時代には『ごま』料理の幅が広がったと言われます。
室町時代の書とされる「大草家料理書」には、鯛南蛮焼の作り方に『ごま油』の記述が見られるそうです。
江戸時代の初期に黄檗宗の開祖である隠元禅師が中国から伝えた「普茶料理(ふちゃりょうり)」という精進料理には、『ごま油』を用いた揚げ物などのメニューがあり、現代でも親しまれている南部胡麻煎餅や、ごま和え、ごま豆腐などの料理も誕生したようです。
明治時代になると、料亭やてんぷら店の広がりに伴い、『ごま油』が一般に普及していったようです。
三代目:こうやって見ると、小豆島に手延べ素麺が伝わってきたときには、まだ『ごま油』はとても貴重なものだったと推測できます。
『かどや製油』様に伺ったところ、「小豆島に手延べ素麺が伝わったのが先か、『ごま油』の製造が先なのか」は、よく分かっていないそうです。
また、『かどや製油』様も昔から今のように大きかったわけではなく、たくさんの製油所が統合されて大きくなっていったそうなのですが、「なぜ『かどや製油』に統合されたのか」も、よく分かっていないそうです。
小豆島でも『ごま』の栽培は行っていたのでしょうが、『ごま油』を作るとなると相当な量の『ごま』が必要だったのではないでしょうか。
しかも、手延べ素麺発祥の地の三輪素麺でも使わない物であり、希少で高価な『ごま油』を誰が使ってみようと思ったのでしょうか。
※写真はAdobe Stock「朱雀門広場の遣唐使船」より
<参考サイト>
・ごま油の豆知識
https://www.nisshin-oillio.com/goods/goma/knowledge/import.php
・ごま油のお話し
https://www.oil.or.jp/info/59/page01.html
③ 『ごま油』の栄養と健康や美容への効果
特有の芳ばしい香りが特徴の『ごま油』には、ここまでで調べたように「美味しさ」はもちろん、「健康」「美容」「薬」「長寿」などの特徴があり、「抗酸化作用」をはじめとした健康効果をもたらす体にうれしい成分が多く含まれています。
こうした作用が小豆島手延べ素麺の美味しさの秘訣になっているのだと考えられます。
ここでは『ごま油』の主な栄養成分について調べてみたので、ご紹介したいと思います。
<ゴマリグナン>
ポリフェノールの一種で強い抗酸化作用があり、老化予防などに役立つと言われています。
また活性酸素を取り除く働きもあり、生活習慣病の予防にも期待されています。
ゴマリグナンの中で最も多く含まれているセサミンには、アルコールの分解促進、コレステロールの減少、血圧上昇の抑制、肝機能の改善、免疫力を高めるなどの働きが期待できます。
またセサモリンは、『ごま油』の製造過程でセサミノールやセサモールに変化します。これらには、油の酸化を抑制する効果もあるとされています。
<リノール酸>
不飽和脂肪酸のひとつで、体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある成分です。
『ごま油』は、全食品の中でも上位に入るほどリノール酸を豊富に含みます。
血中の総コレステロール値を低下させ、動脈硬化を予防する効果があるとされています。
<オレイン酸>
不飽和脂肪酸のひとつ。
悪玉コレステロール値を下げる働きや、腸の働きを活性化して便秘の解消に役立つ働きがあると言われています。
<ビタミンE>
強い抗酸化作用があり、体をストレスから守り老化を抑える働きがあります。
不飽和脂肪酸の酸化を防いでシミやしわの増加を予防、悪玉コレステロールの酸化を防いで動脈硬化予防、毛細血管を広げて血行を改善し冷え性を解消、などの効果が期待できます。
日本人が摂取するビタミンEの約30%は、植物油から摂取しているそうです。
<セレン>
ミネラルの一種で、活性酸素に対抗する酵素を作る働きがあり、老化防止やがんの発症リスクの軽減が期待されています。
ビタミンEと一緒に摂取することで相乗的な作用が期待できます。
これらの成分は、『ごま』の堅い皮の内側にあり、皮つきのまま食べると体に良いとされる成分も吸収されずにそのまま体外に排出されてしまうそうです。
そのため、吸収の良い食べ方には、
煎りごま」よりも「すりごま」「ねりごま」「液状」の状態の方が、栄養成分が消化・吸収されやすくなるそうです。
三代目:自分よりも強い立場の人へ取り入ろうとする際に「ごまをする」という表現がありますが、「ごますり」は栄養価の吸収を助けるためですから、本来、相手を思いやる行為なのかも知れませんね。
<参考サイト>
・スーパーフード・ごまで健康生活
https://www.kadoya.com/enjoy/page06.html
・アンチエイジング効果にも期待!ごま油の栄養
https://magokoro-care-shoku.com/column/nutrition-of-sesame-oil/#%E2%97%86%E3%81%94%E3%81%BE%E6%B2%B9%E3%81%AE%E4%BF%9D%E5%AD%98%E6%96%B9%E6%B3%95
・ごま油の健康効果・効能・栄養|上手な選び方と使い方
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=12301
④ 素麺作りに『ごま油』を使うメリットとは
手延べ素麺では、麺の生地の表面に油を塗りながら引き伸ばし巻いていく「油がえし」という工程があります(【お!いしい けんぶんろく】 Vol.2 「手間を惜しまない伝統の製法・手延べ素麺」参照)。
麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングする工程です。
他の産地では綿実油を使って行いますが、小豆島では100%純正の『天然ごま油』を使います。
抗酸化作用の強い『ごま油』を使うことで、素麺の酸化が抑えられるため、油臭さを取り除く工程が必要ありません。
素麺は熟成させることでコシが強くなり、ゆで伸びしにくくなります。
適切に管理された倉庫で貯蔵された素麺は、高温多湿の梅雨を越すことで熟成し、麺質が変化します。
梅雨を1回越したものを「新物」、2回越したものを「古物(ひねもの)」、3回越したものを「大古物(おおひねもの)」と言い、古いものほど貴重とされる産地もあります。
小豆島素麺で使われる『ごま油』は、油の酸化を抑える働きのあるゴマリグナンやγ-トコフェロール(ビタミンEの一種)を含んでいるため、麺の劣化が抑制され、美味しさや風味を保ったまま長持ちさせることができると考えられています。
小豆島手延べ素麺に『ごま油』を使用することで、麺にできる『ごま油』のコーティングが酸化を防ぎ、ゆっくりと麺を熟成させることができ、またそれが特有の芳ばしい風味や黄味がかった色合いを生み、小豆島の手延べ素麺の特長のひとつとなっていると言えます。
三代目:『かどや製油』様で、様々な油の酸化度合いを比較した図を拝見させていただきましたが、『ごま油』が大変優れていることが一目瞭然でした。乾麺を保存するのに、まさにピッタリな『ごま油』が身近にあったからこそ、小豆島手延べ素麺はここまで発展したのだと感じます。
先人たちの、美味しくしようとするその知恵や努力が、今まさに、産地の大きな特徴ともなっています。
<参考サイト>
・小豆島はそうめんの町
https://shodoshima.npnp.jp/about/somen/
・「そうめん」も熟成がおいしい?
https://www.educe-shokuiku.jp/news/food/somen/
・手延べそうめんの「厄(やく)」とは
https://www.shimabara-soumen.com/14662419348225
・そうめんは古いもののほうがおいしいって本当!?
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/08/post-2913.html
⑤ 『かどや製油』の『ごま油』について
石井製麺所がある小豆島町と反対側にある小豆島のもうひとつの町、土庄町に『かどや製油』様はあります。
土庄町には高松や岡山から港にフェリーが入ってくる航路がありますが、着岸前には目の前に大きく拡がる工場を見ることができます。
時間帯によって(風向きによって)、『ごま』の芳ばしい香りが町中に漂うのも、小豆島ならではのこと。
『ごま油』の国内シェア約50%を占める『かどや製油』様は、小豆島発祥の企業です。
江戸時代末期の安政5年(1858年)に創業。
店舗と工場が交差点の角にあったことから「かどや」の名が付いたそうです。
小豆島の素麺づくりに欠かせない『ごま油』を扱い、関西で広く知られるようになりました。
昭和32年(1957年)、東日本地区の代理店である小澤商店と共同で出資して、東京の品川に本社を置き、全国に事業を拡大しました。
今でも小豆島で大規模工場を稼働しています。
『ごま油』には、『ごま油』100%の「純正ごま油」と、大豆や菜類などの食用油をブレンドして作った「調合ごま油」の2種類があるそうです。
現在は、「特定保健用食品」の許可を得た「トクホのごま油」も販売しておられます。
かどやの「純正ごま油」の原料は、『ごま』100%。
良質な『ごま』ならではの香りや味、栄養価の高さが特徴です。
もちろん、石井製麺所では、『かどや製油』様の『ごま油』を使って手延べ素麺を作っています。
三代目:これだけすごいお会社様ですから、本当に感心しきりなのですが、最後に。
日本全国、世界のあちこちに『ごま油』を供給されているので、見学をしていても気になったのは油を搾った残りかす…。
とんでもない量が出て困っているのでは?と思ったのですが、それは全て動物用飼料として再利用されているそうです。
そんな『ごま』を知り尽くした『かどや製油』様に負けないように、小豆島手延べ素麺をもっとたくさんの方に食べていただけるように精進してまいります。
<参考サイト>
・かどや製油株式会社
https://www.kadoya.com/specialty/pure/
・日本を代表するごま油!小豆島のかどや製油の歴史
https://humoto.jp/skanko/page-279/
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
⑥ 《産地紹介》愛知県・和泉素麺
今回は、手延べ麺を製造する8産地目をご紹介します。
和泉素麺は、愛知県安城市和泉町に江戸時代中期から伝わる手延べ素麺です。天明の大飢饉(1782年~1788年)の頃、麦を生産していた和泉地区で、貧困に苦しむ農民が副業として素麺作りを覚え、広まったと言われています。
和泉素麺の特徴は、日本一とも言われるその長さ。麺を約3メートル60センチの長さまで伸ばして作り、長いまま商品としています。
その昔、木造家屋に使用される「貫(ぬき:柱などに通す水平材のこと)」という木材を、麺をつくる時に用いて長く伸ばすようになったそうです。
この貫の長さが、昔の尺度で二間分(一間=約1メートル80センチ)あったことから、日本一長い素麺ができたと言われています。
和泉素麺のもうひとつの大きな特徴は、半生麺であること。
多くの手延べ素麺の産地では乾燥している冬に素麺を作りますが、和泉素麺は夏に作られます。
日中の暑い日差しで乾燥させた麺を、夕方頃から吹く三河湾の湿った南東の風、通称「そうめんの風」によって半生の状態に戻します。
これにより、麺はしんなりと柔らかく絹のような風合いになり、表面はなめらかでのど越しもよく、もちもちの食感が生み出されるそうです。
一度乾燥させているので、日持ちもするとのこと。
この独特の半生戻し製法を生み出したのも、和泉村の人々の知恵ではないかと考えられています。
文化5年(1808年)和泉村庄屋の都築孫助が、重原藩(刈谷)への暑中見舞品として素麺を贈っていたと言われています。
この素麺が好評で、それから毎年、陣屋の暑中見舞いに贈ったり、藩内の庄屋連中にも素麺料理をふるまったりしていたそうです。
昭和の初めには天皇陛下への献上品となったこともあるようです。
ピーク時には和泉地区を中心に60~70軒の製麺所があった時期もあるそうですが、食糧事情が緩和された昭和40年頃には、生産戸数は2~3軒までに激減し、現在では、古来からの伝統的な製造方法を継承して製造している生産業者は数軒のみだそうです。
※写真はPhotoAC「愛知県安城市の安城七夕まつり」より
<参考サイト>
・もっちもちで長~~い半生そうめん!愛知「和泉そうめん」の魅力とは?
https://icotto.jp/presses/11264
・和泉手延長そうめん
https://www.masugiseimen.com/izumi.php
・和泉そうめん(安城和泉手延べめん)の歴史
https://www.fukurokuju-gift.com/hpgen/HPB/entries/14.html
・私たちのこだわり | うどん 通販は半生手延べ一丈麺「和泉そうめん丈山の里」
https://www.izumi-somen.co.jp/p_process/
・和泉の長そうめんの由来
http://www.miyakoseimen.com/jp/business/
⑦ 《美味しい素麺》手延べ素麺 太麺 編
「小豆島400年の伝統」と「石井製麺所のこだわり」の基本といえる手延べ素麺の太麺をご紹介いたします。
小豆島の穏やかで雨の少ない気候の中で、400年を超える伝統を持つ手延べ素麺。
石井製麺所では「天日干し」と「屋内干し」のバランスにこだわり、日々最適な乾燥具合を目指して、素麺に寄り添いながら心を込めてつくっています。
こちらは一般的な素麺より、少し太めに仕上げた「太素麺」です。
2日間かけてじっくり乾かすことで、太めでありながらよく締まった麺に仕上げています。
太めの麺はにゅうめんなど、温かい食べ方によく合います。
サラダ、パスタなど洋風アレンジもできます。
一度お召し上がりいただくとリピートされる方の多い一品です。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ素麺 太麺》 https://141seimen.thebase.in/items/29006413
三代目:次回のブログは3/13ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.7
めんつゆの歴史と地域性について
めんつゆは、醤油と砂糖やみりんなどを煮て作る「かえし」に、だしを合わせた混合調味料です。
素麺やそば、うどんなどの麺料理だけでなく、家庭料理の味付けにも広く使われており、いまや購入金額は醤油を上回っています。
今回は、素麺と相性の良いめんつゆの歴史や地域性についてご紹介します。
三代目:ブログのネタとして、「めんつゆ」って切口が新しいのではと考え、歴史などを少し調べてみました。
素麺にとって「めんつゆ」は切っても切れない大切なもののひとつだと思います。
どんなに美味しい素麺も、めんつゆが美味しくなければ台無しになってしまいますし。とても大切ですよね
美味しい素麺と自信があるからこそ、美味しいめんつゆについても考えてみたいと思いました。
【目次】
① 醬油の歴史と三大産地
② めんつゆの起源は室町時代
③ 地域による味の違い<醬油>
④ 地域による味の違い<だし>
⑤ 《産地紹介》岡山県・備中(びっちゅう)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べ半生うどん 編
① 醬油の歴史と三大産地
めんつゆの主な材料である醬油は、大豆と小麦、塩を発酵熟成させたものです。
まずはその醤油について深掘りしてみます。
そのルーツは、紀元前700年頃の中国の古文書「周礼(しゅうらい)」に記述のある「醤(ひしお)」と言われています。
「醤」とは当時の塩蔵品の総称だったようです。
原料別に「草醤(くさびしお)」「肉醤(ししびしお)」「穀醤(こくびしお)」の3種類に分けられ、「草醤」は漬物、「肉醤」は塩辛類で、「穀醤」が現在の醤油や味噌の原型と考えられています。
日本では飛鳥時代のものと思われる木簡に、「醤」の文字が見られます。
大宝律令によると、宮廷の料理を司る「大膳職(だいぜんしき)」に属する「醤院(ひしおつかさ)」で、大豆を原料とする醤が作られていたとされています。
奈良時代から平安時代の宮中宴会では、膳の上に「四種器(よぐさもの)」という4種類の調味料「塩・酒・酢・醤」が乗っていたという記録があり、醤の形状が固形から液状へと変化したのもこの頃のようです。
大豆が日本で広く生産されるようになってきた鎌倉時代には、醤の一つである味噌の製造過程において、味噌桶の底に溜まった液体を「溜(たまり)」として利用していたそうです。
これが醤油の原型とされています。
室町時代の中頃には、現在の醬油に近いものが作られるようになりました。
1597(慶長2)年の日常用語辞典である「易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)」に、「醤油」の文字が登場しています。
室町時代の末頃から、関西を中心に醤油の醸造が盛んになりました。
江戸時代の中期には、大阪・堺、和歌山・湯浅、兵庫・龍野などの産地で醬油の量産化がすすみ、製法が進化して品質も向上したと言われ、醬油が庶民にも広く普及した時期であったようです。
江戸幕府が開かれたことに伴い、経済や文化も江戸を中心として発展していきます。
江戸初期には、関西で生産された味や品質の良い「下り(くだり)醤油」が大量に江戸へ送られたという記録が残っています。
江戸時代中期になると関東でも様々な産業が栄え、今の千葉県の銚子や野田が醤油の一大産地となり、江戸の人々の嗜好に合わせた「濃口醬油」が、関東で普及したようです。
現在、醤油の代表的な産地として知られているのが、千葉県・兵庫県・香川県です。
千葉県の銚子と野田は、江戸川と利根川の水運を利用し、原料の入手や消費地への運搬にも都合がよく、醤油の産地として発展しました。
千葉県の醬油の生産量は、日本全体の3分の1を占めています。千葉で作られる醬油の多くは、濃口醬油です。
日本の醤油生産量の約15%を占める兵庫県。
その西部に位置する龍野市は、淡口醬油の一大産地です。
播磨平野の豊かな小麦、山間部でとれる良質の大豆、赤穂の塩、清らかで鉄分の少ない川の水が、淡口醤油作りに適しているとのことです。
香川県の小豆島では、木桶仕込みで醬油が作られてきました。
海に囲まれておりもともと製塩業が盛んでしたが、瀬戸内の各地で塩が生産されたため、過剰となってしまった塩を原料として活かせる醤油作りが始められたとされています。
温暖な気候が醤油作りに不可欠な麹の発酵に適していること、天下の台所である大阪に近いこと、原料の運送にも便利な立地であることなどから、醬油の産地として発展を遂げたと考えられています。
<参考サイト>
・しょうゆの歴史を紐解く
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html
・しょうゆを知る 歴史
https://www.soysauce.or.jp/knowledge/history
・日本食文化の醬油を知る
http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/mame01-a.html
・【醤油】歴史と日本の三大名産地の特徴を知ろう!
https://thegate12.com/jp/article/172#content-2
② めんつゆの起源は室町時代
醬油を使ったかえしができる以前の室町時代頃は、うどんを「たれみそ」と呼ばれるものにつけて食べていたそうです。
みそに水を加えて煮つめ、布袋に入れて吊るして漉したもので、これがめんつゆの原型と考えられています。
江戸時代初期、そばが食品として普及しました。
当初はたれみそにつけて食べていましたが、作るのに手間がかかる、絞りかすが出るなどの点から、醤油ベースのそばつゆができたようです。
1751年(寛延4年)の「蕎麦全書」という書物には、たれみそを使ったつゆと醤油を使ったつゆの2種類の作り方が記述されています。
江戸時代後期には、醤油にみりんやだしを合わせたものが流通するようになりました。
明治時代になると甘味の強いつゆが好まれるようになり、砂糖を加えたものが主流となりました。
女性や子供もそばを食べるようになり、その嗜好に合わせたからと考えられています。
商品としてのめんつゆは、1952年に中京の食品メーカーが販売したものが最初と言われています。
1997年制定のJAS規格では、めん類等用つゆは「しょうゆに糖類及び風味原料(かつおぶし、こんぶ、乾しいたけ等)から抽出しただしを加えたもの又はこれにみりん、食塩その他の調味料を加えたもの」と定義されています。
1980年代以降、日本人1人当たりの醤油の消費量は減少傾向にありますが、めんつゆは需要が高まり消費量が伸び、1994年にはつゆ・たれ類の世帯当たりの年間支出金額が醬油を上回り、2012年にはその差が2倍以上に拡大しています。
三代目:めんつゆって、比較的新しい物と思い込んでいましたが、歴史のある食べ物だったんですね。
そう考えると、めんつゆにつけて食べる今のスタイルは、実はもう何百年も続いているということなんですよね。
小豆島出身なのでお醤油にはこだわりがありましたが、これからはめんつゆにももっと想いを巡らせて、手延べ麺の食べ方や味わい方も研究していきたいですね。
<参考サイト>
・めんつゆについて
https://food-drink.pintoru.com/mentsuyu/about-mentsuyu/
・めんつゆの躍進
https://www.foodwatch.jp/daizu039
・ウィキペディア「めんつゆ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%81%E3%82%93%E3%81%A4%E3%82%86
③ 地域による味の違い<醬油>
めんつゆの味を決める2大要素、醬油とだし。それぞれ地域ごとに、好まれる味や素材が異なるようです。
醬油は、その製造方法から3つに分けることができます。
<本醸造方式>
大豆と小麦を、麹菌や酵母、乳酸菌など微生物の力により時間をかけて発酵熟成させる、昔ながらの醸造法。深い旨みと、芳醇な香りが特徴。生産量全体の約9割を占めています。
<混合醸造方式>
本醸造方式でできたもろみにアミノ酸液(大豆などに酸を加え加水分解して作ったもの)などを加えて発酵熟成させる製法。
<混合方式>
本醸造形式で作った生揚げ醬油にアミノ酸液などを混ぜる製法。そこから砂糖類や甘味料などを加えて旨みとのバランスを調整するなどアレンジされることもあります。
これらを踏まえ、地域ごとに好まれる醬油の傾向を見ていきます。
<北海道>
本醸造方式の濃口醬油に加え、共働きで農地開拓していたことから手軽に調理できる濃縮つゆが広く普及。特産品である昆布のだしを使った昆布醬油も多く使われます。
<東北>
甘口の本醸造醬油や、やや甘めの混合醬油が沿岸部を中心に好まれます。濃縮つゆやだし醬油が、醤油代わりに日常的に使われているようです。
秋田では、ハタハタやイワシを使った「しょっつる」という魚醬が作られます。
<関東>
本醸造の濃口醬油がほとんど。海に面した江戸で、魚の臭みを和らげる濃口醬油が広まったとされます。甘味料を添加せず、すっきりした味わいが特徴。
<北陸>
甘口の本醸造醬油や甘い混合方式の濃口醬油が主に使われています。北洋漁業の漁師の嗜好に影響を受けたという説も。石川では、イカの内臓やイワシを使った「いしる」という魚醬が作られます。
<中部>
本醸造方式の濃口醬油が多く使われます。
また愛知・岐阜・三重を中心とした地方では、豆味噌の製造過程で生まれた色の濃い「たまり醬油」と、小麦が主原料の色の淡い「しろ醬油」も作られています。
<近畿>
本醸造方式の濃口醬油と淡口醬油を、料理により使い分けます。淡口醬油は江戸時代に兵庫県龍野で生まれたとされます。
<中国>
九州北部の甘い醬油が入ってきたことにより、やや甘い混合醬油が多く使われます。瀬戸内に比べ、日本海に面した萩地方の醬油はより甘いと言われています。
地元産の牡蠣エキスを使った牡蠣醬油などの加工品も作っています。
<四国>
地域により特徴が分かれます。
高知や愛媛は九州の影響を受けて、甘味の強い混合醬油が好まれます。
江戸時代から醬油の産地として知られる香川県小豆島では、関東同様、甘味料を使用しない本醸造の濃口醬油が使われます。
讃岐うどんのつゆには、混合の淡口醬油が使われています。
また香川ではいかなごを使った「いかなごしょうゆ」も作られていました。
<九州・沖縄>
混合方式の濃口醬油と淡口醬油を料理により使い分けます。九州南部では強い甘味のある醬油が好まれる傾向にあります。
沖縄は、東京からの物資調達が多かった背景もあり、濃口醬油が多く使われます。
<参考サイト>
・関東は濃いめ、関西は淡め、九州は甘め…ではほかの地域は?日本各地で違う「しょうゆ文化」の謎に迫る
https://news.yahoo.co.jp/articles/9618729e58a029b78d8e1bd63c1a0e6e39b5b1b8
・しょうゆのすべて
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/index.html
・「調味料」地域性 醬油編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_03.html
・しょうゆと郷土料理
https://www.kikkoman.co.jp/pdf/no26_j_008_025.pdf
④ 地域による味の違い<だし>
だしの味が関東と関西で異なることは、よく知られていると思います。
関東では主にかつお節が、関西では昆布が多く使われます。
この違いの理由については、2つの説があるようです。
1つは、昆布の流通。
室町時代、北海道でとれる昆布が船で京都まで運ばれる、通称「昆布ロード」が確立しました。
江戸時代には北前船で酒田から下関を通り、大阪を経由して江戸へ向かう西廻り航路が開かれました。
関西では京都の公家文化の影響で、上質な昆布のだしを使って素材の味を引き出す京料理が誕生。
天下の台所と呼ばれ、比較的裕福な商人の町であった大阪でも、昆布だしが広まったようです。
江戸まで運ばれた昆布は関西で売れ残ったものだったので、関東には昆布だしが根付かなかった、という説です。
当時の関東では肉体労働者が多かったことから、味付けの濃いものが好まれ、濃厚なかつおだしやそれに合う濃口醬油が発展していったと考えられています。
もう1つの説は、水質の影響です。
関西の水は硬度が低く、昆布だしを引き出すのに適しており、関東の水は関西に比べ硬度が高いので昆布だしが出にくいと言われています。
そこで濃いだしをとるために、関東ではかつお節が多く使われるようになったという説です。
関東と関西だけでなく日本の各地域で、それぞれの特産品などの影響により、だしの種類は異なります。地域ごとによく使われるだしの種類を見ていきます。
<北海道>
かつお節、昆布など。
くせのないさっぱりとしただしが好まれます。
<東北>
煮干し中心、さば節など。
魚の香りがしっかりとした、濃いだしが好まれます。
<関東>
かつお節、さば節など。
関東では江戸時代の中期頃から、カビつけした枯節が好まれるようになりました。甘味があり、上品な香りが特徴で、まろやかな味わいです。
<北陸>
昆布、かつお節など。昆布の加工品も多く使われます。甘めのだしが好まれます。
<中部>
・さば節、むろあじ節など。味も香りも強めの濃い出汁が好まれます。
<関西>
・昆布、かつお節、さば節、煮干しなど。
関西では、カビつけをしないかつおの荒節が好まれました。昆布をメインに、煮干しやかつおなどを合わせただしが特徴。澄んだ黄金色の上品なだしを、薄口醤油に合わせます。
<中国>
煮干し、焼きアゴ、かつお節など。
パンチのきいた濃い煮干しのだしが好まれます。
<四国・九州>
煮干し、焼きアゴなど。
黒潮に乗ってイワシがたくさん獲れたことから、高級品だったかつお節や昆布の代用品として手に入りやすい煮干しが使われ、その文化が根付いたと考えられています。
<沖縄>
かつお節、豚骨。
沖縄はかつお節の消費量が全国1位です。中国に輸出する際の中継港であったことや、太平洋戦争時に水産業を積極的に行っていたことが理由ではないかと考えられています。
三代目:お醤油の違いはそれなりに分かっているつもりでしたが(今回調べて、結構知らないことが多かったですが)、だしにもこんなに違いがあるのに驚きでした。
醤油×だしの種類でめんつゆの味わいが変わるとすると、その組合せはとっても多いものになりますよね。
さらにだしを重ね合わせたりすると…そう考えると、めんつゆひとつとっても楽しみが大きくひろがりますね。
<参考サイト>
・「だし」の誕生と発達
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/17/2.html
・地域ごとで全く違う!?日本各地の出汁文化!
https://gyoumuyo-dashi.com/2020/03/20/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%A7%E5%85%A8%E3%81%8F%E9%81%95%E3%81%86%EF%BC%81%EF%BC%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%90%84%E5%9C%B0%E3%81%AE%E5%87%BA%E6%B1%81%E6%96%87%E5%8C%96%EF%BC%81/
・だしの話
https://shop.ninben.co.jp/blog/?cat=20
・だしを知る
https://www.e-bonito.com/know/
・「だし」の地域性 節類・煮干編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_01.html
・「だし」地域性 昆布編
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/shokuiku/library/japanesefood/03_02.html
⑤ 《産地紹介》岡山県・備中(びっちゅう)素麺
今回は、手延べ麺を製造する7産地目をご紹介します。
備中手延べ素麺は、昔の備中国にあたる岡山県浅口市鴨方町とその周辺の里庄町・矢掛町・笠岡市などで作られる手延べ素麺で「備中素麺」と呼ばれ、地元でもとても人気が高いそうです。その生産の中心となる地名からか「鴨方素麺」とも呼ばれていたり、商標名では「かも川」の名称が有名なんだそうです。
この地域では素麺を一年中常備している家庭が多く、冷やして食べるだけでなく温かいにゅうめんも日常的に食べられており、みそ汁に入れたり、赤ちゃんの離乳食にする家庭もあるそうです。
弾力があり煮崩れしにくいコシの強さと、なめらかなのど越し、歯切れの良さが特長だとか。
備中での麺づくりの歴史は大変古く、吉備国に「麦切(むぎきり)」という記述が古書に残っているそうです。朝廷に献上されたという記述が残っているそうです。少なくとも9世紀頃には吉備地方でうどんやそうめんの原型のようなものが作られていたと考えれています。
香川をはじめ、岡山、兵庫(播磨)は古くから小麦の産地で、後にその品質の高さから「三県物」と呼ばれるようにまでなった歴史があります。
備中素麺は、杉谷川の清流と、備中の大動脈とも言われる高梁川流域で栽培された小麦、瀬戸内海沿岸で作られる塩といった良質な素材が入手しやすい土地柄と晴天の多い気候からか、素麺作りが盛んになっていったと伝えれています。さらに、杉谷川には多くの水車が設置され、製粉から製麺まで一体化した素麺作りを行っていたようです。
江戸時代後期の文政年間に浅口郡口林村の原田敬助という人が、伊勢参りの道中、播州で素麺を食べたことをきっかけに、製麺職人を播州から村に移住させたとされています。
最初は小坂東村(現・浅口市鴨方町小坂東)の杉谷川流域に技術者が住み、そこから地元住民に製麺技術が伝わったと伝えられているので、「麦切」に見られるような小麦の加工品づくりとしての土壌は古くからあったことから、地元でも定着は早く人気が出たのかも知れませんね。
明治になると農家の副業にとどまらず、製麺を専業とする業者が多数生まれ、明治32年(1899年)には組合が結成されたそうです。
昭和初期にはいち早く工業化に着手し、手延べ用のこね機やイタギ機を開発。
手延べ作業の効率を上げることにより、大量生産と品質の安定化に成功したとされています。
最盛期には播磨に次いで生産量全国2位となり、約200の業者で年間約10万〜12万箱を製造していたそうです。
農林水産省の統計(平成21年)によると、手延べ素麺の都道府県別生産量において、岡山県は第6位となっています。
三代目:岡山県の備中素麺の名前は知っていましたが、歴史などは全く知りませんでした。小豆島での素麺づくりと共通項も多く、とても興味が湧いています。
このブログを書くたびに行ってみたい産地が増えて大変です(汗)。
まだまだブログを書いているだけなので、実際に産地や工場を見学させていただき、勉強していきたいと思います。
また、様々な産地で私のような後継者がいらっしゃれば、ぜひお目に掛かってお話を伺ってみたいと考えています。
<参考サイト>
・【備中手延べ麺】そうめん・うどん・ひやむぎまで。江戸時代からの名産品
https://fuuraiki.com/bitchuu-tenobemen/
・備中手延べそうめん
http://soumen-guide.net/archives/115
・乾めん類の都道府県別生産量
https://www.shimabara-soumen.com/article/14800426.html
⑥ 《美味しい素麺》手延べ半生うどん 編
小豆島には21の醤油蔵があり、独自の醤油やめんつゆを作っておられます。
すごいのは、各蔵によってそれぞれ味が異なるということ。ですから、島の方たちにも一人ひとりの“推しめんつゆ”があります。
島に来られた際には、ぜひ醤油やめんつゆなどの味の違いを楽しんでくださいね。
さて、今回はめんつゆのお話を書いたので、1つのめんつゆで二度美味しい「手延べ半生うどん」の食べ方をご紹介します。
たっぷりの水を鍋に入れ沸騰させます。
半生うどんは少し茹で時間が長いですが、焦らずじっくり茹でてください。
パッケージに記載の通りに茹で、冷たい水でサッとゆすげば麺が引き締まり、もちもちでシコシコな独特の食感を味わっていただけます。
そして、ネギやおろし生姜などの薬味を入れたお好みのめんつゆに、麺をひたして食べれば冷やしうどん(ざるうどん)として召し上がっていただけます。
器やタライなどにお湯を張って、その中に浸し麺が冷めないようにしながら、“釜揚げうどん”としてめんつゆにつけながら食べるのも、寒い日にはおすすめです。
もう1つの食べ方は、同じように麺を茹で冷たい水でサッとゆすぎ、しっかりと麺の水を切って薬味と一緒に器へ盛り付けておきます。
それと同時にめんつゆを火に掛け沸騰させ、器に盛ったうどんの上にバサッと掛ければ“冷やあつぶっかけうどん”のできあがりです。
お好みで温玉などを盛り付ければ“釜玉うどん”に。
めんつゆは熱々でも、麺は冷たく引き締まっているのでそのギャップが美味しいですよ。冬でもおすすめの召し上がり方です。
めんつゆ自体にも色々と味わいがありますが、冷たくしたり温めたり、さらに、麺を冷やしたり温かくしたり。
その組合せで色々と味わいが変わって、美味しく召し上がっていただけます。
石井製麺所の「手延べ半生うどん」は、冬季限定商品となっていますので、ぜひこの機会に色々と食べ方をお楽しみください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《手延べ半生うどん》 https://141seimen.thebase.in/items/29007530
三代目:次回のブログは2/27ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.6
冬が手延べ素麺づくりに最適な理由
夏の食べ物というイメージを持つ方も多い素麺ですが、実は手延べ素麺作りは冬が本番です。
手延べ製法では生地を細く引きのばして作るため、気温が低く空気が乾燥した気候が適しているとされます。
冬に手延べ素麺作りが盛んに行われる理由について、調べてみました。
三代目:小豆島は温暖で穏やかなイメージがありますが、冬はそれなりに寒くなり(雪が降ることもあります)、季節によって風がとても強い日が続いたりします。
ただ、比較的雨は少なく(それも年によって異なりますが)、海辺に近いながら空気は乾燥しがちです。
神奈川からUターンで戻ってきて、久しぶりに感じた冬の小豆島のイメージは、思ったより温かくないな…でした。
【目次】
① 寒い季節に作られる“寒製素麺”
② 冬の農閑期の副業として発展
③ 早朝3時から始まる手延べ製麺(※石井製麺所の場合)
④ 《産地紹介》愛媛県・五色(ごしき)素麺
⑤ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編
① 寒い季節に作られる“寒製素麺”
明け方の冷え込みが厳しく、空気の乾燥している12~2月頃の厳寒期、全国の手延べ素麺の産地で素麺作りが最盛期を迎えます。
寒い季節に作られる素麺は、春先や秋口に比べて塩の量が3割ほど少なくても細く長く伸ばせるので、麺の風味を損ねないそうです。
また、乾燥した冷たい空気が程良い時間で水分を飛ばしてくれることから、コシが強くて甘みがあり、小麦粉本来の味わいを楽しめる良質な麺に仕上がると言われます。
空気中の水分を吸収しにくいため、長期の保存にも良いそうです。
逆に夏は湿気が多く、生地が湿気を吸い込んでしまうので、素麺作りにあまり適していないとされています。
寒風にさらすことで麺がしまって旨みが増し、色もより白く美しく仕上がります。
香川県小豆島では、自然環境の良さを活かし天日干しでの素麺作りが行われます。
昔から続く冬の風物詩ともなっており、1月にはテレビのニュースでも取りあげられています。
<参考サイト>
・冬の風物詩 寒造り「そうめん」最盛期迎える
http://www.soba-udongyoukai.com/info/2013/2013_0109_kandukuri.html
・冬風そうめん色白に 小豆島「極寒づくり」最盛期
https://www.sankei.com/article/20180115-YFMJH3VPVNOBVJJ6VZENS5KWPU/
・瀬戸内の冬空に “天日干し” 小豆島の「寒そうめん」
https://www.youtube.com/watch?v=0EhJEo70Cw8
・そうめん作りは寒い季節が最適な時期
https://www.miwa-soumen.com/blog/203080.html
・手延べそうめんづくりはなぜ冬にする?
https://miwaokina.com/knowledge/knowledge/soumen/winter.html
② 冬の農閑期の副業として発展
素麺作りは、日本の素麺発祥の地とされる奈良県三輪から、揖保乃糸で知られる兵庫県の播州や、香川県小豆島など全国各地に伝わったと考えられています(「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.1 素麺1200年の歴史と、その三大産地について」をご参照ください)。
素麺作りに適した気候風土に恵まれ、かつ、良質な原料の調達が容易であった地域で、冬の農閑期を支える副業として発展したようです。
小豆島では、温暖で雨が少なく日照時間が長い気候のもと、瀬戸内海で採れる天然塩や、讃岐平野で作られる小麦粉、良質な清水、島で作られるごま油などを使っての素麺作りが行われ、主要産業へと成長していきました。
「池田町史」によれば、製法の伝来当初は盛んではなかったようですが、18世紀の初め(江戸後期)に大変盛んになったと当時の販売記録や輸送船の記録に残っているそうです。
また水源豊かな中山地区では、製造効率を上げるため、牛ではなく水車を使い製粉をされていたそうです。その当時から、今で言う組合のようなやり方で、製粉した小麦粉を共有し、製造担当者が素麺を作り、それをまとめて販売するようになったそうです。切磋琢磨しながら協力して製造効率を上げ、品質を安定させた素麺が評判となり、広まっていったようです。
そのおかげもあり今もなお、伝統的な手延べの製法が受け継がれ、日本全国に出荷されています。
三代目:その昔、小豆島に手延べ素麺の製法が伝わったのは、当時、お伊勢参りなどで三輪(奈良県)に立ち寄った際、耕牛を使い小麦を製粉して素麺を作る様子を見て、その地で製法を学び持ち帰ったとされているそうです。
これは、小豆島の中で民俗学を研究されている方からお聞きしたことなのですが、当時のお伊勢参りには誰でもいけるわけでなく、大変お金がかかったそうです。
その地域でお伊勢参りに行く代表者を決め、みんなでお金を出し合って行かせていたそうです。
当然、長期の旅となるため農閑期におこなっていたでしょうから、三輪を訪れた際に素麺を製造していて「農閑期の副業はこれだ!」と目を付けることが出来たのでしょう。
また、同じ境遇の者同士だからこそ、その製法を教えてくださったのではないでしょうか。
兎にも角にも、お伊勢参りに行って持ち帰った方の先見の明から、現代にも続く地場産業となったのでしょうね。
※写真は、殿川ダム上流に今も残る「殿川水天宮」。ブログ「小豆島そうめんの歴史をたどる」もご覧ください。
<参考サイト>
・小豆島の風土と素麺づくり
https://shimazen.co.jp/soumen/history
・手間ひまを惜しまない職人の技 小豆島の「手延べそうめん」
https://www.inoueseikoen.co.jp/products/detail.php?product_id=430
③ 早朝3時から始まる手延べ製麺
冬の気候を活かした素麺作りは、丸一日かかります。
小豆島の石井製麺所の例で言えば、材料を配合してこねる作業を、早朝3時ごろには始めます(「【お!いしい けんぶんろく】 Vol.2 手間を惜しまない伝統の製法・手延べ素麺)をご参照ください)。
配合量は毎日同じというわけにはいきません。
その日の天候に合わせて、塩の量や練り具合、天日干しと室内干しの時間配分を調整するなど臨機応変に対応します。
こねてのばして、帯状になった生地を半分に折るようにして丸め、麺生地同士がくっつかないように、ごま油を塗りながら巻いていきます(油がえし)。
油がえし後は、しばらく寝かせて生地を熟成させます。この時間の長さも、気候や温湿度によって変えていきます。
生地をさらにのばして重ねて、のばして重ねて…を繰り返すことで、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、まるで何層にも重なった地層のように組織されます。
これを、よりをかけながら細くのばすことで断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれます。
多くの工程を経て細くのばした麺を、“はた”と呼ばれる干し台につけていきます。
その日の湿度に合わせて、手作業で箸を入れ、のばし上げた麺線のひっつきを一本一本丁寧に箸で分けていきます(はし分け)。
これを天日干しするのですが、完全に乾くまで屋外に干すのではなく、表面の水分がほどよく乾燥したのを見計らって、室内乾燥に切り替えます。
天日干しで表面をさっと乾かし余分な水分を取り、室内乾燥でじっくり時間をかけて乾かすことで、麺の一本一本がよく締まり、舌触りがつるっとした、見た目もなめらかで美しい素麺になるのです。
天日干しが上手くいかないと、乾きすぎによって締まりのない、ザラつきの気になる麺になってしまいます。
常に同じ味・同じ品質を保てるよう、ただひたすら一本一本丁寧に、素麺を作り続けています。
三代目:石井製麺所だけではないと思いますが、厳寒期の素麺作りは大変です。
太陽が昇るずっと前、深夜の空気はキンと張りつめています。仕込みの際は当然、水も使うので朝の作業は特に寒さが厳しく感じる時間かもしれません。
それなら暖房をつければいいかと言えば、そう簡単な話ではありません。
麺生地は、特に温度の変化に敏感なため、急な温度変化は熟成のコントロールを難しくしてしまいます。
そして何より、冬の麺のよさが失われてはいけません。
石井製麺所ではあまりに寒くて熟成が進まないときを除き、ストーブの使用は最低限にしています。
伸ばしから乾燥にかけては、半屋外とも言える環境での作業になります。作業が始まるとじっとしている時間は少ないので、だんだんと体が温まってくるのですが、作業を始める前は気合いが必要になりますね。
④ 《産地紹介》愛媛県・五色(ごしき)素麺
五色素麺は、愛媛県松山市の郷土料理として知られる5色の素麺。
人工着色料は使わず、もち麦・蜜柑・梅・抹茶など自然のもので着色されているそうです。
その由来は江戸時代にさかのぼるといわれます。
享保7年(1722年)、寛永から続く製麺会社の八代目・長門屋市左衛門の娘が椿神社に参拝したとき、美しい五色の糸が下駄に絡みついたのを見て、父親に「そうめんに五色の色をつけてみては?」とすすめたそうです。
これを機に色麺の技術が編み出されたと伝えられています。
5色の彩りのそうめんは評判となり、参勤交代の折に献上した八代将軍徳川吉宗から「格別上品至極」と賞賛されたとのこと。
また、朝廷からも「美麗五色は唐糸の如く美し」との綸旨を賜り、「五色そうめん」の名が全国に知られるようになったと言われています。
五色素麺を愛した著名人も数多く、近松門左衛門は「味はいうまでもなく、その美しい姿はまるで冬の日に輝きながら、舞い踊っている陽炎のよう」と賞しています。
正岡子規は「文月のものよ五色の糸そうめん」という句を残しています。
また、愛媛を代表するお座敷唄である「伊予節」にも、松山の名物名所のひとつとして「おとに名高き五色そうめん」と唄われています。
<参考サイト>
・カラフルそうめんの元祖!? 松山の「五色そうめん」を地元民オススメの贅沢な食べ方で!
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_2662/
・五色そうめんの歴史
https://goshiki-soumen.co.jp/history/
・色麺300年! 愛媛の夏の味・五色そうめんの覚悟
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202206030011
⑤ 《美味しい素麺》手延べ麺 蕎麦風味 編
石井製麺所のオリジナル手延べ麺に「手延べ麺 蕎麦風味」があります。
これは、小麦粉8に対して、蕎麦粉2を混ぜ、手延べ製法で作った麺です。
蕎麦の風味を感じながら、手延べ麺独特のツルッとした食感が楽しめるととてもご好評を得ています。
さて、なぜこの時期に蕎麦を紹介?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「年越し蕎麦」はあまりにも有名ですが、「節分蕎麦」ってご存じでしょうか?
一般的に「年越し蕎麦」といえば、12月31日にコタツに入りながら、除夜の鐘の中継を見つつ召し上がったりされていますよね。
でも、蕎麦文化を研究されている方によると、年末に食べる風習は意外と新しくて、本来の「年越し蕎麦」とは違っていたそうです。
では、“本来”の「年越し蕎麦」はというと、節分に食べる「節分蕎麦」が「年越し蕎麦」だったそうです。
節分とは、季節の変わり目のことで、立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれ前日でしたが、今では特に立春の前日を指して節分と呼ばれるようになっています。
立春の前日の節分は“大寒”の最終日で、冬から春への節目の日です。そのため江戸時代には、大晦日ではなく節分を本当の年越しと言う考え方があったそうです。
ですので、研究家の方によれば“本来”の「年越し蕎麦」は、「節分蕎麦」と言うことになるそうですよ。
なるほど。。。
節分には、柊にイワシの頭を指して戸口に立て、炒り豆をまいて悪疫退散、招福を願ったりされる風習がありますよね(地域によって違いはあるかもしれませんが)。
この風習は中国から伝わった宮中の年末の行事だったそうで、江戸時代頃には一般に広まり、立春の前日に行う清めごとになったそうです。
「節分蕎麦」とは、節分の日に食べる豆や恵方巻きのように縁起がよいメニューと言われていますが、江戸時代の頃には節分料理の元祖として全国に広まっていたそうです。
「節分蕎麦」をあまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、今年の節分には「節分蕎麦」を石井製麺所の「手延べ麺 蕎麦風味」で召し上がってみるのはいかがでしょうか。
<参考サイト>
・そばの散歩道
https://www.nichimen.or.jp/know/zatsugaku/34/
・子育て情報メディア「KIDSNA STYLE」 2月3日は節分そばを食べよう。由来や意味、節分そばのレシピ
三代目:次回のブログは2/10ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.5
素麺の“味”を左右する主原料・小麦について
素麺は、小麦粉・塩・水などのシンプルな食材で作られます。
そのため、素材の良し悪し・向き不向きが素麺の出来を大きく左右します。
今回は、素麺の主原料である小麦について、価格決定の仕組みや産地ごとの特徴、手延べ素麺に適した小麦粉の特性などをご紹介します。
三代目:2021年に小麦粉の製粉会社「小田象製粉株式会社」様に訪問させていただいた際、小麦粉への情熱にとても感銘を受けたことを鮮明に覚えています。
私たちにとって、小麦粉はある意味“生命線”と言えます。
その品質や性質を熟知していないと本当に美味しい手延べ素麺を作ることはできません。
逆に製粉会社様からのアドバイスや小麦粉に対する知識を伝授いただけることは、とても大切なことだと感じました。
その良さを生かし切り、製粉会社様も驚くような美味しい手延べ素麺を作っていきたいと考えています。
(実は、「手延べ半生うどん」は小麦粉の研究開発担当の方も驚いてくださっています)
【目次】
① 小麦の価格は政府が半年ごとに決定している
② 国産・外国産、食品の産地による安全性の違い
③ 世界基準の農業認証「グローバルGAP」とは
④ 「小麦粉(国内製造)」と「国産小麦」の意味
⑤ 手延べ素麺の製法に適した小麦とは
⑥ 《産地紹介》徳島県・半田そうめん
⑦ 《美味しい素麺》手延べきくらげ麺 編
① 小麦の価格は政府が半年ごとに決定している
日本で消費されている小麦の約9割は外国産です。
製粉会社などが求める銘柄の小麦を、日本政府がまとめて輸入しています。
輸入小麦は政府から国内の製粉会社に売り渡され、小麦粉に加工されて食品メーカーに卸されます。
食品メーカーで素麺などの麺類やパン、菓子などの製品となり、消費者の皆さんに届くという流れになります。
政府が製粉会社に輸入小麦を売り渡す価格は、半年ごとに決められています。
その価格は、過去6ヶ月間に国が買い付けた価格の平均をもとに算出されるそうです。
またアメリカでもっとも取引量の多いシカゴ商品取引所での国際的な小麦相場の動向や、外国為替市場の動きにも影響を受けるため、円安が進むと輸入価格は高くなってしまいます。
2022年4月期の売渡価格は、前年のアメリカやカナダでの不作、世界情勢の影響などにより、その前の半年間と比べて17.3%引き上げられたそうです。
2022年10月期については、価格の急激な変動の影響を緩和するため、政府は売渡価格を据え置くことを決定しました。
小麦粉や小麦粉を使った製品の価格は、こうした政府の小麦売渡価格の改定を受けて変動しています。
ただし、製粉会社では不測の事態に備え2、3ヶ月分の小麦を備蓄することになっているそうで、小麦粉の価格変動は、政府の小麦売渡価格改定より少し後にズレてくるようです。
<参考サイト>
・輸入小麦の価格据え置きでどうなる?
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/20220815/519/
・小麦・小麦粉の価格のしくみ
https://www.nisshin.com/entertainment/encyclopedia/flour/flour_04.html
・輸入小麦の政府売渡価格の緊急措置について
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/220909.html
② 国産・外国産、食品の産地による安全性の違い
食品を購入する際、原材料の産地を確認することがあると思います。
「国産だから安全・安心」「外国産は安全性が低い」というイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんね。
実際のところ、外国産の食品は安全なのでしょうか?
結論から言うと、国内で流通している食品の安全性は、国産・外国産とも同じといえるようです。
食品衛生法により、残留農薬、食品添加物、微生物などについてどちらもまったく同じ基準が適用されているためです。
食品の輸入に関しては、農林水産省・厚生労働省・財務省の3つの省庁による3重のチェック体制が構築されています。
まずは農林水産省が所管する「植物防疫法」「家畜伝染病予防法」。野菜、果物、食肉などの貨物を対象とし、輸入時に持ち込まれる可能性のある病気や害虫から、国内の農作物や家畜などを守っています。次に、厚生労働省の「食品衛生法」で、あらゆる食品の衛生規制を行っています。最後に財務省の「関税法」にしたがって税関手続きが行われます。たとえば食肉を輸入する場合、「家畜伝染病予防法」「食品衛生法」で合格しなければ通関できないしくみになっているそうです。
また主要な空港や海港に設置されている検疫所では、統計学的に貨物を評価できる検体数で食品のサンプルを採取し、非常に高度で精密な検査を行い、安全性の管理が徹底されているそうです。
三代目:この点は、製造者としてとても気になる点でした。お客様にとっての安全・安心は原料段階からしっかりと把握できてこそ。今後も原料製造される製粉会社様としっかりと取り組んで参ります。
<参考サイト>
・輸入食品は安全なの?-消費者として知っておきたいこと-
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000150096.pdf
・気になる輸入食品のリスクや検査、そして輸入食品との付き合い方
https://www.ajinomoto.co.jp/products/anzen/know/i_foods_01.html
・国産の食品のほうが安全・安心?
https://oishi-kenko.com/articles/shokunoanzentokenkou08
③ 世界基準の農業認証「グローバルGAP」とは
世界的な潮流として、安全性は第三者が証明する時代になってきています。
日本の大手流通企業や有名ファストフードチェーンなどがグローバルな調達基準として採用している「グローバルGAP」をご存知でしょうか?
「GAP」とは、「GOOD(適正な)」「AGRICULTURAL(農業の)」「PRACTICES(実践)」のこと。農業における労働安全や環境保全、食品安全などについて、持続可能な取り組みを実践している生産者・生産グループを認証の対象としています。世界120ヵ国以上に普及しており、ヨーロッパでは大多数のスーパーマーケットが採用している、事実上の世界基準です。
「グローバルGAP」の認証を取得するためには、数多くの適合基準をクリアしなければなりません。
例えば野菜や果樹の認証における管理点は全218項目。内訳は、食品安全99項目、トレーサビリティ22項目、作業従事者の労働安全と健康28項目、環境(生物多様性を含む)69項目となっています。
2022年、農林水産省が「2030年までにほぼ全ての産地で国際水準GAPを実施」するという推進方策を策定しているそうです。
三代目:先日、お会いしたグローバルGAPインデューサーという方から、「今、世界では「日本産だから安全・安心で上質」ということは通用しません」というお話を伺いました。
グローバルGAP(日本ではJ-GAPなど)の認証制度は、簡単に言えば、世界中どこの農作物でも同じ基準で安全性が分かるようにするためのしくみで、生産者もそれを販売する流通側も一緒になって考えている取り組みだそうです。こういった認証制度を知り、原料素材を選ぶことは製造者である私たちの責任でもあり、安全・安心な“食べ物という命のバトン”を繋ぐことになると考えます。
これからもイメージやブランドに左右されるのでなく、お客様の身体を第一に考えた製造をおこなっていきたいと考えています。
<参考サイト>
・グローバル GAPを解説!JGAPとの違いや審査基準、必要な費用は?
https://agripick.com/2608
・民間団体による第三者認証を備えたGAP(GAP認証)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_certification.html
・GAP普及推進機構/GLOBALG.A.P.協議会
https://www.ggap.jp/?p
・国際水準GAPの推進について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/g_summary/index.html
④ 「小麦粉(国内製造)」と「国産小麦」の意味
麺類やパンなど、小麦粉を使った加工食品のパッケージに、「小麦粉(国内製造)」や「国産小麦」などの記載を見かけることがあります。
これらの意味を正しくご存知でしょうか?
「小麦粉(国内製造)」は、原材料表示欄に記載されています。
国内で製粉された小麦粉という意味であり、原材料の小麦の産地は明記されていません。2017年に始まった加工食品の原産地表示制度により、主原料の産地表示が義務付けられました。しかし小麦粉は原料である小麦の大半が輸入であり、製粉会社が複数の種類をブレンドして加工するため、原産地の明記が難しく、最終製造地を表す「国内製造」の表示が認められています。
「国産小麦」は、国産の小麦を製粉した小麦粉を使用していることを意味します。
この記載は義務ではなく、商品特長の訴求として任意で表示するものです。100%使用の場合は100%と表示するか、割合を表示しなくてもよいことになっています。
100%に満たない場合は、その割合を併せて表示するよう法律で定められています。
<参考サイト>
・「小麦粉(国内製造)」と「国産小麦」の表示について
https://faq.pasconet.co.jp/faq/show/73?category_id=1&site_domain=default
・進化する国産小麦
https://www.benbu.jp/?mode=grp&gid=2555817
・小麦粉の国産と国内製造の違い、そばの原料は小麦粉? わかりにくい食品表示
https://flour.empacede.co.jp/eating/labeling/
⑤ 手延べ素麺の製法に適した小麦とは
小麦は、その産地や種類により性質が異なります。私たち製造者は、作りたい製品に最適な性質や風味を持つ小麦粉を追い求めています。
石井製麺所を例に、どのような製品にどんな小麦粉を使用しているかをご紹介します。
オーストラリア産のASWという、日本向け仕様の麺用小麦から製粉された小麦粉がメイン。さらに、グルテンの力が強いカナダ産、アメリカ産の強力粉を配合した、手延べ素麺用の専用粉を使っています。小麦粉独自のタンパク質であるグルテンは、こねたり練ったりすることで出来る繊維状の組織。生地を引き伸ばす工程を繰り返す手延べ製法では、グルテンの向きが揃うことにより、つるつるしたなめらかな食感が生まれて美味しくなるのです。
ちなみに手打ちうどんは、生地にいろいろな方向から力を加えることでグルテンの弾力性を引き出す製法で、しっかりした食感を生み出します。原料の味わいが仕上がりの風味に影響しやすい製法でもあります。
- 手延べレモン素麺など、食品粉末を練りこんだ麺の場合
他の食品粉末を混ぜる場合、生地が伸ばしにくくなるので、伸ばしやすくするため国産小麦粉を使用したり、上記の手延べ素麺専用粉にさらに国産小麦粉をブレンドしています。
三代目:文字だけでは、説明が難しいのですが、手延べ麺をつくるときに大切なのは“無理なく伸ばせる”ということ。
ですが、小麦粉以外のものを配合して練ると、麺生地が伸びにくくなります。また、国産小麦の特製は、伸びやすい(伸ばしやすい)ことです。そのため、“伸びにくくなった麺”を“伸ばしやすくする”ために、国産小麦を配合して伸ばしやすさを調整しています。この“伸ばしやすさ”は、熟成時間にも影響を及ぼし、伸ばし作業にも影響します。
ゆっくりすぎず、早すぎないようにするためです。
「早く伸びるならいいんじゃないの?」と思われるかも知れませんが、早く伸び過ぎてしまうと作業が追いつかず、製麺がコントロールできなくなります。結果、歩留まりが悪くなってしまい、麺の品質も落ちてしまいます。
石井製麺所では、新しい手延べ麺をつくる際に、国内製造小麦、配合する食品原料(例えば長命草の粉など)、そして国産小麦の配合量を品種ごとに変え、製造時の季節や気候、湿度、温度などを考慮して品質が一定に仕上がるように調整しています。
「瑞象(ずいしょう)」という、小田象製粉株式会社様のオリジナルブランド。うどんには味や食感の改良のため加工デンプンを使用するのが一般的ですが、こちらは小麦粉100%、加工デンプン不使用のうどん用小麦粉です。性質の異なる複数種類の小麦をブレンドして生まれるモチモチ食感と、小麦粉100%による豊かな香りを実現しています。
三代目:石井製麺所では、召し上がっていただく方の身体に負担無く、安全・安心な小麦粉であることを前提として、製品づくりで使い分けています。「外国産」か「国産」の基準ではなく、手延べ製法に合うか合わないか、美味しい“手延べ麺”にできるかできないかを考えながら、製品や製法にあわせてブレンドしたり使い分けたりしています。また、むしろ美味しい手延べ素麺のためには、小麦粉の特性的に外国産(特にオーストラリア産)のものが、美味しくできると考えています。
<参考サイト>
・うどんの話
https://flour-net.com/column/flour_udon/column_udon/post_109.html
・新時代のうどん専用粉”瑞象”(ずいしょう)新発売
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000064557.html
⑥ 《産地紹介》徳島県・半田そうめん
徳島県の西部に位置するつるぎ町半田地区で作られる素麺で、その歴史は古く、約200年の伝統があるそうです。
その起源は諸説ありますが、江戸時代の中頃、物資の運搬を担う船の船頭たちによって、奈良の磯城郡三輪町、淡路、鳴門などを経由して半田に素麺の製法が伝えられたとされています。
当初は船頭たちの家族が自給自足で作るほか、副業にする目的で生産されていたようです。
四国山脈から吹き降ろす冷たい風や吉野川の清水などの気候風土が素麺作りに適しているといわれています。
現在、半田地区には数多くの製麺所があるそうですが場所によっては300mの標高差があり、その標高の違いや小麦の種類、塩や水の配合、熟成や乾燥の時間などにより、製麺所ごとに独自の味わいがあるそうです。そして、その味の違いを食べ比べるのも半田そうめんの味わい方のひとつだそうです。
半田そうめんの特徴は、半田そうめん音頭で「コシの強さにノドが鳴る」と歌われるくらい、一般的な素麺よりやや太めでコシが強く人気があるそうです。
日本農林規格(JAS)では「ひやむぎ」に分類されますが、江戸時代から続く伝統と麺文化の地域性が認められ、特別に「そうめん」の表記が認められています。
農林水産省の統計(平成21年)によると、手延べ素麺の都道府県別生産量において、徳島県は兵庫・長崎・奈良に次ぎ、香川と同じく6%のシェアを占めています。
写真は霊峰剣山からの眺めで、次郎笈を望む写真だそうです。
この霊峰から吉野川に下る山間に半田そうめんの製麺所が点在しているそうですよ。
<参考サイト>
・半田手延べそうめん協同組合
https://handasoumen-kumiai.jp/feature.html
・あるねっと徳島
https://arunet-awa.com/?mode=f6
・農林水産省 うちの郷土料理「半田そうめん 徳島県」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/44_4_tokushima.html
・乾めん類の都道府県別生産量
https://www.shimabara-soumen.com/article/14800426.html
⑦ 《美味しい素麺》手延べきくらげ麺 編
小豆島には、島を代表する食品産業として手延べ素麺の他に、最近人気の高いオリーブ、木桶醤油で有名な醤油、そしてその醤油を活用した佃煮会社が多くあります。
その佃煮会社でも有名な会社「宝食品株式会社」様は、価値ある佃煮づくりのためにと、香川県産のきくらげ栽培を始められ、それらを使った商品を作られています。
その、希少な香川県産きくらげを乾燥させて粉末にし、配合したのが「手延べきくらげ麺」です。
中華料理に欠かせない食材のきくらげ。和食でも食感のアクセントとして利用されるきくらげはキノコの一種ですが、実はビタミンDや鉄分、カルシウムなど栄養満点の食べ物なんです。
薬膳の考えでもきくらげは「黒」の食べ物として、とても珍重されていて、寒い時期に弱ると言われる部位に良いとされています。
ここまでにご紹介した、「手延べひじき麺」「手延べ黒ごま麺」も薬膳の考えに基づく「黒」の食物を配合した、寒い時期ならではの手延べ麺です。
毎日食べて、健康に!
そんなことを実現できるような手延べ麺を作っていきたいと考えています。
《楽々膳・黒》シリーズをどうぞよろしくお願いいたします。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
《楽々膳・黒シリーズ》 https://141seimen.thebase.in/categories/4801499
三代目:次回のブログは1/20ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.4
素麺の規格は太さにより決まっている
日本にはたくさんの麺文化がありますよね。素麺・うどんはもちろん、そば、ラーメン、パスタの他にも独自の呼び方・食べ方の麺がたくさんあります。
その中で少し細かく見ていくと、素麺と同様、小麦粉・食塩・水を主な原料とした麺に、「冷や麦」「うどん」「きしめん」があります。これらは日本農林規格(JAS)により、太さなどの規格が定められています。どのような規格があるのか、また、それぞれの麺がどのような特徴を持ち、どんな食べ方に適しているかをご紹介します。
三代目:Vol.2の《美味しい素麺》のコーナーでも触れましたが、産地の製法の違いや感覚でなく、厳格に規定で決められています。
呼び名はもちろん、茹で時間も、実は規定があったりします。
古くからあるものだけに、様々な発展や根付き方をしてきたことで、消費者の皆さんを困惑させてしまう恐れがあることから、こういう措置が取られたんでしょうね。特にパッケージの裏面などの表記に関わることなので、ぜひ皆さんも、いつも口にされている素麺やうどんの表記について見てみてください。
【目次】
① そもそも「素麺」と「冷や麦」はどう違う?
② JAS規格では麺の太さで分類している
③ 素麺の中でも太さの違いがある
④ 麺の太さで変わる食感と、おすすめの食べ方
⑤ 《産地紹介》長崎県・島原素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べ黒ごま麺 編
① そもそも「素麺」と「冷や麦」はどう違う?
しばしば違いが取り沙汰される「素麺」と「冷や麦」ですが、もともとはその製法が異なったようです。
「素麺」は生地を手で細くのばして作り、「冷や麦」は平らな板と麺棒を使って生地を薄くのばし、刃物で細く切って作ったものです。
室町時代の記録に、素麺の起源とされる「索麺」、また冷や麦の起源とされる「切麦」という言葉が見られます。
室町中期の書物「尺素往来」に、「索麺は熱蒸(あつむし)、截麺(きりむぎ)は冷濯(ひやしあらい)」と書かれていることから、細めの切り麺のことを「冷や麦」と呼ぶようになったと考えられています。
素麺の産地が多い西日本では素麺が好まれる一方、東日本ではそばと同じ太さの冷や麦が好まれる傾向にあるという説もあります。
後の明治時代に発明された製麺機では刃の間隔を調整するだけで素麺や冷や麦、うどんが作れるようになったため、それぞれの麺の違いが曖昧になってきてしまいました。
そこで、1968年に日本農林規格(JAS)による規格が制定されたのです。
<参考サイト>
・日経スタイル
https://style.nikkei.com/
※上記サイト内「「そうめん」と「冷や麦」、違いは何なのか」のページなんですが、URLが大変長く、短縮もできなかったので、トップページのURLを入れています。ご興味のある方は、検索してみてください。
・“そうめん”と“ひやむぎ”の違いは?
https://sozairyoku.jp/%E2%80%9C%E3%81%9D%E3%81%86%E3%82%81%E3%82%93%E2%80%9D%E3%81%A8%E2%80%9C%E3%81%B2%E3%82%84%E3%82%80%E3%81%8E%E2%80%9D%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%AF%EF%BC%9F
② JAS規格では麺の太さで分類している
JAS規格が制定される前までは、1寸の幅に麺線が何本あるか(例えば「ひやむぎ」は18本から22本、「そうめん」は24本以上など)により分類していました。JAS規格では、おもに太さの違いによって麺を分類しています。主原料に小麦粉と塩を使い乾燥させた「乾めん類」についての規定は、「機械製麺の場合、長径1.3ミリメートル未満が『そうめん』、1.3ミリメートル以上1.7ミリメートル未満が『冷や麦』」となっています。また、太さ1.7ミリメートル以上の麺は「うどん」、4.5ミリメートル以上では「きしめん」となります。
手延べ製麺の場合は少し異なっており、太さ1.7ミリメートル未満であれば「そうめん」「冷や麦」のどちらの名前を使ってもよいとされています。これは、200年以上の歴史を持つ徳島県の半田素麺が太さ1.7ミリメートル前後という特徴があり、「冷や麦」に分類されてしまったため、2004年に規格改定され「そうめん」と表記できるようにしたものだそうです。
<参考サイト>
・乾めんJAS規格による分類・太さの比較
http://himeji.jibasan.jp/kanmen/classification/index.html
・ひやむぎとそうめんの違い
https://www.kanmen.com/topic/04_chigai.html
③ 素麺の中でも太さの違いがある
太さにより分類される素麺の中でも、前述の半田素麺のように太いものもあれば、熟練した職人の手腕を活かした極細のものもあります。日本三大産地のひとつである奈良県・三輪素麺の、太さによる等級分類があるので、ここでは参考までにご紹介いたします。
《三輪の神杉(かみすぎ)》約600本 (1束/50gあたり)
三輪素麺を代表する、限定された生産者しか作れない超極細の最高等級品。しっかりしたコシによる食感、茹で上がりのツヤ、上品な口当たりが感じられます。
《三輪の緒環(おだまき)》約475~525本 (1束/50gあたり)
極細専用の小麦粉を使用し、限られた時期にのみ、限定生産者により作られています。極細ながら弾力のある歯応えが特徴です。
《三輪の瑞垣(みずがき)》約400~475本 (1束/50gあたり)
厳寒期のみの生産。通常の三輪素麺より細めに作られ、指定生産者が管理された専用の蔵で熟成させてから出荷している古物(ひねもの)で、しっかりしたコシがあります。
《三輪の誉(ほまれ)》約350~400本 (1束/50gあたり)
三輪素麺の生産量の約90%を占めるレギュラー品。手延べ製法の基本を守り、厳選された小麦粉と塩で小麦の風味を生かし、味わい深く仕上げています。
<参考サイト>
・同じそうめんでも実は違う!?意外と知らないそうめんの太さとその違いとは
https://ikerishop.com/wp/150/
・そうめんの等級
https://www.miwasoumen-kumiai.com/kodawari/grade.html
・日本一細いそうめんと日本一太いそうめんの秘密を探る!
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2020/03/post-9720.html
④ 麺の太さで変わる食感と、おすすめの食べ方
素麺と言えば、冷たいつゆにつけて食べる夏の食べ物というイメージを持つ人が多いようですが、実は温かくしても美味しく食べられます。細めのものは冷やしてつるんとしたのど越しを楽しみ、太めのものはコシがよりしっかりしているので、温かい出汁で食べるのがおすすめです。くせのない味なので、幅広いアレンジで楽しめます。
《冷やしてさっぱりと》
定番の麺つゆで、オリーブオイルで冷製パスタ風、野菜たっぷりでサラダ風、など
《温かくほっこりと》
鶏だしでにゅうめん、みそ汁の具に、中華だしでラーメン風、炒めてチャンプルー、など
⑤ 《産地紹介》長崎県・島原素麺
島原素麺は、南島原市を中心に作られています。
知名度は三大素麺(奈良県・三輪素麺、兵庫県・播州素麺、香川県・小豆島素麺)に負けず劣らず高く、その生産量は全国第二位となっています。
温暖な気候や、雲仙岳の麓から湧き出る清冽な水など自然の恵みに育まれた環境が、素麺作りに適しています。グルテンを多く含む強力粉を使うため、コシが強くツルツルした食感が特徴です。
高度な技術と品質に優れ、他産地の下請けとして発展してきた経緯があり、これまでは表に出てくる機会が少なかったようですが、今ではダントツ二位の市場シェアを持っておられます。
島原素麺のルーツは諸説ありますが、そのひとつに、島原の乱後、人口が激減したため小豆島から移住した人により製麺技術が伝えられたという説があります。
他説には、九州は古来より異文化の入り口として歴史的にも認められるところですが、その中で南蛮や中国の食文化が入り独自の発展をした…と言う説もお聞きしたことがあります。
何れにせよ、小豆島からの移住された方が多いのは事実で、今も小豆島との交流は続いているそうです。
<参考サイト>
・三大そうめんと島原素麺
https://ajinomen.jp/c-fpage?fp=soumen-best3
・島原手延そうめんの歴史
http://minamishimabara-somen.jp/somen/
・島原手延べそうめん
https://www.city.shimabara.lg.jp/page2972.html
・産地別そうめんの比較とおすすめランキング
https://kurabeta.jp/somen/
⑥ 《美味しい素麺》手延べ黒ごま麺
小豆島には4つの有名な食品産業があります。
ひとつは、小豆島手延べ素麺。
もうひとつは、オリーブ。
さらにひとつは、醤油。
最後に、佃煮。
実はもうひとつ。世界に誇る食品メーカーとして!
小豆島手延べ素麺に欠かせないごま油の製造会社「かどや製油」さんです。
先日(2022年12月8日)に、かどや製油様を訪問させていただき、当たり前のように使っていたごま油について、本当に詳しくお話を伺ってまいりました。そのお話は、また後日ブログでご紹介させていただきますね。
さて、実は小豆島はごま油の製造(ごまの栽培はほとんどありません)でも有名な島ですから、何かごまを使用した製品はできないか…と試行錯誤の上で完成したのが『手延べ黒ごま麺』です。これは、先日のブログ(お!いしい けんぶんろくVol.3)でもご紹介した『手延べひじき麺』と同じくして発売を開始した新しい麺です。
これもまた《楽々膳・黒》シリーズの麺で、薬膳で言われる「黒」の食べ物を練りこんだ麺です。『手延べ黒ごま麺』はかなり太麺で食べ応えがあり、モチモチとした食感が美味しい麺です。茹で伸び・煮崩れしにくく、温かいお出汁とよく合います。
黒ごまは食物繊維や良質な必須脂肪酸、アントシアニン、セサミンなど健康成分を多く含みます。その黒ごまを炒って粉末化したものを練り込むことで、より香りが際立つ手延べ麺に仕上がっています。
毎日食べていただけるような麺を作りたいと、日夜研究しております。
《楽々膳・黒》シリーズをどうぞよろしくお願いいたします。
三代目:次回のブログはお正月休みを挟んで1/10ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.3
無病息災を願う宮中の行事食だった素麺
素麺の歴史は約1,200年の長きにわたりますが、庶民が気軽に食べられるようになったのは江戸時代頃からです。
元々は、宮中での儀式などにおける特別な食べ物という位置づけでした。
現代でも、七夕やお盆の行事食や、大切な方への贈り物に用いられる理由について、ご紹介します。
【目次】
① 中国の故事から生まれた、七夕に素麺を食べる儀式
② お盆には、ご先祖様との縁をつなぐ役割も
③ お中元にもお歳暮にも。高級感ある贈り物の定番
④ 《産地紹介》兵庫県・播州素麺
⑤ 《美味しい素麺》手延べひじき麺 編
① 中国の故事から生まれた、七夕に素麺を食べる儀式
素麺の起源は、奈良時代に中国から伝わった「索餅(さくべい)」という、小麦粉・米粉・塩を混ぜて細長くのばしたものとされています。
「年中行事抄」という書物に記されている中国の伝説によると、古代中国の伝説の帝である高辛氏の子が、7月7日に亡くなり、その霊が鬼神となって、瘧(おこり/マラリヤのような熱病)の流行を引き起こしました。
そこで、その子が生前好きだった索餅を命日に供えて祭ると、病の流行はおさまったそうです。
この故事により、「7月7日に索餅をお供えして食べると、一年間流行病にかからない」という言い伝えが生まれ、日本にも無病息災の願いをこめて七夕に素麺を食べる習慣が根付いたと言われています。
平安中期の法典「延喜式(えんぎしき)」には、宮中の作法と儀式として、七夕に素麺をお供えすることが記されています。また鎌倉時代の儀式書「師光年中行事」には、「正月十五日の七草粥、三月三日の桃花餅、五月五日の五色粽、七月七日の索餅、十月初餅」などを宮廷にとり入れて祭事とした、という記述があります。
三代目:元々、夏場に多くご注文を頂戴する素麺ですが、ただ冷たく冷やして食べれるから…だけじゃないんですよね。
健康のことを祈願して、相手のことを思いやる食べ物として昔から重宝されていると知った時に、私が三代目として事業を承継する際に大切にしたいテーマと思ったのが『優しく人に寄り添う、素麺』=『よりそうめん』です。
また、今の新製品開発のコンセプトは健康に嬉しい、体に優しい麺の開発です。この冬からも、このテーマを大切にした新製品を発売しています。
<参考サイト>
・七夕には「そうめん」。 長〜い歴史にこめられた願いとは?
https://tenki.jp/suppl/usagida/2016/07/06/13441.html
・素麺は長寿祈願やお祝いの食べもの
https://www.fukurokuju-gift.com/hpgen/HPB/entries/13.html
② お盆には、ご先祖様との縁をつなぐ役割も
お盆に素麺をお供えしたり、行事食として食べる風習は、日本各地にあります。その由来としては、お盆の時期の「麦の収穫祭」をかねてお供えするという説や、七夕に食べる風習から、素麺を糸に見立て、針仕事の上達を願う縁起物としてお供えするという説などがあります。
お盆に素麺を食べるのには、七夕同様、無病息災を願うことに加え、地域によりさまざまな意味があります。その細長い形状から、「幸せや喜びが細く長く続く」という縁起を担ぐ意味。
ご先祖の魂がお土産を持ち帰るための背負い紐の役割。
また、ご先祖が精霊馬に乗って帰る時の手綱の役割をするというもの、などです。
素麺の日本三大産地のひとつである小豆島には「負い縄そうめん」という風習があります。乾燥させる前の生の素麺を“のれん”のように編んで仏壇の前にかけ、ご先祖様を迎えるというものです。
また、ご先祖様がこれを風呂敷代わりにお供え物を包んで持って帰るという意味もあります。戦前には多くの家庭で行われていましたが、今では民家数軒でこの独特の風習を守り受け継いでいるそうです。
※写真は、小豆島で今もお盆に負い縄そうめんをお供えされる川﨑様からのご提供
<参考サイト>
・何故お盆に「そうめん」なの?そうめんをお供えする意味と由来
https://nadesico-magazine.jp/obon-sohmen/
・お盆にちなんだ食べ物について
https://www.h-fureai.com/column/food-named-after-obon#chapter-13
・お盆飾りにそうめん編む 消えかけた小豆島の風習を復活し、4世代で続ける家
https://news.yahoo.co.jp/articles/59b11b3a8a0c651ae631dba51d182a7031be35e1
③ お中元にもお歳暮にも。高級感ある贈り物の定番
江戸時代、素麺は宮廷に献上されるような高級品だったためか、贈り物としても古くから選ばれてきました。
一昔前でしたら夏場のお中元には欠かせない存在だったのではないでしょうか。
現在はお中元という習慣が少なくなってきましたが、今なお、夏の贈り物の定番として人気は高いと思います。
細くて長い形状に「細くても長いお付き合いをお願いします」といった意味が込められています。
今でこそスーパーで気軽に購入できる素麺ですが、職人が手間暇かけて作る手延べ素麺は高級感があり味わいも格別なので、相手への思いを伝える贈り物として、多くの人に選ばれています。
保存性に優れており日持ちするため、備蓄品にも適しています。
短時間で茹で上がり、淡白な食味でいろんな味付けに合うため、多彩なアレンジが楽しめます。
手延べ素麺はコシが強くのびにくいので、温かいおつゆや鍋物など冬の食卓でも大活躍。
お中元だけでなくお歳暮や年始の挨拶品としても最適です。
<参考サイト>
・お中元でそうめんを贈るのってなんでなの?その理由を教えます。
https://niko-niko-blog.com/ochugen-soumen/
・お中元の定番がそうめんなのはなぜ?
意味ってあるの?
https://www.shop.post.japanpost.jp/column/ochugen/ochugen_teiban.html
④ 《産地紹介》兵庫県・播州素麺
日本の素麺三大産地のひとつで、生産高国内第1位。
室町時代初期、現在の兵庫県南部・播州にある斑鳩寺(いかるがでら)の古文書「鵤庄引付(いかるがのしょうひきつけ)」に「サウメン」という記述が見られ、約600年前から播州で素麺が食べられていたことが分かります。
素麺作りが本格化したのは江戸時代。
龍野藩の許可業種として奨励され、揖保川の水や播州平野で採れる良質な小麦、有名な赤穂の塩などの原材料にも恵まれ、農家の副業として発展を遂げました。
生産量が増えるとともに、粗製乱造で産地の信用を落とす事態も発生したため、龍野藩・林田藩・新宮藩内の素麺製造業者が集まり、厳しく品質などを管理しました。
この集まりが元になり、明治時代に「揖保乃糸」ブランドが誕生しました。
現在、「揖保乃糸」ブランドは兵庫県手延素麺協同組合が一括管理しています。
揖保川流域のたつの市や姫路市、宍粟市、太子町、佐用町で毎年限られた期間に生産されており、文字通り糸のような細く美しい形状や、なめらかな舌触り、コシのある食感と風味が特徴だそうです。
三代目:皆さんはご存知でしょうか?兵庫県たつの市に「大神神社(おおみわじんじゃ)」というところがあり、こちらは、農業の守護神として祀られるのと合わせて「揖保乃糸(播州素麺)」の守り神としても祀られ、その名も『素麺神社』と呼ばれているそうです。
主祭神は国津神の大物主大神で、奈良の官幣大社、大神神社の分祀だそうですが、「おお“みわ”」とお聞きすると、三輪神社との繋がりを勝手に想像してしまいます。
三輪素麺には三輪神社、播州素麺には大神神社がありますから小豆島手延べ素麺にもそういった素麺に関連した神社がないか調べてみたいものです(実はあって、私が知らないだけかもしれませんが)。
一度、こちらにも行ってみたいなと思っております。
<参考サイト>
・姫路・西はりま地場産業紹介
http://jibasan.or.jp/jibasan/soumen/index.html
・姫路みたい
https://www.himeji-mitai.com/feature/374539.html
・農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/40_8_hyogo.html
⑤ 《美味しい素麺》手延べひじき麺 編
2022年の冬の目玉商品として『楽々膳・黒』シリーズを販売させていただきました。
香川県産の「きくらげ」を使用した『手延べきくらげ麺』。
小豆島ともご縁のある「黒ごま」を使用した『手延べ黒ごま麺』。
そして、今回ご紹介するのが、小豆島産の「ひじき(茎)」を使用した『手延べひじき麺』です。
ほのかに香るひじきの香りが、海に囲まれた小豆島ならではの素麺に仕上がっていると思います。
今回はご縁があり、小豆島池田漁協様とのコラボ製品として誕生しました。
小豆島や瀬戸内のものを使った製品づくりというのは理想なのですが、今回はそれだけでなく、「ひじき」の栄養価に着目して開発をおこないました。「ひじき」とは、薬膳で言うところの「黒」の食品に属し、冬に弱る体にとって良い食べ物とされています。
美味しいから毎日でも食べたい。
そう言っていただけるのは本当に嬉しい限りですが、せっかく毎日召し上がっていただけるなら体に良い麺は作れないだろうかと試行錯誤の内にたどり着いた手延べ麺です。
冬に食べると良いと言われる「黒」の食べ物の「ひじき」の入った麺ですから、やはり温かくして召し上がって頂くのがいちばんのおすすめです。とは言え、せっかくならお出汁と一緒に召し上がっていただく煮麺風も良いですが、せっかくならちょっとアレンジして、一緒にお野菜も食べていただける「ポトフ風麺」はいかがでしょうか。
お好みの具材を煮込んだポトフのスープに、ポキポキっと折って茹でた「ひじき麺」を食べる前に合わせるだけ。腹持ちも良くて、何より体が温まりますよね。少し生姜をおろして召し上がっていただいてもいいと思います。
ぜひ寒い冬の一品に『手延べひじき麺』をお召し上がりください。
『手延べひじき麺』の開発秘話については、こちらもご覧ください。
三代目:次回のブログは12/15ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.2
手間を惜しまない伝統の製法・手延べ素麺
素麺の作り方は大きく2つに分けられます。生地を細くのばしていく「手延べ製法」と、機械で生地を薄くのばし、細く切る「機械製麺」。
製法の違いが、食感や麺のコシ、のど越しを大きく左右します。ここでは小豆島で続く伝統的な手延べ製法での素麺作りについて、ご紹介します。
三代目:小豆島には大小約80軒の製麺所があると言われています。その各製麺所によって微妙に製法やこだわり、使用する機械なども異なりますので、ここでは石井製麺所をベースにお話しさせていただきます。
【目次】
① 手延べと機械、製法の違いによる味わいの違いとは
② 丹精込めて作られる手延べ素麺
③ 《産地紹介》奈良県・三輪素麺
④ 《美味しい素麺》うどん 編
① 手延べと機械、製法の違いによる味わいの違いとは
農林水産省が制定するJAS法によると、手延べ干し麺(手延べ素麺を含む)の製造法の定義は、「小麦粉に食塩、水等を加えて練り合わせた後、食用植物油又はでん粉を塗付してよりをかけながら順次引き延ばしてめんとし、それを乾燥したものであって、小引(こび)き工程又は門干(かどぼ)し工程においてめん線を引き延ばす行為を手作業によって行い、かつ、これらの工程において、一定期間以上の熟成が行われたもの」とされています。
機械製麺と大きく違う点は、①仕上げの工程が手作業であること、②生地を引きのばして麺にする各工程で熟成が繰り返し行われること、③植物油が用いられていることです。
小麦粉を練ってつくった生地を、のばして重ねて、のばして重ねて…を繰り返すことで、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、まるで何層にも重なった地層のように組織されます。これをよりをかけながら細くのばすことで断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが特徴の手延べ素麺になります。
時間が経っても伸びにくいのも特徴のひとつです。元々はすべての工程が文字通り人の手で行なわれていましたが、最近は一部の工程で機械化が進み、量産化が図られています。
一方、機械で生地を薄くのばし、細く切って乾燥させる「機械製法」で作られた素麺は、断面が四角く、大量生産に向き比較的安価でできますが、手延べ麺のようなツルツル感はありません。
<参考サイト>
・日本農林規格の改正について「手延べ干しめん」
https://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/140221_sokai_f.pdf
・植物油INFORMATION
https://www.oil.or.jp/info/70/
・肝臓公司
https://kanzo.jp/archives/24253
※写真はイメージです。
② 丹精込めて作られる手延べ素麺
日本三大素麺のひとつ・小豆島素麺(石井製麺所)を例にとり、手延べ製法の工程をご紹介します。
約400年前から続く伝統の製法で、小豆島特産の純正ごま油を塗りながら練った生地を、木箸を使って極細の糸状になるまで丁寧に引きのばし、天日でじっくり乾燥させて作ります。
油を塗るのは、麺の表面の乾燥や麺同士の付着を防ぐため。
ごま油を使うことで独特の風味が生まれ、他の産地で使用している綿実油に比べて酸化しにくいため麺が劣化しにくい特徴があります。
また室内乾燥が主流になる中、小豆島の自然環境の良さを活かして天日干しと室内干しを組み合わせることにより、麺がより白くなり、旨みも増すと言われます。
《工程1》おで(小麦粉をこねる)
その日の天候や温度・湿度に最適な小麦粉と食塩水の配合量で、30分ほど丁寧に練り合わせ、グルテンがしっかり形成された麺生地を作ります。
《工程2》いたぎ(板状に切り出し、圧延と複合を繰り返す)
麺圧機で生地をまとめ、板状に切り出し、圧力をかけて帯のようにのばします(圧延)。 “採桶(さいとう)”と呼ばれる金属製の桶に巻き取り、生地を重ね合わせ、再び圧力をかけながらのばします(複合)。これを何度か繰り返し、きめの細かいグルテン組織を作ります。
《工程3》油がえし(表面に油を塗る)
帯状になった生地を半分に折るようにして丸め、麺生地同士がくっつかないように、ごま油を塗りながら巻いていきます。油がえし後は、しばらく寝かせて生地を熟成させます。
《工程4》より(麺を少しずつ細める)
ごま油を塗った生地を熟成させた後、よりをかけながらだんだんと細めていきます。この時も採桶に巻きながらごま油を塗ります。熟成の時間を挟み、中より(なかより)、小より(こより)の二段階の工程を経て細くすることで、麺のコシが生まれます。
《工程5》かけば(2本の箸に、8の字にかける)
さらによりをかけながら細くのばした麺紐を2本の箸に8の字状に巻き付けます。
“寝櫃(ねびつ)”と呼ばれる熟成用の箱に入れてさらに熟成させます。
《工程6》こびき(のばしに備えて、少しのばす)
寝櫃で熟成させた生地を50cmほどの長さにのばします。
次の工程で大きくのばすための下準備です。
《工程7》のばし
生地を、機械を使って生地を背丈ほどの長さにのばしながら、8の字にかかった生地の間に箸を通し、生地同士のひっつきを分けていきます。
8の字にかけたことで、箸を通すだけで隣り合う生地を離すことができます。
《工程8》はしわけ
のばした麺を“はた”と呼ばれる干し台につけていきます。
その日の湿度に合わせて、手作業で箸を入れ、のばし上げた麺線のひっつきを一本一本丁寧に箸で分けていきます。
《工程9》乾燥
小豆島手延べ素麺の特徴のひとつ、天日干しを行います。
天日干しで表面をさっと乾かし余分な水分が取れたのを見計らって、室内乾燥に切り替えじっくり時間をかけて乾かします。
こうすることによって、麺の一本一本がよく締まり、舌触りがつるっとした、見た目もなめらかで美しい素麺になります。
《工程10》裁断
乾燥の終わった麺を切り台に並べ19cmの長さで切り揃えます。
併せて目視にて不良麺を取り除きます。
《工程11》てび(帯で束ねる)
19cmに切り揃えた麺を、一束一束、帯で束ねていきます。
一束は50gと決まっており、重さと不良麺の有無を確認しながら、丁寧に帯を巻いて完成品となります。
三代目:私の製麺所は、家族三人で製造しているので、誰が欠けても成り立ちません。その三人が阿吽の呼吸で製造を行なっています。当初、私が帰郷した際に製造現場に立ち会いましたが、もちろん最初は何から手伝えば良いのかわからず、右往左往していました。
しかしながら、今では箸わけをできるくらいに(これは高さがあって、大変なのと意外に重労働なんです)なり、すんなりと製造に加わっています。
「おで」と言われる練りの工程は経験値の必要なもので、過去の記録をノートに記し、それを素に毎日の小麦粉と水と塩の配合を決めています。今は父がその工程を担ってくれています。ノートの記録は私にとってまだまだチンプンカンプンですが、これを生かし私なりの製麺ができるよう学びの毎日です。
もちろんこういった学びは自社(実家)でしかできず(中には他社に修業に行くこともありますが)、製造の研修(修業)をできる場所が今の小豆島にはありません。
後進育成のためにもそういった学びや集まれる場所作りも今後の産地継続、技能伝承のためには大切なことかなと感じています。
<参考サイト>
・うどん県旅ネット
https://www.my-kagawa.jp/shodoshima/feature/shodoshima/beauty4
・QLIP
https://qlip-trip.com/jp/articles/79
③ 《産地紹介》奈良県・三輪素麺
素麺の三大産地のひとつであり、素麺発祥の地とされているのが三輪です。
827年、三輪山の大神神社で、神主であった大神朝臣狭井久佐(おおみわのあそんさいくさ)の次男・穀主(たねぬし)が神の啓示を賜り、三輪の地に適した小麦の栽培を行い、小麦と三輪山の清流で素麺作りを始めたと言われています。
後の江戸時代には、お伊勢参りの途中で多くの人が奈良を訪れ、旅籠で三輪名物として供される素麺を食べたことから、その評判が全国へと広まっていきました。
良質の小麦粉と塩、三輪の清水、三輪山から盆地に吹き下ろす北風「三輪おろし」などの気候風土が、素麺作りに適しています。三輪の手延べ製法が播州、小豆島、島原へと伝わったとされています。
<参考サイト>
・九州お取り寄せ本舗
https://blog.otoriyose.site/kyusyustroll/1805/
・大神神社HP
https://oomiwa.or.jp/jinja/kamigatari/
・奈良県観光公式サイト
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/page/page_32.html
・三輪素麺振興会公式HP
https://miwa-soumen.net/
④ 《美味しい素麺》うどん 編
うどん?!って思いますよね。
小豆島手延べそうめんにも、うどんはあります。手延べうどんです。
そうめんの太さは、乾めん類品質表示基準(農林水産省告示488号)において直径1.3㎜未満と定められています。乾めん類品質表示基準はJAS法に基づく品質表示基準のひとつであり、この違反に対しては19条の14で定められた指示又は命令がなされ、その旨の公表がなされます(第19条の14の2)。ちなみに、その他にも以下のように厳密に規定されているんですよ。
破れば法律違反です(汗)。
第1号 名称
加工食品品質表示基準第4条第1項第1号本文の規定にかかわらず、次に定めるところにより記載すること。
ア 手延べ干しそば以外の干しそばにあっては「干しそば」又は「そば」と記載すること。
イ 手延べ干しめん以外の干しめんにあっては「干しめん」と記載すること。ただし、長径を1.7㎜以上に成形したものにあっては「干しうどん」又は「うどん」と、長径を1.3㎜以上1.7㎜未満に成形したものにあっては「干しひやむぎ」、「ひやむぎ」又は「細うどん」と、長径を1.3㎜未満に成形したものにあっては「干しそうめん」又は「そうめん」と、幅を4.5㎜以上とし、かつ、厚さを2.0㎜未満の帯状に成形したものにあっては「干しひらめん」、「ひらめん」、「きしめん」又は「ひもかわ」と、かんすいを使用したものにあっては「干し中華めん」又は「中華めん」と記載することができる。
ウ 手延べ干しそばにあっては「手延べ干しそば」又は「手延べそば」と記載すること。
エ 手延べ干しめんにあっては「手延べ干しめん」と記載すること。ただし、長径が1.7㎜以上に成形したものにあっては「手延べうどん」と、長径が1.7㎜未満に成形したものにあっては「手延べひやむぎ」又は「手延べそうめん」と、幅を4.5㎜以上とし、かつ、厚さを2.0㎜未満の帯状に成形したものにあっては「手延べひらめん」、「手延べきしめん」又は「手延べひもかわ」と、かんすいを使用したものにあっては「手延べ干し中華めん」又は「手延べ中華めん」と記載することができる。 ※「長径」とは、楕円の最も長い部分の半径
で、うどんですが、「長径を1.7㎜以上に整形したものはうどん」と規定されています。
製法は手延べでも、太さがあると『うどん』にしなければいけないんですね。
手延べうどんの特性は、しっかりと乾燥させているので、湯で伸びしにくく、長時間煮込んでも煮崩れを起こしません。ただ、茹で時間が生うどんなどに比べて長いので、ささっと作って食べることが難しいです。
その分、例えば、旨味の溶け出したスープなどでじっくり煮込めば、旨味たっぷりの美味しい煮込みうどんになります。ですから、鍋パーティの後の〆の一品や煮込みうどんとして召し上がっていただけると、手延べうどんのモチモチとした食感とツルンとした喉ごしが味わえ、たっぷりと出汁の旨味を吸った極上の食事になります。
鍋の〆の一品で召し上がる際は、事前に茹でておいて冷蔵庫で保存しておけば、食べる際にはすぐに調理いただけます。ぜひ、これからの寒い時期に「手延べうどん」を!
三代目:次回のブログは12/1ごろ、アップしたいと思います。
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.1
素麺1200年の歴史と、その三大産地について
【はじめに】
㈲石井製麺所のブログではこれまで、お客様やホームページをご覧くださる方とのコミュニケーションの場(ブログという一方的な発信ではありますが)の一環として、三代目の私が色々見聞したことを綴ってまいりました。
しかしながら、ここ最近、島の取り組みや島外でのイベントに参加させていただく中で、素麺のことをもっと知りたい、それをたくさんの方と共有して、叶うなら後進育成にも繋げていきたい…そういう思いが強くなってきました。
そこで、「素麺の歴史・小豆島手延べ素麵の歴史」を綴りながら『お!いしい けんぶんろく』として、これから色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。
まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本三大素麺の産地について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になれば。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。
日本に数多くある麺の中でも、素麺の歴史は古く、9世紀頃に中国から伝わったものがそのルーツとされています。長い年月をかけて各地に広まりながら、産地ごとに独自の進化をとげ、多様な味わいを生み出してきました。そんな素麺の歴史と三大産地の特徴をご紹介します。
【目次】
① 素麺のルーツは中国のお菓子?
② 日本の素麺は神の啓示で生まれた?<三輪>
③ 厳しい品質管理でブランド化を推進<播州>
④ 三輪から持ち帰った技術で独自に発展<小豆島>
⑤ 《産地紹介》香川県・小豆島素麺
⑥ 《美味しい素麺》煮麺 編
① 素麺のルーツは中国のお菓子?
素麺の起源は、奈良時代に遣唐使が中国から持ち帰った「索餅(さくべい)」というお菓子にあると言われています。
小麦粉と米の粉を練って縄のような形にねじったもので、今も長崎県に伝えられている郷土菓子「麻花兒(マファール)」に似たものだったようです。
これをお供えすると疫病が鎮まったという言い伝えがあり、無病息災を祈る食べ物として、とても貴重な食物だったそうです。
927年に完成した、宮中の儀式・作法等を集大成した書物「延喜式」には、「索餅」が旧暦7月7日の七タの儀式に供え物の一つとして供えられた記録があります。
特に平安時代からは、宮中での七夕行事に欠かせない供物とされていました。
<参考サイト>
・島原そうめんの歴史
https://www.shimabara-soumen.com/category/1572537.html
・素麺の起源「索餅(さくべい)と索麺(さくめん)」
https://www.shimabara-soumen.com/article/14261528.html
② 日本の素麺は神の啓示で生まれた?
素麺の三大産地は「三輪(奈良県)」「播州(兵庫県)」「小豆島(香川県)」とされ、この中で最も歴史の古いのが三輪です。
827年、日本最古の神社である三輪山の大神神社で、神主であった大神朝臣狭井久佐(おおみわのあそんさいくさ)の次男・穀主(たねぬし)が、飢饉や疫病に苦しむ民の救済を祈願しました。
すると神から「肥沃な三輪の里に小麦をまいて、その実りを水車の石臼で粉に挽き、癒しの湧き水でこね延ばして糸状にしたもの」という啓示を賜り、三輪の地に適した小麦の栽培を行い、小麦と三輪山の清流で素麺作りを始めた
とされています。
後の江戸時代には、お伊勢参りの途中で多くの人が奈良を訪れ、旅籠で三輪名物として供される素麺を食べたことから、その評判が全国へと広まっていったそうです。
こうした伝承から、大神神社は素麺作りに携わる全国の人から篤く信仰されており、毎年2月5日には素麺の卸値相場を占う「卜定(ぼくじょう)祭」が行われています。
三代目:素麺は元々、神様へのお供え物や健康を祈願する食べ物だったんですよね。石井製麺所では、この考えを基本として原点に立ち返り、「身体に負担の少ない物」、「身体にとって美味しいものづくり」として取り組んでいます。
<参考サイト>
・九州お取り寄せ本舗
https://blog.otoriyose.site/kyusyustroll/1805/
・大神神社HP
https://oomiwa.or.jp/jinja/kamigatari/
・奈良県観光公式サイト
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/page/page_32.html
③ 厳しい品質管理でブランド化を推進<播州>
鎌倉時代、中国から禅宗が伝わると同時に、寺院では点心と呼ばれる間食が広まりました。点心には、索餅から作り方が進歩した「索麺(さくめん)」が使われました。
室町時代初期の古文書「鵤庄引付(いかるがのしょうひきつけ)」に「サウメン」という記述が見られます。
この古文書は現在の兵庫県南部・播州にある斑鳩寺(いかるがでら)のもの。約600年前から播州で素麺が食べられていたことが分かります。当時、素麺は寺院や宮中で食べられるもので、庶民の口にはまだ入らなかったようです。
播州で素麺作りが本格化したのは江戸時代とされています。
龍野藩の許可業種として奨励され、揖保川の水や播州平野で採れる良質な小麦、有名な赤穂の塩などの原材料にも恵まれ、農家の副業として発展を遂げました。生産量が増えるとともに、粗製乱造で産地の信用を落とす事態も発生したため、龍野藩・林田藩・新宮藩内の素麺製造業者が集まり、厳しく品質などを管理しました。
この集まりが元になり、明治時代に「揖保の糸」ブランドが誕生しました。
三代目:2023年は、ぜひとも産地巡りをしたいと考えています。
<参考サイト>
・姫路・西はりま地場産業紹介
http://jibasan.or.jp/jibasan/soumen/index.html
・姫路みたい
https://www.himeji-mitai.com/feature/374539.html
④ 三輪から持ち帰った技術で独自に発展<小豆島>
小豆島の素麺作りは、1598年、小豆島池田村の島民がお伊勢参りの帰路、三輪に立ち寄り、素麺の製造技術を学んで島に持ち帰ったのがルーツとされています。
冬の農閑期に家族の労働だけで生産できるといった利点や、小麦の栽培に適した気候、瀬戸内海の塩や素麺作りに必要なごま油が豊富にとれる、などの環境から、素麺づくりがさかんに行われるようになりました。
現在、素麺の生産高が国内第2位である長崎県・島原へは、小豆島からの移住者が製麺技術を伝えたという説もあります。
小豆島の手延べ素麵の独自性としては、製法に「ごま油」を使うところでしょうか。
三代目:来月は、そのごま油で日本トップシェアを誇る小豆島を代表する「かどや製油」さんにお邪魔して、詳しくお話を伺ってきたいと思います。
なぜ、小豆島だけがごま油を使うのか?
なぜ、小豆島でごま油が盛んに使われたのか?
など、小豆島にとって切っても切り離せない「ごま油」についても知りたいことがたくさんありまして。
「ごま油」を使った独自製法が、小豆島手延べ素麵の美味しさの秘訣のひとつだと考えます。
三代目:日本三大産地の共通項は、水、空気(風や乾燥具合)だといわれています。もちろん、ルーツが同じでも時代と共に製法が進化してどんどん美味しく、たくさん生産されるようになってきました。私たち石井製麺所では、昔ながらの製法を大切にしつつ、「素麺の目的」をしっかりと見える化して、新しい素麺、これからの時代に必要とされる素麺をつくり続けていきたいなと感じました。
伝統産業といわれながら何も知らずにつくり続けるのではなく、これまでを振り返り、これからの美味しい素麺づくりに活かせることができればと考えています。
しばらくは産地について調べていきたいと思います。
この産地探求の旅が、また新しい素麺に繋がると期待しています。
<参考サイト>
・小豆島物語
https://shodoshima.npnp.jp/about/somen/
⑤ 《産地紹介》香川県・小豆島素麺
豊かな自然と温暖な気候に恵まれた小豆島。
瀬戸内における海上交通の要衝だったため、塩や小麦などの原料調達がしやすく、江戸時代にはその地の利を活かして素麺作りがさかんに行われるようになりました。
小豆島素麺の特徴は、特産の純正ごま油を塗りながら練った生地を、木の箸を使って極細の糸状になるまで丁寧に引き伸ばし、天日でじっくり乾燥させる、伝統的な手練りの手延べ法で作られること。
一般的な手延べ素麺では菜種油を使いますが、「ごま油」を使うことで素麺の酸化が抑えられ、油臭さを取り除く必要がありません。手間暇かけて作ることで、豊かな風味とコシが生まれます。
黄みがかった色も特徴の一つです。
<参考サイト>
・うどん県旅ネット
https://www.my-kagawa.jp/shodoshima/feature/shodoshima/beauty4
⑥ 《美味しい素麺》煮麺 編
お素麺は、シンプルなだけに色々な味付けや盛り付け、合わせるお出汁などで食べ方も色々変わりますよね。また、地域性の高い食べ方や季節的にも色々とあります。
最近では、素麺ブームといわれているので東京にたくさんの“素麺専門店”ができているそうで、たくさんの方に素麺を食べていただく機会も多くなってきたと感じます。
ネットで探せば、たくさんのレシピも出てきますし、「たくさん素麺をもらったけど、食べ方に困る」なんてお話や「余った素麺を美味しく食べるレシピ」というのもあったりして、素麺をつくるものとしては大変ありがたいお話ですが、余らせたり困ったりするものでなく、食事の“ピンチ”や“困った”時の一品としてご活用いただければと思います。
お湯が沸いて1分半(細麺タイプの場合)で美味しく頂けるので、時短メニューにもぴったりですし、小豆島手延べ素麺は麺の表面にごま油が塗られているので、茹で上がり後、水を切ってしばらく冷蔵庫に入れていても、つゆをかければさらさらっと麺がほぐれて美味しく召し上がっていただけます。
素麺の特徴を生かして、ぜひご家庭でも美味しい素麺を召し上がっていただきたいと思います。
今回は、美味しい『煮麺』の作り方について。
といっても、美味しいレシピは今の時代、ネットにたくさん出ていますので、私から「こうすれば美味しい!」というのはないんですけども、温かい麺として美味しく召し上がっていただける当製麺所の「煮麺におすすめの麺BEST3」を発表したいと思います。
第3位は!「手延べしょうどしま長命草素麺」です!
ゆでたての香りは抹茶のようなすがすがしい香りで、麺も少し太麺で温かいお出汁にも湯で伸びしにくくい点がおすすめです。着色料無添加なので、長命草の自然な緑色が見た目にも綺麗です。石井製麺所では、フォー風のスープと一緒にエビなどを盛り付けて食べるのが人気です。
長命草の栄養価を手軽に取り入れて、毎日食べていただきたいと開発した麺で、最近、人気急上昇の素麺です。
第2位は!「手延べ素麺 太麺」です!
一般的にはひやむぎといわれる太さです。小麦粉の香ばしい香りが口の中で広がって、太麺独特のシコシコとコシのある食感、噛み切った時の弾力感が美味しい麺です。
第1位は!「山芋素麺」です!
この麺の特徴は、何といってももちもちプリンとした食感で、寒い時期はスタンダードな素麺からこちらの「山芋素麺」を選ばれる方が大変多いです。真っ白の麺が見た目にも綺麗ですので、食べ方も色々とアレンジできそうです。個人的には、秋の味覚のキノコや山の幸などと合うと思っています。
皆様もぜひ、色々と試してみてくださいね。
皆様のレシピや食べ方、こんな麺が食べてみたいなどあれば、ぜひお聞かせください。
三代目:次回のブログは11/15ごろ、アップしたいと思います。